以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。実施例1は、被験者であるユーザの閉眼時に、瞳孔径等を測定する例である。実施例2は、ユーザの閉眼時に、瞳孔径等に加え瞳孔位置を測定する例である。
実施例1,2の瞳孔測定器具は、被験者であるユーザの目の瞼の裏と角膜との間に装着できるようにコンタクト型に形成され、外部の給電用メガネから電力が供給されることで動作する。
この瞳孔測定器具は、発光素子及び受光素子を一対とした複数の対を備えており、複数の対は、当該瞳孔測定器具がユーザの目の瞼の裏と角膜との間に装着された状態において、目の瞳孔、虹彩及び白目に対向するように設けられる。瞳孔測定器具は、赤外線の発光タイミングと反射して戻ってきた赤外線の受光タイミングとの間の時間差(遅延時間)を求め、当該時間差に基づいて、瞳孔領域と当該瞳孔領域以外の領域とを判断し、瞳孔と虹彩の境界位置を求める。
そして、瞳孔測定器具は、境界位置から瞳孔の動きに関する測定データを求め、給電用メガネへ送信する。給電用メガネから瞳孔測定器具への電力の供給、及び瞳孔測定器具から給電用メガネへの測定データの送受信は、非接触ICカードと同様の電磁誘導に基づいた動作原理が用いられる。
これにより、瞳孔を測定する際の回数及び時間の制限を受けることはなく、ユーザが目を閉じているときであっても、安定的に瞳孔の動きを測定することができる。
〔実施例1〕
まず、実施例1について説明する。前述のとおり、実施例1は、ユーザの閉眼時に、瞳孔径等を測定する例である。
図1は、実施例1の瞳孔測定装置の全体構成例を説明するイメージ図であり、図2は、実施例1において、ユーザの閉眼時における給電用メガネ及び瞳孔測定器具の使用態様を説明する図である。尚、図1は、全体構成例のイメージを示しており、各構成部の位置を示しているものではない。
この瞳孔測定装置1-1は、ユーザの顔の所定箇所(目に対向した所定箇所)に装着される給電用メガネ(給電用器具)2、ユーザの眼球に装着(目の瞼の裏と角膜との間に装着)される瞳孔測定器具3、及びデータ蓄積表示装置4を備えて構成される。
給電用メガネ2は、そのフレームに、データ処理装置10及びアンテナコイル20を備えている。図2に示すように、瞼101が閉じており、瞳孔測定器具3が瞼101の裏と角膜との間に装着されている状態において、データ処理装置10及びアンテナコイル20は、瞳孔測定器具3に対向する位置に設けられている。
データ処理装置10は、電池(電源)を備えており、アンテナコイル20を介して瞳孔測定器具3を給電し、瞳孔測定器具3からアンテナコイル20を介して、瞳孔径、瞳孔の形状等の瞳孔に関する測定データ(瞳孔測定データ)を受信する。そして、データ処理装置10は、測定データを時系列に整理したり、測定データを加工したり等のデータ処理を行い、測定データ等の各種データをデータ蓄積表示装置4へ送信する。データ処理装置10とデータ蓄積表示装置4とは、無線または有線にて接続される。
アンテナコイル20、及び瞳孔測定器具3に備えた後述するアンテナコイル30は、電磁誘導により、データ処理装置10から、瞳孔測定器具3に備えた後述する測定回路40への給電をワイヤレスにて実現する。また、アンテナコイル20,30は、測定回路40からデータ処理装置10への測定データの送受信をワイヤレスにて実現する。
アンテナコイル20は、瞳孔測定器具3を給電するためのコイルとして機能すると共に、瞳孔測定器具3から測定データを受信する受信アンテナとして機能する。
瞳孔測定器具3は、アンテナコイル30及び測定回路40を備えている。瞳孔測定器具3は、後述する図10に示すように、コンタクトレンズと同様の形態のコンタクト型に形成されており、ユーザの目の角膜に接触して取り付けられる。つまり、瞳孔測定器具3は、ユーザの目の瞼の裏と角膜との間に装着される。
アンテナコイル30は、データ処理装置10からアンテナコイル20を介して、測定回路40を給電するためのコイルとして機能すると共に、アンテナコイル20を介してデータ処理装置10へ測定データを送信するための送信アンテナとして機能する。
測定回路40は、アンテナコイル30を介して給電を受けると、交流電力を直流電力に整流し、直流電力を電源として、後述する回路及び素子を動作させる。測定回路40は、発射赤外光α1を出力し、反射赤外光β1を入力することで、瞳孔に関する測定データを取得し、測定データを、アンテナコイル30及びアンテナコイル20を介してデータ処理装置10へ送信する。
データ蓄積表示装置4は、給電用メガネ2のデータ処理装置10から測定データ等の各種データを受信し、各種データをメモリに蓄積したり、画面表示したりする。
尚、図2の例では、図1に示した給電用メガネ2のデータ処理装置10及びアンテナコイル20、並びに瞳孔測定器具3は、左右の両目に対応して2セット設けられているが、一方の目のみに対応して設けられるようにしてもよい。これにより、ユーザは、一方の目を用いて瞳孔径の測定が行われ、他方の目にて、通常通りの視界を得ることができる。
また、データ処理装置10及びアンテナコイル20は、給電用メガネ2のフレームに備えるようにした。これに対し、これらのサイズが大きく当該フレームに備えるのが困難な場合は、目を覆うヘッドマウント型の装置に収容するようにしてもよい。
〔給電用メガネ2及び瞳孔測定器具3の構造〕
図3は、実施例1における給電用メガネ2及び瞳孔測定器具3の構造例を示す概略図である。図3に示すように、給電用メガネ2のデータ処理装置10及びアンテナコイル20は、メガネフレーム22に支持されている。データ処理装置10及びアンテナコイル20は、接続線21を介して電気信号の入出力を行う。また、アンテナコイル20は、支持部材23にてメガネフレーム22に支持されている。
瞳孔測定器具3のアンテナコイル30及び測定回路40は、ユーザの目100の瞼101の裏と角膜102との間に装着されている。アンテナコイル30は、給電用メガネ2のアンテナコイル20に対向するように設けられている。
これにより、瞳孔測定器具3は、給電用メガネ2から電力の供給を受けることができ、瞳孔に関する測定データを得るための電力として用いることができる。また、瞳孔測定器具3は、この電力を用いることで、測定データを給電用メガネ2へ送信することができる。
図4は、実施例1における給電用メガネ2に備えたデータ処理装置10及びアンテナコイル20の構成例を示す概略図である。後述する実施例2における給電用メガネ5に備えたデータ処理装置80及びアンテナコイル20についても同様の構成である。データ処理装置10及びアンテナコイル20は、接続線21を介して電気信号の入出力を行う。アンテナコイル20は、後述する図5に示すアンテナコイル30と同様に、円または楕円形の外縁に導線が複数回回周して形成され、互いに対向して設けられる。
データ処理装置10は電池を備えており、交流電流を、接続線21を介してアンテナコイル20へ供給する。これにより、アンテナコイル20に交流磁界が発生し、アンテナコイル20から瞳孔測定器具3のアンテナコイル30への電磁誘導により、アンテナコイル30に交流電力が発生し、測定回路40が給電される。
また、データ処理装置10は、瞳孔測定器具3のアンテナコイル30から送信された測定データの変調波形を、アンテナコイル20及び接続線21を介して、供給した交流電流から検出する。これにより、データ処理装置10は変調波形を解析することで、測定データを取得することができる。尚、測定データの変調方式は何でもよい。
図5は、実施例1における瞳孔測定器具3に備えたアンテナコイル30及び測定回路40の構成例を示す概略図である。アンテナコイル30と測定回路40の制御回路41とは、接続線31を介して電気信号の入出力を行う。
前述のとおり、瞳孔測定器具3はコンタクト型に形成されており、その素材は例えばプラスチックであり、アンテナコイル30及び測定回路40が設けられる。瞳孔測定器具3は、外縁側にアンテナコイル30を備え、その内側に制御回路41及び発光素子42等を備えている。
アンテナコイル30は、図4に示したアンテナコイル20に対向して設けられる。また、発光素子42等は、瞳孔測定器具3が瞼101の裏と角膜102との間に装着された状態において、後述するように、ユーザの目100の瞳孔103及び虹彩104等に対向して設けられる。
制御回路41は、アンテナコイル30の電磁誘導により発生した交流電力を、接続線31を介して入力し、交流電力を直流電力に変換し、当該制御回路41及び発光素子42等を動作させ、瞳孔103に関する測定データを取得する。
また、制御回路41は、入力した交流電力の搬送波の反射を、送信対象の測定データに応じて変化させることで、測定データを変調し、測定データの変調信号を、アンテナコイル30及びアンテナコイル20を介してデータ処理装置10へ送信する。この場合、データ処理装置10は、受信した測定データの変調信号を復調する。
尚、アンテナコイル20,30を用いた給電及び測定データの送受信の技術については既知であり、非接触ICカードの動作原理と同様である。例えば以下を参照されたい。
“非接触ICカード技術”、[online]、NTT技術ジャーナル 2008.1、[平成30年8月29日検索]、インターネット<www.ntt.co.jp/journal/0801/files/jn200801071.pdf>
〔瞳孔測定器具3の測定回路40〕
次に、瞳孔測定器具3の測定回路40について詳細に説明する。図6は、瞳孔測定器具3に備えた測定回路40の構成例及び動作例を説明する概略図である。この測定回路40は、制御回路41、複数の発光素子42、複数の受光素子43及び複数のフード(覆い)44を備えている。
発光素子42には、例えばEL(Electroluminescence:エレクトロルミネセンス)素子が用いられ、受光素子43には、例えばCMOSが用いられる。
発光素子42及び受光素子43は、一対の組として(以下、「素子対」という。)複数設けられ、複数の素子対は、ユーザの目100の瞳孔103及び虹彩104(及び後述する白目105)に対向するように設けられている。制御回路41により、素子対による赤外光の発射及び入射の時間差に基づいて、対向する位置の瞳孔103及び瞳孔103以外の部位(虹彩104または後述する白目105)が判断される。
制御回路41は、電源機能、送信機能及び測定機能を有する。制御回路41は、電源機能として、接続線31を介して供給された交流電力を直流電力に変換し、直流電力にて、当該制御回路41、発光素子42及び受光素子43を動作させる。
制御回路41は、送信機能として、以下の処理にて取得した測定データを、接続線31を介して送信する。
制御回路41は、測定機能として、複数の素子対のそれぞれについて順番にまたは一斉に、制御線45を介して発射信号を発光素子42に出力し、発光素子42に発射赤外光α1を角膜102へ出力させる。素子対を駆動する場合の駆動周波数は高いほどよいが、ディスプレイの動作周波数が60Hzであることを考慮して、60Hz以上であればよい。つまり、全ての素子対についての測定周期は1/60秒であればよい。
これにより、発射赤外光α1は、角膜102を介して瞳孔103または虹彩104等へ出力され、瞳孔103から透明の水晶体を通過して奥の網膜等にて反射し、または虹彩104等にて反射し、反射赤外光β1が角膜102を介して戻ってくる。
制御回路41は、受光素子43が反射赤外光β1を受光すると、受光素子43から制御線45を介して、反射信号を入力する。
赤外線を用いるのは、ユーザの目100がこれを感知することなく、反応しないからである。つまり、赤外光は、瞳孔103の動きに影響を与えることはない。
制御回路41は、発射信号のタイミングと反射信号のタイミングとの間の時間差を求め、当該時間差に基づいて、瞳孔領域、虹彩領域及び白目領域を判断し、瞳孔103と虹彩104の間の境界位置を求める。そして、制御回路41は、境界位置から瞳孔103に関する測定データを求め、接続線31を介して送信する。
フード44は、プラスチックまたは金属を用いて筒状に形成され、受光素子43の受光口に設けられている。フード44は、発光素子42から出力された発射赤外光α1に対し、対向する瞳孔103の奥の網膜等または虹彩104等にて反射した反射赤外光β1のみを、対になっている受光素子43へ導くための部材である。
一般に、発光素子42から出力された発射赤外光α1は、瞳孔103の奥の網膜等または虹彩104等に到着するまでに拡散するため、受光素子43は、対向する瞳孔103の奥の網膜等または虹彩104等以外からの反射赤外光β1も入力してしまう。このため、フード44は、対向する位置の瞳孔103の奥の網膜等または虹彩104等以外からの反射赤外光β1を排除し、対向する位置の瞳孔103の奥の網膜等または虹彩104等からの反射赤外光β1のみを受光素子43へ導くために用いられる。
フード44を用いることにより、制御回路41は、素子対について、対向する位置の反射赤外光β1の反射信号を正確に入力し、正確な時間差を求めることができ、結果として精度の高い測定データを得ることができる。
図7は、発光素子42及び受光素子43の配列例を示す図である。発光素子42及び受光素子43は一対の組として、複数の素子対がマトリックス状に配列している。複数の素子対には、それぞれ素子対番号が付されており、素子対番号から、マトリックス状の配列内の位置が一義的に特定される。
尚、図7の配列例では、発光素子42及び受光素子43の素子対が列状に配列している。つまり、縦方向において、複数の発光素子42が同じ列に配置しており、複数の受光素子43も同じ列に配置している。これに対し、発光素子42及び受光素子43の素子対は、縦方向において、発光素子42と受光素子43とが同じ列に交互に配置するようにしてもよい。この場合、発光素子42及び受光素子43は、図7の配列例と同様に、横方向において素子対を構成し、発光素子42の隣に受光素子43を配置する。
複数の素子対におけるそれぞれの間隔(素子対同士の間隔)は一定である。瞳孔径が約2~8mmであり、その測定精度が0.01mmであることを考慮すると、その間隔は、0.01mm以下かつ0.001mm以上であればよい。
図6に示した制御回路41は、素子対毎に順番に発射信号を出力する場合、図7に示した複数の素子対から1つを順次選択する。例えば制御回路41は、図7の配列例において、行毎に左から右へ、かつ上から下へ順番にスキャンするように、素子対を選択する。
〔制御回路41/瞳孔測定器具3〕
次に、図6に示した制御回路41について詳細に説明する。図8は、瞳孔測定器具3の測定回路40に備えた制御回路41の構成例を示すブロック図である。この制御回路41は、電源部50、通信部51、素子対選択駆動部52、時間差算出部53、境界判定部54及び測定データ生成部55を備えている。
電源部50は、アンテナコイル30において電磁誘導により発生した交流電力を直流電力に変換し、当該制御回路41、発光素子42及び受光素子43を動作させる。
通信部51は、電磁誘導によりアンテナコイル30に発生した交流電力の搬送波の反射を、測定データに応じて変化させることで、測定データを変調し、測定データの変調信号を送信する。
尚、制御回路41は、データ処理装置10から送信されたデータを受信する受信部を備えるようにしてもよい。この場合、データ処理装置10は、送信したいデータ(例えば、後述する図9のステップS904にて用いるしきい値)を変調し、電磁誘導を起こす元となる交流電力の搬送波に、データの変調信号を重畳する。データの変調信号が重畳された搬送波は、制御回路41へ供給される交流電力に反映される。そして、制御回路41の受信部は、電磁誘導によりアンテナコイル30に発生した交流電力から、搬送波に重畳されたデータの変調信号を復調し、元のデータを取得する。
素子対選択駆動部52、時間差算出部53、境界判定部54及び測定データ生成部55については、後述する図9~図11を用いて説明する。
図9は、瞳孔測定器具3の測定回路40に備えた制御回路41の処理例を示すフローチャートである。図10は、図9の処理例を補完する図であり、図11は、瞳孔測定器具3における発光素子42からの発射赤外光α1及び受光素子43への反射赤外光β1の時間差を示す図である。
素子対選択駆動部52は、複数の素子対から1つを選択する(ステップS901)。素子対選択駆動部52は、選択した素子対を駆動するための駆動信号を、素子対の発光素子42及び受光素子43に出力する。また、素子対選択駆動部52は、選択した素子対を識別するための素子対情報(素子対番号)を時間差算出部53に出力する。
時間差算出部53は、素子対選択駆動部52から素子対情報を入力し、発射信号を、素子対情報が示す発光素子42に出力し、素子対情報が示す受光素子43から反射信号を入力する(ステップS902)。
これにより、発光素子42は、発射信号を入力すると発射赤外光α1を出力する。そして、発射赤外光α1が瞳孔103の奥の網膜等または虹彩104等にて反射すると、反射赤外光β1が戻ってくる。受光素子43は、反射赤外光β1を入力すると反射信号を時間差算出部53に出力する。
時間差算出部53は、発射信号を出力した出力時刻をメモリに保存しておき、この出力時刻と、反射信号を入力した入力時刻との間の時間差Δtを算出する(ステップS903)。そして、時間差算出部53は、時間差Δtを、素子対情報が示す素子対番号の情報として境界判定部54に出力する。
境界判定部54は、時間差算出部53から素子対情報の時間差Δtを入力し、時間差Δtが予め設定されたしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS904)。
境界判定部54は、ステップS904において、時間差Δtがしきい値以上でないと判定した場合(ステップS904:N)、反射赤外光β1が虹彩104または白目105からの反射光であると判断する。そして、境界判定部54は、素子対番号の素子対に対向する位置には虹彩104または白目105が存在すると判断する(ステップS905)。
一方、境界判定部54は、ステップS904において、時間差Δtがしきい値以上であると判定した場合(ステップS904:Y)、反射赤外光β1が瞳孔103の奥の網膜等からの反射光であると判断する。そして、境界判定部54は、素子対番号の素子対に対向する位置には瞳孔103が存在すると判断する(ステップS906)。
予め設定されたしきい値としては、例えば、対向する位置が虹彩104または白目105のときの時間差Δtと、対向する位置が瞳孔103であるときの時間差Δtとの間の中間値が用いられる。
虹彩104または白目105における時間差Δtは、明らかに、瞳孔103を通過した反射光の時間差Δtよりも短い。瞳孔103への発射赤外光α1は、虹彩104または白目105よりも奥の網膜等にて反射するため、その反射点は、虹彩104または白目105の反射点よりも、発光素子42を基準として遠い位置(奥の位置)にあるからである。したがって、発光素子42が発射赤外光α1を出力してから、受光素子43が反射赤外光β1を入力するまでの時間は、虹彩104または白目105よりも瞳孔103の方が長いこととなる。
図10を参照して、コンタクト型に形成された瞳孔測定器具3が瞼101の裏と角膜102との間に装着された状態において、瞳孔測定器具3は、瞳孔103及び虹彩104を覆うように設けられている。尚、瞳孔測定器具3の面は、目100が動いたとしてもコンタクトレンズと同様にある程度追従するが、瞳孔103及び虹彩104を覆うことが可能なサイズとする。
瞳孔測定器具3の面には、図7に示したように、素子対がマトリックス状に配列されている。素子対を用いることで、対向する瞳孔103と瞳孔103以外の部位(虹彩104または白目105)とが区別して判断される。瞳孔103の領域が瞳孔領域aであり、瞳孔103以外の領域が虹彩領域bまたは白目領域cであり、瞳孔領域aと虹彩領域bとの間が境界d1,d2である。
図11を参照して、1番目の発光素子42-1及び受光素子43-1の素子対についての発射赤外光α1のパルスと反射赤外光β1のパルスとの間の時間差、すなわち発射信号のタイミングと反射信号のタイミングとの間の時間差をΔt1とする。また、2番目の発光素子42-2及び受光素子43-2の素子対からn1番目の発光素子42-n1及び受光素子43-n1の素子対までのそれぞれについての時間差もΔt1とする。さらに、n2番目の発光素子42-n2及び受光素子43-n2の素子対の時間差をΔt2とし、n3番目の発光素子42-n3及び受光素子43-n3の素子対以降のそれぞれの時間差もΔt2とする。n1は2以上の整数、n2=n1+1、n3=n2+1とする。
瞳孔103及び透明の水晶体を通過した光の反射点は、虹彩104または白目105の反射点よりも、発光素子42を基準として遠い位置にあるから、Δt1<Δt2となる。1番目の発光素子42-1及び受光素子43-1の素子対に対向する位置、・・・、及びn1番目の発光素子42-n1及び受光素子43-n1の素子対に対向する位置には虹彩104が存在し、この領域が虹彩領域bとなる。また、n2番目の発光素子42-n2及び受光素子43-n2の素子対に対向する位置、・・・には瞳孔103が存在し、この領域は瞳孔領域aとなる。また、瞳孔領域aと虹彩領域bとの間が境界d1となる。
図9に戻って、境界判定部54は、ステップS905,906から移行して、瞳孔103と虹彩104との間の境界d1,d2を判断し、全ての境界d1,d2(境界となる素子対番号)を取得したか否かを判定する(ステップS907)。つまり、境界判定部54は、マトリックス状に配置された複数の素子対について、横方向の行毎に境界d1,d2を判断し、全ての行について境界d1,d2を取得したか否かを判定する。
境界判定部54は、ステップS907において、全ての境界d1,d2を取得済みでないと判定した場合(ステップS907:N)、次の素子対を選択するための指示を素子対選択駆動部52に出力し、ステップS901へ移行する。
これにより、素子対選択駆動部52は、次の素子対を選択する。そして、時間差算出部53は、時間差Δtを算出し、境界判定部54は、選択した素子対番号の素子対に対向する位置に存在する瞳孔103と虹彩104または白目105とを区別して判断する。
境界判定部54は、ステップS907において、全ての境界d1,d2を取得済みであると判定した場合(ステップS907:Y)、境界d1,d2の位置に対応する素子対番号を境界座標として、全ての境界座標を測定データ生成部55に出力する。
測定データ生成部55は、境界判定部54から全ての境界座標を入力し、全ての境界座標から、瞳孔103に関する測定データを生成し、測定データを通信部51に出力する(ステップS908)。
例えば、測定データ生成部55は、全ての境界座標の点を結ぶことで多角形を形成し、予め設定された複数の形状(既知の形状)と形成した多角形との間でマッチングを行い、多角形の形状を求める。また、測定データ生成部55は、多角形を円形に近似する等して、円形から瞳孔103の径(瞳孔径)を算出する。また、測定データ生成部55は、瞳孔103の形状の中心位置を判断し、その素子対番号を瞳孔中心位置番号として特定する。このように、測定データ生成部55は、瞳孔103の瞳孔径、形状、瞳孔中心位置番号等の瞳孔103に関する測定データを生成する。
尚、瞳孔103に関する測定データには、図9の処理例にて取得した素子対毎の時間差Δt等のデータを含むようにしてもよい。
通信部51は、測定データ生成部55から測定データを入力し、測定データをデータ処理装置10へ送信する(ステップS909)。
以上のように、実施例1の瞳孔測定装置1-1によれば、瞳孔測定器具3は、アンテナコイル30及び測定回路40を備えたコンタクト型の器具であり、ユーザの瞼101の裏と角膜102との間に装着される。測定回路40の制御回路41に備えた電源部50は、電磁誘導によりアンテナコイル30に発生した電力を用いて、当該測定回路40を動作させる。
時間差算出部53は、発射信号を発光素子42に出力し、発光素子42に発射赤外光α1を出力させ、受光素子43が反射赤外光β1を入力すると、受光素子43から反射信号を入力する。そして、時間差算出部53は、発射信号及び反射信号のタイミングの時間差Δtを算出する。
境界判定部54は、時間差Δtがしきい値以上でないと判定した場合、その素子対に対向する位置には虹彩104または白目105が存在すると判断し、時間差Δtがしきい値以上であると判定した場合、その素子対に対向する位置には瞳孔103が存在すると判断する。そして、境界判定部54は、瞳孔103と虹彩104との間の境界座標を求める。
測定データ生成部55は、瞳孔103と虹彩104との間の境界座標から、瞳孔103の瞳孔径、形状、瞳孔中心位置番号の測定データを生成する。通信部51は、電磁誘導により発生した交流電力の搬送波の反射を、測定データに応じて変化させることで、測定データを変調し、測定データの変調信号を送信する。
これにより、赤外線を用いるようにしたから、X線とは異なり測定回数及び測定時間の制限を受けることがない。また、コンタクト型の瞳孔測定器具3を、コンタクトレンズのように、瞼101の裏と角膜102との間に装着するようにしたから、装着状態を長時間維持することが可能となる。つまり、睡眠中であっても装着状態を維持することができ、例えば睡眠中にユーザの顔が動いた場合であっても、装着状態を維持することができるから、長時間の測定が可能となる。
また、瞳孔測定器具3の面を、目100が動いたとしてもある程度追従するが、瞳孔103及び虹彩104を覆うことが可能なサイズとすることで、瞳孔103の動きを継続して測定することができる。
したがって、人間が目を閉じているときであっても、安定的に瞳孔103の動きを測定することができる。
〔実施例2〕
次に、実施例2について説明する。前述のとおり、実施例2は、ユーザの閉眼時に、瞳孔径等に加え瞳孔位置を測定する例である。一般に、瞳孔測定器具は眼球に追従しないで、眼球に対して上下左右及び回転方向にずれてしまう。実施例2では、このような瞳孔測定器具のずれに対応し、瞳孔位置を精度高く測定する。
図12は、実施例2の瞳孔測定装置の全体構成例を説明するイメージ図であり、図13は、実施例2において、ユーザの閉眼時における給電用メガネ及び瞳孔測定器具の使用態様を説明する図である。尚、図12は、全体構成例のイメージを示しており、各構成部の位置を示しているものではない。
この瞳孔測定装置1-2は、ユーザの顔の所定箇所(目に対向した所定箇所)に装着される給電用メガネ(給電用器具)5、ユーザの眼球に装着される瞳孔測定器具6、及びデータ蓄積表示装置4、並びに、ユーザの目元に貼付される目元マーカ61、及びユーザの目尻に貼付される目尻マーカ62を備えて構成される。
給電用メガネ5は、そのフレームに、データ処理装置80、アンテナコイル20及びレーダ探索器70を備えている。図13に示すように、瞼101が閉じており、瞳孔測定器具6が瞼101の裏と角膜との間に装着されている状態において、データ処理装置80、アンテナコイル20及びレーダ探索器70は、瞳孔測定器具6に対向する位置に設けられている。
データ処理装置80は、実施例1のデータ処理装置10と同様に、電池(電源)を備えており、アンテナコイル20を介して瞳孔測定器具6を給電し、瞳孔測定器具6からアンテナコイル20を介して、瞳孔103に関する測定データを受信する。また、データ処理装置80は、レーダ探索器70からマーカ位置に関する測定データ(マーカ位置測定データ)を入力する。そして、データ処理装置80は、実施例1のデータ処理装置10と同様に、データ処理を行い、測定データ等の各種データをデータ蓄積表示装置4へ送信する。
レーダ探索器70は、レーダ機能により、発射電波α2を出力し、反射電波β2を入力することで、目元マーカ61及び目尻マーカ62、並びに後述する瞳孔マーカ60及び回転測定マーカ63-1,63-2の位置をそれぞれ探索する。
レーダ探索器70は、マーカ位置に関する測定データを取得し、測定データをデータ処理装置80に出力する。ここで、マーカ位置に関する測定データは、瞳孔マーカ位置番号、目元マーカ位置番号、目尻マーカ位置番号及び回転測定マーカ位置番号である。
アンテナコイル20は、実施例1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
瞳孔測定器具6は、アンテナコイル30、測定回路40、瞳孔マーカ60及び回転測定マーカ63-1,63-2を備えている。瞳孔測定器具6は、コンタクトレンズと同様の形態のコンタクト型に形成されており、ユーザの目の角膜に接触して取り付けられる。つまり、瞳孔測定器具6は、ユーザの目の瞼の裏と角膜との間に装着される。
アンテナコイル30及び測定回路40は、実施例1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
瞳孔マーカ60は、金属片であり、図13及び後述する図14に示すように、コンタクト型の瞳孔測定器具6の中央位置(測定回路40の中央位置)の表面に、給電用メガネ5のレーダ探索器70に対向して設けられている。コンタクト型の瞳孔測定器具6は、瞳孔103を覆うように装着される。
回転測定マーカ63-1,63-2は、金属片であり、図13及び後述する図14に示すように、コンタクト型の瞳孔測定器具6の両端位置の表面に、給電用メガネ5のレーダ探索器70に対向して設けられている。具体的には、回転測定マーカ63-1,63-2は、後述する図15及び図24に示すように、アンテナコイル30の2か所の端の外側であって、かつ、当該回転測定マーカ63-1,63-2及び瞳孔マーカ60が直線上に配置されるように設けられている。
実施例2では、眼球に装着された瞳孔測定器具6は、眼球の動きに追従しないものとする。つまり、瞳孔103に対する瞳孔測定器具6の相対的な位置は、変化するものとする。瞳孔測定器具6に備えた瞳孔マーカ60は、必ずしも瞳孔103の中心に位置するとは限らない。
尚、図13の例では、図12に示した給電用メガネ5のデータ処理装置80、アンテナコイル20及びレーダ探索器70、並びに瞳孔測定器具6は、左右の両目に対応して2セット設けられているが、一方の目のみに対応して設けられるようにしてもよい。これにより、ユーザは、一方の目を用いて測定が行われ、他方の目にて、通常通りの視界を得ることができる。
また、データ処理装置80、アンテナコイル20及びレーダ探索器70は、給電用メガネ5のフレームに備えるようにした。これに対し、これらのサイズが大きく当該フレームに備えるのが困難な場合は、目を覆うヘッドマウント型の装置に収容するようにしてもよい。
〔給電用メガネ5及び瞳孔測定器具6の構造〕
図14は、実施例2における給電用メガネ5及び瞳孔測定器具6の構造例を示す概略図である。図14に示すように、給電用メガネ5のデータ処理装置80、アンテナコイル20及びレーダ探索器70は、メガネフレーム22に支持されている。データ処理装置80及びアンテナコイル20は、接続線21を介して電気信号の入出力を行う。
給電用メガネ5のデータ処理装置80及びアンテナコイル20の構造は、図3に示した給電用メガネ2のデータ処理装置10及びアンテナコイル20と同様であるから、ここでは説明を省略する。また、瞳孔測定器具6のアンテナコイル30及び測定回路40の構造は、図3に示した瞳孔測定器具3のアンテナコイル30及び測定回路40と同様であるから、ここでは説明を省略する。
レーダ探索器70は、瞳孔マーカ60、アンテナコイル30の外側に設けられた回転測定マーカ63-1,63-2、目元マーカ61及び目尻マーカ62を探索できるように、メガネフレーム22の所定位置に設けられている。
これにより、瞳孔測定器具6は、給電用メガネ5から電力の供給を受けることができ、瞳孔103に関する測定データを得るための電力として用いることができる。また、瞳孔測定器具6は、この電力を用いることで、瞳孔103に関する測定データを給電用メガネ5へ送信することができる。
図15は、実施例2における瞳孔測定器具6に備えたアンテナコイル30、測定回路40、瞳孔マーカ60及び回転測定マーカ63-1,63-2の構成例を示す概略図である。アンテナコイル30及び測定回路40は、図5に示した構成と同様である。瞳孔マーカ60は、測定回路40の中央位置に設けられている。
回転測定マーカ63-1,63-2は、アンテナコイル30の2か所の端の外側であって、かつ、当該回転測定マーカ63-1,63-2及び瞳孔マーカ60が直線上に配置されるように設けられている。
〔給電用メガネ5のレーダ探索器70〕
次に、給電用メガネ5のレーダ探索器70について詳細に説明する。図16は、レーダ探索器70の構成例及び動作例を説明する概略図である。このレーダ探索器70は、制御回路71、電波発信素子72、電波受信素子73及びフード(覆い)74を備えている。
電波発信素子72は、瞳孔マーカ60、目元マーカ61または目尻マーカ62を探索するための電波を発信する素子であり、電波受信素子73は、瞳孔マーカ60、目元マーカ61または目尻マーカ62にて反射した電波を受信する素子である。
電波発信素子72及び電波受信素子73は一対の組として(以下、「電波素子対」という。)複数設けられ、複数の電波素子対は、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62に対向するように設けられている。複数の電波素子対は、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62のそれぞれを探索するための複眼レーダのように、配置される。
制御回路71により、電波素子対による電波の発信及び受信にて得られる受信電波の電波強度に基づいて、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62のそれぞれに対応する電波強度の高い電波素子対が特定される。
制御回路71は、電源機能及び測定機能を有する。制御回路71は、電源機能として、接続線21を介して供給された直流電力にて、当該制御回路71、電波発信素子72及び電波受信素子73を動作させる。
制御回路71は、測定機能として、複数の電波素子対のそれぞれについて順番にまたは一斉に、制御線75を介して発射信号を電波発信素子72に出力する。制御回路71は、発射信号にて、電波発信素子72に発射電波α2を出力させる。電波発信素子72及び電波受信素子73を駆動する場合の駆動周波数は高いほどよいが、図6に示した測定回路40の駆動周波数と同じとし、同期させることが望ましい。
これにより、発射電波α2は、瞳孔マーカ60、目元マーカ61または目尻マーカ62へ出力され、瞳孔マーカ60、目元マーカ61または目尻マーカ62にて反射し、反射電波β2が戻ってくる。
制御回路71は、電波受信素子73が反射電波β2を受信すると、電波受信素子73から制御線75を介して、反射信号を入力する。電波を用いるのは、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62である金属片にて反射させるためである。
制御回路71は、電波受信素子73から反射信号を入力すると、反射信号の電波強度を算出し、この電波強度を、発射信号の出力先である電波発信素子72の電波素子対の番号(電波素子対番号)に対応する電波強度とする。そして、制御回路71は、電波強度の高い電波素子対番号を特定し、マーカ位置に関する測定データとして、接続線21を介してデータ処理装置80に出力する。尚、電波素子対毎に、電波素子対番号が付与されているものとする。
フード74は、金属を用いて筒状に形成され、電波受信素子73の受信口に設けられており、電波発信素子72からの発射電波α2に対応する反射電波β2のみを、電波素子対になっている電波受信素子73へ導くための部材である。
一般に、電波発信素子72から出力された発射電波α2は拡散するため、電波受信素子73は、対向する位置以外からの反射電波β2も入力してしまう。このため、フード74は、対向する位置以外からの反射電波β2を排除し、対向する位置からの反射電波β2のみを電波受信素子73へ導くために用いられる。つまり、フード74は、当該フード74が設けられている電波受信素子73が、対向する(真下の)瞳孔マーカ60、目元マーカ61または目尻マーカ62から、強度の高い反射電波β2を受信できるようにするための部材である。
フード74を用いることにより、制御回路71は、電波素子対について、対向する瞳孔マーカ60、目元マーカ61または目尻マーカ62の反射電波β2の反射信号を正確に入力し、正確な電波強度を求めることができ、結果として精度の高い測定データを得ることができる。
図17は、電波発信素子72及び電波受信素子73の配列例を示す図である。電波発信素子72及び電波受信素子73は一対の組として、複数の電波素子対がマトリックス状に配列している。複数の電波素子対には、それぞれ電波素子対番号が付されており、電波素子対番号から、マトリックス状の配列内の位置が一義的に特定される。
尚、図17の配列例では、電波発信素子72及び電波受信素子73の電波素子対が列状に配列している。つまり、縦方向において、複数の電波発信素子72が同じ列に配置しており、複数の電波受信素子73も同じ列に配置している。これに対し、電波発信素子72及び電波受信素子73の電波素子対は、縦方向において、電波発信素子72と電波受信素子73とが同じ列に交互に配置するようにしてもよい。この場合、電波発信素子72及び電波受信素子73は、図17の配列例と同様に、横方向において電波素子対を構成し、電波発信素子72の隣に電波受信素子73を配置する。
複数の電波素子対におけるそれぞれの間隔(電波素子対同士の間隔)は一定である。図7に示した発光素子42及び受光素子43の配列例と同様に、その間隔は、0.01mm以下かつ0.001mm以上であればよい。
図16に示した制御回路71は、電波素子対毎に順番に発射信号を出力する場合、図17に示した複数の電波素子対から1つを順次選択する。例えば制御回路71は、図17の配列例において、行毎に左から右へ、かつ上から下へ順番にスキャンするように、電波素子対を選択する。
〔制御回路71/給電用メガネ5のレーダ探索器70〕
次に、図16に示した制御回路71について詳細に説明する。図18は、レーダ探索器70に備えた制御回路71の構成例を示すブロック図であり、図19は、制御回路71の処理例を示すフローチャートである。
この制御回路71は、素子対選択駆動部76、電波強度測定部77、測定データ生成部78及び出力部79を備えている。
素子対選択駆動部76は、複数の電波素子対から1つを選択する(ステップS1901)。素子対選択駆動部76は、選択した電波素子対を駆動するための駆動信号を、電波素子対の電波発信素子72及び電波受信素子73に出力する。また、素子対選択駆動部76は、選択した電波素子対を識別するための電波素子対情報(電波素子対番号)を電波強度測定部77に出力する。
電波強度測定部77は、素子対選択駆動部76から電波素子対情報を入力し、発射信号を、電波素子対情報が示す電波発信素子72に出力し、電波素子対情報が示す電波受信素子73から反射信号を入力する(ステップS1902)。
これにより、電波発信素子72は、発射信号を入力すると発射電波α2を出力する。そして、発射電波α2が瞳孔マーカ60等にて反射すると、反射電波β2が戻ってくる。電波受信素子73は、反射電波β2を入力すると反射信号を電波強度測定部77に出力する。
電波強度測定部77は、反射信号から電波強度を算出し(ステップS1903)、これを電波素子対番号の電波強度として測定データ生成部78に出力する。
測定データ生成部78は、電波強度測定部77から電波素子対番号の電波強度を入力する。このようにして、複数の電波素子対番号におけるそれぞれの電波強度が得られる。測定データ生成部78は、周囲よりも電波強度の高い電波素子対番号を特定する(ステップS1904)。
図20は、電波強度分布を示す図である。図20において、枠は、電波素子対に対応する位置を示し、枠内の数値1,2,3は電波強度を示し、数値が大きいほど電波強度が高いものとする。
周囲よりも電波強度の高い(最も高い)電波素子対に対応する位置に、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62のいずれかのマーカが存在する。
測定データ生成部78は、図19のステップS1904において、周囲よりも高い電波強度3を特定し、電波強度3の複数の電波素子対のうち中央の電波素子対を、周囲よりも電波強度の高い電波素子対として特定する(図20の斜線部分)。
図19に戻って、測定データ生成部78は、ステップS1904にて特定した電波素子対番号に対応するマーカ(瞳孔マーカ60、目元マーカ61または目尻マーカ62)を特定する。
例えば、測定データ生成部78は、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62毎に、候補となる電波素子対番号群のグループ(位置情報)を予め設定しておく。レーダ探索器70に備えた複数の電波素子対と、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62とは対向しており、複数の電波素子対から見たそれぞれのマーカの位置は、ほぼ決定されるからである。瞳孔マーカ60は、複数の電波素子対の中央付近に位置し、目元マーカ61は、複数の電波素子対の左側または右側の端付近に位置し、目尻マーカ62は、複数の電波素子対の右側または左側の端付近に位置する。
そして、測定データ生成部78は、特定した電波素子対番号と、予め設定された瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62毎のグループの電波素子対番号群とを比較し、特定した電波素子対番号が属するグループを判断する。測定データ生成部78は、当該グループのマーカを、特定した電波素子対番号に対応するマーカとする。
このように、瞳孔マーカ60、目元マーカ61及び目尻マーカ62のそれぞれについて、マーカ位置を示す電波素子対番号が特定される。この場合、ユーザの目の中心に近い(図17において例えば全ての電波素子対の中央に近い)電波素子対番号が瞳孔マーカ60の電波素子対番号として特定される。また、ユーザの目元に近い(図17において例えば左端中央に最も近い)電波素子対番号が目元マーカ61の電波素子対番号として特定される。また、ユーザの目尻に近い(図17において例えば右端中央に最も近い)電波素子対番号が目尻マーカ62の電波素子特定番号として特定される。
測定データ生成部78は、電波素子対番号に対応するマーカを特定した後、それぞれのマーカの電波素子対番号をマーカ位置番号として、マーカ位置に関する測定データを生成する(ステップS1905)。マーカ位置に関する測定データには、瞳孔マーカ60の電波素子対番号である瞳孔マーカ位置番号、目元マーカ61の電波素子対番号である目元マーカ位置番号及び目尻マーカ62の電波素子対番号である目尻マーカ位置番号が含まれる。測定データ生成部78は、マーカ位置に関する測定データを出力部79に出力する。
出力部79は、測定データ生成部78からマーカ位置に関する測定データを入力し、この測定データをデータ処理装置80に出力する(ステップS1906)。
尚、マーカ位置に関する測定データには、図19の処理例にて取得した電波素子対毎の電波強度等のデータを含むようにしてもよい。
〔給電用メガネ5のデータ処理装置80〕
次に、給電用メガネ5のデータ処理装置80について詳細に説明する。図21は、実施例2におけるデータ処理装置80の入力データを説明する図である。
データ処理装置80は、瞳孔測定器具6の測定回路40から瞳孔103に関する測定データ(瞳孔径、形状、瞳孔中心位置番号等)を受信する。また、データ処理装置80は、レーダ探索器70からマーカ位置に関する測定データ(瞳孔マーカ位置番号、目元マーカ位置番号、目尻マーカ位置番号、回転測定マーカ位置番号等)を入力する。
データ処理装置80は、マーカ位置に関する測定データに含まれる目元マーカ位置番号及び目尻マーカ位置番号に基づいて、目元及び目尻を基準とした基準座標(xy軸)を設定する。
データ処理装置80は、基準座標において、マーカ位置に関する測定データに含まれる瞳孔マーカ位置番号に対応する座標、回転測定マーカ位置番号に対応する座標、及び瞳孔103に関する測定データに含まれる瞳孔中心位置番号に対応する座標に基づいて、瞳孔103の中心座標(瞳孔中心座標P)を算出する。これにより、瞳孔103の瞳孔径、瞳孔中心座標P等のデータを得ることができる。
ここで、瞳孔103に関する測定データに含まれる瞳孔中心位置番号に対応する座標(基準座標における座標)すなわち瞳孔中心座標Pは、瞳孔中心位置番号から直接求めることはできない。しかし、後述する図24を参照して、瞳孔マーカ位置番号に対応する後述するコンタクト座標(uv座標)における位置(瞳孔マーカ座標S(0,0))と基準座標における位置(瞳孔マーカ座標S(X1,Y1))とが同じである。このため、瞳孔マーカ座標S(0,0),S(X1,Y1)から見た瞳孔中心座標Pの位置が基準座標及びコンタクト座標において同じであることから、瞳孔中心座標Pは、これを利用して間接的に求めることができる。詳細については後述する。
図22は、実施例2におけるデータ処理装置80の構成例を示すブロック図であり、図23は、データ処理装置80の処理例を示すフローチャートであり、図24は、図23の処理例を補完する図である。
このデータ処理装置80は、通信部92、入力部93、メモリ94、コンタクト座標処理部95、基準座標処理部96、瞳孔中心座標算出部97及び送信部98を備えている。
コンタクト座標処理部95は、コンタクト座標設定部110、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離算出部111及び瞳孔中心コンタクト角算出部112を備えている。基準座標処理部96は、基準座標設定部113、コンタクト回転角算出部114及び瞳孔マーカ座標算出部115を備えている。
通信部92は、瞳孔測定器具6の測定回路40から瞳孔103に関する測定データの変調信号を受信する受信部として機能し、瞳孔103に関する測定データをメモリ94に格納すると共に、コンタクト座標処理部95に出力する。また、入力部93は、レーダ探索器70からマーカ位置に関する測定データを入力し、マーカ位置に関する測定データをメモリ94に格納すると共に、コンタクト座標処理部95及び基準座標処理部96に出力する(ステップS2301)。
コンタクト座標処理部95は、通信部92から瞳孔103に関する測定データを入力すると共に、入力部93からマーカ位置に関する測定データを入力する。
コンタクト座標処理部95のコンタクト座標設定部110は、コンタクト座標(uv座標)の設定処理を行う(ステップS2302)。
具体的には、コンタクト座標設定部110は、マーカ位置に関する測定データに含まれる瞳孔マーカ位置番号及び回転測定マーカ位置番号の位置の座標を結んだ軸をu軸に設定する。また、コンタクト座標設定部110は、瞳孔マーカ位置番号の位置の座標をS(0,0)とし、この座標S(0,0)から、u軸に対して垂直に伸ばした軸をv軸に設定する。これにより、図24の上図に示すように、瞳孔マーカ座標S(0,0)を原点とするu軸及びv軸からなるコンタクト座標が設定される。
前述のとおり、図17に示した複数の電波素子対のそれぞれには、予め電波素子対番号が設定されており、瞳孔マーカ位置番号及び回転測定マーカ位置番号のそれぞれの位置が判断される。
瞳孔中心/瞳孔マーカ距離算出部111は、コンタクト座標において、瞳孔中心座標P(u1,v1)と瞳孔マーカ座標S(0,0)との間の距離(瞳孔中心/瞳孔マーカ距離)e1を算出する(ステップS2303)。
具体的には、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離算出部111は、瞳孔103に関する測定データに含まれる瞳孔中心位置番号から、瞳孔マーカ座標S(0,0)に対応する素子番号の位置を基準として、当該瞳孔中心位置番号の位置の座標を求め、これを瞳孔中心座標P(u1,v1)とする。そして、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離算出部111は、瞳孔中心座標P(u1,v1)を用いて、以下の式にて、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離e1を算出する。
〔数1〕
e1=√(u12+v12) ・・・(1)
瞳孔中心コンタクト角算出部112は、瞳孔中心座標P(u1,v1)と瞳孔マーカ座標S(0,0)とを結んだ線と、u軸との間の角度(瞳孔中心コンタクト角)θ2を算出する(ステップS2304)。
具体的には、瞳孔中心コンタクト角算出部112は、瞳孔中心座標P(u1,v1)を用いて、以下の式にて、瞳孔中心コンタクト角θ2を算出する。
〔数2〕
θ2=tan-1(v1/u1) ・・・(2)
コンタクト座標処理部95は、瞳孔中心コンタクト角θ2を基準座標処理部96に出力すると共に、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離e1及び瞳孔中心コンタクト角θ2を瞳孔中心座標算出部97に出力する。
基準座標処理部96は、入力部93からマーカ位置に関する測定データを入力すると共に、コンタクト座標処理部95から瞳孔中心コンタクト角θ2を入力する。
基準座標処理部96の基準座標設定部113は、基準座標(xy座標)の設定処理を行う(ステップS2305)。
図25は、基準座標を説明する図である。図25において、枠は、電波素子対に対応した座標面上の位置を示している。具体的には、基準座標設定部113は、マーカ位置に関する測定データに含まれる目元マーカ位置番号の位置の座標(目元マーカ座標MM)と、目尻マーカ位置番号の位置の座標(目尻マーカ座標MZ)とを結んだ軸をx軸に設定する。尚、目元マーカ座標MM、目尻マーカ座標MZ及び瞳孔マーカ座標S(x1,y1)の位置は、説明のための便宜的な位置である。瞳孔マーカ座標S(x1,y1)は、後述するステップS2307にて求められる。
また、基準座標設定部113は、目元マーカ座標MMと目尻マーカ座標MZとの間の中央位置M0から、x軸に垂直に伸ばした軸をy軸に設定する。これにより、図24の上図に示すように、x軸及びy軸からなる基準座標が設定される。中央位置M0(0,0)は、基準座標の原点である。
前述のとおり、図17に示した複数の電波素子対のそれぞれには、予め電波素子対番号が設定されており、目元マーカ位置番号及び目尻マーカ位置番号のそれぞれの位置が判断される。
図22、図23及び図24に戻って、コンタクト回転角算出部114は、基準座標に対するコンタクト座標の回転角度(コンタクト回転角)θ1を算出する(ステップS2306)。コンタクト回転角θ1は、目元マーカ61及び目尻マーカ62の位置を基準とする瞳孔測定器具6の回転角度である。
具体的には、コンタクト回転角算出部114は、マーカ位置に関する測定データに含まれる回転測定マーカ位置番号の位置の座標を求め、これらを回転マーカ座標Q1(x2,y2),Q2(x3,y3)とする。そして、コンタクト回転角算出部114は、回転マーカ座標Q1(x2,y2),Q2(x3,y3)を用いて、以下の式にて、コンタクト回転角θ1を算出する。
〔数3〕
θ1=tan-1((y3-y2)/(x3-x2)) ・・・(3)
尚、コンタクト回転角算出部114は、2点の回転マーカ座標Q1(x2,y2),Q2(x3,y3)を用いる代わりに、2点の瞳孔マーカ座標S(x1,y1)及び回転マーカ座標Q1(x2,y2)またはQ2(x3,y3)を用いるようにしてもよい。瞳孔マーカ座標S(x1,y1)は、瞳孔測定器具6の中心に備えた瞳孔マーカ60の座標であり、後述するステップS2307にて求められる。
瞳孔マーカ座標S(x1,y1)及び回転マーカ座標Q1(x2,y2)を用いる場合、以下の式にてコンタクト回転角θ1が算出される。
〔数4〕
θ1=tan-1((y1-y2)/(x1-x2)) ・・・(4)
瞳孔マーカ座標S(x1,y1)及び回転マーカ座標Q2(x3,y3)を用いる場合、以下の式にてコンタクト回転角θ1が算出される。
〔数5〕
θ1=tan-1((y3-y1)/(x3-x1)) ・・・(5)
瞳孔マーカ座標算出部115は、基準座標において、マーカ位置に関する測定データに含まれる瞳孔マーカ位置番号の位置の座標を求め、これを瞳孔マーカ座標S(x1,y1)とする(ステップS2307)。
基準座標処理部96は、コンタクト回転角θ1及び瞳孔マーカ座標S(x1,y1)を瞳孔中心座標算出部97に出力する。
瞳孔中心座標算出部97は、コンタクト座標処理部95から瞳孔中心/瞳孔マーカ距離e1及び瞳孔中心コンタクト角θ2を入力すると共に、基準座標処理部96からコンタクト回転角θ1及び瞳孔マーカ座標S(x1,y1)を入力する。
瞳孔中心座標算出部97は、基準座標において、瞳孔中心座標P(x4,y4)と瞳孔マーカ座標S(x1,y1)との間におけるx成分の距離(瞳孔中心/瞳孔マーカx成分距離)e2及びy成分の距離(瞳孔中心/瞳孔マーカy成分距離)e3を算出する(ステップS2308)。
具体的には、瞳孔中心座標算出部97は、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離e1、コンタクト回転角θ1及び瞳孔中心コンタクト角θ2を用いて、以下の式にて、瞳孔中心/瞳孔マーカx成分距離e2及び瞳孔中心/瞳孔マーカy成分距離e3を算出する。
〔数6〕
e2=e1×cos(θ1+θ2)
e3=e1×sin(θ1+θ2) ・・・(6)
瞳孔中心座標算出部97は、基準座標において、瞳孔中心座標P(x4,y4)を算出し、瞳孔中心座標P(x4,y4)をメモリ94に格納する(ステップS2309)。
具体的には、瞳孔中心座標算出部97は、瞳孔マーカ座標S(x1,y1)及び瞳孔中心/瞳孔マーカx成分距離e2及び瞳孔中心/瞳孔マーカy成分距離e3を用いて、以下の式にて、瞳孔中心座標P(x4,y4)を算出する。
〔数7〕
(x4,y4)=((x1+e2),(y1+e3)) ・・・(7)
これにより、目元マーカ61及び目尻マーカ62の位置を基準とした基準座標において、瞳孔103の中心位置の座標である瞳孔中心座標P(x4,y4)が測定される。
送信部98は、メモリ94から瞳孔103に関する測定データ、マーカ位置に関する測定データ及び瞳孔中心座標P(x4,y4)を読み出し、例えば時系列の測定データ等として、データ蓄積表示装置4へ送信する(ステップS2310)。
ここで、ユーザの顔に対してレーダ探索器70が移動した場合であっても(給電用メガネ5が移動した場合であっても)、ユーザの顔に対して目元マーカ61及び目尻マーカ62は移動することはない。目元マーカ61及び目尻マーカ62は、顔が動いていない状態において、目を開閉しても基本的には移動することがなく、給電用メガネ5が顔上を移動しても移動することがないからである。
したがって、レーダ探索器70が移動し、電波素子対の位置が移動した場合であっても、目元マーカ61及び目尻マーカ62の位置を基準とした基準座標において、瞳孔マーカ座標S(x1,y1)は変化しない。結果として、瞳孔中心座標P(x4,y4)は変化しない。
また、コンタクト型の瞳孔測定器具6が眼球上を移動した場合には、眼球に対して上下左右方向の移動に対し、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離e1が算出され、眼球に対して回転方向の移動に対し、コンタクト回転角θ1及び瞳孔中心コンタクト角θ2が算出される。そして、瞳孔中心座標P(x4,y4)が算出される。
尚、図24に示したuv軸のコンタクト座標及びxy軸の基準座標は、素子対及び電波素子対に対応する位置を1目盛りとすることが望ましい。例えば、素子対及び電波素子対の間隔が0.01mmの場合、1目盛りのサイズは0.01mmとなる。また、コンタクト座標は、素子対に対応する位置を複数目盛りとしてもよい。基準座標は、電波素子対に対応する位置を複数目盛りとしてもよい。
コンタクト座標及び基準座標の目盛りのサイズが異なる場合であっても、以下のとおり、コンタクト座標における所定位置の座標(uu,vv)を、基準座標における所定位置の座標(xx,yy)に換算することができる。
基準座標の目盛りのサイズとコンタクト座標の目盛りのサイズとの比をRとする。
〔数8〕
R=(基準座標の目盛りのサイズ)/(コンタクト座標の目盛りのサイズ)
・・・(8)
基準座標における所定位置の座標(xx,yy)は、目盛りサイズの比R、及びコンタクト座標における所定位置の座標(uu,vv)を用いて、以下の式にて算出される。
〔数9〕
(xx,yy)=(uu/R,vv/R) ・・・(9)
以上のように、実施例2の瞳孔測定装置1-2によれば、瞳孔測定器具6に備えた測定回路40は、瞳孔103に関する測定データ(瞳孔径、形状、瞳孔中心位置番号等)をデータ処理装置80へ送信する。
給電用メガネ5のレーダ探索器70に備えた制御回路71は、発射信号を電波発信素子72に出力し、電波発信素子72に発射電波α2を出力させ、電波受信素子73が反射電波β2を受信すると、電波受信素子73から反射信号を入力する。そして、制御回路71は、反射信号の電波強度を算出し、周囲よりも電波強度の高い電波素子対番号を特定し、当該電波素子対番号に対応するマーカを特定する。制御回路71は、マーカ位置に関する測定データ(瞳孔マーカ位置番号、目元マーカ位置番号、目尻マーカ位置番号、回転測定マーカ位置番号等)をデータ処理装置80に出力する。
給電用メガネ5のデータ処理装置80に備えたコンタクト座標設定部110は、マーカ位置に関する測定データに含まれる瞳孔マーカ位置番号及び回転測定マーカ位置番号に基づいて、コンタクト座標を設定する。そして、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離算出部111は、コンタクト座標において、瞳孔103に関する測定データに含まれる瞳孔中心位置番号から瞳孔中心座標P(u1,v1)を求め、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離e1を算出する。瞳孔中心コンタクト角算出部112は、瞳孔中心座標P(u1,v1)から瞳孔中心コンタクト角θ2を算出する。
基準座標設定部113は、マーカ位置に関する測定データに含まれる目元マーカ位置番号及び目尻マーカ位置番号に基づいて基準座標を設定する。そして、コンタクト回転角算出部114は、マーカ位置に関する測定データに含まれる回転測定マーカ位置番号から回転マーカ座標Q1(x2,y2),Q2(x3,y3)を求め、コンタクト回転角θ1を算出する。
瞳孔マーカ座標算出部115は、基準座標において、マーカ位置に関する測定データに含まれる瞳孔マーカ位置番号から瞳孔マーカ座標S(x1,y1)を求める。そして、瞳孔中心座標算出部97は、瞳孔中心/瞳孔マーカ距離e1、コンタクト回転角θ1、瞳孔中心コンタクト角θ2及び瞳孔マーカ座標S(x1,y1)から、前記式(6)(7)にて、瞳孔中心座標P(x4,y4)を算出する。
これにより、実施例1と同様に、瞳孔径及び瞳孔103の形状等を測定することができる。さらに、目元マーカ61及び目尻マーカ62を基準とした基準座標において、瞳孔中心座標P(x4,y4)を測定することができる。したがって、人間が目を閉じており、コンタクト型の瞳孔測定器具6が眼球上を移動する場合であっても、安定的に瞳孔103の動きを測定することができる。
以上、実施例1,2を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1,2に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、実施例1,2は、人間が目を閉じている閉眼時に適用されるが、目を開けている開眼時にも適用される。
また、実施例1,2において、瞳孔測定器具3,6の測定回路40に備えた境界判定部54は、発射信号と反射信号との間のタイミングの時間差Δtに基づいて、素子対に対向する位置に存在する瞳孔103と瞳孔103以外の部位とを区別して判断するようにした。
これに対し、境界判定部54は、時間差Δtに予め設定された定数を乗算して距離を求め、距離に基づいて、素子対に対向する位置に存在する瞳孔103と瞳孔103以外の部位とを区別して判断するようにしてもよい。距離は、素子対の位置から瞳孔103の奥の網膜等の反射点までの間の長さである。
この場合、境界判定部54は、算出した距離が予め設定されたしきい値以上であるか否かを判定し、距離がしきい値以上でないと判定した場合、対向する位置には虹彩104または白目105が存在すると判断する。一方、境界判定部54は、距離がしきい値以上であると判定した場合、対向する位置には瞳孔103が存在すると判断する。予め設定されたしきい値としては、例えば、素子対の位置から、虹彩104または白目105の反射点までの間の距離と、瞳孔103の奥の網膜等の反射点までの間の距離との中間値が用いられる。
また、実施例1,2において、瞳孔測定器具3,6の測定回路40はフード44を備えるようにしたが、フード44を備えていなくてもよい。また、実施例2において、給電用メガネ5のレーダ探索器70は、フード74を備えるようにしたが、フード74を備えていなくてもよい。
また、実施例1,2において、給電用メガネ2,5は、通常のメガネと同じ形態をしているものとして説明したが、メガネではなくアイマスクであってもよい。つまり、給電用メガネ2,5の形態は、瞳孔測定器具3,6を給電し、瞳孔測定器具3,6から測定データを受信してデータ処理が可能であれば、メガネ以外であっても構わない。
また、実施例1,2において、瞳孔測定器具3,6の測定回路40に備えた制御回路41は、素子対毎に時間差Δtを算出し、瞳孔103と虹彩104等との境界を判定するようにした。そして、制御回路41は、瞳孔103に関する測定データを生成してデータ処理装置10,80へ送信する。
これに対し、制御回路41は、境界を判定することなく、素子対毎の素子対番号及び時間差Δtを、データ処理装置10,80へ送信するようにしてもよい。この場合、制御回路41は、図8に示した電源部50、通信部51、素子対選択駆動部52及び時間差算出部53を備え、データ処理装置10,80は、図8に示した境界判定部54及び測定データ生成部55の機能を有する。
つまり、データ処理装置10,80は、素子対毎の素子対番号及び時間差Δtを受信し、素子対毎の素子対番号及び時間差Δtに基づいて、瞳孔103と虹彩104等との境界を判定し、瞳孔103に関する測定データを生成する。
また、実施例2において、給電用メガネ5のレーダ探索器70に備えた制御回路71は、周囲よりも電波強度が高い電波素子対番号を特定し、当該電波素子対番号に対応するマーカを特定するようにした。そして、制御回路71は、特定したマーカに対応する電波素子対番号を瞳孔マーカ位置番号等とし、マーカ位置に関する測定データを生成してデータ処理装置80へ出力する。
これに対し、制御回路71は、周囲よりも電波強度が高い電波素子対番号を特定することなく、電波素子対毎の電波強度をデータ処理装置80へ出力するようにしてもよい。この場合、制御回路71は、図18に示した素子対選択駆動部76、電波強度測定部77及び出力部79を備え、データ処理装置80は、図18に示した測定データ生成部78の機能を有する。
つまり、データ処理装置80は、電波素子対毎の電波強度を入力し、電波素子対毎の電波強度に基づいて、周囲よりも電波強度が高い電波素子対番号を特定し、当該電波素子対番号に対応するマーカを特定し、マーカ位置に関する測定データを生成する。そして、データ処理装置80は、実施例2に示した処理を行う。
また、実施例2において、瞳孔測定器具6の測定回路40の中央位置に設けられた瞳孔マーカ60、及び瞳孔測定器具6の測定回路40の両端に設けられた回転測定マーカ63-1,63-2は、瞳孔測定器具6が眼球と共に動いたり、給電用メガネ5が顔に対して動いたりすることで、レーダ探索器70の探索範囲から外れてしまうことがあり得る。この場合、レーダ探索器70が、図15に示した瞳孔測定器具6のアンテナコイル30の位置を探索できることを利用して、データ処理装置80は、アンテナコイル30の位置から、探索範囲外の瞳孔マーカ60等の位置を推定する。
例えば、データ処理装置80は、瞳孔マーカ60等の位置とアンテナコイル30の形状との関係(方向、距離等)を示す定義データを予め設定しておく。データ処理装置80は、レーダ探索器70により瞳孔マーカ60等の電力強度が算出されない場合、レーダ探索器70から、瞳孔マーカ60等の電力強度が算出不可であることを示すデータ及びアンテナコイル30付近の電波強度を入力する。
データ処理装置80は、算出不可であることを示すデータを入力すると、瞳孔マーカ60等が探索範囲外に位置すると判断する。データ処理装置80は、アンテナコイル30付近の電波強度に基づいて、探索範囲内のアンテナコイル30の形状、及びその位置の電波素子対番号を特定する。データ処理装置80は、アンテナコイル30の位置の電波素子対番号に対応する、基準座標におけるアンテナコイル30の座標を特定する。データ処理装置80は、予め設定された定義データを用いて、アンテナコイル30の形状に対応する瞳孔マーカ60等の種類及び位置を特定し、基準座標において、アンテナコイル30の座標に対応する瞳孔マーカ座標S(x1,y1)等を推定する。
また、実施例2において、瞳孔測定器具6は、アンテナコイル30の端の外側に2個の回転測定マーカ63-1,63-2を備えるようにした。これに対し、瞳孔測定器具6は、1個の回転測定マーカ63-1または63-2を備えるようにしてもよい。
この場合、データ処理装置80のコンタクト座標処理部95に備えたコンタクト座標設定部110は、マーカ位置に関する測定データに含まれる瞳孔マーカ位置番号及び回転測定マーカ63-1または63-2の回転測定マーカ位置番号の位置の座標を結んだ軸をu軸に設定する。そして、コンタクト座標設定部110は、瞳孔マーカ位置番号の位置の座標S(0,0)から、u軸に対して垂直に伸ばした軸をv軸に設定することで、コンタクト座標を設定する。
また、コンタクト回転角算出部114は、コンタクト回転角θ1を算出する際に、マーカ位置に関する測定データに含まれる瞳孔マーカ位置番号に対応する瞳孔マーカ座標S(x1,y1)、及びマーカ位置に関する測定データに含まれる回転測定マーカ位置番号に対応する回転マーカ座標Q1(x2,y2)またはQ2(x3,y3)を用いて、前記式(4)または(5)にて演算を行う。
この場合の瞳孔マーカ座標S(x1,y1)は、瞳孔マーカ座標算出部115により、図23に示したステップS2307の処理にて既に算出されているものとする。
実施例2では、2個の回転測定マーカ63-1,63-2を用いることにより、精度の高いコンタクト座標を設定し、精度の高いコンタクト回転角θ1を算出することができる。結果として、精度の高い瞳孔中心座標P(x4,y4)を算出することができる。
これに対し、1個の回転測定マーカ63-1または63-2を用いることにより、簡易かつ低廉な構成にて、瞳孔中心座標P(x4,y4)を算出することができる。
また、瞳孔測定器具6が1個の回転測定マーカ63-1または63-2を備える場合には、回転測定マーカ63-1または63-2は、瞳孔マーカ60との間で直線を構成できる位置であればどこでもよい。