JP7279853B2 - レーザー脱離イオン化質量分析装置及びレーザーパワー調整方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization:MALDI)法などの、レーザー光を試料に照射することにより該試料中の化合物をイオン化するイオン源を搭載したレーザー脱離イオン化質量分析装置、及び、該質量分析装置におけるレーザーパワーの調整方法に関する。
MALDIイオン源を搭載した質量分析装置(以下「MALDI質量分析装置」という)では、解析対象である試料とマトリックス(Matrix)と呼ばれるイオン化補助剤とを混合することで調製したサンプルに、レーザー光を短時間照射することにより該サンプル中の試料成分を気化させつつイオン化する。そうして発生させた試料成分由来のイオンを飛行時間型質量分離器やイオントラップ型質量分離器に導入し、該イオンを質量電荷比(厳密には斜体字の「m/z」であるが、慣用に従って「質量電荷比」又は「m/z」と記す)に応じて分離して検出する。
また、MALDI法以外にも、レーザー脱離イオン化(Laser Desorption/Ionization:LDI)法、表面支援レーザー脱離イオン化(Surface Assisted Laser Desorption/Ionization:SALDI)法など、レーザー光を試料に照射することで該試料中の分析対象物をイオン化する手法がいくつか知られている。
MALDI質量分析装置において得られるマススペクトルの品質は、試料の成分濃度、使用するマトリックスの種類、イオン化用のレーザー光源の劣化状態、イオン検出器の劣化状態など、様々な要因によって変化する。試料に照射されるレーザー光の強度(レーザーパワー)は、マススペクトルの品質に大きな影響を及ぼす要因の一つであり、レーザーパワーが試料分子におけるイオン化の閾値以下であると、その試料分子はイオン化しない。また、逆にレーザーパワーが過大であると、試料分子が熱分解してしまったり、質量分解能が低下したりする、などの問題が生じる(非特許文献1など参照)。
試料分子を効率よくイオン化するための適切なレーザーパワー値は、マトリックスの種類によっても異なる。例えば、MALDI法で頻用されるマトリックスであるDHB(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)では、適切なイオン化のために、CHCA(α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)よりも高いレーザーパワーを必要とするのが一般的である。
このように、使用するマトリックスの種類等の様々な条件によって、レーザーパワーの最適値は異なる。そのため、MALDI質量分析装置を用いた分析では、通常、目的試料の分析に先立って、その分析に使用するのと同じ種類のマトリックスを用いて調製された試料に対する予備的な分析が実施され、その結果に基いて適切なレーザーパワーが決定される。こうしたレーザーパワーの調整は、表示画面上に表示されたマススペクトルをオペレーターが目視で確認しながら手作業で行うのが一般的である。
高橋豊、ほか1名、「有機質量分析」、日本分析化学会、ぶんせき、2007年7号、p.328-335、([online]、[2020年1月29日検索]、インターネット<URL: https://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2007/200707nyumon.PDF>)
しかしながら、上述したような手作業によるレーザーパワー調整では、レーザーパワーの設定値がオペレーターの主観に左右される。そのため、オペレーターによって選択する値が異なり、その結果、目的試料に対して得られるマススペクトルがオペレーターによって異なるものとなる可能性がある。また、通常、測定バッチ毎にマトリックスの種類等の分析条件が異なる可能性があるため、レーザーパワーの調整作業は測定バッチ毎に行う必要がある。そのため、測定バッチの数が多いと、オペレーターによる上記調整作業はかなり煩雑であり、人的コストの増加に繋がるとともに測定効率の低下にも繋がる。
本発明はこうした課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、良好なマススペクトルを取得することが可能である適切なレーザーパワーを、自動的に且つ客観的に決定することができるレーザー脱離イオン化質量分析装置及びレーザーパワー調整方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係るレーザー脱離イオン化質量分析装置の一態様は、
試料にレーザー光を照射し該試料中の成分をイオン化するイオン源と、
前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、
同一の試料に対し前記レーザー光のレーザーパワーをn段階(nは3以上の整数)に変化させつつ、該試料中の特定の成分由来のイオンの信号強度を取得するように、前記イオン源及び前記質量分析部をそれぞれ制御する分析制御部と、
前記分析制御部による制御の下で得られた、n個の信号強度又はその信号強度から求まるSN比である信号値と、レーザーパワーとの関係をプロットした2軸のグラフにおいて、レーザーパワー軸方向に隣接する二つのプロット点を結ぶ直線の傾きをそれぞれ計算し、プロット点毎に、その前方側の直線の傾きである前傾値と後方側の直線の傾きである後傾値との比を反映した指標値を求め、該指標値を利用して適切なレーザーパワーを選定する処理部と、
を備える。
また本発明に係るレーザーパワー調整方法の一態様は、上記態様のレーザー脱離イオン化質量分析装置におけるイオン化用のレーザーパワーの調整方法であって、
同一の試料に対しレーザーパワーをn段階(nは3以上の整数)に変化させつつ、該試料中の特定の成分由来のイオンの信号強度を取得する測定ステップと、
前記測定ステップにおいて得られた、n個の信号強度又はその信号強度から求まるSN比である信号値と、レーザーパワーとの関係をプロットした2軸のグラフにおいて、レーザーパワー軸方向に隣接する二つのプロット点を結ぶ直線の傾きをそれぞれ計算し、プロット点毎に、その前方側の直線の傾きである前傾値と後方側の直線の傾きである後傾値との比を反映した指標値を求め、該指標値を利用して適切なレーザーパワーを選定する処理ステップと、
を有する。
上記「レーザー脱離イオン化」法は、上述した、MALDI、LDI、SALDIなどを含み、さらにまた、レーザー光を試料に照射することにより該試料中の成分をイオン化する全てのイオン化法を含む。
本発明に係る上記態様のレーザー脱離イオン化質量分析装置及び上記態様のレーザーパワー調整方法では、試料に対する実際の分析結果に基いて、高感度又は高精度の分析が実施できるような適切なレーザーパワーが、オペレーター等の人間の判断に頼らず、客観的な基準で以て決定される。そのため、本発明に係る上記態様の装置及び方法によれば、分析に際して設定されるレーザーパワーがオペレーターによって異なることがなく、信頼性の高い良好なマススペクトルを安定的に取得することができる。また、実質的に人手を介さずに適切なレーザーパワーを決定することができるので、人的コストを削減し分析効率を改善することができる。また、本発明に係る上記態様の装置及び方法は、分析を自動化するのにも有利である。さらにまた、本発明に係る上記態様の装置及び方法では、適切なレーザーパワーを決定する際の手順が人間の一般的な判断基準に近いため、決定されたレーザーパワー値についてオペレーターが違和感を持つことが少なく受け容れ易い、という利点もある。
本発明の一実施形態であるMALDI-TOFMSの要部の構成図。 本実施形態のMALDI-TOFMSにおけるレーザーパワー調整手順を示すフローチャート。 実測結果に基くレーザーパワーとSN比との関係の一例を示すグラフ。 図3に示したグラフから計算される前傾値及び後傾値に基く指標値を示す図。 実測結果に基くレーザーパワーとSN比との関係の他の例を示すグラフ。 図5に示したグラフから計算される前傾値及び後傾値に基く指標値を示す図。 実測結果に基くレーザーパワーとSN比との関係の他の例を示すグラフ。 図7に示したグラフから計算される前傾値及び後傾値に基く指標値を示す図。 本実施形態のMALDI-TOFMSにおけるレーザーパワー決定メソッド作成画面の一例を示す図。 図9中の一部表示の拡大図。 本実施形態のMALDI-TOFMSにおけるレーザーパワー決定解析実行画面の一例を示す図。 本実施形態のMALDI-TOFMSにおけるレーザーパワー調整手順の改良例を示すフローチャート。 本実施形態のMALDI-TOFMSにおけるレーザーパワー調整手順の改良例を示すフローチャート。 実測結果に基くレーザーパワーとSN比との関係の一例を示すグラフ。 図14に示したグラフから計算される前傾値及び後傾値に基く指標値、並びに、改良例の手順で得られる各数値を示す図。 実測結果に基くレーザーパワーとSN比との関係の他の例を示すグラフ。 図16に示したグラフから計算される前傾値及び後傾値に基く指標値、並びに、改良例の手順で得られる各数値を示す図。
以下、本発明に係るレーザー脱離イオン化質量分析装置の一実施形態であるマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOFMS)について、添付図面を参照しつつ説明する。
[本実施形態のMALDI-TOFMSの構成]
図1は、本実施形態のMALDI-TOFMSの概略構成図である。この装置の測定部は、MALDIイオン源とリニア型の飛行時間型質量分離器とを組み合わせたものである。
図1に示すように、本実施形態のMALDI-TOFMSは、測定部1、制御・処理部2、操作部3、及び表示部4、を含む。測定部1において、真空ポンプ11により真空排気されるチャンバー10の内部には、サンプルプレート13が保持される試料ステージ12と、引出電極14と、加速電極15と、内部に飛行空間を形成するフライトチューブ18と、イオン検出器19と、が配置されている。チャンバー10の壁面には透明な窓10aが設けられ、その窓10aを挟んで、チャンバー10の外側にレーザー照射部16、内側にミラー17が配置されている。レーザー照射部16及びミラー17はイオン化部を構成する。
測定部1における上記各部の位置関係を分かり易く示すために、便宜的に、互いに直交するX、Y、Zの3軸を空間内に定めている。試料ステージ12は、モーター等を含むステージ駆動部100によって、X軸及びY軸の2軸方向にそれぞれ移動自在である。
制御・処理部2は、特徴的な機能ブロックとして、データ収集部20、レーザーパワー最適化処理部21、レーザーパワー決定メソッド作成部22、レーザーパワー決定メソッド記憶部23、レーザーパワー決定制御部24、などを含む。
レーザーパワー最適化処理部21は、下位の機能ブロックとして、SN比計算部211、最適レーザーパワー探索部212、レーザーパワー決定部213、などを含む。また、制御・処理部2には、ユーザーインターフェイスである操作部3及び表示部4が接続されている。
一般に、制御・処理部2はパーソナルコンピューターやワークステーションなどのコンピューターを中心に構成され、該コンピューターにインストールされた専用のソフトウェア(コンピュータープログラム)を該コンピューターで実行することにより、上記機能ブロックが具現化されるものとすることができる。その場合、操作部3はコンピューターに付設されたキーボードやポインティングデバイスであり、表示部4はディスプレイモニターである。
[本実施形態のMALDI-TOFMSの測定動作]
本実施形態のMALDI-TOFMSにおける一般的な測定動作は次の通りである。
測定対象であるサンプルは、平板状であるサンプルプレート13の上に形成される。サンプルプレート13はステンレス等の金属製であり、その上面には上面視円形状であるウェルがM行×N列(M、Nともに正の整数)に設けられている。その各ウェルの内側に、試料とマトリックスとを混合することで調製されたサンプルが形成される。サンプルの調製方法は特に限定されない。マトリックスは試料の種類等に応じて適宜に選択される。
各ウェル内にそれぞれサンプルが形成されたサンプルプレート13は、図1中に示すように、試料ステージ12の上に載置される。サンプルプレート13が載置され、オペレーターが操作部3から所定の操作を行うと、制御・処理部2の制御の下で、チャンバー10の内部が真空ポンプ11により真空排気され、測定が実施される。
即ち、レーザー照射部16は、レーザー光を短時間出射する。出射されたレーザー光は図1中に点線で示すように窓10aを通過し、ミラー17に当たって下方に反射され、サンプルプレート13上のサンプルの一つに照射される。上述したように、試料ステージ12はステージ駆動部100によってX軸、Y軸の2軸方向に移動可能であり、その移動によって、レーザー光の照射位置は調整される。
レーザー光の照射を受けて、サンプル中の試料成分は気化しイオン化される。発生した試料由来のイオンは、電源部(図示せず)から引出電極14に印加される直流電圧によって形成される電場の作用で、サンプルプレート13の表面近傍から概ねZ軸の正方向に引き出される。このイオンは加速電極15まで達し、電源部から加速電極15に印加されている電圧により形成される加速電場の作用で、運動エネルギーを付与される。それによって、イオンはZ軸の正方向に加速され、フライトチューブ18の内部の無電場及び無磁場の飛行空間に導入される。この飛行空間内を飛行する間にイオンは質量電荷比に応じて分離され、質量電荷比が相違するイオンは時間的にずれてイオン検出器19に到達する。
イオン検出器19は到達するイオンを検出し、そのイオンの量に応じた検出信号を生成して出力する。データ収集部20は、この検出信号を受けてデジタルデータに変換し、得られたデータに対応する飛行時間を質量電荷比に換算することでマススペクトルを作成する。通常、同じサンプルに対してレーザー光の照射位置を少しずつ変えながら測定を複数回繰り返す。そして、その複数回の測定においてそれぞれ得られたマススペクトルデータを積算することによって、一つのサンプルについてのマススペクトルを作成する。これは、MALDI法では一般に、1回のレーザー光照射によって生成されるイオンの量が比較的少ないうえにその生成量のばらつきが比較的大きいためであり、上述したようにデータ積算を行うことで感度や再現性を改善することができる。
[レーザーパワー調整方法の一例]
上記のような測定を行う際には、使用するマトリックスの種類や検出器電圧(イオン検出器19に印加される直流電圧)などの測定条件に応じて、サンプルに照射するレーザー光の強度を適切に設定する必要がある。本実施形態のMALDI-TOFMSは、レーザーパワーの最適値をオペレーターの主観に頼らず自動的に決定する機能を有している。
次に、このレーザーパワー調整方法について、図2に従って説明する。図2は、本実施形態のMALDI-TOFMSにおけるレーザーパワー調整手順を示すフローチャートである。
一般に、MALDI法(及び他のレーザー脱離イオン化法)においてレーザーパワーを低レベルから徐々に増加させていくと、レーザーパワーが或る程度以上になると試料成分がイオン化されるようになり、レーザーパワーの増加に伴って信号強度及びSN比は増加する。そして、レーザーパワーが或る値に達すると、それ以上レーザーパワーを増加させても、分解物の生成量やノイズの増加等のために、SN比は横ばいか又は低下に転じる。信号強度も同様の傾向を示す。本発明者は、このようなレーザーパワーとSN比(及び信号強度)との関係に着目し、その関係を示すグラフの形状からレーザーパワーの最適値を決定する方法を見出した。
具体的には、次のような手順で以て、レーザーパワーの最適値を見出すことができる。
オペレーターは、分析目的である物質、又はその物質にイオン化効率が比較的近い特定の物質を含む試料(標準試料)と、目的試料の分析に使用するマトリックスとを用い、サンプルを調製する。サンプルとしては、同濃度のものを例えばn×L個(nは3以上の整数、Lは1以上の整数)用意する。
レーザーパワー決定制御部24は、オペレーターにより指定されたレーザーパワー決定メソッド(測定条件が記載された一種のデータファイル)に従って、上記n×L個のサンプルに対する測定を順番に実行する。即ち、レーザーパワー決定制御部24は、等パワー間隔でn段階にレーザーパワーを変えながら、L個のサンプルに対し一つのレーザーパワー値の下で測定を実行するように測定部1を制御する。データ収集部20は、その各測定においてマススペクトルデータを取得する(ステップS1)。なお、サンプルに対する測定と共に後述するキャリブラントについての測定も実施され、キャリブラントの測定結果を用いてサンプルについての測定結果の質量較正が実施される。
一般的な測定のときと同様に、このときにも、L個のサンプルの各サンプルについて、同じレーザーパワー値の下で異なる位置についての測定を繰り返し実行し、その複数回の測定においてそれぞれ得られたマススペクトルデータを積算する。
但し、同一のレーザーパワー値の下での測定をL個のサンプルに対して実行したり、異なるサンプルに対して異なるレーザーパワー値の下での測定を実行したりする、つまりは、n段階のレーザーパワーに対しn×L個のサンプルを用意するのは、レーザー光照射によってサンプルが消失することの影響を避けるためである。したがって、そうしたサンプルの消失の影響を受けるおそれがないのであれば、例えば1個のサンプルに対してn段階のレーザーパワーの下での全ての測定を実施してもよい。
なお、上記レーザーパワー決定メソッドは、事前に作成されレーザーパワー決定メソッド記憶部23に格納されるが、この点については後で説明する。
ステップS1におけるn段階のレーザーパワーの下での測定が終了すると、SN比計算部211は、収集されたデータから、レーザーパワー値毎に所定の質量電荷比において観測されるピークの信号強度値を取得し、その信号強度値からSN比を計算する。この所定の質量電荷比とは、分析目的である物質又は上記特定の物質に対応する質量電荷比である。レーザーパワー毎に1個ずつ、つまりn個のSN比値が求まる。さらに、SN比計算部211は、横軸にレーザーパワー、縦軸にSN比をとり、レーザーパワー値とSN比値との関係を示すn個のプロット点を位置付けたグラフを作成する(ステップS2)。
次いで最適レーザーパワー探索部212は、SN比値とそのSN比値を計算した際の信号強度値を用いて、明らかに不適切であるプロット点を除外する。具体的には、各プロット点に対応するSN比値及び信号強度値をそれぞれ所定の基準値と比較し、いずれか又はその両方が基準値以下であるプロット点を除外する(ステップS3)。これは、主として、イオン化が実質的になされていない又はイオン化効率が著しく低いレーザーパワーを選定対象から除外するための処理であり、上記基準値は適宜に決めておくことができる。また、その基準値をユーザーが適宜設定できるようにしてもよい。
また、最適レーザーパワー探索部212は、ステップS3において除外したプロット点よりもさらにレーザーパワーの値が低いプロット点が存在すれば、そのプロット点も除外する(ステップS4)。そのあと、最適レーザーパワー探索部212は、残りのプロット点が複数存在するか否かを判定し(ステップS5)、プロット点が複数存在しなければステップS5から後述するステップS8へと進む。
ステップS5においてYesと判定されると、最適レーザーパワー探索部212は、上記グラフ上で横軸(レーザーパワー軸)方向に隣接する2個のプロット点同士を結ぶ直線の傾きを計算する。なお、このときには、ステップS3、S4の処理で除外したプロット点も利用し、当初のn個のプロット点全てについて傾きを求める。
また、最適レーザーパワー探索部212は、当初のn個のプロット点の中でレーザーパワーが最も低いプロット点P1に関し、次の式を用いて該プロット点P1よりもさらにレーザーパワーが低い仮想プロット点P0を求め、プロット点P1と仮想プロット点P0との間の直線の傾きを求める。
(仮想プロット点P0のSN比)=(プロット点P1のSN比)-(当初のn個のプロット点の中のSN比の最大値-当初のn個のプロット点の中のSN比の最小値)/(レーザーパワーの間隔)
(仮想プロット点P0のレーザーパワー)=(プロット点P1のレーザーパワー)-(レーザーパワーの間隔)
さらにまた、最適レーザーパワー探索部212は、当初のn個のプロット点の中でレーザーパワーが最も高いプロット点Pnに関し、次の式を用いて該プロット点Pnよりもさらにレーザーパワーが高い仮想プロット点Pn+1を求め、プロット点Pnと仮想プロット点Pn+1との間での直線の傾きを求める。
(仮想プロット点Pn+1のSN比)=(プロット点Pn+1のSN比)+(当初のn個のプロット点の中のSN比の最大値-当初のn個のプロット点の中のSN比の最小値)/(レーザーパワーの間隔)
(仮想プロット点P0のレーザーパワー)=(プロット点Pn+1のレーザーパワー)+(レーザーパワーの間隔)
最後に、最適レーザーパワー探索部212は、ステップS3、S4を経て残ったプロット点毎に、次の(1)式を用いて指標値Uを算出する(ステップS6)。
U=│前傾値│×(前傾値)/│後傾値│ …(1)
ここで、「前傾値」は着目しているプロット点とその一つ前の(レーザーパワーが一段階低い)プロット点とを結ぶ直線の傾き、「後傾値」は着目しているプロット点とその一つ後の(レーザーパワーが一段階高い)プロット点とを結ぶ直線の傾き、である。ステップS3、S4で除外されたプロット点については、指標値Uの計算は不要である。
レーザーパワー決定部213は、複数のプロット点について算出された指標値Uを比較し、最大の指標値Uを与えるプロット点に対応するレーザーパワー値を最適なレーザーパワーとして選定する(ステップS7)。
一方、上記ステップS5でNoと判定された場合、レーザーパワー決定部213は、そのときに得られているデータではレーザーパワーを決定できないと判断する。この判断を受けてレーザーパワー決定制御部24は、指定されているレーザーパワー決定メソッドにおいて規定されている測定条件(パラメーター)、例えばレーザーパワーを変化させる範囲やイオン検出器19への印加電圧を変更したうえで、サンプルに対する再測定を実行するように測定部1を制御する(ステップS8)。そして、ステップS1と同様に、再測定によってマススペクトルデータを収集し、上述したステップS2以降の処理を実施する。
以上のようにして、本実施形態のMALDI-TOFMSでは、オペレーター(ユーザー)の判断に依らず、実測結果に基いて適切なレーザーパワーを自動的に決定することができる。それにより、レーザーパワーの決定のための手間や時間を節約することができるのみならず、人間の主観を排して客観的にレーザーパワーを決定することができる。
上記(1)式は、基本的には、前傾値と後傾値との比に基いて指標値Uを決める式であるが、ここでは、その比にさらに前傾値を乗じることで、前傾値を重み付けしている。つまり、後傾値に比べて前傾値を重視して指標値を求めている。このようにした理由については後述する。
なお、ステップS3においてプロット点を除外するために所定の基準値を用いる代わりに、実測によるSN比値と信号強度置とからそれぞれ求まるCV(Coefficient of Variation)値、つまりは標準偏差を平均値で除した値、を用いてもよい。
[レーザーパワー決定メソッド作成処理]
上述したように、レーザーパワー選定のための測定の際に使用されるレーザーパワー決定メソッドは事前に作成され、レーザーパワー決定メソッド記憶部23に保存される。次に、本実施形態のMALDI-TOFMSにおける、レーザーパワー決定メソッド作成のための処理について説明する。
オペレーターによる操作部3からの所定の操作を受けて、レーザーパワー決定メソッド作成部22は、図9に示すようなレーザーパワー決定メソッド作成画面50を表示部4に表示する。このレーザーパワー決定メソッド作成画面50には、分析プロトコル選択部54、データセット名入力部55、開始ウェル番号表示部56、基準レーザーパワー値入力部57、及びサンプルプレート模式表示部52、が設けられている。分析プロトコル選択部54には、4種類の分析プロトコルの名称及びそのうちの一つを選択するラジオボタン541と、分析プロトコル実施情報表示部542とが設けられている。開始ウェル番号表示部56には、選択されている分析プロトコルにおいて最初に分析されるウェル番号(この例では「A1」が示されている。なお、このレーザーパワー決定メソッド作成画面50は、「レーザーパワー選定」プロトコルが選択された状態の画面であり、他の分析プロトコルが選択されると一部の表示が変更される。
サンプルプレート模式表示部52には、分析に使用されるサンプルプレートの模擬図が表示される。図9に示すように、ここで使用されるサンプルプレートには、分析用のサンプルが形成されるサンプルウェルが24(=M)行16(=N)列で配置されている。また、行方向、列方向に隣接する合計4(=L)個のウェルを一つのまとまりとして、その中央に1個のキャリブラントウェルが配置されている。以下、この4個のサンプルウェルと1個のキャリブラントウェルをまとめてウェル群521という。キャリブラントウェルは、主として質量較正のためのキャリブラントが形成されるウェルである。図9では、サンプルウェルを相対的に大きな丸印、キャリブラントウェルを相対的に小さな丸印で示している。
サンプルプレート模式表示部52の上には表示項目選択部53が配置され、表示項目選択部53には、ウェル、キャリブラントウェル、及びラベルを表示するか否かを選択するためのチェックボックスが設けられている。オペレーターが表示項目選択部53においてウェル及びキャリブラントウェルについてチェックボックスにマークを入れると、図9に示すように、サンプルプレート模式表示部52においてそれぞれのウェルの位置を示す丸印が表示される。一方、ラベルは後述するレーザーパワー値を示す文字表示であり、オペレーターがラベルについてチェックボックスにマークを入れると、図10に示すように、ウェル群521毎にレーザーパワー値522が表示される。
オペレーターは、レーザーパワー決定メソッド作成画面50において、データセット名入力部55のテキストボックスに適当なデータセット名を入力する。また、基準レーザーパワー値入力部57のテキストボックスにおいて適当な基準レーザーパワー値をプルダウンメニューから選択する。本実施形態の装置では、レーザーパワー値は5間隔で以て5段階(つまりn=5)に変更されるようになっており、その5段階の中の真ん中(上から3番目)のレーザーパワー値が上記の基準レーザーパワー値である。図9に示す例では、基準レーザーパワー値は「50」に設定されているから、5段階のレーザーパワー値は5間隔の、「40」、「45」、「50」、「55」、及び「60」である。開始ウェル番号はA1に定められているので、図10に示すように、サンプルプレート模式表示部52において、ウェル番号A1、C1、E1、G1、I1のサンプルウェルをそれぞれ含むウェル群521に対し、レーザーパワー値「40」、「45」、「50」、「55」、「60」を示すラベルが重畳表示される。
また、このときサンプルプレート模式表示部52において、レーザーパワー決定処理に使用される五つのウェル群521のそれぞれにおいて、サンプルウェルはレーザーパワー決定用のサンプル(標準試料)が形成されるウェルであることを示す色(例えば黄色)で表示され、中央のキャリブラントウェルはキャリブラントが形成されるウェルであることを示す色(例えば紫色)で表示される。
なお、上述したようにサンプルプレート模式表示部52においてレーザーパワー値を示すラベルがウェル群521に重畳表示されるのは、表示項目選択部53においてラベルのチェックボックスにマークが付されているときのみであり、このマークを外すことでレーザーパワー値を示すラベルの表示を消すことができる。また、逆に、表示項目選択部53においてウェルやキャリブラントウェルのチェックボックスのマークを外すことにより、サンプルプレート模式表示部52においてサンプルウェルやキャリブラントウェルを示す丸印の表示を消すこともできる。これにより、オペレーターの好みによって、表示を見易くすることができる。また、オペレーターが基準レーザーパワー値入力部57で基準レーザーパワー値を変更すると、上記五つのウェル群521にそれぞれ設定されているレーザーパワー値が変更される。
上述したように基準レーザーパワー値を設定したうえで、オペレーターがファイル作成ボタン58をクリック操作すると、この操作を受けてレーザーパワー決定メソッド作成部22は、その時点で設定されている基準レーザーパワー値等の条件に基くレーザーパワー決定メソッドファイルを作成する。このレーザーパワー決定メソッドファイルには、上述した五つのレーザーパワー値の下でそれぞれ対応するウェル番号のサンプルを分析するための5パターンのメソッドを含む。
なお、各ウェル群521にはそれぞれ1個ずつキャリブラントウェルが含まれるが、同じウェル群においてサンプルウェルとキャリブラントウェルとでは異なるレーザーパワー値の設定が可能である。各ウェル群521におけるサンプルウェルに対するレーザーパワー値が異なる場合であっても、その各ウェル群521におけるキャリブラントウェルに対するレーザーパワー値は全て同じ値にすることができる。即ち、キャリブラントウェルに対するレーザーパワー値は、基準レーザーパワー値入力部57とは異なる画面で決めることができる。これは、サンプルウェルに形成されているサンプルに対する分析結果に基く質量校正を同じ基準で以て行うようにするためである。
上述のようにしてレーザーパワー決定メソッド作成部22により作成されたレーザーパワー決定メソッドファイルが、レーザーパワー決定メソッド記憶部23に保存される。オペレーターは、それぞれ条件が異なる複数のレーザーパワー決定メソッドを作成してレーザーパワー決定メソッド記憶部23に保存しておくことができる。
レーザーパワー決定メソッドの作成後、オペレーターは、標準試料やキャリブラント、さらには目的のサンプルをそれぞれ適切なウェルに調製したサンプルプレート13を試料ステージ12上にセットする。そのあと、オペレーターが操作部3で所定の操作を行うと、レーザーパワー決定制御部24は、図11に示すようなレーザーパワー決定解析実行画面60を表示部4に表示する。レーザーパワー決定解析実行画面60には、分析プロトコル選択部54と同じ分析プロトコル選択部62と、レーザーパワー選定データセット一覧表63とが配置されている。
レーザーパワー選定データセット一覧表63には、レーザーパワー決定メソッド記憶部23に保存されているレーザーパワー決定メソッドファイルの一覧が表示される。オペレーターは分析に使用するレーザーパワー決定メソッドファイルを選択したうえで、解析実行ボタン64をクリック操作する。この操作によって、レーザーパワー決定制御部24は上述したような手順で、選択されたレーザーパワー決定メソッドファイルに従った分析を実施し、その分析結果に基いて適切なレーザーパワーを決定する。決定されたレーザーパワーの値は、分析プロトコル選択部62の分析プロトコル実施情報表示部622中に表示される。図11の例では、「レーザーパワー120で測定されます」との表示の「120」の値が上述の手順で決定された値に変更される。
以上のようにして、本実施形態のMALDI-TOFMSでは、目的のサンプルを分析するのに適切なレーザーパワーを自動的に決定することができる。
[実験例]
次に、上述した手順に則ったレーザーパワー調整の実験例を説明する。具体的な測定条件等は以下の通りである。
(1)測定条件
試料:ペプチド混合試料を70%アセトニトリル溶液に溶解したもの
マトリックス:CHCAを、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)を含む70%アセトニトリル溶液に溶解したもの
質量分析装置:AXIMA Performance(株式会社島津製作所製)
(2)レーザーパワー調整の条件
レーザーパワー間隔及び変化段数:5間隔で5段階(n=5)
同一のレーザーパワーの下での測定モード:ラスタースキャンモード
なお、レーザーパワーを調整する際には、ペプチド混合試料中の代表的なペプチド由来のイオンの強度を利用した。
図3、図5、及び図7は、それぞれ異なる実験例による実測値に基くレーザーパワーとSN比との関係を示す図である。また、図4、図6、及び図8はそれぞれ、図3、図5、及び図7に示したグラフから計算される前傾値及び後傾値に基く指標値を示す図である。
実験例1では、レーザーパワーとSN比とは図3に示す関係となり、この結果から、隣接する二つのプロット点間の直線の傾き及び指標値を計算すると図4に示すようになる。図4において、レーザーパワー「105」及び「135」は上記仮想的なプロット点である。レーザーパワーとSN比との関係が図3に示すようなグラフである場合、オペレーターは一般的にレーザーパワー「120」を選定すると考えられる。図4に示すように、最大の指標値を与えるプロット点のレーザーパワーは「120」であり、指標値に基く自動的な選定では一般的なオペレーターの主観と一致した選定が行われることが分かる。
実験例2では、レーザーパワーとSN比とは図5に示す関係となり、この結果から、隣接する二つのプロット点間の直線の傾き及び指標値を計算すると図6に示すようになる。レーザーパワーとSN比との関係が図5に示すようなグラフである場合、オペレーターは一般的にレーザーパワー「120」を選定すると考えられる。図6に示すように、最大の指標値を与えるプロット点のレーザーパワーは「120」であり、実験例1とはグラフの形状が相違するものの、この例でも、一般的なオペレーターの主観に一致した自動的な選定が行われることが分かる。
実験例3では、レーザーパワーとSN比とは図7に示す関係となり、この結果から、隣接する二つのプロット点間の直線の傾き及び指標値を計算すると図8に示すようになる。図8において、指標値1は上記(1)式により算出される指標値、指標値2は単純に前傾値と後傾値との比による指標値である。つまり、指標値2は前傾値を重み付けしない結果である。この例では、図7に示すように、レーザーパワーの増加に伴ってSN比は一貫して上昇している。但し、SN比の増加の度合は、レーザーパワー「115」→「120」において最大であり、レーザーパワー「120」を超えるとSN比の増加が飽和する傾向にあると推定される。
図7に示したように、SN比の増加度合が飽和する傾向にある場合、実際に検出器9では飽和が生じている可能性がある。また、こうした状況では、質量分解能が低下している可能性もある。そのため、こうしたグラフに基いてオペレーターがレーザーパワーを選定する場合には、飽和が生じている可能性があるレーザーパワーを避け、且つSN比ができるだけ高いものを選定するのが一般的である。したがって、レーザーパワー「120」を選定する可能性が高い。
図8に示したように、単純に前傾値と後傾値の比を指標値としてレーザーパワーを選定した場合、後傾値の成分が小さい(0に近い)ものを選定する。しかしながら、こうした状態は、SN比が横ばいになったときやイオン化が十分でないときに起こり易く、誤った選定を行うことになる。図8の例では、指標値2を用いてレーザーパワーを選定すると「110」を選定することになるが、これは明らかに誤っている。これに対し、前傾値に重み付けした指標値1を用いると、レーザーパワー「120」が選定される。即ち、レーザーパワーとSN比との関係が図7に示したグラフのようになる場合でも、上記(1)式により指標値を求めることで、人間の判断に準じた、適切なレーザーパワーを選定することが可能である。
[レーザーパワー調整方法の変形例]
上記手順によるレーザーパワー調整方法を基本とし、これを改良した変形例について次に説明する。
図2にフローチャートを示したレーザーパワー調整方法では、レーザーパワーを増加させていく過程でSN比が急峻に減少しないことを前提としており、その前提の下で、レーザーパワーが最適値よりも低い段階において測定誤差等のために偶然、プロット点が基準値を満たしてしまった場合であっても、そのプロット点に対応するレーザーパワー値を選定することがないようにステップS4の処理を実施している。しかしながら、場合によっては、レーザーパワーを増加させていく過程でノイズの増大によってSN比が前提に反して大きく減少し、プロット点が基準値を満たさなくなる可能性がある。この場合、最適なレーザーパワー値はプロット点が基準値を満たさなくなったときのレーザーパワーよりも小さな値であるが、ステップS4の処理によって、基準値を満たさないプロット点よりもレーザーパワーが小さいプロット点を除外しているため、最適なレーザーパワー値も除外されていて再測定の必要が生じる場合がある。また、ステップS5の判定では、残りのプロット点が二つのみでもそのうちのいずれかが選定されるが、それらよりもさらに大きなレーザーパワー値のほうが最適である可能性もある。
また、前述のレーザーパワー調整方法では、前傾値による影響が大きくなるように重み付けしているが、そのために、レーザーパワーを増加させていく過程で、イオン化が起こり始めてから信号強度が定常状態になるまでの間にあるレーザーパワー値を選定する傾向にある。一般に、レーザーパワーの増加に伴う信号強度の上昇は、SN比の上昇に遅れて生じることが多い。信号強度が或る程度以上大きくない場合、生成されるイオン量が十分でないために、ステップS3、S4の処理がイオン検出器の劣化やレーザー光源の劣化の影響を受け易く、装置の使用期間が短いにも拘わらず全てのプロット点について信号強度が基準値を満たさないと判定されてしまう可能性が高くなる。こうした事態の発生は、人的コストの増加や測定効率の低下をもたらすことになる。
図12及び図13は、主として上述した点を克服するための、レーザーパワー調整方法の改良例のフローチャートである。図12及び図13を参照して、この改良例であるレーザーパワー調整方法の手順を説明する。
図12においてステップS11~S13は、図2に示したフローチャートのステップS1~S3と同じであるので説明を省略する。
最適レーザーパワー探索部212は、ステップS13におけるプロット点の除外処理のあと、プロット点がn-1点以上の連続で上記基準値を満たすか否かを判定する(ステップS14)。上述したようにnはレーザーパワーを変化させる段数である。ステップS14でNoと判定された場合には、ステップS8と同様のステップS15の処理へ進み、レーザーパワー決定制御部24は、指定されているレーザーパワー決定メソッドにおいて規定されている測定条件を変更したうえで、サンプルに対する再測定を実行するように測定部1を制御する。一方、ステップS14でYesと判定された場合、最適レーザーパワー探索部212は、ステップS6と同じステップS16の処理を実行する。
即ち、最適レーザーパワー探索部212は、ステップS13を経て残ったプロット点毎に、次に再掲する(1)式を用いて指標値Uを算出する(ステップS16)。
U=│前傾値│×(前傾値)/│後傾値│ …(1)
最適レーザーパワー探索部212は、上記指標値Uが最大になるプロット点のレーザーパワーを最適レーザーパワー値候補LPSとして選定する(ステップS17)。
次いで、最適レーザーパワー探索部212は、選定した最適レーザーパワー値候補LPSがその時点でのn段階のレーザーパワーの中の最大パワーであるか否かを判定する(ステップS18)。最大パワーである場合には、上述のステップ15へと進み、再測定を実施する。
一方、最適レーザーパワー値候補LPSがその時点でのn段階のレーザーパワーの中の最大パワーでない場合には、より高いレーザーパワー値の採用可否を判定する。そのために、最適レーザーパワー探索部212は、その最適レーザーパワー値候補LPSにおけるSN比値と、それよりも1段階大きいレーザーパワーLPS+1におけるSN比値とを比較する(ステップS19)。そして、SN比値がLPS<LPS+1であるか否か、及び、SN比値がLPS≧LPS+1である場合には、そのSN比の減少幅が15%以内の減少であって、且つSN比が所定の規定値を上回っているか否かを判定する(ステップS20)。
ステップS20でYesのとき、最適レーザーパワー探索部212は、よりレーザーパワーが大きいほうのレーザーパワー値LPS+1を最適なレーザーパワーとして選定する(ステップS21)。一方、ステップS20でNoであるとき、最適レーザーパワー探索部212は、よりレーザーパワーが小さいほうのレーザーパワー値LPSを最適なレーザーパワーとして選定する(ステップS22)。
上記のレーザーパワー調整方法におけるステップS4及びS5の処理に代えてステップS14の処理を設けることで、レーザーパワーが大きくなったときにノイズが増大しSN比が基準値を満たさなくなった場合であっても、それよりもレーザーパワーが小さい領域での適切なSN比の判定が可能となる。また、所定個数(上記例ではn-1)だけ連続で基準値を満たしていることを、指標値を利用した判定の前提条件とすることによって、偶発的な測定結果による誤判定を防止することが可能である。
また、このレーザーパワー調整方法ではステップS18の判定処理を加えることで、分析時におけるレーザーパワーの可変範囲が適切でないこと等に起因してレーザーパワーの最適値が選定できない事態を回避することができる。
また、このレーザーパワー調整方法では、ステップS19~S22の処理によって、SN比が最大となるレーザーパワー値よりも大きいレーザーパワーが最適値として選定される傾向となるようにしている。それは次のような理由による。上述したように、一般に、信号強度値が最大となるレーザーパワーはSN比が最大となるレーザーパワー値よりも大きくなる傾向にある。信号強度値が低いとイオン化用レーザー光源の劣化や光強度のばらつき、或いは、イオン検出器の劣化などの影響を受け易く、信号強度値のばらつきが生じ易い。そこで、SN比の低下が許容できる程度であれば、高い信号強度が得られるようにレーザーパワーを設定しておいたほうが、長期間に亘って定性分析及び定量分析を良好に実施するうえで有利であるということができる。
なお、上記実施形態において、後傾値に比べて前傾値を重視する重み付けの方法は上記記載の方法に限るものではなく、それ以外の適宜の方法を採ることができる。
また、上記実施形態では、レーザーパワーを変えながら測定を行う際に、レーザーパワーを等間隔で変えていたが、必ずしも等間隔でなくてもよい。但し、等間隔でない場合には、隣接するプロット点間の直線の傾きを計算する際に、レーザーパワーの間隔の差異を反映した計算を行う必要がある点に注意を要する。
また、上記実施形態は本発明をMALDI-TOFMSに適用したものであるが、本発明は、MALDIイオン源に限らず、LDI法、SALDI法など、レーザー光を試料に照射して該試料中の成分のイオン化を行う各種のイオン源を搭載した質量分析装置に適用可能である。その際に、質量分離器の種類や方式は問わない.
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(第1項)本発明に係るレーザー脱離イオン化質量分析装置の一態様は、
試料にレーザー光を照射し該試料中の成分をイオン化するイオン源と、
該イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、
同一の試料に対し前記レーザー光のレーザーパワーをn段階(nは3以上)に変化させつつ該試料中の特定の成分由来のイオンの強度情報を取得するように、前記イオン源及び前記質量分析部をそれぞれ制御する分析制御部と、
前記分析制御部による制御の下で得られたn個のイオン強度又はそれから求まるSN比である信号値とレーザーパワーとの関係をプロットした2軸のグラフにおいて、レーザーパワー軸上で隣接する二つのプロット点を結ぶ直線の傾きをそれぞれ計算し、プロット点毎に、その前方側の直線の傾きである前傾値と後方側の直線の傾きである後傾値との比を反映した指標値を求め、該指標値を利用して適切なレーザーパワーを選定する処理部と、
を備えるものである。
(第13項)本発明に係るレーザーパワー調整方法の一態様は、レーザー脱離イオン化質量分析装置におけるイオン化用のレーザーパワーの調整方法であって、
同一の試料に対しレーザーパワーをn段階(nは3以上)に変化させつつ該試料中の特定の成分由来のイオンの強度情報を取得する測定ステップと、
前記測定ステップにより得られたn個のイオン強度又はそれから求まるSN比である信号値とレーザーパワーとの関係をプロットした2軸のグラフにおいて、レーザーパワー軸上で隣接する二つのプロット点を結ぶ直線の傾きをそれぞれ計算し、プロット点毎に、その前方側の直線の傾きである前傾値と後方側の直線の傾きである後傾値との比を反映した指標値を求め、該指標値を利用して適切なレーザーパワーを選定する処理ステップと、
を有するものである。
第1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置及び第13項に記載のレーザーパワー調整方法によれば、試料に対する実際の分析結果に基いて、高感度或いは高精度の分析が実施できるような適切なレーザーパワーが、オペレーター等の判断に頼らず、客観的な基準で以て決定される。それによって、設定されるレーザーパワーがオペレーターによって異なることがなく、信頼性の高い良好なマススペクトルを取得することができる。また、実質的に人手を介さずにレーザーパワーを決定することができるので、人的コストを削減し分析効率を改善できるとともに、分析の自動化にも有利である。さらにまた、適切なレーザーパワーを決定する際の手順が一般的な人間の判断基準に近いため、決定されたレーザーパワー値についてオペレーターが違和感を持つことも少ないという利点もある。
(第2項)第1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記処理部は、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおける信号値と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおける信号値と比較し、その比較結果を用いてその二つのレーザーパワーのいずれか一方を適切なレーザーパワーとして選定する比較判定処理を実施するものとすることができる。
(第14項)同様に第13項に記載のレーザーパワー調整方法において、 前記処理ステップは、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおける信号値と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおける信号値と比較し、その比較結果を用いてその二つのレーザーパワーのいずれか一方を適切なレーザーパワーとして選定する比較判定ステップを含むものとすることができる。
(第3項)また第2項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記比較判定処理では、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおけるSN比と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおけるSN比とを比較し、前者のSN比に対して後者のSN比が大きいか、又は小さいもののその減少幅が所定値以内で且つ該後者のSN比が所定の規定値を上回っている場合に、前記1段階大きなレーザーパワーを適切なレーザーパワーとして選定するものとすることができる。
(第15項)同様に第14項に記載のレーザーパワー調整方法において、前記比較判定ステップでは、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおけるSN比と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおけるSN比とを比較し、前者のSN比に対して後者のSN比が大きいか、又は小さいもののその減少幅が所定値以内で且つ該後者のSN比が所定の規定値を上回っている場合に、前記1段階大きなレーザーパワーを適切なレーザーパワーとして選定するものとすることができる。
第2項及び第3項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置、並びに、第14項及び第15項に記載のレーザーパワー調整方法によれば、例えばレーザーパワーを増加させていく過程でSN比が予想に反して大きく減少してしまったような場合であっても、より適切なレーザーパワー値を選定することができる。
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記処理部は、前記指標値を求める際に、後傾値に比べて前傾値を重視する重み付けを行うものとすることができる。
(第16項)同様に、第13項~第15項のいずれか1項に記載のレーザーパワー調整方法において、前記処理ステップでは、前記指標値を求める際に、後傾値に比べて前傾値を重視する重み付けを行うものとすることができる。
第4項に記載の装置及び第16項に記載の方法によれば、後傾値が0に近いような状態にあるレーザーパワーを誤って選定してしまうことを防止することができ、より適切なレーザーパワーを選定するのに有効である。
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記処理部は、n個のプロット点の信号値のうちの最大信号値と最小信号値との差及びレーザーパワーの変化幅を用いて、該n個のプロット点のうちのレーザーパワー最小値よりもさらに一段階低いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値と、該N個のプロット点のうちのレーザーパワー最大値よりもさらに一段階高いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値とをそれぞれ計算し、該二つの仮のプロット点を利用して、前記レーザーパワー最小値に対応するプロット点の前傾値、及び、前記レーザーパワー最大値に対応するプロット点の後傾値、を求めるものとすることができる。
(第17項)また同様に、第13項~第16項のいずれか1項に記載のレーザーパワー調整方法において、前記処理ステップでは、n個のプロット点の信号値のうちの最大信号値と最小信号値との差及びレーザーパワーの変化幅を用いて、該n個のプロット点のうちのレーザーパワー最小値よりもさらに一段階低いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値と、該N個のプロット点のうちのレーザーパワー最大値よりもさらに一段階高いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値とをそれぞれ計算し、該二つの仮のプロット点を利用して、前記レーザーパワー最小値に対応するプロット点の前傾値、及び、前記レーザーパワー最大値に対応するプロット点の後傾値、を求めるものとすることができる。
第5項に記載の装置及び第17項に記載の方法によれば、実測時にレーザーパワーを変化させる段数を少なくすることができ、測定の所要時間を短縮することができる。また、サンプルの消費量も少なくすることができる。
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記分析制御部はレーザーパワーを等間隔でN段階に変化させるように前記イオン源を制御するものとすることができる。
(第18項)また同様に、第13項~第17項のいずれか1項に記載のレーザーパワー調整方法において、前記測定ステップでは、レーザーパワーを等間隔でN段階に変化させるものとすることができる。
第6項に記載の装置及び第18項に記載の方法によれば、二つのプロット点を結ぶ直線の傾きを計算する際の計算を簡単にすることができる。
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記処理部は、n個のイオン強度とSN比との少なくともいずれか一方が所定の基準値以下であるプロット点を削除する前処理を実施し、該前処理で残ったプロット点について前傾値及び後傾値を用いたプロット点の選定を行うものとすることができる。
(第19項)また同様に、第13項~第18項のいずれか1項に記載のレーザーパワー調整方法において、前記処理ステップでは、n個のイオン強度とSN比との少なくともいずれか一方が所定の基準値以下であるプロット点を削除する前処理を実施し、該前処理で残ったプロット点について前傾値及び後傾値を用いたプロット点の選定を行うものとすることができる。
第7項に記載の装置及び第19項に記載の方法によれば、例えばSN比や信号強度が極端に低いプロット点を除去し、不適切なレーザーパワーの選定を回避することができる。
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記信号値はSN比であるものとすることができる。
(第20項)また同様に、第13項~第19項のいずれか1項に記載のレーザーパワー調整方法において、前記信号値はSN比であるものとすることができる。
第8項に記載の装置及び第20項に記載の方法によれば、信号強度だけでなくノイズも考慮されるので、良好なマススペクトルが得られるようなレーザーパワーを選定することができる。
(第9項)第1項~第8項のいずれか1項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置は、前記分析制御部が前記イオン源及び前記質量分析部を制御するための測定条件の情報を含む測定メソッドであって、それぞれn段階の異なるレーザーパワー値の下での測定を行う複数のメソッドを含む測定メソッドを作成するメソッド作成部、をさらに備えるものとすることができる。
第9項に記載の装置において、メソッド作成部は、オペレーターにより入力又は設定された最低限必要な情報に基いて自動的に測定メソッドのファイルを作成し、それを所定の記憶部に保存する。第9項に記載の装置によれば、レーザーパワーを適切に調整するための測定を行うためにオペレーターが行う作業が簡素化され、オペレーターの負担が軽減される。また、そうした測定に際したミスが減少し、レーザーパワー選定作業の効率を向上させることができる。
(第10項)第9項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記メソッド作成部は、GUI画面内で測定条件の一つとして基準レーザーパワー値入力又は選択を受け付け、前記基準レーザーパワー値から増加及び/又は減少したn段階のレーザーパワー値を求め、該n段階のレーザーパワー値の下での測定を行う複数のメソッドを含む測定メソッドを作成するものとすることができる。
第10項に記載の装置によれば、レーザーパワー選定のための測定メソッドを作成する際にオペレーターが入力する情報が少なくて済むので、作業効率の向上を図ることができるとともに、作業に習熟していないオペレーターでもミス無く作業にあたることができる。
(第11項)第10項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記メソッド作成部は、前記GUI画面内に、前記n段階のレーザーパワー値と該レーザーパワー値の下での測定対象である目的の試料が設けられるウェルの位置とが明示されたサンプルプレートの模式的な画像を表示するものとすることができる。
第11項に記載の装置によれば、自動的に設定されるn段階のレーザーパワー値をオペレーターが画面上で容易に確認することができる。また、オペレーターが目的の試料を形成するべきウェルの位置を、視覚的に分かる易く把握することができる。
(第12項)第11項に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置において、前記サンプルプレートには目的の試料が設けられるサンプルウェルと質量較正用試料が設けられるキャリブラントウェルとが配置され、前記メソッド作成部は、該キャリブラントウェルに設けられた試料に対して前記n段階のレーザーパワー値とは異なるレーザーパワー値の設定を可能とするものとすることができる。
第11項に記載の装置によれば、質量較正用試料に対しそれに適したレーザーパワーの下で測定を実行した結果に基いて、目的試料に対する測定結果の質量較正を行うことができる。それにより、目的試料の測定する際のレーザーパワーの設定とは無関係に、その測定結果の質量較正を精度良く行うことができる。
1…測定部
10…チャンバー
10a…窓
11…真空ポンプ
12…試料ステージ
13…サンプルプレート
14…引出電極
15…加速電極
16…レーザー照射部
17…ミラー
18…フライトチューブ
19…イオン検出器
100…ステージ駆動部
2…制御・処理部
20…データ収集部
21…レーザーパワー最適化処理部
211…SN比計算部
212…最適レーザーパワー探索部
213…レーザーパワー決定部
22…レーザーパワー決定メソッド作成部
23…レーザーパワー決定メソッド記憶部
24…レーザーパワー決定制御部
3…操作部
4…表示部

Claims (20)

  1. 試料にレーザー光を照射し該試料中の成分をイオン化するイオン源と、
    該イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、
    同一の試料に対し前記レーザー光のレーザーパワーをn段階(nは3以上)に変化させつつ該試料中の特定の成分由来のイオンの強度情報を取得するように、前記イオン源及び前記質量分析部をそれぞれ制御する分析制御部と、
    前記分析制御部による制御の下で得られたn個のイオン強度又はそれから求まるSN比である信号値とレーザーパワーとの関係をプロットした2軸のグラフにおいて、レーザーパワー軸上で隣接する二つのプロット点を結ぶ直線の傾きをそれぞれ計算し、プロット点毎に、その前方側の直線の傾きである前傾値と後方側の直線の傾きである後傾値との比を反映した指標値を求め、該指標値を利用して適切なレーザーパワーを選定する処理部と、
    を備えるレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  2. 前記処理部は、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおける信号値と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおける信号値と比較し、その比較結果を用いてその二つのレーザーパワーのいずれか一方を適切なレーザーパワーとして選定する比較判定処理を実施する、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  3. 前記比較判定処理では、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおけるSN比と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおけるSN比とを比較し、前者のSN比に対して後者のSN比が大きいか、又は小さいもののその減少幅が所定値以内で且つ該後者のSN比が所定の規定値を上回っている場合に、前記1段階大きなレーザーパワーを適切なレーザーパワーとして選定する、請求項2に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  4. 前記処理部は、前記指標値を求める際に、後傾値に比べて前傾値を重視する重み付けを行う、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  5. 前記処理部は、n個のプロット点の信号値のうちの最大信号値と最小信号値との差及びレーザーパワーの変化幅を用いて、該n個のプロット点のうちのレーザーパワー最小値よりもさらに一段階低いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値と、該n個のプロット点のうちのレーザーパワー最大値よりもさらに一段階高いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値とをそれぞれ計算し、該二つの仮のプロット点を利用して、前記レーザーパワー最小値に対応するプロット点の前傾値、及び、前記レーザーパワー最大値に対応するプロット点の後傾値を求める、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  6. 前記分析制御部はレーザーパワーを等間隔でn段階に変化させるように前記イオン源を制御する、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  7. 前記処理部は、n個のイオン強度とSN比との少なくともいずれか一方が所定の基準値以下であるプロット点を削除する前処理を実施し、該前処理で残ったプロット点について前傾値及び後傾値を用いたプロット点の選定を行う、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  8. 前記信号値はSN比である、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  9. 前記分析制御部が前記イオン源及び前記質量分析部を制御するための測定条件の情報を含む測定メソッドであって、それぞれn段階の異なるレーザーパワー値の下でのイオン化を行う複数のメソッドを含む測定メソッドを作成するメソッド作成部、をさらに備える、請求項1に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  10. 前記メソッド作成部は、GUI画面内で測定条件の一つとして基準レーザーパワー値入力又は選択を受け付け、前記基準レーザーパワー値から増加及び/又は減少したn段階のレーザーパワー値を求め、該n段階のレーザーパワー値の下でのイオン化を行う複数のメソッドを含む測定メソッドを作成する、請求項9に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  11. 前記メソッド作成部は、前記GUI画面内に、前記n段階のレーザーパワー値と該レーザーパワー値の下での測定対象である目的の試料が設けられるウェルの位置とが明示されたサンプルプレートの模式的な画像を表示する、請求項10に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  12. 前記サンプルプレートには目的の試料が設けられるサンプルウェルと質量較正用試料が設けられるキャリブラントウェルとが配置され、前記メソッド作成部は、該キャリブラントウェルに設けられた試料に対して前記n段階のレーザーパワー値とは異なるレーザーパワー値の設定を可能とする、請求項11に記載のレーザー脱離イオン化質量分析装置。
  13. レーザー脱離イオン化質量分析装置におけるイオン化用のレーザーパワーの調整方法であって、
    同一の試料に対しレーザーパワーをn段階(nは3以上)に変化させつつ該試料中の特定の成分由来のイオンの強度情報を取得する測定ステップと、
    前記測定ステップにより得られたn個のイオン強度又はそれから求まるSN比である信号値とレーザーパワーとの関係をプロットした2軸のグラフにおいて、レーザーパワー軸上で隣接する二つのプロット点を結ぶ直線の傾きをそれぞれ計算し、プロット点毎に、その前方側の直線の傾きである前傾値と後方側の直線の傾きである後傾値との比を反映した指標値を求め、該指標値を利用して適切なレーザーパワーを選定する処理ステップと、
    を有するレーザーパワー調整方法。
  14. 前記処理ステップは、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおける信号値と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおける信号値と比較し、その比較結果を用いてその二つのレーザーパワーのいずれか一方を適切なレーザーパワーを選定する比較判定ステップを含む、請求項13に記載のレーザーパワー調整方法。
  15. 前記比較判定ステップでは、前記指標値に基いて選定されるレーザーパワーにおけるSN比と該レーザーパワーより1段階大きなレーザーパワーにおけるSN比とを比較し、前者のSN比に対して後者のSN比が大きいか、又は小さいもののその減少幅が所定値以内で且つ該後者のSN比が所定の規定値を上回っている場合に、前記1段階大きなレーザーパワーを適切なレーザーパワーとして選定する、請求項14に記載のレーザーパワー調整方法。
  16. 前記処理ステップでは、前記指標値を求める際に、後傾値に比べて前傾値を重視する重み付けを行う、請求項13に記載のレーザーパワー調整方法。
  17. 前記処理ステップでは、n個のプロット点の信号値のうちの最大信号値と最小信号値との差及びレーザーパワーの変化幅を用いて、該N個のプロット点のうちのレーザーパワー最小値よりもさらに一段階低いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値と、該N個のプロット点のうちのレーザーパワー最大値よりもさらに一段階高いレーザーパワーに対応する仮のプロット点の信号値とをそれぞれ計算し、該二つの仮のプロット点を利用して、前記レーザーパワー最小値に対応するプロット点の前傾値、及び、前記レーザーパワー最大値に対応するプロット点の後傾値を求める、請求項13に記載のレーザーパワー調整方法。
  18. 前記測定ステップでは、レーザーパワーを等間隔でn段階に変化させる、請求項13に記載のレーザーパワー調整方法。
  19. 前記処理ステップでは、n個のイオン強度とSN比との少なくともいずれか一方が所定の基準値以下であるプロット点を削除する前処理を実施し、該前処理で残ったプロット点について前傾値及び後傾値を用いたプロット点の選定を行う、請求項13に記載のレーザーパワー調整方法。
  20. 前記信号値はSN比である、請求項13に記載のレーザーパワー調整方法。
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