JP7277356B2 - 虚血障害または虚血再灌流障害の予防および/または治療 - Google Patents

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Description

本発明は概して、虚血障害または虚血再灌流障害の予防および/または治療に関する。
虚血が起こると、酸素利用率の低下により、心臓のエネルギー代謝に重大な変化が生じる。虚血は、ミトコンドリア傷害を誘発することで、活性酸素種(ROS)の発生を増加させ、酸素によるDNAの損傷を増加させる。急速再灌流は虚血心臓をレスキューするための最適な方法ではあるが、この方法は有害なシグナル伝達カスケードの活性化による細胞傷害を伴い、これが心筋細胞の傷害を引き起こして、最終的に梗塞サイズを増大させる場合がある。虚血および再灌流の際の酸素の供給と消費の不均衡は、遺伝子およびタンパク質の発現、並びに種々のタンパク質の活性における協調的な変化を通じて、心筋細胞の構造および機能に変化をもたらす。
ミトコンドリア(mit)は、電子伝達系を介した酸化的リン酸化を通じてATPの主要な供給源となる。心臓の必要エネルギー量から、ミトコンドリアの役割は極めて重要であり、実際に、ミトコンドリアは心臓の全質量の1/3近くにもなる。ミトコンドリアはフリーラジカルおよびアポトーシス促進性因子の強力な供給源ではあるが、過剰な酸化的ストレスの有害作用を低減することもできることから、ミトコンドリアの恒常性を正しく維持することは細胞生存にとって必須となる。心筋虚血は電子伝達系に影響を及ぼすことで、再灌流時の心筋細胞死を増加させる。実験的なアプローチにより、虚血時に電子伝達を化学的に遮断することで、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(MPTP)の開口が阻害され、再灌流時の心筋細胞傷害が低減することが示されている。虚血ポストコンディショニング(IPost-Co)は、長期虚血侵襲後の再灌流時に適用される短期の心筋虚血/再灌流エピソードであるが、IPost-Coは内在性の生存促進シグナルカスケードを活性化することで、再灌流障害を限定し、梗塞サイズを減少させることが明らかとなっている。いくつかの研究によって、RISK(Reperfusion Injury Salvage Kinases)の活性化(Tsang A Circ Res 2004;95:230-2.;Hausenloy DJ, Am J Physiol Heart Circ Physiol 2005;288:H971-6)または生存促進性のSAFE(Survivor Activating Factor Enhancement)(Lacerda L, Cardiovasc Res 2009;84:201-8)等、IPost-Co中の特定の保護的経路における変化が裏付けられている。加えて、最近の報告によれば、アリール炭化水素受容体(AhR)シグナル経路の下方制御が、IPost-Coが与える心保護効果に寄与しているようである(Vilahur G, Eur Heart J 2012;34:2082-2093)。虚血障害および直接再灌流障害(direct reperfusion injury)(IdR)に対しての心臓保護を試験する臨床試験で得られた結果(Cung TT, N Engl J Med 2015;373(11):1021-31)は議論の余地あるものであり、未知の機構を明らかにするためのさらなる研究の必要性を強調するものであった。
虚血再灌流障害を低減または予防するための効果的な治療は困難なものであることが判明している。このプロセスの病態生理の理解の向上や、有望な前臨床試験段階の複数の薬剤はあったが、再灌流障害を予防するためのこれらの臨床試験の大部分は期待外れに終わっている。従って、技術の現状を鑑みて、虚血/再灌流により引き起こされる障害を予防するための戦略を開発するする必要性は依然として存在する。
第一の側面において、本発明は、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
並びに、薬剤的に許容できる賦形剤、
を含む医薬組成物に関する。
第二の側面において、本発明は、医薬用途の、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
または、本発明の医薬組成物、
に関する。第三の側面において、本発明は、対象における虚血障害または虚血再灌流障害の治療および/または予防に用いるための、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
または、本発明の医薬組成物、
に関する。
DJ-1タンパク質における変化。(A)DJ-1のスポット強度、および(B)DJ-1の全体強度における変化(†P<0.05 IPost-Coと虚血との比較;‡P<0.05 IPost-CoとIdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧3/群)を示すボックスプロット。(C)DJ-1遺伝子発現レベルにおける変化(*P<0.001 クラスカル・ワリス;§P<0.05 シャム手術動物との比較;†P<0.05 虚血との比較;‡P<0.05 IdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧5/群)を示すボックスプロット。 GRP75タンパク質およびペルオキシレドキシン6タンパク質における変化。GRP75の、(A)スポット強度(‡P<0.05 IPost-CoとIdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧3/群);および(B)遺伝子発現レベル(*P<0.001 クラスカル・ワリス;§P<0.05 シャム手術動物との比較;†P<0.05 虚血との比較;‡P<0.05 IdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧5/群)における群間の変化を示すボックスプロット。ペルオキシレドキシン6(PRDX6)の、(C)スポット強度(†P<0.05 IPost-Coと虚血との比較;マン・ホイットニー;n≧3/群);および(D)遺伝子発現レベル(*P<0.001 クラスカル・ワリス;§P<0.05シャム手術動物との比較;†P<0.05 虚血との比較;‡P<0.05 IdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧5/群)における群間の変化を示すボックスプロット。 MIのブタモデルにおける酸化的ストレスレベル。(A)酸化的ストレスのマーカーとしての8-ヒドロキシグアノシン(8HOG)のレベル(*P<0.001、クラスカル・ワリス;§P<0.05、シャム手術動物との比較;†P<0.05、虚血との比較;‡P<0.05、IdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧3/群)を示すボックスプロット。(B)異なる群のブタ心筋試料中の8HOG含量を示す代表的な免疫組織化学画像。二次元ゲル電気泳動(2-DE)分析におけるDJ-1(C)、GRP75(D)およびPRDX6(E)のスポット強度と、8HOG心筋内含量との逆相関を示す散布図(スピアマンの相関)。 DJ-1およびGRP75と、アポトーシスマーカーであるp53との相関。(A)IdRに供せられた動物の心筋におけるリン酸化p53の有意なレベル増加(†P<0.05、虚血との比較;‡P<0.05、IdRとの比較)を示す、ボックスプロットおよびウェスタンブロッティング(WB)の代表的な画像。2-DE分析におけるDJ-1(B)およびGRP75(C)のスポット強度と、WB分析で分析されたリン酸化p53との逆相関を示す散布図(スピアマンの相関)。 MIのマウスモデルにおける梗塞サイズに対するDJ-1の全身投与の効果。MIのマウスモデルのDJ-1投与後の心筋における、(A)左心室梗塞心筋の割合における変化を示すボックスプロットおよび代表的な免疫組織化学画像、並びに、(B)DJ-1検出における変化を示すボックスプロット(*P<0.05、クラスカル・ワリス;§P<0.05、シャムとの比較;†P<0.05、虚血との比較;‡P<0.05、虚血+DJ-1との比較;#P<0.05、IdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧5/群)。 MIのマウスモデルにおける白血球の浸潤に対するDJ-1の全身投与の効果。MIのマウスモデルのDJ-1投与後の心筋における、好中球(A)およびマクロファージ(B)の浸潤における変化(*P<0.05、クラスカル・ワリス;§P<0.05、シャムとの比較;†P<0.05、虚血との比較;‡P<0.05、虚血+DJ-1との比較;#P<0.05、IdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧5/群)を示すボックスプロット。 IdRのマウスモデルにおけるDJ-1前処置後のGprc5a(A)、Nos2(B)、およびカスパーゼ-3(C)の遺伝子発現における有意な変化(*P<0.05;マン・ホイットニー;n=4/群)を示すボックスプロット。 MIのマウスモデルにおけるDJ-1の全身投与後のアポトーシスにおける変化。(A)IdRに供せられたマウスのDJ-1前処置後の免疫組織化学分析における切断型カスパーゼ-3検出の有意な減少;および、(B)DJ-1前処置後にIdRに供せられた動物の心筋におけるTUNEL陽性細胞の検出の有意な減少を示すボックスプロット(*P<0.05;マン・ホイットニー;n=4/群)。 MIのマウスモデルにおけるDJ-1の全身投与の、酸化的ストレスに関連する影響。MIのマウスモデルのDJ-1投与後の心筋における、iNOS含量(A)および8-ヒドロキシグアノシン含量(8HOG;B)における変化(*P<0.05、クラスカル・ワリス;§P<0.05、シャムとの比較;†P<0.05、虚血との比較;‡P<0.05、虚血+DJ-1との比較;#P<0.05、IdRとの比較;マン・ホイットニー;n≧5/群)を示すボックスプロット。MIのマウスモデルの心筋における、DJ-1と、iNOS(C)および8HOG(D)との逆相関を示す散布図、並びに、iNOSと8HOGとの間の正相関を示す散布図(E)(スピアマンの相関)。 MIのマウスモデルにおける梗塞サイズ減少に対する完全長DJ-1および切断型DJ-1-17の全身投与の示差的影響。虚血に供せられた動物およびIdRに供せられた動物における、完全長DJ-1を前処置した後の、および切断型DJ-1-17組換えペプチドを前処置した後の、梗塞サイズの減少率を示す棒グラフ(平均値±SEM)(*P=0.04;マン・ホイットニー、切断型DJ-1-17と完全長DJ-1との比較)。 MIのマウスモデルにおける梗塞サイズに対するDJ-1-17の全身投与の効果。(A)45分間の虚血後の左心室梗塞心筋率の、DJ-1-17により誘導された減少を示す棒グラフ(P=0.04;T検定;n=4/群);並びに、(B)45分間の虚血および7日間の再灌流の後の左心室梗塞心筋率の、DJ-1-17により誘導された減少を示す棒グラフ(P=0.08;T検定;n=3/群)。
本発明者らは、IPost-Coを介した心臓保護におけるDJ-1の関連を示した(実施例4および実施例5)。マウスモデルにおけるDJ-1の投与は、Gタンパク質共役型受容体(例えばGprc5a)によって主に仲介される複数遺伝子応答を通じたIdR障害に対する、DJ-1の明白な心保護的作用を明らかにした(実施例7)。本発明者らはまた、心筋梗塞のマウスモデルにおける、タンパク質配列のC末端ドメインの最後の15アミノ酸が欠失している切断型DJ-1の投与が、完全長バリアントとの比較で、虚血に対する最も強い保護を誘導することを確認した(実施例9)。
医薬組成物
第一の側面において、本発明は、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
並びに、薬剤的に許容できる賦形剤、
を含む医薬組成物に関する。
用語「医薬組成物」は、本明細書で使用される場合、治療有効量の本発明の剤および少なくとも1つの薬剤的に許容できる賦形剤を含む組成物を指す。本発明の医薬組成物は、例えば、溶剤、懸濁剤、および乳剤等の注射剤として調製できる。
配列番号1」は、C末端ドメインの最後の15アミノ酸が欠失しているDJ-1の配列に関する。DJ1は、本明細書で使用される場合、メチルグリオキサール糖化されたアミノ酸およびタンパク質、並びにグリオキサール糖化されたアミノ酸およびタンパク質を修復し、かつ、それぞれ、修復されたタンパク質および乳酸、または修復されたタンパク質およびグリコール酸を放出するタンパク質である、タンパク質デグリカーゼに関する。ヒトのDJ-1配列は、UniProtデータベースの配列Q99497(2015年12月9日)に一致する。
配列番号1
Figure 0007277356000001
機能的に等価なバリアント」は、機能が実質的に維持される限り、1または複数のアミノ酸の修飾、置換、挿入および/または欠失による、配列番号1の配列から生じる全てのタンパク質を意味すると理解される。機能的に等価なバリアントは、配列番号2に示される配列からなるものではなく、配列番号2に示される配列から実質的になるものでもなく、あるいは配列番号2に示される配列を含むものでもない。
配列番号2
Figure 0007277356000002
配列番号1のバリアントは、(i)1もしくは複数のアミノ酸残基が保存的アミノ酸残基もしくは非保存的アミノ酸残基(好ましくは保存的アミノ酸残基)で置換されているポリペプチド(係る置換アミノ酸は遺伝暗号にコードされていてもいなくてもよい)、(ii)1もしくは複数の修飾アミノ酸残基(例えば、置換基の結合によって修飾された残基)が存在するポリペプチド、(iii)類似mRNAの選択的プロセシングから生じるポリペプチド、(iv)ポリペプチド断片、および/または、(v)分泌性のリーダー配列、もしくは精製に使用される配列(例えば、Hisタグ)もしくは検出に使用される配列(例えば、Sv5エピトープ標識)等の別のポリペプチドとの、配列番号1融合もしくは(i)~(iii)に定義されたポリペプチドから生じるポリペプチド、であることが好ましい。前記断片には、元の配列のタンパク分解性切断(多部位タンパク質分解を含む)を介して生成されるポリペプチドが包含される。前記バリアントは翻訳後修飾されてもよいし、化学修飾されてもよい。このようなバリアントは当業者には明らかであると思われる。
配列番号1のバリアントは天然バリアントおよび人工バリアントの両方であり得る。「天然バリアント」という表現は、他種において天然に現れるヒト配列番号1の全てのバリアント、すなわち配列番号1のオルソログ、に関する。
配列番号1の機能的に等価なバリアントは、1または複数のアミノ酸残基の付加、置換または修飾を含む、配列番号1由来のアミノ酸配列とすることができる。例として、配列番号1の配列の機能的に等価なバリアントには、1個のアミノ酸、2個のアミノ酸、3個のアミノ酸、4個のアミノ酸、5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、15個のアミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、30個のアミノ酸、35個のアミノ酸、40個のアミノ酸、45個のアミノ酸、50個のアミノ酸、60個のアミノ酸、70個のアミノ酸、80個のアミノ酸、90個のアミノ酸、100個のアミノ酸、150個のアミノ酸、200個のアミノ酸、少なくとも500個のアミノ酸、少なくとも1000個のアミノ酸もしくはそれ以上の付加を配列番号1の配列のアミノ末端に含み、かつ/または、1個のアミノ酸、2個のアミノ酸、3個のアミノ酸、4個のアミノ酸、5個のアミノ酸、10個のアミノ酸、11個のアミノ酸、12個のアミノ酸、13個のアミノ酸、14個のアミノ酸、15個のアミノ酸、20個のアミノ酸、25個のアミノ酸、30個のアミノ酸、35個のアミノ酸、40個のアミノ酸、45個のアミノ酸、50個のアミノ酸、60個のアミノ酸、70個のアミノ酸、80個のアミノ酸、90個のアミノ酸、100個のアミノ酸、150個のアミノ酸、200個のアミノ酸、少なくとも500個のアミノ酸、少なくとも1000個のアミノ酸もしくはそれ以上の付加を配列番号1の配列のカルボキシ末端に含み、かつ、配列番号1の配列の活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%を維持している、配列が包含される。
配列番号1の配列およびその機能的に等価なバリアントの活性または機能は、例示的かつ非限定的な例として、本発明において示される方法によって、虚血障害および/または虚血再灌流障害に対する保護能をアッセイすることにより、測定できる。
配列番号1の機能的に等価なバリアントには、配列番号1の配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列も包含される。
用語「同一性」、「同一の」または「同一性パーセント」は、2以上のアミノ酸配列との関連において、2以上の配列または部分配列が、最大一致のために比較およびアラインメント(必要であればギャップを導入)された場合に、同一であること、または、同一である特定の割合のアミノ酸残基を有すること、を意味し、保存的アミノ酸置換は配列同一性の一部と見なされない。同一性パーセントは、配列比較用のソフトウェアもしくはアルゴリズムを用いて、または視認によって、決定できる。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のアラインメントを得るために使用できる様々なアルゴリズムおよびソフトウェアが、当該技術分野において公知である。配列アラインメントアルゴリズムの1つの非限定例としては、Karlin et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci., 90:5873-7で改変され、NBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムに組み込まれた(Altschul et al., 1991, Nucleic Acids Res., 25:3389-402)、Karlin et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:2264-8に記載のアルゴリズムがある。ある特定の実施形態では、Gapped BLASTを、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-402に記載の通りに、用いることができる。配列のアラインメントに使用できる、公的に入手可能なソフトウェアプログラムとして、さらに、BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschul et al., 1996, Methods in Enzymology, 266:460-80)、ALIGN、ALIGN-2(ジェネンテック社、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)またはMegalign(DNASTAR社)が挙げられる。ある特定の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアのGAPプログラムを用いて決定される(例えば、NWSgapdna.CMP行列、並びに40、50、60、70、または90のギャップウェイト、および1、2、3、4、5、または6のレングスウェイトを使用)。ある特定の別の実施形態では、NeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. 48:444-53 (1970))のアルゴリズムを組み込んだ、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントの決定に用いることができる(例えば、Blossum62行列またはPAM250行列のいずれか、並びに、16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5のレングスウェイトを使用)。あるいは、ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列の同一性パーセントは、MyersおよびMiller(CABIOS, 4:11-7 (1989))のアルゴリズムを用いて決定される。例えば、同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を使用して、残基表と共にPAM120を用い、ギャップ長ペナルティ=12、ギャップペナルティ=4として、決定できる。特定のアラインメント用ソフトウェアによる最高のアラインメントのために適切なパラメータは、当業者であれば決定できる。ある特定の実施形態では、アラインメント用ソフトウェアの初期パラメータが使用される。ある特定の実施形態では、第一アミノ酸配列の第二アミノ酸配列に対する同一性%「X」は、100×(Y/Z)として算出され、式中、Yは第一配列および第二配列のアラインメント(視認または特定の配列アラインメント用プログラムでアラインメント)内で完全一致としてスコアリングされるアミノ酸残基の数であり、Zは第二配列内の残基の総数である。第二配列が第一配列よりも長い場合、両配列の全体を考慮に入れた包括的アラインメントが使用されるため、各配列内の文字およびヌルは全てアラインメントされなければならない。この場合、Z値として第一配列と第二配列とが重複している領域の長さを用いる以外は上記と同じ式を用いることができ、該領域は第一配列の長さと実質的に同じ長さを有する。
非限定例として、任意の特定のポリヌクレオチドが参照配列に対してある特定の配列同一性%(例えば、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、いくつかの実施形態では、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一)を有するかどうかは、ある特定の実施形態において、Bestfitプログラム(ウィスコンシン配列解析パッケージ(Wisconsin Sequence Analysis Package)、バージョン8、Unix版、Genetics Computer Group、University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)を用いて決定できる。Bestfitは、2つの配列間で最良の相同区域を見つけるために、SmithおよびWaterman(Advances in Applied Mathematics 2:482-9 (1981))の局所的相同性アルゴリズムを使用する。特定の配列が本発明の参照配列と例えば95%同一であるか否かの決定に、Bestfitまたは他のいずれかの配列アラインメント用プログラムを用いる場合、パラメータは、同一性%が参照アミノ酸配列の全長に亘って算出されるように、かつ、参照配列内のヌクレオチド総数の5%まで相同性ギャップが許容されるように、設定される。
いくつかの実施形態では、2つのアミノ酸配列が実質的に同一であることは、これらの配列が、配列比較アルゴリズムの使用または視認によって測定された際に最大一致が得られるように比較およびアラインメントされた場合に、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%のアミノ酸残基同一性、いくつかの実施形態では、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のアミノ酸残基同一性を有していることを意味する。同一性は、少なくとも約10残基長、約20残基長、約40~60残基長またはその間の任意の整数値の配列領域に亘って存在することがあり、さらには、60~80残基より長い領域、例えば少なくとも約90~100残基、に亘ることもあり、一部の実施形態では、比較されている配列の全長に亘って配列が実質的に同一である。
本発明の化合物は、配列番号1のポリペプチドまたは前記ポリペプチドの機能的に等価なバリアントをコードするポリヌクレオチドとすることができる。
本発明の化合物は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターとすることができる。
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、細胞内での配列の転写および翻訳の後に本発明のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドが生成されるための必要な配列を含む核酸配列を指す。前記配列は、目的の宿主細胞内での自律増殖を可能にする追加セグメントに機能的に連結されている。好ましくは、前記ベクターは、宿主細胞内自律増殖領域に加えて、本発明の核酸に機能的に連結されており、かつ、本発明における核酸の産物の発現を増強することが可能な領域を含有する、ベクターと定義される、発現ベクターであることが好ましい。本発明のベクターは、当該技術分野において広く知られている手法により得ることができる。
ベクターの例としては、限定はされないが、ウイルスベクター、裸DNAベクター、裸RNA発現ベクター、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、カチオン性縮合剤と結合したDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、リポソーム内部に包まれたDNA発現ベクターまたはRNA発現ベクター、およびプロデューサー細胞等のある特定の真核細胞が挙げられる。本発明のポリヌクレオチドを含む好適なベクターは、以下から派生したベクターである:原核生物に含まれる発現ベクター、例えば、pUC18、pUC19、pBluescriptおよびこれらの派生物、mp18ファージベクター、mp19ファージベクター、pBR322ファージベクター、pMB9ファージベクター、ColE1ファージベクター、pCRlファージベクター、RP4ファージベクター、並びにpSA3およびpAT28等の「シャトル」ベクター;酵母に含まれる発現ベクター、例えば、2ミクロンプラスミドベクター、組込み型プラスミドベクター、YEPベクター、セントロメアプラスミドベクターおよびこれらの類似物;昆虫細胞に含まれる発現ベクター、例えば、pACシリーズおよびpVLシリーズのベクター;植物に含まれる発現ベクター、例えば、pIBIシリーズ、pEarleyGateシリーズ、pAVAシリーズ、pCAMBIAシリーズ、pGSAシリーズ、pGWBシリーズ、pMDCシリーズ、pMYシリーズ、pOREシリーズのベクターおよびこれらの類似物;並びに、以下をベースとする高等真核細胞に含まれる発現ベクター:ウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルスおよびレトロウイルス、特に、レンチウイルス)、並びに、非ウイルスベクター、例えば、pSilencer4.1-CMV(アンビオン社)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVL、pKSV-10、pBPV-1、pML2dおよびpTDT1。
本発明の化合物は、本発明のポリペプチド、配列番号1のポリペプチドまたはその機能的に等価なバリアントを分泌可能な細胞としてもよい。
本発明のポリペプチドを分泌可能な好適な細胞としては、限定はされないが、心筋細胞、脂肪細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(B細胞およびT細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜細胞、様々な臓器の単離細胞の初代培養物、好ましくは、ランゲルハンス島から単離された細胞の初代培養物、肝細胞、白血球(単核白血球を含む)、間葉系細胞、臍帯細胞または成熟細胞(皮膚、肺、腎臓および肝臓の成熟細胞)、破骨細胞、軟骨細胞、並びに他の結合組織細胞が挙げられる。ジャーカットT細胞、NIH-3T3細胞、CHO細胞、Cos細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞、C2C12筋芽細胞およびW138細胞等の樹立細胞株も好適である。当業者には理解されることであるが、本発明のポリペプチドを培地中に分泌可能な細胞は、微小粒子またはミクロ莢膜を形成して見出される場合があり、それ故、該細胞は患者内での有用年数がより長い。本発明の目的である微小粒子の形成に適した材料には、治療用産物の持続的な分泌を可能にし、かつ、前記細胞の支持体として働くものであれば、いかなる生体適合性高分子材料も包含される。すなわち、前記生体適合性高分子材料は、例えば、熱可塑性ポリマーまたはハイドロゲルポリマーとしてもよい。熱可塑性ポリマーとしては、アクリル酸、アクリルアミド、2-アミノメタクリル酸エチル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(poly(tetrafluoroethylene-cohexafluorpropylene))、メタクリル酸(7-クマロキシ)エチル(methacrylic-(7-cumaroxy) ethyl ester acid)、N-イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアミドアミン、ポリ(アミノ)-p-キシリレン、ポリ(クロロエチルビニルエーテル)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン-co-トリメチレンカーボネート)、ポリカーボネート尿素-ウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンおよびアクリルアミドのコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(4-ヒドロキシアクリル酸ブチル)、ポリ(ヒドロキシメタクリル酸エチル)、ポリ(N-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(乳酸グリコール酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(γ-メチル、L-グルタミン酸)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリピロール、ポリスチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、超高分子量ポリエチレン、6-(p-ビニルベンズアミド)-ヘキサン酸、N-p-ビニルベンジル-D-マルトンアミド、並びに前記ポリマーの2種以上を含有するコポリマーが挙げられる。ハイドロゲルポリマーとしては、天然材料である、アルギン酸、アガロース、コラーゲン、デンプン、ヒアルロン酸、ウシ血清アルブミン、セルロースおよびこれらの誘導体、ペクチン、コンドロイチン硫酸、フィブリンおよびフィブロイン、並びに、セファロース(登録商標)およびセファデックス(登録商標)等の合成ヒドロゲルが挙げられる。
本発明の化合物は本発明のポリペプチドを含むナノ粒子であってもよい。
別の側面では、本発明の化合物は、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含むナノ粒子であってもよい。
前記ナノ粒子は、前記ポリペプチドが標的器官に到達するまで、生体液中での前記ポリペプチドの完全性を保存するのに寄与すればよい。加えて、ナノ粒子の目的臓器への標的化を可能にする部分を含むように、ナノ粒子を改変することもできる。
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」は、約1nm~約1000nmの範囲のサイズを有する、コロイド性、ポリマー性、または元素性の粒子である。ナノ粒子は、シリカ分子、炭水化物分子、脂質分子、またはポリマー分子で構成されたものとすることができる。分子は、ナノ粒子マトリクス内に包埋させることもできるし、あるいは、ナノ粒子の表面上に吸着させてもよい。一例において、前記ナノ粒子は、ポリ(ブチルシアノアクリレート)(PBCA)等の生分解性高分子で構成されている場合がある。元素性ナノ粒子の例としてはカーボンナノ粒子および酸化鉄ナノ粒子が挙げられ、これらは後にOleic Acid(OA)-Pluronic(登録商標)で被覆されることがある。このアプローチでは、薬剤(例えば、疎水性薬剤または不水溶性薬剤)が前記ナノ粒子中に充填される。他のナノ粒子としてシリカでできたものがある。
ナノ粒子は有用であればいかなるポリマーからも形成することができる。ポリマーの例としては以下が挙げられる:生分解性高分子、例えば、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ-s-カプロラクトン、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(エチレンサクシネート)、およびポリ(p-ジオキサノン);ポリ(エチレングリコール);ポリ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ポリ(HEMA));コポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ポリ(エチレングリコール)シアノアクリレート-co-ヘキサデシルシアノアクリレート、およびポリ[HEMA-co-メタクリル酸];タンパク質、例えば、フィブリノーゲン、コラーゲン、ゼラチン、およびエラスチン;並びに、多糖類、例えば、アミロペクチン、α-アミロース、およびキトサン。
他のナノ粒子として、固体脂質ナノ粒子(SLN)が挙げられる。固体脂質ナノ粒子のための脂質分子の例には、ステアリン酸およびステアリン酸-PEG2000等の修飾ステアリン酸;ダイズレシチン;並びに乳化ろうが含まれる。固体脂質ナノ粒子は所望により他の成分を含むことができ、例えば、Epicuron(登録商標)200、ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F68)、Brij72、Brij78、ポリソルベート80(Tween80)等の界面活性剤;並びに、タウロコール酸ナトリウム等の塩が挙げられる。リポソームに関して論じられるいくつかの方法で固体脂質ナノ粒子中に剤を組み込むことができ、そのような方法として、高圧ホモジナイゼーション法、およびマイクロエマルションの分散をさらに挙げることができる。
ナノ粒子としては、ナノメートルサイズのミセルも挙げることができる。ミセルは本明細書に記載のいかなるポリマーからも形成可能である。ミセル形成のための例示的なポリマーとしては、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(ε-カプロラクトン)等のブロックコポリマー(例えば、ε-カプロラクトンとα-メトキシ-ω-ヒドロキシ-ポリ(エチレングリコール)とのポリマーを含むPEO-b-PCLブロックコポリマー)が挙げられる。
ある特定の実施形態では、前記ナノ粒子の特性は界面活性剤で被覆されることにより変化される。生体適合性であればいかなる界面活性剤を用いてもよく、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、およびポリソルベート80(Tween80)等のポリソルベート界面活性剤;Epicuron(登録商標)200;ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F68)、908および1508等のポロキサマー界面活性剤;並びに、Brij72およびBrij78等のBrij界面活性剤が挙げられる。
ナノ粒子は、所望により、親水性ポリマー基(例えば、ポリ(エチレングリコール)またはポリ(プロピレングリコール))を含むように、例えば、親水性ポリマー基を表面に共有結合させることによって、または、そのような親水性ポリマー基を含有するポリマー(例えば、ポリ[メトキシポリ(エチレングリコール)シアノアクリレート-co-ヘキサデシルシアノアクリレート])を使用することによって、修飾することができる。ナノ粒子は所望により架橋させることができ、これはタンパク質ベースのナノ粒子には特に有用となり得る。
リガンドを付加することで、ナノ粒子の積荷ポリペプチド送達能を損なわせることなく、標的送達を達成できる。これにより特定の細胞、組織および臓器への送達が可能となると企図される。リガンドに基づく送達系の標的化特異性は、種々の細胞型上でのそのリガンドの受容体の分布に依存する。前記標的化用リガンドは、ナノ粒子と非共有結していても共有結合していてもよく、本明細書で論じられる様々な方法でナノ粒子に結合させることができる。
別の実施形態において、本発明の医薬組成物はナノエマルジョンである。「ナノエマルジョン」とは、本明細書で使用される場合、液滴の少なくとも一部がナノメートルサイズ範囲の直径を有するコロイド分散液の液滴(または粒子)を意味する。前記ナノエマルジョンは、水相中でω-3脂肪酸リッチオイル、ω-6脂肪酸リッチオイルまたはω-9脂肪酸リッチオイルから構成され、界面膜を構成する両親媒性界面活性剤によって熱力学的に安定化されており、液滴直径を通常約80~220nmの範囲内とする高剪断微少(high shear microfluidization process)を用いて製造される。
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、以下をさらに含む:
a)配列番号3および/もしくは配列番号4のポリペプチド、
b)配列番号3もしくは配列番号4の機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、並びに/または
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子。
好ましい実施形態では、前記医薬組成物は、配列番号1のポリペプチド、および配列番号3のポリペプチド、および/もしくは配列番号4のポリペプチド、またはこれらの機能的に等価なバリアントを含む。
配列番号3は、本明細書で使用される場合、HSPA9B、mt-HSP70またはモータリンとしても知られているGRP75に関し、様々な細胞内区画で他のタンパク質の折り畳みを補助するシャペロンに関する。ヒトのGRP75タンパク質の配列は、UniProtデータベースの配列P38646(2016年2月17日)に一致する。
配列番号3:
Figure 0007277356000003
配列番号4は、本明細書で使用される場合、細胞の酸化還元制御に関与するタンパク質である、PRDX6、すなわちペルオキシレドキシン6に関する。ヒトのペルオキシレドキシン6タンパク質の配列は、UniProtデータベースの配列P30041(2016年2月17日)に一致する。
配列番号4
Figure 0007277356000004
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、配列番号1および配列番号3;配列番号1および配列番号4;配列番号3および配列番号1;配列番号3および配列番号4;配列番号4および配列番号1;または、配列番号4および配列番号3、またはこれらの機能的に等価なあらゆるバリアント、を含む、それらから実質的になる、またはそれらからなる。
配列番号1の機能的に等価なバリアントという用語の定義は、配列番号3および配列番号4の機能的に等価なバリアントにも同様に適用される。
配列番号3の配列およびその機能的に等価なバリアントの活性または機能は、当該技術分野において公知なように、カチオン依存性ATPアーゼ活性またはそのシャペロン活性を測定することで確認できる。
配列番号4の配列およびその機能的に等価なバリアントの活性または機能は、当該技術分野において公知のように、グルタチオンペルオキシダーゼ活性およびホスホリパーゼA2活性をアッセイすることで確認できる。
本発明の医薬組成物は、化合物a)~f)に加えて、薬剤的に許容できる賦形剤を含む。
用語「薬剤的に許容できる賦形剤」または「薬剤的に許容できる担体」とは、採用される投与量および濃度において対象に対して本質的に無毒であり、かつ、医薬組成物の他の成分と適合する、あらゆる化合物または化合物の組み合わせを指す。すなわち、賦形剤は、医薬組成物の活性成分と一緒に製剤化される、該活性成分を含有する組成物を嵩増しすることを目的とした、不活性物質である。嵩増しは剤形の製造の際に簡便で正確な原体調剤を可能にする。賦形剤はまた、化合物(薬剤)の吸収もしくは溶解性の促進等の様々な治療効果増強用途、または他の薬物動態学的な考慮に役立ち得る。賦形剤はまた製造工程においても有用であり、粉末流動性または非粘着性の促進等によって当該活性物質の取り扱いを援助することや、期待有効期間に亘っての変性防止等のインビトロでの安定性を援助することができる。適切な賦形剤の選択は、投与経路および剤形、並びに活性成分および他の要素に依存する。賦形剤としては、あらゆる従来型の、無毒の、固体、半固体または液体の、充填剤、希釈剤、封入材または製剤助剤を用いることができる。賦形剤または担体の例示的かつ非限定的な例としては、水、塩溶液(食塩水)、アルコール、ブドウ糖、植物油、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘稠性パラフィン、香油、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸エステルペトロエトラール(fatty acid esters petroetrals)、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
特定の実施形態では、本発明で用いるための化合物を含有する医薬組成物は、非経口投与用の医薬組成物である。すなわち、非経口注射に適した前記医薬組成物には、生理学的に許容される、無菌の、水性または非水性の、溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョンが含まれ、あるいは、無菌の注射液または分散液への再構成用の無菌の散剤を含んでもよい。好適な水性または非水性の賦形剤または担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、それらの好適な混合物、トリグリセリド、例えばオリーブ油等の植物油、またはオレイン酸エチル等の注射可能な有機酸エステルが挙げられる。特定の実施形態では、本発明で用いるための化合物を含有する医薬組成物は、静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与用の医薬組成物である。典型的には、静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与用の医薬組成物は、無菌の等張緩衝水溶液中の溶液である。必要であれば、本発明で用いるための化合物を含有する医薬組成物は、注射部位におけるあらゆる疼痛を緩和するための局所麻酔薬も含有する。一般的には、前記成分は、別個に、または単位剤形中で混合された状態で、例えば、活性成分の含量を表示しているアンプルまたはサッシェ等の密封容器中の凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、供給される。前記医薬組成物を点滴で投与しようとする場合、無菌の製薬等級の純水または食塩水を含む点滴ボトルを用いて調剤できる。前記医薬組成物を注射で投与しようとする場合、成分を投与前に混合することができるように、無菌の注射用の蒸留水または食塩水のアンプルを提供することができる。
別の特定の実施形態では、本発明で用いるための化合物を含有する医薬組成物は、経口投与用の医薬組成物である。
経口投与用の固体剤形としては、従来のカプセル剤、徐放性カプセル剤、従来の錠剤、徐放性錠剤、咀嚼錠、舌下錠、発泡錠、丸剤、懸濁剤、散剤、粒剤およびゲル剤が挙げられる。固体剤形中、前記活性成分(すなわち、a)配列番号1のポリペプチド;b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント;c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド;d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター;e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞)、およびf)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子からなる群から選択される化合物)が、以下と混合される:少なくとも1つの好適な賦形剤もしくは担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム等、または(a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはケイ酸等;(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、もしくはアカシア等;(c)保湿剤、例えば、グリセロール等;(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定の複合ケイ酸塩類、もしくは炭酸ナトリウム等;(e)溶解遅延剤(solution retarding agent)、例えば、パラフィン等;(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物等;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールもしくはグリセロールモノステアレート等;(h)吸着剤、例えば、カオリンもしくはベントナイト;および/もしくは(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物。カプセル剤および錠剤の場合、投薬形態は緩衝剤を含んでもよい。ラクトース、すなわち乳糖、および高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を用いる軟および硬ゼラチンカプセル中の充填剤として、同じ種類の固体製剤を使用してもよい。コーティング錠、カプセル剤および粒剤等の固体剤形は、腸溶コーティングおよび当該技術分野において公知の他のコーティング等、コーティングまたはシェルにより調製できる。これらは乳白剤を含んでもよく、また、活性成分または成分を遅延して放出するように製剤化することができる。使用できる埋め込み製剤の例としては、高分子物質および蝋が挙げられる。前記活性化合物は、適切な場合、上記の賦形剤のうちの1または複数を含む、マイクロカプセル化形態とすることもできる。
経口投与用の液体剤形としては、当該技術分野で使用される好適な賦形剤または担体を含有する薬剤的に許容できる乳剤、水剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。前記活性成分(すなわち、a)配列番号1のポリペプチド;b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント;c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド;d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター;e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞)およびf)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子からなる群から選択される化合物)の他に、前記液体剤形は、以下を含有してよい:当該技術分野において一般的に使用されている1もしくは複数の賦形剤もしくは担体(水もしくは他の溶媒等)、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特定の綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、Miglyol(登録商標)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル等)、またはこれらの物質の混合物等。前記不活性希釈剤の他に、前記製剤は、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤等のアジュバントを含んでもよい。懸濁剤は、前記活性成分または成分の他に、以下を含有してもよい:懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンのソルビトールエステルもしくはソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、もしくはトラガント等、またはこれら物質の混合物等。
別の特定の実施形態では、本発明で用いるための化合物を含有する医薬組成物は、局所投与用の医薬組成物である。局所投与用に、前記医薬組成物は、クリーム、ゲル、ローション、液体、ポマード、散布液、分散液、固体の棒、エマルジョン、マイクロエマルション等として製剤化することができ、例えば、乳化剤、界面活性剤、粘稠化剤、着色剤およびこれらの2つ以上の組み合わせ等の好適な賦形剤を用いる従来法により製剤化されてよい。
別の特定の実施形態において、前記医薬組成物は、移植前のドナー臓器の輸送で使用される液体中での使用を目的として製剤化できる。
本発明で用いるための化合物を含む医薬組成物は、経皮パッチまたはイオントフォレーシスデバイスの形態で投与されてもよい。すなわち、特定の実施形態では、本発明で用いるための化合物は、経皮パッチとして、例えば徐放性経皮パッチの形態で、投与される。好適な経皮パッチは、例えば、米国特許第5262165号、同第5948433号、同第6010715号および同第6071531号により詳細に記載されている。
いくつかの薬物送達システムが知られており、本発明で用いるための化合物を投与するために用いることができ、例えば、リポソーム、マイクロバブル、エマルジョン、微小粒子、マイクロカプセル等の中への封入が挙げられる。必要な投与量は、単一ユニットとして、または徐放性形態で、投与できる。
徐放性形態、並びにそれらを調製するための適切な材料および方法は、当該技術分野において報告されている。特定の実施形態では、本発明で用いるための化合物を含む医薬組成物の経口投与可能な形態は、少なくとも1種のコーティングまたはマトリックスをさらに含む徐放性形態である。コーティングまたは徐放性マトリックスとしては、天然の高分子、半合成もしくは合成の不水溶性の、修飾された、蝋、脂肪、脂肪アルコール、脂肪酸、天然、半合成もしくは合成の可塑剤、またはこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。当業者に公知の従来法を用いる腸溶コーティングが適用されてよい。
本発明で用いるための化合物が核酸を含む特定の実施形態において、前記医薬組成物は、遺伝子治療での使用を目的とする組成物として製剤化できる。限定ではなく例示として、前記医薬組成物は、好適なポリヌクレオチドまたは遺伝子コンストラクトを含む、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを含有できる。限定ではなく例示として、前記ベクターは、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス等をベースとするウイルスベクター、または、ADN-リポソーム複合体、ADN-ポリマー複合体、ADN-ポリマー-リポソーム複合体等の非ウイルスベクター(「Nonviral Vectors for Gene Therapy」、Huang編集、HungおよびWagner、アカデミックプレス社(1999)を参照)であり得る。対応するポリヌクレオチドまたは遺伝子コンストラクトを含有する前記ベクターを、従来法によって対象にそのまま投与できる。あるいは、前記ベクターはエキソビボでの細胞、例えばヒトを含む哺乳動物細胞、の形質転換、またはトランスフェクション、または感染に使用でき、その後この細胞が人体または動物に移植されることで所望の治療効果が得られる。人体または動物への投与のために、前記細胞は、細胞生存率に対して負の影響を持たない好適な媒体中で製剤化される。
これらの原理は当業者にはよく知られたものであり、論じられた手順は広く知られたものである。
医学的用途
あるの側面において、本発明は、医薬用途の、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e) a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
または本発明の医薬組成物、
に関する。
別の側面において、本発明は、対象における虚血障害または虚血再灌流障害の治療および/または予防に用いるための、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
または、本発明の医薬組成物、
に関する。
あるいは、本発明は、対象における虚血障害または虚血再灌流障害の治療用医薬の調製のための、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物の用途、
または、本発明の医薬組成物の用途
に関する。
あるいは、本発明は、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物を投与すること、
または、治療および/または予防を必要とする対象に本発明の医薬組成物を投与すること、
を含む、対象における虚血障害または虚血再灌流障害を治療および/または予防するための方法に関する。
特定の実施形態では、医薬用途の、または、対象における虚血もしくは虚血再灌流障害の治療および/もしくは予防に用いるための、前記医薬組成物は、
a)配列番号3および/もしくは配列番号4のポリペプチド、
b)配列番号3もしくは配列番号4の機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および/または
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
をさらに含む。
別の側面では、本発明は、対象における虚血または虚血再灌流障害の治療および/または予防に用いるための、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアントであって、前記機能的に等価なバリアントは、配列番号1に示される配列の1または複数のアミノ酸の欠失、置換または修飾によって生じることを特徴とし、かつ、配列番号2ではない
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物に関する。
別の側面では、本発明は、虚血障害の治療で用いるための、
a)配列番号2のポリペプチド、
b)配列番号2に示される配列の1以上のアミノ酸の欠失、置換もしくは修飾によって生じることを特徴とする、a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物に関する。
用語「投与」は、本明細書で使用される場合、対象への医薬品の送達に関する。好適な薬剤投与経路としては、非経口経路(例えば、皮内、筋肉内、静脈内、皮下等)、経腸経路(例えば、経口、直腸内等)、局所経路等が挙げられるが、これらに限定はされない。
用語「対象」または「個体」または「動物」または「患者」は、治療法が所望される、あらゆる対象、特に哺乳類対象、を意味する。哺乳類対象としては、ヒト、家畜(domestic animal)、家畜(farm animal)、および動物園動物、競技用動物またはペット動物、例えば、犬、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシ等、が挙げられる。本発明の好ましい実施形態では、対象は哺乳動物である。本発明のより好ましい実施形態では、対象はヒトである。
用語「治療」とは、本明細書で使用される場合、対象において、虚血再灌流障害等の、望まれない生理学的変化または障害が予防または遅延(低減)される、治療的処置および予防的(prophylactic or preventive)措置の両方を指す。有益または望ましい臨床結果としては、検出可能または検出不可にかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の減弱、病状の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患増悪の遅延または緩徐化、病状の改善または一時的緩和、および寛解(部分的なものであっても完全なものであってもよい)が挙げられるが、これらに限定はされない。「治療」は、治療を受けていない場合の予想生存と比較した場合の、生存の延長を意味することもある。治療を必要とする者には、状態または障害を既に有している者、並びに、状態もしくは障害を有する傾向にあるもの、または、状態もしくは障害が予防されるべき者、が含まれる。
用語「予防」は、本明細書で使用される場合、疾患または状態の発生または発達を、その発生前に、防ぐ、最小限にする、または妨げる能力に関する。
虚血」は、本明細書で使用される場合、細胞代謝に必要な酸素およびグルコースの欠乏を引き起こす、組織または臓器への血液供給の制限に関する。
用語「虚血障害」は、本明細書で使用される場合、細胞代謝に必要な酸素およびグルコースの欠乏を原因とする障害に関する。
用語「再灌流」、本明細書で使用される場合、虚血組織への血流の復旧に関する。虚血組織への血液の再灌流に恩恵があるのは疑う余地のないことであるが、再灌流それ自体によって、皮肉にも組織を傷害する有害反応カスケードが誘起され得ることが知られている。
用語「虚血再灌流障害」、別名「虚血/再灌流傷害」は、本明細書で使用される場合、虚血期間後の臓器または組織に血液供給が戻る際に引き起こされる、臓器または組織の傷害に関する。虚血期間における血液からの酸素および栄養分の欠如は、血行の回復が、正常機能の回復よりもむしろ、酸化的ストレスの誘導を介しての炎症および酸化的損傷をもたらす結果となる、状況を作り出す。再灌流に伴う酸化的ストレスは、患部組織または患部臓器への傷害を引き起こす場合がある。生化学的には、虚血再灌流障害は、虚血イベント中の酸素の枯渇、その後の再灌流中の再酸素化とそれに付随する活性酸素種の発生、を特徴とする。
虚血/再灌流によって生じる傷害は、虚血中に蓄積する物質と再灌流時に送達される物質との間の相互作用の結果である。これらのイベントの基礎となるものは酸化的ストレスであり、これは活性酸素と内在的除去システムとの間の不均衡と定義される。この結果として細胞傷害および細胞死が生じるが、最初は局所的であったものが、炎症反応が抑制されない場合、最終的には全身的なものとなる。
本発明において、虚血障害または虚血再灌流障害は、臓器障害(虚血臓器における、またはあらゆる他の臓器における)、梗塞、炎症(傷害を受けた臓器または組織における)、酸化的損傷、ミトコンドリア膜電位障害、アポトーシス、再灌流関連不整脈、心臓気絶、心臓脂肪毒性、虚血性瘢痕形成、およびこれらの組み合わせ、を含む群から選択される。
臓器障害」は、特定の臓器が期待される機能を遂行しない状態に関する。外部からの臨床的介入なしでは正常な恒常性を維持できない場合、臓器障害は臓器不全に至る。臓器障害の測定法は当業者に公知であり、限定はされないが、モニターとスコア化を含み、スコア化としては連続的臓器不全評価(sequential organ failure assessment)(SOFA)スコア、多臓器障害(multiple organ dysfunction)(MOD)スコアおよびロジスティック臓器障害(logistic organ dysfunction)(LOD)スコアが挙げられる。
梗塞」については後に定義する。
炎症」、または「炎症反応」は、炎症を起こしている組織で生じている一連の変化に関する。特に、炎症は、病原体、損傷した細胞または刺激物質を含む有害な刺激に対する生物学的反応に関する。炎症の測定法は当該技術分野において公知であり、限定はされないが、赤血球沈降速度(ESR)の測定(高ESRは炎症の徴候)、C反応性タンパク質(CRP)の測定(高レベルのCRPは炎症の徴候)、および、白血球計数(炎症の際に増加)が挙げられる。
酸化的損傷」は、酸素復旧時の反応種の直接的な攻撃によって引き起こされる可能性がある、生体分子の損傷に関する。酸化的損傷は、脂質過酸化、酸化的DNA損傷および酸化的タンパク質損傷を包含し得る。脂質過酸化の測定法としては、限定はされないが、HPLCによるMDA(マロンジアルデヒド)-TBA(チオバルビツール酸)測定、および質量分析によるイソプロスタン(多価不飽和脂肪酸の過酸化による特定の最終産物)の定量化が挙げられる。酸化的DNA損傷の測定法としては、限定はされないが、8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシン(8OHdG)の測定が挙げられる。酸化的タンパク質損傷の測定法としては、限定はされないが、キヌレニン(トリプトファン由来)、バイチロシン(bityrosine)(代謝的に安定と思われ、尿中で検出可能)、バリンおよびロイシンの水酸化物、L-ジヒドロキシフェニルアラニン(Lドパ)、オルト-チロシン、2-オキソ-ヒスチジン、グルタミン酸セミアルデヒドおよびアジピン酸セミアルデヒドを含む個々のアミノ酸酸化生成物の定量化、並びに、カルボニルアッセイ(タンパク質のカルボニル基の測定を含む)が挙げられる。
ミトコンドリア膜電位(Δψm)障害」は、ミトコンドリア内膜を挟んだプロトン勾配形態の膜電位の変化に関する。ミトコンドリア膜電位障害の評価法は当業者に公知であり、JC1色素(セル・テクノロジー社)を含む蛍光プローブを使用しての膜電位のモニタリング、並びに、緑色蛍光(485nmおよび535nm)および赤色蛍光(550nmおよび600nm)の定量化を可能にする励起波長および蛍光波長における全体蛍光の測定が挙げられる。いずれの組織または臓器の長期虚血も、ミトコンドリア膜電位障害を引き起こすことが知られている。
アポトーシス」は、選択的な形式の細胞自殺をもたらす制御された生化学的イベントネットワークに関し、容易に観察可能な形態的現象および生化学的現象、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)の断片化、クロマチンの凝縮(エンドヌクレアーゼ活性と関連している場合も関連していない場合もある)、染色体移動、細胞核の辺縁趨向、アポトーシス小体の形成、ミトコンドリア膨化、ミトコンドリアクリステの拡張、ミトコンドリア膜透過性遷移孔の開口、および/または、ミトコンドリアプロトン勾配の消散、を特徴とする。細胞アポトーシスの測定法は当業者に公知であり、限定はされないが、以下が挙げられる:DNA断片化を測定するアッセイ(細胞透過処理後の染色体DNAの染色を含む)、カスパーゼ3等のカスパーゼの活性化を測定するアッセイ(プロテアーゼ活性定量を含む)、カスパーゼ切断産物を測定するアッセイ(PARPおよびサイトケラチン18分解の検出を含む)、クロマチンクロマトグラフィー検査アッセイ(染色体DNA染色を含む)、DNA鎖切断(ニック)およびDNA断片化(付着DNA末端)を測定するアッセイ(細胞ニックトランスレーションまたはISNTのアクティブ標識および末端標識またはTUNELによる細胞のアクティブ標識を含む)、アポトーシス細胞の表面上のホスファチジルセリンを検出するアッセイ(移行性膜成分の検出を含む)、原形質膜損傷/漏出を測定するアッセイ(トリパンブルー色素排除アッセイおよびヨウ化プロピジウム排除アッセイを含む)。例示的なアッセイとしては以下が挙げられる:フローサイトメトリーによるアポトーシス細胞の散乱パラメータの解析、フローサイトメトリーによるDNA含量解析(ヨウ化プロピジウム等の蛍光色素溶液中でのDNA染色を含む)、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼによるDNA鎖切断の蛍光色素標識すなわちTdTアッセイ、フローサイトメトリーによるアネキシンV結合の解析、およびTUNELアッセイ。
虚血障害または虚血再灌流障害には再灌流関連不整脈が含まれてもよい。「不整脈」は、不整脈(cardiac dysrhythmia)または不整脈(irregular heartbeat)としても知られており、心臓の電気的活動が正常と比べて不規則、速いまたは遅い状態群に関する。心拍は速過ぎる場合(頻拍、100拍/分超)も遅過ぎる場合(徐脈、60拍/分未満)もあり、また規則的な場合も不規則な場合もある。場合によっては、不整脈は心停止を引き起こすことがある。不整脈は心臓の上側の室(心房)で起る可能性もあるし、心臓の下側の室(心室)で起る可能性もある。不整脈の確認は当業者による心電図検査(ECG)によって行われる。
心臓気絶(cardiac stunning)」は、急性虚血のエピソード後に血流がほぼ正常または正常であっても起る、様々なレベルの機能障害を含む。虚血および再灌流の短期エピソードの後、心筋細胞に対する不可逆的傷害の組織学的徴候はないにもかわらず機械的な機能障害が長期に持続するが、この現象を心筋気絶と呼ぶ。気絶は様々な面を含み、虚血後の心室心筋機能障害(心筋の気絶)の他に、血管/微小血管/内皮傷害(血管の気絶)、虚血後の代謝機能障害(代謝的な気絶)、長期に亘る神経伝達の機能障害(神経/ニューロンの気絶)、および電気生理学的変化(電気的な気絶)のエビデンスがある。
心臓脂肪毒性(cardiac lipotoxicity)」は一連の脂肪酸代謝変化、心筋内の脂質過積載および収縮不全を含む。脂質が如何にして心機能障害を誘導するかは不明であるが、心筋内トリグリセリドの蓄積が遺伝子発現の変化と関連している。具体的には、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)によって制御される遺伝子の発現が増加する。PPARαは、長鎖脂肪酸によって活性化された場合に、脂肪酸の取り込みおよび酸化を増加させるタンパク質の発現を誘導する、核内受容体である。高い血中脂肪酸値に曝されたマウスでは、心臓特異的なPPARα過剰発現が心機能障害を誘導する。圧力過負荷なラット心臓における薬理学的なPPARα活性化は収縮不全の一因となる。糖尿病患者および肥満症患者では、脂質過積載組織において、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子α(TNF-α)の発現が増加しており、この発現はインスリン抵抗性と正の相関がある。TNF-αは心臓において収縮不全を直接引き起こす可能性があり、心不全における病理的リモデリングと関連付けられていた。心筋細胞内の過剰な脂質の蓄積は、毒性のある脂質中間体の生成に繋がる場合があり、これにより細胞死が引き起こされる可能性がある。
瘢痕」は、創傷または損傷の治癒後に組織上に残るあらゆる痕跡に関する。特に、この用語は虚血組織に残った痕跡に関する。本発明との関連において、瘢痕形成は虚血により生じる。
虚血障害または虚血再灌流障害は多くの原因により引き起こされる可能性があり、例えば、自然現象(例えば、心筋梗塞後の血流復旧)によって、外傷によって、または、血液供給減少に曝されていた組織もしくは臓器への血流を復旧する1もしくは複数の外科的処置もしくは他の治療介入によって、引き起こされる可能性がある。このような外科的処置としては、例えば、冠動脈バイパス、移植術、冠動脈形成術、臓器移植手術等(例えば、心肺バイパス術)が挙げられる。
特定の実施形態において、虚血障害または虚血再灌流障害は、梗塞、アテローム性動脈硬化、血栓症、血栓塞栓症、脂質塞栓症、出血、ステント、外科手術、血管形成術、外科手術時のバイパス終期、臓器移植、全虚血、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される状態を原因とする。
梗塞」または「梗塞」とは、組織または臓器の動脈供給または静脈排出が閉鎖された後の無酸素によって生じる局所的な虚血性壊死領域に関する。特に、心発作として一般に知られている心筋梗塞(MI)は、心臓の一部への血液の適切な流れるが止まり、心筋が充分な酸素を受け取れないことによって傷害される事象に関する。通常、梗塞は、白血球、コレステロールおよび脂肪の不安定な蓄積により冠動脈の1本が詰まることを原因とする。重要な危険因子として、心血管疾患の前歴、老齢、喫煙、高い血中LDLコレステロール値、高い血中トリグリセリド値、低いHDLコレステロール値、糖尿病、高血圧、運動不足、肥満、慢性腎疾患、過剰な飲酒、並びにコカインおよびアンフェタミンの使用がある。対象が梗塞を患っているか否かを確かめる方法は、当該技術分野において公知であり、限定はされないが、心電図(ECG)による心臓における電気信号の追跡、並びに、心筋損傷と関連する物質、例えばクレアチンキナーゼ(CK-MB)およびトロポニン、に関する血液試料の検査が挙げられる。ECG試験は、トレースの形状に基づいて2種類の心筋梗塞を区別するために用いられる。トレースのSTセクションがベースラインよりも高くなるものはST上昇型心筋梗塞(ST elevation MI)(STEMI)と呼ばれ、通常はより積極的な治療が必要となる。梗塞サイズを測定するための方法は当業者に公知であり、血清試料中のクレアチンキナーゼ(CK)-MB値(Grande P et al. 1982 Circulation 65: 756-764)を含む血清マーカーの測定、塩化トリフェニルテトラゾリウムによる組織染色(Fishbein MC et al. 1981 Am Heart J 101(5): 593-600)、99mテクネチウム(Tc)セスタミビを用いた単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)による心筋血流イメージング、および磁気共鳴が挙げられる。
アテローム性動脈硬化」とは、炎症性細胞(大部分はマクロファージ細胞)および脂質を含有する細胞片で構成される、動脈壁内のアテロームまたは蓄積物によって引き起こされる、あらゆる動脈の硬化に関する。カルシウム、並びにコレステロールおよびトリグリセリド等の脂肪質の蓄積の結果、動脈壁が厚くなる。動脈壁の弾性が減少し、血流が損なわれる。
血栓症」とは、血管の内側での血餅または血栓の形成による、循環系内の血流の妨害に関する。
血栓塞栓症」とは、脱離後に血流によって運ばれ別の血管を塞ぐ、凝血塊(血栓)の血管内形成に関する。凝血塊は肺(肺塞栓症)、脳(脳卒中)、胃腸管、腎臓、または脚の血管を塞ぐ場合がある。
脂質塞栓症(lipid-embolism)」または「脂肪塞栓症(fat embolism)」とは、長い骨外傷または他の大外傷の後に、しばしば無症候性に肺実質および末梢循環に脂肪球が存在することに関する。
出血」とは、血液を失う過程、または特に外科的に、血液を流出させる過程、に関する。特に、動脈または静脈に損傷があり、血液が循環系から漏れ出て身体の内側に集まると、内出血が生じる。内出血は組織内、臓器内、または体腔内で生じる場合がある。
ステント」とは、疾患により誘導された局所的な血流の狭窄を予防または相殺するために、身体内の天然の通路/導管に挿入されるチューブ等のディスポジティブ(despositive)に関する。
外科手術」または「外科的処置」とは、治療または改善を施すための、ヒトまたは他の哺乳動物の身体に対しての、順序だった手の動きまたは器具を持った手の動きを含む、あらゆる治療手技を意味する。
血管形成術」とは、狭窄動脈、または典型的にはアテローム性動脈硬化を原因とする閉塞動脈を機械的に広げる術式に関する。バルーンカテーテルとして知られている、ガイドワイヤーに取り付けられた中身が空の潰れた風船が、狭窄部位に通された後に、正常血圧の約75~500倍もの水圧(6~20気圧)を用いて固定サイズにまで膨張される。バルーンは、血流の改善のために、内側の白血球/凝血塊プラーク堆積物および周囲の筋肉壁を拡張させて血管を広げる。その後バルーンはしぼませられ引き抜かれる。空気注入法の際、血管を確実に広げたままにするためにステントが挿入される場合もあるし、挿入されない場合もある。
バイパス術」とは、管状の身体部分のルートを変更することを含む外科手術の一種に関し、心肺バイパス、部分的空腸バイパス術、空腸回腸バイパス、胃バイパス、および冠動脈バイパス術等の血管バイパスが挙げられる。心肺バイパス(CBP)は、外科手術中に心臓および肺の機能を一時的に引き継ぎ、血液の循環および身体の酸素量を維持する。部分的空腸バイパス術は、小腸の全長を短くするために回腸を短縮することを含む外科的処置である。空腸回腸バイパスは、病的肥満の矯正法として設計された外科手術である。血管バイパスは、身体のある領域への不十分な血流または血流の欠乏に対して行われる外科的処置である。特に、冠動脈バイパス移植(CABG)術としても知られている冠動脈バイパス術は、アンギナの軽減および冠動脈疾患を原因とする死亡リスクの減少のために行われる外科的処置である。
移植」とは、ドナー対象からレシピエント対象に、または同一対象内で身体の一部分から別の部分に、細胞、組織または臓器が移される、外科的処置を意味する。「ドナー対象」とは、輸血または臓器移植により、別の対象のために、血液、細胞、組織、または臓器を与える対象である。前記ドナー対象はヒトまたは別の哺乳動物である。「レシピエント対象」とは、輸血または臓器移植により、別の対象から、血液、細胞、組織、または臓器を受け取る対象である。前記レシピエント対象はヒトまたは別の哺乳動物である。移植された組織には、骨組織、腱、角膜組織、心臓弁、静脈および骨髄が含まれるが、これらに限定はされない。移植された臓器には、心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓および腸が含まれるが、これらに限定はされない。ドナー対象およびレシピエント対象が同一種の遺伝的に異なるメンバーである場合の、特定の移植外科的処置は、同種移植として知られている。すなわち、同種移植(allotransplant)という用語(同種移植(allograft)、同種移植(allogeneic transplant)または同種移植(homograft)としても知られている)は、レシピエントと同種の遺伝的に異なるメンバーから供給された細胞、組織または臓器の移植に関する。用語「同種移植が可能な」とは、臓器または組織が、相対的に頻繁に、または定期的に移植されていることを指す。同種移植が可能な臓器の例としては、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓および腸が挙げられる。ドナー対象およびレシピエント対象が互いに異なる種のメンバーである場合の、特定の移植外科的処置は、異種移植として知られている。すなわち、異種移植(xenotransplant)という用語(異種移植(xenograft)、異種移植(xenogeneic transplant)または異種移植(heterograft)としても知られている)は、互いに異なる種のメンバーであるドナーからレシピエントへと供給された細胞、組織または臓器の移植に関する。
全虚血」とは、動脈および/または静脈の血液供給が閉塞した虚血に関する。
本発明により予防および/または治療しようとする虚血障害または虚血再灌流障害は、対象からの臓器または組織において生じていてもよい。臓器としては、脳、心臓、腎臓、肝臓、大腸、肺、膵臓、小腸、胃、筋肉、膀胱、脾臓、卵巣および精巣が含められるが、これらに限定はされない。特定の実施形態では、前記臓器は心臓、肝臓、腎臓、脳、腸、膵臓、肺、骨格筋およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらに特定の実施形態では、前記臓器は心臓である。組織としては、神経組織、筋組織、皮膚組織および骨組織が含められるが、これらに限定はされない。
特定の側面では、虚血障害または虚血再灌流障害は心筋梗塞によるものである。
心筋梗塞」(MI)は、1本または数本の冠動脈またはそれらの分枝の閉塞による、心筋の一部の虚血性壊死を含む。心筋梗塞は、心筋組織が不可逆的に損傷を受けている、心筋細胞の機能喪失を特徴とする。心筋(myocardium)、または心筋(heart muscle)は、進行性の冠疾患が現れた際に梗塞を被るが、特定の症例では、冠動脈の内側にある粥状斑が腫瘍化または破裂して急性の血管閉塞を起こした際にこれが生じる。
さらに特定の実施形態では、虚血障害または虚血再灌流障害は、冠動脈閉塞(心筋梗塞)と、さらなる血行再建および血液再流とを原因とする。
本発明の医学的用途において、本発明の化合物または医薬組成物は治療有効量で投与される。
用語「治療有効量」とは、本発明の化合物に関連して、または、本発明の医薬組成物に含まれる化合物、賦形剤および/もしくは担体に関連して本明細書で使用される場合、所望の効果を生むために、すなわち、疾患に由来する1または複数の症状の感知され得る予防、治癒、遅延、重症度低減または改善を達成するために十分な、前記化合物、賦形剤および/または担体の量に関し、一般的には、他にも理由はあるが、剤それ自体の特徴および達成しようとする治療効果によって決定される。治療しようとする対象、前記対象が患う疾患の重症度、選択された剤形等にも依存する。そのため、本発明に記載される用量は、前記変数に基づいて用量を調整する必要がある当業者のための目安としてのみ見なされなければならない。1つの実施形態では、有効量によって、治療を行っている疾患の1または複数の症状の改善をもたらされる。
個々の要求が変化しても、本発明で用いるための化合物の治療有効量の最適範囲の決定は、当業者の通常の経験に属する。一般的に、有効な治療を与えるために必要とされる投与量は、当業者が調整することができ、薬物送達系を使用する場合、および化合物が薬剤併用の一部として投与される場合、年齢、健康、適応度、性別、食事、体重、受容体の変化の程度、治療の頻度、傷害の性質および状態、機能障害または疾病の性質および程度、対象の医学的状態、投与経路、薬理学的な考慮事項、例えば、使用される特定の化合物の活性、効能、薬物動態プロファイルおよび毒性プロファイルに応じて変動する。対象における虚血障害または虚血再灌流障害の予防および/または治療において治療効果のある本発明で用いるための化合物の量は、従来の臨床的手法により決定できる(例えば、The Physician’s Desk Reference, Medical Economics Company, Inc., Oradell, NJ, 1995、およびDrug Facts and Comparisons, Inc., St. Louis, MO, 1993を参照)。
本発明で用いるための化合物(すなわち、a)配列番号1のポリペプチド;b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント;c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド;d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター;e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、およびf)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子からなる群から選択される化合物 または本発明の医薬組成物の投与計画は、広い範囲で変動し得る。
好ましい実施形態では、本発明で用いるための化合物または医薬組成物は虚血前に投与される。別の好ましい実施形態では、本発明で用いるための化合物または医薬組成物は再灌流前に投与される。別の実施形態では、本発明で用いるための化合物または医薬組成物は虚血後の再灌流前に投与される。別の実施形態では、本発明で用いるための化合物または医薬組成物は虚血中、好ましくは虚血中の再灌流前、に投与される。
より好ましくは、本発明で用いるための化合物または医薬組成物は、広く変動し得る期間に投与されるが;特定の実施形態では、前記化合物は、虚血もしくは再灌流前の少なくとも1秒前、典型的には再灌流の少なくとも15秒前、少なくとも30秒前もしくは少なくとも45秒前、好ましくは虚血もしくは再灌流の少なくとも1分前、少なくとも5分前、少なくとも10分前、少なくとも15分前、少なくとも30分前、少なくとも45分前、または、さらには虚血もしくは再灌流の少なくとも1時間前、2時間前もしくは3時間前、またはそれよりも前に、投与される。
本発明で用いるための化合物または医薬組成物は、適切であればいかなる投与経路によっても対象に投与でき、例えば、非経口投与(例えば、筋肉内投与、静脈内投与、皮下投与等)、経腸投与(すなわち、経口投与、直腸内投与等)等である。
好ましい実施形態では、本発明で用いるための化合物または医薬組成物は、非経口的に投与され、より好ましくは静脈内経路により投与される。
本発明の対応するポリヌクレオチドを含有する本発明のベクターを、従来法により対象にそのまま投与してもよい。あるいは、前記ベクターを、エキソビボでの細胞、例えばヒトを含む哺乳動物細胞、の形質転換、またはトランスフェクション、または感染に使用してもよく、この細胞が後に人体または動物に移植されることで所望の治療効果が得られる。人体または動物への投与のために、前記細胞は、細胞生存率に対し負の影響を与えない好適な媒体中で製剤化されることとなる。
当業者であれば、Remington’s Pharmaceutical Science (17th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985)、Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics (8th Ed., Pergamon Press, Elmsford, N.Y., 1990)および“Tratado de Farmacia Galenica”, C. Fauli and Trillo, Luzan 5, S.A. de Ediciones, 1993、並びにRemington’s Pharmaceutical Sciences (A.R. Gennaro, Ed.), 20th edition, Williams & Wilkins PA, USA (2000)のような、著名であり入手可能な出典の中で論じられている原理および手順に精通している。
別の好ましい実施形態では、虚血障害または虚血再灌流障害から治療または予防しとうとする対象は、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織において、Gprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示す。
別の好ましい実施形態では、虚血障害または虚血再灌流障害から治療または予防しとうとする対象は、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織において、Gprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示すことにより選択されたものである。
別の好ましい実施形態では、虚血障害または虚血再灌流障害から治療または予防しとうとする対象は、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織におけるGpcrc5aのレベルまたはGprc5aシグナル経路の活性化のレベルを測定することを含む方法により選択されたものである。この場合、治療しようとする対象は、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織においてGprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示す場合に、選択される。
別の好ましい実施形態では、虚血障害または虚血再灌流障害を患う臓器または組織の、Gpcrc5aのレベルまたはGprc5aシグナル経路の活性化のレベルが測定される。
Gprc5a」(G Protein-Coupled Receptor, Class C, Group 5, Member A、retinoic acid-induced protein 3)とは、本明細書で使用される場合、符号となる7回膜貫通領域モチーフを特徴とする3型Gタンパク質共役型受容体ファミリーのメンバーをコードする遺伝子に関する。ヒトのGprc5aタンパク質の配列は、UniProtデータベースの配列Q8NFJ5(2015年12月9日)に一致する。
低レベルの発現」とは、基準値よりも低いGprc5a遺伝子の低レベル発現に関する。発現レベルが、その基準値よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、またはそれ以上により低い場合に、発現レベルは基準値よりも低いと見なされる。
用語「基準値」は、本明細書で使用される場合、対象から採取された試料から得られた値またはデータを評価するための参照として使用される所定の基準を指す。基準値または基準レベルは、絶対値;相対値;上限もしくは下限を有する値;値の範囲;代表値(average value);中央値;平均値(mean value);または、特定の対照値もしくはベースライン値と比較した値とすることができる。基準値は、例えば、試験対象由来の試料から初期時点で得られる値等、個々の試料値をベースとすることができる。基準値は、暦年齢一致群の対象集団等から得られる多数の試料をベースとすることもできるし、あるいは、試験試料を含む、またはそれを除外した試料プールをベースとすることもできる。好ましい実施形態において、基準値は、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患っていない対象における、Gpcrc5aシグナル伝達の活性化レベルに一致する。別の好ましい実施形態では、基準値は、健常対象における、Gpcrc5aシグナル伝達の活性化レベルに一致する。
発現を検出するための方法は、Gprc5aのmRNAまたはタンパク質の検出をベースとすることもできるし、あるいは、試料全体中の、試料としての細胞内の、および/または試料としての非細胞画分中の、mRNAレベルまたはタンパク質レベルおよびそのバリアントのレベルの測定をベースとすることもできる。
mRNAを検出するための方法は当該技術分野において周知であり、例えば、リアルタイムPCR(rtPCR)、ノーザンブロット法、NanoString技術およびマイクロアレイ技術が挙げられる。あるいは、遺伝子の発現が増加している場合、対応するタンパク質の量の増加が起こるはずであり、遺伝子の発現が減少している場合、対応するタンパク質の量の減少が起こるはずであることから、Gprc5a遺伝子にコードされるタンパク質の発現レベルの測定によって、前記遺伝子の発現レベルを測定することも可能である。遺伝子発現レベルの測定法は当該技術分野において広く知られている。
Gprc5aシグナル経路の活性化は、当該技術分野において公知のあらゆる方法で、例えば、PI3K/Akt/NF-κB、PKCおよび/またはRhoのレベルの検出によって、測定されてよい。
医薬組成物に関連した前述の全ての用語および実施形態は、本発明の本側面に等しく適用可能である。

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以下、本発明を、単なる例示であり、本発明の範囲の限定を意図していない以下の実施例によって、さらに詳細に説明する。
本発明は以下の通りである。
[1]対象における虚血障害または虚血再灌流障害の治療および/または予防に用いるための化合物であって、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアントであって、前記機能的に等価なバリアントは、配列番号1に示される配列の1または複数のアミノ酸の欠失、置換または修飾によって生じることを特徴とし、かつ、配列番号2ではない、
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、並びに
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、からなる群から選択される、
前記化合物。
[2]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、梗塞、アテローム性動脈硬化、血栓症、血栓塞栓症、脂質塞栓症、出血、ステント、外科手術、血管形成術、外科手術時のバイパス終期、臓器移植、全虚血、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される状態を原因とする、上記[1]に記載の用途の化合物。
[3]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、心臓、肝臓、腎臓、脳、腸、膵臓、肺、骨格筋およびこれらの組み合わせからなる群から選択される臓器または組織において生じたものである、上記[1]または[2]に記載の用途の化合物。
[4]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、臓器障害、梗塞、炎症、酸化的損傷、ミトコンドリア膜電位障害、アポトーシス、再灌流関連不整脈、心臓気絶、心臓脂肪毒性、虚血性瘢痕形成、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される、上記[1]~[3]のいずれかに記載の用途の化合物。
[5]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、心筋梗塞を原因とする、上記[1]~[4]のいずれかに記載の用途の化合物。
[6]虚血前に投与される、上記[1]~[5]のいずれかに記載の用途の化合物。
[7]虚血中または再灌流前に投与される、上記[1]~[6]のいずれかに記載の用途の化合物。
[8]非経口投与される、上記[1]~[7]のいずれかに記載の用途の化合物。
[9]前記対象が、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織においてGprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示す、上記[1]~[8]のいずれかに記載の用途の化合物。
[10]前記対象が、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織においてGprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示したことにより選択された、上記[1]~[8]のいずれかに記載の用途の化合物。
[11]前記対象が、治療前に、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織におけるGprc5aのレベルまたはGprc5aシグナル経路の活性化のレベルを測定することを含む方法によって選択された、上記[1]~[8]のいずれかに記載の用途の化合物。
[12]第一成分、第二成分および薬剤的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物であって、
前記第一成分は、
a)配列番号1または配列番号2のポリペプチド、
b)a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択され、
前記第二成分は、
a)配列番号3および/または配列番号4のポリペプチド、
b)配列番号3または配列番号4の機能的に等価なバリアント、
c)a)またはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)またはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、並びに
f)a)またはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される、
前記医薬組成物。
[13]配列番号1のポリペプチド、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドまたはこれらの機能的に等価なバリアントを含む、上記[12]に記載の医薬組成物。
[14]対象における虚血障害または虚血再灌流障害の治療および/または予防に用いるための、上記[12]または[13]に記載の医薬組成物。
[15]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、梗塞、アテローム性動脈硬化、血栓症、血栓塞栓症、脂質塞栓症、出血、ステント、外科手術、血管形成術、外科手術時のバイパス終期、臓器移植、全虚血、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される状態を原因とする、上記[14]に記載の用途の医薬組成物。
[16]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、心臓、肝臓、腎臓、脳、腸、膵臓、肺、骨格筋およびこれらの組み合わせからなる群から選択される臓器または組織において生じたものである、上記[14]または[15]に記載の用途の医薬組成物。
[17]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、臓器障害、梗塞、炎症、酸化的損傷、ミトコンドリア膜電位障害、アポトーシス、再灌流関連不整脈、心臓気絶、心臓脂肪毒性、虚血性瘢痕形成、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される、上記[14]~[16]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[18]前記虚血障害または虚血再灌流障害が、心筋梗塞を原因とする、上記[14]~[17]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[19]虚血前に投与される、上記[14]~[18]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[20]虚血中または再灌流前に投与される、上記[14]~[19]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[21]非経口投与される、上記[14]~[20]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[22]前記対象が、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織においてGprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示す、上記[14]~[21]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[23]前記対象が虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織においてGprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示したことにより選択された、上記[14]~[21]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[24]前記対象が、治療前に、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織におけるGprc5aのレベルまたはGprc5aシグナル経路の活性化のレベルを測定することを含む方法によって選択された、上記[14]~[21]のいずれかに記載の用途の医薬組成物。
[25]医薬に用いるための、
a)配列番号1のポリペプチド、
b)配列番号1の1もしくは複数のアミノ酸の欠失、置換もしくは修飾によって生じ、かつ、配列番号2ではない、a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
または、上記[12]~[24]のいずれかに記載の医薬組成物。
[26]虚血障害の治療に用いるための、
a)配列番号2のポリペプチド、
b)配列番号2に示される配列の1以上のアミノ酸の欠失、置換もしくは修飾によって生じることを特徴とする、a)に記載のポリペプチドの機能的に等価なバリアント、
c)a)もしくはb)をコードするポリヌクレオチド、
d)c)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
e)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを培地中に分泌することが可能な細胞、および
f)a)もしくはb)に記載のポリペプチドを含むナノ粒子、
からなる群から選択される化合物、
または、上記[12]~[24]のいずれかに記載の医薬組成物。
[27]前記虚血障害が、梗塞、アテローム性動脈硬化、血栓症、血栓塞栓症、脂質塞栓症、出血、ステント、外科手術、血管形成術、外科手術時のバイパス終期、臓器移植、全虚血(total ischemia)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される状態を原因とする、上記[26]に記載の用途のための化合物または医薬組成物。
[28]前記虚血障害が、心臓、肝臓、腎臓、脳、腸、膵臓、肺、骨格筋およびこれらの組み合わせからなる群から選択される臓器または組織において生じたものである、上記[26]または[27]に記載の用途のための化合物または医薬組成物。
[29]前記虚血障害が、臓器障害、梗塞、炎症、酸化的損傷、ミトコンドリア膜電位障害、アポトーシス、再灌流関連不整脈、心臓気絶、心臓脂肪毒性、虚血性瘢痕形成、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される、上記[26]~[28]のいずれかに記載の用途のための化合物または医薬組成物。
[30]前記虚血障害が心筋梗塞を原因とする、上記[26]~[29]のいずれかに記載の用途のための化合物または医薬組成物。
[31]虚血前に投与される、上記[26]~[30]のいずれかに記載の用途の化合物または医薬組成物。
[32]虚血中に投与される、上記[26]~[31]のいずれかに記載の用途の化合物または医薬組成物。
[33]非経口投与される、上記[27]~[32]のいずれかに記載の用途の化合物または医薬組成物。
[34]前記対象が、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織においてGprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示す、上記[27]~[33]のいずれかに記載の用途の化合物または医薬組成物。
[35]前記対象が、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織においてGprc5aの低レベル発現またはGprc5aシグナル経路の低活性化を示したことにより選択された、上記[27]~[34]のいずれかに記載の用途の化合物または医薬組成物。
[36]前記対象が、治療前に、虚血障害および/または虚血再灌流障害を患う臓器または組織におけるGprc5aのレベルまたはGprc5aシグナル経路の活性化のレベルを測定することを含む方法によって選択された、上記[27]~[35]のいずれかに記載の用途の化合物または医薬組成物。
材料および方法
心筋虚血/再灌流ブタ実験モデルおよび心エコー
26匹の家畜ブタ(ランドレース種とラージホワイト種の交雑種、36~39kg)を、実験手順に先立ち1週間順化させた。その後、動物を無作為に以下の3群に割り付けた:I群)閉胸式の1.5時間の左前下行枝(LAD)冠動脈閉塞、再灌流無し(虚血;n=10);第II群)1.5時間のLAD閉塞、その後2.5時間の再灌流(IdR;n=5);第III群)1.5時間のLAD閉塞、次いで虚血ポストコンディショニング、その後2.5時間の再灌流(IPostCo;n=5)(Vilahur G. et al., Eur Heart J 2012;34:2082-2093)。IPost-Coプロトコルは、以前の報告(Vilahur G. et al.、上記)の通り、20秒間の再灌流および再灌流開始時の20秒間の再閉塞の6サイクルによって誘導した。
シャム手術動物群も含めた(第IV群;シャム;n=6)。
試験プロトコルは施設内倫理委員会(CSIC-ICCC)の承認を受けたものであり、全ての動物手順は、Directive 2010/63/EU of the European Parliament on the protection of animals used for scientific purposesによるガイドラインまたはNIHガイドラインに準拠し、さらにARRIVEガイドライン(Kilkenny C PLoS biology 2010;8:e1000412.)に準拠して行われた。
以前の報告(Vilahur G. et al.、上記)の通り、急性心筋梗塞(AMI)の実験的誘導の12時間に、負荷投与量のクロピドグレルを全ての動物に投与した。血管形成術用バルーンの設置(第一対角枝の下)と閉塞/再灌流のガイドには血管造影画像を用いた。外科的処置の全期間中、心拍数およびECGをモニターした。本発明者らは、断層心エコー図(フィリップス社製iE33)を用いて、冠動脈閉塞前の動物(ベースライン)、閉塞から1.5時間後の再灌流直前の動物、および再灌流期最後の動物(屠殺)全ての、全体的な心機能(すなわち、左室駆出率、LVEF)を評価した(Vilahur G. et al.、上記)。
実験期間の最後に、虚血リスク領域(area-at-risk)(AAR)の輪郭を描くためにエバンスブルー色素を麻酔下の動物に注射し(冠静脈洞)、その後、心臓を停止させ摘出した。虚血心筋のさらなる分子的研究、プロテオミクス研究および共焦点顕微鏡法研究のために、AARから組織を得た(Vilahur G. et al.、上記)。塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)染色により梗塞サイズを評価した。
TUNEL染色
虚血心筋におけるアポトーシス評価を、製造業者(ケミコン社(Chemicon Inc.))のプロトコルに従ってアポトーシス検出キットを用いて、ニック末端のdUTP標識(TUNEL)によって行った。アポトーシス率は視野(平均5視野/動物)当たりのTUNEL陽性心筋細胞数/全細胞数のパーセンテージとして表した。
心筋梗塞のマウスモデル
この試験は、8~10週齢、体重25~30gの雄CH3マウス(ジャクソン研究所)において行った。マウスに無作為に、50μgのDJ-1(完全長組換えヒトDJ-1、MBS143125、純度95%超(n=10);または、DJ-1のC末端ドメインの最後の15アミノ酸が欠失した切断型組換えDJ-1(DJ-1-17)、MBS717208、純度90%超(n=9));または、溶媒対照群用の等量PBS(n=25)を腹腔内注射し、60分後、以前の報告(Bayes-Genis A. et al., J Mol Cell Cardiol 2010;49:771-80)の通りに、LAD冠動脈結紮を45分間行った。動物は、その後屠殺するか(虚血;n=15 PBS、n=5 DJ-1およびn=5 DJ-1-17)、または、2時間の再灌流(IdR;n=10 PBS、n=5 DJ-1およびn=4 DJ-1-17)後に屠殺した。その後、梗塞サイズの形態学的評価(Takagawa J. et al., Journal of applied physiology 2007;102:2104-11)、白血球浸潤の定量化、およびマウス遺伝子発現変化の確認のために、心臓を慎重に摘出した。虚血を行わない同一の操作手順に供されたシャム手術動物群(N=4)も含めた。
心筋梗塞のラットモデル
この試験は、8~10週齢、体重250~300gの雄SDラット(ジャクソン研究所)において行った。MIは、以前の報告(Bayes-Genis A. et al., J Mol Cell Cardiol 2010;49:771-80)の通りにLAD冠動脈結紮を45分間行うことで誘導した。虚血の10分後、ラットに無作為に、0.86mg/kgのDJ-1-17(DJ-1のC末端ドメインの最後の15アミノ酸が欠失した切断型組換えヒトDJ-1、純度90%超(n=7);または、溶媒対照群用の等量PBS(n=7)を腹腔内注射した。DJ-1-17投与の35分後(虚血の45分後)に、動物は屠殺するか(虚血;n=4 PBSおよびn=4 DJ-1-17)、または、7日間の再灌流(IdR; n=3 PBS、 n=3 DJ-1-17)後に屠殺した。その後、梗塞サイズの形態学的評価(Takagawa J. et al., Journal of applied physiology 2007;102:2104-11)のために、心臓を慎重に摘出した。
プロテオミクス、トランスクリプトミクスおよびインシリコバイオインフォマティクス
虚血心筋から得たタンパク質抽出物を二次元電気泳動(2-DE)(n=3/群)で分離し、目的のタンパク質スポットを以前の報告(Vilahur G. et al.、上記)の通りにMALDI-TOF/TOFで同定した。
DJ-1を介する心臓保護に関与している可能性がある経路を特定するため、DJ-1投与有り/無しの虚血/再灌流のマウスモデルにおける心筋遺伝子発現変化を、プラットフォーム(GeneChip Mouse Gene 1.0ST;アフィメトリクス社)を用いて解析した。生データはNCBIのGene Expression Omnibusに寄託されている(受入番号:GSE66307)(Edgar R, et al., Nucleic acids research 2002;30:207-10)。IPA(インジェヌイティー・システムズ社、www.ingenuity.com)を利用して、統計的に重要なネットワークおよび規範経路を解析した。
選択したマーカーを、リアルタイムPCR(Nos2、Gprc5、カスパーゼ-3、およびSOD2)、ウエスタンブロット(Thr155リン酸化p53)および免疫組織化学分析(DJ-1、iNOS、8-ヒドロキシグアノシン(8HOG)、および切断型カスパーゼ-3)によって確認した。
統計解析
特に記載がない限り、連続変数は中央値および四分位範囲として表す。ノンパラメトリックなクラスカル・ワリス検定(調整無しの多重比較)およびマン・ホイットニー検定(群間差異)により統計解析を行った。スピアマンの相関によって相関測定を行った。全ての統計解析は、両側検定として行い、0.05未満のP値を有意とし、統計ソフトウェアパッケージStatviewを用いて行った。
実施例1:IPost-Coは心臓の全体性能を改善する
この試験は以下の3群から構成された:I群)閉胸式の1.5時間のLAD冠動脈閉塞、再灌流無し(虚血;n=10);第II群)1.5時間のLAD閉塞、その後2.5時間の再灌流(IdR;n=5);第III群)1.5時間のLAD閉塞、次いで虚血ポストコンディショニング、その後2.5時間の再灌流(IPostCo;n=5)。IPost-Coプロトコルは、以前の報告の通り、20秒間の再灌流および再灌流開始時の20秒間の再閉塞の6サイクルによって誘導した。虚血を行わない以外は同一の操作手順に供されたシャム手術動物群も含めた(第IV群;シャム;n=6)。IPost-Coの恩恵は、2.5時間の再灌流後の、心機能および梗塞サイズ減少の臨床評価および形態評価により評価した。以前の公表(Vilahur G. et al.、上記)の通り、この最大虚血刺激の動物モデルでは、虚血は全ての動物において、顕著かつ同様に、心臓の全体性能(LVEF)を38[36~43]%減弱し、これは際立った中隔-心尖部壁運動消失によって可視化された。2.5時間の再灌流後にはさらなる有意な変化は検出されなかったが(36[33-38]%);IPost-Coは他の全ての群に対してLVEFにおける10%の改善をもたらした。平均心拍数は異なる動物群の間で同様であり、手順全体を通して一定を維持した(75[72-76]~73[70-76]%)。これらの動物の心筋試料において、本発明者らは、プロテオミクス・システム生物学的なアプローチを適用することで、この有意な臨床的改善の裏にある機構を調べた。
実施例2:虚血心筋、再灌流心筋およびポストコンディショニング心筋のプロテオソーム
306のスポットが、虚血リスク領域(AAR)の心筋組織抽出物中で、一貫して検出された。同定されたスポットのうち28種が29種の非冗長性ミトコンドリア関連タンパク質と一致した。
実施例3:インシリコバイオインフォマティクス
同定されたタンパク質のバイオインフォマティクス的解析により、異なる処置群の間で、前記ミトコンドリア機能異常およびアポトーシスの規範経路に有意な変化があることが分かった(P<0.0001)。複合体I、複合体IIIおよび複合体Vが有意な影響を受けていた。さらに、プロテオミクス的な特徴は、細胞死・細胞生存ネットワークのタンパク質に属していた(P<0.0001)。
ミトコンドリア機能異常関連タンパク質を、シャム手術動物の非虚血心筋と比較して、虚血心筋において解析したところ(虚血の効果)、異なる影響を受けたタンパク質は、主に下方制御を受けており、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体I(NADH脱水素酵素)、複合体III(シトクロムbc1複合体)、および複合体V(ATPシンターゼ)に局在していた(P<0.0001)。再灌流の効果を理解するために同じ解析を行い、直接再灌流後の結果と虚血後の結果を比較したところ(再灌流の効果)、同じ複合体が影響を受けており(P<0.0001)、主に、複合体Iおよび複合体IIが下方制御を、複合体Vのβサブユニットが下方制御、並びにATP合成酵素のαサブユニットが上方制御を示した。IPost-Coの効果を特定するため、IPost-Coに供された動物の心筋と虚血に供された動物の心筋との間で;さらに、IPost-Co心筋と直接再灌流との間で、比較を行った。両方の場合で、前記3つの複合体においてタンパク質の上方制御が検出された(P<0.0001)。IPost-Coは、シャム手術動物と比較した場合、複合体Iおよび複合体IIIのタンパク質の上方制御、並びに複合体Vのタンパク質の減少を示し、一方、直接再灌流は、シャム手術動物と比較して、複合体I、複合体III、および複合体Vを下方制御した。
実施例4:IPost-Coは心筋において抗酸化的なミトコンドリア関連タンパク質を誘導することによって虚血により誘導された変化を複す
虚血動物および虚血/再灌流動物の心筋は15種のミトコンドリア関連タンパク質の減少を示したが、一方、IPost-Coは、20種のミトコンドリア関連タンパク質の増加を誘導することで、それらの変化の47%超を正常化した。
変化を示した同定タンパク質のうち、IPost-Coによって最も影響を受けたものの1つであり、細胞質局在およびミトコンドリア局在の両方を示した唯一のタンパク質は、DJ-1タンパク質であった。
DJ-1は、心筋プロテオームにおいて2つのスポットとして同定され、1つは完全長DJ-1と一致する20kDaのスポットであり、もう1つは17kDaのスポットであった(図1A)。合計DJ-1強度は、虚血心臓よりも(IPost-Co:33[25~41]とI:11[8.6~12]とで比較;P<0.05)、また、直接再灌流を受けた心臓よりも(IdR:6.9[5.6~8.6];P<0.05;図1B)、IPost-Co動物の心筋において有意により高かった。最も高いレベルは17kDa型において検出され、IdR(IPost-Co:26[20~35]とIdR:4.4[3.5~7.3]とで比較;P<0.05)および虚血単独(I:8.6[6.5~8.9];P<0.05;図1A)と比較して6倍の増加を示した。
同一動物の心筋組織試料におけるDJ-1遺伝子発現をrt-PCRにより評価した。DJ-1遺伝子発現は、検討された手順によって高度に調節された(P<0.001;図1C)。特に、虚血および直接再灌流の両方が、シャム手術動物と比較した場合に、DJ-1遺伝子転写の有意な減少を誘導した(S:0.55[0.52~0.65]とI:0.31[0.25~0.38]との比較;および、IdR:0.33[0.29~0.41]との比較;両方の比較でP<0.05)。IPost-Coは、IおよびIdRと比較した場合だけでなく(IPost-Co:4.49[3.35~4.72];両方の比較でP<0.05)、シャム手術動物と比較した場合も(P<0.05)、DJ-1遺伝子発現の有意な増加を誘導した。
IPost-Coは、DJ-1関連ストレス応答タンパク質GRP75(別名モータリンまたはstress-70 protein mitochondrial)にも影響を与えた。このタンパク質は、pIが5.9、分子量が74kDaの単一スポットとして同定された。IによってもIdRによっても有意な変化は誘導されなかったが、IPost-Coにより処置された心臓は、IdR動物と比較した場合に3.3倍高いGRP75強度レベルを示した(IPost-Co:28[19~32]とIdR:8.3[6.8~9.0]との比較;P<0.05;図2A)。興味深いことに、GRP75遺伝子発現は治療介入に関連した重要な変化も示した(P<0.0001;図2B)。虚血は、シャム手術動物と比較した場合に、GRP75遺伝子転写の有意な下方制御を誘導した(I:0.34[0.25~0.53]とS:1.19[0.96~1.38]との比較;P<0.05)。一方で、IdRは、虚血心臓と比較した場合に、GRP75遺伝子転写の僅かではあるが有意な増加を誘導した(IdR:0.67[0.66~0.69];P<0.05)。IPost-Co群で最も強い変化が検出され(IPost-Co:6.60[5.50~8.16])、虚血心筋(P<0.05)、IdR(P<0.05)、およびシャム手術動物(P<0.05)と比較した場合に、GRP75遺伝子転写が有意に上方制御されたことを示した。
公知の抗酸化タンパク質であるペルオキシレドキシン-6も、虚血心臓と比較した場合に、IPost-Coで処置された心臓の心筋において有意な増加を示した(IPost-Co:8.4[5.9~9.9]とI:2.3[2.1~2.4]との比較;P<0.05;図2C)。ペルオキシレドキシン-6遺伝子転写も、治療介入による影響を受けた(P<0.001;図2D)。ペルオキシレドキシン-6発現は、シャム手術動物の心筋と比較した場合に、虚血および直接再灌流によって有意に下方制御された(S:0.60[0.52~0.78]とI:0.29[0.21~0.34]との比較;および、IdR:0.33[0.29~0.4]との比較;両方の比較でP<0.05)。逆に、ペルオキシレドキシン6遺伝子転写は、IPost-Coによって有意な上方制御を受けた(IPost-Co:5.22[4.52~6.36];I、IdRおよびシャム手術動物との比較でP<0.05)。
異なる再灌流戦略に関連してこれらのストレス関連タンパク質において確認された変化が、虚血心筋における酸化的ストレスレベルに影響を与え得るかどうかを調べるために、本発明者らは、免疫組織学的解析により、DNA酸化的ストレス損傷の公知のマーカーである8-ヒドロキシグアノシン(8HOG)の心筋内含量を解析した。IdRに供された動物が、シャム手術動物と比較した場合に、虚血心筋内の8HOGレベルにおいて重大な増加を示した(P<0.05;図3Aおよび図3B)。逆に、IPost-Coに供された動物は、シャム手術動物の値と同程度の低い8HOG値を示した(P<0.05、IおよびIdRとの比較;図4Aおよび図4B)。心筋内8HOGレベルは虚血心筋中のこれら3種のストレス関連タンパク質(DJ-1(図3C)、GRP75(図3D)およびPRDX6(図3E))の含量と逆相関しており、このことは酸化的ストレス制御におけるこれらのタンパク質の直接的な役割を浮き彫りにしている。
さらに、本発明者らは、酸化的ストレス関連細胞死の指標として、虚血心筋におけるリン酸化p53のレベルをウエスタンブロットにより評価した(図4A)。リン酸化p53レベルは、虚血単独に供された動物と比較した場合に、IdRに供された動物において有意に増加した(P<0.05)。一方、IPost-Coは、直接再灌流と比較した場合に、心筋におけるリン酸化p53レベルを有意に低下させた(P<0.05)。虚血心筋内の総DJ-1タンパク質レベル(図4B)および総GRP75タンパク質レベル(図4C)は、リン酸化p53レベルと有意に逆相関していた。
実施例5:IPost-Co後の心筋組織におけるDJ-1およびGRP75の検出増加
次に、本発明者らは、ミトコンドリアおよびDJ-1を染色する、心筋組織切片の共焦点顕微鏡解析を行った。シャム手術動物、虚血に供された動物、および直接再灌流に供された動物では、DJ-1は主に細胞質に局在していた。代わって、IPost-Co処置動物の心筋では、DJ-1のミトコンドリア局在に強い増加が見られた。
同様に、シャム手術動物、虚血に供された動物、および直接再灌流に供された動物では、GRP75は主に細胞質に局在していた。IPost-Co処置動物は、心筋におけるGRP75のミトコンドリア局在に強い増加を示した。
実施例6:DJ-1の全身投与はIdR障害を防ぐ
原理証明試験として、二重盲検試験設計(治療介入術者および解剖病態学的解析に関して盲検的)において、マウスを組換えDJ-1タンパク質(50μg、腹腔内、治療介入の1時間前)で前処置した。動物をLADの結紮により45分間の虚血に曝した。コンピュータ支援形態学的評価によって、DJ-1での前処置が、虚血後に梗塞サイズを減少させたことが明らかとなった(図5A)。DJ-1処置動物は、虚血後にプラセボ処置コントロールより25%小さい梗塞を示した。興味深いことに、虚血に供された動物および再灌流に供された動物の梗塞サイズは、DJ-1処置後に75%の減少を示した(P<0.05)。DJ-1処置群における心筋内DJ-1含量の増加が免疫組織化学により確認された。梗塞サイズ減少に対するDJ-1を介した保護効果は、好中球およびマクロファージの両方の浸潤の、検出不能なレベルへの減少と関連していた(P<0.05;それぞれ図6Aおよび図6B)。
実施例7:心筋におけるDJ-1作用のトランスクリプトーム解析
虚血/再灌流に曝されたマウスの心筋を、トランスクリプトミクスによる解析に供し、最も影響を受けた遺伝子を特定した。虚血前および直接再灌流前のDJ-1投与が、プラセボ処置動物と比較した場合に、多遺伝子的な応答を誘導したことが、明確に区別された遺伝子集団によってヒートマップに示された。検出された変化のうち、DJ-1は、Gprc5a等のGタンパク質共役型受容体のトランスクリプトーム特性に差異を誘導した。実際に、DJ-1前処置後の遺伝子発現差異のコンピュータによるシステム生物学的解析によって、Gαq-シグナル伝達規範経路における有意な変化が明らかとなった。
マクロファージにおけるNOおよびROS生成に関与する規範経路も、DJ-1前処置によって変化した。
さらに、DJ-1前処置無しでIdRに供されたマウスと比較して、DJ-1処置マウスはIdR後に、アポトーシスエフェクターであるカスパーゼ-7の1.2倍の遺伝子発現減少(P=0.008)と、抗アポトーシス因子であるBcl2a1dの1.3倍の発現増加(P=0.003)とを同時に示した。
観察されたGタンパク質共役型受容体Gprc5aの遺伝子発現変化を、rt-PCRで確認した。Gprc5a遺伝子発現は、プラセボ群と比較して、再灌流に供されたDJ-1前処置動物において1.7倍の有意な増加を示した(P<0.05;図7A)。DJ-1処置マウスの心筋組織において有意なNos2遺伝子発現減少(1.6倍の減少;P<0.05;図7B)が証明されたことで、NO生産に関与する規範経路におけるDJ-1前処置の影響についても確認された。
観察されたアポトーシスの変化を、アポトーシス実行の重要なエフェクターとして、カスパーゼ-3遺伝子発現レベルのrt-PCR解析により、確認した。DJ-1処置は、DJ-1無しIdR動物と比較した場合に、カスパーゼ-3遺伝子発現の有意な減少を誘導した(P=0.01;図7C)。同様に、DJ-1処置は、プラセボ動物と比較した場合に、IdRに供されたマウスにおいて、切断型カスパーゼ-3の心筋内含量の有意な減少も誘導した(P<0.05;図8A)。さらに、IdRのマウスモデルにおける共焦点顕微鏡法で、DJ-1投与がTUNEL陽性細胞%を有意に減少させることができることが観察された(P=0.009;図8B)。
実施例8:心筋におけるDJ-1処置の抗酸化作用
酸化的ストレス関連経路におけるDJ-1処置の効果を調べるために、本発明者らは、マウス心筋内のiNOSおよび8HOGの含量を免疫組織化学で解析した。DJ-1投与は、虚血および再灌流の後に認められた高レベルのiNOS(図9A)および8HOG(図9B)の両方を減少させることができた。心筋における、DJ-1含量とiNOS含量(図9C)との間、およびDJ-1レベルと8HOGレベル(図9D)との間には、有意な逆相関が見られた。iNOSの心筋内含量は8HOGレベルと有意に正相関していた(図9E)。すなわち、この免疫組織学的解析により、アレイ遺伝子発現解析で得られたデータが確認され、DJ-1による心筋損傷保護におけるiNOS酸化的ストレス経路の関与が明らかにされた。
プラセボ群と比較した場合、再灌流に供されたDJ-1前処置動物における、DJ-1処置後のSOD2遺伝子発現レベルには、効果が見られなかった(P=0.248)。
実施例9:切断型DJ-1-17の全身投与は心筋虚血からのより高度な保護を及ぼす
プロテオーム解析の結果、IPost-Co応答性の心筋内DJ-1レベルの変化が、DJ-1の17kDaバリアントにおいて最も強く見られることが明らかとなったため(図1A)、本発明者らは、DJ-1切断型17kDaバリアントの投与が、完全長DJ-1ペプチドの投与後に認められた心臓保護効果と比較して、さらなる心臓保護効果を発揮するかどうかを調べた。このために、本発明者らは、DJ-1のC末端ドメインの最後の15アミノ酸が欠失したDJ-1の切断型バリアント(DJ-1-17)を合成した。同じ実験条件でのDJ-1-17投与は、DJ-1処置動物で観察された梗塞サイズと比較した場合に、平均86%の梗塞サイズ減少を誘導することによって虚血に対してより強い保護効果を発揮した(P=0.04;図10)。虚血および直接再灌流に供された動物における保護効果は、DJ-1-17前処置後およびDJ-1前処置後において類似していた(それぞれ平均64%および平均76%の梗塞サイズ減少;P=NS;図10)。
実施例10:DJ-1-17の全身投与は急性虚血および長期IdR障害を予防する
概念実証として、また、臨床背景においてのその有望な治療効果を実証するために、ラットを、二重盲検試験設計(治療介入術者および解剖病態学的解析に関して盲検的)において、虚血の確立後に(10分間のLAD冠動脈結紮の後に)、組換えDJ-1-17タンパク質(0.86mg/kg、腹腔内)で処置した。動物は合計45分間の虚血に曝された。コンピュータ支援形態学的評価によって、DJ-1-17での前処置が、虚血後に梗塞サイズを減少させたことが明らかとなった(図11A)。DJ-1-17処置動物は、虚血後にプラセボ処置コントロールよりも44%小さい梗塞を示した(P=0.04)。興味深いことに、虚血および7日間の再灌流に供された動物の梗塞サイズも、DJ-1-17処置後に平均35%の減少を示した(図11B;P<0.08)。これらの結果から、MI発症後の急性虚血障害を低減するDJ-1-17処置の有望な治療効果と、その保護効果が長期に維持されることは明らかである。

Claims (11)

  1. 対象における虚血障害または虚血再灌流障害の治療および/または予防に用いるための医薬組成物であって、
    a)配列番号1のポリペプチド
    )a)をコードするポリヌクレオチド、
    )に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
    )a)を培地中に分泌することが可能な細胞、並びに
    )a)を含むナノ粒子、
    からなる群から選択される、化合物
    を含んでなる医薬組成物。
  2. 第一成分、第二成分および薬剤的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物であって、
    前記第一成分は、
    a)配列番号1のポリペプチド
    )a)をコードするポリヌクレオチド、
    )に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
    )a)を培地中に分泌することが可能な細胞、および
    )a)を含むナノ粒子、
    からなる群から選択され、
    前記第二成分は、
    a)配列番号3のポリペプチド、配列番号4のポリペプチドまたは配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドおよび配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    )a)をコードするポリヌクレオチド、
    )に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、
    )a)を培地中に分泌することが可能な細胞、並びに
    )a)を含むナノ粒子、
    からなる群から選択される、
    前記医薬組成物。
  3. 請求項2に記載の医薬組成物であって、配列番号1のポリペプチド、配列番号3のポリペプチドおよび配列番号4のポリペプチドを含んでなる、医薬組成物。
  4. 対象における虚血障害または虚血再灌流障害の治療および/または予防に用いるための、請求項2または3に記載の医薬組成物。
  5. 前記虚血障害または虚血再灌流障害が、梗塞、アテローム性動脈硬化、血栓症、血栓塞栓症、脂質塞栓症、出血、ステント、外科手術、血管形成術、外科手術時のバイパス終期、臓器移植、全虚血(total ischemia)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される状態を原因とする、請求項1または4に記載の医薬組成物。
  6. 前記虚血障害または虚血再灌流障害が、心臓、肝臓、腎臓、脳、腸、膵臓、肺、骨格筋およびこれらの組み合わせからなる群から選択される臓器または組織において生じたものである、請求項1または4に記載の医薬組成物。
  7. 前記虚血障害または虚血再灌流障害が、臓器障害、梗塞、炎症、酸化的損傷、ミトコンドリア膜電位障害、アポトーシス、再灌流関連不整脈、心臓気絶、心臓脂肪毒性、虚血性瘢痕形成、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項1または4に記載の医薬組成物。
  8. 前記虚血障害または虚血再灌流障害が心筋梗塞を原因とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  9. 虚血前に投与される、請求項5~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  10. 虚血中に投与される、請求項5~のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  11. 非経口投与される、請求項10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
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