JP7276798B2 - マイクロ流路デバイス及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロ流路デバイス及びその製造方法に関する。
近年、半導体集積回路の製造に使われる微細加工技術を応用したマイクロ流路デバイスの開発、及びマイクロ流路デバイスを用いた研究が広く行われている。マイクロ流路デバイスは、従来使用されていた培養皿又はガラス器具と比較して空間体積が非常に小さくなるため、試薬量、廃液量及び細胞数の低減、並びに、分析時間の短縮等、化学的な実験及び生物学的な実験の効率化等が図れると期待されている。
特開2015-062878号公報 特開2015-064321号公報 特開2015-108616号公報 特許第5008087号公報
このようなマイクロ流路デバイスは、通常マイクロ流路を備えたガラス板と、上記マイクロ流路の蓋として機能するカバーガラスとを貼りあわせて製造するが、貼りあわせる際に接着剤を用いたり(特開2015-062878号公報(特許文献1)、特開2015-064321号公報(特許文献2))、又は貼りあわせた後に高温(例えば、600℃)で加熱する必要がある。
しかし、上記接着剤の成分、及び高温の環境は、タンパク質等の生体高分子の失活及び細胞の死滅を引き起こすため、予めガラス板上のマイクロ流路にタンパク質又は細胞を固定してからカバーガラスを貼りあわせることは不可能であった。また、マイクロ流路を備えたガラス板と、カバーガラスとを貼りあわせてから目的の細胞等をマイクロ流路に導入して、所定の位置に細胞を固定することも検討されているが、適用できる細胞の種類等が限られていた。さらにこのような方法でタンパク質又は細胞をマイクロ流路内に固定する場合、通常1つのマイクロ流路に対して1種のタンパク質等しか固定することができず、複数種類のタンパク質又は細胞を1つのマイクロ流路内にそれぞれ分離して固定することは不可能であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温で不安定な試料でも固定可能なマイクロ流路デバイス及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、所定の表面処理がされた2枚の基板(例えば、ガラス板)を重ねあわせて、室温等の所定の温度にて所定の圧力を上記基板に加えることでマイクロ流路デバイスを製造できることを見出し、本願発明を完成させた。すなわち、本願は以下の発明に関する。
[1]第1基板及び第2基板が互いに対向する面において接合してなるマイクロ流路デバイスであって、
上記対向する面に形成され、供給液を流す少なくとも1つの流路と、
上記流路の少なくとも一部の表面と上記流路に隣接する表面とを含む撥液領域と、
上記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、上記第1基板及び上記第2基板を接合する接合領域と、
上記流路上及び/又は上記流路に対向する表面において試料を固定する試料固定領域と、を備え、
上記撥液領域は、上記供給液と上記試料を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
上記試料固定領域は、上記試料を含む液体に対する接触角が上記撥液領域における接触角よりも小さく、
上記試料は、上記試料固定領域に固定されていて、
上記接合領域における上記第1基板及び上記第2基板が直接接合している面積の割合が上記接合領域全体の面積に対して、7%以上100%以下である、マイクロ流路デバイス。
[2]上記第1基板及び上記第2基板は、それぞれ独立にガラス又はシリコン系エラストマーを含む、[1]に記載のマイクロ流路デバイス。
[3]上記撥液領域は、フッ素化シラン化合物又はフッ素樹脂が固定されている、[1]又は[2]に記載のマイクロ流路デバイス。
[4]上記試料は、細胞、タンパク質、糖、核酸、低分子有機化合物及び触媒からなる群から選ばれる1種以上を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のマイクロ流路デバイス。
[5]外部に連通する少なくとも1つの導入口と、
外部に連通する少なくとも1つの排出口と、を更に含み、
上記少なくとも1つの流路は、上記導入口から供給された上記供給液を上記排出口に流す流路である、[1]~[4]のいずれかに記載のマイクロ流路デバイス。
[6]上記少なくとも1つの流路内に設けられた電極を更に有する、[1]~[5]のいずれかに記載のマイクロ流路デバイス。
[7]同一の上記流路上に設けられる上記試料固定領域は、その数が1~100である、[1]~[6]のいずれかに記載のマイクロ流路デバイス。
[8]第1基板と、第2基板とを含む、マイクロ流路デバイス用キットであって、
上記第1基板及び上記第2基板は互いに対向する面において接合することによりマイクロ流路デバイスを構成し、上記マイクロ流路デバイスは、
上記対向する面に形成され、供給液を流す少なくとも1つの流路と、
上記流路の少なくとも一部の表面と上記流路に隣接する表面とを含む撥液領域と、
上記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、上記第1基板及び上記第2基板を接合する接合領域と、
上記流路上及び/又は上記流路に対向する表面において試料を固定する試料固定領域と、を備え、
上記撥液領域は、上記供給液と上記試料を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
上記試料固定領域は、上記試料を含む液体に対する接触角が上記撥液領域における接触角よりも小さい、マイクロ流路デバイス用キット。
[9]上記第1基板及び上記第2基板を重ね合わせて固定するための治具を更に含む、[8]に記載のマイクロ流路デバイス用キット。
[10]上記マイクロ流路デバイスは、外部に連通する少なくとも1つの導入口と、外部に連通する少なくとも1つの排出口と、を更に含み、
上記少なくとも1つの流路は、上記導入口から供給された上記供給液を上記排出口に流す流路である、[8]又は[9]に記載のマイクロ流路デバイス用キット。
[11]上記第1基板は、上記導入口、上記排出口、上記撥液領域及び上記接合領域を備え、
上記第2基板は、上記流路、上記撥液領域、上記接合領域及び上記試料固定領域を備える、[10]に記載のマイクロ流路デバイス用キット。
[12]他の基板と共に互いに対向する面において接合することによりマイクロ流路デバイスを構成する、マイクロ流路デバイス用基板であって、
供給液を流す少なくとも1つの流路と、
上記流路の少なくとも一部の表面と上記流路に隣接する表面とを含む撥液領域と、
上記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、上記他の基板と接合する接合領域と、
上記流路上において試料を固定する試料固定領域と、を備え、
上記撥液領域は、上記供給液と上記試料を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
上記試料固定領域は、上記試料を含む溶液に対する接触角が上記撥液領域における接触角よりも小さい、マイクロ流路デバイス用基板。
[13]第1基板と、第2基板とを含み、
供給液を流す少なくとも1つの流路と、を備えるマイクロ流路デバイスの製造方法であって、
上記第1基板及び上記第2基板を準備する工程と、
上記第1基板及び上記第2基板が互いに対向する面において接合するように上記第1基板及び上記第2基板を重ね合わせ、10~250℃で加圧しながら上記第1基板及び上記第2基板を接合する工程と、を含み、
上記少なくとも1つの流路は上記対向する面に形成される、製造方法。
[14]上記第1基板及び上記第2基板を準備する工程は、上記対向する面の少なくとも一部を酸素プラズマ、酸化剤及び酸からなる群から選ばれる少なくとも1種で表面処理することを含む、[13]に記載の製造方法。
[15]上記第1基板及び上記第2基板を準備する工程は、上記対向する面の少なくとも一部を洗剤で洗浄することを含む、[13]に記載の製造方法。
[16]上記マイクロ流路デバイスは、外部に連通する少なくとも1つの導入口と、外部に連通する少なくとも1つの排出口と、を更に含み、
上記少なくとも1つの流路は、上記導入口から供給された上記供給液を上記排出口に流す流路である、[13]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、高温で不安定な試料でも固定可能なマイクロ流路デバイス及びその製造方法を提供することが可能になる。
本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの模式斜視図(a)及び模式断面図(b)である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの他の態様を示す模式分解図である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す模式図である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す模式図である。 ラプラス圧を説明する概念図である。 従来から用いられている遺伝子改変動物の作製工程を示す模式図である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いた遺伝子改変動物の作製工程を示す模式図である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いたリーク試験の結果を示す写真である。 マイクロ流路デバイス内に固定された細胞の状態を示す写真である。 ガラス板上において固定された細胞のパターンを示す写真である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す模式図である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いたリーク試験を説明する写真(a、c、d、e)、模式図(b)及びグラフ(f)である。 マイクロ流路デバイス内に固定されたタンパク質の状態を示す写真である。 マイクロ流路デバイス内に固定された細胞の状態を示す模式図(a)及び写真(b、c、d、e、f)である。 マイクロ流路デバイス内に固定された細胞の状態を示す模式図(a)及び写真(b、c、d、e)である。 マイクロ流路デバイス内に固定された細胞の状態を示す模式図(a)及び写真(b、c、d、e)である。 マイクロ流路デバイス内に固定された細胞の状態を示す模式図(a)及び写真(b、c、d、e)である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いたリーク試験の結果を示す写真である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す模式図及び写真である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す模式図である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す模式図及び写真である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す写真である。 本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの製造工程を示す模式図及び写真である。
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
(マイクロ流路デバイス)
図1は、本実施形態に係るマイクロ流路デバイスの模式斜視図(a)及び模式断面図(b)である。本実施形態に係るマイクロ流路デバイス100は、
第1基板10及び第2基板20が互いに対向する面において接合してなるマイクロ流路デバイス100であって、
上記対向する面に形成され、供給液を流す少なくとも1つの流路3と、
上記流路3の少なくとも一部の表面と上記流路3に隣接する表面とを含む撥液領域4と、
上記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、上記第1基板10及び上記第2基板20を接合する接合領域5と、
上記流路3上及び/又は上記流路3に対向する表面において試料7を固定する試料固定領域6と、を備え、
上記撥液領域4は、上記供給液と上記試料7を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
上記試料固定領域6は、上記試料7を含む液体に対する接触角が上記撥液領域4における接触角よりも小さく、
上記試料7は、上記試料固定領域6に固定されていて、
上記接合領域5における上記第1基板10及び上記第2基板20が直接接合している面積の割合が上記接合領域5全体の面積に対して、7%以上100%以下である。
上記マイクロ流路デバイス100は、外部に連通する少なくとも1つの導入口1と、外部に連通する少なくとも1つの排出口2と、を更に含み、上記少なくとも1つの流路3は、上記導入口1から供給された上記供給液を上記排出口2に流す流路であってもよい。
本実施形態に係るマイクロ流路デバイス100は、後述するように所定の表面処理がされた2枚の基板(例えば、ガラス板)を重ねあわせて、室温等の所定の温度にて所定の圧力を上記基板に加えることで製造できるため、高温で不安定な試料(例えば、細胞、タンパク質)でもあらかじめデバイス内に固定が可能である。
「マイクロ流路デバイス」とは、マイクロ流路を有するデバイスを意味する。ここで、本実施形態における「マイクロ流路」とは、流路の幅又は直径が1μm以上1cm以下であり、水又は有機溶媒等を含む液体をその内部に流すための流路を意味する。
第1基板10は、表面にシラノール基を有する化合物であれば特に制限されないが、ガラス又はシリコン系エラストマーを含むことが好ましい。
ガラスとしては、例えば、軟質ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、鉛ガラス)、硬質ガラス(例えば、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス、無アルカリガラス、アルミノケイ酸ガラス)が挙げられ、ホウケイ酸ガラスが好ましく用いられる。上記ガラスは市販品を用いてもよい。市販品のガラスとしては、例えば、松浪硝子工業社製のテンパックス(ホウケイ酸ガラス)、松浪硝子工業社製のプレクリン水縁磨(ソーダ石灰ガラス)、信越化学工業社製のVIOSIL(石英ガラス)等が挙げられる。
シリコン系エラストマーとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のポリアルキルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン等のポリアルキルビニルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン及びポリアルキルハイドロジェンシロキサンが挙げられ、PDMS、ポリメチルビニルシロキサンが好ましく用いられる。上記シリコン系エラストマーは市販品を用いてもよい。市販品のシリコン系エラストマーとしては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSILPOT 184(PDMS)等が挙げられる。
第1基板10の長さ(長手方向の距離)は、特に制限はないが、製造上及び取扱い上の観点から1~20cmであることが好ましく、2~10cmであることがより好ましく、3~7cmであることが更に好ましい。
第1基板10の幅(上記長手方向に対して垂直であって、上記流路3が形成されている面に対して平行な方向の距離)は、特に制限はないが、製造上及び取扱い上の観点から1~20cmであることが好ましく、2~10cmであることがより好ましく、3~7cmであることが更に好ましい。
第1基板10の厚さ(流路3が形成されている面と、当該面に対抗する面との最短距離)は、特に制限はないが、製造上及び取扱い上の観点から0.01mm~1cmであることが好ましく、0.1mm~0.7mmであることがより好ましく、0.4mm~0.7mmであることが更に好ましい。
第2基板20は、上述した第1基板10と同様の構成をとることが可能であり、第1基板10と同一の構成としてもよいし、異なる構成としてもよい。
導入口1は、マイクロ流路デバイス100の外部と連通しており、流路3に供給液を供給するために設けられている。導入口1は、例えば、第1基板10の表面に開口する円柱状の貫通孔からなる。他の態様として、導入口1は第2基板20の表面に設けられていてもよいし、その形状が角柱状の貫通孔であってもよい。また、設けられる導入口1の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
ここで、「供給液」とは本実施形態における一態様では流路3を通過する液体を意味し、本実施形態における他の態様では導入口1から供給され流路3を通過し、排出口2から外部に排出される液体を意味する。供給液は、上記マイクロ流路デバイスの用途によって適宜選択できるが、例えば、水、有機溶媒(例えば、エタノール、アセトン、ヘキサン、トルエン、ジメチルホルムアミド等)若しくはこれらの混合液、又は、これらを媒体とした溶液若しくは懸濁液が挙げられる。水を媒体とした溶液としては、例えば、リン酸バッファー、クエン酸バッファー、細胞培養用の培地等が挙げられる。上記供給液は、後述する試料固定領域6に固定された試料7と相互作用する物質(例えば、タンパク質、核酸等)を含んでいてもよい。
導入口1のサイズ(直径又は幅)は、特に制限されないが、製造上及び取扱い上の観点から0.1~4mmであることが好ましく、0.2~0.8mmであることがより好ましい。
排出口2は、マイクロ流路デバイスの外部と連通しており、流路3に供給された供給液をマイクロ流路デバイスの外部へ排出するために設けられている。排出口2は、例えば、第1基板10の表面に開口する円柱状の貫通孔からなる。他の態様として、排出口2は第2基板20の表面に設けられていてもよいし、その形状が角柱状の貫通孔であってもよい。また、設けられる排出口2の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。
排出口2のサイズ(直径又は幅)は、特に制限されないが、製造上及び取扱い上の観点から0.1~4mmであることが好ましく、0.2~0.8mmであることがより好ましい。
流路3は、第1基板10及び第2基板20が互いに対向する面に形成されており、第1基板10及び第2基板20のどちらか一方に形成されていてもよいし、両方に形成されていてもよい。また、設けられる流路3の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。流路3は、例えば、第1基板10又は第2基板20の上記対向する面に形成された凹溝パターンによって構成され、第1基板10又は第2基板20の長手方向から見て矩形断面の凹溝で構成されている。凹溝パターンの断面形状は、矩形に限定されず、円形、半円形等であってもよい。
流路3の長さは、用いられるマイクロ流路デバイス100の用途等に応じて適宜設定可能である。通常、流路3の長さは1~8cmであってもよいし、2~5cmであってもよい。
流路3の幅(又は直径)は、用いられるマイクロ流路デバイス100の用途等に応じて適宜設定可能である。通常、流路3の幅(又は直径)は1μm~5cmであってもよいし、1μm~1mmであってもよいし、20μm~100μmであってもよい。
流路3の深さは、用いられるマイクロ流路デバイス100の用途等に応じて適宜設定可能である。通常、流路3の深さは10~500μmであってもよいし、50~100μmであってもよい。
流路3の形成方法は、特に制限されないが、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング、レーザーによる加工、ショットブラスト法によって形成できる。
本実施形態におけるマイクロ流路デバイス100は、図1に示される構成だけでなく、図2に示される構成を備えていてもよい。すなわち、上記マイクロ流路デバイス100は、
(a)第1基板10は導入口1、排出口2及び撥液領域4を備え、第2基板20は流路3及び撥液領域4を備える構成、
(b)第1基板10は導入口1、排出口2、流路3及び撥液領域4を備え、第2基板は撥液領域4を備える構成、
(c)第1基板10は導入口1、排出口2、流路3及び撥液領域4を備え、第2基板は流路3及び撥液領域4を備える構成、
(d)第1基板10は導入口1及び撥液領域4を備え、第2基板20は排出口2、流路3及び撥液領域4を備える構成、又は、
(e)第1基板10は撥液領域4を備え、第2基板20は導入口1、排出口2、流路3及び撥液領域4を備え、上記導入口1は上記第2基板の長手方向における一端に設けられており、上記排出口2は上記第2基板の長手方向における他端に設けられている構成、
であってもよい。なお、図2において、接合領域5及び試料固定領域6の描画は省略してあるが、(a)~(e)のいずれの態様においても、所定の位置に接合領域5及び試料固定領域6は備えられている。
撥液領域4は、上記流路3の少なくとも一部の表面と上記流路3に隣接する表面とを含み、上記供給液と上記試料7を含む液体とに対する接触角が90°以上である領域である。本実施形態に係るマイクロ流路デバイス100は、上記撥液領域4を備えることで、流路3の内部にある供給液に対してラプラス圧が加わる。そのため、比較的低い温度(10℃~45℃)の加圧による接合であっても、供給液が外に漏れることなく流路3の内部を流れることができる。
「流路3に隣接する表面」とは、流路3が設けられた基板における上記流路3の周辺の領域と、他の基板における当該流路3に対向する表面及び当該対向する表面の周辺の領域とを含む(図3)。「周辺の領域」は、上記流路3(又は流路3に対向する表面)から10mmまでの領域を含むことが好ましく、上記流路3から20mmまでの領域を含むことがより好ましい。
本実施形態において、第1基板10に設けられた撥液領域4の外形と第2基板20に設けられた撥液領域4の外形とは、第1基板10及び第2基板20を重ねあわせたときに、一致していてもよいし、一致していなくてもよい。第1基板10及び第2基板20を良好に接合するという観点から、第1基板10に設けられた撥液領域4の外形と第2基板20に設けられた撥液領域4の外形とは、第1基板10及び第2基板20を重ねあわせたときに、一致していることが好ましい。
本実施形態において「ラプラス圧」とは、流路3における供給液(例えば、培養液)の撥液領域4(例えば、フッ素コーティング領域)での表面張力と、接合領域5(例えば、ガラス領域)での表面張力によって引き起こされる圧力差を意味する(図5)。上記ラプラス圧は10~2000kPaであることが好ましく、40~1000kPaであってもよい。ラプラス圧が上記範囲内であることによって、供給液が流路3から漏れることを防止できる。上記ラプラス圧は、例えば、加圧法によって測定が可能である。
撥液領域4における上記供給液と上記試料7を含む液体とに対する接触角は90°以上であり、110°以上であることが好ましく、120°以上であることがより好ましく、150°以上であることが更に好ましい。上記接触角の上限は特に制限はないが、製造上の観点から、180°以下であってもよい。上記接触角は、例えば、θ/2法によって測定が可能である。
撥液領域4は、薬剤による表面処理によって形成してもよいし、ロータス効果を発揮するような微細構造となるように表面を加工することによって形成してもよいし、これらを併用して形成してもよい。第1基板10及び第2基板20それぞれの撥液領域4の形成方法は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記供給液が水、水溶液又は水を媒体とする懸濁液である場合、後述する酸化剤等に対する耐久性の観点から、撥液領域4は、フッ素化シラン化合物又はフッ素樹脂による表面処理によって形成することが好ましい。すなわち、撥液領域4は、上記フッ素化シラン化合物又は上記フッ素樹脂が固定されていることが好ましい。また、他の側面において、撥液領域4は、上記フッ素樹脂が吸着していると把握することもできる。
フッ素化シラン化合物又はフッ素樹脂による表面処理としては、例えば、以下の方法が挙げられる(図4)。まず、第1基板10及び第2基板20の撥液領域4以外の領域(接合領域5、試料固定領域6等)を、マスキング材8(例えば、フォトレジスト、保護テープ、油性インク等)で被覆する(図4の(b)、(f))。次に、上記第1基板10及び上記第2基板20を、フッ素化シラン化合物の気体で満たされた所定のチャンバー内に静置して、上記撥液領域4に上記フッ素化シラン化合物を固定する、又は上記フッ素樹脂を含む溶液を上記第1基板10及び上記第2基板20の上記撥液領域4に塗布して、上記撥液領域4に上記フッ素樹脂を固定する。その後、マスキング材8を除去する(図4の(c)、(g))。フッ素化シラン化合物又はフッ素樹脂による表面処理の他の態様としては、例えば、フッ素化シラン化合物を含む溶液又は上記フッ素樹脂を含む溶液をスプレーによって撥液領域4に吹き付ける方法が挙げられる。
上記フッ素化シラン化合物としては、例えば、トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン、及びクロロジメチル[3-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)プロピル]シラン等のフッ素以外のハロゲン基を有するフッ素化シラン化合物、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン等が挙げられる。製造上の観点から、上記フッ素化シラン化合物は、フッ素以外のハロゲン基を有するフッ素化シラン化合物を含むことが好ましい。
上記フッ素化シラン化合物を含む溶液としては、フッ素コーティング剤として市販されているものを用いてもよく、例えば、スリーエム社製のNovec 1720(商品名)等が挙げられる。
上記フッ素樹脂を含む溶液としては、フッ素コーティング剤として市販されているものを用いてもよく、例えば、野田スクリーン社製のINT-332VE(商品名)等が挙げられる。
従来、細胞のパターニングに際して、基板上の細胞を接着したい箇所に細胞外マトリックスをまず定着させ、そのうえで細胞を接着したくない箇所へ、細胞の接着を抑制するために細胞接着抑制剤を塗布するのが一般的であった。しかしながら、この手法は細胞外マトリックスが細胞接着抑制剤の影響を受け、所定の箇所に細胞が十分定着しないという課題があった。本実施形態では、上記フッ素化シラン化合物等が細胞接着抑制剤としての機能も発揮するため、細胞外マトリックスと上記フッ素化シラン化合物等とが互いに、それぞれが発揮する作用を阻害することなく同時にディッシュ等の基板へ定着させることが可能になる。
接合領域5は、上記第1基板10及び上記第2基板20を接合するための領域であり、かならずしも接合領域5の全領域で上記第1基板10及び上記第2基板20が接合されていなくてもよく、上記接合領域5の全領域に対して所定の割合の領域で直接接合されていればよい。上記接合領域5は、上記第1基板10及び上記第2基板20が互いに対向する面における縁部分の表面を少なくとも含む。ここで、上記縁部分は、上記対向する面の縁から0.5cmまでの領域を含むことが好ましく、上記対向する面の縁から1cmまでの領域を含むことがより好ましい。また、上述の撥液領域4が十分確保できるのであれば、接合領域5は上記対向する面における内部の領域を更に含んでいてもよい。
上記接合領域5における上記第1基板10及び上記第2基板20が直接接合している面積の割合は、上記接合領域5全体の面積に対して、7%以上であり、7.9%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。上記割合の上限は特に制限されないが、製造上の観点から、100%以下であってもよい。上記割合は、干渉縞面積比率法によって求めることが可能である。干渉縞面積比率法は、マイクロ流路デバイス100を上面(主面)から観察し、マイクロ流路デバイス100の主面全体の面積から流路3部分の面積及び撥液領域4部分の面積を差し引いた面積に占める流路3部分の面積を除いた部分における干渉縞がない面積の割合を算出する方法である。すなわち、上記割合は以下の式1で求めることができる。ここで、流路3部分と撥液領域4部分とで重複する部分は2重に差し引かないものとする。
上記接合領域5全体の面積に対する上記直接接合している面積の割合(%)=100×{(干渉縞がない面積)-(流路3部分の面積)}/{(マイクロ流路デバイス100の主面全体の面積)-(流路3部分の面積及び撥液領域4部分の面積)}…(式1)
上記接合領域5における上記第1基板10及び上記第2基板20が直接接合している面積の割合は、上記マイクロ流路デバイス100の主面全体の面積に対して、3%以上100%未満であることが好ましく、15%以上90%以下であることがより好ましく、25%以上90%以下であることが更に好ましい。上記割合は、マイクロ流路デバイス100の主面全体の面積における、流路3部分を除いた干渉縞がない面積の割合を算出することによって求めることが可能である。すなわち、上記割合は以下の式2で求めることができる。
上記マイクロ流路デバイス100の主面全体の面積に対する上記直接接合している面積の割合(%)=100×{(干渉縞がない面積)-(流路3部分の面積)}/{(マイクロ流路デバイス100の主面全体の面積)}…(式2)
適切な接合を行う観点から、撥液領域4と接合領域5との面積の比率は、1:81~9:5であることが好ましく、1:41~16:5であることがより好ましい。上記面積の比率がこのような数値範囲をとることによって、十分な接合強度で第1基板10及び第2基板20を接合することができる。
上記接合領域5は、酸素プラズマ、酸化剤及び酸からなる群から選ばれる少なくとも1種によって表面処理されていることが好ましい。酸素プラズマ、酸化剤又は酸による表面処理を行うことによって、上記接合領域5に存在するシラノール基の数が増加する。その結果、後述するメカニズムによって上記第1基板10及び上記第2基板20が互いに対向する面において形成されるシロキサン結合の数が増加し、上記第1基板10及び上記第2基板20が直接接合している面積の割合が増加する、と本発明者らは考えている。上記酸化剤としては、硫酸過水(濃硫酸及び30%過酸化水素水が3:1の体積比で混合された混合液)、熱濃硫酸、硝酸、王水等が挙げられ、酸としては、硫酸、塩酸、ヨウ化水素酸等が挙げられるが、硫酸過水が好ましく用いられる。
本実施形態の他の側面において、上記接合領域5は、洗剤で洗浄されていることが好ましい。後述する電極等(例えば、アルミニウム)のように酸化剤等の表面処理に不向きな部材を含む基板の表面処理を行う際に好適に用いられる。洗剤による洗浄処理を行うことによって、上記接合領域5に存在するシラノール基の数が増加する。その結果、後述するメカニズムによって上記第1基板10及び上記第2基板20が互いに対向する面において形成されるシロキサン結合の数が増加し、上記第1基板10及び上記第2基板20が直接接合している面積の割合が増加する、と本発明者らは考えている。
上記洗剤による洗浄処理は、例えば、最終濃度が2~5体積%となるように当該洗剤を希釈した水溶液に、洗浄対象である基板を浸漬して超音波処理を行うことが挙げられる。上記洗剤としては、例えば、中性洗剤、アルカリ性洗剤が挙げられる。シラノール基保護の面ではアルカリ性洗剤の方が効果が高い。また、中性洗剤は汎用性が高いので好適に用いられる。中性洗剤としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のScat 20X-N(商品名)が挙げられる。アルカリ性洗剤としては、例えば、第一工業製薬株式会社製のScat 20X(商品名)が挙げられる。
本実施形態の一側面において、上記接合領域5に、上述の酸素プラズマ、酸化剤若しくは酸による表面処理、又は、洗剤による洗浄処理を行う前に、上記接合領域5を研磨剤で研磨してもよい。上記研磨剤としては、例えば、メラミン系スポンジ等が挙げられる。
上記試料7を固定する試料固定領域6は、上記流路3上及び/又は上記流路3に対向する表面に設けられており(図3)、上記試料7を含む液体に対する接触角が上記撥液領域4における接触角よりも小さい。上記試料固定領域6は、このような構成とすることによって、周囲にある撥液領域4よりも上記試料7を含む液体が留まりやすくなる。その結果、上記試料7は上記試料固定領域6にのみ固定される(図1の(b)、図4の(c))。また、後述するように試料固定領域6への試料7の固定は、第1基板10及び第2基板20の接合の前に行われる。そのため、同一の流路3上に複数の試料固定領域6が設けられている場合、複数種類の試料7をそれぞれ分離して固定できる。ここで、試料固定領域6における試料7の固定は、例えば、共有結合、静電的相互作用、疎水性相互作用又はファンデルワールス力等による固定が挙げられ、用いられるマイクロ流路デバイスの用途によっては、測定中又は分析中に試料固定領域6から試料7が解離してもよい。
上記試料固定領域6は、上記試料7を含む液体に対する接触角が上記撥液領域4における接触角よりも90°~160°の範囲で小さいことが好ましく、100°~160°の範囲で小さいことがより好ましい。なお、上記接触角は、マイナスの値をとることはない。
また、本実施形態の他の側面において、上記試料固定領域6は、上記試料7を含む液体に対する接触角が90°未満であることが好ましく、30°以下であることがより好ましく、10°以下であることが更に好ましい。当該接触角の下限は特に制限されないが、製造上の観点から、例えば1°以上であってもよいし、10°以上であってもよいし、30°以上であってもよい。
同一の流路3上に設けられる上記試料固定領域6の数は、特に制限されないが、例えば、1~100であってもよいし、1~10であってもよいし、3~10であってもよいし、10~100であってもよいし、18~100であってもよい。上記試料固定領域6が、同一の流路3上に複数設けられる場合、上記試料固定領域6同士の間隔は、100μm~10mmであってもよいし、100μm~5mmであってもよい。
上記試料7としては、細胞、タンパク質、糖、核酸、低分子有機化合物及び触媒からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。細胞としては、例えば、筋芽細胞(C2C12細胞等)、線維芽細胞(10T1/2細胞等)、血管内皮細胞(HH細胞等)等が挙げられる。タンパク質としては、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、酵素、抗体、ホルモン等が挙げられる。タンパク質は、蛍光色素、糖、核酸等の化合物で修飾されていてもよい。
上記試料7を試料固定領域6に固定する方法としては、特に制限はないが、例えば、上記試料7を含む液体をマイクロピペット等で試料固定領域6に滴下して固定する方法、上記試料7を含む液体をインクジェット方式で試料固定領域6に吐出して固定する方法、試料固定領域6の上に設けられた液だめ(Pool)を介して、試料7を含む液体を供給して固定する方法、印章で印影を形成するようにスタンプする方法等が挙げられる。また、試料固定領域6に、上記試料7の固定を補助する物質をあらかじめ固定してから上記試料7を固定してもよい。上記試料7の固定を補助する物質としては、例えば、フィブロネクチン等の細胞外マトリックスタンパク質、アミノ基を有するシランカップリング剤、抗体等が挙げられる。
本実施形態の一側面において、上記少なくとも1つの流路3内に設けられた電極を更に有していてもよい。このような構成のマイクロ流路デバイスは、高温で加熱せずとも所定の温度(例えば、常温)において、ガラス等を含む第一基板及び第二基板を接合することによって、初めて実現できたものである。金属はガラスよりも熱膨張率が高いため、ガラスと金属の両方を含む物体に外から熱を加えると、ガラスよりも金属の膨張が大きい。そのため、従来法のように、ガラスを張り合わせて加熱する製法では、内部に金属片や金属薄膜を設置したものを作ろうとした場合、外部から熱を加えても金属の膨張にガラスの膨張が追いつかず、加熱による貼り合わせを最適条件で進めることが難しい。
例えば、アルミの場合、熱膨張係数は23である。対して、ガラスの熱膨張係数は9である。ガラス板の貼り合わせに600℃の高熱を要する場合、600℃に到達する前にアルミ蒸着膜がガラスより大きく膨張し、電極の剥離または電極の形状が損なわれる。また、電極を外部電気系統と接続する金属として半田などの合金が汎用されるが、このような合金は、一般に融点がさらに低いため、デバイス全体の耐熱性は非常に低くなり、貼り合わせのための加熱に耐えられない。
上記の問題の解決策として、常温で接着剤を使用する接合法が試みられてきたが、アルミニウムのように、化学的安定性が低い金属に対しては、使用可能な接着剤が限られている。また、先述したように、ガラスの貼り合わせに接着剤を使用すると、タンパク質等の生体高分子を失活させ、細胞を死滅させるおそれがあり、本願発明は係る課題に鑑みその解決手段として発明されたものであるが、結果として、電極を有するマイクロ流路デバイスの製造法としても、従来の課題を解決する方法を提供するものである。
当該マイクロ流路デバイスは、例えば、電池、電気泳動装置等の用途として用いることが可能である。
当該流路3内に設けられる電極は、一対であってもよいし、二対以上であってもよい。上記電極の材質は、本発明の効果を損なわない範囲において特に制限されないが、例えば、アルミニウム、銅、金、銀、白金、クロミウム等が挙げられる。上記電極は、例えば、真空蒸着法又はスパッタリング法によって流路3内に設けることが可能である。
なお、流路3内に設けられた電極の外部接続については、図20に示される手順によって行うことが可能である。すなわち、流路3が設けられた基板の表面であって、上記電極と接触する表面に電線を差し込むための溝を作製し(図20の(a))、当該溝へ電線を差し込み固定することで、流路3内に設けられた電極の外部接続が可能になる(図20の(b))。
本実施形態の他の側面において、上記マイクロ流路デバイスは、
第1基板及び第2基板が互いに対向する面において接合してなるマイクロ流路デバイスであって、
上記対向する面に形成され、供給液を流す少なくとも1つの流路と、
上記流路の少なくとも一部の表面と上記対向する面における縁部分の表面とを少なくとも含む撥液領域と、
上記流路に隣接する表面を少なくとも含み、上記第1基板及び上記第2基板を接合する接合領域と、
上記少なくとも1つの流路内に設けられた電極とを備え、
上記撥液領域は、上記供給液に対する接触角が90°以上であり、
上記接合領域における上記第1基板及び上記第2基板が直接接合している面積の割合が上記接合領域全体の面積に対して、7%以上100%以下であってもよい。上記マイクロ流路デバイスは、上記流路が設けられた基板の表面であって、上記電極と接触する表面に電線を差し込むための溝部を更に備えていてもよい。
(マイクロ流路デバイス用キット)
本実施形態に係るマイクロ流路デバイス用キットは、第1基板10と、第2基板20とを含み、
上記第1基板10及び上記第2基板20は互いに対向する面において接合することによりマイクロ流路デバイス100を構成し、上記マイクロ流路デバイス100は、
上記対向する面に形成され、供給液を流す少なくとも1つの流路3と、
上記流路3の少なくとも一部の表面と上記流路3に隣接する表面とを含む撥液領域4と、
上記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、上記第1基板10及び上記第2基板20を接合する接合領域5と、
上記流路3上及び/又は上記流路3に対向する表面において試料7を固定する試料固定領域6と、を備え、
上記撥液領域4は、上記供給液と上記試料7を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
上記試料固定領域6は、上記試料7を含む液体に対する接触角が上記撥液領域4における接触角よりも小さい。
上記マイクロ流路デバイス100は、外部に連通する少なくとも1つの導入口1と、外部に連通する少なくとも1つの排出口2と、を更に含み、上記少なくとも1つの流路3は、上記導入口1から供給された上記供給液を上記排出口2に流す流路であってもよい。
本実施形態に係るマイクロ流路デバイス用キットは上記構成を備えることによって、所定の表面処理がされた2枚の基板(例えば、ガラス板)を重ねあわせて、室温等の所定の温度にて所定の圧力を上記基板に加えることで上記マイクロ流路デバイス100を製造できる。そのため、高温で不安定な試料(例えば、細胞、タンパク質)でもあらかじめデバイス内に固定が可能である。
本実施形態の他の側面において、上記マイクロ流路デバイス用キットは、
上記第1基板10は、上記導入口1、上記排出口2、上記撥液領域4及び上記接合領域5を備え、上記第2基板20は、上記流路3、上記撥液領域4、上記接合領域5及び上記試料固定領域6を備えていてもよい。
本実施形態の別の他の側面において、上記マイクロ流路デバイス用キットは、
上記第1基板10は、上記導入口1、上記排出口2、上記撥液領域4、上記接合領域5及び上記試料固定領域6を備え、上記第2基板20は、上記流路3、上記撥液領域4、上記接合領域5及び上記試料固定領域6を備えていてもよい。
上記マイクロ流路デバイス用キットは、重ねあわされた上記第1基板10及び上記第2基板20を所定の圧力で保持するための冶具を更に含んでいてもよい。また、上記マイクロ流路デバイス用キットは、取扱い説明書、ガラス表面活性化剤等の表面活性化剤(例えば、上述した酸化剤、酸等)、上記表面活性化剤の取り扱いに使用するシリンジ等を更に含んでもよい。
(マイクロ流路デバイス用基板)
本実施形態に係るマイクロ流路デバイス用基板は、
他の基板と共に互いに対向する面において接合することによりマイクロ流路デバイス100を構成する、マイクロ流路デバイス用基板であって、
供給液を流す少なくとも1つの流路3と、
上記流路3の少なくとも一部の表面と上記流路3に隣接する表面とを含む撥液領域4と、
上記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、上記他の基板と接合する接合領域5と、
上記流路3上において試料7を固定する試料固定領域6と、を備え、
上記撥液領域4は、上記供給液と上記試料7を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
上記試料固定領域6は、上記試料7を含む溶液に対する接触角が上記撥液領域4における接触角よりも小さい。
本実施形態に係るマイクロ流路デバイス用基板は上記構成を備えることによって、当該基板と所定の表面処理がされた他の基板(例えば、カバーガラス)を重ねあわせて、室温等の所定の温度にて所定の圧力を上記基板に加えることで上記マイクロ流路デバイス100を製造できる。そのため、高温で不安定な試料(例えば、細胞、タンパク質)でも予めデバイス内に固定が可能である。
上記他の基板としては、他のマイクロ流路デバイス用基板であってもよいし、上記撥液領域4が設けられた市販のカバーガラス等であってもよい。
このようなマイクロ流路デバイス用基板は、上述した構成に加えて、導入口1又は排出口2を更に備えていてもよい。
(マイクロ流路デバイスの製造方法)
本実施形態に係るマイクロ流路デバイス100の製造方法は、
第1基板10と、第2基板20とを含み、
供給液を流す少なくとも1つの流路3と、を備えるマイクロ流路デバイス100の製造方法であって、
上記第1基板10及び上記第2基板20を準備する工程と、
上記第1基板10及び上記第2基板20が互いに対向する面において接合するように上記第1基板10及び上記第2基板20を重ね合わせ、10~250℃で加圧しながら上記第1基板10及び上記第2基板20を接合する工程と、を含み、
上記少なくとも1つの流路3は上記対向する面に形成される。
上記マイクロ流路デバイス100は、外部に連通する少なくとも1つの導入口1と、外部に連通する少なくとも1つの排出口2と、を更に含み、上記少なくとも1つの流路3は、上記導入口1から供給された上記供給液を上記排出口2に流す流路であってもよい。
(基板を準備する工程)
本実施形態における「基板を準備する工程」とは、後述する基板を接合する工程が行えるように第1基板10及び第2基板20の状態をととのえることを意味する。
基板を準備する工程は、例えば、
(1)第1基板10又は第2基板20に、導入口1、排出口2又は流路3を設けること(例えば、図4の(a))、
(2)接合領域5及び試料固定領域6に対応する領域をマスキング材8で被覆した後、第1基板10又は第2基板20に、撥液領域4を設けること(例えば、図4の(b)、(f))、
(3)上記マスキング材8を除去した後、第1基板10及び第2基板20が互いに対向する面の少なくとも一部(例えば、接合領域5)を、酸化剤又は酸で表面処理すること(例えば、図4の(c)、(g))、
上記マスキング材8を除去した後、撥液領域4及び試料固定領域6に対応する領域をマスキング材8で新たに被覆し、第1基板10及び第2基板20が互いに対向する面の少なくとも一部(例えば、接合領域5)を、酸素プラズマで表面処理すること、又は、
上記マスキング材8を除去した後、撥液領域4及び試料固定領域6に対応する領域をマスキング材8で新たに被覆し、第1基板10及び第2基板20が互いに対向する面の少なくとも一部(例えば、接合領域5)を、洗剤で洗浄すること、並びに、
(4)第1基板10又は第2基板20における試料固定領域6に、試料7(例えば、細胞の懸濁液)を固定すること(例えば、図4の(d))、
からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。
(基板を接合する工程)
本実施形態における「基板を接合する工程」は、上記第1基板10及び上記第2基板20が互いに対向する面において接合するように上記第1基板10及び上記第2基板20を重ね合わせ、10~250℃で加圧しながら上記第1基板10及び上記第2基板20を接合する(例えば、図4の(h))。本実施形態に係る製造方法では、以下のメカニズムによって基板同士の接合が行われていると本発明者らは考えている。まず、重ねあわされた第1基板10及び第2基板20に圧力を加えることによって、上記対向する面におけるシラノール基(Si-OH)が互いに接近し、脱水縮合反応が進行する。その結果、上記対向する面において、シロキサン結合(Si-O-Si)が形成し、接合が行われる。
基板を接合するときの温度は、10~250℃である。本実施形態の他の側面において、基板を接合するときの温度は、10~45℃であることが好ましく、20~40℃であることがより好ましく、35~38℃であることが更に好ましい。接合するときの温度を上記範囲にすることで、タンパク質又は細胞がデバイス内にあらかじめ固定されていても、タンパク質又は細胞が失活することなくマイクロ流路デバイス100を製造することができる。
基板を接合するときに加える圧力は、100~500Nであることが好ましく、400~500Nであることがより好ましい。
上述の圧力を加える時間は、0.5~8時間であることが好ましく、1~2時間であることがより好ましい。
本実施形態に係るマイクロ流路デバイス100は、タンパク質又は細胞等の高温で不安定な試料でも、失活させることなく試料固定領域6に固定が可能である。また、上記マイクロ流路デバイス100は、同一の流路3上に複数の試料固定領域6を設けることが可能であり、複数の試料7をそれぞれ分離して、試料固定領域6に固定できる。そのため、上記マイクロ流路デバイス100は、試薬量、細胞数等の低減に加えて、複数の試料について並行して実験を進めることが可能である。その結果、分析時間の更なる短縮等によって、臨床検査、化学的な実験、生物学的な実験の更なる効率化を図ることができる。臨床検査としては、血液検査等が挙げられる。化学的な実験としては、有機合成反応、電気化学分析等が挙げられる。また、生物学的な実験としては、イムノアッセイ、酵素活性測定、後述する遺伝子改変動物の作製等が挙げられる。以下、本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いた応用例として、遺伝子改変動物の作製方法について説明する。
<本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いた遺伝子改変動物の作製方法>
従来から行われている遺伝子改変マウス等の遺伝子改変動物の作製方法は、例えば図6に示される手順で行われていた。遺伝子改変操作を施してもすべての細胞の遺伝子を改変させられるわけではないので、細胞ごとに遺伝子解析をする必要がある。そのため、まず遺伝子改変を施した胚性幹細胞(ES細胞)をウェルプレート内に入れ、培養する。更に培養によって増えた細胞群を細胞群ごとに分離して更に培養する。最終的に1つの細胞から生じた細胞群から抜き出した細胞を遺伝子解析し、遺伝子改変がされていた場合は動物発生へ進む。しかし、この方法では、細胞群ごとに分離することが難しい、遺伝子解析ができる状態になるまで時間がかかるという課題があった。
本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いた遺伝子改変動物の作製方法としては、例えば、図7に示される方法が挙げられる。遺伝子改変を施したES細胞を1個だけ流路内に定着させ培養し、2個に分裂したら直ちに片方を遺伝子解析に回し、遺伝子改変がされていた場合は残った細胞を使って動物発生に進む。本実施形態に係るマイクロ流路デバイスを用いることで、細胞群の分離操作が不要、細胞群の混ざり合い防止、培養時間の短縮という優れた効果が発揮できる。
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
<マイクロ流路デバイスのリーク試験>
まず、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mmのガラス板(ホウケイ酸ガラス、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を2枚用意した。以後、これらのガラス板を「ガラス板A」、「ガラス板B」と呼ぶことにする。次に、ガラス板Bの主面の中央部分に、上記ガラス板の長手方向に平行となるように、長さ5.6cm、幅500μm、深さ250μmの流路をフッ酸エッチング法にて形成した。得られたガラス板Bの上記流路が設けられた面における縁部分(縁から5mmまでの範囲、接合領域)を、フォトレジスト(東京応化工業社製、商品名OFPR-800 LB)で被覆した。また、ガラス板A(導入口及び排出口が設けられている。)の一方の主面における縁部分(縁から5mmまでの範囲、接合領域)を、同様にフォトレジストで被覆した。
その後、被覆された上記ガラス板A及び上記ガラス板Bを、フッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で満たされたチャンバー内に静置(25℃、60分)することで、上記ガラス板Aの一方の主面、並びに上記ガラス板Bの上記流路の表面及び上記流路に隣接する表面に撥水処理を施した。
撥水処理したガラス板A及びガラス板Bのフォトレジストを除去して、それぞれの表面を酸化剤である硫酸過水(濃硫酸:30%過酸化水素=3:1(体積比))で処理して(20分間)、蒸留水で洗浄した。洗浄後、ガラス表面の水を窒素ガスで吹き飛ばした。その後、ガラス板Aの上記一方の主面及びガラス板Bの上記流路が設けられた主面が互いに対向するように、ガラス板A及びガラス板Bを重ね合わせ、37℃、450Nで1時間加圧しながらガラス板A及びガラス板Bを接合して、マイクロ流路デバイスを得た。
導入口から水を導入する前(図8の(a))及び水を導入する後(図8の(b))で流路付近を観察した。
流路へ水を導入する前後で、流路部分の見え方が変わった。これは流路内が水で満たされたことを示す。一方、流路周辺の干渉縞は、流路への水の導入前後で変化がなかった。この結果から、導入された水はマイクロ流路デバイスの流路内にとどまっており、流路外へ漏れていないことが確認された。
<フッ素化シラン化合物を用いた細胞パターンの作製法の評価>
パターニングで使用するシリコーン・エラストマー(ポリジメチルシロキサン;PDMS)製スタンプを作製し、これにフィブロネクチン(シグマ・アルドリッチ社製、商品名ウシ血漿由来フィブロネクチン)のコートを施した。次に、酸素プラズマ処理したガラス又はPDMSのディッシュ底に、作製したPDMS製スタンプを押し付け、フィブロネクチン層を形成した。続いて、ディッシュ底への意図しない細胞接着を抑制するため、ディッシュ底を細胞接着抑制剤で処理した。このディッシュ内へ筋芽細胞(C2C12)(5×10細胞/ml、3ml)を播種し1日間培養した。その後、光学顕微鏡にて細胞の観察を行い、細胞のパターンが形成されているかどうか評価した(比較例)。
次に、他のガラスディッシュを用意し、ディッシュ底における細胞パターンを作製したい箇所をフォトレジストで被覆した。その後、被覆されたガラスディッシュを、フッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で満たされたチャンバー内に静置(25℃、1時間)することで、ディッシュ底に撥水処理を施した。撥水処理したガラスディッシュのフォトレジストを除去して、表面を酸化剤である硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した。洗浄後、上述と同様の方法で、フィブロネクチンのコートをディッシュ底に施した。このディッシュ内へ筋芽細胞(C2C12)(5×10細胞/ml、3ml)を播種し1日間培養した。その後、光学顕微鏡にて細胞の観察を行い、細胞のパターンが形成されているかどうか評価した(実施例)。
細胞接着抑制剤として一般的に使用されている2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(日油社製、商品名Lipidure)及び界面活性剤(シグマ・アルドリッチ社製、商品名Pluronic)を用いたディッシュで筋芽細胞を一晩培養した場合(比較例)、細胞パターンは認められなかった(図10の(a))。一方、フッ素化シラン化合物を1時間作用させたディッシュの場合、細胞パターンが認められた(図10の(b))。以上から、フッ素化シラン化合物を使った新たな細胞接着の抑制法が従来の手法より優れていることが示された。また、フッ素化シラン化合物は気相で作用させることができるため、チャンバー内に複数のディッシュを置けば簡便に処理数を増やせることが示された。
<細胞が固定されたマイクロ流路デバイスの作製>
流路(長さ5.6cm、幅500μm、深さ150μm)が設けられたガラス板(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し(図4の(a))、細胞を固定するための試料固定領域(3か所)及び接合領域(縁から5mmまでの領域)をフォトレジスト(マスキング材)で被覆した(図4の(b))。また、導入口及び排出口が設けられたカバーガラス(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し(図4の(e))、接合領域(縁から5mmまでの領域)をフォトレジストで被覆した(図4の(f))。なお、図4の(e)~(g)において導入口及び排出口の描画は省略した。上記ガラス板及び上記カバーガラスをフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。フォトレジストを除去した後、上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した。
その後、ガラス板の試料固定領域に、線維芽細胞(10T1/2)(1×10細胞/ml、0.1ml)の懸濁液(ダルベッコ改変イーグル培地)を液だめを用いて供給して37℃、3時間インキュベートした(図4の(d))。その後、固定されていない細胞を除去して、洗浄した表面が互いに対向するように細胞が固定されたガラス板とカバーガラスとを重ね合わせて接合し(450N、37℃、1時間)、マイクロ流路デバイスを得た(図4の(h))。
(実施例2)
<複数種類の試料が固定されたマイクロ流路デバイスの作製>
図11を用いて本実施例で用いたマイクロ流路デバイスの作製方法を説明する。まず、あらかじめマイクロ流路が設けられたガラス板を用意して、上記マイクロ流路の周りの表面及び上記マイクロ流路における試料(タンパク質、細胞等)を固定する領域(試料固定領域)にフォトレジストで被覆した(図11の(a))。その後、被覆された上記ガラス板を、フッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で満たされたチャンバー内に静置(25℃、60分)することで、上記マイクロ流路の周りの表面及び上記マイクロ流路における試料固定領域に撥水処理を施した(図11の(b))。
撥水処理したガラス板のフォトレジストを除去して、ガラス板の表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した(図11の(c))。このとき、カバーガラスも併せてその表面を硫酸過水で処理して蒸留水で洗浄した。その後、上記ガラス板の上記流路の試料固定領域に試料を含む液体を1μl滴下して、10分間静置した(図11の(d))。上記流路内をリン酸緩衝液等で洗浄した後、上記カバーガラスを、洗浄した表面が互いに対向するように上記ガラス板に重ねあわせ、40℃、450Nで1時間加圧しながらガラス板及びカバーガラスを接合して、マイクロ流路デバイスを得た(図11の(e))。
上記カバーガラスには、上記マイクロ流路に対応する位置に液体を導入する導入口及び上記マイクロ流路を通った後に外に排出する排出口が設けられているため、上記導入口から所定の供給液を導入することで、試料固定領域に固定された試料に対する所定の作用効果等を評価できる(図11の(f))。
<マイクロ流路デバイスの作製方法及び耐圧性の評価試験>
以下の手順にて、マイクロ流路デバイスにおけるマイクロ流路を流れる供給液に対する耐圧性を評価した。まず、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mmのガラス板(ホウケイ酸ガラス、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し、フッ酸エッチング法にて、メイン流路(main channel)と、その両側に迂回路となる流路(迂回流路、detour)を形成した(図12の(a)左の写真)。メイン流路は長さ6cm、幅150μm、深さ50μmの流路であり、迂回流路は長さ6cm、幅200μm、深さ50μmの流路であった。得られたガラス板及びカバーガラス(メイン流路に対応する位置に導入口及び排出口が設けられている)の表面を酸化剤である硫酸過水(Piranha)又は酸である塩酸で処理して、蒸留水で洗浄した。
次に、酸化剤又は酸で処理した表面が互いに対向するように上記ガラス板に上記カバーガラスを重ね合わせ、所定の冶具で固定した(図12の(a)右の写真)。冶具で固定されたガラス板及びカバーガラスを、所定の加圧機(図12の(b))を用いて25℃~85℃、400Nで2時間加圧して、ガラス板とカバーガラスとを接合しマイクロ流路デバイスを得た(図12の(c))。得られたマイクロ流路デバイスの導入口から所定の圧力で蒸留水を導入して、マイクロ流路を流れる蒸留水に対する耐圧性を評価した。具体的には、メイン流路のみに蒸留水が流れていて、ガラス板が全体的に白く見える状態(図12の(d))から、蒸留水が迂回流路にまでリークしてガラス板が透明に見える状態(図12の(e))に変わったときの圧力をリーク圧力(leaking pressure)とした。
図12の(f)及び表1にその結果を示す。対照実験として、酸化剤又は酸による洗浄の代わりに表面を酸素プラズマ処理したガラス板から作製されたマイクロ流路デバイス、及びガラス板の代わりに表面処理を何もしていないポリジメチルシロキサン(PDMS)の板から作製されたマイクロ流路デバイスも評価した。25℃において加圧、接合してマイクロ流路デバイスを作製した場合、PDMSのマイクロ流路デバイスではリーク圧力が0.01MPaであったのに対して、酸素プラズマ、酸化剤又は酸でガラス表面を処理したマイクロ流路デバイスではリーク圧力が0.1~0.17MPaであり、PDMSのときと比較して10倍以上の耐圧性を有していることが分かった。また、リーク圧力は、ガラス板とカバーガラスとの接合のときにおける温度が高くなるに従い、増加することが分かった。
Figure 0007276798000001
<マイクロ流路デバイスへのタンパク質の固定及びその評価>
マイクロ流路中へのタンパク質の固定方法について、以下の手順で評価した。
1.蛍光色素標識したウシ血清アルブミン(BSA)の評価
マイクロ流路(長さ5.6cm、幅500μm、深さ150μm)が形成されたガラス板を用意して(図13の(a))、マイクロ流路の所定の領域をフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。その後、上記マイクロ流路に対応する位置に導入口及び排出口を有するカバーガラスを上記ガラス板に重ね合わせて接合し、マイクロ流路デバイスを得た。マイクロ流路デバイスの導入口から蛍光色素で標識されたBSA溶液(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名AlexaFluor488標識BSA)(濃度10μg/ml、PBS)を導入しマイクロ流路全体を満たしてから25℃で1時間インキュベーションした。その後、導入口からPBSを導入して流路内を洗浄した。
洗浄したマイクロ流路を蛍光観察機能付き光学顕微鏡で観察したところ、フッ素化シラン化合物で処理した領域には、蛍光色素標識したBSAは固定されておらず、それ以外の領域に固定されていた(図13の(c)、(d))。この結果から、蛍光色素標識した場合も、BSAはマイクロ流路内の親水性がある領域に選択的に固定されることが分かった。
2.マイクロ流路内のパターン化された領域へ固定されたタンパク質の評価
マイクロ流路(長さ6cm、幅1mm、深さ100μm)が形成されたガラス板を用意した(図13の(e))。次に、マイクロ流路内に3カ所の試料固定領域(0.5mm×0.5mm)が設けられるように所定の領域をフォトレジストでマスクした。その後、上記ガラス板をフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。フォトレジストを除去した後、上記ガラス板の表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した。
その後、上記試料固定領域に、オレンジ色の蛍光色素で標識されたBSA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名AlexaFluor555標識BSA)(濃度10μg/ml、1μl、PBS)、及び緑色の蛍光色素で標識されたBSA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、商品名AlexaFluor488標識BSA)(濃度10μg/ml、1μl、PBS)をそれぞれ滴下した。ここで、同一の流路内に設けられた3カ所の試料固定領域には、順にオレンジ色の蛍光色素で標識したBSA、緑色の蛍光色素で標識したBSA、オレンジ色の蛍光色素で標識したBSAとなるように固定を行った(図13の(e)、(f))。その後、上記マイクロ流路に対応する位置に導入口及び排出口を有するカバーガラスを用意し、その表面を硫酸過水で処理して蒸留水で洗浄した。その後、洗浄した面が互いに対向するように上記カバーガラスを上記ガラス板に重ね合わせて接合し(40℃、450N、1時間)、マイクロ流路デバイスを得た。
マイクロ流路を蛍光観察機能付き光学顕微鏡で観察したところ、試料固定領域のパターンに対応する形状で、蛍光色素で標識されたBSAが固定されていることが分かった(図13の(g))。
<マイクロ流路デバイスへの細胞の固定及びその評価>
平板のガラス板(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し、細胞を固定するための試料固定領域(3か所)及び接合領域(縁から1cmまでの領域)をフォトレジストで被覆した。また、流路(長さ5cm、幅1cm、深さ280μm)、導入口及び排出口が設けられたカバーガラスを用意し、接合領域をフォトレジストで被覆した。上記ガラス板及び上記カバーガラスをフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。フォトレジストを除去した後、上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した。
その後、ガラス板の試料固定領域に、筋芽細胞(C2C12)(5×10細胞/ml、0.1ml)又は線維芽細胞(10T1/2)(5×10細胞/ml、0.1ml)の懸濁液(ダルベッコ改変イーグル培地)をそれぞれ滴下して37℃、3時間インキュベートした(図14の(a)、(b))。その後、固定されていない細胞を除去して、洗浄した表面が互いに対向するように細胞が固定されたガラス板とカバーガラスとを重ね合わせて接合し(450N、37℃、1時間)、マイクロ流路デバイスを得た(図14の(c))。マイクロ流路デバイスの導入口から培地(シグマ・アルドリッチ社製、商品名ダルベッコ改変イーグル培地)を導入して流路内に満たされた状態で培養したところ(37℃、二酸化炭素濃度5%)、筋芽細胞(図14の(d)、(f))及び線維芽細胞(図14の(e))は、共に混ざり合うことなく5日間培養できることを確認した。
また、流路(長さ5cm、幅400μm、深さ280μm)が設けられたガラス板並びに導入口及び排出口が設けられたカバーガラスを用いたこと(図9の(a))、上記流路上に試料固定領域(3か所)を設けたこと(図9の(a))、線維芽細胞(10T1/2)及び血管内皮細胞(HH)を試料固定領域に固定したこと以外は、上記と同様の方法でマイクロ流路デバイスを得た(図9の(b))。マイクロ流路デバイスの導入口から培地(シグマ・アルドリッチ社製、商品名ダルベッコ改変イーグル培地)を導入して流路内に満たされた状態で培養したところ(37℃、二酸化炭素濃度5%)、線維芽細胞(図9の(c))及び血管内皮細胞(図9の(d))は、共に混ざり合うことなく5日間培養できることを確認した。
平板のガラス板(ソーダ石灰ガラス、長さ7.6cm、幅2.6cm、厚さ1mm、松浪硝子工業社製、商品名プレクリン水縁磨)を用意し、流路(長さ5cm、幅1cm、深さ200μm)を設け、細胞を固定するための試料固定領域(3か所)及び接合領域(縁から5mmまでの領域)をフォトレジストで被覆した。また、導入口及び排出口が設けられたカバーガラスを用意し、接合領域をフォトレジストで被覆した。上記ガラス板及び上記カバーガラスをフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。フォトレジストを除去した後、上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した(図15の(a))。
その後、ガラス板の試料固定領域に、線維芽細胞(10T1/2)(8×10細胞/ml、0.1ml)又は血管内皮細胞(HH)(4×10細胞/ml、0.1ml)の懸濁液(ダルベッコ改変イーグル培地)をそれぞれ滴下して37℃、3時間インキュベートした。その後、固定されていない細胞を除去して、洗浄した表面が互いに対向するように細胞が固定されたガラス板とカバーガラスとを重ね合わせて接合し(450N、37℃、1時間)、マイクロ流路デバイスを得た(図15の(b))。マイクロ流路デバイスの導入口から培地(シグマ・アルドリッチ社製、商品名ダルベッコ改変イーグル培地)を導入して流路内に満たされた状態で培養したところ(37℃、二酸化炭素濃度5%)、線維芽細胞(図15の(c)、(e))及び血管内皮細胞(図15の(d))は、共に混ざり合うことなく1日間培養できることを確認した。
平板のガラス板(石英ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、信越化学工業社製、商品名VIOSIL)を用意し、流路(長さ5cm、幅1cm、深さ200μm)を設け、細胞を固定するための試料固定領域(3か所)及び接合領域(縁から5mmまでの領域)をフォトレジストで被覆した。また、導入口及び排出口が設けられたカバーガラスを用意し、接合領域をフォトレジストで被覆した。上記ガラス板及び上記カバーガラスをフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。フォトレジストを除去した後、上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した(図16の(a))。
その後、ガラス板の試料固定領域に、線維芽細胞(10T1/2)(8×10細胞/ml、0.1ml)又は血管内皮細胞(HH)(4×10細胞/ml、0.1ml)の懸濁液(ダルベッコ改変イーグル培地)をそれぞれ滴下して37℃、3時間インキュベートした。その後、固定されていない細胞を除去して、洗浄した表面が互いに対向するように細胞が固定されたガラス板とカバーガラスとを重ね合わせて接合し(450N、37℃、1時間)、マイクロ流路デバイスを得た(図16の(b))。マイクロ流路デバイスの導入口から培地(シグマ・アルドリッチ社製、商品名ダルベッコ改変イーグル培地)を導入して流路内に満たされた状態で培養したところ(37℃、二酸化炭素濃度5%)、線維芽細胞(図16の(c)、(e))及び血管内皮細胞(図16の(d))は、共に混ざり合うことなく1日間培養できることを確認した。
平板のガラス板(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し、流路(長さ5cm、幅1cm、深さ200μm)を設け、細胞を固定するための試料固定領域(3か所)を油性インク(ゼブラ社製、商品名マッキー)で、接合領域(縁から5mmまでの領域)を保護テープ(スリーエム ジャパン社製、商品名メンディングテープ)で被覆した。また、導入口及び排出口が設けられたPDMS(東レ・ダウコーニング社製、商品名SILPOT 184)板を用意し、接合領域を保護テープ(スリーエム ジャパン社製、商品名メンディングテープ)で被覆した。上記ガラス板及び上記PDMS板をフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。油性インク及び保護テープを除去した後、上記ガラス板の表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄し、上記PDMS板の接合領域以外の領域を保護テープ(スリーエム ジャパン社製、商品名メンディングテープ)で被覆し、PDMS板の表面を酸素プラズマで処理して、保護テープを除去した(図17の(a))。
その後、ガラス板の試料固定領域に、線維芽細胞(10T1/2)(4×10細胞/ml、0.1ml)、血管内皮細胞(HH)(4×10細胞/ml、0.1ml)又は筋芽細胞(C2C12)(4×10細胞/ml、0.1ml)の懸濁液(ダルベッコ改変イーグル培地)をそれぞれ滴下して37℃、3時間インキュベートした。その後、固定されていない細胞を除去して、洗浄した表面が互いに対向するように細胞が固定されたガラス板とPDMS板とを重ね合わせて接合し、マイクロ流路デバイスを得た(図17の(b))。マイクロ流路デバイスの導入口から培地(シグマ・アルドリッチ社製、商品名ダルベッコ改変イーグル培地)を導入して流路内に満たされた状態で培養したところ(37℃、二酸化炭素濃度5%)、線維芽細胞(図17の(c))、血管内皮細胞(図17の(d))及び筋芽細胞(図17の(e))は、共に混ざり合うことなく5日間培養できることを確認した。
<フッ素樹脂を含むフッ素コーティング剤による撥水処理>
上述の実施例では、フッ素化シラン化合物を用いてガラス板等への撥水処理を行ったが、フッ素化シラン化合物の代わりにフッ素樹脂を含むフッ素コーティング剤(野田スクリーン社製、商品名:INT-332VE)を用いた場合も、ガラス板等の所定の領域における撥水処理が可能であり、上記撥水処理が行われた表面は、硫酸過水等の酸化剤による表面処理に耐えうることが確認された。
<接合領域における接合状態の評価>
上記(実施例1)の<マイクロ流路デバイスのリーク試験>と同様の方法で、マイクロ流路デバイスを得た。その後、接合領域における2枚のガラス板同士が直接接合している面積の割合を、上述した干渉縞面積比率法によって求めた。その結果、上記ガラス板同士が直接接合している面積の割合は、接合領域全体の面積に対して、最小値で7.9%であり、30%であるもの、60%であるものも確認された。
(実施例3)
<他の表面処理方法の検討>
上述した(実施例1)及び(実施例2)では、ガラス板の貼り合わせの際は、ガラス板の表面を酸素プラズマ、酸化剤(硫酸過水)又は酸(塩酸)で処理していた。この表面処理については、熟練者が行うには何の支障もないが、実施例に示したタンパク質又は細胞を取り扱うバイオテクノロジー分野の研究者の多くは、酸化剤又は酸によるガラス板の表面処理に慣れておらず、心理的障壁があることは経験上明らかである。そこで、心理的障壁を生じさせない、より簡便なガラス板の表面処理の方法を検討した。
まず、(実施例2)の<マイクロ流路デバイスの作製方法及び耐圧性の評価試験>に記載されているのと同様の方法によって、メイン流路及び迂回路となる流路を有するガラス板とカバーガラスとを準備した。得られたガラス板及びカバーガラスの表面を、メラミン系スポンジで研磨した。その後、超音波にかけながら上記ガラス板及び上記カバーガラスを水に浸漬した(5分間)。次に、超音波にかけながら上記ガラス板及び上記カバーガラスを、一般的なアルカリ性洗剤(第一工業製薬株式会社製、商品名:Scat 20X-N)の水溶液(最終濃度5体積%)に浸漬した(60分間)。最後に流水で上記ガラス板及び上記カバーガラスをすすぎ、接合領域に水を残したまま上記ガラス板及び上記カバーガラスを貼り合わせ、加温、加圧することで(40℃、450Nで5時間)、マイクロ流路デバイスを製造した。
製造したマイクロ流路デバイスを図18に示す。上記マイクロ流路デバイスについて(実施例2)の<マイクロ流路デバイスの作製方法及び耐圧性の評価試験>と同様の耐圧性の試験を行ったところ、リーク圧力は少なくとも0.47MPaであり、酸素プラズマ、酸化剤又は酸を用いた上述の表面処理方法によってガラス板を表面処理した場合と遜色がないことを確認した。
<電極を有するマイクロ流路デバイスの作製>
まず、ガラス板(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松波硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意した。上記ガラス板の表面における電極を設置する領域以外の領域をマスキング材(株式会社寺岡製作所製、商品名:カプトン粘着テープ)で被覆した。次に、真空蒸着法でアルミニウムを当該ガラス板の表面(マスキング材で被覆されていない領域)に定着させた。このようにしてアルミニウムの電極を有するガラス板を作製した(図19の(a))。一方で、流路(長さ5cm、幅1cm、深さ200μm)が設けられたガラス板を準備した。当該ガラス板は、流路及びガラス板の縁の領域に撥液領域(フッ素処理部分)が設けられていた(図19の(a))。上記<他の表面処理方法の検討>で記載したのと同様の方法によって、アルミニウムの電極を有するガラス板と流路が設けられたガラス板とを接合した(図19の(b))。
その結果、流路内に電極が封入されたマイクロ流路デバイスの作製に成功した(図19の(c))。アルミニウムは電極としての化学的安定性が低い材料であることが知られている。上記<他の表面処理方法の検討>で記載した方法によってガラス板同士を接合すれば、電極であるアルミニウムを劣化させることなくマイクロ流路デバイスを作製できることが示された。
また上記のように、本実施形態の電極を有するマイクロ流路デバイスは、その製造工程で、高温加熱や接着剤処理を要しないので、タンパク質等の生体高分子や、細胞など、高温で不安定な材料とともに、マイクロ流路内に封入することができ、電極は、生細胞からの電気信号を受信し、また生細胞へ電気信号を送信するマイクロセンサ電極として利用することができる。
なお、流路内部に設けられた電極の外部接続については、図20に示される手順によって行うことが可能である。すなわち、流路が設けられたガラス板の表面であって、上記電極と接触する表面に電線を差し込むための溝を作製し(図20の(a))、当該溝へ電線を差し込み固定することで、流路内部に設けられた電極の外部接続が可能になる(図20の(b))。
<マイクロ流路デバイスへの細胞の固定>
平板のガラス板(ホウケイ酸ガラス、長さ7.6cm、幅5.2cm、厚さ1mm、松浪硝子工業社製、商品名:大型スライド白縁磨)を用意し、流路(長さ5.6cm、幅3.2cm、深さ200μm)を設け、細胞を固定するための試料固定領域(18か所)及び接合領域(縁から5mmまでの領域)をマスキング用テープ(日東電工株式会社製、商品名:エレップマスキングテープ)で被覆した。また、導入口(2か所)及び排出口(2か所)が設けられたカバーガラスを用意し、接合領域をマスキング用テープ(日東電工株式会社製、商品名:エレップマスキングテープ)で被覆した。上記ガラス板及び上記カバーガラスをフッ素化シラン化合物(東京化成工業社製、商品名トリクロロ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン)で処理した。マスキング用テープを除去した後、上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した。以上の手順によって、マイクロ流路デバイスを構成するガラス板及びカバーガラスを得た(図21の(a))。
その後、ガラス板の試料固定領域に、筋芽細胞(C2C12)(8×10細胞/ml、0.1ml)の懸濁液(ダルベッコ改変イーグル培地)をそれぞれ滴下して37℃、3時間インキュベートした。その後、固定されていない細胞を除去して、洗浄した表面が互いに対向するように、細胞が固定されたガラス板とカバーガラスとを重ね合わせて接合し(450N、37℃、1時間)、マイクロ流路デバイスを得た(図21の(b))。マイクロ流路デバイスの導入口から培地(シグマ・アルドリッチ社製、商品名ダルベッコ改変イーグル培地)を導入して流路内に満たされた状態で培養したところ(37℃、二酸化炭素濃度5%)、筋芽細胞は、1日間培養できることを確認した。
<他の撥水処理の検討>
平板のガラス板(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し、流路(長さ5cm、幅1cm、深さ200μm)を設け、試料固定領域(5か所)及び接合領域(縁から5mmまでの領域)をマスキング用テープ(日東電工株式会社製、商品名:エレップマスキングテープ)で被覆した(図22の(a))。また、カバーガラスを用意し、接合領域をマスキング用テープ(日東電工株式会社製、商品名:エレップマスキングテープ)で被覆した(図22の(a))。上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面にフッ素コーティング剤(スリーエム社製、商品名:Novec 1720)を滴下した。その後、上記フッ素コーティング剤が乾燥するまで常温、大気圧中で静置した。上記ガラス板及び上記カバーガラスを被覆していたマスキング用テープを除去した後、上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面を硫酸過水で処理して、蒸留水で洗浄した。以上の手順によって、マイクロ流路デバイスを構成するガラス板及びカバーガラスを得た。
その後、ガラス板の試料固定領域に、墨汁(株式会社呉竹製、商品名:清書用墨滴)を滴下した。その後、洗浄した表面が互いに対向するようにガラス板とカバーガラスとを重ね合わせて接合し(450N、37℃、1時間)、マイクロ流路デバイスを得た(図22の(b))。
(実施例1)において示した撥水処理(フッ素化シラン化合物で満たされたチャンバー内に静置することによって行う撥水処理)と同様に、フッ素処理の効果で一面が濡れることはなかった。よって、上述のチャンバー内に静置することによって行う撥水処理を用いた場合と遜色ない機能が発揮された。
<マイクロ流路デバイスの簡便な作製方法>
上述した<他の表面処理方法の検討>及び<他の撥水処理の検討>に記載の方法を組み合わせて簡便な方法によってマイクロ流路デバイス(ガラス製マイクロ流体チップ)を作製した。
すなわち、流路(長さ5cm、幅1cm、深さ200μm)が設けられたガラス板(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し、試料固定領域(3か所)及び接合領域(縁から5mmまでの領域)をマスキング用テープ(日東電工株式会社製、商品名:エレップマスキングテープ)で被覆した。また、カバーガラス(ホウケイ酸ガラス、長さ7cm、幅3cm、厚さ0.7mm、松浪硝子工業社製、商品名テンパックス)を用意し、接合領域(縁から5mmまでの領域)をマスキング用テープ(日東電工株式会社製、商品名:エレップマスキングテープ)で被覆した。上記ガラス板及び上記カバーガラスにフッ素系コーティング剤(スリーエム社製、商品名:Novec 1720)を滴下した。その後、上記フッ素系コーティング剤が乾燥するまで常温、大気圧中で静置した。マスキング用テープを除去した後、上記ガラス板及び上記カバーガラスの表面(試料固定領域及び接合領域)をメラミン系スポンジで研磨した。その後、超音波にかけながら上記ガラス板及び上記カバーガラスを水に浸漬した(5分間)。次に、超音波にかけながら上記ガラス板及び上記カバーガラスを一般的なアルカリ性洗剤(第一工業製薬株式会社製、商品名:Scat 20X-N)に浸漬した(60分間)。最後に流水で上記ガラス板及び上記カバーガラスをすすいだ(図23の(a))。
その後、ガラス板の試料固定領域に、墨汁(株式会社呉竹製、商品名:清書用墨滴)を滴下した。その後、流路を有するガラス板の接合領域の四隅に水を滴下して、洗浄した表面が互いに対向するようにガラス板とカバーガラスとを重ね合わせて、ダブルクリップ(コクヨ株式会社製、商品名:ダブルクリップ 口幅25mm)で固定して接合し(20℃、16時間)(図23の(b))、マイクロ流路デバイスを得た(図23の(c))。
上記により、撥水処理時には真空ポンプ及びデシケーターが不要になり(フッ素系コーティング剤の滴下のみで代替)、表面洗浄時に酸素プラズマ装置及び酸化剤(例えば、硫酸、過酸化水素水)という劇薬も不要になり(洗剤での洗浄で代替)、更に貼り合わせ時に特殊な技能が不要な(ガラス板の接合領域に水を滴下してガラス板の四隅を合わせるだけの)マイクロ流路デバイスの作製方法が示された。当該作製方法のような簡便な方法によっても、十分な耐圧性(ラプラス圧)を有するマイクロ流路デバイスが作製できることを示した。
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…導入口、2…排出口、3…流路、4…撥液領域、5…接合領域、6…試料固定領域、7…試料、8…マスキング材、10…第1基板、20…第2基板、100…マイクロ流路デバイス。

Claims (16)

  1. 第1基板及び第2基板が互いに対向する面において接合してなるマイクロ流路デバイスであって、
    前記対向する面に形成され、供給液を流す少なくとも1つの流路と、
    前記流路の少なくとも一部の表面と前記流路に隣接する表面とを含む撥液領域と、
    前記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、前記第1基板及び前記第2基板を接合する接合領域と、
    前記流路上及び/又は前記流路に対向する表面において試料を固定する試料固定領域と、を備え、
    前記第1基板及び前記第2基板それぞれの前記撥液領域は、前記供給液と前記試料を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
    前記試料固定領域は、前記試料を含む液体に対する接触角が前記撥液領域における接触角よりも小さく、
    前記試料は、前記試料固定領域に固定されていて、
    前記接合領域における前記第1基板及び前記第2基板が直接接合している面積の割合が前記接合領域全体の面積に対して、7%以上100%以下であり、
    前記第1基板及び前記第2基板それぞれの前記撥液領域は、フッ素化シラン化合物又はフッ素樹脂が固定されている、マイクロ流路デバイス。
  2. 前記第1基板及び前記第2基板は、それぞれ独立にガラス又はシリコン系エラストマーを含む、請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
  3. 前記撥液領域は、フッ素化シラン化合物又はフッ素樹脂が固定されている、請求項1又は請求項2に記載のマイクロ流路デバイス。
  4. 前記試料は、細胞、タンパク質、糖、核酸、低分子有機化合物及び触媒からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のマイクロ流路デバイス。
  5. 外部に連通する少なくとも1つの導入口と、
    外部に連通する少なくとも1つの排出口と、を更に含み、
    前記少なくとも1つの流路は、前記導入口から供給された前記供給液を前記排出口に流す流路である、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のマイクロ流路デバイス。
  6. 前記少なくとも1つの流路内に設けられた電極を更に有する、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のマイクロ流路デバイス。
  7. 同一の前記流路上に設けられる前記試料固定領域は、その数が1~100である、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のマイクロ流路デバイス。
  8. 第1基板と、第2基板とを含む、マイクロ流路デバイス用キットであって、
    前記第1基板及び前記第2基板は互いに対向する面において接合することによりマイクロ流路デバイスを構成し、前記マイクロ流路デバイスは、
    前記対向する面に形成され、供給液を流す少なくとも1つの流路と、
    前記流路の少なくとも一部の表面と前記流路に隣接する表面とを含む撥液領域と、
    前記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、前記第1基板及び前記第2基板を接合する接合領域と、
    前記流路上及び/又は前記流路に対向する表面において試料を固定する試料固定領域と、を備え、
    前記第1基板及び前記第2基板それぞれの前記撥液領域は、前記供給液と前記試料を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
    前記試料固定領域は、前記試料を含む液体に対する接触角が前記撥液領域における接触角よりも小さく、
    前記第1基板及び前記第2基板それぞれの前記撥液領域は、フッ素化シラン化合物又はフッ素樹脂が固定されている、マイクロ流路デバイス用キット。
  9. 前記第1基板及び前記第2基板を重ね合わせて固定するための治具を更に含む、請求項8に記載のマイクロ流路デバイス用キット。
  10. 前記マイクロ流路デバイスは、外部に連通する少なくとも1つの導入口と、外部に連通する少なくとも1つの排出口と、を更に含み、
    前記少なくとも1つの流路は、前記導入口から供給された前記供給液を前記排出口に流す流路である、請求項8又は請求項9に記載のマイクロ流路デバイス用キット。
  11. 前記第1基板は、前記導入口、前記排出口、前記撥液領域及び前記接合領域を備え、
    前記第2基板は、前記流路、前記撥液領域、前記接合領域及び前記試料固定領域を備える、請求項10に記載のマイクロ流路デバイス用キット。
  12. 他の基板と共に互いに対向する面において接合することにより、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイスを構成する、マイクロ流路デバイス用基板であって、
    供給液を流す少なくとも1つの流路と、
    前記流路の少なくとも一部の表面と前記流路に隣接する表面とを含む撥液領域と、
    前記対向する面における縁部分の表面を少なくとも含み、前記他の基板と接合する接合領域と、
    前記流路上において試料を固定する試料固定領域と、を備え、
    前記撥液領域は、前記供給液と前記試料を含む液体とに対する接触角が90°以上であり、
    前記試料固定領域は、前記試料を含む溶液に対する接触角が前記撥液領域における接触角よりも小さい、マイクロ流路デバイス用基板。
  13. 第1基板と、第2基板とを含み、
    供給液を流す少なくとも1つの流路を備える、請求項4に記載のマイクロ流路デバイスの製造方法であって、
    前記第1基板及び前記第2基板を準備する工程と、
    前記第1基板及び前記第2基板が互いに対向する面において接合するように前記第1基板及び前記第2基板を重ね合わせ、10~250℃で加圧しながら前記第1基板及び前記第2基板を接合する工程と、を含み、
    前記少なくとも1つの流路は前記対向する面に形成される、製造方法。
  14. 前記第1基板及び前記第2基板を準備する工程は、前記対向する面の少なくとも一部を酸素プラズマ、酸化剤及び酸からなる群から選ばれる少なくとも1種で表面処理することを含む、請求項13に記載の製造方法。
  15. 前記第1基板及び前記第2基板を準備する工程は、前記対向する面の少なくとも一部を洗剤で洗浄することを含む、請求項13に記載の製造方法。
  16. 前記マイクロ流路デバイスは、外部に連通する少なくとも1つの導入口と、外部に連通する少なくとも1つの排出口と、を更に含み、
    前記少なくとも1つの流路は、前記導入口から供給された前記供給液を前記排出口に流す流路である、請求項13~請求項15のいずれか一項に記載の製造方法。
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