JP7276297B2 - 複合誘電体材料 - Google Patents

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Description

本発明は、複合誘電体材料に関し、さらに詳しくは、ポリマーと無機フィラーとの複合体からなる複合誘電体材料に関する。
コンデンサは、2枚の電極の間に誘電体を挿入したものであり、その静電容量は、誘電体の比誘電率に比例する。コンデンサに使用される誘電体としては、例えば、セラミックス、プラスチック、絶縁油、マイカなどが知られている。特に、BaTiO3は、比誘電率が大きいため、小型・大容量のコンデンサの誘電体には、主としてBaTiO3が用いられている。
BaTiO3は、常温(25℃)では正方晶であるが、結晶構造が正方晶(強誘電体)から立方晶(常誘電体)に変化するキュリー点(約125℃)を持ち、キュリー点では比誘電率が最も高くなる。そのため、BaTiO3を用いたコンデンサは、キュリー点近傍において静電容量が大きく変化する。しかし、BaTiO3からなる緻密な焼結体を得るためには、1300℃前後の高い焼結温度を必要とする。さらに、BaTiO3は、加工性に乏しいために、任意の形状や複雑な形状に加工するのが難しい。
一方、ポリプロピレンなどのポリマーからなるプラスチックフィルムは、フィルムコンデンサの誘電体として用いられている。プラスチックフィルムは、可撓性があるために、容易にロール状に巻き取ることができる。しかしながら、ポリマーは、比誘電率が小さいために、コンデンサ容量を大きくするためには、巻回数を多くする必要がある。そのため、フィルムコンデンサは、積層セラミックチップコンデンサに比べて大型化するという問題がある。
これに対し、可撓性のあるポリマーと、高比誘電率を有する無機フィラーとを複合化させると、可撓性と高比誘電率とを両立させることができる。また、このような複合体を用いてフィルムコンデンサを作製すると、ポリマーのみを用いた場合に比べて、フィルムコンデンサを小型化することができる。しかしながら、ポリマーと無機フィラーとの複合体は、絶縁破壊強度が低いという問題がある。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、チタン酸ストロンチウム粉末を40体積%含む複合誘電体層の両面に、ポリビニルアセトアセタール樹脂からなる高耐電圧性樹脂層を形成した誘電体フィルムが開示されている。
同文献には、
(a)熱硬化性樹脂に無機成分を分散させると、複合誘電体層の表面の平滑性が低下し、複合誘電体層の両主面に形成される電極と、複合誘電体層を構成する無機成分との間にある樹脂部分に電界集中が発生するために、耐電圧性が低下する点、及び
(b)有機成分と無機成分とを複合化した複合誘電体層の両面に高耐電圧性樹脂層を形成すると、誘電体フィルム全体の耐電圧性が向上する点
が記載されている。
また、特許文献2には、有機樹脂中に非晶質の金属酸化物粒子を分散させた誘電体フィルムが開示されている。
同文献には、
(a)有機樹脂中に結晶質のセラミック粒子を分散させると、有機樹脂とセラミック粒子との間で誘電率の急峻な変化が生じるために、破壊電界強度が低下する点、及び、
(b)有機樹脂中に非晶質の金属酸化物粒子を分散させると、界面における局所的な電界強度の増大が緩和され、破壊電界強度が高くなる点
が記載されている。
ハイブリッド自動車や電気自動車のパワーコントロールユニット(PCU)には、フィルムコンデンサが用いられている。フィルムコンデンサは、PCUの構成部品の中でも大型であるため、小型化が望まれている。フィルムコンデンサを小型化するためには、最大エネルギー密度を向上させる必要がある。最大エネルギー密度は、材料の比誘電率及び絶縁破壊強度と正の相関があり、比誘電率が高くなるほど、及び/又は、絶縁破壊強度が高くなるほど、最大エネルギー密度は高くなる。特に、最大エネルギー密度は、絶縁破壊強度の2乗に比例するため、高い最大エネルギー密度を得るには、絶縁破壊強度を向上させることが効果的である。
一般的に、ポリマーの比誘電率を向上させる方法の一つとして、ポリマー中に高比誘電率の無機フィラーを分散させ、複合材料とする方法がある。しかし、上述したように、ポリマー中に高比誘電率のフィラーを分散させると、無機フィラーがポリマー中で凝集するために、通常、複合材料の絶縁破壊強度はポリマー単独よりも低下する。
一方、ポリマー中にポリマーよりも比誘電率の低い無機フィラーを分散させると、ポリマー単独に比べて絶縁破壊強度が向上する場合がある。しかしながら、高い絶縁破壊強度を得るために無機フィラーの含有量を増加させると、複合体の比誘電率が著しく低下する。そのため、ポリマー中に単に低比誘電率の無機フィラーを分散させるだけでは、最大エネルギー密度の向上に限界がある。
特許第4893396号公報 特開2015-201513号公報
本発明が解決しようとする課題は、相対的に高い比誘電率と、相対的に高い絶縁破壊強度とを兼ね備えた複合誘電体材料を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、相対的に少量の無機フィラーの添加で、高い絶縁破壊強度を示す複合誘電体材料を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る複合誘電体材料は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記複合誘電体材料は、
ポリマーからなるマトリックスと、
前記マトリックス中に分散している無機フィラーと
を備え、
前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンからなり、
前記無機フィラーは、有機化モンモリロナイトからなる。
(2)前記複合誘電体材料は、0mass%超10mass%未満の前記無機フィラーを含み、残部が前記PVDF及び不可避的不純物からなる。
(3)前記誘電体複合材料は、配向フィラーの割合が0.8超1.0以下である。
PVDF中に有機化モンモリロナイトを分散させる場合において、配向フィラーの割合をある臨界値以上にすると、少量の添加で高い絶縁破壊強度が得られる。特に、有機化モンモリロナイトの含有量及び/又は配向フィラーの割合を最適化すると、複合誘電体材料の最大エネルギー密度は、PVDFのそれの2.5倍以上となる。
これは、有機化モンモリロナイトは板状であることから、フィラーの配向方向(板状フィラーの面内方向)に対して垂直に電圧が印加されると、絶縁破壊によるダメージは無機フィラー/ポリマーの界面に広がりやすくなり、ポリマーへのダメージ進展が抑制されるためと考えられる。
主軸方向長、及び主軸方向幅の定義を説明するための模式図である。 実施例1~2及び比較例1~4で得られた複合誘電体材料からなる膜の断面のSEM像である。 有機化モンモリロナイトの含有量(x)と配向フィラーの割合(y)との関係を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 複合誘電体材料]
本発明に係る複合誘電体材料は、
ポリマーからなるマトリックスと、
前記マトリックス中に分散している無機フィラーと
を備えている。
[1.1. ポリマー]
マトリックスは、ポリマーからなる。本発明において、マトリックスを構成するポリマーには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が用いられる。PVDFは比誘電率が最大で11であり、他のポリマーに比べて比誘電率が高い。そのため、これと無機フィラーとを複合化させると、比誘電率が高い複合誘電体材料が得られる。
[1.2. 無機フィラー]
[1.2.1. 有機化モンモリロナイト]
マトリックス中には、無機フィラーが分散している。本発明において、無機フィラーには、有機化モンモリロナイトが用いられる。
ここで、「有機化モンモリロナイト」とは、有機オニウムイオンにより有機化されたモンモリロナイトをいう。
換言すれば、「有機化モンモリロナイト」とは、層状粘土鉱物の一種であるモンモリロナイトの層間の陽イオン(例えば、Na+)を有機オニウムイオン(例えば、ドデシルアンモニウムイオン)で交換し、層間剥離させることにより得られる板状粒子をいう。
[1.2.2. 無機フィラーの含有量(x)]
本発明に係る複合誘電体材料は、所定量の無機フィラーを含み、残部がPVDF及び不可避的不純物からなる。
ここで、「無機フィラーの含有量(x)」とは、複合誘電体材料の総質量に対する無機フィラーの質量の割合をいう。
有機化モンモリロナイトからなる無機フィラーは、複合誘電体材料の絶縁破壊強度を向上させる作用がある。このような効果を得るためには、無機フィラーの含有量(x)は、0mass%超である必要がある。
一方、無機フィラーのの含有量(x)が過剰になると、複合誘電体材料の比誘電率が低下する。従って、xは、10mass%未満である必要がある。
なお、本発明に係る複合誘電体材料は、実質的にPVDF及び有機化モンモリロナイトのみからなるものが好ましいが、不可避的不純物が含まれていても良い。不可避的不純物としては、例えば、
(a)PVDF以外のポリマー、
(b)有機化モンモリロナイト以外の無機フィラー、
(c)モンモリロナイトを有機化した際に使用した有機物、
などがある。
但し、不可避的不純物の含有量が過剰になると、誘電体特性が低下する場合がある。従って、不可避的不純物の総含有量は、2.0mass%以下が好ましい。不可避的不純物の総含有量は、好ましくは、1.0mass%以下、さらに好ましくは、0.5mass%以下である。
[1.2.3. 配向フィラーの割合(y)]
図1に、主軸方向長、及び主軸方向幅の定義を説明するための模式図を示す。
「主軸方向」とは、複合誘電体材料の断面において、無機フィラーの長さが最大となる方向をいう。
「主軸方向長(D)」とは、無機フィラーの主軸方向の長さの最大値をいう。
「主軸方向幅(t)」とは、無機フィラーの主軸方向に対して垂直方向の長さの最大値をいう。
「配向フィラー」とは、複合誘電体材料からなる部材中に分散している無機フィラーの内、複合誘電体材料の基準面に対して平行方向と、主軸方向とのなす角θ(以下、「傾斜角θ」ともいう)が10°以内であるものをいう。
複合誘電体材料の「基準面」とは、複合誘電体材料からなる部材の上面又は下面に対して平行な面をいう。複合誘電体材料からなる部材の上面又は下面に凹凸がある場合には、「基準面」とは、上面又は下面の凹凸の中心線を通る面に対して平行な面をいう。
「配向フィラーの割合(y)」とは、複合誘電体材料の断面内にある無機フィラーの総数(n0)に対する配向フィラーの数(n)の割合(=n/n0)をいう。配向フィラーの割合を算出する際の観察領域の大きさは、10μm×7μm以上が好ましい。
無機フィラーの含有量が同一である場合、一般に、配向フィラーの割合が多くなるほど、絶縁破壊強度は大きくなる。このような効果を得るためには、配向フィラーの割合(y)は、0.8超1.0以下である必要がある。yは、好ましくは、0.85以上、さらに好ましくは、0.9以上である。
[1.2.4. 無機フィラーの含有量(x)と配向フィラーの割合(y)の関係]
一般に、無機フィラーの含有量(x)が少ない場合、配向フィラーの割合(y)が相対的に小さい場合であっても、高い絶縁破壊強度が得られる。一方、xが相対的に大きい場合において、高い絶縁破壊強度を得るためには、yを相対的に大きくする必要がある。これは、xが大きくなるほど、板状の無機フィラーが一方向に配向しづらくなり、凝集が起きやすくなるためと考えられる。
高比誘電率と高絶縁破壊強度を両立させるためには、複合誘電体材料は、次の式(1)~式(3)の関係を満たしているのが好ましい。
y≧0.025x+0.65 …(1)
0<x<10 …(2)
y>0.8 …(3)
但し、
xは、前記無機フィラーの含有量、
yは、前記配向フィラーの割合。
[1.2.5. 無機フィラーの形状]
[A. 平均厚さ]
「平均厚さ」とは、複合誘電体材料の断面に現れる50個以上の無機フィラーについて測定された主軸方向幅(t)の平均値をいう
無機フィラーの平均厚さが薄くなりすぎると、フィラーの個数が増え、隣接するフィラーと接触しやすくなる。その結果、絶縁破壊強度が低下する場合がある。従って、平均厚さは、1nm以上が好ましい。平均厚さは、好ましくは、2nm以上、さらに好ましくは、3nm以上である。
一方、無機フィラーの平均厚さが厚くなりすぎると、フィラーのアスペクト比が小さくなる。その結果、板状フィラー添加による絶縁破壊の抑制効果が小さくなる場合がある。従って、平均厚さは、500nm以下が好ましい。平均厚さは、好ましくは、450nm以下、さらに好ましくは、400nm以下である。
[B. 平均長さ]
「平均長さ」とは、複合誘電体材料の断面に現れる50個以上の無機フィラーについて測定された主軸方向長(D)の平均値をいう。
無機フィラーの平均長さが短くなりすぎると、フィラーのアスペクト比が小さくなる。その結果、板状フィラー添加による絶縁破壊の抑制効果が小さくなる場合がある。従って、平均長さは、50nm以上が好ましい。平均長さは、好ましくは、55nm以上、さらに好ましくは、60nm以上である。
一方、無機フィラーの平均長さが長くなりすぎると、フィラーのアスペクト比が大きくなりすぎ、隣接するフィラーと接触しやすくなる。その結果、絶縁破壊強度が低下する場合がある。従って、平均長さは、5μm以下が好ましい。平均長さは、好ましくは、4.5nm以下、さらに好ましくは、4.0nm以下である。
[C. 平均粒子アスペクト比]
「粒子アスペクト比」とは、複合誘電体材料の断面に現れる無機フィラーの主軸方向幅(t)に対する主軸方向長(D)の比(=D/t)をいう。
「平均粒子アスペクト比」とは、複合誘電体材料の断面に現れる50個以上の無機フィラーについて測定された粒子アスペクト比の平均値をいう。
有機化モンモリロナイトは、層状粘土鉱物を層間剥離させることにより得られる板状粒子である。本発明において、「板状粒子」とは、平均粒子アスペクト比が1.0超である粒子をいう。
一般に、無機フィラーの平均粒子アスペクト比が大きくなるほど、最大エネルギー密度が向上する。高い相対性能指数を得るためには、平均粒子アスペクト比は、1.8以上が好ましい。
一方、平均粒子アスペクト比が大きくなりすぎると、複合誘電体材料をフィルム化した時にフィルムの可撓性が低下し、巻き取りが困難となる。また、無機フィラーの僅かな傾きによって無機フィラー同士が接触しやすくなる。従って、平均粒子アスペクト比は、200以下が好ましい。平均粒子アスペクト比は、好ましくは、100以下、さらに好ましくは、20以下である。
[1.3. 最大エネルギー密度]
最大エネルギー密度(Umax)は、コンデンサ性能の指標の一つであり、次の式(4)で表される。式(4)より、最大エネルギー密度を向上させるためには、比誘電率及び/又は絶縁破壊強度を大きくする必要があることが分かる。特に、最大エネルギー密度は、絶縁破壊強度の2乗に比例するため、高い最大エネルギー密度を得るには、絶縁破壊強度を向上させることが効果的である。
max[J/cm3]=(1/2)ε0εrbd 2 …(4)
但し、
ε0は、真空の誘電率、8.854×10-12[F/m]、
εrは、材料の比誘電率、
bdは、材料の絶縁破壊強度[V/m]。
PVDF中に有機化モンモリロナイトを分散させる場合において、有機化モンモリロナイトの含有量を最適化すると、複合体の絶縁破壊強度はPVDFのそれより高くなる。
しかし、PVDFの比誘電率が約10であるのに対し、有機化モンモリロナイトの比誘電率は約3であるため、有機化モンモリロナイトの含有量が多くなるほど、複合体の比誘電率が低下する。その結果、単にPVDFと有機化モンモリロナイトとを複合化させるだけでは、最大エネルギー密度の向上に限界がある。
これに対し、PVDF中に有機化モンモリロナイトを分散させる場合において、配向フィラーの割合を増加させると、少量の有機化モンモリロナイトの添加で高い絶縁破壊強度が得られる。その結果、PVDF単独に比べて、高い最大エネルギー密度が得られる。
具体的には、無機フィラーの含有量及び配向フィラーの割合を最適化すると、最大エネルギー密度は、8.0J/cm3以上となる。この値は、PVDFの2.5倍以上に相当する。
[2. 複合誘電体材料の製造方法]
本発明に係る複合誘電体材料は、
(a)有機化モンモリロナイトからなる無機フィラーを作製し、
(b)所定の組成となるようにポリマー及び無機フィラーを溶媒中に分散させてスラリーとし、
(c)スラリーを基板表面にキャストし、塗膜を乾燥させて乾燥膜とし、
(d)乾燥膜を延伸処理する
ことにより製造することができる。
[2.1. 無機フィラー作製工程]
まず、有機化モンモリロナイトからなる無機フィラーを作製する(無機フィラー作製工程)。有機化モンモリロナイトの製造方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。
有機化モンモリロナイトは、具体的には、
(a)有機オニウム化合物(例えば、ドデシルアミン塩酸塩)を含む熱水中にモンモリロナイトを分散させ、
(b)モンモリロナイトの層間の陽イオン(例えば、Na+)を有機オニウムイオン(例えば、ドデシルアンモニウムイオン)で交換し、
(c)層間に有機オニウムイオンが導入されたモンモリロナイトを層間剥離させる
ことにより製造することができる。
この場合、合成された無機フィラーを乾燥させると、無機フィラーが凝集する。一旦凝集した無機フィラーは、その後の工程において分散処理を施しても、凝集を完全になくすことはできない。そのため、このようにして得られた無機フィラーは、乾燥させることなく、溶媒(A)中に分散させた状態のまま次工程に供するのが好ましい。
[2.2. スラリー作製工程]
次に、所定の組成となるようにポリマー及び無機フィラーを溶媒(B)中に分散させてスラリーとする(スラリー作製工程)。
溶媒(B)の種類は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な溶媒を用いることができる。スラリー調製用の溶媒(B)は、無機フィラー分散用の溶媒(A)と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。溶媒(A)に無機フィラーを分散させた状態のまま、スラリー作製を行う場合において、溶媒(B)が溶媒(A)とは異なっている時には、無機フィラーを乾燥させることなく、溶媒置換を行うのが好ましい。
スラリー中のポリマー濃度及び無機フィラー濃度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な濃度を選択することができる。
[2.3. キャスト工程]
次に、スラリーを基板表面にキャストし、塗膜を乾燥させて乾燥膜を得る(キャスト工程)。
キャストの方法及び条件、並びに、乾燥の方法及び条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
[2.4. 延伸工程]
次に、乾燥膜を延伸処理する(延伸工程)。これにより、本発明に係る複合誘電体材料が得られる。
延伸の方法及び条件は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な条件を選択することができる。
[3. 作用]
一般に、ポリマー中に高比誘電率の無機フィラーを分散させると、複合材料の比誘電率は向上するが、絶縁破壊強度は低下する。一方、有機化モンモリロナイトは比誘電率が低いため、PVDFのような高比誘電率ポリマー中に有機化モンモリロナイトを分散させると、複合材料の絶縁破壊強度が向上する場合がある。しかしながら、相対的に高い絶縁破壊強度を得るためには、相対的に多量の有機化モンモリロナイトを分散させる必要がある。その結果、複合材料の比誘電率が著しく低下し、最大エネルギー密度が低下する。
これに対し、PVDF中に有機化モンモリロナイトを分散させる場合において、配向フィラーの割合をある臨界値以上にすると、少量の添加で高い絶縁破壊強度が得られる。特に、有機化モンモリロナイトの含有量及び/又は配向フィラーの割合を最適化すると、複合誘電体材料の最大エネルギー密度は、PVDFのそれの2.5倍以上となる。
これは、有機化モンモリロナイトは板状であることから、フィラーの配向方向(板状フィラーの面内方向)に対して垂直に電圧が印加されると、絶縁破壊によるダメージは無機フィラー/ポリマーの界面に広がりやすくなり、ポリマーへのダメージ進展が抑制されるためと考えられる。
(実施例1~2、比較例1~5)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1~2、比較例4]
ドデシルアミン塩酸塩を含む80℃の熱水中においてモンモリロナイトを処理することにより、有機化モンモリロナイトを得た。得られた有機化モンモリロナイトをジメチルアセトアミドに分散させ、有機化モンモリロナイト分散液を得た。また、PVDF粉末をジメチルアセトアミドに溶解させ、PVDF溶液を得た。
次に、複合誘電体材料に含まれる有機化モンモリロナイトの含有量が0mass%超10mass%以下となるように、所定量の有機化モンモリロナイト分散液とPVDF溶液とを混合し、均一溶液を得た。得られた均一溶液をガラス基板上に塗布し、200℃で乾燥させることにより、乾燥膜を得た。さらに、乾燥膜を延伸処理し、複合誘電体材料からなる膜を得た。延伸条件は、温度:150℃、延伸率;3.5とした。
[1.2. 比較例1~3]
延伸処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、複合誘電体材料からなる膜を得た。
[1.3. 比較例5]
有機化モンモリロナイト溶液の添加及び延伸処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、PVDFからなる膜を得た。
[2. 試験方法]
[2.1. 比誘電率、絶縁破壊強度、及び最大エネルギー密度]
膜の両面に金電極を形成し、インピーダンスアナライザを用いて、10kHzでの比誘電率を測定した。
また、膜の両面に金電極を形成し、超高電圧耐圧試験器を用いて、絶縁破壊強度(BDS)を測定した。電流が1mA流れた時の電圧を絶縁破壊電圧とした。さらに、上述した式(2)を用いて、最大エネルギー密度を算出した。
[2.2. 配向フィラーの割合]
膜の断面のSEM像を撮影した。次いで、断面の10μm×7μmの領域にあるすべての有機化モンモリロナイトの傾斜角θを測定した。さらに、得られた傾斜角θに基づいて、配向フィラーの割合を算出した。
[3. 結果]
表1に、結果を示す。また、図2に、実施例1~2及び比較例1~4で得られた複合誘電体材料からなる膜の断面のSEM像を示す。表1及び図2より、以下のことが分かる。
(1)有機化モンモリロナイトとPVDFとを複合化させ、かつ、延伸処理を行わなかった場合(比較例1~3)、絶縁破壊強度(BDS)は、PVDFのみからなる誘電体(比較例5)より向上した。しかし、延伸処理を行わなかったために、配向フィラーの割合は、いずれも0.8以下となった。その結果、最大エネルギー密度は、いずれも8.0J/cm3未満であった。
(2)有機化モンモリロナイトの含有量を10mass%とし、かつ、延伸処理を行った場合(比較例4)、配向フィラーの割合は0.9に向上したが、BDSは比較例2、3よりも低下した。その結果、最大エネルギー密度は、8.0J/cm3未満であった。
(3)実施例1、2は、いずれも配向フィラーの割合が1.0であった。また、比誘電率は、PVDFのみからなる誘電体(比較例5)とほぼ同等であった。そのため、実施例1、2の最大エネルギー密度は、いずれも8.0J/cm3を超えた。
Figure 0007276297000001
図3に、有機化モンモリロナイトの含有量(x)と配向フィラーの割合(y)との関係を示す。図3中、ハッチングで表した領域は、最大エネルギー密度8.0J/cm3以上を実現できる可能性がある領域を表す。図3より、最大エネルギー密度を8.0J/cm3以上とするためには、有機化モンモリロナイトの含有量(x)と配向フィラーの割合(y)との間に上述した式(1)~式(3)関係が成り立つように、xとyを最適化するのが好ましいことが分かる。
(比較例6~7)
[1. 試料の作製]
[1.1. 比較例6]
無機フィラーには、平均粒径が300μmであるBaTiO3粉末を用いた。このBaTiO3粉末をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、BaTiO3粉末のDMF分散液を得た。
DMFに所定量のPVDFペレットを溶解させ、PVDFのDMF溶液を得た。これにBaTiO3のDMF分散液を加えて混合し、脱泡してスラリーを得た。このスラリーをガラス板上にキャストし、乾燥させることにより、誘電体フィルムを得た。BaTiO3粉末の含有量は、20vol%であった。
[1.2. 比較例7]
PVDFのDMF溶液をそのままガラス基板上にキャストし、乾燥させることにより誘電体フィルムを得た。
[2. 試験方法及び結果]
実施例1と同様にして、誘電体フィルムの絶縁破壊電圧(BDS)を測定した。表2に結果を示す。BaTiO3/PVDF複合体からなる比較例6は、PVDFのみからなる比較例7よりBDSが低下した。これは、BaTiO3が球形であるために、絶縁破壊のダメージが電圧印加方向に進展しやすいためと考えられる。
なお、比較例5のBDSが比較例7のそれより小さいのは、用いたPVDFの種類が異なるため(すなわち、PVDF粉末に含まれる水分量がPVDFペレットに含まれる水分量より多いため)と考えられる。
Figure 0007276297000002
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る複合誘電体材料は、ハイブリッド車やHV車のPCUに用いられるコンデンサの誘電体として使用することができる。

Claims (2)

  1. 以下の構成を備えた複合誘電体材料。
    (1)前記複合誘電体材料は、
    ポリマーからなるマトリックスと、
    前記マトリックス中に分散している無機フィラーと
    を備え、
    前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデンからなり、
    前記無機フィラーは、有機化モンモリロナイトからなる。
    (2)前記複合誘電体材料は、0mass%超10mass%未満の前記無機フィラーを含み、残部が前記PVDF及び不可避的不純物からなる。
    (3)前記誘電体複合材料は、配向フィラーの割合が0.8超1.0以下である。
    (4)前記誘電体複合材料は、最大エネルギー密度が8.0J/cm 3 以上である。
    (5)前記誘電体複合材料は、次の式(1)~式(3)の関係をさらに満たす。
    y≧0.025x+0.65 …(1)
    0<x<10 …(2)
    y>0.8 …(3)
    但し、
    xは、前記無機フィラーの含有量、
    yは、前記配向フィラーの割合。
  2. 前記無機フィラーは、
    平均厚さが1nm以上500nm以下であり、
    平均長さが50nm以上5μm以下であり、
    平均粒子アスペクト比が1.8以上である
    請求項1に記載の複合誘電体材料。
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