JP7275526B2 - タイヤ - Google Patents
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Description
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能と耐摩耗性を両立したタイヤを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、中央値粒度が100μm以下、見かけ比重が0.70g/ml以下の水溶性フィラーを含むゴム組成物を用いて作製されたトレッドゴムを有するタイヤに関する。
タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ100μmの位置の範囲における水湿潤時のマルテンス硬度の最小値(a)、タイヤ半径方向深さ200μmの位置における水湿潤時のマルテンス硬度(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有するタイヤであることが好ましい。
(a)/(b)≦0.85 式(I)
本発明者らの検討の結果、良好なグリップ性能を得るためには、トレッドゴムにおいて、内剛外柔が理想であることが判明した。
すなわち、トレッド内部は、ゴムの倒れ込みを防ぎ、ゴムの路面に対する実接触面積を高く保つ観点から、また、操縦安定性でのコーナリングパワー確保の観点から、硬い方が良い。
一方、トレッド表層部は、路面の石骨材(8mmピッチ)表層のミクロな凹凸(80μm~0.1mm)にゴムがミクロ追従する観点から、柔らかい方が良い。追従させる方が、ゴムと路面の実接触面積を大きくでき、ヒステリシスロスを発生させやすく、グリップが良好である。
上記考えに基づいて、検討した結果、トレッドの表層0~100μm深さでは、ポリマーと可塑剤リッチ層が形成されて、加硫直後、すなわちタイヤ製造直後は柔らかい。しかし、タイヤを保管中に、酸素が浸透して、特に架橋密度が低い場合、特に老化防止剤が少ない場合、表層に近いほど硬化し易いことが分かった。すなわち、タイヤを製造後、使用するまでの間にトレッドの表層において硬化が進行し、その結果、ウェットグリップ性能が低下することが判明した。
また、液状可塑剤、非イオン性界面活性剤自体にはグリップ性はないものの、ゴム中の樹脂の分散性を向上させたり、ブリードした樹脂又は被膜を可塑化したりする機能を有する。
このように、タイヤの表層では硬化が進行しやすいが、水溶性フィラーを配合することにより、水溶性フィラーが、ウェット路面の水分を吸収し、膨潤することにより、タイヤの表層(表層から0~60μm付近)の硬度を低下させ、良好なウェットグリップ性能を好適に付与できる。更には、局部的硬化が抑制されているため、良好な耐摩耗性も得られる。
特に、この効果は、中央値粒度が100μm以下、見かけ比重が0.70g/ml以下の特定の水溶性フィラーを配合することにより顕著に得られる。これは、中央値粒度、見かけ比重が小さいほど水を吸水しやすいためと推測される。
なお、水分は、シランカップリング剤に被覆されないシリカの表面、新品時又は走行時に成長したシリカ凝集塊、加工助剤、界面活性剤等を伝って、ゴム中に含まれる水溶性フィラーに伝わる。
ここで、従来から、スタッドレスタイヤにおいて、水溶性フィラーを配合する試みが行われているが、この試みでは、粒径の大きな水溶性フィラーを配合することにより、トレッド表面にスポンジ多孔質状の空隙を形成し、そのエッジ成分によるひっかき性と水吸収性を利用して氷上性能を向上させるものであり、本発明の作用機序とは全く異なるものである。
水溶性フィラーとしては、水への溶解性を有するフィラー(好ましくは多孔質)であれば特に限定されることなく、使用可能である。例えば、常温(20℃)の水への溶解度が1g/100g水以上の材料を使用できる。
フィラーの見かけ比重が小さいほど、フィラーは、微粒子又は多孔質である。フィラーの窒素吸着比表面積(N2SA)は、フィラーの細孔表面積を示す。一般に粒子が多孔質でない平滑表面を有する場合、中央値粒度(メジアン径、D50)が0.7μmでN2SAが7m2/g、D50が0.5μmでN2SAが15m2/g、D50が0.3μmでN2SAが34m2/gの数学的関係にある。後述する実施例で使用している硫酸マグネシウム4は、D50が7.3μmで、N2SA:9.0m2/gであるので、粒子径の割にN2SAが大きいことから、多孔質であることが分かる。
なお、本明細書において、フィラーの中央値粒度は、レーザー回折法にて測定でき、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径を意味する。
水溶性フィラーの中央値粒度は、以下の方法により測定される。
〔水溶性フィラーの中央値粒度(メジアン径)の測定〕
(株)島津製作所製SALD-2000J型を用い、レーザー回折法(測定操作は下記のとおり)により測定する。
<測定操作>
水溶性フィラーを、分散溶媒(トルエン)と分散剤(10質量%スルホこはく酸ジー2-エチルヘキシルナトリウム/トルエン溶液)との混合溶液に室温で分散させ、得られた分散液に超音波を照射しながら、該分散液を5分間撹拌して試験液を得る。該試験液を回分セルに移し、1分後に測定する。(屈折率:1.70-0.20i)
なお、本明細書において、フィラーの見かけ比重は、50mlメスシリンダーに見かけ容積で30ml量り取り、その質量から算出して求めた値である。
なお、本明細書において、フィラーの水分率は、250℃の恒温槽に1時間静置した際の減量率により求めた値である。
なお、水溶性フィラーのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、等が好適である。リグニン誘導体は、サルファイトパルプ法、クラフトパルプ法のいずれにより得られたものでもよい。
スルホン化度(/OCH3)=リグニン誘導体中のスルホン基中のS(モル)/リグニン誘導体中のメトキシル基(モル)
(a)/(b)≦0.85 式(I)
なお、本明細書では、水湿潤時のマルテンス硬度を単にマルテンス硬度とも記載する。更に、本明細書では、水湿潤時のマルテンス硬度の最小値(a)を単にマルテンス硬度(a)とも記載し、タイヤ半径方向深さ200μmの位置における水湿潤時のマルテンス硬度(b)を単にマルテンス硬度(b)とも記載し、両者をまとめてマルテンス硬度(a)、(b)とも記載する。
ここで、本明細書において、タイヤトレッド接地部とは、トレッドのうち、路面と接する部分を意味する。図2のタイヤ2では、トレッド4のトレッド面20を意味し、溝22は路面と接しないため、タイヤトレッド接地部に該当しない。
上記の通り、数ヶ月~1年程度倉庫で保管したタイヤでは、トレッドゴム内で配合剤の表層への移行、表層の硬化が進行し、図1に示す通り、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10~200μmの間の位置では、酸化、オゾン、紫外線劣化による硬化が顕著な場合があり、タイヤ間で有意義な差がみられる。
上記式(I)を満たすことは、湿潤路面を走行した際、タイヤ表面において吸水によりタイヤ表層の硬度が軟化することにより、マルテンス硬度(a)が低下する一方、タイヤ内部(タイヤ半径方向深さ200μmの位置及び更に内層のベルト側)では、水が浸透しないため、高い硬度(マルテンス硬度(b))を維持することを意味し、その結果、路面のミクロな凹凸にゴムがミクロ追従し、実接触面積を増大でき、かつ、全体のブロック剛性が高く保てるため、ブロック端の浮き上がりが少なく、実接触面積を増大できる。よって、上記式(I)を満たすことにより、ウェットグリップ性能と耐摩耗性をより好適に両立できる。
上記式(I)の上限は、好ましくは0.80、より好ましくは0.70、更に好ましくは0.65、特に好ましくは0.60、最も好ましくは0.55である。上記式(I)の下限は特に限定されないが、好ましくは0.20、より好ましくは0.30である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
水湿潤時のマルテンス硬度の最小値(a)は、下限は特に限定されないが、好ましくは0.5mgf/μm2以上、より好ましくは0.7mgf/μm2以上、更に好ましくは1.0mgf/μm2以上であり、好ましくは3.5mgf/μm2以下、より好ましくは3.0mgf/μm2以下、更に好ましくは2.5mgf/μm2以下、特に好ましくは2.0mgf/μm2以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
タイヤ半径方向深さ200μmの位置における水湿潤時のマルテンス硬度(b)は、後述する実施例に記載の測定方法によりゴムを湿潤しても、通常は、水が浸透しない箇所のマルテンス硬度であるため、押し込み深さが数mmのマクロな硬度である、タイヤの技術分野で用いられているShore(A)Hs(Shore(A)硬度)と大まかな相関があり、通常Hsが60~75であれば、タイヤ半径方向深さ200μmの位置における水湿潤時のマルテンス硬度(b)は2.0~6.0である。タイヤ半径方向深さ200μmの位置における水湿潤時のマルテンス硬度(b)は、好ましくは3.0mgf/μm2以上、より好ましくは3.5mgf/μm2以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは5.0mgf/μm2以下、より好ましくは4.0mgf/μm2以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、水湿潤時のマルテンス硬度(a)、(b)は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
なお、表中の↓は低下を、↑は増加を、→は影響なしを意味する。ここで、0.1以下の変動の場合も影響なしとした。
前記の通り、タイヤの表層では劣化により硬化が進行しやすいが、水溶性フィラーを配合することにより、水溶性フィラーが、ウェット路面の水分を吸収し、膨潤することにより、タイヤの表層(表層から0~60μm付近)の硬度を低下させ、前記(b)を変動させずに前記(a)を低下でき、前記(a)/(b)を好適に付与できる。
特に、この効果は、中央値粒度が100μm以下、見かけ比重が0.70g/ml以下の特定の水溶性フィラーを配合することにより顕著に得られる。これは、中央値粒度、見かけ比重が小さいほど水を吸水しやすいためと推測される。
より具体的には、上記手法に沿ってトレッド用ゴム組成物を調製し、該ゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤを作製し、使用開始されるまで倉庫等でタイヤが保管されることにより、トレッドゴム内で配合剤の表層への移行、表層の硬化が進行し、前記(a)/(b)、前記マルテンス硬度(a)、前記マルテンス硬度(b)を満たすトレッドゴムを有するタイヤが得られる。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。好ましい態様は変性SBRの場合と同様である。
また、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)、ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン量は、1H-NMR測定によって測定できる。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスがより好ましい。また、マイクロクリスタリンワックス100質量%中の分岐アルカンの含有量が50質量%以上であることが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤(p-フェニレンジアミン系老化防止剤);2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N'-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミンがより好ましい。
なお、フェニレンジアミン系老化防止剤と共に、キノリン系老化防止剤を併用してもよいが、キノリン系老化防止剤はフェニレンジアミン系老化防止剤よりも移行速度が遅く、表層の軟化効果は低い傾向がある。
液状可塑剤としては、20℃で液体状態の可塑剤であれば特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ポリマー等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、オイル、液状樹脂が好ましい。
なお、レジンの軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
また、樹脂は、水添されていてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、テルペン系樹脂が好ましい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤が好ましい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
水酸化アルミニウムは、難水溶性であり、ゴム組成物中での凝集性は小さく、通常、ゴム組成物中で単粒子として存在する。そのため、ゴムの補強性を損じることが少なく、ウェットグリップ性能の改善効果が得られる。水酸化アルミニウムの作用メカニズムは明確ではないが、タイヤ走行時に表層の硬度低下が主たる作用メカニズムである水溶性フィラーの場合と異なるものと推測される。
なお、水酸化アルミニウムのN2SAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤を併用することが好ましい。
<SBR1>:日本ゼオン(株)製のN9548(スチレン量:35質量%、ビニル含量:18質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
<SBR2>:日本ゼオン(株)製のNS612(スチレン量:15質量%、ビニル含量:30質量%)
<BR>:ランクセス(株)製のBUNA-CB25(Nd系触媒を用いて合成した希土類系BR、ビニル含量:0.7質量%、シス含量:97質量%、SP値:8.2)
<カーボンブラック>:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(N2SA:114m2 /g)
<シリカ1>:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
<シリカ2>:エボニックデグッサ社製のウルトラシルU9000Gr(N2SA:235m2/g)
<硫酸マグネシウム1>:馬居化成工業(株)製のMN-70(硫酸マグネシウム7水和物、中央値粒度(メジアン径):100μm、見かけ比重:2.32g/ml、常温(20℃)の水への溶解度:255g/100g水、水分率:0.2質量%、N2SA:0.3m2/g)
<硫酸マグネシウム2>:馬居化成工業(株)製のMN-00(無水硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径):75μm、見かけ比重:0.90g/ml、常温(20℃)の水への溶解度:255g/100g水、水分率:0.2質量%、N2SA:1.2m2/g)
<硫酸マグネシウム3>:協和化学(株)製の試作品(無水硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径):7.1μm、見かけ比重:2.30g/ml、常温(20℃)の水への溶解度:255g/100g水、水分率:0.1質量%、N2SA:2.4m2/g)
<硫酸マグネシウム4>:協和化学(株)製の試作品(無水硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径):7.3μm、見かけ比重:0.58g/ml、常温(20℃)の水への溶解度:255g/100g水、水分率:0.1質量%、N2SA:9.0m2/g、中央値粒度が100μm以下、見かけ比重が0.70g/ml以下の水溶性フィラーに相当)
<硫酸マグネシウム5>:協和化学(株)製の試作品(無水硫酸マグネシウム、中央値粒度(メジアン径):1.2μm、見かけ比重:0.45g/ml、常温(20℃)の水への溶解度:255g/100g水、水分率:0.1質量%、N2SA:11.5m2/g、中央値粒度が100μm以下、見かけ比重が0.70g/ml以下の水溶性フィラーに相当)
<酸化マグネシウム>:協和化学(株)製のキョウワマグMF150(酸化マグネシウム、中央値粒度(メジアン径):0.71μm、見かけ比重:0.23g/ml)
<酸化カルシウム>:鈴木工業(株)製のカルテック(酸化カルシウム、中央値粒度(メジアン径):1.5μm、見かけ比重:3.35g/ml、常温(20℃)の水への溶解度:1.19g/100g水)
<水酸化アルミニウム>:Nabaltec社製のApyral200(N2SA:15m2/g)
<シランカップリング剤>:エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3-トリエトキシシリルプロピルジスルフィド)
<αメチルスチレン樹脂>:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
<テルペン系樹脂>:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点:125℃)
<アロマオイル>:出光興産(株)製のAH-24(アロマ系プロセスオイル)
<液状クマロンインデン樹脂>:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C10(液状クマロンインデン樹脂、軟化点:10℃)
<WB16>:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸カルシウム、脂肪酸アミド及び脂肪酸アミドエステルの混合物、灰分割合4.5%)
<ステアリン酸>:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
<老化防止剤1>:住友化学(株)製のアンチゲン6C(6PPD、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン)
<老化防止剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(TMQ、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
<パラフィンワックス>:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
<酸化亜鉛>:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛2種
<硫黄>:細井化学工業(株)製のHK200-5(5%オイル含有粉末硫黄)
<加硫促進剤1>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<加硫促進剤2>:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫してタイヤ(サイズ:225/50R17、トレッドゴムのタイヤ半径方向の厚み:9mm)を得た。
市場に流通する新品のタイヤを再現するために、得られたタイヤを3ヶ月間、気温20~40℃の倉庫に静置し、試験用タイヤとした。
<マルテンス硬度測定用試験ゴムの準備>
得られた試験用タイヤのトレッドゴムから、ゴム片を切り出した。切り出す際に、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面がゴム片に残るように切り出した。そして、切り出したゴム片から、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面と、接地面と直交し、タイヤ半径方向に向かって延びる面である測定面とを有する形状の試験片を調製した(図3参照)。
ここで、試験片の調製について補足する。
試験片を調製する際には、図3のように、タイヤのトレッドゴムから、ゴム片を切り出す。切り出す際に、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面(図3のトレッド面20)がゴム片に残るように切り出す。そして、切り出したゴム片から、タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面(図3のトレッド面20)と、接地面と直交し、タイヤ半径方向に向かって延びる面である測定面とを有する形状の試験片を調製する(図3参照)。試験片の測定面としては、図3で図示される2面(図3の測定面30)と、裏側に隠れた図示されていない2面の合計4面が存在するがいずれの面を測定面として採用してもよい。
ここで、図3(a)~(c)に示す通り、トレッド面20を有するようにゴム片を切り出す限り、タイヤのどの位置からゴム片を切り出してもよく、タイヤ周方向に沿って切り出しても、タイヤ周方向と異なる角度で切り出してもよい。
なお、図3のように、ゴム片を切り出すことにより測定面を形成してもよく、切り出したゴム片を更に加工することにより測定面を形成してもよい。
次に、調製した「タイヤトレッド接地部を構成していた面である接地面(3mm×3mm)と、接地面と直交し、タイヤ半径方向に向かって延びる面である測定面(3mm×4mm)とを有する形状の試験片」(3mm×3mm×4mmの直方体形状)を、接地面を下にして、水深2mmの水に25℃で60分間浸漬させることにより、水湿潤後の試験片を得た(図4参照)。
更に、空気による酸化の影響及び水の浸透による軟化の影響をなくすため、測定の直前(3分前)に、調製した水湿潤後の試験片の測定面の表面を500μm除去して、新たな測定面を形成した(図4参照)。なお、新たな測定面の形成は、水湿潤後の試験片を調製した後、2分以内に行った。そして、形成された新たな測定面の、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ200μmの位置の範囲に相当する範囲のマルテンス硬度(水湿潤時のマルテンス硬度)をタイヤ半径方向に沿って測定した(図4参照)。そして、タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ100μmの位置の範囲における水湿潤時のマルテンス硬度の最小値(a)、タイヤ半径方向深さ200μmの位置における水湿潤時のマルテンス硬度(b)を決定した。
<マルテンス硬度の測定方法>
エリオニクス社製のナノインデンター「ENT-2100」(薄膜硬度計)を用いて測定した。
測定条件は、以下の通りである。
温度:23℃
試験片の厚み(バーコビッチ圧子を押し込む方向の厚み):2mm
測定面の表面粗さ(JIS B0601-2001で規定される中心線表面粗さRa):0.2
荷重F:50mgf
バーコビッチ圧子の角度α:65.03°
バーコビッチ圧子の材質:DLC(Diamond-Like Carbon)コーティングされた鉄
押し込み深さh:7μm
押し込み深さhと圧子の角度αとに基づいて、下記数式によって面積As(h)(深さhにおける圧子の表面積(圧子と試料間の接触投影面積))が算出される。
As(h)=3×31/2×tanα/cosα×h2
圧子に加えられた荷重(最大試験荷重)Fと面積As(h)に基づいて、下記数式によってマルテンス硬度が算出される。
マルテンス硬度=F/As(h)
得られた試験用タイヤを車両(国産4WD2500cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面を走行し、ドライバーがグリップ感、応答性、ブレーキ減速性、周回軌道トレース性を官能評価した。結果は、比較例1を100としたときの指数で表示した(ウェットグリップ性能指数)。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
得られた試験用タイヤを車両に装着し、走行距離8000km後のトレッドの溝探さを測定した。そして、溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、下記式により指数表示した。数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各配合の溝深さが1mm減るときの走行距離)/(比較例1の溝深さが1mm減るときの走行距離)×100
タイヤは、摩耗していくものの、実際の路面との接触は1/10000の面積で、走行温度60℃以上になると、表層は劣化、内部からブリード物が析出してきて、新品時と同じ現象が常に再現していると推測される。
4 トレッド
20 トレッド面
22 溝
30 測定面
Claims (7)
- 中央値粒度が100μm以下、見かけ比重が0.70g/ml以下、20℃の水への溶解度が1g/100g水以上の水溶性フィラーを含むゴム組成物を用いて作製されたトレッドゴムを有するタイヤ。
- 前記水溶性フィラーの窒素吸着比表面積が1.3m2/g以上である請求項1記載のタイヤ。
- タイヤトレッド接地部において、
タイヤ表面からタイヤ半径方向深さ10μmの位置からタイヤ半径方向深さ100μmの位置の範囲における水湿潤時のマルテンス硬度の最小値(a)、タイヤ半径方向深さ200μmの位置における水湿潤時のマルテンス硬度(b)に関して、下記式(I)を満たすトレッドゴムを有し、
前記トレッドゴムが、下記(1)~(3)からなる群より選択される少なくとも1つのゴム組成物を用いて作製されたゴムである請求項1又は2記載のタイヤ。
(a)/(b)≦0.85 式(I)
(1)ゴム成分100質量部に対するフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が2.1質量部以上であるゴム組成物
(2)ゴム成分100質量部に対する液状可塑剤の含有量が20質量部以上であるゴム組成物
(3)ゴム成分100質量部に対する、アミド化合物又はSP値9.0以上の非イオン性界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であるゴム組成物 - 前記(a)が2.0mgf/μm2以下である請求項3記載のタイヤ。
- 前記(b)が3.0mgf/μm2以上である請求項3又は4記載のタイヤ。
- 前記水溶性フィラーが、水分率が1.0質量%以下の無水硫酸マグネシウム又は無水硫酸ナトリウムである請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ。
- 前記トレッドゴムが、窒素吸着比表面積が220m2/g以上のシリカを含むゴム組成物を用いて作製されたゴムである請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
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