JP7274173B2 - 生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理プログラム - Google Patents

生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理プログラム Download PDF

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Description

本発明は、人体の重心のぶれを演算する生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理プログラムに関する。
現代の我々の日常生活において、座位の姿勢は一日の大半を占める姿勢である。私生活では食事中やテレビ閲覧時など様々な場面で座位の姿勢で生活している。また、職場においても近年、コンピュータの普及やインターネットなどの発展により、職場のIT化が進み、デスクワークに従事する労働者の作業姿勢は座位が主流となっている。その結果、労働者はVDT作業(Visual Display Terminals:画面表示装置を用いる作業)を始めとする、椅子での座位作業が長時間化し、労働者の労働負担が問題となっている。このため、座位における作業時の精神及び/または肉体における負担を軽減する方策が求められる。そして、座位作業時の精神及び/または肉体における負担を軽減する方策を考える前提として、作業者の座位作業時の心身状態を客観的に評価する技術が必要になる。
非特許文献1には、重心動揺を用いたストレス評価として、立位での閉眼状態、ヘッドフォンで音楽を聴いている状態、精神的負荷作業を与えている状態の3種類の状態を比較した結果が開示されている。
「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」平成14年4月5日付け基発第0405001号、厚生労働省、インターネット<https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000184703.pdf>
心身状態の評価に関する先行研究は過去に多く行われてきた。心理評価としては主観評価アンケートが、行動評価としては重心動揺や振戦(手、頭、声帯、体幹、脚等、人体の一部分に発生する、不随意且つリズミカルな震え)が、生理評価としては発汗、唾液、脳活動、心拍変動、皮膚温度変動等の自律神経活動指標が主に用いられてきた。
座位における作業という条件を考えた場合に、実用性に優れている手法であることが好ましい。その点を踏まえると、主観評価アンケートは患者に直接現在の状態を聞くため、作業を中断させる必要があり、あまり有効的な手法ではない。また、血液検査や唾液検査は検査結果が出るまで時間がかかってしまうため、実用的ではない。
一方、重心動揺や自律神経活動指標を用いた手法は、実時間性に優れており、本発明で用いるに適している。しかし、センサ装着が必要な脳波や心拍などの電気的生理指標は、装着自体に拘束性があり、心身的負担になる可能性がある。作業者の心身状態を客観的に計測・評価するためには、装置を気にすることのない非拘束性を持ち合わせた計測方法が好ましい。
以上の条件を満たす、作業者の座位作業時の心身状態を客観的に評価する技術として、非接触で計測可能な画像解析、及び乗るだけで計測可能な重心動揺が挙げられる。
先ず、画像解析について検討する。画像解析では、被験者を遠赤外線撮像装置で撮影し、被験者の皮膚表面の温度変化を観察する。皮膚表面の温度変化は、被験者の心身的負担に起因しているため、この被験者の皮膚表面の温度変化を観察することで、被験者の心身状態を推定することが可能になる。この時、心身的負担により温度変化する皮膚の部位は、手先や足先、鼻などの末梢部分である。しかしながら、被験者の作業中における計測であることを考えると、被験者の手足が動いてしまうために、正確な計測が難しい。また、遠赤外線撮像装置は高価である。
一方、重心動揺計測では、被験者の体と接している部分で計測が行われる。作業中の被験者は常に座位であるため、座面で常時計測が可能である。
そこで本発明では、常時計測が可能であり、非拘束であり、かつ簡易的な手法である重心動揺計測を用いることとした。
重心動揺を用いる従来技術では、60秒間、立位で計測する実験が一般的である。ストレス評価の先行研究では、非特許文献1に開示される、立位での閉眼状態、ヘッドフォンで音楽を聴いている状態、精神的負荷作業を与えている状態の3種類の状態を比較したものがある。また、より実環境に近づけるため座位での計測を行っているものもあるが、そのほとんどが足底非接地などの通常考えられる状態での計測はほとんど存在しない。したがって、実環境、すなわち被験者が座ってパソコンを操作している状態に合わせた心身状態の評価技術が求められていた。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、被験者が座った状態における、被験者の心身状態を高精度に推定することが可能な、生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理プログラムを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明の生体情報処理装置は、椅子の座面に配置され、所定のサンプリングクロックにて椅子に座る被験者の荷重に起因するデータを出力する重心座標計測器と、重心座標計測器から得られる被験者の荷重に起因するデータを演算して重心座標データを出力する座標演算部と、現在の重心座標データのX成分から直前の重心座標データのX成分を減算してベクトルX成分を算出すると共に、現在の重心座標データのY成分から直前の重心座標データのY成分を減算してベクトルY成分を算出することで重心ベクトルを算出するベクトル演算部と、複数の重心ベクトルに対し、各々の重心ベクトルのベクトル角を所定の角度範囲毎に分類し、当該分類毎に複数の重心ベクトルの長さの平均値を演算し、分類毎に得られた平均値の最大値を出力するASV演算部と、を備える
本発明によれば、被験者が座った状態における、被験者の心身状態を高精度に推定することが可能な、生体情報処理装置、生体情報処理方法及び生体情報処理プログラムを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の実施形態に係る生体情報処理装置の全体構成及び使用状態を示すブロック図である。 重心座標計測器の外観斜視図である。 重心座標計測器のハードウェア構成を示すブロック図である。 生体情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。 重心座標計測器と生体情報処理装置のソフトウェア機能を示すブロック図である。 ベクトル演算部による重心ベクトル演算処理を実行した重心座標データファイルのイメージと、ベクトル長演算部506、ベクトル角演算部507、角度分類演算部508による演算処理を実行した重心座標データファイルのイメージである。 従来技術による重心移動の指標の一つである、VDT作業時における重心移動量の変化を示すグラフである。 VDT作業時におけるASV値の変化を示すグラフである。 漫画閲覧時におけるASV値の変化を示すグラフである。 VDT作業時におけるASV値と、VASとの相関を20人の被験者で得た平均値を、サンプリングクロック毎に計算したグラフである。 漫画閲覧時におけるASV値と、VASとの相関を20人の被験者で得た平均値を、サンプリングクロック毎に計算したグラフである。
[生体情報処理装置101:使用状況]
図1は、本発明の実施形態に係る生体情報処理装置101の使用状況を示すブロック図である。
椅子102の座面102aの上には重心座標計測器103が敷かれている。更に、重心座標計測器103の上にはクッション104が敷かれている。被験者105はクッション104に座り、デスク106に向かって図示しないパソコンのディスプレイ107を見て、キーボード108等を操作するVDT作業を遂行する。
被験者105が重心座標計測器103に座ると、被験者105の臀部105aが直接または間接的に重心座標計測器103に当接することで、重心座標計測器103は椅子102に座る被験者105の体幹の重心を計測することが可能になる。
なお、クッション104はあくまでも被験者105の作業環境を改善する目的で用いられるものであるため、必須ではない。また、重心座標計測器103が椅子102の座面102aと一体化して形成されていてもよい。すなわち重心座標計測器103は、椅子102の座面102aに配置されていればよく、その固定手段は問わない。
パソコンよりなる生体情報処理装置101は、重心座標計測器103とBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信で接続されている。パソコンは重心座標計測器103が出力するデータを受信した後、ASV(Average Size of Vector:重心ベクトル平均最大長)を演算する。
なお、ASVとは発明者らによる造語であり、本発明が最終的に得る被験者105の心身状態を評価する推定値である。そして、ASVの語源である「重心ベクトル平均最大長」は、本発明における演算処理の過程の一部を説明する言葉でもある。
[重心座標計測器103:外観]
図2は、重心座標計測器103の外観斜視図である。
長方形の板状の重心座標計測器103は、例えばエンジニアリングプラスチック等の高い剛性を有する樹脂で形成されている。重心座標計測器103には更に、その四隅に周知のロードセル(図示せず)が内蔵されている。
ロードセルは例えばアルミニウム合金や真鍮、ステンレス等で形成されている。ロードセルは歪を生じ易く形成されている起歪部と呼ばれるくびれた箇所が設けられており、この起歪部には歪ゲージが貼付される。ロードセルに荷重が加わると、起歪部が歪み、起歪部に貼り付けられた歪ゲージも歪む。すると、ひずみゲージは歪みに応じて抵抗値が変化する。すなわち、歪ゲージはロードセルに印加される荷重に応じた抵抗値の変化を示す。
重心座標計測器103としては、例えば任天堂株式会社の「バランスWiiボード(登録商標)」という製品が利用可能である。
バランスWiiボード(登録商標)は、筐体内の四隅に4個のロードセルを内蔵しているが、ロードセルの数は必ずしも4個でなくてもよい。例えば、3個のロードセルを正三角形の頂点に配置し、所定の演算処理で重心座標データを算出してもよい。
[重心座標計測器103:ハードウェア構成]
図3は、重心座標計測器103のハードウェア構成を示すブロック図である。
電源電圧ノードに分圧抵抗R301の一端が接続されている。分圧抵抗R301の他端と接地ノードとの間には、重心座標計測器103の四隅に内蔵されているロードセルに貼付されている歪ゲージR302が接続されている。歪ゲージR302は可変抵抗であるので、歪ゲージR302の抵抗値が変化すると、分圧抵抗R301と歪ゲージR302との接続点から得られる出力電圧が変動する。これ以降、分圧抵抗R301と歪ゲージR302を、荷重検出ユニット303aと呼ぶ。そして、重心座標計測器103の四隅に内蔵されているロードセルの数だけ、荷重検出ユニット303aと同じ回路構成の荷重検出ユニット303b、303c、303dが存在する。
荷重検出ユニット303aの内部の分圧抵抗R301と歪ゲージR302との接続点は、マルチプレクサ304を介してマイコン305のA/D変換器に接続される。
マイコン305は、バス306に接続された、CPU307、ROM308、RAM309、A/D変換器310、シリアルインターフェース311を備える。シリアルインターフェース311はマルチプレクサ304に接続されており、マルチプレクサ304はシリアルインターフェース311を通じてマイコン305の制御によって順次切り替え制御が行われる。
マイコン305は分圧抵抗R301と歪ゲージR302との接続点から検出されるアナログ電圧信号をA/D変換器310によってデジタルの歪データに変換する。そして、重心座標計測器103に印加されたデータ、すなわち被験者105の荷重に起因するデータである歪データを、近距離無線通信部312を通じて生体情報処理装置101に送信する。
[生体情報処理装置101:ハードウェア構成]
図4は、生体情報処理装置101のハードウェア構成を示すブロック図である。
生体情報処理装置101は、バス401に接続された、CPU402、ROM403、RAM404、操作部405、表示部406、不揮発性ストレージ407を備える。
バス401には更に、近距離無線通信部408が接続されており、重心座標計測器103から歪データを受信する。
不揮発性ストレージ407には、パソコンを生体情報処理装置101として稼働させるためのプログラムが格納されている。
なお、重心座標計測器103と生体情報処理装置101との通信は、周知のUSBインターフェース等の有線接続であってもよい。
[生体情報処理装置101:ソフトウェア機能]
図5は、重心座標計測器103と生体情報処理装置101のソフトウェア機能を示すブロック図である。
生体情報処理装置101の近距離無線通信部408は、重心座標計測器103の近距離無線通信部312から送信される電波を受信して変調信号を出力する。復調部501は、近距離無線通信部408が受信した変調信号を復調して、重心座標計測器103が検出した歪データを出力する。歪データは座標演算部502に入力される。座標演算部502の実体は重心座標計測器103のデバイスドライバプログラムである。この座標演算部502は、重心座標計測器103から得られる四隅の歪データを演算して、重心座標データを出力する。
重心座標データは、入出力制御部503によって重心座標データファイル504に記憶される。
重心座標データファイル504に所定時間の重心座標データが蓄積されたら、入出力制御部503はASV演算処理を開始する。
ここで、図6A及び図6Bをも参照して、ASV演算処理を説明する。
図6Aは、ベクトル演算部505による重心ベクトル演算処理を実行した重心座標データファイル504のイメージである。図6A及び図6Bを一見してわかるように重心座標データファイル504はテーブルであり、周知の表計算ソフトウェアのワークシートを想定している。
図6Aに示すように、重心座標データファイル504には、重心X座標フィールドと重心Y座標フィールドが設けられている。重心X座標フィールドには、重心座標データのX成分が格納される。重心Y座標フィールドには、重心座標データのY成分が格納される。重心座標データファイル504のレコードは、重心座標計測器103が出力する重心座標データのサンプリングクロック毎に1レコードが追記録される。すなわち、重心座標計測器103のA/D変換器310のサンプリングクロックが100Hzであれば、重心座標データファイル504には1秒間に100レコードが生成される。
先ず、ベクトル演算部505は、現在の重心座標データのX成分から直前の重心座標データのX成分を減算して、ベクトルX成分aを算出する。
同様に、現在の重心座標データのY成分から直前の重心座標データのY成分を減算して、ベクトルY成分bを算出する。
つまり、ベクトル演算部505は、数1式に示すように、現在の重心座標データから直前の重心座標データを減算する。これ以降、ベクトル演算部505が算出するベクトルを重心ベクトルと呼ぶ。
図6Aに示すように、ベクトルX成分フィールドには、ベクトルX成分aが格納される。ベクトルY成分フィールドには、ベクトルY成分bが格納される。
Figure 0007274173000001
図6Bは、ベクトル長演算部506、ベクトル角演算部507、角度分類演算部508による演算処理を実行した重心座標データファイル504のイメージである。図6Aの状態にある重心座標データファイル504に対し、更にベクトル長、ベクトル角、角度分類を順に演算するイメージである。
次に、ベクトル長演算部506は、数2式から重心ベクトルのX軸方向の成分であるベクトルX成分aの2乗と、重心ベクトルのY軸方向の成分であるベクトルY成分bの2乗を加算した値の平方根を算出することで、重心ベクトルのベクトル長VLを算出する。
Figure 0007274173000002
次に、ベクトル角演算部507は、数3式から重心ベクトルと単位ベクトル(1,0)との内積を重心ベクトルのベクトル長VLで除算した値の、arccosを算出することで、単位ベクトルと重心ベクトルとのなす角度であるベクトル角VAを算出する。
Figure 0007274173000003
次に、角度分類演算部508は、ベクトル角VAを15で除算した商の整数部分を算出する。但し、ベクトル角が負の値の場合は、値に-1を加算する。
ベクトル角VAが0≦VA<15なら0、
15≦VA<30なら1、
30≦VA<60なら2、…
165≦VA≦180なら11、
0>VA>-15なら-1、
-15≧VA>-30なら-2、…
-165≧VA>-180なら-12、である。
すなわち、15°毎に重心ベクトルのベクトル角を分類する。
この値を角度分類Rと呼び、次のASV演算部509における検索インデックスとして用いる。
なお、上記の角度分類演算処理は一例であり、15°毎に整数の値が得られる演算処理であれば上記の演算処理に限られない。
図6Bに示すように、ベクトル長フィールドには、ベクトル長VLが格納される。ベクトル角フィールドには、ベクトル角VAが格納される。角度分類フィールドには、角度分類ACが格納される。
次にASV演算部509は、このワークシートをテーブルに見立てて、角度分類毎に絞り込み検索を行う。そして、同一角度分類毎に重心ベクトルのベクトル長VLの平均値(以下「ベクトル長平均値」)を求める。
そして最後にASV演算部509は、求めた角度分類毎のベクトル長平均値の最大値を、ある時間間隔内におけるASV値として出力する。
ASV値とは、被験者105の体幹が振れることで生じる重心の移動について、被験者105の重心の移動方向を考慮した、重心ベクトルの角度分類毎の平均の最大値である。「重心ベクトル平均最大長」とは、この演算処理を特徴付ける名称である。
[実験結果]
本発明による生体情報処理装置101が出力するASV値の効果を確認するため、複数名の被験者に実験を行い、ASV値と従来技術による測定値とを比較した。
先ず、複数の被験者に30分間、図1に示すようなVDT作業に従事して貰う。その際、重心座標計測器103のA/D変換器310のサンプリングクロックは100Hzで、重心座標計測器103の測定値を記録する。また、被験者には5分毎に自己の疲労度と集中力を0から10までの10段階の値であるVAS(Virtual Analog Scale)を自己申告して貰った。したがって、ASV値及び従来技術の測定値も、VASと同様、5分毎の演算結果における比較となる。
もう一つ別の実験として、複数の被験者に30分間、漫画を閲覧して貰う。そして、上述のVDT作業の実験と同様に、サンプリングクロック100Hzで、重心座標計測器103の測定値を記録する。そして、被験者には5分毎に自己の疲労度と集中力についてVASを申告して貰った。
図7は、従来技術による重心移動の指標の一つである、VDT作業時における重心移動量の変化を示すグラフである。重心移動量とは、被験者の重心の移動の軌跡を積算した値である。図7のグラフでは、A、B、Cの3人の被験者の重心移動量を表している。このグラフを見てわかるように、重心移動量の変化は個人差が激しく、心身状態の評価には殆ど利用できないことがわかる。
図8は、VDT作業時におけるASV値の変化を示すグラフである。図8のグラフを見てわかるように、複数の被験者について、その値の大小に違いはあるものの、概ね類似する傾向を示すことがわかる。
図9は、漫画閲覧時におけるASV値の変化を示すグラフである。図9のグラフでは、一人の被験者Cについて、他の被験者A及びBとは異なる変動傾向を示していることがわかる。この変動傾向の相違は、漫画に対する被験者の興味の個人差が現れているものと推測される。
図10は、VDT作業時におけるASV値と、VASとの相関を20人の被験者で得た平均値を、サンプリングクロック毎に計算したグラフである。なお、100Hzより小さいサンプリングクロックの値は、予め100Hzで計測した計測値から、目的のサンプリングクロックに相当する時間間隔で間引いたデータを用いている。
VDT作業時では、サンプリングクロック100Hzと5Hzにおいて、疲労度に強い相関が現れることがわかった。特に、サンプリングクロック100Hzでは、相関値が0.8を超えている。
相関が0.8を超える、ということは、ASV値が被験者の疲労度の推定に極めて有用であることを示唆している。
図11は、漫画閲覧時におけるASV値と、VASとの相関を20人の被験者で得た平均値を、サンプリングクロック毎に計算したグラフである。
漫画閲覧時では、サンプリングクロック100Hzと5Hzにおいて、集中力に強い相関が現れることがわかった。特に、サンプリングクロック100Hzでは、相関値が0.8に到達している。
相関が0.8に到達している、ということは、ASV値が被験者の集中力の推定に極めて有用であることを示唆している。
図10及び図11に示したグラフから、ASV値は、適切なサンプリングクロックで計測することで、疲労度と集中力に強い相関を得ることが可能である。これはすなわち、ASV値は疲労度と集中力の客観的指標として有効であることが証明できた。
従来技術による被験者の重心の移動に基づいて被験者の心身状態を推定する計算方法には、二通りが公知である。
一つは、被験者の重心の移動の軌跡を積算した値である重心移動量である。
もう一つは、被験者の重心の移動の軌跡を多角形に見立てて、その多角形の面積を計算した値である外周面積である。
発明者らは、これら従来技術による重心移動に基づく計算方法が、被験者の心身状態を正しく推定することができていない原因を考察した。その結果、被験者の重心がぶれる現象には、ある種の方向性があるのではないかと推測した。
人の体幹は千差万別であり、それ故に重心がぶれる方向も人によってまちまちである。発明者らは、集中力の減退や疲労の増加に伴い、体幹の重心がぶれる現象が、一定の角度方向に向けて強く現れる傾向が強いのではないかと推測した。そして、この推測を立証すべく、前述の実験を複数の被験者に実施したところ、被験者の体幹の重心がぶれる方向には被験者毎に偏りがあり、偏った方向の重心のぶれの振幅は心身の疲労や集中力と強い相関を有することが判明した。
従来技術である重心移動量も、外周面積も、重心のぶれの方向を考慮していなかったために、算出した値にはノイズ成分が強く混入して、心身の疲労との相関が大きくならなかったものと推測できる。
上述の実験では、低コストで迅速な結果を得るためにVASを採用した。このため、5分毎という粗い粒度の推定であった。しかしながら、脳波の測定等、より精緻な実験を行うことで、ASV値の計算に必要なサンプル数を減らすことも可能になるものと思われる。そうなれば、例えば1分毎にASV値の計算を行って、被験者の心身状態を評価することも可能になるかも知れない。
また、上述の演算処理では角度分類を15°としたが、より多くの被験者から測定値を集めて演算処理を進めることで、最適な角度分類の角度を特定できる可能性が考えられる。
本発明の各実施形態においては、生体情報処理装置101を開示した。
椅子102の座面102aに重心座標計測器103を配置し、被験者105が重心座標計測器103に座る。重心座標計測器103の計測結果を記録して、サンプル毎の重心の差から重心ベクトルを算出し、重心ベクトルの長さと角度を算出し、角度分類毎に重心ベクトルの長さの平均を算出し、重心ベクトルの長さの平均の最大値をASV値として得る。このASV値は、被験者105の疲労度及び集中力の推定に有用な指標として利用可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
101…生体情報処理装置、102…椅子、103…重心座標計測器、104…クッション、105…被験者、106…デスク、107…ディスプレイ、108…キーボード、303a、303b、303c、303d…荷重検出ユニット、304…マルチプレクサ、305…マイコン、306…バス、307…CPU、308…ROM、309…RAM、310…A/D変換器、311…シリアルインターフェース、312…近距離無線通信部、401…バス、402…CPU、403…ROM、404…RAM、405…操作部、406…表示部、407…不揮発性ストレージ、408…近距離無線通信部、501…復調部、502…座標演算部、503…入出力制御部、504…重心座標データファイル、505…ベクトル演算部、506…ベクトル長演算部、507…ベクトル角演算部、508…角度分類演算部、509…ASV演算部

Claims (4)

  1. 椅子の座面に配置され、所定のサンプリングクロックにて前記椅子に座る被験者の荷重に起因するデータを出力する重心座標計測器と、
    前記重心座標計測器から得られる前記被験者の荷重に起因するデータを演算して重心座標データを出力する座標演算部と、
    現在の重心座標データのX成分から直前の重心座標データのX成分を減算してベクトルX成分を算出すると共に、現在の重心座標データのY成分から直前の重心座標データのY成分を減算してベクトルY成分を算出することで重心ベクトルを算出するベクトル演算部と、
    複数の前記重心ベクトルに対し、各々の前記重心ベクトルのベクトル角を所定の角度範囲毎に分類し、当該分類毎に複数の前記重心ベクトルの長さの平均値を演算し、前記分類毎に得られた前記平均値の最大値を出力するASV演算部と、
    を具備する生体情報処理装置。
  2. 更に、
    前記重心ベクトルの長さを算出するベクトル長演算部と、
    前記重心ベクトルの角度を算出するベクトル角演算部と、
    複数の前記重心ベクトルに対し、各々の前記重心ベクトルの前記ベクトル角を所定の角度範囲毎に分類する角度分類演算部と、を具備する、
    請求項1に記載の生体情報処理装置。
  3. 椅子の座面に配置され、所定のサンプリングクロックにて前記椅子に座る被験者の荷重に起因するデータを出力する重心座標計測器から得られる前記被験者の荷重に起因するデータを演算して重心座標データを出力する座標演算ステップと、
    現在の重心座標データのX成分から直前の重心座標データのX成分を減算してベクトルX成分を算出すると共に、現在の重心座標データのY成分から直前の重心座標データのY成分を減算してベクトルY成分を算出することで重心ベクトルを算出するベクトル演算ステップと、
    複数の前記重心ベクトルに対し、各々の前記重心ベクトルのベクトル角を所定の角度範囲毎に分類し、当該分類毎に複数の前記重心ベクトルの長さの平均値を演算し、前記分類毎に得られた前記平均値の最大値を出力するASV演算ステップと、
    含む生体情報処理方法。
  4. 計算機に、
    椅子の座面に配置され、所定のサンプリングクロックにて前記椅子に座る被験者の荷重に起因するデータを出力する重心座標計測器としての機能と、
    前記重心座標計測器から得られる前記被験者の荷重に起因するデータを演算して重心座標データを出力する座標演算部としての機能と、
    現在の重心座標データのX成分から直前の重心座標データのX成分を減算してベクトルX成分を算出すると共に、現在の重心座標データのY成分から直前の重心座標データのY成分を減算してベクトルY成分を算出することで重心ベクトルを算出するベクトル演算部としての機能と、
    複数の前記重心ベクトルに対し、各々の前記重心ベクトルのベクトル角を所定の角度範囲毎に分類し、当該分類毎に複数の前記重心ベクトルの長さの平均値を演算し、前記分類毎に得られた前記平均値の最大値を出力するASV演算部としての機能と、
    実現させるための生体情報処理プログラム。
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