JP7274168B2 - 生体信号処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は生体信号処理装置に関し、さらに詳しく言えば、運動中や環境の変化がある中においても安定したバイタル信号を取得し得る生体信号処理装置に関するものである。
これまでに生体信号を測定する技術は数多く提案されており、その一例として、特許文献1には、使用者の生体情報を検出する生体情報検出部と、使用者の運動能力を判定する使用者判定部と、使用者の運動能力が所定の条件を満たすと判定されると使用者の運動能力に応じた解析情報を設定する情報設定部と、設定された解析情報に基づいて生体情報を解析する解析部とを備え、スポーツ心臓を有する使用者でも適切に生体情報を測定することができる生体情報解析装置が提案されている。
特許文献2には、運動強度から推定する脈拍数の精度を向上させるため、被験者に関する生体情報を検出する生体情報検出部と、前記被験者の動作に関する体動情報を検知する体動情報検出部と、所定基準に基づき前記生体情報の信頼性を判定する信頼性判定部と、前記体動情報と前記生体情報との相関関係を記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する前記相関関係を更新する更新部とを備え、前記生体情報は前記所定基準を満たすと前記信頼性判定部が判定した場合、前記更新部は前記生体情報と前記体動情報とに基づいて前記相関関係を更新する生体情報処理装置が記載されている。
特許文献3には、被験者の心機能に関する第1のデータの時系列信号と被験者の呼吸運動による加速度に関する第2のデータの時系列信号の各々から被験者の呼吸数をそれぞれ推定する第1のステップと、第1のデータから推定した呼吸数と第2のデータから推定した呼吸数の各々についてカルマンフフィルタによりノイズを漉した呼吸数をそれぞれ推定する第2のステップと、この第2のステップで得られた複数の呼吸数の推定値の重み付け平均化処理を実行する第3のステップとを含む、呼吸数推定方法が記載されている。
また、特許文献4には、心電図を測定するための心電図測定電極と、ノイズを測定するためのノイズ測定電極と、心電図測定電極によって測定された心電図信号とノイズ測定電極によって測定されたノイズ信号を計測する計測部と、計測された心電図信号とノイズ信号を分析することにより、ノイズを除去したノイズ除去心電図を抽出する胸骨圧迫ノイズ除去処理部とを備え、胸骨圧迫によるノイズの影響を低減する心電図解析装置および電極セットが記載されている。
国際公開2016/088307号公報 国際公開2014/196119号公報 国際公開2017/090732号公報 特開2014-076117号公報
生体情報の測定(検出)は、安静状態のみならず作業中や運動中にも行われるが、上記に挙げた従来技術の対象は主に脈波や呼吸数であったり、また、心電であってもAEDにおける体動の影響等であり、激しい運動、エクササイズ、作業それに伴う環境の大きな変化が考慮されていない。
そこで、本発明の課題は、生活や運動の中で、また、体の動きや環境の変化がある中においても安定したバイタル情報を取得できるようにすることにある。
上記課題を解決するため、本発明はいくつかの特徴的な構成を備えている。まず、第1の発明は、生体の体表面から心電信号を取得するECG測定部と、上記心電信号に含まれているR波をその特徴から抽出し、R波ピークの位置を特定するR波抽出部と、上記R波抽出部によって特定されるR波区間のSNR(信号対ノイズ比)を算出するSNR算出部と、上記R波ピークの位置と上記R波区間の上記SNRからR波間隔を求めて出力する出力部とを備えていることを特徴としている。
上記第1の発明には、上記R波抽出部により抽出されたR波時刻を用いて各R波の位置を合わせて平均化して上記SNR算出部でのSNRを算出するための信号量を算出する信号算出部と、上記ECG測定部にて測定されたノイズを含む心電信号からPQRST等の本来の心電信号を除去する波除去部と、上記SNR算出部で上記SNRを算出するために上記波除去部にて抽出されたノイズ波形からノイズ量を求めるノイズ算出部と、上記SNR算出部されたSNRと所定のしきい値とを上記R波各区間において比較するSNR比較部と、周波数解析部とをさらに備え、上記出力部は、上記SNR比較部でSNR<しきい値である区間を除く区間で2つの連続するR波ピークの時刻の差をとってRRIを計算してその計算結果を出力し、上記周波数解析部はRRIの揺らぎを計算して出力する態様が含まれる。
上記第1の発明において、上記周波数解析部は不定間隔のままのRRIを使い、正弦波の最小二乗法に基づく周波数解析を行うことを特徴としている。
第2の発明では、ECG測定部は、複数のECG電極からの信号を処理することを特徴とし、上記SNR算出部にて算出されたSNRを上記ECG電極間で比較し、最良のSNRを選択するSNR・電極間比較部と、上記SNR・電極間比較部にて選択された最良のSNRと所定のしきい値とを比較し、その比較結果を上記出力部に与えるSNR・しきい値比較部とをさらに備える。
好ましくは、上記ECG測定部にて測定された上記各ECG電極の生波形の各区間ごとに、上記SNR算出部にて算出された当該区間のSNRを乗算するとともに、上記各ECG電極の極性を加算する重み合成部と、上記重み合成部で合成された合成波の中からR波を再抽出して上記出力部に与えるR波再抽出部とをさらに備える。
第3の発明は、上記ECG測定部、上記R波抽出部、上記SNR算出部および上記出力部を含む信号処理回路を内部に有した格納容器としてのケースをさらに備え、上記複数のECG電極の一部は上記ケースの上部に設けられた端子を経由して上記ECG測定部に電気的に接続され、上記複数のECG電極の残部は上記ケースの底面に配置され上記ケース内の引き回し配線を介して上記ECG測定部に接続されることを特徴としている。
上記第3の発明において、好ましくは、上記ケース内に、生体内部と環境との間に流れる熱流を測定する複数の温度計を有する熱流測定部が設けられる。
また、上記第3の発明は、上記ケースの底面は絶縁シートによって塞がれており、上記絶縁シートの外面側に2つに分割されたECG電極が所定の間隔をもって配置されているとともに、上記絶縁シートの内面側で上記2つのECG電極間に位置する部位に上記温度計が配置されており、上記各ECG電極の電極面と、それらの間の上記絶縁シートのシート面とが同一平面上に存在していることを特徴としている。
また、上記第3の発明の好ましい態様によれば、上記絶縁シートの外面側で上記ECG電極が配置される部分は上記ECG電極の厚さ分だけ薄く形成される。
第4の発明は、生体の上半身に装着される衣類を有し、上記衣類の所定部分に上記ECG電極と生体と環境の間を流れる熱流を測定する熱流パッドとが設けられていることを特徴としている。
上記第4の発明において、上記熱流パッドは、断熱材とその上面と下面とに配置される2つの温度計とからなる熱流測定手段を備えている。
また、上記第4の発明において、上記ECG電極は、上記衣類のうちの心電の正電位が顕著な領域に対応する部位と、心電の負電位が顕著な領域に対応する部位とに設けられている。
上記第4の発明には、上記衣類の生地と上記ECG電極との間に、上記ECG電極と皮膚との接触を保つばね材が配置されている態様が含まれている。
また、上記衣類の生地と上記断熱材との間にも、上記下面側の温度計と皮膚との接触を保つばね材が配置されていることが好ましい。
上記断熱材として、好ましくは、平面上に並べられた複数の気泡体を含む気体マットが用いられる。
また、上記第4の発明には、上記熱流パッドは上記熱流測定手段を2つ備えているとともに、上記気体マットは上記一方の熱流測定手段用の第1気体マットと上記他方の熱流測定手段用の第2気体マットとに分けられ、上記第1気体マットと上記第2気体マットには、熱伝導率が異なる気体が封入されている態様が含まれる。
第5の発明は、生体内部と環境との間に流れる熱流を測定する熱流測定部と、上記熱流測定部からの温度情報に基づいて生体の深部温度を算出する深部温算出部と、上記深部温度に含まれているノイズを算出するノイズ算出部と、上記ノイズ算出部で算出されたノイズと上記深部温算出部で算出された深部温度から新たな深部温度を算出して出力する出力部とを備えていることを特徴としている。
また、上記第5の発明は、上記ノイズを深部温度入力としたハイパスフィルタの出力から得ることを特徴としている。
上記第5の発明は、別の態様として、生体内部と環境との間に流れる熱流を測定する熱流測定部と、環境温度を測定する環境温測定部と、上記環境温測定部で測定された環境温度から偽信号を作り出す偽信号発生部と、上記熱流測定部にて測定された熱流から生体の深部温度を算出する深部温算出部と、上記偽信号発生部より発生された偽信号と上記深部温算出部より算出された深部温度とから新たな深部温度を算出して出力する出力部とを備えていることを特徴としている。
また、第6の発明は、生体の体表面から心電信号を取得するECG測定部と、生体内部と環境との間に流れる熱流を測定する熱流測定部と、生体の加速度を測定する加速度測定部と、生体を取り巻く環境状態を測定する環境測定部と、上記心電信号の信号対ノイズ比を算出し所定の第1しきい値と比較するECG-SNR比較部と、上記熱流測定部で測定された熱流に含まれているノイズを算出し所定の第2しきい値と比較する深部温-ノイズ比較部と、上記加速度測定部にて測定された加速度と上記環境測定部にて測定された環境状態とから上記第1しきい値および/または上記第2しきい値を変化させるしきい値発生部と、上記ECG-SNR比較部と上記深部温-ノイズ比較部からの比較結果をもとに通知信号を出力する出力部とを備えていることを特徴としている。
本発明によれば、生活や運動の中で、また、体の動きや環境の変化がある中においても安定したバイタル情報を取得することができる。
本発明の第1実施形態の基本的な構成を示す模式図。 上記第1実施形態の具体的な構成を示す模式図。 ECG測定部にて測定される心電波形の一例を示す波形図。 R波抽出部での信号処理例を説明するための波形図。 信号算出部での信号処理例を説明するための波形図。 (a)~(d)波除去部での信号処理例を説明するための波形図。 ノイズ算出部での信号処理例を説明するための波形図。 SNR算出部での信号処理例を説明するための波形図。 SNR比較部、出力部および周波数解析部での信号処理例を説明するための模式図。 本発明の第2実施形態の第1の態様を示す模式図。 上記第1の態様の動作説明用の模式図。 上記第1の態様におけるSNR比較手段の詳細を説明するための波系図。 本発明の第2実施形態の第2の態様を示す模式図。 上記第2の態様の動作説明用の模式図。 本発明の第3実施形態に係る複数のECG電極を有するセンサ構造の第1の態様を示す(a)模式的な斜視図、(b)(a)のA矢視図(底面図)。 上記センサ構造の第2の態様を示す(a)模式的な斜視図、(b)(a)のB矢視図(底面図)。 上記センサ構造の第3の態様を示す模式的な斜視図。 上記センサ構造のさらに深部体温計測機能を兼ね備えた第4の態様を示す(a)模式的な斜視図、(b)(a)のC矢視図(側面図)、(c)(a)のD矢視図(底面図)。 上記第4の態様に適用されるケースの第1例を示す模式的な分解斜視図。 上記第4の態様に適用されるケースの第2例を示す模式的な分解斜視図。 上記第4の態様に適用されるケースの第3例を示す模式的な分解斜視図。 本発明の第4実施形態に係るECG電極と熱流検出用の熱流パッドを有するウェアの(a)前面を示す模式図、(b)背面を示す模式図。 上記ウェア上の配線を示す(a)模式的な平面図、(b)斜視図、(c)(b)のE-E線に沿った模式的な断面図。 上記ウェア上に設けられるECG電極パッドを示す(a)平面図、(b)(a)のF-F線に沿った模式的な断面図。 上記ウェア上に設けられるECG電極パッドを示す(a)図16(a)と同様な平面図、(b)(a)のG-G線に沿った模式的な断面図。 上記ウェア上に設けられるSHF方式の熱流パッドを示す(a)平面図、(b)(a)のH-H線に沿った模式的な断面図。 上記ウェア上に設けられるSHF方式の熱流パッドを示す(a)図18(a)と同様な平面図、(b)(a)のI-I線に沿った模式的な断面図。 上記ウェア上に設けられるDHF方式の熱流パッドを示す(a)平面図、(b)(a)のJ-J線に沿った模式的な断面図。 上記ウェア上に設けられるDHF方式の熱流パッドを示す(a)図20(a)と同様な平面図、(b)(a)のK-K線に沿った模式的な断面図。 上記熱流パッドに適用される断熱材の(a)第1例を示す模式的な斜視図、(b)第2例を示す模式的な斜視図、(c)第3例を示す模式的な斜視図。 本発明の第5実施形態に係る第1の態様を示す模式図。 上記第5実施形態の第2の態様を示す模式図。 上記第2の態様の動作説明用の模式図。 上記第5実施形態の第3の態様を示す模式図。 上記第3の態様の動作説明用の模式図。 上記第5実施形態の第4の態様を示す模式図。 上記第4の態様の動作説明用の模式図。 上記第5実施形態の第5の態様を示す模式図。 上記第5実施形態の第6の態様を示す模式図。 上記第6の態様の動作説明用の模式図。 本発明の第6実施形態の基本的な構成を示す模式図。 上記第6実施形態の具体的な構成を示す模式図。
次に、図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
〔第1実施形態〕ECG波のSNR算出とその利用について
図1に示すように、第1実施形態に係る生体信号処理装置は、基本的な構成として、ECG測定部110と、R波抽出部120と、SNR算出部130と、出力部(RRI出力部)140とを備える。
各部の役割を概略的に説明すると、ECG(Electrocardiogram)測定部110は、体表面から心電信号を測定(取得)する。R波抽出部120は、心電信号に含まれているR波をその特徴から抽出し、R波ピークの位置を特定する。
SNR算出部130は、心電信号の信号対ノイズ比(SNR)を計算する。信号として心電信号の最小から最大までの振幅を用いたり、実効値を用いることができる。ノイズは、取得した心電信号の中の心臓の拍動に起因する熱電力以外の成分で、運動や動作によって生じる電極-皮膚間のずれや接触の変化、接触電位の変化、静電気、汗等によるコンダクタンスの変化、筋電、AC電源からの誘導等に起因する。
出力部(RRI出力部)140は、R波抽出部120によって得られるR波とその周辺の区間に対して、SNR算出部130で得られるSNRに基づいた信号処理を加えて出力する。その信号処理として、例えば心拍数や心拍揺らぎ(HRV, Heart Rate Variability)、PQRST波の形状、それらから求められる生体情報(バイタル情報)を表示したり、通知したり、他のプログラムが利用できるようにする。
次に、図2に示すように、この生体信号処理装置は、具体的な構成として、ECG測定部110、R波抽出部120、SNR算出部130および出力部(RRI出力部)140のほかに、信号算出部121と、波除去部122と、ノイズ算出部123と、SNR比較部131と、周波数解析部150を備える。
各部の動作をより詳しく説明すると、ECG測定部110は、体表面に付けた心電検出用の電極(ECG電極)からの信号を増幅し、適宜フィルタをかけて出力する(図3a参照)。フィルタには、ハイパスフィルタ(HPF)とローパスフィルタ(LPF)とが含まれる。
ハイパスフィルタは、心電信号の基線(ベースライン)の揺れを取り除く。ローパスフィルタは、AC電源ラインからの誘導ノイズや胸の筋肉の動き等による筋電ノイズの混入を取り除く。ハイパスフィルタやローパスフィルタによって決まる通過帯域は、通常、数Hzから40Hz程度、ノイズの多い環境では、10Hzから20Hz程度が通過するように設定する。
通過帯域を狭くすると、ノイズの抑制効果は高まるが、心臓が拍動する際に発する本来の心電信号の再現性を悪化させてしまう。また、運動や生活の中の動きによって、狭くしたその帯域の中にノイズが入り込み除去しきれない現象も起こりかねない。
運動によってノイズが発生する要因の一つとして、ECG電極と皮膚との間に生ずる接触電位がある。電極材料として、銀/塩化銀(Ag/Agcl)を用いることで接触電位は下げられるが、ゼロにすることは難しい。
運動によってECG電極と皮膚との接触にずれが生じたり、接触面積に変化があると、この有限の電位が変化してノイズとなる。インパルス的な電位の変化は、幅広いスペクトルを持ち、上記通過帯域に入ってくる。
ECG電極を体に固定するためのベルトやウェアは、通常、繊維を用いているため、静電気の発生をゼロにすることは難しい。静電気もインパルス的な電位を発生し、同様の問題を引き起こす。
運動により生体が汗をかくと、皮膚表面に汗の層ができたり、ベルトやウェアに吸収されて0.1mS程度の導電率(10kΩ程度の抵抗率)を持つことがある。運動によってこの導電率が変化すると、やはり同様の問題を引き起こす。
これらの現象は、運動のベクトルや、ECG電極を付けている位置、皮膚との密着度等によって変わってくるランダムな過程であり、図3aに示すように、特定の区間にノイズ(アーティファクト)として現れる。
ここでは区間の定義として、あるR波のピーク時刻と次のR波のピーク時刻との中間を区切りとして分けられる各R波ごとの時間領域としている。図3aに示すように、ノイズの少ない区間と多い区間が存在する。
次に、図3bを参照して、R波抽出部120はR波の抽出を行う。R波を抽出する方法として、例えばQRS波の振幅に対してしきい値を設けて、しきい値以上をQRS波と同定する方法がある。別の方法として、波形の傾きや長さ等の特徴に対してしきい値を設定することもできる。
また、心電信号は概ね同形状の波形の繰り返しであることから、自己相関関数やテンプレートマッチング、ウェーブレット等を用いてR波の位置を特定することもできる。
これらR波抽出には多くの方法が知られているが、本来の心電信号に似た形状のノイズや、ノイズの中に本来の心電信号が埋もれている場合等において限界がある。また、これら従来のR波検出法を用いながら、SNRによってR波区間を取捨選択したり、複数の電極の中から良い信号を選択したり合成したりする本発明の特徴を適用することで、より有効な出力を得ることもできる。
図3cを参照して、信号算出部121は、SNR算出のために信号量を算出する。信号として前述したように、心電信号の最小から最大までの振幅を用いたり、実効値を用いることができる。
例えば、R波抽出部120によって抽出されたR波時刻を用いて、各R波の位置を合わせて平均化することで、ノイズの少ない信号量を算出することができる。平均化の手法として、移動平均を用いることもできる。通常、QRS波が本来の心電信号の振幅最大波となることから、このQRS波のピークツーピーク(Peak to Peak)を信号振幅として用いることもできる。
なお、信号算出部121での信号算出を行わずに、ノイズのみを用いて信号品質を判定できる場合もあるが、ECGの場合、振幅に個人差があったり、ECG電極の装着位置の違いによって振幅に差が生ずることがあり、さらにはAGC(Auto Gain Control)によって増幅器のゲインが自動調整される場合もあることから、信号算出部121で信号算出を行うことが好ましい。
図3dを参照して、波除去部122は、本来の心電信号(心電波形)に含まれるPQRST等の波の除去を行う。この例では、図3d(a)に示すように、QRS波の期間とT波の期間を除去している。P波やU波等の他の波の期間についても除去することができるが、これらP波やU波等は、ノイズ量の算出に大きな影響を与えない場合が多いため、そのままにしておいてもよい。
図3d(b)の上段がPQRST波を除去する前の実際の心電波形で、下段がPQRST波除去後の波形を示している。R波のピークの位置を合わせて100程度の区間を重ねて描かれている。静止状態での取得であるためノイズ量は小さく、-8から+6LSB位の振幅、実効値で3LSBrms程度となっている。ちなみに、QRS波の振幅は、この例では350LSB程度であり、信号対ノイズ比(SNR)は100以上あることになる(信号振幅対ノイズ実効値)。
図3d(c)は運動時に取得した例であり、上段がPQRST波を除去する前の実際の心電波形で、下段がPQRST波除去後の波形を示している。R波のピークの位置を合わせて100程度の区間を重ねて描かれている。ノイズ量は-600から+600LSB位の振幅、実効値で100LSBrms程度である。信号は300LSB程度であるため、SNRは約3となる。
波除去の他の例として、図3d(d)に示すように、各区間のR波の位置を合わせて移動平均を求め、その移動平均をノイズを含む心電信号から減算するようにしてもよく、このような態様も本発明に含まれる。
次に、図3eを参照して、ノイズ算出部123は、上記のようにして抽出したノイズ波形の例えば実効値をノイズ量として求める。ノイズ量としてノイズの振幅を用いることもできる。各区間のノイズ量を例えば最新の区間のノイズ量Ni,その一つ前の区間のノイズ量をNi-1,さらにその一つ前の区間のノイズ量をNi-2,…とした場合、最新の区間のノイズ量Niを順次求めていき、一つ前の区間Ni-1の後に追加していく。
SNR算出部130は、信号量とノイズ量とからSNRを算出する。信号量として、移動平均や各区間の瞬時値、ノイズ量として各区間の実効値等を使うことができる。このようにして求めたSNRの実例を図3fに示す。参考に心拍数も載せている。前半の心拍数が低い部分が座っている状態(座位時)で、後半の心拍数が高い部分がエアロバイク(登録商標)での運動を行っている状態(運動時)のときのものである。
SNRが20以下程度に低下すると、R波の抽出時刻がずれたり、ノイズをR波として抽出する等、R波の抽出そのものを誤る(誤検出)頻度が増えてくる。本来のR波を抽出できない検出漏れも発生するおそれがある。
前半の座位時では、SNRは変動するものの、概ね30程度以上はあり、誤検出や検出漏れの頻度は低い。後半の運動時では、高い頻度でSNRが20以下となり、高い頻度で誤検出や検出漏れが発生する。誤検出や検出漏れは、心拍計算の精度を悪化させるだけでなく、R波の間隔(RRI:R-R Interval)を使って求めるHRVの精度も悪化させる。場合によっては、心拍数やHRVを出力できないことがあり得る。
区間ごとのSNRは大きく変動する。前半の座位でも、完全に体が静止している区間とそうでない区間とがあるため、200以上のSNRから数十のSNRまで変動する。後半の運動時でも、エアロバイク(登録商標)をコンスタントに漕いでいる中で、SNRが非常に悪い区間とある程度良い区間とが存在する。
区間の長さ(R-R間隔)は、心拍数によって異なるが0.3~1秒程度である。エアロバイク(登録商標)運動は、例えば60rpmでペダルを回したとき1秒周期の運動になる。1秒周期の運動ベクトル変化の中で、例えば0.5秒程度、ECG電極にアーティファクトを生じない時間が存在すれば、SNRが高い区間が存在することになる。
図3gを参照して、SNR比較部131は、各区間でSNRとしきい値を比較する。しきい値として、例えば前述した誤検出が発生してくるSNRである20以下の値を用いることができる。
区間SNRの低下により、心電の特徴抽出ができなくなり検出漏れも発生するが、本来の検出漏れは特徴抽出の問題であり、しきい値とは関係ない。誤検出を減らそうとしてしきい値を高めに設定すると、正常に検出できた区間を削除する(しきい値による検出漏れ)問題を引き起こす危険性が増加する。
しきい値による検出漏れの発生確率は、ある程度R波検出が可能なSNRが10程度から上がってくる。正常検出を破棄させない意味では、しきい値として10以下程度にすることが好ましい。
SNRの比較結果を最新の区間Ri,その一つ前をRi-1とした場合、最新の区間Riを求め、Ri-1以前の結果に順次追加していく。そして、しきい値以上であればOK,しきい値未満であればNGといった判定を行う。
RRI出力部140は、RRIの計算結果を出力する。RRIは、2つの連続するR波ピークの時刻の差をとって計算する。このとき、SNR比較部131での判定がNGとなった期間は使用しない。
例えば、区間Ri-2がNGの場合、区間i-2でのR波抽出結果を使用しない。つまり、区間i-1と区間i-2との間、さらには区間i-2と区間i-3との間でRRIを計算しないことを意味する。
NGとなった区間は、R波の検出漏れを含んでいる場合が多く、区間i-2を飛び越えて、区間i-1と区間i-3との間でRRIを計算することも誤りである場合が多く、この計算も行わない。
周波数解析部150はRRIの揺らぎ、つまりはHRVを計算して出力する。RRIにスプライン補間をかけて一定の時間間隔でリサンプリングする従来例が存在するが、欠落を含むRRIにスプライン補間をかけると、偽の振動を生じる場合があり好ましくない。
スプライン補間やリサンプリングは行わずに、不定間隔のままRRIを使い正弦波の最小二乗法に基づく周波数解析を行うことが好ましい。このような周波数解析として、例えばLomb-Scargleピリオドグラムがある。
また、SNRの高い区間のECGの生波形をR波のピークの位置を合わせて何区間かの平均をとることで、ノイズによる誤差の少ない本来のECG波形に忠実な波形を取得することができる。運動中のアーティファクトによって乱れたECG波を使って平均化すると波情報に大きな誤差を生じる。
PQRSTU波等の波高値や傾きは、生体の特性、自律神経やホルモン、血中酸素濃度、カリウム濃度、その他の物質の濃度等の状態を反映する。例えば、高高度の登山を模擬した実験で、血中酸素濃度の低下でST波に変化が生じる現象が報告されている。ECGの波情報を精度よく得ることで、このような生体の状態を把握することができる。
〔第2実施形態〕ECGのSNRを利用した複数電極信号の合成について
第2実施形態には、図4に示す第1の態様と、図7に示す第2の態様とが含まれ、ともに複数のECG電極1,2,…を有している。
-第1の態様-
まず、第1の態様について説明すると、ECG測定部210、R波抽出部220、SNR算出部230の他に、SNR・電極間比較部231、SNR・しきい値比較部232、RRI出力部240および周波数解析部250を備える。
このうち、ECG測定部210、R波抽出部220、SNR算出部230、RRI出力部240および周波数解析部250は、それぞれ、先の第1実施形態で説明したECG測定部110、R波抽出部120、SNR算出部130、RRI出力部140および周波数解析部150と同様な構成であってよい。
ECG電極1,2,…は、心電を検出するために生体の皮膚に装着される。その電極材料としては、接触電位が小さいAg/AgClやAg、導電性プラスチックが好ましく採用される。
アーティファクトは、運動のベクトルやECG電極の装着場所、筋肉の動き、皮膚との密着度等に応じて、本来の心電信号に重畳して入ってくる。運動の内容によって(例えば、腹筋、腕立て、ランニング等の基礎トレーニングから、マシンを使ったトレーニング、競技スポーツ、自由な動きを伴うストレッチやヨガ、ダンス等)使う筋肉やベクトルが異なるため、複数のECG電極間でアーティファクトの入り方が異なる。
ECG測定部210は、ECG電極ごとにあってもよいが、高分解能ADC(アナログデジタルコンバータ)を時分割(インターリーブ)で切り替えて使うことで1個にすることができる。
複数のECG電極1,2,…からの信号をSNRに応じて合成することで、アーティファクトの影響を抑制することができる。本来の心電信号を同期加算(位置を合わせて加算)することで、心電信号を大きくすることができる。
ECG信号は既知ではないため、ECGとアーティファクトを完全に分離することは難しい。しかしながら、アーティファクトは、上述したメカニズムによって生じるため、本来の心電信号(PQRST波)とは異なる波形やスペクトルを持つ。
その多くは、運動の衝撃による接触電位のインパルス的・ステップ関数的な変化が帯域制限を受けた波動であり、本来の心電信号とは異質のものになる。SNR算出部230は、各区間に広がるアーティファクトの波動エネルギーを定量化する。
R波抽出部220やこれに続くブロックは、上記第1実施形態と同様の構成を持つこともできるが、一定時間ごとに処理電極を切り替えるようにすることで1系統にすることができる。
SNR算出部230は、各時間、各ECG電極1,2,…でSNRを計算し、ECG電極1,2,…ごとに図5に示すような区間SNRの時系列を得る。図5において、SNR1,i-2:SNR1,i-1:SNR1,iがECG電極1の区間SNRの時系列であり、SNR2,i-2:SNR2,i-1:SNR2,iがECG電極2の区間SNRの時系列である。
SNR・電極間比較部231は、上記ECG電極ごとのSNRを各時刻において比較し、最良のSNRを選択する。
SNR・しきい値比較部232は、上記選択したSNRとしきい値とを比較し、しきい値以上であれば各時刻における上記最良のSNRを持つECG電極で抽出したR波時刻を出力する。しきい値未満の場合には、空白を出力する。図5において、Ri,Ri-1,Ri-2…はメモリ等に保存された上記出力である。
RRI出力部240は、上記保存されたR波時刻をもとにR波間隔(R-R Interval)を計算して出力する。上記第1実施形態と同様に、空欄はしきい値未満を意味するため、空欄前後のRRIは計算しない。
周波数解析部250は、上記RRIを用いて上記第1実施形態と同様の、正弦波の最小二乗近似に基づく不定間隔の周波数解析を行う。
図6を参照して、SNR・しきい値比較部232の詳細について説明する。
図6(a)は比較的単純な場合の例で、ECG電極1とECG電極2で区間の切り替わりタイミングが合っており、ECG電極1の区間i-2にアーティファクトが入っているとする。
SNR・電極間比較部31aによってSNRはECG電極1<ECG電極2と判定される。また、SNR・しきい値比較部31bにより、ECG電極2がしきい値以上であれば、ECG電極2が選択され、そのR波時刻が採用される(しきい値以下であれば、どちらも採用しない)。すなわち、次のとおり。
(1)しきい値<SNR1,i-2<SNR2,i-2の場合、ECG電極2で抽出したR波時刻を採用。
(2)SNR1,i-2<しきい値<SNR2,i-2の場合、ECG電極2で抽出したR波時刻を採用。
(3)SNR1,i-2<SNR2,i-2<しきい値の場合、どちらも採用しない。
図6(b)はやや複雑な場合で、ECG電極1とECG電極2で区間の長さが異なる例である。ECG電極1では、区間i-2とi-1でアーティファクトをR波として抽出している。ECG電極2の区間i-2は本来のR波を正しく検出しているが、ECG電極1の区間i-2とi-1に跨がっている。
一般にQRS期間は、ECGの特徴抽出にとって最重要な期間で、この狭い期間に着目するとよい。狭くすることで、比較相手が1個に絞られる場合もあるが、この例のように相変わらず2個になってしまう場合がある。この場合、次のような処理を行うとよい。
すなわち、SNR1,i-2<SNR1,i-1<SNR2,i-2の場合、SNR2,i-2を採用。その理由は、ECG電極1の両区間はSNRが低下しているためである。
上記以外ではSNR2,i-2を採用しない。その理由は、ECG電極1にSNRが高い抽出が存在する、ECG電極2の方にアーティファクトが存在する可能性があるためである。
-第2の態様-
図7に示すように、SNRに応じた重み付き合成を行うため、上記第1の態様におけるSNR・電極間比較部231、SNR・しきい値比較部232に代えて、重み合成部233とR波再抽出部234を備える。この他の構成は上記第1の態様と同じである。図8に各部の動作説明用の模式図を示す。
重み合成部233は、各時間、各ECG電極1,2,…のECG生波形に当該区間のSNRを乗算する。例えば、ECG電極1のECG生波形は、R波仮検出によってv1,i:v1,i-1:v1,i-2,…の区間に区切られたとする。
各区間の長さは、上記したようにR-R間隔によって決まり、例えば0.3~1秒程度である。例えばADCのサンプリングレートを128spsとすると、各区間には38~128個の時系列データ(x1,x2,…)が含まれることになる。
つまり、各区間は上記時系列データの集合であり、例えば区間v1,i={x1,x2,…}となる。これにSNRを乗算すると、SNR1,i×v1,i={SNR1,i×x1,SNR1,i×x2,…}となる。
さらに重み合成部233は、各ECG電極1,2,…の極性を合わせて加算する。例えば最新の区間で合成される信号をv,iとすると、
v,i=p1×SNR1,i×v1,i+p2×SNR2,i×v2,i+…
となる。p1,p2,…は各ECG電極の極性であり、+1か-1の値をとる。
通常、ECG電極の装着場所が決まれば、PQRST波の極性は変わらないため、区間ごとに極性を変える必要はない。つまり、p1,p2,…は区間が変わっても同じ値を使用することができる。
一方で、複数のECG電極においてPQRST波の形が装着場所ごとに変わる現象がある。例えば12誘導心電計では、V1電極はS波がR波より大きくなる。この場合、例えばQRS振幅が最大となるように合成の極性を決めるとよい。
R波再抽出部234は、合成された信号v,1:v,i-1:v,i-2…に対してR波の再抽出を行う。合成波のSNRは、合成前の各ECG電極1,2,…のSNRのほぼ和となり、SNRを向上させてR波抽出が行える。
上述したように、運動中、SNRが非常に悪い区間とある程度良い区間が存在し、それは運動ベクトルや装着場所に依存することから、複数のECG電極1,2,…で重み合成することで、SNRが非常に悪い区間を減らすことができる。このことは、RRIの誤検出や検出漏れを減らすことにつながる。
〔第3実施形態〕
ここでは、心電検出用の複数のECG電極を持ったセンサ構造について説明する。通常、ECG電極の数を増やすことは信号処理回路等を収納するケース(格納容器)の接続のための端子の数を増やすことになり、また電極面積も必然的に広くなるが、本発明では、これらの点を極力抑える工夫をしている。
-第1の態様-
図9は、ケース310の底面にもECG電極3を設けて、端子数の増加や専有面積の増加を最小限に押さえた例である。この例において、ケース310はベルト301を介して皮膚面に固定される。ベルト301に代えて粘着テープが用いられてもよい。図示しないが、ケース310には信号処理回路等が内蔵されている。
図9(a)(b)に示すように、この例では、ECG電極としてケース310の両側に配置されたECG電極1,2と、ケース310の底面(皮膚面に接触する側の面)に設けられたECG電極3の3つのECG電極を備えている。
ECG電極1,2は、先にも説明したように、好ましくはAg/AgClや導電性プラスチックからなる電極で、これらECG電極1,2はケース310の上面に設けられている端子321a,321bを介してケース310内の信号処理回路等に接続される。
ECG電極3は、ECG電極1,2と同じく、好ましくはAg/AgClや導電性プラスチックからなる電極でケース310の底面に設けられるが、ECG電極3には導電性ゲルが用いられてもよい。
ECG電極1,2,3は、皮膚に接触するように装着されるが、ECG電極1,2の端子部分を覆うように絶縁カバー302を配置する。絶縁カバー302は、ケース310の端部から10mm以上張り出して配置することが好ましい。これは、汗によるECG電極1,2間の絶縁抵抗の低下を最小限にするためである。
図10(a)(b)は、ケース310の底面に配置されるECG電極3を2分割してECG電極3a,3bとした例で、これにより電極数を増やしている。
図11は、上記のECG電極1,2,3の他に、さらに4つのECG電極4~7を備える例である。このうち、ECG電極4,5は体の側面に接するようにベルト301に配置され、ECG電極6,7は体の背面に接するようにベルト110に配置される。
体の側面はベルトやウェアの生地を支える支点となり、運動時のずれが比較的少ない部位である。体の背面や前面および側面の組合せは、体を前後左右に延ばすような運動の時、ある瞬間どこかのECG電極でアーティファクトが少ない状態を生成する確率を増やす。
-第2の態様-
この第2の態様においては、図12(a)~(c)に示すように、複数(例えば3つ)の心電検出用のECG電極1~3と、深部体温計測用の温度計11a,11bを備えている。なお、温度計11a,11bを区別する必要がない場合には、総称として温度計11という。
ケース310内に基板330と2つの温度計11a,11bを有し、これによって皮膚と環境の間を流れる熱流を測定する。一方の温度計11aはケース310の底面に配置され、他方の温度計11bは温度計11aから離れた基板330に設けられる。
図示のように、一組の温度計対(温度計11a,11b)により、一つの熱流を測定することができる(SHF: Single Heat Flux)。また、温度計対を二組とすることにより、二つの熱流を測定することもできる(DHF: Dual Heat Flux)。この場合において、ECG電極3はケース310の底面に皮膚に接触するように設ける。
-第3の態様-
この第3の態様では、基板330と温度計11およびECG電極1~3の接続例について説明する。図13aはECG電極3がケース310の底面全体にある場合、図13bは底面電極であるECG電極3をECG電極3aとECG電極3bに分割した場合である。
いずれの場合も、ケース310の上蓋311にはベルト301(もしくはウェア)に取り付けられているECG電極1,2と電気的に接続する端子321a,321bを設ける。なお、端子321a,321bを区別する必要がない場合には、総称として端子321という。
端子321a,321bをケース310内の基板330にそれぞれ配線L1,L2で接続する。ケース310の底面には、絶縁シート312を内側とし、ECG電極3を外側として貼り合わせたものを配置する。
絶縁シート312の上には第1の温度計11aを配置する。基板330の上には第2の温度計11bを配置する。温度計11a,11bはケース310の中央部分に配置されることが好ましい。第2の温度計11bは基板330の下面側に配置されてもよい。
第2の温度計11bに放射温度計の機能を付加して、基板温度と底面の温度を同時に測るようにすれば、第1の温度計11aを省略することもできる。
絶縁シート312にはスルーホール313を設け、スルーホール313を介してECG電極3(底面電極)と基板330とを配線L3で接続する。また、第1の温度計11aと基板330とを適宜配線で接続する。上記配線として、フレキシブルプリント配線を用いることもできる。
絶縁シート312として、プラスチックを用いることができる。絶縁シート312の厚さを薄くして、第1の温度計11aの温度をできるだけ皮膚温に近づけて第2の温度計11bとの温度差を大きくすることが感度を上げるうえで好ましい。
さらに、ケース310の厚さを薄くするうえでも、絶縁シート312の厚さは薄い方がよい。高強度のプラスチック材を用いれば、1mm程度の厚さにすることができる。ケース310の底面の強度を絶縁シート312が担うことで、高価な銀を使う底面のECG電極3の厚さを薄くできる。底面のECG電極3として、シート状のAg/AgClを用いることができる。
また、底面のECG電極3として、ヤング率が高い鉄等の金属の上にAg/AgClをメッキしたものを使うこともできる。ケース310の底面の強度をECG電極3が担うことで、絶縁シート312の厚さを薄くでき、第1の温度計11aの温度を皮膚温に近づけることができる。
図13bの例では、底面のECG電極3を2つのECG電極3aとECG電極3bとに分割する場合、これら分割電極3a,3bが配置される絶縁シート312の両側部分312a,312bを電極3a,3bの厚さ分だけ薄くすることにより、皮膚に接する面を平坦にすることができる。
第1の温度計11aの直下やその周辺は熱流を計測するうえで重要な面であり、この面と皮膚との間に隙間ができると熱流計測に誤差が生じる。ECG電極3a,ECG電極3bも当然皮膚との接触が重要なことから、ケース310の底面に段差が生じないことが重要である。
なお、相対的なこととして、絶縁シート312のうち、ECG電極3aとECG電極3bとの間の中央部分312cの厚さをそれら電極3a,3bの厚さ分増やして、ケース310の底面に段差が生じないようにしてもよい。
-第4の態様-
第4の態様では、図13cに示すように、底面のECG電極3を4分割にするとともに、上記絶縁シート312を第1の絶縁シートとして、これとは別にケース310の底面にさらに第2の絶縁シート317を備える。
上記第3の態様と同じく、ケース310の底面には、第1の温度計11aと第1の絶縁シート312を配置する。第1の絶縁シート312の皮膚側(底面側)に、ECG電極3を4分割した4つのECG電極3a~3dを配置する。
第1の温度計11aの下に隙間ができないように、第1の温度計11aとその周辺にダミー電極Dを配置する。なお、ダミー電極Dに代えて同じ厚さの電気絶縁性のダミーシートが用いられてもよい。さらにその下に、第2の絶縁シート317を配置する。
第2の絶縁シート317はケース310の底面より大きな面積を有し、その周辺部分はケース310の底面からはみ出している。第2の絶縁シート317には、プラスチック等の絶縁体を用いる。
第2の絶縁シート317の底面に、導電性ゲル315a~315dと非導電性ゲル316を配置する。第2の絶縁シート317の中央部分には開口部318を設け、ケース側の分割されたECG電極3a~3dを、それぞれ、導電性ゲル315a~315dに電気的に接続する。また、ダミー電極Dと非導電性ゲル316とを熱的に接触させる。第2の絶縁シート317は使い捨てにすることができる。
導電性ゲル315a~315dと非導電性ゲル316に粘着性を持たせることにより、ケース310を含めて皮膚に吸着させることができる。衣服を脱がずに着脱できるメリットがある。
〔第4実施形態〕
複数のECG電極パッドおよび熱流パッドを持つ人体の上半身に装着されるウェアの実施形態で、図14(a)(b)にウェアWにECG電極パッドE、熱流パッドThおよび信号処理回路Pを設けた例を示す。図14(a)がウェアWの前面側で、図14(b)がウェアWの背面側である。
図14(a)に示すように、人体の場合、体の前面で肋骨のやや下の左右に心電の正電位が顕著な(高い)部分が存在する。さらに、みぞおちとその上下にかけて心電の負電位が顕著な(絶対値として高い)部分が存在する。この領域にECG電極パッドEを設けることで、信号強度を上げられる。
心電の正電位が顕著な部分に設けられるECG電極パッドをE(+),心電の負電位が顕著な部分に設けられるECG電極パッドをE(-)とする。区別する必要がない場合には、単にECG電極パッドEとする。
ECG電極パッドEは大きすぎると、上記電位が高い部分とその周辺の相対的に電位の低い部分をショートすることになるおそれがあるため、好ましくない。一方で、小さいECG電極パッドEを多数配置することは、信号処理や配線の引き回しに負担を掛けることになる。
正電位の高い部分はやや面積が小さいため、一例として、左右に一つずつECG電極パッド(E+)を配置し、負電位の高い中央部分には3つのECG電極パッド(E-)を配置することが好ましい。これによって、大きな信号が得られるとともに、上記の問題が軽減され、複数電極によるSNR改善効果が奏される。
図14(b)を参照して、体の背面にも、前面よりも小さいながらも、前面と同様の電位分布が存在する。電極数や配線数、信号処理を増やすことになるが、適宜この部分(体の背面)も利用することにより、上記効果をさらに上げることができる。
熱流パッドThは、後述する熱流を測定する温度計11と断熱材432で構成され、熱流を体表面に対して鉛直方向に流す。熱流パッドThを複数配置する意味は、体の深部(例えば、腹部の上部と下部)に温度差があるためと、熱流計測にもアーティファクト(誤差の要因)があり、それを軽減するためである。
皮膚と熱流パッドThの間に隙間が生ずるとアーティファクトとなるため、可能な限り平坦な面に装着することが好ましい。胸筋や胸の脂肪、女性の乳房、背中の肩甲骨のあたりは平坦性を損なうため、これらの領域は避けることが好ましい。
以上の観点から、上部で比較的平坦な胸骨丙のあたり、下部で比較的平坦な肋骨の下あたりに熱流パッドThを配置することが好ましい。なお、図14(a)の例ではECG電極パッドEと熱流パッドThの場所が重ならないようにしているが、ECG電極パッドEと熱流パッドThを一つのパッケージ内に収納して、両機能を合体させることも可能である。
皮下脂肪は、熱流を小さくするとともに、熱時定数を大きくする。また、熱流計にとって感度を低下させるとともに、応答スピードを遅くする。さらに、電気の平行平板コンデンサの電気力線のアナロジーから、平行平板の距離が離れるほど周囲の流束が曲がる現象(3次元効果)が生じ、深部から熱流計までの距離が離れるほど、環境温度の影響を受けやすくなる。
体の前面では、胸骨丙のあたりが比較的皮下脂肪が少ないため、皮下脂肪が厚い人向けに胸骨丙のあたりを選択するとよい。また、体の背面は前面よりも皮下脂肪が少ない場合が多いことから、前述した背中の場所を選択することもできる。
接地電極Gにも、アーティファクトが発生するため、広い面積を確保することが好ましい。前述した心電の電位分布を乱さないように、比較的電位が小さい背中側、その中でも電位が小さい首の下あたり、さらには腰のあたりに広い面積を確保することが好ましい。
信号処理回路Pは、外部との通信を行うための無線回路を備えている。その通信距離を延ばすため、アンテナの地上高を上げることが好ましい。さらに運動の内容によっては、背中を地面につける場合もあり、信号処理回路が運動の妨げにならないようにユーザーに選択の余地があることが好ましい。
これらの観点から、背中の首あたり、さらには前面の首あたりに信号処理回路Pを適宜配置できるようにしておくことが好ましい。信号処理回路PはSiP(System in Package)やCOP(Chip on Board)等の技術により、薄く小さくすることが可能になっており、信号処理と電池を別の場所に配置して配線で結ぶことができる。
薄いラミネート電池を着脱可能な形で、例えば図14aのBに示す位置に配置することができる。これによって、信号処理回路Pの厚さや面積を減らすことができる。首の周りの重量や厚さを減らすことができる。
次に、図15(a)~(c)により、ECG電極パッドE(+),E(-)および各熱流パッドThを信号処理回路Pに接続するため、ウエアW上に配線されるGND(グランド)配線410について、アーティファクトの要因となる静電気や電磁誘導、静電結合、汗の影響を軽減する手法を説明する。
図15(c)にGND配線410の詳細を示す。これによると、GND配線410はウェア生地401の上に信号線となる被覆導体411、第1絶縁シート412a、GND電極となるGND導体413および第2絶縁シート412bを順次積層してなる。
ウェア生地401は、着心地や通気性、コンプレッシヨンを持たせたホールド性を維持させながら、静電気を帯びにくい特性を持たせることが好ましい。それでも静電気をゼロにすることは難しく、静電気に対する対策が必要になる。また、AC100V電源等の交流電源からの誘導ノイズや、人体と周囲物体との容量結合による静電ノイズを軽減する必要がある。
信号線として被覆導体411を用いることで、ウェア生地401が汗を吸ったとき、汗の塩分による他の配線とのショートを防止する。熱流パッドThでは、2本の被覆導体をより線(ツイストペア)で用いることが好ましい。温度計(例えばサーミスタ)からの信号線をツイストペアとすることで、信号処理回路Pで差信号として処理するときに、より効果的にコモンモードノイズを除去できる。
第1絶縁シート412aと第2絶縁シート412bの間にGND導体413を配置する(サンドイッチ)構造は、GND導体413が汗によりウェア生地401を介して他のGND配線とショートするのを防ぐ。GND導体413は、信号処理回路Pで一点接地することが好ましい。
GND導体413は信号線である被覆導体411を十分に覆うように幅を持たせる。例えば、10mm程度の幅を持たせることが誘導ノイズや静電気ノイズを抑制するうえで好ましい。
これら被覆導体411やGND導体413、絶縁シート412a,412bは、ウェア生地401に対して環境側(皮膚とは反対側)に配置することが外部からの誘導ノイズや静電ノイズを抑制するうえで好ましいが、必要とされるSNRやウェアのデザイン等の観点によってはウェア生地401の皮膚側に配置することも可能である。
次に、図16(a)(b)により、ECG電極パッドEの構造について説明する。ECG電極パッドEは、ウェア生地401の皮膚に面する側に、ECG電極421,第1の絶縁シート422aおよびばね材423の積層体を有し、ウェア生地401の環境側(皮膚とは反対側)に、第2の絶縁シート422b、GND導体424および第3の絶縁シート422cの積層体を備えている。
ECG電極421は皮膚面に接するように配置する。前述したように、ECG電極421はAg/AgClやAgを主成分とする金属や導電性プラスチックを用いることができる。電極面積には前述したトレードオフがあり、100~500平方mm程度であることが好ましい。
ECG電極421の上にECG電極から張り出すように第1絶縁シート422aを配置する。これはウェア生地401が汗を吸ったとき、ECG電極421がウェアWを介して他のECG電極421とショートしないようにするためである。汗をかいたとき、他のECG電極との抵抗値を100kΩ以上確保することが好ましく、張り出す長さは5~10mm程度がよい。
ばね材423は、ECG電極421と皮膚の接触を保つばねの役割を果たす。皮膚面には凹凸があり、その山谷の高さは呼吸や運動によって変化する。皮膚面のある部分では凹部となり、その周りの凸部でウェア生地を支える構造になる。
ウェア生地401にぶら下がるECG電極421はそのままでは皮膚から離れたり、接触圧が変化したりする。これに伴い、前述のケミカルポテンシャルの変化が起き、アーティファクトの大きな要因となる。
ばね材423は、皮膚面が凹部となった状態でもECG電極421を一定の圧力で皮膚に押し付ける役割を果たす。機能的には、小さなスプリングを面状に多数並べた構造になる。このような材料として、スポンジやクッション、発泡材、気泡緩衝材等を使うことができる。綿やポリウレタン等のプラスチックを用いることもできる。圧力をかけない状態で数mmから10mm程度の厚さであるのが好ましい。ばね材423と絶縁シート422aの上下関係は逆にしてもよい。
ECG電極421への静電ノイズ、誘導ノイズの混入を最小限にするため、ウェア生地401を挟んでECG電極421の反対側にGND領域が設けられる。上記GND配線410と同様に、第2および第3の2枚の絶縁シート422b,422cでGNDとなる導体424を挟んだ構造をECG電極421から張り出すように配置する。
GND導体424が5~10mm程度、ECG電極421の周辺(4辺)から張り出して配置することが好ましい。GND導体424を絶縁シート422b,422cで挟んだGND積層体をばね材423の上、ウェア生地401の下に配置することもできる。
図17(a)(b)を参照して、ECG電極421にGND配線410内の被覆導体411が接続され、ECG電極421は被覆導体411を介して信号処理回路Pに接続される。
被覆導体411は、ウェア生地401の環境側からウェア生地401、ばね材423および絶縁シート422aを貫通して引き出され、コンタクト425を介してECG電極421に接続される。
コンタクト425には、ECG電極421を上下から機械的に挟む、カシメ状の金具を用いることができる。被覆導体411が絶縁シート422aを貫いているため、ウェア生地401に染み込んだ汗等の水分がECG電極421に達しないように、絶縁シート422aの被覆導体411の貫通箇所にガスケット426を設けることが好ましい。ガスケット426として、接着剤やリング状のプラスチックを用いることができる。
次に、図18(a)(b)により、熱流パッドThについて説明する。皮膚面に接するように第1の絶縁シート431aを配置し、その上に温度計11a,11bを備えた断熱材432を配置する。
一方の温度計11aは、断熱材432の下面側(皮膚面側)に配置され、他方の温度計11bは断熱材432の環境面側(反皮膚面側)に配置される。温度計11a,11bはともに断熱材432の中央部分において重なる位置に配置されるのが好ましい。絶縁シート431aは、皮膚からの汗が下面側の温度計11aに達するのを阻止する。
温度計11a,11bは、皮膚から環境に向かって流れる熱流を測定する。断熱材432の熱抵抗と熱流との掛け算によって発生する温度差は、温度計11a,11bによって検知され、熱流を求めることができる(SHFによる熱流計)。
通常、皮膚温は30℃程度の温度を持つが、隙間が空くことで瞬時に環境温度との熱交換が行われ、接触が回復しても熱平衡に戻るのに数十から数百秒の時間を要する。その間の深部温測定は大きな誤差を伴うことになる。
ウェア生地401と断熱材432との間に、ばね材433が配置される。ばね材433は、上記ECG電極パッドEにおけるばね材423と同様に、皮膚と熱流測定構造(断熱材+温度計)の接触が失われるのを防ぐ効果がある。
また、ウェア生地401の環境面側に、GND導体434を第2および第3の絶縁シート431b,431cで挟んでなるGND積層体を配置することにより、温度計信号(サーミスタであれば抵抗変化)に重畳するノイズの混入を抑えることができる。
次に、図19(a)(b)を参照して、温度計11a,11bに対する配線接続について説明する。なお、図19(b)には、第1の絶縁シート431a、温度計11a,11bを有する断熱材432およびばね材433は図示が省略されている。
信号処理回路Pからウェア生地401の環境側を通ってきたGND配線410の被覆導体411を温度計11a,11bに接続するため皮膚側へ通過させている。配線は、温度計11a用のツイストペア配線411aと、温度計11b用のツイストペア配線411bであり、それぞれ、断熱材432の下面側の温度計11aと、断熱材432の上面側の温度計11bに接続される。なお、温度計11aの片方の端子と温度計11bの片方の端子を接続し、配線を3本にすることもできる。3本によるより線構造にすることもできる。
次に、図20(a)(b)により、2組の熱流計を有するDHF法による熱流パッドThの構成例について説明する。この場合には、4つの温度計11a~11dと2つの断熱材432a,432bとが用いられる。その他の構成は、図18で説明した熱流パッドと同じであってよい。
このうち、温度計11a,11bは温度計対TP1として一方の断熱材432aの下面側と上面側に配置され、温度計11c,11dは温度計対TP2として他方の断熱材432bの下面側と上面側に配置される。
このように、2組の温度計対TP1,TP2を備えることにより、2つの熱流を測定することができる。断熱材432a,432bの熱抵抗を変えることにより、異なる大きさの熱流を作り、未知数である皮下の熱抵抗を算出して深部体温を計算することができる。
図21(a)(b)を参照して、温度計11a~11dに対する配線接続について説明する。なお、図21(b)には、第1の絶縁シート431a、温度計11a,11bを有する断熱材432a,温度計11c,11dを有する断熱材432bおよびばね材433は図示が省略されている。
温度計11a~11dは、温度計対TP1に向かう被覆導体411による2組の配線410Aと、温度計対TP2に向かう同じく被覆導体411による2組の配線410Bを介してそれぞれ信号処理回路Pに接続される。
なお、各温度計の片方の端子を1本の配線にまとめれば、合計で5本の配線にすることもできる。また、温度計を選択的に切り換える例えば半導体スイッチを各熱流パッドに設けることにより、配線数を減らすこともできる。
次に、図22(a)~(c)により、図20,21で説明したDHF用の熱流パッドに好適な断熱材について説明する。
まず、図22(a)の例では、断熱材432a,432bを合わせた大きさに相当する大きさ(面積)の下面フィルム441の上に気泡緩衝材としての多数の気泡体(この例では中空円柱状の気嚢)Bを複数並べ、一方の断熱材432aの部分の気泡体Baと、他方の断熱材432bの部分の気泡体Bbとで封入する気体を変えている。
さらに、上面フィルム442と側面フィルム443を貼り合わせて気密的な気体マットとし、その気体マット内を仕切りフィルム444で断熱材432a側の気体室Raと断熱材432b側の気体室Rbとに区切り、その各々に異なる気体を封入する。
断熱材432a側の気泡体Baと気体室Raに封入する気体は同一の気体、また、断熱材432b側の気泡体Bbと気体室Rbに封入する気体は同一の気体であってよい。
断熱材432a側の気泡体Baと気体室Raに封入する気体と、断熱材432b側の気泡体Bbと気体室Rbに封入する気体の熱伝導率を変えることにより、2種類の熱抵抗を持つ断熱材432a,432bを構成することができる。
熱伝導率(各数値の単位はW/mK)が高い気体として、水素0.3,ヘリウム0.14等を使用することができる。これに対して、熱伝導率(各数値の単位はW/mK)が低い気体として、空気0.026,アルゴン0.016,炭酸ガス0.015を使用することができる。
断熱材432a,432bを含む断熱材432全体の面積は、前述した皮下厚による3次元効果が軽減するように決定する。断熱材432の形状は円柱状であってもよい。例えば、平面視で縦横の各長さとして数十mm(直径として数十mm)程度、好ましくは30mm以上にするとよい。皮下厚は、通常、5mm以上はあり、環境温度変化による影響を抑える効果がある。
断熱材432の厚さとして数mm程度、好ましくは2mm以上の厚さにするとよい。厚くすることにより、熱流測定の感度は上昇するが、ウェアの厚さが厚くなるので着心地や放熱性が低下する。また、薄くしすぎると、体表面が変位した際に気泡体の底面と上面とが接触する恐れがあったり、厚さの変動が誤差として現れやすくなるので、好ましくない。
前述したように、熱流パッドThと皮膚との間に隙間が空くと大きな誤差となる。気泡体Bは体の凹凸にフィットするよう変形する。ばね材やウェアのコンプレッションによって体表面に押し付けられ、運動時においても隙間が生ずるのを防止できる。ミクロで見て気泡体Bの形状が変化しても、断熱材432全体として熱抵抗の変化が許容誤差の範囲内であればよい。気体は、液体や固体に比べて熱伝導率が低いため、熱流計の感度を上げることができる。
類似の構成として、図22(b)に示すように、隣接する気泡体Bが仕切りで区切られた構造であってもよい。なお、気泡体Bやフィルムの中に、気体ではなく小さなビーズの集合体を封入することもできる。
また、図22(c)に示すように、断熱材432として、熱抵抗率が異なる合成樹脂シート451,452を用いてもよい。合成樹脂は、ゴム材や発泡材等、形状変化が可能な材料であることが好ましい。これらの材料の組成や添加物、発泡倍率を変えることで2種類の熱抵抗を持たせることができる。
〔第5実施形態〕
-第1の態様-
第5実施形態は、温度アーティファクトの定量化と補正を行う実施形態で、第1の態様は、その基本的な構成として、図23に示すように、熱流測定部500と、深部温算出部510と、ノイズ算出部520と、深部温出力部540とを備えている。
熱流測定部500は、SHF法もしくはDHF法等により、生体から周囲の環境に向かって流れる一つないしは複数の熱流を測定する。深部温算出部510は、熱流と皮下の熱抵抗、表皮(体表面)の温度を用いて深部温度を計算する。ノイズ算出部520は、深部温度に重畳しているノイズを算出する。深部温出力部540は、算出されたノイズに応じて深部温度に処理を加え、その結果を出力する。
-第2の態様-
好ましくは第2の態様として、図24に示すように、ノイズ算出部520の後段にノイズ比較部530をさらに備え、ノイズ算出部520にて算出されたノイズ期間のデータを除去する。
この例では、熱流測定部500はDHF方式を採用しており、先の図20(b)で説明したように、2組の温度計対TP1,TP2を備え、図25に示すように、温度計対TP1,TP2にて2つの熱流Ith1,Ith2を測定するとともに、温度計対TP1,TP2に含まれている皮膚面側の温度計により皮膚温Tsk1,Tsk2を測定する。
深部温算出部510は、生体の深部組織から体表面までの体内熱抵抗をRthbodyとして、(Tsk2-Tsk1)/(Ith1-Ith2)よりRthbodyを算出した後、(Ith1×Rthbody+Tsk1)もしくは(Ith2×Rthbody+Tsk2)より生体の深部体温Tcの時系列を求める。
ノイズ算出部520は、ハイパスフィルタ(HPF)を有し、深部温度Tcを入力として特定の周波数以上の成分を出力する。ハイパスフィルタとして、例えば1次のフィルタ、特定の周波数(遮断周波数)として0.001Hz程度の周波数を設定することができる。
これにより、周期160秒以下の温度ゆらぎ成分がほぼ減衰することなく、算出ノイズとして通過することになる。ノイズ量として、二乗の移動平均、つまりは実効値を出力することができる。
この他に、特定の体の姿勢において、温度ノイズが現れる場合がある。例えば、熱流計としての熱流パッドThを腹部の左側に付けての左向きの仰臥において、熱流パッドThを固定するベルトのテンションが緩んだり、体表面が変位したりすると、皮膚と熱流パッドThとの間に隙間ができ、これが原因で大きな温度ノイズが発生する現象を本発明者は観測している。
体の姿勢の変化は、加速度センサで検知することができる。温度ノイズは、姿勢の変化より遅れて発生するため、特定の姿勢を検知したら、その後で除去しやすい疑似的な温度ノイズを発生させて算出ノイズとして出力することもできる。
ノイズ比較部530は、ノイズ算出部520より算出された温度ノイズを所定のしきい値と比較する。しきい値は、要求される温度誤差によって決定できるが、例えば数十~数百m℃程度の値に設定することができる。
深部温出力部540は、例えばノイズ実効値がしきい値未満なら深部温度Tcを出力する。つまりは、しきい値以上のノイズが算出されている期間、深部温度Tcの出力を停止する。出力停止部分は空白となるが、例えばユーザーインターフェイス(UI)として、空白直前と直後の点を結んで表示することにより、ユーザーや他のプログラム、システムにノイズによる誤判断をさせないようにすることができる。
なお、しきい値の分だけ結んだ線に誤差が生じるため、ノイズ発生期間を前後に拡張してマスクすることにより、誤差の影響を減らすことができる。
-第3の態様-
第3の態様では、図26に示すように、熱流測定部500として複数の熱流測定部500a,500b,…と、深部温算出部510と、ノイズ算出部520と、ノイズ・測定部間比較部531と、ノイズ・しきい値比較部532と、深部温出力部540とを備えている。
深部温算出部510,ノイズ算出部520および深部温出力部540は上記第1,2の態様と同じであってよい。また、熱流測定部500a,500b,…はDHF方式を採用している。
図27の動作説明図を参照して、深部温算出部510は複数あってもよいが、ここでは一つの演算回路に各熱流測定部500a,500b,…を順次切り換えて接続し、上記したように、各熱流測定部500a,500b,…からの熱流と皮膚温度等のデータに基づいて各部の深部温度Tca,Tcb,…を計算する。
ノイズ算出部520は、上記第2の態様と同じく、各深部温度中の温度ノイズ実効値Nca,Ncb,…を計算する。
ノイズ・測定部間比較部531は、各熱流測定部間の温度ノイズ実効値を比較し、最小の温度ノイズ実効値を選択する。
ノイズ・しきい値比較部532は、その最小の温度ノイズ実効値と所定のしきい値とを比較する。
深部温出力部540は、最小の温度ノイズ実効値がしきい値未満であれば、その測定部で抽出した深部温度Tcを出力する。最小の温度ノイズ実効値がしきい値以上であれば、空白を出力する。
ECG信号の合成の場合と同様に、複数の熱流測定部からの信号をSNRに応じて合成することで、アーティファクトの影響を軽減することができる。複数の熱流パッド間で深部温度にオフセットを持つ場合がある。その場合、ノイズが少ないときにオフセットを記録しておき、合成するときに補正することもできる。
-第4の態様-
図28,29を参照して、第4の態様では、複数の深部温度計算値をノイズに応じて重み付けして合成する。そのため、上記第3の態様におけるノイズ・測定部間比較部531とノイズ・しきい値比較部532に代えて重み合成部533が用いられる。熱流測定部500a,500b,…、深部温算出部510およびノイズ算出部530は上記第3の態様と同様の処理を行う。
重み合成部533は、各熱流測定部500a,500b,…で測定された深部温Tca,Tcb,…に、算出されたノイズの逆数を乗算し、各熱流測定部の乗算結果を足し合わせたのち、各熱流測定部の逆数の総和で除算する。深部温出力部540は、上記計算結果を合成されたTcとして出力する。Tcは下記の式で表される。
Tc=(1/Nca×Tca+1/Ncb×Tcb)/(1/Nca+1/Ncb)
これによって、各熱流測定部500(500a,500b,…)の測定値は、ノイズが小さければ大きく評価されて合成されることになり、各熱流測定部の結果を効果的に利用することができる。合成SNRは、各熱流測定部のSNRのほぼ和になる。
-第5の態様-
第5の態様は、図30に示すように、基本的な構成として、熱流測定部500、環境温測定部501、偽信号発生部502、深部温算出部503および深部温出力部540を有し、温度偽信号を補正する。
熱流測定部500は、SHF法もしくはDHF法により生体から周囲の環境に向かって流れる一つないし複数の熱流を測定する。環境温測定部501は、環境温度を測定する。偽信号発生部502は、環境温度から偽信号を作り出す。深部温算出部503は、熱流と皮下の熱抵抗と表皮の温度を用いて深部温度を計算する。深部温出力部540は、上記生成された偽信号に応じて深部温度に処理を加えて新たな深部温度を算出し出力する。
-第6の態様-
第6の態様は、図31に示すように、上記第5の態様に加えて偽信号除去部504をさらに備え、その動作を図32の模式図を参照して説明する。
熱流測定部500の熱流測定では、生体から環境に向かって流れる熱流Ithを測定するため、環境温度の変化の影響を受ける。前述した皮下厚による三次元効果はその一例である。これによって、深部温度Tcに大きな偽信号を生じる場合がある。
環境温測定部501は、環境温度を測定する温度計であり、例えば先の態様で説明したケース310の最上部や、ベルト301やウェアWの表面に設置することができる。熱流測定部500の環境側に近い箇所で取得された温度を利用することもできるが、熱時定数があると遅れが生じるため、熱時定数が小さい箇所での取得が好ましい。
偽信号発生部502は、あらかじめ環境温度と偽信号との関係を取得しておき、その取得結果に応じて、現在の環境温度から偽信号を作り出す。偽信号は、環境温度を入力としたある時間応答を持つ。この関係式をあらかじめ実験等により取得する。
例えば、ホットプレートを深部、シリコーンゴムを皮下組織と見立てて、ホットプレートの温度を一定に保ちながら環境温度を変化させた実験を行う。シリコーンゴムが厚くなるほど大きな偽信号が発生するため、シリコーンゴムの厚さを変えながら、偽信号の時間応答伝達係数を取得する。
環境温度の変化によって、生の深部温度算出結果には偽信号が生じるが、偽信号除去部504は、生の深部温度算出結果から偽信号を減算して除去する。深部温出力部540は、上記処理結果をユーザーや管理者、あるいは他のプログラムやシステムに出力する。
〔第6実施形態〕
第6実施形態では、各部のノイズ測定から測定機能の診断を行う。そのための基本的な構成として、図33に示すように、生体信号測定部610、環境測定部620、ノイズ診断部630および出力部640を備えている。
生体信号測定部610は、生体が発生する電気信号をはじめ、生体に装着して生体の状態に応じて得られる信号を測定する。環境測定部620は、生体を取り巻く環境の状態を測定する。ノイズ診断部630は、各測定部に含まれるノイズを取得して、測定機能の状態を診断する。出力部640は、診断結果を出力する。
次に、図34により、具体的な構成について説明する。生体信号測定部610には、ECG測定部611、熱流測定部612、加速度測定部613が含まれ、それぞれ、生体が発するECGや熱流、加速度を測定する。一方、環境測定部620は、生体を取り巻く温度や湿度、大気圧、風速、大気組成、緯度・経度等を測定する。
なお、ECG測定部611,熱流測定部612は第6実施形態独自のものではなく、ECG測定部611は先に説明したECG測定部110と同じ構成であってよく、また、熱流測定部612も先に説明した熱流測定部500と同じ構成であってよい。
ノイズ診断部630は、ECG・SNR比較部631と、深部温・ノイズ比較部632と、動き判定部633と、環境判定部634と、しきい値発生部635とを備えている。
ECG・SNR比較部631は、ECG電極のSNRとしきい値発生部635より発生されるしきい値とを比較する。ECG電極は、前述したように、好ましくはAg/AgClや導電性プラスチックで構成されるが、測定を繰り返すうちに、生体からの析出物質と反応したり、酸化したり、物理的に損傷を受けたりする。また、ECG電極を支えるベルト301やウェアWは、汗を吸ったり、絶縁シートが劣化したり、損傷を受けたりする。
これらによって、静止時においてもノイズが増加し、あるいは信号が低下してSNRが劣化することがある。さらには、動作時のアーティファクトが通常より大きく、頻繁に発生する場合がある。
生体からの析出物質は、ECG電極やベルト、ウェアを洗うことによってある程度は除去可能であり、初期の機能を回復させることができる場合がある。熱流測定でも、使っているうちに断熱材が変形したり、物理的な損傷を受ける場合がある。
また、出荷時の校正された状態から変化すると、同じ校正パラメータでは誤差が生ずる場合がある。また、温度計から信号処理回路までの信号配線にまで汗が入り込むと、温度計の指示に誤差が生じることがある。GNDパターンが断線すると、所望のシールド効果が得られず、ノイズが増大する場合がある。
ノイズやSNRの劣化は、これ以外に、不適切な装着方法に起因する場合がある。体のサイズとベルトやウェアのサイズが異なると、ECG電極や熱流パッドが皮膚に接触できなかったり、不完全な接触になったりする場合がある。
特に、装着場所がベルトのように心臓から離れると、ECG信号が極めて小さくなる場合がある。また、肩甲骨のあたりは、腕の運動で大きく起伏するため、運動に伴ってECG電極や熱流パッドと皮膚との接触が失われる場合がある。胸部は、胸筋からの筋電や、脂肪や乳房による凹凸の影響を受ける。ベルトやウェアがよじれていたり、しわがある場合でも、ノイズやSNR劣化の要因になる。
また、測定の開始時に不安定になる場合がある。ECG電極の材質によっては、皮膚からの析出物が皮膚とECG電極とのケミカルポテンシャルを低減する場合があり、析出物が蓄積するまでSNRが低い状態が続くことがある。最初にECG電極に水を付けることで改善する場合がある。
熱流測定では、環境温度によっては、装着時にオーバーシュートやアンダーシュート等大きな変動が生じる場合がある。
これらを踏まえて、しきい値発生部635には、第1しきい値としての「装着開始時のしきい値」、第2しきい値としての「静止時のしきい値」、第3しきい値としての「運動時のしきい値」、第4しきい値としての「環境温度の高低によるしきい値」等を適宜設定することが好ましい。
例えば、運動では、そもそもECGや熱流にSNR劣化やノイズ劣化が生じやすい。静止時よりしきい値を上げる必要があるが、運動時にしか現れないECG電極や熱流パッド、ベルトやウェア等の部材の劣化によるSNR・ノイズ劣化を検出する必要がある。心拍数や深部温度、加速度、環境温度等を観測しながら運動量を検知して、しきい値を適宜変えることで、再装着や洗浄・交換を判断することができる。
静止時は、SNRやノイズが比較的安定している。静止時のSNRやノイズを測定のたびに記録し、日々の使用の中での変化を見ることで、前述した部材の劣化の経時変化を判断することもできる。ある頻度で洗浄を促し、洗浄でも回復せずに劣化が進行していくようであれば、このような経時変化を観測することで、精度よく交換が必要な劣化の判断をすることができる。
SNRやノイズは、スタート時や環境温度の変化時に悪化するため、ECGや熱流パッド、加速度センサ、環境センサの値を総合して、上記の第1ないし第4のしきい値を決めるとよい。
出力部640は、ユーザーや管理者に、再装着の指示を出したり、洗浄や交換を促したりの通知を行う。部材の交換に関しては、顧客をサポートする部門に通知を出して、サポート部門のアクションを促すこともできる。
さらには、高頻度で再装着が発生する等の不具合がある場合には、サイズの確認やECG電極に水を付ける等、顧客サポートからのサポートを促すこともできる。これらはユーザーの管理者が代行してもよい。
ECG測定部611や熱流測定部612等、各センサ部の動作履歴、特には静止時の履歴を見ることで、前述のように経時変化を判断・予測することができ、これらの情報をユーザー、管理者、顧客サポートへの通知に加味することができる。
1,2,… ECG電極
11(11a,11b) 温度計
110,210 ECG測定部
120,220 R波抽出部
121 信号算出部
122 波除去部
130,230 SNR算出部
131 SNR比較部
140,240 RRI出力部
150,250 周波数解析部
231 SNR・電極間比較部
232 SNR・しきい値比較部
233 重み合成部
234 R波再抽出部
301 ベルト
310 ケース
330 基板
401 ウェアの生地
410 GND配線
411 被覆導体(信号線)
421 ECG電極
423 ばね材
432 断熱材
500(500a,500b,…) 熱流測定部
510 深部温算出部
520 ノイズ算出部
530 ノイズ比較部
531 ノイズ・測定部間比較部
532 ノイズ・しきい値比較部
533 重み合成部
540 深部温出力部

Claims (16)

  1. 生体の体表面から心電信号を取得するECG測定部と、
    上記心電信号に含まれているR波をその特徴から抽出し、R波ピークの位置を特定するR波抽出部と、
    上記R波抽出部によって特定されるR波区間のSNR(信号対ノイズ比)を算出するSNR算出部と、
    上記R波ピークの位置と上記R波区間の上記SNRからR波間隔を求めて出力する出力部とを含み、さらに
    上記R波抽出部により抽出されたR波時刻を用いて各R波の位置を合わせて平均化して上記SNR算出部でのSNRを算出するための信号量を算出する信号算出部と、
    上記ECG測定部にて測定されたノイズを含む心電信号からPQRST等の本来の心電信号を除去する波除去部と、
    上記SNR算出部で上記SNRを算出するために上記波除去部にて抽出されたノイズ波形からノイズ量を求めるノイズ算出部と、
    上記SNR算出部されたSNRと所定のしきい値とを上記R波各区間において比較するSNR比較部と、
    周波数解析部とを備え、
    上記出力部は、上記SNR比較部でSNR<しきい値である区間を除く区間で2つの連続するR波ピークの時刻の差をとってRRIを計算してその計算結果を出力し、上記周波数解析部はRRIの揺らぎを計算して出力することを特徴とする生体信号処理装置。
  2. 上記周波数解析部は不定間隔のままのRRIを使い、正弦波の最小二乗法に基づく周波数解析を行うことを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  3. 上記ECG測定部は、複数のECG電極からの信号を処理することを特徴とする請求項1に記載の生体信号処理装置。
  4. 上記SNR算出部にて算出されたSNRを上記ECG電極間で比較し、最良のSNRを選択するSNR・電極間比較部と、
    上記SNR・電極間比較部にて選択された最良のSNRと所定のしきい値とを比較し、その比較結果を上記出力部に与えるSNR・しきい値比較部と、
    をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  5. 上記ECG測定部にて測定された上記各ECG電極の生波形の各区間ごとに、上記SNR算出部にて算出された当該区間のSNRを乗算するとともに、上記各ECG電極の極性を加算する重み合成部と、
    上記重み合成部で合成された合成波の中からR波を再抽出して上記出力部に与えるR波再抽出部と、
    をさらに備えていることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  6. 上記ECG測定部、上記R波抽出部、上記SNR算出部および上記出力部を含む信号処理回路を内部に有した格納容器としてのケースをさらに備え、上記複数のECG電極の一部は上記ケースの上部に設けられた端子を経由して上記ECG測定部に電気的に接続され、上記複数のECG電極の残部は上記ケースの底面に配置され上記ケース内の引き回し配線を介して上記ECG測定部に接続されることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  7. 上記ケース内に、生体内部と環境との間に流れる熱流を測定する複数の温度計を有する熱流測定部が設けられていることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  8. 上記ケースの底面は絶縁シートによって塞がれており、上記絶縁シートの外面側に2つに分割されたECG電極が所定の間隔をもって配置されているとともに、上記絶縁シートの内面側で上記2つのECG電極間に位置する部位に上記温度計が配置されており、上記各ECG電極の電極面と、それらの間の上記絶縁シートのシート面とが同一平面上に存在していることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  9. 上記絶縁シートの外面側で上記ECG電極が配置される部分は上記ECG電極の厚さ分だけ薄く形成されていることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  10. 生体の上半身に装着される衣類を有し、上記衣類の所定部分に上記ECG電極と生体と環境の間を流れる熱流を測定する熱流パッドとが設けられていることを特徴とする請求項に記載の生体信号処理装置。
  11. 上記熱流パッドは、断熱材とその上面と下面とに配置される2つの温度計とからなる熱流測定手段を備えていることを特徴とする請求項10に記載の生体信号処理装置。
  12. 上記ECG電極は、上記衣類のうちの心電の正電位が顕著な領域に対応する部位と、心電の負電位が顕著な領域に対応する部位とに設けられることを特徴とする請求項10または11に記載の生体信号処理装置。
  13. 上記衣類の生地と上記ECG電極との間には、上記ECG電極と皮膚との接触を保つばね材が配置されていることを特徴とする請求項10に記載の生体信号処理装置。
  14. 上記衣類の生地と上記断熱材との間には、上記下面側の温度計と皮膚との接触を保つばね材が配置されていることを特徴とする請求項11に記載の生体信号処理装置。
  15. 上記断熱材として、平面上に並べられた複数の気泡体を含む気体マットが用いられることを特徴とする請求項11または14に記載の生体信号処理装置。
  16. 上記熱流パッドは上記熱流測定手段を2つ備えているとともに、上記気体マットは上記一方の熱流測定手段用の第1気体マットと上記他方の熱流測定手段用の第2気体マットとに分けられ、上記第1気体マットと上記第2気体マットには、熱伝導率が異なる気体が封入されていることを特徴とする請求項15に記載の生体信号処理装置。
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