以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るアダプタ20が装着された超音波プローブ10の例を表す斜視図である。なお、穿刺術を実施する際、超音波プローブ10は、図2で示されるようにプローブカバー2で覆われる。以下では、図面の簡略化のため、プローブカバー2についての図示を省略する。図1に示される超音波プローブ10は、操作者が超音波プローブ10を把持するための把持部11と、把持部11から略L字に設けられる超音波放射部12とが設けられている。
超音波放射部12は、把持部11が形成される方向と反対の方向に放射面が向くように設けられている。超音波放射部12の内部には、複数の超音波振動子が配列されている。把持部11から略L字に設けられる超音波放射部12の先端には、切欠き部13が設けられている。切欠き部13は、アダプタ20を取り付け可能に形成されている。切欠き部13は、取付領域の一例である。
図3、図4は、図1に示される超音波プローブ10を、それぞれ異なる視点から見た斜視図である。図3に示される超音波プローブ10において、切欠き部13は、第1面131及び第2面132を有する。第1面131は、超音波放射部12の形成方向に沿って延伸するように設けられている。第2面132は、超音波放射部12の形成方向に対して直交方向に延伸し、第1面131と直交するように設けられている。
第1面131には、例えば、円形の凹部131aが設けられている。凹部131aが形成される位置は、第1部材21に設けられる凸部211eの位置と対応付けられている。
第2面132には、例えば、所定の形状の凹部132a,132bが設けられている。凹部132a,132bが形成される位置は、第1部材21に設けられる凸部212c,212dの位置と対応付けられている。
超音波放射部12の端部には、端面14が設けられている。
第1面131の裏側には、図4に示されるように、裏面15が設けられている。裏面15には、凹部15aが形成されている。凹部15aは、幅がアダプタ20のレバー23の幅よりも大きくなるように形成されている。凹部15aが形成される位置は、レバー23が配置される位置に対応する。凹部15aは、形状が、例えば、レバー23に設けられるロック部23cの形状、及びロック部23cの軌道と対応するように形成されている。凹部15aは、超音波プローブ10の切欠き部13の裏側に設けられる、ロック部23cを引っかけるための構成の一例である。
図5は、図1で示されるアダプタ20の斜視図である。図5に示されるアダプタ20は、第1部材21、第2部材22、及びレバー23を備える。第1部材21、第2部材22、及びレバー23は、例えば、射出成型、ブロー成型等が可能な熱可塑性樹脂により設けられる。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリアセタール、又はポリアミド等により設けられる。
図6、図7は、図5に示される第1部材21を、それぞれ異なる視点から見た斜視図である。図6、図7に示される第1部材21は、座部211及び背部212を有する。座部211と背部212とは、略直交するように設けられている。
座部211は、超音波プローブ10の第1面131上に置かれる平面部の一例であり、背部212が設けられる部位から幅が徐々に狭まるように形成されている。幅が狭まった端部には、二股部211a-1,211a-2が設けられている。座部211は、超音波プローブ10の切欠き部13の第1面131よりも若干大きく形成されている。これにより、切欠き部13の第1面131に第1部材21が置かれた際、二股部211a-1,211a-2は、超音波プローブ10の端面14から突出することになる。二股部211a-1,211a-2の側面には、対向するように支持部211b-1,211b-2がそれぞれ設けられている。支持部211b-1,211b-2は、略円柱形状となるように形成されている。支持部211b-1,211b-2は、レバー23の凹部23aでレバー23を回転自在に支持することで、回転軸として働く手段の一例となる。
座部211において、背部212が形成される側の面には、凸部211c,211dが設けられている。凸部211c,211dが形成される位置は、第2部材22に設けられる凹部221g,221hの位置と対応付けられている。
座部211において、背部212が形成される面とは反対側の面には、凸部211eが設けられている。凸部211eが形成される位置は、超音波プローブ10の切欠き部13に設けられる凹部131aの位置と対応付けられている。
背部212には、孔部212aが設けられている。孔部212aは、背部212の長手方向に広くなるように形成されている。孔部212aが形成される位置は、第2部材22の側面部222に設けられる凸部222aの位置と対応付けられている。また、孔部212aの形状は、凸部222aの形状と対応付けられている。
背部212において、座部211が形成される面とは反対側の面には、凸部212c,212dが設けられている。凸部212c,212dが形成される位置は、超音波プローブ10の切欠き部13に設けられる凹部132a,132bの位置と対応付けられている。凸部212c,212dは、例えば、座部211の裏面から離れるにつれて緩やかに幅が広く、高さが高くなるように形成されている。また、凸部212c,212dは、上端部が座部211と平行な平面となるように形成されている。
図8、図9は、図5に示される第2部材22を、それぞれ異なる視点から見た斜視図である。図8、図9に示される第2部材22は、蓋部221及び側面部222を有する。
蓋部221は、側面部222が設けられる部位から幅が徐々に狭まるように形成されている。幅が狭まった端部には、係止め部221aが設けられている。係止め部221aは、傾斜部を備える。傾斜部は、蓋部221の上面側から蓋部221の裏面側に向かって形成される。蓋部221の裏面側は、蓋部221における、後述する第1乃至第4溝部221c~221fが設けられる側である。換言すると、傾斜部は、一端が蓋部221の上面側に位置し、他端が蓋部221の裏面側に位置する。また、傾斜部の一端から他端への方向は、蓋部221の上面に対して側面部222側に傾いている。蓋部221の端部には、係止め部221aを囲むように取っ手部221bが設けられている。
蓋部221の裏面には、第1乃至第4溝部221c~221fが設けられている。第1乃至第4溝部221c~221fは、穿刺針を挿入可能に形成されている。第1乃至第4溝部221c~221fは、形成方向が穿刺針の刺入角度と対応するように形成されている。
蓋部221の裏面には、凹部221g、221hが設けられている。凹部221g、221hが形成される位置は、第1部材21に設けられる凸部211c,211dの位置と対応付けられている。
側面部222には、凸部222aが設けられている。凸部222aが形成される位置は、第1部材21の背部212に設けられる孔部212aの位置と対応付けられている。また、凸部222aの形状は、孔部212aの形状と対応付けられている。
図10、図11は、図5に示されるレバー23を、それぞれ異なる視点から見た斜視図及び図である。図10、図11に示されるレバー23は、凹部23a、突起部23b、ロック部23c、傾斜部23d、アーム部23e、及び係り受部23fを有する。
凹部23aは、図10、図11で表されている面に加え、反対側の面にも設けられている。凹部23aは、第1部材21の支持部211b-1,211b-2よりもわずかに大径に形成されている。レバー23は、凹部23aで、支持部211b-1,211b-2により支持される。レバー23は、凹部23aを中心とする回転運動することが可能となる。
突起部23bは、半円形の平らな形状をしている。突起部23bは、例えば、超音波プローブ10に、第1部材21、第2部材22、及びレバー23が取り付けられた場合、第2部材22の表面よりも先端が高くなるように形成されている。ロック部23cは、超音波プローブ10の裏面15の凹部15aの形状と対応する、丸みを帯びた形状をしている。
傾斜部23dは、突起部23bから凹部23a方向へ向かうにつれ、厚みが増すように形成されている。
係り受部23fは、傾斜部23dの終端に設けられる略矩形状の切欠き部である。係り受部23fと、ロック部23cとは、回転軸となる凹部23aに対して、超音波プローブの端面14及び切欠き部13の第1面131を境界とした反対の位置に設けられる。係り受部23fの形状は、第2部材22の係止め部221aの形状と対応している。凹部23aから係り受部23fの上端までの距離は、第2部材22の係止め部221aの高さと対応付けられている。
アーム部23eは、係り受部23fの裏側から、凹部23aとロック部23cとの間の位置まで、略弧状に湾曲して形成されている。アーム部23eは凹部23aとの間にスペースを設けた形状により、突起部23b、又はロック部23cから受ける力により、たわみが発生する構造になっている。
次に以上のように構成されるアダプタ20を、超音波プローブ10へ装着する際の手順を、図12乃至図15を用いて具体的に説明する。図12乃至図15は、図1におけるA-A断面を表す断面図である。
図12、図13は、超音波プローブ10に第1部材21が仮留めされる際の断面図である。まず、例えば、第1部材21の支持部211b-1,211b-2に、レバー23の凹部23aが嵌め込まれる。これにより、レバー23が第1部材21に回転自在に支持される。
続いて、レバー23を支持する第1部材21が、超音波プローブ10の切欠き部13において予め設定された位置へ置かれる。このとき、例えば、ユーザは、第1部材21の背部212を切欠き部13の第2面132に合わせるように、第1部材21を切欠き部13の第1面131に置く。切欠き部13において凹部132a,132b,131aが形成される位置と、第1部材21において凸部212c,212d,211eが形成される位置とが対応付けられることにより、第1部材21が置かれる位置は一意に決定される。
図13に示されるように、第1部材21が切欠き部13の第1面131上に置かれたとき、第1部材21の二股部211a-1,211a-2は、超音波プローブ10の端面14から突出した状態となる。これにより、レバー23の回転軸が、超音波プローブ10の外側に位置することになり、レバー23の回転自由度はロック部23cが、超音波プローブ10の裏面15の凹部15aと接触するまで妨げられることはない。
図13に示されるように、第1部材21が切欠き部13上に置かれると、ユーザは、レバー23の突起部23bを超音波プローブ10の外側方向へ、レバー23が停止するまで押す。突起部23bが押されると、レバー23は、凹部23aを回転軸とする回転運動をする。レバー23は、レバー23のロック部23cが超音波プローブ10の凹部15aと接触すると回転運動を停止する。レバー23のロック部23cの形状は、例えば、凹部23aを回転軸とする回転運動と接線を共有し、かつ、超音波プローブ10の凹部15aの形状と対応するように形成されている。このため、ロック部23cが凹部15aに到達するまでの間に、ロック部23cと裏面15との間で摩擦が発生することはない。第1部材21を切欠き部13に置き、レバー23のロック部23cを超音波プローブ10の裏面15の凹部15aに接触させることで、第1部材21が超音波プローブ10に「仮留め」される。
図14、図15は、超音波プローブ10に仮留めされた第1部材21に第2部材22が装着される際の断面図である。第2部材22は、第2部材22の蓋部221と超音波プローブ10の第1面131とが、第1部材21の座部211を挟み込むように装着される。
まず、ユーザは、例えば、第2部材22の取っ手部221bを把持し、第1部材21の上方から、第1部材21の孔部212aに対して斜め方向に、第2部材22の凸部222aを挿入する。ユーザは、孔部212aと凸部222aとの接触点を軸とし、取っ手部221bを把持して、第2部材22の蓋部221を、第1部材21の座部211方向へ押し込む。
凸部222aが孔部212aへ挿入された状態で、蓋部221が座部211方向へ押し込まれると、第2部材22の係止め部221aが、レバー23の傾斜部23dをスライドし、レバー23のアーム部23eを超音波プローブ10の外側方向へ押し広げる。
蓋部221が座部211方向へさらに押し込まれると、係止め部221aは傾斜部23dの終端に達し、押し広げられていたアーム部23eが弾性により超音波プローブ10側に戻ってくる。アーム部23eが戻ることで、係止め部221aと、レバー23の係り受部23fとが嵌め合う。このとき、第1部材21の凸部211c,211dは、第2部材22の凹部221g,221hに挿入される。これにより、第1部材21に対する第2部材22の位置が一意に決定される。
図16は、図15においてレバー23にかかる力の例を表す模式図である。レバー23の係り受部23fは、第2部材22の係止め部221aにより、超音波プローブ10の外側方向へ押し込まれる状態となっている。これにより、アーム部23eは、弾性変形をした状態となっている。係止め部221aにより与えられる力はアーム部23eを介して伝播され、凹部23aを回転軸とする回転運動に変換される。この回転運動により、レバー23のロック部23cは、凹部23aを回転軸とする回転運動の接線方向の力で凹部15aの底面を押す。また、この回転運動により、凹部23aからロック部23cに渡る部分は、超音波プローブ10の端面14及び裏面15と強固に密着するようになる。係止め部221aには、係り受部23fを押し込む力の反力として、アーム部23eの弾性により、超音波プローブ10方向への力と、第1部材21の座部211へ押し付ける方向の力とが与えられている。このとき、アーム部23eの弾性変形の量は、ロック部23cにおけるプローブカバーの厚さよりも大きい。
このように、超音波プローブ10に仮留めされた第1部材21に第2部材22が装着されることで、レバー23のロック部23cは超音波プローブ10に押し込まれる。これにより、アダプタ20が超音波プローブ10に対して強固に固定されることになる。超音波プローブ10に接触するレバー23のロック部23cが第2部材22の装着によりさらに押し込まれることで、第1部材21が超音波プローブ10に「本留め」される。
以上のように、上記実施形態では、第1部材21が超音波プローブ10の切欠き部13に置かれた際、座部211の二股部211a-1,211a-2がレバー23を支持するために、超音波プローブ10の端面14から突出する。レバー23は、二股部211a-1,211a-2に設けられる支持部211b-1,211b-2を回転軸として回転自在に支持される。レバー23は、第1部材21が切欠き部13に置かれた際、超音波プローブ10の裏面15に接触可能なロック部23cと、ロック部23cと軸を挟んだ反対側に位置する係り受部23fとを有する。第2部材22は、切欠き部13に置かれた第1部材21の座部211を、超音波プローブ10との間に挟み、係り受部23fと嵌合するように装着される。そして、第2部材22は、第2部材22の装着時、レバー23の回転を介してロック部23cが超音波プローブ10を押す方向へ係り受部23fを押し込むようにしている。これにより、まず、第1部材21がレバー23のロック部23cで超音波プローブ10に仮留めされる。そして、第1部材21に第2部材22が装着されることで、レバー23のロック部23cが超音波プローブ10にさらに押し込まれ、第1部材21が超音波プローブ10に対してより強固に固定されることになる。
このとき、仮留め時に超音波プローブ10に接触したロック部23cは、本留め時に、仮留め時の位置から移動せずに、超音波プローブ10へ押し込む力が与えられる。このため、超音波プローブ10にアダプタ20を装着する際には、ロック部23cと超音波プローブ10との間に摩擦はない。従来の構成では、ユーザは、例えば、レバー端部を、超音波プローブの突起を超えるように押し込むことで、超音波プローブにアダプタを固定させていた。本実施形態では、ロック部23cと超音波プローブ10との間に摩擦はないため、超音波プローブの摩耗を抑えることが可能となり、高耐久化が見込まれる。
また、本実施形態では、超音波プローブ10をプローブカバーで覆い、プローブカバーの上からアダプタ20を装着する場合であっても、ロック部23cとプローブカバーとの間に摩擦はない。そのため、プローブカバーが傷付くことを抑えることが可能となる。
また、本実施形態では、レバー23の係り受部23fが第2部材22により押されることで、ロック部23cが超音波プローブ10を押す力が強まるようになっている。このため、プローブカバーの存在の有無に関わらず、超音波プローブ10にアダプタ20を強固に装着可能となる。
また、ロック部23cとプローブカバーとの間に摩擦は発生しないため、ロック部23cと超音波プローブ10との間に、プローブカバーを傷付けないための構造的なクリアランスを設ける必要がない。クリアランスが不要であるため、超音波プローブ10にアダプタ20を装着させた際、超音波プローブ10と第1部材21とが、密着して固定される。超音波プローブ10と第1部材21とが密着して固定されるため、穿刺針の刺入方向がプローブカバーの存在の有無に関わらず一定になる。
また、本実施形態では、第2部材22が第1部材21に装着されている際、第2部材22の係止め部221aには、レバー23の係り受部23fを押し込む力の反力として、超音波プローブ10方向への力と、第1部材21の座部211へ押し付ける方向の力とが与えられている。そのため、アダプタ20に穿刺針が挿入されている際に、挿入された穿刺針をアダプタ20の取り外し方向へ力をかけた場合であっても、第2部材22の変形を妨げる力が発生し、第2部材22の変形リスクを軽減させることが可能となる。
なお、上記実施形態では、超音波プローブ10の裏面15に凹部15aが設けられる場合を例に説明した。しかしながら、超音波プローブ10の裏面15に凹部15aが必ず設けられる必要はない。凹部15aが設けられていれば段差が生じ、この段差がロック部23cに対する係り受部となり、本留め後の固定強度はより向上する。一方、図17に示されるように、裏面15に凹部15aが設けられていなくても、本留めによってロック部23cが超音波プローブ10へ押し込まれることになるため、プローブカバーを傷付けずに、超音波プローブ10にアダプタを取り付けることが可能となる。
また、上記実施形態では、仮留め及び本留めの固定機構を有するアダプタが穿刺アダプタに適用される場合を例に説明した。しかしながら、仮留め及び本留めの固定機構を有するアダプタが適用されるのは穿刺アダプタに限定されない。例えば、超音波画像と他のモダリティで取得された画像とを同期させて表示する際に、超音波プローブの位置を検出するための位置センサを取り付けるアダプタに適用されても構わない。
続いて、本実施形態に係る超音波プローブ10が取り付けられる超音波診断装置について説明する。
図18は、本実施形態に係る超音波プローブ10が取り付けられる超音波診断装置1の機能構成の一例を表すブロック図である。図1に示される超音波診断装置1は、装置本体30と、超音波プローブ10とを有している。装置本体30は、入力装置40及び表示装置50と接続されている。また、装置本体30は、ネットワークNWを介して外部装置60と接続されている。
超音波プローブ10は、アダプタ20が装着され、例えば、装置本体30からの制御に従い、被検体である生体P内のスキャン領域について超音波スキャンを実行する。超音波プローブ10は、例えば、複数の圧電振動子、圧電振動子に設けられる整合層、及び圧電振動子から後方への超音波の伝搬を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ10は、装置本体30と着脱自在に接続される。
超音波プローブ10は、例えば、複数の超音波振動子が所定の方向に沿って配列された1Dアレイリニアプローブ、複数の圧電振動子がマトリックス状に配列された2Dアレイプローブ、又は圧電振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なメカニカル4Dプローブ等である。
複数の圧電振動子は、装置本体30が有する後述の超音波送信回路31から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生する。これにより、超音波プローブ10から生体Pへ超音波が送信される。超音波プローブ10から生体Pへ超音波が送信されると、送信された超音波は、生体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として複数の圧電素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流又は心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。超音波プローブ10は、生体Pからの反射波信号を受信して電気信号に変換する。
装置本体30は、超音波プローブ10により受信された反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体30は、超音波送信回路31、超音波受信回路32、内部記憶回路33、画像メモリ34、入力インタフェース35、出力インタフェース36、通信インタフェース37、及び処理回路38を有している。
超音波送信回路31は、超音波プローブ10に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路31は、例えば、パルス発生器、送信遅延回路、及びパルサ回路により実現される。パルス発生器は、所定の繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ10から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子毎の遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対して与える。送信方向又は送信方向を決定する送信遅延時間は、内部記憶回路33に記憶されており、送信時に参照される。パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ10に設けられる複数の超音波振動子へ駆動信号(駆動パルス)を印加する。送信遅延回路により各レートパルスに対して与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向が任意に調整可能となる。
超音波受信回路32は、超音波プローブ10が受信した反射波信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路32は、例えば、プリアンプ、A/D変換器、復調器、及びビームフォーマにより実現される。
プリアンプは、超音波プローブ10が受信した反射波信号をチャネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。このとき、プリアンプは、例えば、予め決められた時間応答に従ってゲイン値を変化させる。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をディジタル信号に変換する。復調器は、ディジタル信号を復調することで、ディジタル信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。ビームフォーマは、I信号及びQ信号(以下では、IQ信号と称する)に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。ビームフォーマは、遅延時間を与えたIQ信号を加算する。ビームフォーマの処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。
内部記憶回路33は、例えば、磁気的若しくは光学的記憶媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。内部記憶回路33は、例えば、超音波送受信を実現するためのプログラムを記憶している。また、内部記憶回路33は、診断情報、スキャンシーケンス、診断プロトコル、超音波送受信条件、信号処理条件、画像生成条件、画像処理条件、ボディマーク生成プログラム、表示条件、及び映像化に用いるカラーデータの範囲を診断部位毎に予め設定する変換テーブル等の各種データを記憶している。プログラム、及び各種データは、例えば、内部記憶回路33に予め記憶されていてもよい。また、例えば、非一過性の記憶媒体に記憶されて配布され、非一過性の記憶媒体から読み出されて内部記憶回路33にインストールされてもよい。
また、内部記憶回路33は、入力インタフェース35を介して入力される操作に従い、超音波受信回路32で生成される受信信号、及び処理回路38で生成される各種超音波画像データ等を記憶する。内部記憶回路33は、記憶しているデータを、通信インタフェース37を介して外部装置60等に転送することも可能である。
内部記憶回路33は、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、及びフラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。内部記憶回路33は、記憶しているデータを可搬性記憶媒体へ書き込み、可搬性記憶媒体を介してデータを外部装置60に記憶させることも可能である。
画像メモリ34は、例えば、磁気的記憶媒体、光学的記憶媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等を有する。画像メモリ34は、入力インタフェース35を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを保存する。画像メモリ34に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。
内部記憶回路33、及び画像メモリ34は、必ずしもそれぞれが独立した記憶装置により実現されなくてもよい。内部記憶回路33、及び画像メモリ34が単一の記憶装置により実現されてもよい。また、内部記憶回路33、及び画像メモリ34のそれぞれが複数の記憶装置により実現されてもよい。
入力インタフェース35は、入力装置40を介し、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置40は、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル、及びタッチコマンドスクリーン(TCS:Touch Command Screen)である。入力インタフェース35は、例えばバスを介して処理回路38に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路38へ出力する。なお、入力インタフェース35は、マウス及びキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路38へ出力する回路も入力インタフェースの例に含まれる。
出力インタフェース36は、例えば処理回路38からの電気信号を表示装置50へ出力するためのインタフェースである。表示装置50は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイ等の任意のディスプレイである。出力インタフェース36は、例えばバスを介して処理回路38に接続され、処理回路38からの電気信号を表示装置に出力する。
通信インタフェース37は、例えばネットワークNWを介して外部装置60と接続され、外部装置60との間でデータ通信を行う。
処理回路38は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路38は、内部記憶回路33に記憶されているプログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。処理回路38は、例えば、Bモード処理機能381、ドプラ処理機能382、画像生成機能383、表示制御機能384、及びシステム制御機能385を有している。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってBモード処理機能381、ドプラ処理機能382、画像生成機能383、表示制御機能384、及びシステム制御機能385が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによりBモード処理機能381、ドプラ処理機能382、画像生成機能383、表示制御機能384、及びシステム制御機能385を実現しても構わない。また、各機能を実行可能な専用のハードウェア回路が組み込まれていてもよい。
Bモード処理機能381は、超音波受信回路32から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。具体的には、Bモード処理機能381において処理回路38は、例えば、超音波受信回路32から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、及び対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線(ラスタ)上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
ドプラ処理機能382は、超音波受信回路32から受け取った受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるイメージングROI(Region Of Interest:関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく血流情報に関するデータ(ドプラデータ)を生成する機能である。血流情報は、被検体における血流の平均速度、分散、パワー、又はこれらの組み合わせを含む。生成されたドプラデータは、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
画像生成機能383は、Bモード処理機能381、及び/又はドプラ処理機能382により生成されたデータに基づき、各種超音波画像データを生成する機能である。具体的には、画像生成機能383において処理回路38は、例えば、RAWデータメモリに記憶されているBモードRAWデータに対してRAW-ピクセル変換、例えば、超音波プローブ10による超音波の走査形態に応じた座標変換を実行することで、ピクセルから構成されるBモード画像データを生成する。
また、処理回路38は、例えば、RAWデータメモリに記憶されているドプラRAWデータに対してRAW-ピクセル変換を実行することで、血流情報が映像化されたドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、平均速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又はこれらを組み合わせた画像データである。
表示制御機能384は、画像生成機能383により生成された各種超音波画像データに基づく画像を表示装置50に表示させる機能であり、表示制御部の一例である。具体的には、例えば、表示制御機能384において処理回路38は、画像生成機能383により生成されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、又はこれらの両方を含む画像データに基づく画像の表示装置50における表示を制御する。
表示制御機能384において処理回路38は、例えば、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用画像データを生成する。また、処理回路38は、表示用画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、及びγカーブ補正、並びにRGB変換等の各種処理を実行してもよい。また、処理回路38は、表示用画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等の付帯情報を付加してもよい。また、処理回路38は、操作者が入力装置により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIを表示装置50に表示させてもよい。
システム制御機能385は、超音波診断装置1の入出力、及び超音波送受信等の基本動作を制御する機能である。システム制御機能385において処理回路38は、例えば、入力インタフェース35を介し、各種撮像モードの選択指示を受け付ける。各種撮像モードには、例えば、Bモード、及び血流イメージングモード等が含まれる。処理回路38は、選択された撮像モードによるスキャンを実行するように、超音波送信回路31、及び超音波受信回路32を制御する。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、プローブカバーを傷付けずに、アダプタを超音波プローブに取り付けることができる。
実施形態の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。