JP7270948B2 - 物質検出装置 - Google Patents
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Description
以下、本発明の一実施形態に係る紙デバイス1について説明する。紙デバイス1は、試料液中の被検出物質の濃度を検出する装置である。本装置は、例えば、動物の血液等の検体に含まれる特定の物質を検出するために用いられる。被検出物質としては、抗体との複合体が作成可能な物質であれば、どのような物質であってもよい。例えば、後述の実施例において用いられるプロゲステロン、ビオチンの他、コルチゾール、エストロゲン、テストステロン、プロラクチン、ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)、アフラトキシン、オクラトキシン、パツリン、デオキシニバレノール、ニバレノール等が対象とされてよい。
以下、被検出物質捕捉物質が用いられた紙デバイス1の使用方法について図5を参照しつつ説明する。まず、試料液を調製する(ステップS1)。被検出物質捕捉物質が用いられた紙デバイス1に対する試料液の調製においては、被検出物質-酵素複合体の水溶液を準備する。この水溶液は、あらかじめ設定された所定の濃度及び所定量とする。そして、この水溶液に、検出対象としての被検出物質の水溶液(例えば、被検出物質を含む検体)を所定量、混合する。このように取得した被検出物質-酵素複合体及び被検出物質の水溶液を、必要に応じて発色基質2の水溶液をさらに混合して試料液とする。以下の表2は、被検出物質捕捉物質が用いられた紙デバイス1の使用方法において、試料液の溶質と、捕捉部33に固定された物質と、発色部24及び25にそれぞれ固定された物質とを示す。
以下、抗体捕捉物質が用いられている場合における紙デバイス1の使用方法について説明する。この使用方法は、被検出物質捕捉物質が用いられている場合の使用方法と共通点が多い。この使用方法では、上記ステップS1~S4が実行されるが、各ステップの具体的な内容に違いがある。以下では主に、被検出物質捕捉物質が用いられている場合における紙デバイス1の使用方法との相違点について説明し、共通点については適宜省略する。
以下、上述の実施形態に関する実施例1について説明する。実施例1では、被検出物質としてプロゲステロン(富士フィルム和光純薬社)を用いた。被検出物質捕捉物質には、被検出物質に対する一次抗体として、抗プロゲステロン-3(E)-CMO-BSA抗体(コスモ・バイオ社)を用いた。また、二次抗体として、ウサギ抗プロゲステロン抗体(バイオ・ラッドラボラトリーズ社)を用いた。酵素としてはHRPを、発色基質1としてはTMBZを、発色基質2としてはH2O2を用いた。まず、紙デバイス1を以下の通りに作製した。ソリッドインク式のインクジェットプリンター(ColorQube 8580,ゼロックス社)を用い、図3に示すパターンを濾紙(GEヘルスケア社、ワットマン(登録商標)無灰定量ろ紙 グレード:41 1441-917)に複数形成する。その後、パターンを形成した濾紙を100℃に設定した定常乾燥機に1分30秒間入れることで、濾紙上で固化したソリッドインクを融解し、濾紙中に浸透させる。これにより、親水性領域からなる流路(導入流路51、試料供給部32、テスト側流路52、コントロール側流路53並びに発色部24及び25)の外縁を画定する疎水性領域のパターンを濾紙上に形成する。以下、このように疎水性領域のパターンが形成された濾紙をパターン形成濾紙という。
以下、上述の実施形態に関する実施例2について説明する。実施例2では、被検出物質としてはビオチン(Sigma-Aldrich社)を用いた。抗体捕捉物質には、被検出物質と同一の物質としてビオチンを用いた。酵素としてはHRPを、発色基質1としてはTMBZを、発色基質2としてはH2O2を用いた。まず、紙デバイス1を以下の通りに作製した。実施例2における紙デバイス1の作製方法は、実施例1における紙デバイス1の作製方法と共通点が多いため、以下においては、実施例1における方法との相違点について主に説明する。実施例2においては、BSAが結合したビオチン(以下、BSA-ビオチン複合体という。)を捕捉部対応領域に固定する。BSAが捕捉部対応領域に固定されることによって、ビオチンがBSAを介して捕捉部対応領域に固定される。具体的には、実施例1における二次抗体の捕捉部対応領域への滴下の代わりに、10mg/mLのビオチン-BSA複合体の水溶液0.3μLを捕捉部対応領域へと合計10回滴下する。また、一次抗体の捕捉部対応領域への滴下及びその後の洗浄・静置は行わない。その他については実施例1と同様に紙デバイス1を作製した。次に、この紙デバイス1を用いて、濃度を変えつつ調製したビオチンの試料液の相対発色強度を導出する試験を以下のように実施した。まず、種々の濃度のビオチンの試料液を調製する。各試料液は、被検出物質に対応するビオチンの水溶液と、HRPを結合させた抗ビオチン抗体(Sigma-Aldrich社)の水溶液と、H2O2の水溶液とを混合したものとする。以降、実施例1と同様に各試料液の相対発色強度を導出する試験を行った。この試験において得られたデジタルカメラの撮影結果に基づき、1つの紙デバイス1に形成された4組の発色部24及び25における相対発色強度をコンピュータに算出させた結果が図8に示されている。図8において、横軸はビオチンの当初被検出物質濃度を示し、縦軸はコンピュータの算出値を示す。グラフ中の各点は、各当初被検出物質濃度において、4組の発色部24及び25に関してそれぞれ算出された相対発色強度の平均値を示す。エラーバーは、4組の発色部24及び25に関してそれぞれ算出された相対発色強度のばらつき(±1*標準偏差)を示す。これに対する比較例として、非特許文献1におけるビオチンの試験結果が図9に示されている。この比較例においては、非特許文献1に記載されたシートを紙デバイス1の代わりに用いた他、実施例2と同じ条件で試験を行った。図8においては図9に比べ、当初被検出物質濃度の変化に対する相対発色強度の変化が大きいことが分かる。また、相対発色強度のばらつきが小さい。
以下、上述の実施形態に関する実施例3について説明する。実施例3では、上述の実施例2に準じた内容で紙デバイス1を用いた試験を実施した。併せて、比較例として、紙デバイス1とは一部構成が異なる紙デバイス1’を用いて実施例2に準じた試験を実施した。紙デバイス1’における紙デバイス1との相違点は、連通部22及び23を設けていないことであり、それ以外の紙デバイス1’の構成は紙デバイス1と同じとした。つまり、紙デバイス1’におけるシート20に対応するシートについて、連通部22及び23に対応する領域全体を親水性領域ではなく疎水性領域とした。また、実施例3及び当該比較例においては、ビオチンの当初被検出物質濃度を0ng/mLとし、実施例2と同様に試験を行った。その結果が図10に示されている。図10において、縦軸は4組の発色部24及び25に関する相対発色強度の平均値を示す。エラーバーは、4組の発色部24及び25に関してそれぞれ算出された相対発色強度のばらつき(±1*標準偏差)を示す。図10の棒グラフに示されているように、連通部22及び23を設けた実施例3の場合、相対発色強度が比較例に対して大幅に小さくなった。このことから、連通部22を設けると、捕捉部33における被検出物質及び被検出物質-酵素複合体の捕捉効率が高くなって、発色部24に到達する被検出物質-酵素複合体の量が低下することが分かる。また、図10のエラーバーに示されているように、連通部22及び23を設けた場合、相対発色強度にばらつきが生じにくくなることが分かる。
以上説明した本実施形態によると、発色部25における発色強度に対する相対的な大きさを示す相対発色強度を用いて発色部24における発色強度を評価している。このように、発色部25の発色強度を適切な基準として用いることができるのは、テスト側流路52とコントロール側流路53とが、互いに同じ形状を有しているためである。仮に、これらの形状が互いに同じでないとすると、流路間の形状の違いによって試料液の流れ方に違いが生じるおそれがある。試料液の流れ方に違いが生じると、流れ方の差によって発色に差が出たのか、その他の要因で差が出たのかを切り分けにくい。これに対し、本実施形態では、テスト側流路52の形状とコントロール側流路53の形状とが互いに同じである。このため、流路の形状の違いを要因とする発色強度の違いが生じにくい。したがって、流路の形状以外の要因、つまり、捕捉部33における被検出物質-酵素複合体又は抗体-酵素複合体の捕捉によって発色部24と発色部25の間に生じる発色強度の違いを適切に評価しやすい。なお、流路の形状の違いを要因とする発色強度の違いが生じにくいのは、テスト側流路とコントロール側流路とが同じ形状である場合のみならず、これらの流路が互いに鏡像の関係にある場合にも該当する。
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
2a 親水性領域
2b 疎水性領域
2 積層体
10、20、30 シート
11 導入部
12、13 観察孔
21~23 連通部
24、25 発色部
32、61、71 試料供給部
33、62、72 捕捉部
34、63、73 擬捕捉部
35~37 連通部
51 導入流路
52、66、76 テスト側流路
53、67、77 コントロール側流路
Claims (8)
- 第1発色関与物質と第2発色関与物質との作用に起因して発生する発色の強度に基づいて水溶液中の物質の濃度を検出する物質検出装置であって、
親水性領域と当該親水性領域の外縁を画定する疎水性領域とを有する、複数のシートが積層された積層体を備えており、
前記積層体の親水性領域に、
検出対象である被検出物質と同一の物質が前記第1発色関与物質と結合した第1複合体及び前記被検出物質を含んだ試料液、又は、前記被検出物質をターゲットとする抗体が前記第1発色関与物質と結合した第2複合体及び前記被検出物質を含んだ試料液が供給される試料供給部と、
前記第2発色関与物質が固定されたテスト側発色部及びコントロール側発色部と、
前記被検出物質及び前記第1複合体を捕捉する第1捕捉物質、又は、前記第2複合体を捕捉する第2捕捉物質が固定された捕捉部と、が形成されており、
前記試料供給部と、前記試料供給部から前記テスト側発色部までを結ぶテスト側流路と、前記試料供給部から前記コントロール側発色部までを結ぶコントロール側流路とが、前記複数のシートのうちの1つである第1シートの親水性領域に形成されており、
前記テスト側流路の形状と前記コントロール側流路の形状とが、互いに同じであるか、又は鏡像の関係にあり、
前記複数のシートのうちの1つであり前記第1シート上に積層された別のシートに、前記テスト側流路中の第1親水部と接触した親水性領域からなる第2親水部が形成されており、
前記複数のシートのうちの1つであり前記第1シート上に積層された別のシートに、前記コントロール側流路における前記第1親水部に対応する第3親水部と接触した親水性領域からなる第4親水部が形成されており、
前記第1親水部及び前記第2親水部のいずれか一方が前記捕捉部であり、
前記第1親水部に接触する前記第2親水部と前記第3親水部に接触する前記第4親水部とがあることにより、前記捕捉部における捕捉効率が向上していると共に、前記コントロール側発色部の発色強度値の平均値に対する前記テスト側発色部の発色強度値の平均値の比にばらつきが生じにくくなっていることを特徴とする物質検出装置。
- 前記複数のシートのうちの1つであり前記第1シート上に積層された別のシートに、前記テスト側流路における前記試料供給部とは反対側の端部と接触した親水性領域からなる第5親水部が形成されており、
前記複数のシートのうちの1つであり前記第1シート上に積層された別のシートに、前記コントロール側流路における前記試料供給部とは反対側の端部と接触した親水性領域からなる第6親水部が形成されており、
前記第5親水部が前記テスト側発色部であり、
前記第6親水部が前記コントロール側発色部であることを特徴とする請求項1に記載の物質検出装置。 - 前記第2親水部、前記第4親水部、前記第5親水部及び前記第6親水部が、一体の1シートである第2シートに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の物質検出装置。
- 前記複数のシートのうちの1つであり前記第2シート上に積層された第3シートに、前記テスト側発色部及び前記コントロール側発色部と重なる位置に形成された観察孔と、前記第2親水部及び第4親水部を被覆する疎水性領域と、が形成されており、
前記第2シート及び第3シートが、前記試料供給部へと前記試料液を導入する親水性領域からなる導入流路が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の物質検出装置。 - 前記第1シート、前記第2シート及び前記第3シートが、3つ折りにされた一体の1枚のシートにおける折れ線によって区分された3つの領域に対応することを特徴とする請求項4に記載の物質検出装置。
- 前記テスト側流路及び前記コントロール側流路の少なくとも一部が、前記複数のシートのうちの1つであり前記第1シート上に積層された別のシートの疎水性領域によって被覆されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の物質検出装置。
- 前記テスト側発色部、前記コントロール側発色部及び前記捕捉部のそれぞれを形成する親水性領域が円板の形状を有していることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の物質検出装置。
- 前記積層体の疎水性領域が、疎水性インクの乾燥物を内部に含んでいることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の物質検出装置。
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