JP7267562B2 - 免疫調節作用を有する単球およびその使用方法 - Google Patents

免疫調節作用を有する単球およびその使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する、免疫調節作用を有する単球およびその使用方法に関する。
単球-マクロファージ細胞系列は高い可塑性を有し、環境からのシグナルに応じてその表現型を様々に変化させることが知られている(非特許文献1~3)。このような単球-マクロファージ細胞系列の性質のために、組織損傷または創傷からの回復において、様々な表現型を有するマクロファージが出現すると考えられている。単球は創傷の急性期において創傷組織に移動し、炎症を誘導する一方、創傷の原因が除去された後は、単球から由来するマクロファージが炎症の消散および組織回復に寄与すると考えられている。
しかしながら、そのメカニズムについては完全に理解されていない。例えば、上記創傷からの回復段階における免疫調節性マクロファージの出現機構は、炎症部位における環境シグナルによる炎症性単球の再配向であることが示唆されている(非特許文献4~7)。一方、その機構は、骨髄において新規に出現する免疫調節性マクロファージの炎症部位への補充であるとも考えられている。
このような創傷からの回復機構を理解することは、正常な創傷回復を促進させる医薬または治療法を提供するための基礎となる情報を提供するものであり、その理解を深めることは極めて重要である。
Cell,2014年,Vol.157,pp.832-844 Cell,2016年,Vol.165,pp.668-678 Nat Immunol.,2016年,Vol.17,pp.18-25 J Clin Invest,2012年,Vol.122,pp.787-795 Nat. Rev. Immunol.,2011年,Vol.11,pp.723-737 Immunity,2016年,Vol.44,pp.450-462 Nat Immunol,2016年,Vol.17,pp.34-40
本発明は、免疫調節作用を有する単球の出現機構を明らかとすることを目的とし、より具体的には免疫調節作用を有する単球を同定するための方法、当該単球において特異的に発現する遺伝子を同定すること、また、単離された免疫調節作用を有する単球自体を提供することを目的とする。
さらに、このように単離された免疫調節作用を有する単球を同定するためのマーカー、および生体内で当該免疫調節作用を有する単球を同定することが可能なように遺伝子修飾をされた実験動物を提供することを目的とする。
また、当該免疫調節作用を有する単球の性質に影響を与える化合物のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
上記課題について本発明者らが鋭意研究を進めたところ、Ly6C遺伝子を高発現する単球(Ly6Chigh単球)の一部が、炎症の解消および組織修復に寄与していることを発見した。更なる研究の結果、当該単球は、Ly6C遺伝子と共にYm1遺伝子を発現していることが判明した。より詳細な解析の結果、炎症過程において骨髄において大幅に増加したYm1Ly6Chigh単球は、損傷部位に浸潤し、免疫調節機能および組織回復機能を発揮する。反対に、Ym1Ly6Chigh単球を生体内から減少させると、炎症からの回復が遅延することが明らかとなった。これらの結果は、免疫調節機能および組織回復機能を有するように新たに誘導された単球の一部が、骨髄において産生されることを裏付けている。
これら知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は一態様において以下のものを提供する。
[1]Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する、免疫調節作用を有する単球。
[2]前記免疫調節作用は、炎症抑制作用または創傷治癒促進作用である、前記[1]に記載の単球。
[3]免疫調節作用を有する単球集団を製造する方法であって、
単球集団から、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を選択することを含む、前記方法。
[4]単球集団のなかから免疫調節作用を有する単球を検出する用途に用いられる判定用マーカーであって、
m1タンパク質またはそのホモログに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、前記マーカー。
[5]Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を解析するための実験動物であって、Ym1タンパク質またはそのホモログタンパク質と標識タンパク質が融合した融合タンパク質をコードする遺伝子を有することにより、単球におけるYm1タンパク質またはそのホモログタンパク質の発現を検出することが可能となっている前記実験動物。
[6]Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を解析するための実験動物であって、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を除去し得るように改変されたゲノムを有する前記実験動物。
[7]単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物をスクリーニングする方法であって
(1)前記[1]に記載の単球を含む単球集団に、候補化合物を投与する工程
(2)前記単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を測定する工程
(3)前記候補化合物が、前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を変化させた場合に、前記候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定する工程、
を含む前記方法。
[8]単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物をスクリーニングする方法であって
(1)単球前駆細胞集団に、候補化合物を投与する工程
(2)前記単球前駆細胞集団から単球集団を分化させる工程
(3)前記分化した単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を測定する工程
(4)前記候補化合物が、前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を変化させた場合に、前記候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定する工程、
を含む前記方法。
本発明により、免疫調節作用を有する単球を同定、分離することが可能になり、当該免疫調節作用を有する単球の機能、性質、誘導方法等についてさらなる研究を行うことが可能となる。
また、免疫調節作用を有する単球を同定するために利用できるマーカーの探索、生体内で当該免疫調節作用を有する単球を同定することが可能なように遺伝子修飾をされた実験動物を提供することも可能となる。
さらに、当該免疫調節作用を有する単球を使用し、上記マーカーなどを利用することにより、免疫調節作用を有する単球の機能、性質、誘導に影響を与える化合物のスクリーニング方法等を提供することが可能となる。
炎症後期におけるYm1Ly6Chi単球亜群の増加を示す。リポ多糖類(LPS)刺激後(100μg/マウス)の各時間において、Ym1-Venusマウスにおける末梢血白血球を解析した。ヒストグラム中の数字は、各画分中のYm1-Venus陽性細胞のパーセンテージを示す。薄い色の領域がYm1-Venus陽性マウス、濃い色の領域が野生型マウスのデータを示す。少なくとも2回の独立して行われた実験結果の代表例を示す。図中「Mo」は単球、「Neu」は好中球を意味する(図1B~1Eにて同じ)。 炎症後期におけるYm1Ly6Chi単球亜群の増加を示す。各時間におけるLy6Chi血液単球中のYm1-Venus陽性細胞の動態を示す。データは平均±標準偏差を示す。**はP<0.01、****はP<0.0001、n.s.は有意でないないことを示す。一方向ANOVA解析。n=3。 炎症後期におけるYm1Ly6Chi単球亜群の増加を示す。脾臓由来の白血球中のYm1-Venusの発現を示す。 炎症後期におけるYm1Ly6Chi単球亜群の増加を示す。骨髄由来の白血球中のYm1-Venusの発現を示す。 炎症後期におけるYm1Ly6Chi単球亜群の増加を示す。骨髄由来の白血球中のYm1-Venusの発現を示す。 Ym1Ly6Chi単球が免疫調節表現型を有することを示す。脾臓から分画された単球をエクスビボでLPSにより刺激した(1μg/ml)。培養上清中の各サイトカインの濃度を測定した。n=3。データは平均±標準偏差を示す。*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001、****はP<0.0001、n.s.は有意でないないことを示す。スチューデントTテスト。少なくとも2回の独立して行われた実験結果の代表例を示す(図2Bも同様)。 Ym1Ly6Chi単球が免疫調節表現型を有することを示す。骨髄から分画された単球(4x10個)を、LPS(10μg/マウス)を注入した野生型マウスに養子性移入した。48時間後に、血清サイトカイン濃度を測定した。n=4。 Ym1Ly6Chi単球亜群は結腸炎からの回復において、重要な役割を担うことを示す。結腸におけるYm1-VenusLy6ChiまたはYm1-VenusLy6Chi単球での、各遺伝子のmRNA発現レベルを示す。n=5~7。グラフ中それぞれの記号は各動物を示す。データは平均±平均値の標準誤差(s.e.m.)を示す。*はP<0.05、**はP<0.01、n.s.は有意でないないことを示す。少なくとも2回の独立して行われた実験結果の代表例を示す(図3B~Dも同様)。 Ym1Ly6Chi単球亜群は結腸炎からの回復において、重要な役割を担うことを示す。デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与から8日および10日の時点でDTを腹腔内投与した。各時点における平均体重を平均値の標準誤差(s.e.m.)と共に示す。野生型マウスはn=7、YM1-DTRマウスはn=8。多重比較を伴う双方向ANOVA。 Ym1Ly6Chi単球亜群は結腸炎からの回復において、重要な役割を担うことを示す。DSS投与から12日の時点での直腸の顕微鏡観察結果を示す。野生型マウス(WT)(左)およびYm1-DTRマウス(右)からのヘマトキシリンおよびエオシン染色の結果を示す。スケールバーは100μm。オリジナルの倍率は、10倍(上パネル)および20倍(下パネル)。6匹のマウスから得た画像の代表例を示す。 Ym1Ly6Chi単球亜群は結腸炎からの回復において、重要な役割を担うことを示す。直腸組織におけるmRNA発現レベル(DSS投与から10日の時点)。DSS投与から8日および10日の時点でジフテリア毒素(DT)を腹腔内投与した。n=3/遺伝子型。スチューデントTテスト。 骨髄中のYm1Ly6Chi単球の由来を示す図である。骨髄に対するLPS全身注入後48時間の時点におけるYm1-Venus発現を示す。少なくとも2回の独立して行われた実験結果の代表例を示す。ヒストグラム中の数字は、各分画中のYm1-Venus陽性細胞のパーセンテージを示す。図中「Mo」は単球、「Neu」は好中球を意味する(図4B~4Eにて同じ)。 骨髄中のYm1Ly6Chi単球の由来を示す図である。Ym1-Venusマウス(CD45.2)の骨髄由来の4x10の顆粒球前駆細胞(GP)または1.7x10の共通単球前駆細胞(cMoP)をLPS(10μg/マウス)を注入されたマウスCD45.1野生型コンジェニックマウスに養子性移入した。48時間後に、CD45.2末梢血白血球におけるYm1-Venusの発現を解析した。薄い色の領域がYm1-Venus陽性マウス、濃い色の領域が野生型マウスのデータを示す。 骨髄中のYm1Ly6Chi単球の由来を示す図である。ナイーブYm1-Venusマウスの骨髄由来のCD45.1Ly6Chi単球(5x10個)を、LPS(10μg/マウス)を注入されたマウスCD45.1野生型コンジェニックマウスに移入した。移入後の14~48時間後に、CD45.2末梢血球におけるYm1-Venusの発現を解析した。 骨髄中のYm1Ly6Chi単球の由来を示す図である。Ym1-Venusマウス由来の分画されたcMoPを各サイトカインの存在下で培養した。72時間後に、培養された細胞をフローサイトメトリーで解析した。 骨髄中のYm1Ly6Chi単球の由来を示す図である。全培養細胞の平均(上パネル)およびYm1-Venus陽性細胞の平均を標準偏差と共に示す。n=4.
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は単なる例示であり、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
(定義)
本明細書において、複数の数値の範囲が示された場合、それら複数の範囲の任意の下限値および上限値の組み合わせからなる範囲も同様に意味する。
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。本明細書においては、「同定」、「分離」、「単離」、「純化」といった用語も、同様の意味で使用されることがある。
本明細書において、「創傷」とは、外的な暴力、機械的作用または感染性疾患に起因して、代表的には組織の分裂または膜(例えば皮膚)の断裂を伴う器官または組織の傷害、損傷、および感染性、あるいは非感染性炎症の結果、正常な組織構造を喪失した状態等を広範に指す。「創傷」は、裂創、擦過創、裂離、切り傷、銃創、透過創傷、穿刺創、挫傷、血腫、裂傷および/または挫滅創を含むが、これらに限定されない。
当該器官または組織は、例えば、皮膚および/またはその下にある組織、粘膜、または他の上皮、例えば、角膜上皮であってもよい。皮膚は、例えば、表皮、真皮および皮下組織、例えば、口腔粘膜であってもよい。
創傷は、開放創および閉鎖創に分類され得る。
開放創とは、組織、例えば、皮膚または粘膜が裂けたか、切れたかまたは刺された創傷のタイプのことを指す。開放創は、その創傷を引き起こした物体に従ってさらに分類され得る。開放創のタイプとしては、例えば、清浄な鋭い刃をした物体(例えば、メス、剃刀またはガラス破片)によって引き起こされる切開または切創;いくらか鈍い外傷によって引き起こされる変則的な裂傷様の創傷である裂傷;粗面に滑り落ちることによって引き起こされることが多い、皮膚の最上層(表皮)がこすり落ちた表層性の創傷である擦過創(擦過傷);皮膚または粘膜を穿刺する物体(例えば、爪または針)によって引き起こされる刺創;皮膚または粘膜に突き刺され、抜き出されるメスなどの物体によって引き起こされる貫通創;銃弾、または身体に向かって衝突するかもしくは身体を通過する同様の発射体によって引き起こされる銃創(例えば、進入部位におけるものおよび脱出部位におけるもの)が挙げられる。
閉鎖創とは、例えば、鈍力外傷によって引き起こされた、組織(例えば、皮膚または粘膜)が破壊されない創傷のタイプのことを指す。閉鎖創のタイプとしては、例えば、皮膚または粘膜の下の組織を損傷する鈍力外傷が原因の挫傷または打撲傷;血液を皮膚下または粘膜下に集める、血管に対する損傷が原因の血腫または血液腫瘍;長時間にわたって多大なまたは極端な量の力がかかったことが原因の挫滅傷;組織を破壊する外傷の結果である急性または外傷性の創傷;およびしばしば、組織の循環または他の全身的なサポートが不十分であることによってその組織が機能しなくなり崩壊するとき、創傷に至る比較的緩徐なプロセスが原因の慢性創傷(例えば、圧迫潰瘍、静脈性潰瘍、口腔潰瘍、消化性潰瘍または糖尿病性潰瘍)が挙げられる。そして、感染は、創傷部位を制し得、慢性膿瘍になる。その感染が臨界点を超えると、その感染は、局所的に広がり得るか、または全身性(敗血症)になり得る。
本発明に関する具体的な創傷として、以下の多様な種類の創傷が挙げられるが、これらに限定されない:外科的創傷;外傷性創傷;放射線損傷性創傷;毒物による上皮壊死性創傷;感染性創傷;腫瘍性創傷;全層創傷;一部の層の創傷;および熱傷性創傷、ならびに、多様な型の潰瘍から生じる創傷、例えば、皮膚潰瘍、角膜潰瘍、動脈閉塞性潰瘍、連続的な圧力により誘導される褥瘡および糖尿病性潰瘍、熱傷性潰瘍、傷害性潰瘍、放射線性潰瘍、薬物により誘導される潰瘍、手術後潰瘍、炎症性潰瘍、胃腸管の潰瘍、単純潰瘍および他の型の血管障害性潰瘍、ならびに慢性(難治性)潰瘍。
本明細書において、「創傷治癒」は組織、例えば、皮膚または粘膜が損傷後にそれ自体を修復する過程を意味する。正常な皮膚では、表皮および真皮は、外部環境に対して防護壁を形成して、定常状態の平衡で存在する。その防護壁が破壊されると、創傷治癒の生理学的プロセスが直ちに発動する。本明細書において、「創傷の治癒」、「創傷修復」、「創傷の修復」という用語は、「創傷治癒」と同様の意味で用いられる。
創傷治癒は、当業者に公知の方法で評価、測定することが可能であり、例えば、創傷の面積の収縮、創傷の閉鎖率、閉鎖速度および/または血管の浸潤などのパラメーターを評価することにより測定することができる。
本明細書において、「免疫調節」および「免疫調節作用」とは、免疫系の活性レベルにおける変化を意味する。好ましくは、本願発明の免疫調節作用を有する単球は、炎症反応を解消するように免疫系の活性レベルを変化させる。
単球の免疫調節作用は、公知の方法で確認することができる。例えば、免疫細胞の分泌する炎症性(例えばIL-6、IL-12、TNFα)または抗炎症性サイトカイン(例えばIL-10)の分泌に与える影響を調べることで確認することができる。また、炎症モデル動物に対して当該単球を移入することで生じる生理学的反応、例えば、体重変化や組織の外観変化などに基づいて確認することもできる。
本明細書において、特定の遺伝子の「ホモログ」は、該特定の遺伝子のヌクレオチド配列、または該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列と特定の相同性を有する実体を意味する。ここで、「相同性」という用語は、「同一性」と同じように用いられ、より具体的には、当業者に周知のアラインメントアルゴリズムを用いて2つの遺伝子のヌクレオチド配列またはこれらのコードするタンパク質のアミノ酸配列を整列させた後に、これら2つの配列間で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の割合をいう。
特定の遺伝子の「ホモログ」は、当該遺伝子のコードするタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも75、80、81、85または90%の相同性を有し、好ましくは少なくとも95、96、97、98または99%の相同性を有する。相同性はまた、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基の観点から考慮してもよい。
上記アライメントには、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(Devereuxら、1984 Nuc.Acids Research 1 p387)、BLASTパッケージ(Ausubelら、1999 Short Protocols in Molecular Biology、第4版、第18章)、FASTA(Altschulら、1990 J.Mol.Biol.403~410)、DNASISTM(Hitachi Software)等のコンピュータプログラムを使用できるが、これらに限定されない。
本明細書において、抗体とある化合物が「結合する」、「反応する」、「反応性を示す」、「反応性を有する」、あるいは抗体がある化合物を「認識する」と表現する場合、本発明の分野で通常使用される意味を含み、いずれも同義で用いる。抗体とある化合物とが「結合する」か否かの確認は、当業者に周知の抗原固相化ELISA法、競合ELISA法、サンドイッチELISA法などにより行うことができるほか、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)の原理を利用した方法(SPR法)などにより行うことができる。SPR法は、Biacore(登録商標)の名称で市販されている、装置、センサー、試薬類を使用して行うことができる。
本明細書において、本発明の抗体と、ある化合物が「反応しない」とは、本発明の抗体とある化合物とが実質的に反応しないことをいう。「実質的に反応しない」とは、例えば、抗原固相化ELISA法において、当該化合物の添加によって、抗体と固相化抗原の結合が実質的に影響を受けないことを意味する。上記抗原固相化ELISA法以外の当業者に周知の方法・手段によっても「実質的に反応しない」ことを確認できる。
本明細書において、抗体が「特異的に反応する」ことは、抗体が検出可能に抗原上に提示されたエピトープに反応する能力であって、一方でその他の抗原との検出可能な反応性が比較的小さいか実質的に反応性が検出されないことをいう。例えば、抗体が特定の抗原に「特異的に反応する」場合、当該抗体は当該抗原に反応する一方、他の抗原には反応しない。好ましい態様において、抗体が特定の抗原に「特異的に反応する」場合、例えば抗原固相化ELISA法において固定化された当該抗原と当該抗体の相互作用が遊離の当該抗原によって阻害される一方で、他の遊離抗原によっては阻害されない。例えば、上記抗原固相化ELISA法による阻害を遊離抗原のIC50で表した場合、当該特異的な抗原のIC50に対して、非特異的な抗原のIC50は、10倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、1000倍、10000倍であってもよい。
本明細書において、「抗体」は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合で相互に連結された2つの重鎖(H)と2つの軽鎖(L)を含む免疫グロブリン分子を意味する。各重鎖は、重鎖の変更可能領域(「HCVR」又は「VH」)及び重鎖の定常領域(CH、CH及びCHドメインを含む)を含む。各軽鎖は、軽鎖の変更可能領域(「LCVR」又は「VL」)及び軽鎖の定常領域(CL)を含む。VH及びVL領域は、更に、相補性決定領域(CDR)と命名される超変異性の領域に分割され、フレームワーク(FR)と命名される多く保存できる領域に散在され得る。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRを含み、アミン末端からカルボキシ末端に次の順で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の変更可能領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。用語「抗体」は、また、抗体の全ての遺伝子組替え体、例えば、原核生物で発現する抗体、グリコシル化されていない抗体を含む。
また、Padlan,FASEB J.1995,Vol.9,pp.133-139、Vajdos et al.J.Mol.Biol.,2002,Vol.320,pp.415-428に示されるように、実際にはCDR残基の一部のみが抗原に接触することが知られており、抗原に接触しないCDR残基は、ChothiaのCDRの外側に存在するKabatのCDRの領域から、分子モデリングにより、または経験的に特定できる。CDR又はその一つ又は複数の残基が除去される場合、それは、普通は、別のヒト抗体配列又はそのような配列のコンセンサスにおいて対応する位置を占めるアミノ酸で置換される。CDR及びアミノ酸内で置換する位置は、また、経験的に選択できる。経験的置換は保存的又は非保存的置換であってもよい。
本明細書において、抗体の「抗原結合フラグメント」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又はそれ以上のフラグメントを意味する。抗体の「抗原結合フラグメント」内に包含される結合フラグメントの非限定的な例は:(i)VL、VH、CL及びCHドメインより成る1価のフラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド橋により結合された2つのFabフラグメントを含む2価のフラグメントである、F(ab′)フラグメント;(iii)VH及びCHドメインより成るFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインより成るFvフラグメント;(v)VHドメインより成るdAbフラグメント(Ward et al.,1989,Nature,Vol.341,pp.544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);及び(vii)合成リンカーで、場合により、結合されてもよい2つ又はそれ以上の単離されたCDRの組合せ;を含む。また、単一鎖Fv(scFv)として知られるように、遺伝子組み換え法を用いて、合成リンカーによりVL及びVH領域を対に形成する単一タンパク質鎖として作ることもできる(Bird et al.,Science,1988,Vol.242,pp.423-426、Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.85,pp.5879-5883)。また、「抗原結合フラグメント」は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合された結合ドメインポリペプチド;(ii)ヒンジ領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域;及び(iii)CH2定常領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域;を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質であってもよい。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を用いて得られる。
本発明に使用可能な抗体又はその抗原結合フラグメントは、鳥、哺乳類を含むいかなる動物起源であってもよい。好ましくは、抗体又はフラグメントは、ヒト、チンパンジ、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、又はウサギ)、ニワトリ、シチメンチョウ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ、又はイヌ起源である。本発明の抗体は、ある種から誘導された抗体の定常領域が、他種から誘導された抗原結合サイトと組み合わされたキメラ分子を含む。更に、本発明の抗体は、非ヒト種(例えば、マウス起源)から誘導された抗体の抗原結合サイトと、ヒト起源の定常領域とフレームワーク領域を組合せたヒト化分子を含む。
本発明の抗体は、当該抗体を発現するハイブリドーマ、または、遺伝子組み換えにより当該抗体を発現するホスト細胞から得ることができる。ホスト細胞として、例えば、CHO細胞、リンパ球細胞、大腸菌などの細菌細胞、及び酵母などの真菌細胞を用いることができる。
また、本発明の抗体は、遺伝子組み換え技術を用いて遺伝子導入された非ヒト動物又は植物において製造することができる。
(Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する免疫調節作用を有する単球)
Ym1は、骨髄細胞系列(myeloid cell linage)
において発現することが知られており、代替的活性化M2マクロファージのマーカーとして一般的に使用されている(Nat.Rev.Immunol.,2003,Vol.3,pp.23-35)。
Ym1遺伝子のホモログは、Ym1遺伝子のコードするタンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも75、80、81、85または90%の相同性を有するものであってよい。当該ホモログは、好ましくは少なくとも95、96、97、98または99%の相同性を有する。当該ホモログはまた、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基の観点から考慮され得る。
本発明における免疫調節作用を有する単球は、ヒトおよび非ヒト動物を含む様々な動物、特に哺乳動物由来の単球であり得る。当該非ヒト哺乳動物は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等のげっ歯類であってもよく、好ましくはマウスである。
単球が免疫調節作用を有することは、公知の方法、例えば、免疫細胞の分泌する炎症性(例えばIL-6、IL-12、TNFα)または抗炎症性サイトカイン(例えばIL-10)の分泌に与える影響を調べることや、炎症モデル動物に対して当該単球を移入することで生じる生理学的反応、例えば、体重の変化や組織の外観変化などに基づいて確認することができる。
(免疫調節作用を有する単球集団を製造する方法)
本発明において、免疫調節作用を有する単球集団を製造する際には、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を選択する。ここで、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を選択する際には、例えば当該遺伝子のコードするタンパク質と、標識タンパク質を融合した融合タンパク質をコードする遺伝子を利用することができる。当該遺伝子は、CRISPR/Cas9システムなどの公知のシステムを利用することにより、ゲノム上の当該遺伝子を置換することで単球細胞または単球前駆体細胞に導入することができる。当該標識を確認することでYm1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を選択し得る。
当該標識としては、様々な蛍光タンパク質の遺伝子が利用可能であり、例えば、GFP、GFPの改変体、例えばEGFP、hrGFP(アジレント社)、mCherry(クロンテック社)、mKate2(Wako)、AmCyan、ZsGreen、AsRedp、ZsYellow、mOrange、CFP-、mYFP、mRFP、mBFP、mPlum、Venus等を含むが、これらに限定されない。複数の標識タンパク質を使用することができ、その数は適宜調節することができる。
上記Ym1を標識化された単球を選択する方法を、Ym1を標識化されていない単球に適用することにより、標識化されていない、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を選択し、免疫調節作用を有する単球集団を製造する方法に使用することができる。
(単球集団のなかから免疫調節作用を有する単球を検出する用途に用いられる判定用マーカー)
本発明の単球集団のなかから免疫調節作用を有する単球を検出する用途に用いられる判定用マーカーは、抗Ym1タンパク質またはそのホモログに特異的に結合する抗体を含む。
当該抗体は、これを検出できるようにするために結合される標識をさらに含みうる。当該標識としては当業者に公知のものを使用することができ、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子であってもよい。これらの標識は、当業者に公知の方法で抗体に結合される。
(Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を解析するための実験動物)
本発明のYm1遺伝子またはそのホモログを発現する単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を解析するための実験動物として、例えばYm1遺伝子に、標識タンパク質をコードする遺伝子を融合した融合遺伝子を導入した動物を用いることができる。
当該遺伝子改変動物は、当業者においては一般的に公知の遺伝子工学技術により作製することができる。例えば、上記融合遺伝子をES細胞株に導入し、相同組み換えを生じた細胞株を選抜し、得られたES細胞株をマウス胚盤葉にインジェクションしキメラマウスを得たのち、このキメラマウスを交配させることで、上記融合遺伝子を含む細胞からなる遺伝子改変動物を得ることができる。また、例えば、CRISPR/Cas9システムなどの公知のシステムを利用することにより、発生過程の細胞または成体動物の造血幹細胞などのゲノム上の遺伝子を置換することで、一部に上記融合遺伝子を含む細胞を含む遺伝子改変動物を得ることもできる。
(Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を除去し得るように改変されたゲノムを有する前記実験動物)
上述の遺伝子改変実験動物は、さらにYm1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を除去し得るように改変されていてもよい。
このために、特定の薬剤に対して感受性をもたらすタンパク質をコードする遺伝子を、遺伝子改変実験動物のゲノム上のYm1遺伝子またはそのホモログに融合させることにより、当該薬物を用いて遺伝子改変実験動物からYm1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を除去することが可能となる。
例えば、ゲノム上のYm1遺伝子またはそのホモログがジフテリア毒素受容体(DTR)をコードする遺伝子と融合するように改変された遺伝子改変実験動物に対して、ジフテリア毒素(DT)を投与することにより、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を実験動物から除去することが可能となる(蛋白質・核酸・酵素、2009年、Vol.5,No.5,pp.614-620)。
また、上記遺伝子改変には、テトラサイクリン等の薬剤とCre/loxPを用いたシステム、CRISPR/Cas9システムなど、他の当業者に公知のシステムを用いることができる。
また、上記遺伝子改変は、薬剤によって除去されるように改変される他、当該細胞内の他の遺伝子の発現に伴って除去されるように改変されていてもよい。例えば、特定の組織、細胞種、発生段階において特異的に発現する遺伝子の発現に伴って除去されるように改変することで、これらの組織、細胞種、発生段階において特異的にYm1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を除去することが可能となる。このような目的のために、例えば、Cre/loxPシステムにおいて、Cre遺伝子を発現するような改変を組み合わせることができる。
(単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物をスクリーニングする方法)
本発明の単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物をスクリーニングする方法は、ある実施態様において、(1)Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する、免疫調節作用を有する単球集団に、候補化合物を投与し、(2)前記単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を測定し、(3)前記候補化合物が、前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を変化させた場合に、前記候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定する工程を含む。
Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する、免疫調節作用を有する単球集団は、上述の免疫調節作用を有する単球集団を製造する方法により取得することができる。
候補化合物としては、低分子化合物、タンパク質、核酸、その他のポリマー、金属その他の無機化合物等、特に限定されず様々なものを用いることができる。候補化合物として、細胞の断片や細胞自体を用いてもよい。
単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を測定する際には、公知の方法を使用することができ、例えば、フローサイトメトリーなどを用いることができる。
前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合の変化を評価する際には、例えば、前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上増加または減少させた場合に、当該候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定することができる。Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を増加させる化合物は、単球の炎症抑制作用を抑制する化合物、または創傷治癒促進作用を促進する化合物として同定され得る。
この際、当該変化について統計学的有意性を検討することが望ましい。このような統計学的有意性の検討に際しては、当業者に公知の方法を利用することができる。
本発明の単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物をスクリーニングする方法は、別の実施態様において、(1)単球前駆細胞集団に、候補化合物を投与し、(2)前記単球前駆細胞集団から単球集団を分化させ、(3)前記分化した単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を測定し、(4)前記候補化合物が、前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を変化させた場合に、前記候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定する工程を含む。
上記単球前駆細胞集団は、公知の方法により、骨髄組織等から得ることができる。例えば、上記単球前駆細胞集団として、共通単球前駆細胞(cMoP)を用いることができるが、これに限定されない。このような単球前駆細胞集団は、細胞表面マーカーなどを利用して、公知の方法により取得することができる。
前記単球前駆細胞集団から単球集団を分化させる際には、公知の方法を利用することができ、例えば、単球前駆細胞集団をCSF、G-CSF、IL-3等のサイトカインの組み合わせの存在下で一定期間培養することにより、単球集団を分化させることができる。
前記候補化合物は、単球前駆細胞集団から単球集団を分化させる工程の前に投与されてもよいし、分化させる工程の途中で投与されてもよい。
前記分化した単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合の変化を評価する際には、例えば、前記分化した単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、30%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上増加または減少させた場合に、当該候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定することができる。分化した単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を増加させる化合物は、単球の炎症抑制作用を抑制する化合物、または創傷治癒促進作用を促進する化合物として同定され得る。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(試薬)
リポ多糖類(LPS;大腸菌、O111:B4)は、Sigmaから購入した。7-Amino-Actinomycin D(7-AAD)、PerCP/Cy5.5 ストレプトアビジン、ブリリアントバイオレット421ストレプトアビジン、およびFOXP3 フィックス/パーマ用緩衝液セットはBiolegendから購入した。4’、6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)はDojindoから購入した。Diff-Quik染色セットはシスメックスから購入した。エチジウムモノアジドブロマイド(EMA)はThermo Fisher Scientificから購入した。
(抗体)
下記の市販されている抗体を使用した。
Figure 0007267562000001

また、後述する方法で作成した抗Ym1抗体、クローン4-4D7を用いた。
(マウス)
CLEA Japan、Inc.からC57BL/6J(7~12週齢)マウスを得た。全てのマウスを特定の病原体のない条件下(SPF)で飼育した。
(磁気選別とセルソーターを用いた細胞分離)
単球単離のために、Ym1-Venusマウス由来の骨髄細胞を、抗CD16/32抗体とインキュベートした後、ビオチン化抗Lin(CD4、CD8、NK1.1、B220、およびter119)抗体カクテルとインキュベートし、その後、抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi、Germany)とインキュベートした。
Lin細胞は、磁気選別(AutoMACS Pro、Miltenyi)によって枯渇された。Lin細胞を抗CD115抗体および抗Ly6C抗体で染色し、次いでセルソーター(SH800、SONY、日本)により分画化した。
GPおよびcMoP単離は、Blood,2015,Vol.125,pp.1452-1459に記載される確立された方法にわずかな変更を加えて実施した。Ym1-Venusマウス由来の骨髄細胞を、ビオチン化抗Lin抗体(CD4、CD8、NK1.1、B220、Ter119、Sca-1、CD11b、およびGr-1)カクテル、続いて抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi、Germany)と共にインキュベートした。Lin細胞を磁気ソーティング(AutoMACS Pro、Miltenyi)によって枯渇した。Lin細胞を抗c-Kitで染色し、抗CD16/32、抗Ly6C、および抗CD115抗体とブリリアントバイオレット421ストレプトアビジンにより染色し、セルソーター(SH800、ソニー、日本)により分画した。GP;Linc-KitCD16/32Ly6CCD115、MP;Linc-KitCD16/32Ly6CCD115
(定量的RT-PCR(qRT-PCR)およびRNA-Seqのための全RNA抽出)
選別された細胞からの全RNAを、RNeasy MiniまたはMicro Kit(QIAGEN、The
Nederlands)、FavorPrep全RNA抽出カラム(Favrgen、Taiwan)またはTRIzol LS(サーモフィッシャーサイエンティフィック、マサチューセッツ州)を用いて、製造者のプロトコールに従って行った。
qRT-PCRのために、ReverTra Ace(TOYOBO、Japan)を用いてcDNAを合成した。qRT-PCRTHUNDERBIRD SYBR qPCR Mix(TOYOBO、Japan)を用いてcDNA上で実施した。発現レベルを18sリボソームRNA(rRNA)に対して正規化した。
(RNA-Seq分析)
選別した細胞を溶解し、それらの全RNAをTRIzol LS試薬で抽出した。全RNAの40ナノグラムを、イルミナ多重シーケンシングのためのSureSelect Strand-specific RNA Library Prep Kit(Agilent Technologies、CA)を用いたRNA-Seq分析のためのDNAライブラリー調製に供した。配列決定は、HiSeq 1500シーケンサー(Illumina)により50bpのシングルエンド読み出しモードにて行った。読み取り配列のマッピング後のさらなる解析には、百万分読み出しあたりのエキソン1キロベースあたりのフラグメント数(FPKM)を使用した。
(インビトロ単球刺激)
選別された単球を、LPS(大腸菌、O111:B4,1μg/ ml、Sigma、MO)によって24時間刺激した。培地中のIL-6、IL-12、TNFα、IL-10、およびYm1の濃度を、ELISA MAX標準キット(IL-6、IL-12、TNFα、およびIL-10、BioLegend、CA)または発明者が常法に従って準備したELISAシステム(Ym1)で定量した。
(インビトロ単球刺激)
選別された単球を、LPS(大腸菌、O111:B4,1μg/ ml、Sigma、MO)によって24時間刺激した。培地中のIL-6、IL-12、TNFα、IL-10、およびYm1の濃度を、ELISA MAX標準キット(IL-6、IL-12、TNFα、およびIL-10、BioLegend、CA)または発明者が常法に従って準備したELISAシステム(Ym1)で定量した。
(デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎)
マウスに2.0%DSS(MW 36,000-50,000、MP Biomedicals、CA)を飲料水に加えて5日間経口投与し、その後の通常の飲料水を与えた。DSSの投与から12日間毎日または隔日で体重をモニターした。いくつかの実験では、DSS投与の8日後および10日後に、DTの25ng/g体重のジフテリア毒素(DT)を腹腔内注射した。好中球の枯渇のために、50μgの抗Ly6G抗体(クローン1A8、Bio X Cell、NH)を、8および10日目に静脈注射した。
(抗Ym1モノクローナル抗体の作製)
抗Ym1抗体を作製するために、アルメニアのハムスター(Charles River Japan)に対して、HEK293T細胞で産生され、TiterMax Gold(TiterMax、GA)中で乳化した組換えYm1-FLAGタンパク質を足底に皮下投与して免疫した。リンパ節細胞を、PEG1500(Roche、Germany)を用いてNSObcl2骨髄腫細胞(PNAS,1994, Vol.91,pp.5548-5551)に融合した。ハイブリドーマ細胞を、10%FBS、HAT(Sigma、MO)および1%BM-Condimed(Roche、Germany)を含むD-MEM中で選択した。ハイブリドーマ上清をELISAにかけ、組換えYm1-FLAGタンパク質を特異的に検出するハイブリドーマを選択した。ハイブリドーマ培地中のハムスターIgGをnProtein A Sepahrose 4 Fast Flow(GE Healthcare)で精製した。
(マウスYm1 ELISAの確立)
96ウェルのハーフ・エリア・プレート(Greiner、Germany)を、PBS中の10μg/mlのハムスター抗Ym1抗体(上述の方法により作成されたクローン10G10-1)により4℃で一晩被覆した。ブロッキング緩衝液(5%スキムミルク(MEGMILK SNOW BRAND、日本)および0.2%Tween(Wako、Japan)を含むPBS)で1時間ブロッキングした後、ブロッキング緩衝液で10倍に希釈した単球培養液を各ウェルに加え、室温で2時間インキュベーションを行った。次いで、プレートを25μg/mLのビオチニル化されたハムスターIgG抗Ym1抗体(本発明者らの実験室で生成されたクローン7D4)で2.5時間インキュベートし、HRP-ストレプトアビジンで30分間インキュベーションした。最後に、基質溶液(TMB Microwell Peroxidase Substrate System, KPL, MD)を各ウェルに添加して、30分過酸化を誘導した。2M硫酸で反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(BioRad、CA)で450nmでの光学密度を測定した。
(共通単球前駆細胞(cMoP)分化のアッセイ)
ナイーブYm1-Venusマウスの骨髄由来の選別されたcMoP(96ウェルプレート中3000細胞/ウェル)を様々なサイトカインの組み合わせ(10%M-CSF(CMG14-12培地)、50ng/ml G-CSF(Chugai、Japan)、20ng/ml組換えマウスGM-CSF(BioLegend、CA)または10ng/mlのIL-3(Peprotech、NJ))により培養した。細胞を10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Wako)、および10mM HEPES添加したD-MEM中で培養した。72時間培養した後、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。
(統計分析)
データは、分散分析(ANOVA)に続く多重比較、または、Prism(GraphPad Software、CA)を用いた、対応のある、または、対応のないt検定によって解析された。P値<0.05の場合に有意であると考えた。
Ym1-DTRマウスの作製
Ym1-DTRノックインマウスの作製は、基本的にJ Clin Invest,2007年,Vol.117,pp.2268-2278およびNat Biotechnol.,2001年,Vol.19,pp.746-750に記載されている方法に従って実施した。簡単に説明すると、ターゲティングベクターを生成するために、Chil3遺伝子の-4.0~+5.0kbpの領域転写開始部位をpBluescript II SK(+)ベクター(Stratagene)にサブクローニングした。次に、エキソン1に内因性ATG開始部位を含む15bp断片を、ポリA尾部を有するヒトDTR(HB-EGF)cDNAに置き換えた。相同組換え体の選択を可能にするために、ヒトDTR遺伝子の下流に、FRTに隣接するNeoカセットをクローニングした。ランダムな組込み体に対して選択するために、5’アームの上流にチミジンキナーゼ遺伝子を挿入した。
Ym1-DTRマウスを作製するために、B6JN/1ES細胞に対して、線状化ターゲティングベクターをエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。G-418およびガンシクロビル耐性クローンを、サザンブロット分析により相同組換えについてスクリーニングし、ここで、ターゲティングベクターの外側に位置する284塩基のDIG標識化DNAプローブを用いた。当該スクリーニングに、DIG DNA Labelingキットおよび検出キット(Roche)を用いた。
次に、生殖系列キメラマウスを凝集法により作製した。高いES細胞寄与を有するキメラマウスをC57BL/6Jマウスと交配させて、+/Ym1DTRマウスを作製した。作成した+/Ym1DTRマウスをC57BL/6Jマウスと5世代以上戻し交配し、野生型(+/+)およびヘテロ接合Ym1-DTR(+/Ym1DTR)同腹仔を解析に使用した。
全身性Ym1細胞枯渇のために、Ym1-DTRマウスに5ng/g体のジフテリア毒素(DT)(Calbiochem)を腹腔内注射した。
Ym1-Venusマウスの作製
Ym1-Venusターゲティングベクターを作製するために、GeneArtシームレスPLUSクローニングおよびアセンブリキット(Invitrogen)を用いて、Ym1-DTRターゲティングベクターのヒトDTR断片をVenus遺伝子で置換した。Ym1-Venusマウスを作製するために、B6J ES細胞にターゲティングベクターをエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。相同組換え効率を改善するためにCRISPR-Cas9媒介遺伝子ノックイン戦略を使用した。G-418およびガンシクロビル耐性クローンを、サザンブロット分析により相同組換えについてスクリーニングし、ここで、ターゲティングベクターの外側に位置する284塩基のDIG標識化DNAプローブを用いた。当該スクリーニングに、DIG DNA Labelingキットおよび検出キット(Roche)を用いた。
次に、生殖系列キメラマウスをインジェクション法により作製した。高いES細胞寄与を有するキメラマウスをC57BL/6Jマウスと交配させて、+/Ym1Vinusマウスを作製した。作成した+/Ym1 VinusマウスをC57BL/6Jマウスと5世代以上戻し交配し、野生型(+/+)およびヘテロ接合Ym1-Vinus(+/Ym1Vinus)同腹仔を解析に使用した。
単球、マクロファージおよび樹状細胞の調製
リンパ節から単細胞懸濁液を調製するために、腋窩および膝窩リンパ節を取り出して10μg/mL DNA分解酵素I(Worthington、NJ)および750μg/ mlコラゲナーゼII(Sigma-Aldrich)を添加したHBSS中にて、30分間37℃でインキュベートした。消化された組織を133μm細孔ナイロンメッシュ(AS ONE、Japan)で濾過した。
大腸固有層(LP)の消化は、Nat. Protoc. 2007年, Vol. 2, pp.2307-2311に記載される確立された方法を一部変更した方法で行った。
大腸全体を取り出し、PBSで数回洗い流して糞便を除去し、縦に開けた。2~3cm片の結腸断片を、2%FBSおよび20mM EDTAを添加した、Ca2+およびMg2+を含まないHBSS、pH7.2中にて、15分間37℃でインキュベートした。組織をPBSで洗浄してEDTAを洗い流し、スパチュラを滑らせることで、残った上皮層を穏やかに除去した。組織を5mm長の断片に裁断し、2%FBS、0.5mg/mLコラゲナーゼI(Wako、Japan)、0.5mg/ml DNA分解酵素I(Worthington、NJ)、1%Dispase(BD Biosciences、CA)および10 mM HEPES(ナカライ、ジャパン)を添加したRPMI中にて、40分間37℃でインキュベートした。消化された断片を70μmのセルストレーナー(BD Biosciences、CA)を通して濾過した。
肝細胞の消化は、Methods Cell Biol,1976年,Vol.13,pp29-83に記載される確立された方法に従って実施した。
肝臓灌流培地(Gibco)を用いて3mL/分の流速で肝臓を8分間灌流した。次いで、肝臓を、5mg/mLコラゲナーゼIV(Gibco)を添加した基本灌流溶液(136mM NaCl、5.4mMKCl、5mM CaCl 2、0.5mM NaHPO2HO、0.42mM NaHPO12HO、10mM HEPES pH7.5、5mMグルコース、および4.2mM NaHCO)によって3ml/分の流速で8分間還流した。消化された肝臓を非被覆の10cmのディッシュ(Corning)に入れ、高グルコースD-MEM(ダルベッコ改変イーグル培地;Wako)中で外科用ナイフを用いて小片に細断した。ピペッティングにより分散化した細胞を、70μmのセルストレーナーに通過させた。100xg2分間の遠心の後、上清を新しいチューブに移し、細胞ペレットが目視できなくなるまで遠心を繰り返した。最終上清を300×gで5分間遠心した。ペレット中の赤血球(RBC)を2mLのBD Pharm Lyse(BD Biosciences、NJ)で溶解し、室温で80秒間インキュベートし、FACS緩衝液(0.5%BSA/2mM EDTA/PBS)で希釈した。
脾臓から単細胞浮遊液を調製するために、脾臓を100mU/mLのコラゲナーゼD(Roche Diagnostics)で洗浄し、細かい鉗子でかき混ぜて分離し、400mU/mLコラゲナーゼDにて、45分間37℃でインキュベートして消化した。
肺細胞懸濁液の調製のために、肺を取り出し、1mmの長さに細かく刻み、0.2U/mLのLiberase TL(Roche、Germany)および10μg/mL DNA分解酵素I(Worthington、NJ)を添加したHBSS中にて、25分間37℃でインキュベートした。
骨髄から単細胞懸濁液を調製するために、両側脛骨および大腿骨を氷冷FACS緩衝液で洗浄した。細胞を133μmのナイロンメッシュ(AS ONE、Japan)または70μmセルストレーナーを通して濾過した。RBCを2mLのBD Pharm Lyse(BD Biosciences、NJ)を用いて、室温で80秒間インキュベートし、次いでFACS緩衝液で希釈した。Nat. Immunol.,2013,Vol.14,pp.821-830およびNature,2000,Vol.404,pp.193-197に記載される確立された基準により、骨髄の前駆細胞を、FACSによって解析した。
末梢血単核細胞の分析のために、末梢血を2mMのEDTAを含むPBS中に懸濁した。次に、RBCを10mLのBD Pharm Lyse(BD Biosciences、NJ)により、室温で80秒間インキュベートすることで溶解した。
LPS誘導炎症におけるLy6Chigh単球中のYm1-Venus陽性細胞の動態
LPS注射は炎症性サイトカインの血清濃度を増加させた。注目すべきことに、炎症の後記において、Ym1-VenusLy6Chigh単球亜群が劇的に増加することが見いだされた(図1A~C)。Ly6Chigh単球におけるYm1-Venus単球亜群は、LPS投与後、24時間の時点において10%増加し、48時間の時点において約50%増加した。この末梢血および脾臓で観察された結果と符合して、骨髄中のLy6Chigh単球におけるYm1-Venus単球亜群も劇的に増加した(図1D)。これらのYm1-VenusLy6Chigh単球は、Flt3CD11c単球亜群に属し、ナイーブマウスの骨髄でも同様のことが観察された(図1E)。
定量PCR解析により、Ym1-VenusLy6Chigh単球におけるYm1のmRNA発現量増加が確認された。
Ym1-Venus陽性単球の機能
Ym1-Venus陽性単球およびYm1-Venus陰性単球の機能的な差異を確認するために、LPSで刺激されたマウスの骨髄から生成された各単球群を、エクスビボでLPSにより再刺激した。図2A(G)に示すように、Ym1-Venus陽性単球は、Ym1-Venus陰性単球よりも低い炎症誘発性サイトカインのレベルを示す一方で、より高いレベルの抗炎症性サイトカインIL-10を産生する。単球はエクスビボで再刺激されない限り、検出可能なレベルのサイトカインを産生しなかった。マウスにYm1-VenusLy6Chigh単球を移植すると、LPS注入後の血清IL-6濃度が減少したことから、Ym1-VenusLy6Chigh単球が免疫調節表現型を有していることが示された(図2B(H))。
また、Ly6Chigh単球は、大腸炎の大腸に浸潤後にのみ炎症性徴候を示すことが報告されている。我々は、Ym1-Venus陽性単球は、炎症性結腸において、Ym1-Venus陰性と比較して低レベルのIL-6および高レベルのIL-10を発現することを確認した(図3A(F))。我々はまた、Ym1-Venus陽性単球は炎症反応の解消および組織修復に重要な役割を担うことが報告されている(Immunity,2011,Vol.35,pp.223-235)Slpi遺伝子を高発現していることを発見した(図3A(F))。
Ym1-DTRマウスを用いた機能解析
炎症結腸におけるYm1-Venus陽性単球の増殖時期と遺伝子発現プロファイルに基づいて、我々は炎症結腸においてこれらの細胞が炎症の解消および組織再生に関与していると考えた。
これを証明するために、我々はYm1遺伝子座にDTR遺伝子を有するマウスを(Ym1-DTRマウス)を作製した。ナイーブマウスへのジフテリア毒素(DT)の投与は、好中球のみを除去し、単球を除去しなかった。しかしながら、LPSの投与から48時間後にDTを投与すると、単球の割合が4%から2%に減少し、Ym1-VenusLy6Chigh単球が除去されたことが示唆された。
驚くべきことに、腸炎症からの回復期においてYm1細胞が消失すると、体重回復が遅延した(図3B(G))。組織学的検査によっても、Ym1陽性細胞が無い場合、炎症反応が長引き、組織修復が遅延することが確認された(図3C(H))。組織における炎症性サイトカインレベルも、Ym1陽性細胞の除去により増加した(図3D(I))。
上記修復遅延が好中球の除去に起因する可能性を排除するために、別途抗Ly6G抗体を用いて好中球を選択的に除去したが、結腸炎症からの回復にはイ影響がなかった。
これらの結果は、Ym1陽性細胞がマウス結腸炎症モデルにおいて、炎症の解消および損傷組織の回復に寄与することを証明している。
Ym1Ly6Chigh単球の由来
我々は次に、Ym1Ly6Chigh単球が由来する前駆細胞の種類を探索した。我々は、LPS投与マウスの骨髄中において、cMoPの少数の集団がYm1-Venusを発現することを見出した(R2画分の6%、図4A)。このことは、Ym1細胞がcMoPに由来することを示唆している。CD45ナイーブYm1-Venusマウス骨髄から、cMoPあるいはGPを、LPS投与を受けたD45.1コンジェニックマウスに移入し、48時間後にレシピエントマウスの血液細胞を解析した。図4Bに示すように、cMoPの移入はYm1Ly6Chigh単球の発生を誘導したのに対して、GPの移入はこれを誘導しなかった。
また、Ym1-Venus陰性単球を、LPS投与を受けたマウスに移入しても、Ym1-VenusLy6Chigh単球は生じないことも発見した(図4C)。このことは、Ym1-VenusLy6Chigh単球はYm1-Venus陰性単球に由来するのではなく、Ym1-Venus陰性単球となるようにプログラムされた単球前駆細胞に由来することを示唆している(図4C)。

Claims (7)

  1. Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する、炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を有する単球。
  2. 免疫調節作用を有する単球集団を製造する方法であって、
    単球集団から、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を選択することを含む、前記方法。
  3. m1タンパク質またはそのホモログに特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを用いて、単球集団のなかから免疫調節作用を有する単球を検出する方法
  4. Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を解析するための実験動物であって、Ym1タンパク質またはそのホモログタンパク質と標識タンパク質が融合した融合タンパク質をコードする遺伝子を有することにより、単球におけるYm1タンパク質またはそのホモログタンパク質の発現を検出することが可能となっている前記実験動物。
  5. Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する細胞を除去し得るように改変されたゲノムを有する実験動物の、Ym1遺伝子またはそのホモログを発現する単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を解析するための使用。
  6. 単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物をスクリーニングする方法であって
    (1)請求項1に記載の単球を含む単球集団に、候補化合物を投与する工程
    (2)前記単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を測定する工程
    (3)前記候補化合物が、前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を変化させた場合に、前記候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定する工程、
    を含む前記方法。
  7. 単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物をスクリーニングする方法であって
    (1)単球前駆細胞集団に、候補化合物を投与する工程
    (2)前記単球前駆細胞集団から単球集団を分化させる工程
    (3)前記分化した単球集団においてYm1遺伝子を発現する細胞の割合を測定する工程
    (4)前記候補化合物が、前記Ym1遺伝子を発現する細胞の割合を変化させた場合に、前記候補化合物を単球の炎症抑制作用または創傷治癒促進作用を調節する化合物として同定する工程、
    を含む、前記方法。
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