JP7267358B2 - 偏光板 - Google Patents

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Description

本発明は、偏光板に関する。
携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター(PC)等の画像表示装置には、カメラ等の内部電子部品が搭載されているものがある。近年、スマートフォン、タッチパネル式の情報処理装置の急速な普及により、カメラ性能等のさらなる向上が望まれている。また、画像表示装置の形状の多様化および高機能化に対応するために、部分的に偏光性能を有する偏光板が求められている。これらの要望に応えるために、化学処理して形成された非偏光部が所定部分に形成された偏光子が提案されている(例えば、特許文献1および2)。
韓国公開特許第10-2015-0086159号公報 特開2015-215609号公報
しかし、このような偏光子は化学処理された部分(すなわち、非偏光部)に凹みが生じており、当該偏光子を用いて偏光板を構成すると、当該凹みに気泡が存在する場合がある。
本発明は上記の新たに認識された課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、所定部分に非偏光部としての薄肉部を有する偏光子を備え、当該薄肉部に気泡を含まない偏光板を提供することにある。
本発明の実施形態による偏光板は、非偏光部である薄肉部を有する偏光子と、該偏光子の少なくとも一方の面に接着層を介して貼り合わせられた保護層と、を有する。該接着層は活性エネルギー線硬化型接着剤で構成されており、該接着層の接着剤が該薄肉部の凹部を充填している。該偏光子の該薄肉部以外の部分における該接着層の厚みは2.0μm以上であり、該薄肉部の凹みの深さは0.3μm~0.5μmである。
本発明によれば、非偏光部としての薄肉部を有する偏光子を含む偏光板において、偏光子と保護層とを接着する接着層の厚みを最適化することにより、当該薄肉部に気泡を含まない偏光板を実現することができる。気泡は画像表示装置のカメラ部において使用者に認識されやすいので、気泡の存在は、実質的な性能に対する影響よりも、画像表示装置の商品価値を顕著に低下させるという問題がある。したがって、本発明により気泡の発生が防止されることによって、偏光板(結果として、画像表示装置)の商品価値を著しく高めることができる。
本発明の1つの実施形態による偏光板の概略平面図である。 図1の偏光板の要部概略断面図である。 本発明の別の実施形態による偏光板における偏光子の概略斜視図である。 本発明の実施形態による偏光板の製造方法における偏光子と第1の表面保護フィルムとの貼り合わせを説明する概略斜視図である。 本発明の実施形態による偏光板の製造方法における非偏光部の形成を説明する概略図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。なお、見やすくするために、各図の縮尺および比率は対応しない場合がある。また、各図における各層の厚みの比率等は実際と異なっている場合がある。
A.偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による偏光板の概略平面図であり、図2は、図1の偏光板の要部概略断面図である。偏光板100は、所定の位置に薄肉部12を有する偏光子10と、偏光子10の一方の面に接着層20を介して貼り合わせられた保護層30と、を有する。薄肉部12は、図示例のように、代表的には偏光子の一方の面側の表面が凹んだ凹部14を有する。代表的には図示例のように、保護層30は偏光子10の少なくとも凹部14側に貼り合わせられている。必要に応じて、偏光子のもう一方の側に別の接着層を介して別の保護層(図示せず)が貼り合わせられていてもよい。本発明の実施形態においては、薄肉部12(凹部14)は、実質的に気泡を含まない。本明細書において「実質的に気泡を含まない」とは、黒色部を背景として偏光板における薄肉部を目視した場合に気泡が認識されないことをいう。目視により気泡が認識されない状態とは、好ましくは直径30μm以上、より好ましくは直径20μm以上の気泡が存在しない状態であり得る。1つの実施形態においては、偏光板100は、保護層30と薄肉部12との間に実質的に気泡を含まないようにして、保護層30と偏光子10とが接着層20を介して貼り合わせられている。
B.偏光子
B-1.偏光子の全体構成
偏光子10は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルムで構成されている。偏光子10は、上記のとおり、所定の位置に薄肉部12を有する。薄肉部12は、上記のとおり、代表的には偏光子の一方の面側の表面が凹んだ凹部14を有する。薄肉部12は、代表的には非偏光部であり得、1つの実施形態においては、偏光子の他の部分よりも二色性物質の含有量が低い低濃度部であり得る。したがって、本明細書においては、説明すべき事項に応じて、薄肉部を低濃度部または非偏光部と称する場合がある。
偏光子の厚み(薄肉部以外の部分の厚み)は、代表的には8μm以下であり、好ましくは6μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは4μm以下である。一方、偏光子の厚みは、好ましくは0.5μm以上であり、より好ましくは1μm以上である。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、所定の厚みの接着層を採用することにより、薄肉部(凹部)における気泡の発生を実質的に防止することができる。さらに、このような厚みであれば、優れた耐久性と光学特性とを有する偏光子が得られ得る。また、厚みが小さいほど、非偏光部が良好に形成され得る。例えば化学処理による脱色により非偏光部を形成する場合に、処理液(代表的には、塩基性溶液のような脱色液:後述)と偏光子との接触時間を短くすることができる。具体的には、より短時間で非偏光部を形成することができる。さらに、樹脂フィルムの厚みを薄くすることにより、凹部の深さを小さくすることができ、その結果、凹部が視認される不具合を抑制することができる。
凹部14の深さは、好ましくは0.50μm以下であり、より好ましくは0.45μm以下であり、さらに好ましくは0.40μm以下である。一方、凹部14の深さは、好ましくは0.30μm以上であり、より好ましくは0.35μm以上である。なお、本明細書において「凹部の深さ」は、凹部の最も深い部分の深さをいう。
偏光子(非偏光部を除く)は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子(非偏光部を除く)の単体透過率(Ts)は、好ましくは39%以上、より好ましくは39.5%以上、さらに好ましくは40%以上、特に好ましくは40.5%以上である。なお、単体透過率の理論上の上限は50%であり、実用的な上限は46%である。また、単体透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値であり、例えば、顕微分光システム(ラムダビジョン製、LVmicro)を用いて測定することができる。偏光子の偏光度(非偏光部を除く)は、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.93%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
B-2.樹脂フィルム
樹脂フィルムとしては、偏光子として用いられ得る任意の適切な樹脂フィルムを採用することができる。樹脂フィルムは、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%~100モル%であり、好ましくは95.0モル%~99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%~99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~4500、さらに好ましくは1500~4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
樹脂フィルムに含まれる二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で、または、二種以上組み合わせて用いられ得る。好ましくは、ヨウ素が用いられる。例えば化学処理による脱色により非偏光部を形成する場合に、樹脂フィルム(偏光子)に含まれるヨウ素錯体が適切に還元されるので、例えばカメラ部に使用する際に適切な特性を有する非偏光部を形成することができるからである。
B-3.薄肉部(あるいは低濃度部または非偏光部)
薄肉部12は、上記のとおり、代表的には偏光子の一方の面側の表面が凹んだ凹部14を有する。凹部14は、例えば、偏光子(偏光子中間体)の一方面側のみから脱色液を作用させることにより形成され得る。一方面側のみに凹部が形成され得ることで、外観に対する影響をさらに抑制することができる。本発明の実施形態においては、凹部14は、実質的に気泡を含まない。
薄肉部(非偏光部)12は、1つの実施形態においては、偏光子の他の部位よりも二色性物質の含有量が低い低濃度部とされている。このような構成によれば、機械的に(例えば、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット等を用いて機械的に抜き落とす方法により)、非偏光部が形成されている場合に比べて、クラック、デラミ(層間剥離)、糊はみ出し等の品質上の問題が回避される。また、低濃度部は二色性物質自体の含有量が低いので、レーザー光等により二色性物質を分解して非偏光部が形成されている場合に比べて、非偏光部の透明性が良好に維持される。このような低濃度部は、代表的には、化学処理による脱色(例えば、塩基性溶液との接触による脱色:後述)により形成され得る。
上記低濃度部の二色性物質の含有量は、好ましくは1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.2重量%以下である。低濃度部の二色性物質の含有量がこのような範囲であれば、低濃度部に所望の透明性を十分に付与することができる。例えば、画像表示装置のカメラ部に低濃度部を対応させた場合に、明るさおよび色味の両方の観点から非常に優れた撮影性能を実現することができる。一方、低濃度部の二色性物質の含有量の下限値は、通常、検出限界値以下である。なお、二色性物質としてヨウ素を用いる場合、ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析で測定したX線強度から、予め標準試料を用いて作成した検量線により求められる。
他の部位における二色性物質の含有量と低濃度部における二色性物質の含有量との差は、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。含有量の差がこのような範囲であれば、所望の透明性を有する低濃度部を形成することができる。
上記低濃度部は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が3.6重量%以下であり、好ましくは2.5重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以下であり、さらに好ましくは0.5重量%以下である。低濃度部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量がこのような範囲であれば、後述する塩基性溶液(脱色液)との接触により形成された低濃度部の形状を良好に維持することができる(すなわち、優れた寸法安定性を有する低濃度部を実現することができる)。当該含有量は、例えば、蛍光X線分析により測定したX線強度から予め標準試料を用いて作成した検量線により求めることができる。このような含有量は、後述する塩基性溶液との接触において、接触部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより実現され得る。
非偏光部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは75%以上、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、低濃度部が所望の透明性を有する。その結果、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう偏光板を配置した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。さらに、当該透過率が高いほど、厚みが小さい偏光子における本発明による気泡抑制の効果が顕著となり得る。厚みが小さい偏光子であっても透過率が高いほど凹部の深さが大きくなり、気泡が発生しやすくなるからである。
図示例では、小円形の非偏光部12が偏光子10の上端部中央部に形成されているが、非偏光部の配置、形状、サイズ等は、適宜、設計され得る。例えば、搭載される画像表示装置のカメラ部の位置、形状、サイズ等に応じて設計される。具体的には、搭載される画像表示装置の表示画面に非偏光部が対応しないように設計される。
非偏光部12の平面視形状は、偏光子が用いられる画像表示装置のカメラ性能に悪影響を与えない限りにおいて、任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形が挙げられる。後述のF-2項で説明する表面保護フィルムの貫通孔の形状を適切に設定することにより、所望の平面視形状を有する非偏光部を形成することができる。
C.接着層
接着層は、接着剤で構成される接着剤層であってもよく、粘着剤で構成される粘着剤層であってもよい。好ましくは、接着剤層である。硬化前の接着剤は流動性を有するので、塗布により容易に偏光子の凹部に流入し得る。その結果、凹部における気泡の発生を良好に防止することができる。さらに、接着剤は粘着剤に比べて接着力が高いので、得られる偏光板の耐久性に優れるという利点を有する。加えて、接着剤を用いることにより、上記気泡の発生の防止と薄型化とを両立することができる。
接着剤層を構成する接着剤としては、任意の適切な接着剤が用いられ得る。好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられ得る。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、活性エネルギー線の照射によって硬化し得る接着剤であれば、任意の適切な接着剤が用いられ得る。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、例えば、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、ラジカル硬化型、カチオン硬化型、アニオン硬化型など必要に応じて選択することができ、例えば、ラジカル硬化型とカチオン硬化型のハイブリッドなど、適宜組み合わせて使用することも可能である。
ラジカル硬化型接着剤としては、例えば、硬化成分として、(メタ)アクリレート基や(メタ)アクリルアミド基などのラジカル重合性基を有する化合物(例えば、モノマーおよび/またはオリゴマー)を含有する接着剤が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/メタクリルをいう。
ラジカル硬化型接着剤の具体例としては、例えば、硬化性成分として、SP値が29.0(kJ/m1/2以上32.0以下(kJ/m1/2であるラジカル重合性化合物(A)、SP値が18.0(kJ/m1/2以上21.0(kJ/m1/2未満であるラジカル重合性化合物(B)、およびSP値が21.0(kJ/m1/2以上23.0(kJ/m1/2以下であるラジカル重合性化合物(C)と、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(D)とを含有し、組成物全量を100重量%としたとき、前記ラジカル重合性化合物(B)を25~80重量%含有する。なお、本明細書において「組成物全量」とは、ラジカル重合性化合物に加えて、各種開始剤や添加剤を含む全量を意味するものとする。
ラジカル重合性化合物(A)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が29.0(kJ/m1/2以上32.0以下(kJ/m1/2である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(A)の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリルアミド(SP値29.6)、N-メチロールアクリルアミド(SP値31.5)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(B)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が18.0(kJ/m1/2以上21.0(kJ/m1/2未満である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(B)の具体例としては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート(SP値19.0)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(SP値19.2)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SP値20.3)、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(SP値19.1)、ジオキサングリコールジアクリレート(SP値19.4)、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート(SP値20.9)などが挙げられる。なお、ラジカル重合性化合物(B)としては市販品も好適に使用可能であり、例えばアロニックスM-220(東亞合成社製、SP値19.0)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製、SP値19.2)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製、SP値20.9)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製、SP値20.3)、SR-531(Sartomer社製、SP値19.1)、CD-536(Sartomer社製、SP値19.4)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(C)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が21.0(kJ/m1/2以上23.0(kJ/m1/2以下である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(C)の具体例としては、例えば、アクリロイルモルホリン(SP値22.9)、N-メトキシメチルアクリルアミド(SP値22.9)、N-エトキシメチルアクリルアミド(SP値22.3)などが挙げられる。なお、ラジカル重合性化合物(C)としては市販品も好適に使用可能であり、例えばACMO(興人社製、SP値22.9)、ワスマー2MA(笠野興産社製、SP値22.9)、ワスマーEMA(笠野興産社製、SP値22.3)、ワスマー3MA(笠野興産社製、SP値22.4)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)それぞれのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)がいずれも60℃以上であると、接着剤層のTgも高くなり、耐久性が特に優れたものとなる。その結果、偏光子のヒートショッククラックの発生を防止することができる。ここで、ラジカル重合性化合物のホモポリマーのTgとは、ラジカル重合性化合物を単独で硬化(重合)させたときのTgを意味する。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、薄肉部への流入性を考慮した場合、低粘度であることが好ましいため、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(D)も低粘度であることが好ましい。低粘度であって、かつ接着剤層の硬化収縮を防止できるアクリル系オリゴマーとしては、重量平均分子量(Mw)が15000以下のものが好ましく、10000以下のものがより好ましく、5000以下のものが特に好ましい。一方、硬化物層(接着剤層)の硬化収縮を十分に抑制するためには、アクリル系オリゴマー(D)の重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることが特に好ましい。アクリル系オリゴマー(D)を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これら(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、組成物全量を100重量%としたとき、ラジカル重合性化合物(B)を25~80重量%含有する。さらに、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、組成物全量を100重量%としたとき、前記ラジカル重合性化合物(A)を3~40重量%、前記ラジカル重合性化合物(C)を5~55重量%、前記アクリル系オリゴマー(D)を3~20重量%含有することが好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーなどのポリマーあるいはオリゴマー;重合開始剤(例えば、光重合開始剤);重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料;フェノチアジン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどの重合禁止剤が挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に選択され得る。
活性エネルギー線硬化型接着剤およびその硬化方法の具体例は、例えば、特開2012-144690号公報および特開2014-232126号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化前の粘度は、好ましくは100mPa・S以下であり、より好ましくは50mPa・S以下である。粘度がこのような範囲であれば、接着剤が塗布時に凹部に良好に流入し得る。その結果、硬化後の接着剤により凹部が隙間なく充填され、気泡の発生が良好に防止され得る。なお、粘度は低ければ低いほど好ましく、粘度の下限は例えば10mPa・Sである。
接着層の厚みは、好ましくは2.0μm以上である。理論的には明らかではないが、実用的に許容可能な接着力を有する厚みにおいては、接着層の厚みが厚くなるほど凹部の気泡の発生が抑制され、2.0μm以上の厚みとすることにより、凹部が気泡を実質的に含まないようにすることができる。このような臨界的な効果は、薄肉部(非偏光部)を有する偏光子を用いた偏光板における偏光子薄肉部の気泡を除去するために試行錯誤を行って初めて得られた知見であり、予期せぬ優れた効果である。なお、厚みが2.0μm以上であれば、厚みを分厚くしても気泡防止効果は変わらない。接着層の厚みの上限は、コスト、製造時のハンドリング性、光学特性等の観点から、例えば4.0μmである。
D.保護層
保護層30は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
保護層30には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。言い換えれば、保護層30の表面にハードコート層、反射防止層、アンチグレア層等の表面処理層が形成されていてもよい。表面処理層は、例えば、偏光板の加湿耐久性を向上させる目的で透湿度の低い層であることが好ましい。ハードコート層は、偏光板表面の傷付き防止などを目的に設けられる。ハードコート層は、例えば、アクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を表面に付加する方式などにて形成することができる。ハードコート層としては、鉛筆硬度が2H以上であることが好ましい。反射防止層は、偏光板表面での外光の反射防止を目的に設けられる低反射層である。反射防止層としては、例えば、特開2005-248173号公報に開示されるような光の干渉作用による反射光の打ち消し効果を利用して反射を防止する薄層タイプ、特開2011-2759号公報に開示されるような表面に微細構造を付与することにより低反射率を発現させる表面構造タイプが挙げられる。アンチグレア層は、偏光板表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に設けられる。アンチグレア層は、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式、透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて表面に微細凹凸構造を付与することにより形成される。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
保護層30の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm~500μm、さらに好ましくは5μm~150μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
E.偏光板のその他の構成
偏光板100は、目的に応じて任意の適切な光学機能層をさらに有していてもよい。光学機能層の代表例としては、位相差フィルム(光学補償フィルム)が挙げられる。例えば、偏光子10の保護層30と反対側に位相差フィルムが配置され得る(図示せず)。位相差フィルムの光学特性(例えば、屈折率楕円体、面内位相差、厚み方向位相差)は、目的、画像表示装置の特性等に応じて適切に設定され得る。例えば、画像表示装置がIPSモードの液晶表示装置である場合には、屈折率楕円体がnx>ny>nzである位相差フィルムおよび屈折率楕円体がnz>nx>nyである位相差フィルムが配置され得る。位相差フィルムが上記別の保護層を兼ねてもよい。なお、「nx」はフィルム面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」はフィルム面内で遅相軸と直交する方向の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
ここまで、偏光板が枚葉状である実施形態について説明してきたが、別の実施形態においては、本発明の偏光板は長尺状であってもよい。上記枚葉状の偏光板は、長尺状の偏光板を所定のサイズまたは形状に裁断することにより、または長尺状の偏光板から切り出すことにより得られ得る。以下、長尺状の偏光板における偏光子について簡単に説明する。
図3は、長尺状の偏光子の概略斜視図である。長尺状の偏光子16は、代表的には図3に示すようにロール状に巻回可能である。偏光子16は、長尺方向および/または幅方向に所定の間隔で(すなわち、所定のパターンで)配置された非偏光部(薄肉部)12を有する。非偏光部12の配置パターンは、目的に応じて適切に設定され得る。代表的には、非偏光部12は、偏光子16(実質的には、偏光板)を所定サイズの画像表示装置に取り付けるために所定サイズに裁断(例えば、長尺方向および/または幅方向への切断、打ち抜き)した際に、該画像表示装置のカメラ部に対応する位置に配置されている。したがって、1つの長尺状偏光子16から1つのサイズの偏光子のみを裁断する場合には、非偏光部12は、代表的には、長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔で配置され得る。このような構成であれば、画像表示装置のサイズに合わせた偏光子の所定サイズへの裁断の制御が容易であり、歩留まりを向上させることができる。さらに、裁断された枚葉状の偏光子における非偏光部の位置のばらつきを抑制することができる。なお、「長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔」とは、長尺方向の間隔が等間隔であり、かつ、幅方向の間隔が等間隔であることを意味し、長尺方向の間隔と幅方向の間隔とが等しい必要はない。例えば、長尺方向の間隔をL1とし、幅方向の間隔をL2としたとき、L1=L2でもよく、L1≠L2であってもよい。1つの長尺状偏光子16から複数のサイズの偏光子を裁断する場合には、長尺方向および/または幅方向における非偏光部12の間隔を裁断すべき偏光子のサイズに応じて変更することができる。例えば、非偏光部12は、長尺方向に実質的に等間隔で配置され、かつ、幅方向に異なる間隔で配置されてもよく;長尺方向に異なる間隔で配置され、かつ、幅方向に実質的に等間隔で配置されてもよい。長尺方向または幅方向において非偏光部が異なる間隔で配置される場合、隣接する非偏光部の間隔はすべて異なっていてもよく、一部(特定の隣接する非偏光部の間隔)のみが異なっていてもよい。また、偏光子16の長尺方向に複数の領域を規定し、それぞれの領域ごとに長尺方向および/または幅方向における非偏光部12の間隔を設定してもよい。このように、長尺状の偏光子において目的に応じた任意の適切な配置パターンで非偏光部を形成することができる。偏光子における非偏光部の配置パターンの詳細は、例えば特開2016-27392号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
実用的には、偏光板100は、最外層として粘着剤層を有する(図示せず)。粘着剤層は、代表的には画像表示装置側の最外層となる。粘着剤層には、セパレーターが剥離可能に仮着され、実際の使用まで粘着剤層を保護するとともに、ロール形成を可能としている。
F.偏光板の製造方法
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。便宜上、長尺状の偏光板の製造方法について説明する。枚葉状の偏光板は、得られた長尺状の偏光板を所定のサイズまたは形状に裁断することにより得られ得る。
F-1.偏光子の作製
偏光子を構成する樹脂フィルム(代表的には、PVA系樹脂フィルム)は、単一のフィルムであってもよく、樹脂基材上に形成された樹脂層(代表的には、PVA系樹脂層)であってもよい。PVA系樹脂層は、樹脂基材上にPVA系樹脂を含む塗布液を塗布して形成してもよく、樹脂基材上にPVA系樹脂フィルムを積層して形成してもよい。以下、PVA系樹脂層が塗布形成される場合について簡単に説明するが、PVA系樹脂フィルムを積層する場合についても同様である。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。なお、偏光子が単一のPVA系樹脂フィルムである場合には、偏光子は当業界で周知慣用されている方法により作製され得るので、詳細な説明は省略する。
上記のようにして、樹脂基材上に偏光子(偏光子中間体)が形成される。必要に応じて、保護層(代表的には、上記A項の図示しない別の保護層に対応する)を構成する樹脂フィルムの貼り合わせおよび/または樹脂基材の剥離が行われる。例えば、樹脂基材/偏光子の積層体の偏光子表面に樹脂フィルムがロールトゥロールにより貼り合わせられ、次いで、樹脂基材が剥離される。このようにして、偏光子/保護層の積層体が得られる。ここで、偏光子中間体とは、非偏光部が形成される前の偏光子を意味し、非偏光部を有する偏光子と区別する趣旨である。したがって、本明細書においては、文脈上、偏光子中間体を単に偏光子と称する場合がある。当業者であれば、本明細書の記載を見れば、「偏光子」が偏光子中間体を意味するか非偏光部を有する偏光子を意味するかを容易に理解することができる。
F-2.非偏光部の形成
次に、上記F-1項で得られた偏光子中間体の所定の位置に非偏光部を形成する。偏光子(偏光子中間体)が樹脂基材上に塗布されたPVA系樹脂層から形成されたものである場合には、代表的には、樹脂基材/偏光子の積層体または保護層/偏光子の積層体が、非偏光部の形成に供される。偏光子(偏光子中間体)が単一の樹脂フィルムである場合には、代表的には、偏光子単独または保護層/偏光子の積層体が、非偏光部の形成に供される。以下、非偏光部の形成を具体的に説明する。代表例として、保護層/偏光子の積層体(以下、本項において単に偏光板中間体と称する)において偏光子(偏光子中間体)に非偏光部を形成する場合を説明する。その他の構成の偏光子中間体(例えば、樹脂基材/偏光子中間体の積層体、単一の樹脂フィルムである偏光子中間体)についても同様の手順が適用可能であることは当業者に明らかである。
非偏光部は、代表的には、化学処理による脱色(以下、化学的脱色処理とも称する)により形成され得る。化学的脱色処理は、代表的には、偏光子(偏光子中間体)の所定の位置を選択的に処理液(代表的には、塩基性溶液のような脱色液:後述)で処理することにより行われ得る。所定の部分を選択的に処理する方法としては、例えば、所定のパターンで配置された貫通孔を有する表面保護フィルム(いわゆるマスク)を用いる方法、脱色液を所定の位置に印刷する方法、脱色液を所定の位置に噴射する方法が挙げられる。以下、代表例として、所定のパターンで配置された貫通孔を有する表面保護フィルムを用いる方法を説明する。
図4に示すように、偏光板中間体の偏光子側の面に、所定のパターンで配置された貫通孔を有する表面保護フィルムをロールトゥロールにより貼り合わせる。本明細書において「ロールトゥロール」とは、ロール状のフィルムを搬送しながら互いの長尺方向を揃えて貼り合わせることをいう。貫通孔を有する表面保護フィルムは、任意の適切な粘着剤を介して偏光子に剥離可能に貼り合わせられる。貫通孔を有する表面保護フィルムを用いることにより、脱色液への浸漬による脱色処理が可能となるので、非常に高い製造効率で本発明の偏光板を得ることができる。なお、便宜上、貫通孔を有する表面保護フィルムを第1の表面保護フィルムと称する場合がある。
表面保護フィルムは、所定のパターンで配置された貫通孔を有する。貫通孔が設けられる位置は、偏光子(偏光子中間体)の非偏光部が形成される位置に対応する。図4に示される貫通孔の配置パターンは、図3に示される非偏光部の配置パターンに対応する。貫通孔は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)またはフィルムの所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成され得る。
表面保護フィルムは、硬度(例えば、弾性率)が高いフィルムが好ましい。搬送および/または貼り合わせ時の貫通孔の変形が防止され得るからである。表面保護フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。表面保護フィルムの厚みは、代表的には20μm~250μmであり、好ましくは30μm~150μmである。このような厚みであれば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点を有する。表面保護フィルムの弾性率は、好ましくは2.2kN/mm~4.8kN/mmである。表面保護フィルムの弾性率がこのような範囲であれば、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点を有する。なお、弾性率は、JIS K 6781に準拠して測定される。表面保護フィルムの引張伸度は、好ましくは90%~170%である。第1の表面保護フィルムの引張伸度がこのような範囲であれば、搬送中に破断しにくいという利点を有する。なお、引張伸度は、JIS K 6781に準拠して測定される。
一方、偏光板の保護層側の面に、別の表面保護フィルム(第2の表面保護フィルムとも称する)をロールトゥロールにより貼り合わせる。第2の表面保護フィルムは、任意の適切な粘着剤を介して保護層に剥離可能に貼り合わせられる。第2の表面保護フィルムを用いることにより、浸漬による脱色処理において偏光板中間体(偏光子中間体/保護層)が適切に保護され得る。第2の表面保護フィルムは、貫通孔が設けられていないこと以外は第1の表面保護フィルムと同様のフィルムが用いられ得る。さらに、第2の表面保護フィルムとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)フィルムのような柔らかい(例えば、弾性率が低い)フィルムも用いることができる。第2の表面保護フィルムは、第1の表面保護フィルムと同時に貼り合わせてもよく、第1の表面保護フィルムを貼り合わせる前に貼り合わせてもよく、第1の表面保護フィルムを貼り合わせた後に貼り合わせてもよい。好ましくは、第2の表面保護フィルムは、第1の表面保護フィルムを貼り合わせる前に貼り合わせられる。このような手順であれば、保護層の傷つきが防止される、および、巻き取り時において第1の表面保護フィルムに形成した貫通孔が痕として保護層に転写されるのが防止されるという利点を有する。第1の表面保護フィルムを貼り合わせる前に第2の表面保護フィルムを貼り合わせる場合には、例えば、保護層と第2の表面保護フィルムとの積層体を作製し、当該積層体を樹脂基材/偏光子の積層体に貼り合わせた後樹脂基材を剥離し、当該剥離面に第1の表面保護フィルムを貼り合わせることができる。
次に、図5に示すように、第1の表面保護フィルム/偏光子(偏光子中間体)/保護層/第2の表面保護フィルムの積層体を化学的脱色処理に供する。化学的脱色処理は、積層体を処理液(代表的には、塩基性溶液)と接触させることを含む。二色性物質としてヨウ素を用いる場合、樹脂フィルムの所望の部位に塩基性溶液を接触させることで、接触部のヨウ素含有量を容易に低減させることができる。
積層体と塩基性溶液との接触は、任意の適切な手段により行われ得る。代表例としては、積層体の塩基性溶液への浸漬、あるいは、塩基性溶液の積層体への塗布または噴霧が挙げられる。浸漬が好ましい。図5に示すように積層体を搬送しながら脱色処理を行うことができるので、製造効率が顕著に高いからである。上記のとおり、第1の表面保護フィルム(および、必要に応じて第2の表面保護フィルム)を用いることにより、浸漬が可能となる。具体的には、塩基性溶液に浸漬することにより、偏光子(偏光子中間体)における第1の表面保護フィルムの貫通孔に対応する部分のみが塩基性溶液と接触する。例えば、偏光子(偏光子中間体)が二色性物質としてヨウ素を含む場合、偏光子(偏光子中間体)と塩基性溶液とを接触させることにより、偏光子(偏光子中間体)の塩基性溶液との接触部分のヨウ素濃度を低減させ、結果として、当該接触部分(第1の表面保護フィルムの貫通孔により設定され得る)のみに選択的に非偏光部を形成することができる。このように、本実施形態によれば、複雑な操作を伴うことなく非常に高い製造効率で、偏光子(偏光子中間体)の所定の部分に選択的に非偏光部を形成することができる。なお、得られた偏光子にヨウ素が残存している場合、ヨウ素錯体を破壊して非偏光部を形成したとしても、偏光子の使用に伴い再度ヨウ素錯体が形成され、非偏光部が所望の特性を有さなくなるおそれがある。本実施形態では、後述の塩基性溶液の除去によって、ヨウ素自体が偏光子(実質的には、非偏光部)から除去される。その結果、偏光子の使用に伴う非偏光部の特性変化を防止し得る。加えて、上記のような接触方法によれば、樹脂フィルムの一方の面側のみに凹部が形成され得る。この場合、樹脂フィルムの両面に凹部が形成される場合に比べて、凹部の深さの制御が顕著に容易となる。その結果、外観に対する影響の抑制が容易となる。
塩基性溶液による非偏光部の形成について、より詳細に説明する。偏光子(偏光子中間体)の所定の部分との接触後、塩基性溶液は当該所定部分内部へと浸透する。当該所定部分に含まれるヨウ素錯体は塩基性溶液に含まれる塩基により還元され、ヨウ素イオンとなる。ヨウ素錯体がヨウ素イオンに還元されることにより、当該部分の偏光性能が実質的に消失し、当該部分に非偏光部が形成される。また、ヨウ素錯体の還元により、当該部分の透過率が向上する。ヨウ素イオンとなったヨウ素は、当該部分から塩基性溶液の溶媒中に移動する。その結果、後述の塩基性溶液の除去により、塩基性溶液と共にヨウ素イオンも当該部分から取り除かれる。このようにして、偏光子(偏光子中間体)の所定部分に選択的に非偏光部(低濃度部)が形成され、さらに、当該非偏光部は経時変化のない安定なものとなる。なお、第1の表面保護フィルムの材料、厚みおよび機械的特性、塩基性溶液の濃度、ならびに積層体の塩基性溶液への浸漬時間等を調整することにより、塩基性溶液が所望でない部分まで浸透すること(結果として、所望でない部分に非偏光部が形成されること)を防止することができる。
上記塩基性溶液に含まれる塩基性化合物としては、任意の適切な塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が用いられ、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが用いられる。ヨウ素錯体を効率良くイオン化することができ、より簡便に非偏光部を形成することができる。これらの塩基性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記塩基性溶液の溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。具体的には、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。ヨウ素イオンが良好に溶媒へと移行し、後の塩基性溶液の除去において容易にヨウ素イオンを除去できることから、溶媒は水、アルコールが好ましい。
上記塩基性溶液の濃度は、例えば、0.01N~5Nであり、好ましくは0.05N~3Nであり、より好ましくは0.1N~2.5Nである。塩基性溶液の濃度がこのような範囲であれば、効率よく偏光子(偏光子中間体)内部のヨウ素濃度を低減させることができ、かつ、所定部分以外の部分におけるヨウ素錯体のイオン化を防止することができる。さらに、このような濃度であれば、形成され得る凹部の深さの制御が容易となる。
上記塩基性溶液の液温は、例えば、20℃~50℃である。積層体(実質的には、偏光子中間体の所定部分)と塩基性溶液との接触時間は、偏光子中間体の厚みや、用いる塩基性溶液に含まれる塩基性化合物の種類、および、塩基性化合物の濃度に応じて設定することができ、例えば、5秒間~30分間である。接触時間がこのような範囲であれば、適切な深さを有する凹部が形成され得る。
偏光子にはホウ酸が含まれ得る。例えば、偏光機能を付与するための延伸処理、架橋処理等の際に、ホウ酸溶液(例えば、ホウ酸水溶液)を接触させることでホウ酸が含まれ得る。偏光子のホウ酸含有量は、例えば10重量%~30重量%である。また、塩基性溶液との接触部におけるホウ酸含有量は、例えば5重量%~12重量%である。
上記塩基性溶液との接触後、塩基性溶液を接触させた接触部において、樹脂フィルムに含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させる。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を低減させることにより、寸法安定性に優れた低濃度部を得ることができる。具体的には、加湿環境下においても、塩基性溶液との接触により形成された低濃度部の形状をそのまま維持することができる。
樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物が残存し得る。また、樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させることにより、接触部にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩が生成し得る。これらは水酸化物イオンを生成し得、生成した水酸化物イオンは、接触部周囲に存在する二色性物質(例えば、ヨウ素錯体)に作用(分解・還元)して、非偏光領域(低濃度領域)を広げ得る。したがって、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩を低減させることにより、経時的に非偏光領域が広がるのを抑制して、所望の非偏光部形状が維持され得ると考えられる。
上記水酸化物イオンを生成し得る金属塩としては、例えば、ホウ酸塩が挙げられる。ホウ酸塩は、樹脂フィルムに含まれるホウ酸が塩基性溶液(アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物の溶液)に中和されて生成し得る。なお、ホウ酸塩(メタホウ酸塩)は、例えば、偏光子が加湿環境下に置かれることにより、下記式に示すように、加水分解されて水酸化物イオンを生成し得る。
Figure 0007267358000001
(式中、Xはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す)
好ましくは、接触部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が3.6重量%以下、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下となるように当該含有量を低減させる。
なお、樹脂フィルムには、偏光子とするための各種処理を施されることにより、予め、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属が含まれ得る。例えば、ヨウ化カリウム等のヨウ化物の溶液を接触させることで、樹脂フィルムにカリウムが含まれ得る。このように、通常、偏光子に含まれるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属は、上記低濃度部の寸法安定性に悪影響を及ぼさないと考えられる。
上記低減方法としては、好ましくは、塩基性溶液との接触部に後処理液を接触させる方法が用いられる。このような方法によれば、樹脂フィルムから後処理液にアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を移行させて、その含有量を低減させることができる。
後処理液の接触方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、塩基性溶液との接触部に対し、後処理液を滴下、塗工、スプレーする方法、塩基性溶液との接触部を後処理液に浸漬する方法が挙げられる。
塩基性溶液の接触時に、任意の適切な保護材で樹脂フィルムを保護した場合、そのままの状態で後処理液を接触させることが好ましい(特に、後処理液の温度が50℃以上の場合)。このような形態によれば、塩基性溶液との接触部以外の部位において、後処理液による偏光特性の低下を防止することができる。
上記後処理液は、任意の適切な溶媒を含み得る。溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。これらの中でも、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を効率的に移行させる観点から、水、アルコールが好ましく用いられる。水としては、任意の適切な水を用いることができる。例えば、水道水、純水、脱イオン水等が挙げられる。
接触時の後処理液の温度は、例えば20℃以上であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。このような温度であれば、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を後処理液に効率的に移行させることができる。具体的には、樹脂フィルムの膨潤率を著しく向上させて、樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を物理的に除去することができる。一方で、水の温度は、実質的には95℃以下である。
接触時間は、接触方法、後処理液の温度、樹脂フィルムの厚み等に応じて、適宜調整され得る。例えば、温水に浸漬する場合、接触時間は、好ましくは10秒~30分、より好ましくは30秒~15分、さらに好ましくは60秒~10分である。
1つの実施形態においては、上記後処理液として酸性溶液が用いられる。酸性溶液を用いることにより、樹脂フィルムに残存するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の水酸化物を中和して、樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を化学的に除去することができる。
酸性溶液に含まれる酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素、ホウ酸等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性溶液に含まれる酸性化合物は、好ましくは無機酸であり、さらに好ましくは塩酸、硫酸、硝酸である。これらの酸性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましくは、酸性化合物として、ホウ酸よりも酸性度の強い酸性化合物が好適に用いられる。上記アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の金属塩(ホウ酸塩)にも作用し得るからである。具体的には、ホウ酸塩からホウ酸を遊離させて、樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を化学的に除去することができる。
上記酸性度の指標としては、例えば、酸解離定数(pKa)が挙げられ、ホウ酸のpKa(9.2)よりもpKaの小さい酸性化合物が好ましく用いられる。具体的には、pKaは、好ましくは9.2未満であり、より好ましくは5以下である。pKaは任意の適切な測定装置を用いて測定してもよく、化学便覧 基礎編 改訂5版(日本化学会編、丸善出版)等の文献に記載の値を参照してもよい。また、多段解離する酸性化合物では、各段階でpKaの値が変わり得る。このような酸性化合物を用いる場合、各段階のpKaの値のいずれかが上記の範囲内であるものが用いられる。なお、本明細書において、pKaは25℃の水溶液における値をいう。
酸性化合物のpKaとホウ酸のpKaとの差は、例えば2.0以上であり、好ましくは2.5~15であり、より好ましくは2.5~13である。このような範囲であれば、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を後処理液に効率的に移行させることができ、結果として、低濃度部における所望のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量を実現することができる。
上記pKaを満足し得る酸性化合物としては、例えば、塩酸(pKa:-3.7)、硫酸(pK:1.96)、硝酸(pKa:-1.8)、フッ化水素(pKa:3.17)、ホウ酸(pKa:9.2)等の無機酸、ギ酸(pKa:3.54)、シュウ酸(pK:1.04、pK:3.82)、クエン酸(pK:3.09、pK:4.75、pK:6.41)、酢酸(pKa:4.8)、安息香酸(pKa:4.0)等の有機酸等が挙げられる。
なお、酸性溶液(後処理液)の溶媒は上述のとおりであり、後処理液として酸性溶液を用いる本形態においても、上記樹脂フィルム内のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の物理的な除去は起こり得る。
上記酸性溶液の濃度は、例えば、0.01N~5Nであり、好ましくは0.05N~3Nであり、より好ましくは0.1N~2.5Nである。
上記酸性溶液の液温は、例えば20℃~50℃である。酸性溶液への接触時間は、樹脂フィルムの厚みや、酸性化合物の種類、および、酸性溶液の濃度に応じて設定することができ、例えば、5秒間~30分間である。
樹脂フィルムは上記処理以外に、任意の適切な他の処理をさらに施され得る。他の処理としては、塩基性溶液および/または酸性溶液の除去、ならびに、洗浄等が挙げられる。
塩基性溶液および/または酸性溶液の除去方法の具体例としては、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。上記乾燥温度は、例えば、20℃~100℃である。乾燥時間は例えば5秒~600秒である。
洗浄処理は任意の適切な方法により行われる。洗浄処理に使用する溶液は、例えば、純水、メタノール、エタノール等のアルコール、酸性水溶液、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。洗浄は、代表的には、図5に示すように積層体を搬送しながら行われる。洗浄処理は任意の適切な段階で行われ得る。洗浄処理は複数回行ってもよい。
以上のようにして、長尺状の偏光子(偏光子中間体)の所定の位置に所定の配置パターンで非偏光部が形成される。上記のとおり、非偏光部は薄肉部である。上記のような製造方法によれば、当該薄肉部は、偏光子の一方の面側(第1の表面保護フィルム側)の表面が凹んだ凹部を有する。
F-3.偏光板の作製
次いで、積層体から第1の表面保護フィルムが除去(代表的には、剥離)される。さらに、積層体の第1の表面保護フィルムを除去した面(偏光子の凹部が形成されている面)に、接着層を形成する。好ましくは上記のとおり、接着剤層を形成する。具体的には、当該面に接着剤を塗布し、硬化させることにより接着剤層が形成され得る。このような方法であれば、接着剤が塗布時に凹部に良好に流入し得るので、硬化後の接着剤により凹部が隙間なく充填され、気泡の発生が良好に防止され得る。その結果、偏光子の薄肉部が実質的に気泡を含まないようにすることができる。接着剤の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。接着剤の硬化方法および硬化条件は、接着剤の種類に応じて適切に設定され得る。例えば、接着剤として紫外線硬化型接着剤が用いられる場合には、紫外線(例えば、波長380~440nm)を積算照射量800/mJ/cm~1200/mJ/cmで照射することにより、接着剤層を良好に形成することができる。
より具体的には、接着剤を塗布して硬化していない状態で、当該接着剤の上に保護層を構成する樹脂フィルムが積層され、当該樹脂フィルムが積層された状態で接着剤を硬化させる。接着剤として紫外線硬化型接着剤が用いられる場合には、紫外線は、代表的には樹脂フィルム(保護層)側から照射され得る。
以上のようにして、保護層/偏光子/別の保護層の構成を有する長尺状の偏光板が得られ得る。枚葉状の偏光板は、上記のとおり、長尺状の偏光板を例えば所定のサイズまたは形状に裁断することにより得られ得る。保護層/偏光子の構成を有する偏光板を作製する場合には、樹脂基材/偏光子の積層体に上記と同様にして非偏光部を形成し、その後で樹脂基材を除去し、当該除去面に保護層を積層すればよい。なお、第2の表面保護フィルムは、任意の適切な時点で除去され得る。具体的には、第2の表面保護フィルムは、第1の表面保護フィルムと同時に積層体から除去されてもよく、長尺状の偏光板が形成された後で除去されてもよく、枚葉状の偏光板が形成された後で除去されてもよい。
G.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、上記偏光板を備える。偏光板は画像表示装置のサイズに合わせて裁断されたものである。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機ELデバイスが挙げられる。具体的には、液晶表示装置は、液晶セルと当該液晶セルの片側もしくは両側に配置された上記偏光板とを含む液晶パネルを備える。有機ELデバイスは、視認側に上記偏光板が配置された有機ELパネルを備える。偏光板は、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するように配置されている。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)厚み
デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
(2)凹部の深さ
走査型電子顕微鏡(ZYGO社製、製品名「New View 7300」)を用いて測定した。
(3)気泡の発生の有無
実施例および比較例で得られた偏光板に形成された非偏光部(薄肉部)から15の非偏光部を無作為に抽出し、当該15の非偏光部について気泡の有無を、FPD走査顕微鏡(OLYMPUS社製、製品名「MX61」)を用いて倍率5倍で確認し、下記の基準で評価した。
○:15の非偏光部すべてにおいて気泡の発生が認められない
×:15の非偏光部のうち少なくとも1つに気泡が認められる
(4)気泡の数
実施例および比較例で得られた偏光板に形成された非偏光部(薄肉部)から15の非偏光部を無作為に抽出し、当該15の非偏光部に発生した気泡の総数を、FPD走査顕微鏡(OLYMPUS社製、製品名「MX61」)を用いて倍率5倍で数えた。さらに、数えた気泡の総数を15で除することにより、非偏光部1個あたりの気泡数を算出した。
[実施例1]
樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を3重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、積層体のPVA系樹脂層表面に、下記に示す接着剤を硬化後の接着剤層厚みが1.0μmとなるように塗布し、保護層(別の保護層に対応する)を構成するゼオン社製ゼオノア系樹脂フィルム(厚み17μm)を貼り合わせ、当該ゼオノア系樹脂フィルム側からIRヒーターを用いて50℃に加温し、下記の紫外線を照射して接着剤を硬化させた。その後、基材をPVA系樹脂層から剥離し、幅約1300mmの長尺状の偏光板(偏光子/別の保護層)を得た。なお、偏光子の厚みは5μmであり、単体透過率は40.8%であった。
(接着剤組成)
N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)40重量部とアクリロイルモルホリン(ACMO)60重量部と光開始剤「IRGACURE 819」(BASF社製)3重量部を混合し、硬化前の粘度が40mPa・Sの接着剤を調製した。
(紫外線)
活性エネルギー線として、紫外線(ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm(波長380~440nm))を使用した。なお、紫外線の照度は、Solatell社製のSola-Checkシステムを使用して測定した。
幅約1300mmのエステル系樹脂フィルム(厚み38μm)の一方の面に粘着剤(アクリル系粘着剤)を厚みが5μmになるよう塗布した。この粘着剤付エステル系樹脂フィルムに、ピクナル刃を用いて直径2.8mmの貫通孔を長尺方向に250mmおきに、幅方向に400mmおきに形成した。
上記で得られた偏光板の偏光子側に、上記粘着剤付エステル系樹脂フィルムを、ロールトゥロールで貼り合わせ、これを1mol/L(1N)の水酸化ナトリウム水溶液に30秒浸漬し、次いで、1mol/L(1N)の塩酸に10秒浸漬した。その後、60℃で乾燥し、偏光子に非偏光部を形成した。非偏光部は、エステル樹脂系フィルム側に深さ0.5μmの凹部を有する薄肉部であった。
上記で得られた積層体からエステル樹脂系フィルムを剥離除去し、当該剥離面に上記と同様の接着剤を硬化後の接着剤層厚みが2.5μmとなるように塗布し、保護層を構成するアクリル系樹脂フィルム(厚み40μm)を貼り合わせ、当該アクリル系樹脂フィルム側からIRヒーターを用いて50℃に加温し、上記と同様の紫外線を照射して接着剤を硬化させた。
以上のようにして、保護層/偏光子/別の保護層の構成を有する偏光板を作製した。得られた偏光板の非偏光部における気泡の発生状態を上記(3)および(4)の基準で評価した。結果を表1に示す。
[実施例2]
偏光子の凹部側の接着剤の塗布厚みを変更して接着剤層の厚みを2.2μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[実施例3]
偏光子の凹部側の接着剤の塗布厚みを変更して接着剤層の厚みを2.0μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例1]
偏光子の凹部側の接着剤の塗布厚みを変更して接着剤層の厚みを1.9μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例2]
偏光子の凹部側の接着剤の塗布厚みを変更して接着剤層の厚みを1.8μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例3]
偏光子の凹部側の接着剤の塗布厚みを変更して接着剤層の厚みを1.5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例4]
偏光子の凹部側の接着剤の塗布厚みを変更して接着剤層の厚みを1.4μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
[比較例5]
偏光子の凹部側の接着剤の塗布厚みを変更して接着剤層の厚みを1.3μmとしたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。得られた偏光板を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
Figure 0007267358000002
[評価]
表1から明らかなように、薄肉部を有する偏光子を含む偏光板において偏光子と保護層とを接着する接着層の厚みを調整することにより、薄肉部の気泡の発生を防止できることがわかる。さらに、接着剤層の厚みが2.0μm近傍において、所定の条件で認識できる気泡の発生を実質的に完全に防止できる臨界点が存在し得ることが示唆される。
本発明の偏光板は、スマートフォン等の携帯電話、ノート型PC、タブレットPC等のカメラ付き画像表示装置(液晶表示装置、有機ELデバイス)に好適に用いられる。
10 偏光子
12 薄肉部
14 凹部
20 接着層
30 保護層
100 偏光板

Claims (7)

  1. 非偏光部である薄肉部を有する偏光子と、
    該偏光子において該薄肉部の凹部が形成されている面に接着層を介して貼り合わせられた保護層と、を有し、
    該接着層が活性エネルギー線硬化型接着剤で構成されており、該接着層の接着剤が該薄肉部の凹部を充填し、該薄肉部が実質的に気泡を含まず、
    該偏光子の該薄肉部以外の部分における該接着層の厚みが2.0μm以上であり、
    該薄肉部の凹みの深さが0.3μm~0.5μmである、
    偏光板。
  2. 前記薄肉部の透過率が50%以上である、請求項1に記載の偏光板。
  3. 前記薄肉部の二色性物質の含有量が1.0重量%以下である、請求項2に記載の偏光板。
  4. 前記偏光子の前記薄肉部以外の部分における二色性物質の含有量と該薄肉部における二色性物質の含有量との差が、1.0重量%以上である、請求項3に記載の偏光板。
  5. 前記薄肉部におけるアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が3.6重量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の偏光板。
  6. 前記偏光子の前記薄肉部以外の部分の厚みが8μm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の偏光板。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の偏光板を備え、該偏光板の前記薄肉部がカメラ部に対応する位置に配置されている、画像表示装置。
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