JP7262105B2 - 細胞透過性配列を有するポリペプチド及びそれを含む組成物 - Google Patents

細胞透過性配列を有するポリペプチド及びそれを含む組成物 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 ・刊行物名 :第67回高分子学会年次大会予稿集67巻1号 (2018),1G08 発行日 :平成30(2018)年5月8日 発行人 :公益財団法人高分子学会
特許法第30条第2項適用 ・集会名 :第67回高分子学会年次大会 開催日 :平成30(2018)年5月23~25日 開催場所 :名古屋国際会議場
特許法第30条第2項適用 ・刊行物名 :第28回バイオ・高分子シンポジウム予稿集P21 発行日 :平成30(2018)年7月20日 発行人 :公益財団法人高分子学会
特許法第30条第2項適用 ・集会名 :第28回バイオ・高分子シンポジウム 開催日 :平成30(2018)年7月26~27日 開催場所 :東京工業大学
特許法第30条第2項適用 ・刊行物名 :256▲th▼ ACS National Meeting & Exposition,August 19-23.2018,Boston,Massachusetts,USA,PROGRAM_ The American Chemical Society 発行日 :平成30(2018)年8月18日
特許法第30条第2項適用 ・集会名 :256▲th▼ ACS National Meeting & Exposition,Boston,Massachusetts,USA 開催日 :平成30(2018)年8月19~23日
特許法第30条第2項適用 ・刊行物名 :第67回高分子討論会予稿集67巻2号 (2018),1U14 発行日 :平成30(2018)年8月29日 発行人 :公益財団法人高分子学会
特許法第30条第2項適用 ・刊行物名 :The 6th International Conference on Smart Systems Engineering 2018(SmaSys 2018) PROGRAM,Page31,IL-4 発行日 :平成30(2018)年10月11日
特許法第30条第2項適用 ・集会名 :The 6th International Conference on Smart Systems Engineering2018(SmaSys2018) 開催日 :平成30(2018)年10月11~12日 開催場所 :山形大学
特許法第30条第2項適用 ・刊行物名 :The 12th SPSJ International Polymer Conference (IPC2018)PROGRAM 発行日 :平成30(2018)年11月20日 ・集会名 :The 12th SPSJ International Polymer Conference (IPIPC2018) 開催日 :平成30(2018)年12月4~7日 開催場所 :Hiroshima,Japan
本発明は、新規の細胞透過性配列を有するポリペプチドに関する。
本発明はまた、上記ポリペプチドと、細胞内に導入するための対象物質とを含む細胞内侵入性組成物に関する。
本発明はさらに、上記ポリペプチドを用いて対象物質を細胞内に輸送する方法に関する。
特定のペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドなどの物質(「カーゴ分子」とも称する。)を細胞内に輸送するために広く使用されるツールとして細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide)が知られている。この細胞による取り込み現象は、初期には細胞膜の直接的な浸透により生じると推定されていたが、現在ではエンドサイトーシスが細胞取り込みに大きく寄与していることが知られている(非特許文献1)。
細胞透過性ペプチドの適用は、細胞生物学、医学、農学などの分野に及んでおり、例えば医薬の細胞内デリバリー、ゲノム編集による植物等の品種改良、細胞の改質などを目的として使用可能である。このようなペプチドについて、多数の細胞透過性ペプチドが提案されているが、少なくとも、細胞膜を損傷させずに広範囲のカーゴ分子を細胞内に効率的に送達する能力などを含む特性を有する(ポリ)ペプチドが望ましいと云われている。1988年にエイズウイルスの転写因子Tatタンパク質が細胞膜を透過することが発見されたことを契機として、Tatペプチドを始めとして細胞透過性ペプチドの研究開発が盛んに行われるようになった。
細胞透過性ペプチドとしては、例えば、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)などの天然型アミノ酸や非天然型アミノ酸を含むカチオン性官能基を有する(ポリ)ペプチド(例えば特許文献1)、ポリカチオン性配列とポリアニオン性配列を含む両親媒性(ポリ)ペプチド(例えば特許文献2)、テロメラーゼ由来(ポリ)ペプチド(例えば特許文献3)などが報告されている。
特開2016-190813号公報 特表2017-527300号公報 特開2018-172396号公報
M.Fotin-Mleczek et al,Curr.Pharm.Design2005,11:3613-3628
多くの細胞透過性ペプチドが報告されているが、欠点も知られている。例えば、ペプチドのなかには、膜破壊によって細胞質を漏出させる又は膜タンパク質の正常な機能を妨害するペプチド、細胞毒性作用又は免疫原性作用を引き起こすペプチド、細胞質内で急速に分解されるペプチド、エンドソーム内に捕捉されたままリソソーム内で分解されるペプチド、カーゴ分子を遊離できないペプチド、適用できるカーゴ分子の範囲が限定されるペプチドなどがある(梶原直樹,芝崎太,日薬理誌2013,141:220-221)。
このような状況において、上記の欠点がないか又は少ない細胞透過性ペプチド、或いは、種々のカーゴ分子を高効率で細胞内に取り込み、かつ毒性が低い細胞透過性ペプチドに対するニーズがある。
本発明者らは、今回、従来の細胞透過性配列であるTatペプチドやR9ペプチド(ポリアルギニン)と比較して長時間にわたって高い細胞内侵入性能(インターナリゼーション)を示すこと、高い酵素分解耐性により長期的に細胞内へのカーゴ分子の導入を可能にすること、細胞毒性がほとんどないこと、などの性質を有するポリペプチドを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の特徴を包含する。
(1)下記式(I):
Figure 0007262105000001
[式中、nは2~20の数であり;R及びRは、それぞれ独立して、C1~C4のアルキル基を表すか、又は互いに結合して環を形成してもよく;R3は、C1~C10の第一級アミノアルキル基を表し;Rは、水素原子、又はC1~10の炭化水素基を表し;式中のn個のR、R、R及びRは、各々、互いに同一でも異なっていてもよく;並びに、N末端及びC末端はそれぞれ、修飾されていてもよいし、又は非修飾であってもよい。]
で表されるポリペプチド。
(2)R及びRがともにメチル基である、上記(1)に記載のポリペプチド。
(3)Rが、水素原子又はC1~C3のアルキル基である、上記(1)又は(2)に記載のポリペプチド。
(4)前記C末端が修飾されている、上記(1)~(3)のいずれかに記載のポリペプチド。
(5)前記N末端が修飾されている、上記(1)~(4)のいずれかに記載のポリペプチド。
(6)下記式(II):
-Y1-Y2-Y3- (II)
[式中、Y1はLys及びOrnからなる群から選択されるカチオン性アミノ酸であり、Y3はGly、Ala、Phe、Leu、Val及びIleからなる群から選択される非カチオン性アミノ酸であり、Y2は少なくとも1種の第四級炭素を含む非天然アミノ酸であり、2~20個存在するY1,Y2及びY3の各々は同一でも異なっていてもよく、前記ポリペプチドのN末端及びC末端はそれぞれ修飾されていてもよいし、又は非修飾であってもよい。]
で表されるトリペプチド単位を2~20個含むことを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれかに記載のポリペプチド
(7)N末端及びC末端の少なくとも一方に、反応性官能基を有する、上記(1)~(6)のいずれかに記載のポリペプチド。
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載のポリペプチドと対象物質とを含み、前記対象物質は前記ポリペプチドと一体となって存在しているか、或いは前記ポリペプチドと独立して存在していることを特徴とする細胞内浸入性組成物。
(9)前記対象物質が、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、天然もしくは非天然核酸、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アンチセンス分子、miRNA、siRNA、プラスミド、低分子量化合物、糖、脂質、糖脂質、造影物質、薬物、ナノ粒子、及び量子ドットからなる群から選択される、上記(8)に記載の組成物。
(10)Lys、His及びArgから選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸の組み合わせが、2以上連続するカチオン性配列を含む第2のポリペプチドをさらに含有する、上記(8)又は(9)に記載の組成物。
(11)前記第1のポリペプチドの少なくとも一部と、前記第2のポリペプチドの少なくとも一部とが結合している、上記(10)に記載の組成物。
(12)上記(1)~(7)のいずれかに記載のポリペプチドを含む細胞内デリバリーキット。
(13)上記(1)~(7)のいずれかに記載のポリペプチドを細胞に接触させることにより、前記ポリペプチドと一体になって存在する、及び/又は前記ポリペプチドとは独立して存在する少なくとも1種の対象物質を前記細胞内に導入することを含む、細胞内への物質輸送方法。
本発明により、細胞毒性がほとんどない、高い酵素分解耐性を有する、並びに長時間にわたって高い細胞内侵入性能(インターナリゼーション)を示すポリペプチドが提供される。
図1Aは、本発明のポリペプチドであるP(LysAibGly)、P(LysAibAla)及びP(LysAibLys)の円二色性(CD)スペクトルを示す。ここで「Aib」はα-アミノイソブタン酸残基を表し、「P」は多量体であることを表す(以下、同義)。また、図1Bは、αへリックス、β構造及びβターンの含量(%)、並びに、16時間インキュベーション後の細胞(HEK293細胞)内取込み効率(Efficiency)を示す。 この図は、150mMNaCl含有リン酸緩衝液(pH7.4)中での蛍光偏光により測定されたTAMRA標識された本発明のポリペプチドであるP(LysAibGly)、P(LysAibAla)及びP(LysAibLys)並びに比較例であるTatペプチド(RKKRRQRRR(配列番号1))及びR9ペプチド(RRRRRRRRR(配列番号2))の各々とヘパリン硫酸との結合親和性を示す。 この図は、トリプシンに対する、本発明のポリペプチドであるP(LysAibGly)、P(LysAibAla)及びP(LysAibLys)並びに比較例であるTatペプチド及びR9ペプチドの各々のタンパク質分解安定性のアッセイ結果を示す。 この図は、本発明のポリペプチドであるP(LysAibGly)、P(LysAibAla)及びP(LysAibLys)並びに比較例であるTatペプチド及びR9ペプチドの各々のHEK293細胞内取込み(相対蛍光単位(RFU)/mgタンパク質×10)を示す。 この図は、細胞透過性能を示す濃度領域の本発明のポリペプチドであるP(LysAibGly)、P(LysAibAla)及びP(LysAibLys)並びに比較例であるTatペプチド及びR9ペプチドの各々の存在下でのHEK293細胞生存率(%)を示す。 この図は、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Confocal laser scanning microscopy)観察による、Tatペプチド(A)及びP(LysAibAla)(B)で処理された生存HEK293細胞像を示す。左パネルは、核マーカーHoechst33342で対比染色した細胞像である。中央パネルは、5%CO存在下、37℃2時間、表示の5μMペプチド(TAMRA標識)と一緒にインキュベートした細胞像である。右パネルは、マージした細胞像である。 この図は、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Confocal laser scanning microscopy)観察による、Tatペプチド(A)及びP(LysAibAla)(B)で処理された生存HEK293細胞像を示す。左パネルは、核マーカーHoechst33342で対比染色した細胞像である。中央パネルは、5%CO存在下、37℃8時間、表示の5μMペプチド(TAMRA標識)と一緒にインキュベートした細胞像である。右パネルは、マージした細胞像である。 この図は、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Confocal laser scanning microscopy)観察による、Tatペプチド(A)及びP(LysAibAla)(B)で処理された生存HEK293細胞像を示す。左パネルは、核マーカーHoechst33342で対比染色した細胞像である。中央パネルは、5%CO存在下、37℃16時間、表示の5μMペプチド(TAMRA標識)と一緒にインキュベートした細胞像である。右パネルは、マージした細胞像である。 この図は、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Confocal laser scanning microscopy)観察による、Tatペプチド(A)及びP(LysAibAla)(B)で処理されたシロイズナズナ(Arabidopsis)の葉表皮像を示す。左パネルは、YFP(黄色蛍光タンパク質)を有する葉表皮像である。中央パネルは、25℃3時間、表示の50μMペプチド(TAMRA標識)と一緒にインキュベートした細胞像である。右パネルは、マージした細胞像である。 この図は、ベンサミアナタバコの葉を用いたNanoLucアッセイにより決定されたnaked pDNA、(LysAibAla)でそれぞれ修飾された核酸含有複合体1及び2の遺伝子導入効率を示す。エラーバーは標準偏差(n=4)を表わし、アスタリスク(*)は統計的有意差(P<0.05,Mann-Whitney U-test)を表す。
本発明をさらに詳細に説明する。
1.ポリペプチド
本発明のポリペプチドは、下記式(I):
Figure 0007262105000002
[式中、nは2~20の数であり;R及びRは、それぞれ独立して、C1~C4のアルキル基を表すか、又は互いに結合して環を形成してもよく;Rは、C1~C10の第一級アミノアルキル基を表し;Rは、水素原子、又はC1~10の炭化水素基を表し;式中のn個のR、R、R及びRは、各々、互いに同一でも異なっていてもよく;並びに、N末端及びC末端はそれぞれ、修飾されていてもよいし、又は非修飾であってもよい。]
で表されることを特徴とする。
上記式(I)中R及びRは、独立してC1~C4のアルキル基を表し、例えばメチル基、エチル基、(nもしくはiso)プロピル基、(n,secもしくはtert)ブチル基であるか、或いは、R及びRは、互いに結合して環を形成してもよい。環を形成する場合、環は、例えば5員もしくは6員の環状構造であり、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロ環状構造、環内に1もしくは2個の酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子を含む複素環構造などが挙げられる。好ましいR及びRの例は、ともにメチル基である。
上記式(I)中、Rは、C1~C10の第一級アミノアルキル基を表し、ここでアルキル基は、例えばメチル、エチル、(nもしくはiso)プロピル、(n,secもしくはtert)ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどの基である。第一級アミノアルキル基の好ましい例は、4-アミノブチル基である。
上記式(I)中、Rは、水素原子、又はC1~10の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、(nもしくはiso)プロピル基、(n,secもしくはtert)ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などのアルキル基、フェニルC1-C4アルキル基(例えば、ベンジル基、p-ヒドロキシフェニルメチル基、等)などであり、好ましい例は水素原子又はC1~C3のアルキル基である。
上記アルキル基及び炭化水素基は、置換されていてもよいし、或いは未置換でもよく、置換される場合、置換基は、例えば、水酸基、ハロゲン基、アシル基、アミノ基、モノもしくはジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、アルキルチオ基などの少なくとも1つの基を含むものであってよい。
上記式(I)中、N末端及びC末端はそれぞれ修飾されていてもよいし、或いは非修飾であってもよい。修飾される場合、N末端は、例えばアシル基(-C=O-R;RはC1~C10のアルキル基等の炭化水素基)によるアシル化、アルコキシカルボニル基(-C=O-OR;RはC1~C10のアルキル基等の炭化水素基)によるウレア化、アルキル基(例えば、C1~10のアルキル基であり、前記アルキル基は、炭素鎖中の1以上の炭素が、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子によって置換されていてもよい)等によって修飾されてもよい。ここで、アシル基は、例えばC1~C10のアシル基、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ヘキサノイル基などである。また、アルコキシカルボニル基は、例えば、C1~C10のアルコキシカルボニル基、例えばBocなどである。また、アルキル基は、例えばC1~10のアルキル基であり、またアルキル基の例には、ポリエチレングリコール及びオリゴエチレングリコールの残基も含まれる。
また、C末端の修飾は、例えばエステル化、アミド化などによる修飾である。エステル化の場合、C末端カルボキシ基の水酸基(OH)が、例えばC1~C10のアルコキシ基によって置換されうる。また、アミド化の場合、C末端カルボキシ基の水酸基(OH)が、例えばC1~C10のモノアルキルアミノ基もしくはジアルキルアミノ基、又はアミノ基によって置換されうる。
また、N末端及びC末端の少なくとも一方に、反応性官能基を有すると、後述する対象物質や併用する他のポリペプチドと結合により複合化することができる。反応性官能基については特に制限はない。例えば、マレイミド基とチオール基との付加反応を利用する場合は、マレイミド基を含む修飾基、チオール基を含む修飾基(システイン)等で、修飾してもよい。
具体的には、本発明のポリペプチドは、下記式(II):
-Y1-Y2-Y3- (II)
[式中、Y1はLys及びOrnからなる群から選択されるカチオン性アミノ酸であり、Y3はGly、Ala、Phe、Leu、Val及びIleからなる群から選択される非カチオン性アミノ酸であり、Y2は少なくとも1種の第四級炭素を含む非天然アミノ酸であり、2~20個存在するY1,Y2及びY3の各々は同一でも異なっていてもよく、前記ポリペプチドのN末端及びC末端はそれぞれ修飾されていてもよいし、又は非修飾であってもよい。]
で表されるトリペプチド単位を2~20個含むことを特徴とするポリペプチドである。
本明細書中で使用するアミノ酸類の記号について、Lys(もしくはK)はリシン、Ornはオルニチン、Gly(もしくはG)はグリシン、Ala(もしくはA)はアラニン、Phe(もしくはF)はフェニルアラニン、Leu(もしくはL)はロイシン、Val(もしくはV)はバリン、Ile(もしくはI)はイソロイシン、Arg(もしくはR)はアルギニン、His(もしくはH)はヒスチジン、Gln(もしくはQ)はグルタミン、Cys(もしくはC)はシステインをそれぞれ表す。
上記式(II)中、Y2は、少なくとも1種の第四級炭素を含む非天然アミノ酸であり、例えばα-エチルアラニン、α-ブチルアラニン、α-プロパルギルアラニン、α,α-ジエチルグリシン、1-アミノシクロペンタンカルボン酸などであり、好ましくはα-アミノイソブタン酸(Aib)であるが、これらに限定されないものとする。ここで「第四級炭素(原子)」は、炭素原子に結合する隣の炭素原子の数が4個存在することを意味する。
さらに具体的には、本発明のポリペプチドは、上記式(II)中、Y1がLysであり、Y2がAibであり、及びY3がGly、Ala、Phe、Leu、Val及びIleからなる群から選択される非カチオン性アミノ酸である。
場合により、Y1及びY3のアミノ酸をD-アミノ酸に置換してもよい。これによってプロテアーゼ、ペプチダーゼなどの加水分解酵素に対する安定性をさらに向上させることができる。
本発明のポリペプチドは、必要であれば塩の形態であってもよい。塩としては、生理学的に許容されうる酸付加塩が好ましく、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、硫酸など)との塩、又は有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸など)との塩を挙げることができるし、或いは、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属など)との塩、或いは有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、など)との塩を挙げることができる。
2.ポリペプチドの合成
本発明のポリペプチドは、例えば以下の工程を含む方法によって合成することができる。
(第1工程)
この工程では、上記式(II)のトリペプチドを作製する。
一般的なペプチド合成法(例えばMerrifield法(Merrifield, Recent Progress in Hormone Res.,23:451(1967))によってトリペプチドを作製する。この方法は、側鎖を保護したα-アミノ酸を不溶性樹脂担体(固相)に順次結合させることを含む。固相に結合したリンカーに側鎖を保護した第1のα-アミノ酸のカルボキシ基を結合したのち、α-アミノ基の脱保護を行い、側鎖を保護した第2のα-アミノ酸(但しカルボキシ基を活性基で修飾する。)を結合(カップリング)し、同様に脱保護したのち、第3の側鎖を保護したα-アミノ酸をカップリングし、最後に、脱保護とリンカーの切断を行い、合成されたトリペプチドを回収し、精製することを含む。
精製については、例えば、溶媒抽出、クロマトグラフィー(ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、高速液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて目的のトリペプチドを単離精製することができる。
(第2工程)
この工程では、第1工程で合成したトリペプチドのC末端カルボキシ基をエステル化(例えばメチルもしくはエチルエステル化)し、必要であればリシン(Lys)のεアミノ基を保護したのち、トリペプチド(例えば約0.05~約0.5mM)を、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液などの緩衝液(pH7~8)中、パパイン、プロテイナーゼK、トリプシン、カテプシンB、プラスミン、ブロメライン、キモトリプシンなどのプロテアーゼ(例えば約1~約200mg/mL)の存在下、約40~約60℃で約10分~約4時間、酵素重合反応を行い、精製した沈殿を遠心分離によって回収し、純水で十分に洗浄し、白色固体を得ることを含む。もしリシン(Lys)のεアミノ基を保護した場合、最終産物から保護基を除去する操作が追加されうる。保護基が,例えばBoc基である場合、トリフルオロ酢酸又は塩酸-酢酸エチルなどの酸性条件下で保護基を除去可能である。
本発明者らが開発した酵素重合反応(例えば、宮城雄ら,高分子学会討論会,第66巻,第2号,1C06,2017、K.Tsuchiya,K.Numata,Chem.Commun.2017,53:7318-7321)を利用することによって、上記トリペプチドの多量体(例えば2~20量体)を容易に合成することができる。また、前記方法に限定されず、例えば、Fmoc固相法により製造することもできる。
3.細胞内浸入性組成物
本発明はまた、上記1節に記載のポリペプチドと、対象物質とを含み、前記対象物質は前記ポリペプチドと一体となって存在しているか、又は前記ポリペプチドと独立して存在していることを特徴とする細胞内浸入性組成物を提供する。
本明細書中「細胞内浸入性」は、対象物質が、細胞膜を透過し、細胞内に侵入することができる性質をいう。このような細胞内侵入は、エンドサイトーシスを介して起こる。ここでエンドサイトーシスは、クラスリン被覆小胞を介して細胞外分子などの物質(すなわち、本明細書中の「対象物質」)を細胞内に取込む機構である(十島純子、十島二朗,生化学2014,86(6):788-792)。細胞透過性配列を有する上記1節に記載のポリペプチドは、対象物質と複合体を形成し、対象物質を細胞内に輸送することができる。
本明細書中の上記「対象物質」は、細胞内に輸送したい(もしくは送達したい)物質を指す。このような物質は、「カーゴ(cargo)分子」とも称されることがある。
当該物質は、限定されないが、天然物又は非天然物(人工物や合成物とも称する。)のいずれでもよく、例えばタンパク質、ペプチド、糖タンパク質、天然もしくは非天然核酸、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アンチセンス分子、miRNA、siRNA、プラスミド、低分子量化合物、糖、脂質、糖脂質、造影物質、薬物、ナノ粒子、量子ドット、などである。ここで「薬物」は、疾患又は病的症状を治療、軽減又は予防、或いは診断するための物質を含む広範囲な概念である。
一の実施形態によれば、上記組成物では、上記対象物質は上記ポリペプチドと一体となって存在し複合体を形成していてもよい。
本明細書中「複合体」は、対象物質がポリペプチドと共有結合又は非共有結合によって結合(もしくはコンジュゲート)された形態、対象物質が少なくとも1種のポリペプチド分子によって内包もしくは付着された形態などを指す。後者の形態では、対象物質の内包のために、本発明に係るポリペプチドの1種のみを用いてもよいし、2種以上の本発明に係るポリペプチドを用いてもよい。また、1種以上の本発明に係るポリペプチドと、1種以上の他の物質(例えば、他のポリペプチド、ポリマー、有機化合物、無機化合物等)とを併用してもよく、この場合、1種以上の本発明に係るポリペプチドと、1種以上の他の物質とが、共有結合又は非共有結合をしていてもよい。
ここで、非共有結合による結合の場合、例えば水素結合、静電的相互作用(もしくはイオン結合)、ファンデルワールス力、疎水性結合などを挙げることができる。本発明のポリペプチドは、カチオン性部分と非カチオン性部分(例えば疎水性部分)を含むため、例えばポリヌクレオチドなどの核酸類はホスホジエステル結合を有するため静電的相互作用によってポリペプチドに結合することができる。
一方、共有結合による結合の場合、対象物質は、本発明のポリペプチドのC末端又はN末端に直接的に又は(例えばリンカーを介して)間接的に結合することができる。いずれの場合にも、末端のアミノ基又はカルボキシ基は、対象物質の官能基と結合しやすい活性基を有していてもよいし、或いは、対象物質の生理活性を損なわない部位にポリペプチドのC末端又はN末端と結合しやすい活性基を有していてもよい。一般にアミノ基は、例えば、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、フルオロエステルなどの化合物と結合することが知られているので、そのような反応性基をポリペプチド又は対象物質に導入することができる。
上記リンカーは、対象物質の生理活性を損なわない任意の化学基であり、例えばポリオキシアルキレン(ここで、アルキレンは、例えばC2~C10アルキレンである。)、下記式で表されるサルコシンリンカー:
Figure 0007262105000003
(式中、nは、2~20を意味し、例えば、3~12、4~8、又は5~7である。)を挙げることができる。
さらにまた、対象物質が複数のポリペプチド分子によって内包もしくは付着される場合、例えばファンデルワールス力や疎水性結合によって、或いは物理的な作用によって、対象物質は、複数のポリペプチド分子が形成する構造体の空間内に部分的に又は完全に内包されうる。
本発明の組成物は、上記ポリペプチド及び上記対象物質の他に、担体、保存剤、溶解補助剤、pH調整剤、(蛍光)プローブなどの添加剤を含むことができる。
本発明の組成物は、例えば固体形態、液体形態などの形態を有する。
一方、別の実施形態によれば、上記組成物では、上記対象物質は上記ポリペプチドと独立して(もしくは別々に)存在していてもよい。本発明において「独立して存在」とは、分析データから、上記対象物質と上記ポリペプチドとの間に相互作用が認められない状態をいい、「一体して存在」以外の全ての態様を含む最も広義の用語として解釈されるものとする。上記組成物が、例えば固体形態である場合、対象物質を透過させる細胞と接触させる前に、上記対象物質と上記ポリペプチドを水性媒体(例えば生理食塩水、緩衝液もしくは緩衝塩水、水など)などの担体に溶解することによってその場で、それらの上記複合体が形成される。
上記ポリペプチドと上記対象物質の配合比(モル/モル)は、非限定的に、例えば0.1~5、好ましくは0.5~2である。
また、本発明の組成物の一実施形態は、Lys(K)、His(H)及びArg(R)から選ばれる1種又は2種以上の塩基性アミノ酸類の組み合わせが、2以上(例えば2~50、2~40、2~30、3~30、又は5~30)連続するカチオン性配列を含む第2のポリペプチドをさらに含有する。本実施形態の一例では、対象物質(例えばDNA)と第2のポリペプチドとがイオン性相互作用をして、複合体を形成する。該複合体は、第2のポリペプチドが対象物質取り囲み、内包した状態になっていてもよい。本態様の組成物中では、第1のポリペプチドの少なくとも一部と、前記第2のポリペプチドの少なくとも一部とが共有結合(例えば、リンカーを介した共有結合)した状態であってもよい。即ち、対象物質を内包する第2のポリペプチドの少なくとも一部が、第1のポリペプチドで修飾されていてもよい。第1のポリペプチドと、第2のポリペプチドとは、リンカーを介して共有結合していてもよい。リンカーについては特に制限はない。リンカーの一例は、マレイミド基とチオール基との付加反応によって形成された基を含むリンカーである。
4.細胞内デリバリーキット
本発明はさらに、上記1節に記載のポリペプチドを含む細胞内デリバリーキットを提供する。
上記キットは、上記ポリペプチドの他に、上記3節に記載の対象物質を含むことができる。
上記キットはさらに、水性媒体などの担体(もしくは希釈剤)、(蛍光)プローブなどを含んでもよい。
上記キットはさらに、細胞内デリバリーするための使用説明書を含むことができる。この使用説明書は、希釈剤中で本発明のポリペプチと対象物質を接触させる手順及び注意事項などを含むことができる。
5.細胞内への物質輸送方法
本発明はさらに、上記1節に記載のポリペプチドを細胞に接触させることにより、前記ポリペプチドと一体になって存在する、及び/又は前記ポリペプチドとは独立して存在する少なくとも1種の対象物質を前記細胞内に導入することを含む、細胞内への物質輸送方法を提供する。
本発明の方法では、対象物質が細胞内に輸送される経路ないしメカニズムの制限はない。本発明に係るポリペプチド、対象物質、もしくは態様によっては併用する他の物質の分子構造・性質・割合、各物質の存在状態、及び各物質間の相互作用の強弱等によって、輸送経路ないしメカニズムが変動する。前記ポリペプチドと対象物質とが独立して存在する態様では、エンドサイトーシスの一種であるマクロピノサートーシス経由で輸送される傾向があるが、この経路による輸送に制限されるものではない。
上記ポリペプチド及び対象細胞は、上記1節及び2節で説明したとおりである。また、上記方法では、上記ポリペプチドを含む、本発明の上記組成物及び/又は上記キットを使用してもよい。
上記細胞は、真核生物の細胞であり、例えば動物細胞、植物細胞、酵母細胞、糸状菌細胞、担子菌細胞などを含む。
好ましい動物細胞は、例えば昆虫細胞及び脊椎動物細胞であり、好ましい脊椎動物細胞は、例えば哺乳類細胞及び鳥類細胞である。また好ましい哺乳類細胞は、例えばヒト細胞、イヌ科細胞、ネコ科細胞、齧歯類細胞、有蹄類細胞などの細胞を含む。ここで、齧歯類には、例えばマウス、ラット、ハムズター、ウサギなどの動物を含む。また有蹄類には、例えばウシ、ウマ、ブタ、ラクダなどの動物を含む。
植物細胞は、双子葉植物の細胞及び単子葉植物を含む被子植物、裸子植物、コケ植物、シダ植物、草本植物、木本植物などの任意の細胞である。植物の具体例としては、例えば、ナス科[ナス(Solanum melongena L.)、トマト(Solanum lycopersicum)、ピーマン(Capsicum annuum L. var. angulosum Mill.)、トウガラシ(Capsicum annuum L.)、タバコ(Nicotiana tabacum L.)等]、イネ科[イネ(Oryza sativa)、コムギ(Triticum aestivum L.)、オオムギ(Hordeum vulgare L.)、ペレニアルライグラス(Lolium perenne L.)、イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)、メドウフェスク(Festuca pratensis Huds.)、トールフェスク(Festuca arundinacea Schreb.)、オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)、チモシー(Phleum pratense L.)等]、アブラナ科[シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ(Brassica campestris L.)、キャベツ(Brassica oleracea L. var. capitata L.)、ダイコン(Raphanus sativus L.)、ナタネ(Brassica campestris L., B. napus L.)等]、マメ科[ダイズ(Glycine max)、アズキ(Vigna angularis Willd.)、インゲン(Phaseolus vulgaris L.)、ソラマメ(Vicia faba L.)等]、ウリ科[キュウリ(Cucumis sativus L.)、メロン(Cucumis melo L.)、スイカ(Citrullus vulgaris Schrad.)、カボチャ(C. moschata Duch., C. maxima Duch.)等]、ヒルガオ科[サツマイモ(Ipomoea batatas)等]、ユリ科[ネギ(Allium fistulosum L.)、タマネギ(Allium cepa L.)、ニラ(Allium tuberosum Rottl.)、ニンニク(Allium sativum L.)、アスパラガス(Asparagus officinalis L.)等]、シソ科[シソ(Perilla frutescens Britt. var. crispa)等]、キク科[キク(Chrysanthemum morifolium)、シュンギク(Chrysanthemum coronarium L.)、レタス(Lactuca sativa L. var. capitata L.)、ハクサイ(Brassica pekinensis Rupr.)等]、バラ科[バラ(Rose hybrida Hort.)、イチゴ(Fragaria x ananassa Duch.)等]、ミカン科[ミカン(Citras unshiu)、サンショウ(Zanthoxylum piperitum DC.)等]、フトモモ科[ユーカリ(Eucalyptus globulus Labill)等]、ヤナギ科[ポプラ(Populas nigra L. var. italica Koehne)等]、アカザ科[ホウレンソウ(Spinacia oleracea L.)、テンサイ(Beta vulgaris L.)等]、リンドウ科[リンドウ(Gentiana scabra Bunge var. buergeri Maxim.)等]、ナデシコ科[カーネーション(Dianthus caryophyllus L.)等]などの植物が挙げられる。
上記細胞は、非限定的に、例えば、生物体内の細胞であってもよいし、或いは生物体外に取り出された細胞、初代培養細胞、株化細胞、寄託された細胞、生殖細胞(卵母細胞、精原細胞、植物卵細胞、植物精細胞等)、幹細胞(例えば体性幹細胞、胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞等)、疾患細胞などを含む。
上記対象物質の一例は、細胞内に導入されたときに、例えば,細胞の機能、形質、形態などの特性に影響を与えることができる物質である。
本発明の方法では、ポリペプチドを細胞に接触させる。
本発明の方法では、ポリペプチドを接触させる対象細胞の性質、状態については特に制限はない。植物細胞、酵母細胞などの細胞壁を有する細胞であっても、細胞壁を除去する前処理を施すことなく、対象細胞として用いることができる。勿論、細胞壁を酵素(例えばリゾチーム)で処理して破壊しプロトプラストもしくはスフェロプラストにしてから、対象細胞として用いてもよい。また、ポリペプチドを接触させる際の対象細胞は、組織化状態であっても、非組織化状態であってもよい。即ち、植物細胞を対象細胞とする態様では、ポリペプチドを植物個体や植物の種、葉、茎、根等の組織(処理がされていてもされていなくてもよい)、カルス(未分化状態の植物細胞塊)、等に接触させてもよい。
一例は、以下の通りである。
上記ポリペプチドを上記細胞に接触させるときには、適切な培地中で培養した細胞に、培養液中で上記ポリペプチド及び上記対象物質をそれぞれ所定量添加し、適切な温度及び適切な時間インキュベートすることができる。もしポリペプチドを蛍光物質(例えばFITCなど)でラベル化するときには、ポリペプチドが細胞内に侵入したことが、例えば蛍光顕微鏡等の手段で観察することができる。
また、植物の葉や根等の組織にポリペプチドを接触させる際は、シリンジ、スポイト等の器具を用いて、組織の所定の箇所にポリペプチドが接触するように、制御してもよい。
細胞内に輸送(導入もしくは送達)された対象物質は、細胞内で目的に応じた機能を果たすように使用することが可能になる。そのような使用には、非限定的に例えば以下のようなものが挙げられる。
遺伝子治療に使用するときには、疾患遺伝子と置換するための正しい遺伝子を含む、プラスミドなどのベクターを対象物質として用いて疾患組織もしくは器官の細胞内に輸送することができる。
腫瘍の治療に使用するときには、抗腫瘍剤を対象物質として用いて腫瘍組織の細胞内に輸送することができる。このとき、ポリペプチドと抗腫瘍剤からなるナノサイズに調製された複合体は、毛細血管を透過して腫瘍組織に送達されやすくなる。
ゲノム編集に使用するときには、例えばCrispr-Cas9の複合体を対象物質として用いて目的細胞内に輸送することができる。この方法によって、例えば植物の品種改良などに使用することができる。
細胞の改変に使用するときには、例えば体細胞を人工多能性幹細胞に改変するための転写因子を細胞内に送達することができる。
本発明の組成物を生体(例えばヒトを含む哺乳類)に投与する方法としては、経口投与又は非経口投与(例えば注射、点眼、点鼻、経肺、皮膚、脳室内を介した投与)のいずれでもよく、好ましくは注射(例えば静脈内投与)である。また、投与は、例えば静脈注射による全身投与又は患部に注射することによる局所投与であってもよい。
以下の実施例を参照しながら本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって制限されないものとする。
[実施例1]
<材料>
以下の実施例では、渡辺化学工業株式会社、東京化成工業株式会社、富士フイルム和光純薬株式会社、又はシグマアルドリッチ社から入手した材料を用いた。
化学酵素重合のモノマーに用いたトリペプチドエステルは、後述の手順で合成した。
パパインは、富士フイルム和光純薬株式会社から入手したものを用いた。その活性は約0.5Ug-1である。1ユニットは、1分間当たりに、1モルのN-ベンゾイル-dl-アルギニンp-ニトロアニリドを、pH7.5及び25℃で加水分解するのに必要なパパインの量として定義される。
菌(Tritirachium album)由来のプロテイナーゼKは、富士フイルム和光純薬株式会社から入手したものを用いた。活性は、21U/mgであった。1ユニットは、着色物質として、pH7.5のリン酸緩衝液中の基質としてヘモグロビンを用いて、フォリン-チオカルトー試薬(Folin-Ciocalteu reagen)と37℃で1分間反応させた、1μmolのチロシンに相当するペプチドを生じるプロテイナーゼKの量として定義される。
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)は、富士フイルム和光純薬株式会社から入手し、細胞培養培地として用いた。
ヒト胎児腎(HEK)細胞(ATCC,cat.no.CRL-1573)は、ウシ胎児血清(FBS)、非必須アミノ酸(0.1mM)、l-グルタミン(2mM)及び1v/v%のペニシリン-ストレプトマイシンが添加されたDMEM培地により、5%のCOインキュベータ中で、37℃で培養された。
タンパク質濃度は、株式会社アプロサイエンス社製のXL-Bradfordアッセイキットにより同定した。
細胞溶解バッファは、プロメガ社(米国)から入手した。
共焦点顕微鏡による可視化のために、サーモフィッシャーサイエンス社(米国)から入手したDNA結合色素Hoechst33342によって、細胞を染色した。
<測定>
H(500MHz)及び13C(125MHz)NMRスペクトルは、VARIAN NMR装置で測定した。
IRスペクトルは、島津製作所(株)製のIRPrestige-21分光器を用いた。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析は、ultrafleXtreme MALDI-TOF分光光度計(ブルカーダルトニクス社製(米国))を用い、15kVの加速電圧で、反射モードで測定した。試料は、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含む水/アセトニトリル(0.8mg/mL)に溶解し、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)の水/アセトニトリル溶液(10mg/mL)と混合し、及びターゲットプレート(MTP 384 ground steel BC target plate)上に堆積させた。
CDスペクトルは、分光せん光計「J-820」(JASCO社製)を用いて測定した。
蛍光スペクトルは、分光光度計「FP-8500」(JASCO社製)を用いて測定した。
逆相高速液体クロマト(RP-HPLC)分析は、自動サンプル計「AS-2055」、グラジエントポンプ「PU2089」、カラムオーブン「CO-4060」、UV/vis検出器「UV-4075」、及び4液グラジエントポンプ「PU-2089 Plus」(JASCO社製)からなるHPLCシステムにより、カラム「YMC-Triart C18」(粒子サイズ5μm、150×3mm、YMC社製)を用いて、25℃で流量1mL/minで行った。移動相は、アセトニトリル(溶出液A)、ミリ-Q水(溶出液B)、及び0.1v/v%のTFAが添加されたミリ-Q水(溶出液C)から構成した。Boc-Glyは、内部標準として用いた。ポリペプチドのタンパク質分解安定性の分析のために、Boc-Glyが添加された100μLのポリペプチド試料溶液を注入し、移動相の組成を、溶出液A:B:C=88%:2%:10%の組成から、溶出液A:B:C=64%:26%:10%の組成に、約24分間で直線的に変化させて、溶出させた。
<モノマーの合成>
以下の合成例において、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を表し、任意のアミノ酸に付記された場合は、当該アミノ酸のアミノ基がBoc(tert-ブチトキシカルボニル基)で保護されていることを表し、Zはベンジルオキシカルボニル基を表し、任意のアミノ酸に付記された場合は、当該アミノ酸のアミノ基がZで保護されていることを表し、また、任意のアミノ酸に付記されたOEtは、当該アミノ酸のカルボン酸がEt(エチル)エステルになっていることを表す。
Aibはα-アミノイソブタン酸、Glyはグリシン、Lysはリシン、Alaはアラニン、Pheはフェニルアラニン、Leuはロイシンをそれぞれ表す。
<HCl・AibGly-OEtの合成>
Boc-Aib(4.06g,20.0mmol),HCl・Gly-OEt(2.79 g,20mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物(HOBt・HO)(2.97g,22.0mmol)を、フラスコ内でスターラーバーで撹拌しつつ混合し、0℃の窒素雰囲気下でクロロホルム(CHCl)に溶解した。トリエチルアミン(2.79mL,20.0mmol)を添加した後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)(4.22g,22.0mmol)のクロロホルム溶液を約30分間かけて滴下添加した。溶液を0℃で1時間及び25℃で24時間撹拌した。溶液を、5%NaCO水溶液で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥した。MgSOをろ別後、有機溶媒をロータリーエバポレータによって濃縮したところ、白色固体を得た。白色固体をジクロロメタンに0℃で溶解した。TFA(11.5mL,150mmol)を溶液に添加し、混合物を25℃で撹拌した。24時間後、有機溶媒を減圧下で除去した。粘着性の固体を定量的収率で得た。
<Lys(Boc)AibGly-OEtの合成>
Z-Lys(Boc)(3.80g,10mmol),HCl・AibGly-OEt(2.25g,10.0mmol)及びHOBt・HO(1.49g,11.0mmol)をフラスコ内でスターラーバーで撹拌しつつ混合し、0℃の窒素雰囲気下でクロロホルム(CHCl)10mLに溶解した。トリエチルアミン(1.39mL,10.0mmol)を添加した後、EDC・HCl(2.11g,11.0mmol)のクロロホルム溶液を約30分間かけて滴下添加した。溶液を0℃で1時間及び25℃で24時間撹拌した。溶液を、5%NaCO水溶液で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥した。MgSOをろ別後、有機溶媒をロータリーエバポレータによって濃縮した。ヘキサンと酢酸エチルを溶出液として用いて、粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィによって精製した。Z-Lys(Boc)AibGly-OEtを白色固体として得た。Z-Lys(Boc)AibGly-OEtをメタノール(47.5mL)中に溶解した。溶液に窒素ガスを15分間バブリングした後、カーボン(0.525g,10wt%)に担持されたパラジウムを注意深く添加した。窒素雰囲気を水素雰囲気で置き換えた後、25℃で溶液を48時間撹拌した。溶液をセライトでろ過し、ろ過物を減圧下で濃縮した。得られた粘性固体を水中に分散して、凍結乾燥した。Lys(Boc)AibGly-OEtを白色固体として得た。収率は69%であった。
H NMR(500MHz,CDCl):δ1.16(t,3H,-OCH ),1.22(m,2H,-CH(CH -)-),1.30-1.47(m,13H,-C(C ),-C(C -,-CH*(CHCH -)-),1.66(m,2H,-CH*(C -)-),2.88(m,2H,-C NHCOC(CH),3.63(m,1H,-C (CH-)-),3.78(m,2H,-COC NH-),4.05(m,2H,-OC CH),6.77(m,1H,-CHCOC(CH)),8.22 (t,1H,-C(CHCO-),8.41(m,2H,-N ),8.82(m,1H,-CHCO-)
13C NMR(132MHz,CDCl):δ14.1,21.6,23.5,26.5,28.3,30.0,30.4,40.9,52.3,56.3,60.3,77.4,155.6,168.0,169.8,173.9
IR(neat):3296,3217,3047,2980,2939,2873,1168,1529,1456,1392,1366,1252,1173,1018,935,864,781cm-1
<HCl・AibAla-OEtの合成>
出発原料としてBoc-Aib及びHCl・Ala-OEtを用いた以外は、HCl・AibGly-OEtと同様にして、HCl・AibAla-OEtを合成した。HCl・AibAla-OEtを白色粘着性固体として定量的収率で得た。
<Lys(Boc)AibAla-OEtの合成>
出発原料としてHCl・AibGly-OEtを用いた以外は、Lys(Boc)AibGly-OEtと同様にして、Lys(Boc)AibAla-OEtを合成した。Lys(Boc)AibAla-OEtを白色粘着性の固体として得た。収率は84%であった。
H NMR (500MHz,CDCl):δ1.16(t,3H,-OCH ),1.27(m,2H,-CH(CH -)-),1.30-1.45(m,18H,-C(C ,-CH*(C )-,-C(C -,-CH(CHCH -)-),1.67(m,2H,-CH*(C -)-),2.87(m,2H,-C NHCOC(CH),3.56(m,1H,-C (CH-)-),3.81(m,1H,-COC(CH)NH-),4.04(m,2H,-OC CH),4.23(m,1H,-C (CH)-),6.74(m,1H,-CHCOC(CH)),7.92(t,1H,-C(CHCO-),8.36(m,2H,-N ),8.78(m,1H,-CHCO-)
13C NMR(132MHz,CDCl):δ14.0,16.8,21.6,23.5,26.2,28.3,30.0,47.9,52.3,56.2,60.3,66.4,77.4,155.6,168.0,172.6,173.2
IR(neat):3381,3244,2982,2940,2874,1688,1520,1454,1391,1366,1271,1250,1215,1175,1053,1020,866cm-1
<HCl・AibLeu-OEtの合成>
出発原料としてBoc-Aib及びHCl・Leu-OEtを用いた以外は、HCl・AibGly-OEtと同様にして、HCl・AibLeu-OEtを合成した。HCl・AibLeu-OEtを白色粘着性固体として定量的収率で得た。
<Lys(Boc)AibLeu-OEtの合成>
出発原料としてHCl・AibLeu-OEtを用いた以外は、Lys(Boc)AibGly-OEtと同様にして、Lys(Boc)AibLeu-OEtを合成した。Lys(Boc)AibLeu-OEtを白色粘着性固体として得た。収率は51%であった。
H NMR(500MHz,CDCl):δ0.85(m,6H,-CH(C ),1.15(t,3H,-OCH ),1.20-1.45(m,20H,-CH(CH -)-,-C(C ,-CH(C )-,-C(C -,-CH(CHCH -)-),1.51(m,1H,-C(CH),1.67-1.79(m,2H,-CH(C CH(CH)-,-CH*(C -)-),2.86(m,2H,-C NHCOC(CH),3.37(m,1H,-C (CH-)-),3.82(m,1H,-COC(CH-)NH-),4.06(m,2H,-OC CH),4.27(m,1H,-C*(CH)-),6.74(m,1H,-CHCOC(CH)),7.92(t,1H,-C(CHCO-),8.36(m,2H,-N ),8.78(m,1H,-CHCO-)
13C NMR(125MHz,CDCl):δ14.1,21.0,21.3,23.0,23.9,26.2,28.3,30.3,50.5,50.8,52.3,56.3,60.3,60.6,77.3,155.5,168.0,172.0,173.3
IR (neat):3331,3208,3046,2959,2870,1682,1516,1456,1386,1366,1271,1252,1173,1030,945,864,777cm-1
<HCl・AibLys(Boc)-OMeの合成>
Z-Aib(6.17g,26.0mmol),HCl・Lys(Boc)-OMe(7.71g,26.0mmol)及びHOBt・HO(3.86g,28.6mmol)をフラスコ中でスターラーバーで混合し、0℃、窒素雰囲気下で、CHCl(25mL)に溶解した。トリエチルアミンを添加した後、EDC・HCl(5.48g,28.6mmol)の溶液を、滴下により約30分間で添加した。溶液を0℃で1時間及び25℃で24時間撹拌した。溶液を5%NaCO水溶液で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥した。MgSOをろ別後、有機溶媒をロータリーエバポレータで濃縮した。得られた粘着性固体をメタノール(130mL)中に溶解した。溶液に窒素ガスを15分間バブリングした後、カーボン(1.25g,10wt%)に担持されたパラジウムを注意深く添加した。窒素雰囲気を水素雰囲気で置き換えた後、25℃で溶液を48時間撹拌した。溶液をセライトでろ過し、ろ過物を減圧下で濃縮した。HCl・AibLys(Boc)-OMeを白色粘着性固体として定量的収率で得た。
<Lys(Boc)AibLys(Boc)-OMeの合成>
Z-Lys(Boc)(9.21g,24.2mmol),HCl・AibLys(Boc)-OMe(8.35g,24.2mmol)及びHOBt・HO(3.60g,26.6mmol)をフラスコ中でスターラーバーで混合し、0℃、窒素雰囲気下で、CHCl(25mL)に溶解した。溶液を0℃で1時間及び25℃で24時間撹拌した。溶液を5%NaCO水溶液で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥した。MgSOをろ別後、有機溶媒をロータリーエバポレータで濃縮した。ヘキサンと酢酸エチルを溶出液として用いて、粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィによって精製した。Z-Lys(Boc)AibLys(Boc)-OEtを白色固体として得た。白色固体をMeOH(60mL)中に溶解した。溶液に窒素ガスを15分間バブリングした後、カーボン(0.864g,10 wt%)に担持されたパラジウムを注意深く添加した。窒素雰囲気を水素雰囲気で置き換えた後、25℃で溶液を48時間撹拌した。溶液をセライトでろ過し、ろ過物を減圧下で濃縮した。得られた粘性固体を水中に分散して、凍結乾燥した。Lys(Boc)AibLys(Boc)-OMeを白色固体として得た。収率は63%であった。
H NMR(500MHz,CDCl):δ1.15-1.45(m,32H,-CH(CH -)-×2,-C(C ×2,-C(C -,-CH(CHCH -)-×2),1.70-1.85(m,4H,-CH(C -)-×2),2.76(m,2H,-C NHCOC(CH),2.87(m,2H,-C NHCOC(CH),3.60(m,3H,-OC ),3.86(m,1H,-C (CH-)-),4.20(m,1H,-C (CH-)-),6.76(m,2H,-CHCOC(CH)×2),7.79-7.87(m,1H,-NCO-),7.65-8.50(m,1H,-NCO-),8.78-8.86(m,2H,-N
13C NMR(125MHz,CDCl):δ26.3,28.3,29.0,38.2,56.3,77.3,155.5,168.0,172.7,173.4
IR(neat):3331,2976,2934,2866,1682,1514,1445,1391,1366,1271,1250,1171,1040,1007,866,781cm-1
<HCl・AibPhe-OEtの合成>
出発原料として、Boc-Aib及びHCl・Phe-OEtを用いた以外は、HCl・AibGly-OEtと同様にして、HCl・AibPhe-OEtを製造した。HCl・AibPhe-OEtを白色粘着性固体として、定量的収率で得た。
<Lys(Boc)AibPhe-OEtの合成>
HCl・AibPhe-OEtを出発原料として、Lys(Boc)AibGly-OEtと同様にして、Lys(Boc)AibPhe-OEtを合成した。Lys(Boc)AibPhe-OEtを白色粘着性固体として得た。収率は63%であった。
H NMR(500MHz,CDCl):δ1.06(t,3H,-OCHCH),1.20-1.45(m,16H,-CH(CH -)-,-C(C ,-C(C -,-CH(CHCH -)-),1.67(m,2H,-CH(C -)-),2.88(m,2H,-CH(C Ar)-),3.03(m,2H,-C NHCOC(CH),3.80(m,1H,-C (CH-)-)3.99(m,2H,-OC CH),4.39(m,1H,-C*(CHAr)-),6.79(m,1H,-CHCOC(CH)),7.15-7.35(m,5H,Ar),7.94(m,1H,-NCO-),8.26(m,1H,-NCO-),8.61(m,2H,-N
13C NMR(125MHz,CDCl):δ13.9,21.6,24.0,25.6,28.3,30.6,36.7,52.3,54.1,56.3,60.4,77.4,126.4,128.2,129.2,137.6,155.6,168.1,171.4,173.3
IR(neat):3379,3285,3059,2980,2938,2870,1724,1688,1651,1518,1443,1389,1366,1350,1275,1217,1171,1140,1030,995,864,743,700cm-1
<トリペプチドエステルの重合>
いずれの重合も、ガラス管中で行った。いずれの重合でも、基本的には、パパイン又はプロテイナーゼK(50mg/mL)の溶液を、リン酸緩衝液(1M,pH8.0)のトリペプチドエステル([M]=0.1-0.2mM)溶液に添加し、得られた溶液を、40又は60℃で10-60分間撹拌し、その後、遠心分離(9,000rpm,15min)により、沈殿物を収集し、ミリQ水で2回洗浄した。凍結乾燥後、各ポリペプチドを白色粉末として、9-54%の収率で得た。
得られたポリペプチドを表1に示す。
Figure 0007262105000004
<Boc基の脱保護処理>
各ポリペプチドを、フラスコ中で、25℃で、TFAに溶解した。24時間後、溶媒を減圧下で除去した。得られた生成物を凍結乾燥し、白色粉末として脱保護されたポリペプチドを得た。収率は11-55%であった。
<テトラメチルローダミン(TAMRA)-標識されたポリペプチドの合成>
各ペプチドを以下の方法に従ってテトラメチルローダミン(TAMRA)で標識した。
ジメチルスルホキシド(DMSO)のテトラメチルローダミン-5-イソチオシナネートの溶液を、ペプチドの溶液に添加した。生じた溶液を25℃で14時間撹拌した。この混合物を、過剰のミリQ水中に注いだ。遠心分離により、沈殿物を収集し、ミリQ水で洗浄した。凍結乾燥後、桃色固体を11-55%の収率で得た。
<評価>
<円二色性(CD)分光法>
CDスペクトルは、JASCO J-820分光偏光計で測定した。測定には、光路長0.1cmの石英キュベットを用いた。スペクトルは190nmから240nmまで測定した。0.1wt%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加した各ペプチド(P(LysAibXaa):Xaa=Gly,Ala,Leu,Lys及びPhe)の30μM溶液について、20℃、窒素雰囲気下で測定した。データは、平均残留質量楕円率(mean residual mass ellipticity(deg cm dmol-1))として示す。ペプチド溶液の濃度は、各ペプチドの繰り返し単位の濃度から調整した。
結果を図1に示す。
上記CDスペクトル測定結果から、本発明の式(I)のP(LysAibGly)はランダムな二次構造を形成するが、P(LysAibAla)は範囲外のP(LysAibLys)と比較して、ヘリックス構造を多く含む二次構造を形成することが分かった。
<ヘパリンアッセイ>
蛍光偏光を用いて、TAMRA標識された各ペプチドとヘパリン硫酸との親和性を評価した。NaCl(150mM)を含む4mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.2)中のポリペプチド及びヘパリン硫酸を、このアッセイのために調製した。ペプチド溶液をヘパリン硫酸溶液と混合した。ポリペプチドの最終濃度は、543nm(Δε=88,000cm-1-1)の吸光度により決定される50nMに調整した。混合物を、25℃で30分間インキュベーションした後、570nmの蛍光異方性を、偏光子(490nmで励起)を用いた蛍光スペクトルを用いて測定した。データを正規化するために、ヘパリン硫酸の非存在下での蛍光異方性を標準とした。
結果を図2に示す。なお比較例として、ペプチド固相合成法により合成したTat(RKKRRQRRR(配列番号1))及びR9(RRRRRRRRR(配列番号2))のヘパリンアッセイ結果もあわせて示す。
上記ヘパリンアッセイの結果から、本発明の式(I)のP(LysAibGly)及びP(LysAibAla)は、既知の細胞透過性配列Tat及びR9と比較して、細胞膜への吸着特性は低いと考えられる。このことから、P(LysAibGly)及びP(LysAibAla)は細胞膜上に留まることなく効率的に細胞内へ導入することが可能な物質であることが分かった。
<タンパク質分解安定性アッセイ>
各ポリペプチド(1mg/mL)を含む10mMリン酸緩衝液(pH=7.2)、及びトリプシン(10μg/mL)を含む10mMリン酸緩衝液(pH=7.2)を、37℃でインキュベーションし、1000rpmで撹拌して混合した。数時間後、60μLのペプチド溶液を、150μLの1%TFAに注ぎ、トリプシンを失活させた。30μLのBoc-Gly溶液を内部標準として添加した後、混合物を13,500rpmで遠心分離し、失活トリプシンを沈殿させた。上清を、RP-HPLC分析に使用し、ピーク面積を計算することによって、残留ポリペプチドの量を決定した。
結果を図3に示す。なお比較例として、Tat及びR9の結果もあわせて示す。
上記タンパク質分解安定性アッセイの結果から、本発明の式(I)のP(LysAibGly)及びP(LysAibAla)は、範囲外のP(LysAibLys)、並びに既知の細胞透過性配列Tat及びR9と比較して、非天然アミノ酸残基であるAibを配列内に含むことにより酵素分解に対して高い耐性を有することが分かった。すなわち、細胞内外において長期的な安定性を有する物質であることが分かる。
[各ポリペプチドの動物細胞内透過性評価]
HEK 293細胞を24ウェル培養プレートに播種し(20,000細胞/ウェル)、FBSを含む1mLのDMEM中、37℃、5%CO下でインキュベーションした。24時間後、培地を、10%FBS及び5μMの各ポリペプチド試料を含有する500μLの新鮮培地と交換した。各インキュベーション時間の後、培地を除去し、細胞を400μLのトリプシン-EDTAで15分間トリプシン処理した。剥離した細胞を、4℃、1,600rpmで3分間遠心分離して収集した。細胞ペレットをPBS中に分散させて、4℃、1,600rpmで3分間遠心分離した。細胞溶解緩衝液で処理した後、細胞ペレットをホモジナイザーで均一化した。細胞片を13,500rpmの遠心分離で除去し、上清を各測定に用いた。マイクロプレートリーダーを用いて、570nmにおける各溶解物の蛍光強度を測定した。タンパクの重量によって、相対蛍光単位(RFU)を標準化するために、各ウェル中のタンパク量を決定するのにブラッドフォードタンパクアッセイキット(Bradford protein assay kit)を用いた。
結果を図4に示す。なお比較例として、Tat及びR9の結果もあわせて示す。
上記結果から、本発明の式(I)のP(LysAibGly)、P(LysAibAla)は、従来の細胞透過性配列であるTatやR9と比較して長時間にわたって高い細胞内侵入性能(インターナリゼーション)を示すことが分かった。すなわち、高い酵素分解耐性により長期的に細胞内への導入が可能な細胞透過性ペプチドとして機能することが分かった。
<細胞生存率>
HEK 293細胞を、FBSを含む100μLのDMEM 中で、96ウェル培養プレート上に播種した(2,500細胞/ウェル)。プレートを37℃,5%COでインキュベートした。24時間のインキュベート後、培地を5μMの各ポリペプチド試料を含有する100μLの新鮮培地と交換した。各インキュベーション時間の後、培地を除去し、細胞を100μLの新鮮な培地で2回洗浄した。最後に、各ウェルを100μLの新鮮培地で満たし、20μLの「CellTiter 96 AQueous One Solution Reagent」(登録商標;プロメガ株式会社)を各ウェルに添加した。37℃、5%CO下での2時間のインキュベーション後、490nmでの各ウェルの吸光度を、96ウェルプレートリーダーを用いて測定した。
結果を図5に示す。
図5から、本発明の式(I)のP(LysAibGly)、P(LysAibAla)は、従来の細胞透過性配列であるTatやR9と同様に、細胞侵入(インターナリゼーション)性能を示す濃度領域において細胞毒性は全く示さないことが理解できる。
[共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を用いた動物細胞へのポリペプチドの内在化評価]
FBSを含む1mLのDMEM培地中のHEK293細胞を3.5cm皿上に播種した。24時間のインキュベーション後、培地をFBS及び各ポリペプチド試料を含有する500μLの新鮮培地と交換した。ポリペプチドの最終濃度を5μMとした。2,8,及び16時間のインキュベーションの後、各ウェル中の培地を除去し、細胞を、Hoechst33342を含有する500μLの新鮮なDMEMとともに、37℃で15分間インキュベーションした。培地を除去し、皿を新鮮なDMEMで充填した。Hoechst33342核メーカ及び各テトラメチルローダミン標識化ポリペプチドの蛍光シグナルを、それぞれ405nm及び555nm(ダイオード)の励起波長で、共焦点レーザー走査顕微鏡LSM700(Carl Zeiss,Oberkochen,Germany)を用いて観察した。顕微鏡写真の共局在化分析はオペレーティングソフトウェア「Zen2011」を用いて行った。
結果を図6、図7及び図8に示す。
図6、7、8から、本発明の式(I)のP(LysAibAla)は、既知の細胞透過性配列Tatと比較して、長期間にわたり効率的に細胞内へ導入されることが分かった。
<各ポリペプチドの植物細胞内透過性及び植物細胞へのポリペプチドの内在化評価>
細胞質内に黄色タンパク質(YFP)を発現しているシロイヌナズナAlabidopsis thaliana(YFPox)の葉を、直径1cmの円状に切断した。この葉の切片を、1.5mLのチューブに入れ、0.08MPaで1分間お及び-0.08MPaで1分間、100μLのTAMRA-標識された各ポリペプチド(50μM)に浸漬した。処理後の葉の切片を、暗所条件で、25℃、3時間インキュベーションした。CSLMを用いて、この葉の切片について、ポリペプチド内在化の定量的評価を行った。TAMRA標識化ポリペプチドの細胞内分布は、555nm(ダイオード)の励起波長で直接観察された。
結果を図9に示す。なお比較例として、Tat及びR9の結果もあわせて示す。
図9から、本発明の式(I)のP(LysAibAla)は、既知の細胞透過性配列Tatと比較して、TAMRA-標識由来の蛍光を示す部位が黄色タンパク質の存在する細胞質とほぼ一致しており、植物細胞においても効果的に細胞内へ導入されることが分かった。
[実施例2]
<カチオン性キャリアペプチドの合成>
スペーサー(テトラエチレングリコール,TEG)を介してマレイミド基(MAL)と結合した2種類のカチオン性キャリアペプチド、
MAL-TEG-(KH)14(配列部分:KHKHKHKHKHKHKHKHKHKHKHKHKHKH(配列番号3))、及び
MAL-TEG-(RH)14(配列部分:RHRHRHRHRHRHRHRHRHRHRHRHRHRH(配列番号4))
を、それぞれFmoc固相法により合成した。ペプチドの純度および分子量は,逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)およびマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF-MS)によりそれぞれ確認した。
なお、Kはリシン、Hはヒスチジン、Rはアルギニンを意味する。
<ポリペプチドの合成>
モノマーLysAibAlaのトリペプチドであって、リシンのN末端にシステイン(C)が結合したC-(LysAibAla)(配列:CKXaaAKXaaAKXaaA、Xaa=Aib(配列番号5))をFmoc固相法により合成し、純度および分子量をRP-HPLCおよびMALDI-TOF-MSによりそれぞれ確認した。
<カチオン性キャリアペプチド-DNA複合体の調製>
トゲオキヒオドシエビ由来ルシフェラーゼ(NanoLuc)をコードするプラスミドDNA(pDNA、p35S-NanoLuc-tNos)を準備した。20μgのpDNAを含む水溶液に、上記で調製した、2mg/mLのMAL-TEG-(KH)14あるいはMAL-TEG-(RH)14の水溶液を、N/P比(カチオン性キャリアペプチドに含まれる正に帯電した窒素とpDNAに含まれる負に帯電したリンのモル比)2の割合で混合し,全量が800μLとなるように調製した。これらの混合溶液をそれぞれ、4℃で30分間インキュベートすることにより、カチオン性キャリアペプチド-DNA複合体、即ち、MAL-TEG-(KH)-14/pDNAおよびMAL-TEG-(RH)14/pDNA、をそれぞれ得た。
<カチオン性キャリアペプチド-DNA複合体のポリペプチドによる修飾>
カチオン性キャリアペプチドが有するマレイミド基と、C-(LysAibAla)3が有するシステイン(C)のチオール基とを付加反応させることで、上記で得られた各複合体を、上記ポリペプチドで修飾した。具体的には、以下の通りである。
各複合体を含む溶液(800μL)に、上記で調製したC-(LysAibAla)およびHEPES緩衝液(pH7.6)を終濃度がそれぞれ6μMおよび5mMとなるように加え、攪拌しながら25℃で1時間インキュベートさせることにより、チオール/マレイミド付加反応を進行させた。
反応後の溶液をMALDI-TOF-MSで分析する事により、複合体へのC-(LysAibAla)修飾を確認した。また,反応溶液をRP-HPLCで分析し、ピーク面積から未反応のC-(LysAibAla)を定量する事により、複合体中に存在するマレイミド基(5μM)の修飾率を算出した。さらに動的光散乱(DLS)測定により、複合体の流体力学直径を求めた。
MALDI-TOF-MS分析は,ultrafleXtreame MALDI-TOF分光光度計(Bruker Daltonics社製)を用い、15kVの加速電圧で,反射モードで測定した。試料は、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含む水/アセトニトリル(0.8mg/mL)に溶解し、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)の水/アセトニトリル溶液(10 mg/mL)と混合し、ターゲットプレート(MTP 384 ground steel BC target plate)上に堆積させた後、乾燥させた。
分析の結果、C-(LysAibAla)とそれぞれ結合したMAL-TEG-(KH)14およびMAL-TEG-(RH)14の分子量に相当するピークが観測されたことから、複合体はC-(LysAibAla)により修飾されたことが明らかとなった。
即ち、それぞれ以下の構造の複合体1及び2がそれぞれ得られた。
Figure 0007262105000005
RP-HPLC分析は,自動サンプル計「AS-2055」,グラジエントポンプ「PU2089」、カラムオーブン「CCO-4060」,UV/vis検出器「UV-4075」、及びグラジエントポンプ「PU-2089 Plus」(JASCO社製)からなるHPLCシステムにより、カラム「YMC-Triart C18」(粒子サイズ5μm、150×4.6mm、YMC社製)を用いて、25℃で流量1mL/minで行った。移動相は、アセトニトリル(溶出液A)、Milli-Q水(溶出液B)、及び1%(v/v)のTFAが添加されたMilli-Q水(溶出液C)から構成した。Boc-Proは内部標準、(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)は還元剤としてそれぞれ用いた。Boc-Pro(終濃度:100μg/mL)とTCEP(終濃度:50mM)が添加された100μLの試料を注入し、移動相の組成を、溶出液A:B:C=80%:10%:10%の組成から溶出液A:B:C=35%:55%:10%の組成に30分間で直線的に変化させて溶出させた。
ピーク面積から未反応のC-(LysAibAla)を定量した結果、複合体1および複合体2それぞれにおけるマレイミド基の修飾率は,それぞれ88±7%および78±5%と見積もられた。
試料溶液(800μL)をキャピラリーセル(DTS1070,Malalvern Panalytical社製)に移し、ゼータ電位計(Zetasizer Nano-ZS,Malalvern Panalytical社製)を用いてDLS測定を行った。
測定の結果,複合体1および複合体2はそれぞれ80±1nmおよび89±2nmの流体力学直径を示した。
<ポリペプチドで修飾したカチオン性キャリアペプチド-DNA複合体(修飾複合体)による植物への遺伝子導入>
モデル植物としてベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)を選択した。ベンサミアナタバコは以下の手順で準備した。
まず、土壌及びバーミキュライトの2:1混合物を含有する栽培媒体を含むポット中で種子を発芽させた。発芽した植物は、植物インキュベーター(Biotron NK system社製)内で22℃の長日条件(16時間明期,8時間暗期)下で4週間成長させた。成長したベンサミアナタバコの葉に,上記で調製した修飾複合体を含む水溶液を浸透させ、植物体を植物インキュベーター(Biotron NK system社製)内で16時間インキュベートした後、NanoLucアッセイを製造業者(Promeg社)のプロトコルに従って行い、遺伝子導入効率を定量した。具体的には、葉の複合体溶液が浸透した領域を直径1cmのディスク状にくり抜き、Renilla Luciferase Assay Lysis Buffer(100μL,Promega社製)中で溶解させた。溶解物を遠心分離し、得られた上清(50μL)をNano-Glo Luciferase Assay Substrate(Promega社製)とNano-Glo Lusiferase Assay Buffer (Promega社製)の混合液(50μL)に加え、相対的光単位(RLU)をルミノメーター(GloMax20/20、Promega社製)で測定した。また、上清中のタンパク質量をBradford assay試薬(APRO SCIENCE社製)を用いて決定し、そして相対的光単位/タンパク質重量(RLU/mg protein)を得た。修飾複合体溶液を浸透させていない未処理の葉についても同様の操作でRLU/mg proteinを決定し、その値をバックグランドとして補正に使用した。補正後のRLU/mg蛋白質の平均値±標準偏差(n=4)を遺伝子導入効率とした。なお、ネガティブコントロールとして、20μgのpDNA(p35S-NanoLuc-tNOS)を含む水溶液を浸透させた葉についても同様の実験を行い,遺伝子導入効率を算出した。
複合体1、複合体2、およびnaked pDNA(ネガティブコントロール)の遺伝子導入効率を図10に示す。複合体1および複合体2それぞれの遺伝子導入効率はnaked pDNAと比較して有意に高い値を示した。この結果により、C-(LysAibAla)で修飾した核酸含有複合体を用いることで、植物へ外来遺伝子を導入できることが示された。
本発明によって提供される、細胞毒性がほとんどない、高い酵素分解耐性を有する、並びに長時間にわたって高い細胞内侵入性能(インターナリゼーション)を示すポリペプチドは、対象物質を安全にかつ効率よく目的細胞内に輸送することができるため、例えば医学、農学、分子生物学等の分野で利用可能である。
配列番号1~5:合成ペプチド

Claims (11)

  1. 対象物質を細胞内へ輸送するためのポリペプチドであって、
    下記式(I):
    Figure 0007262105000006
    [式中、nはであり;R及びRメチル基であり;R4-アミノブチル基であり;Rメチル基であり;並びに、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端は前記対象物質との間に複合体を形成することが可能な反応性官能基を含む。
    で表される、ポリペプチド。
  2. 前記対象物質が、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、天然もしくは非天然核酸、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アンチセンス分子、miRNA、siRNA、プラスミド、低分子量化合物、糖、脂質、糖脂質、造影物質、薬物、ナノ粒子、及び量子ドットからなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 前記C末端が、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のモノアルキルアミノ基もしくはジアルキルアミノ基、又はアミノ基により修飾されている、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
  4. 前記N末端が、アシル基(-C=O-OR;RはC1~C10のアルキル基)、アルコキシカルボニル基(-C=O-OR;RはC1~C10のアルキル基)、又はC1~10のアルキル基(前記アルキル基は、炭素鎖中の1以上の炭素が、酸素、窒素、硫黄によって置換されていてもよい)により修飾されている、請求項1~のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  5. 前記反応性官能基が、マレイミド基を含む修飾基又はチオール基を含む修飾基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリペプチド(第1のポリペプチド)と対象物質とを含み、前記対象物質は前記ポリペプチドと一体となって存在しているか、或いは前記ポリペプチドと独立して存在していることを特徴とする細胞内浸入性組成物。
  7. 前記対象物質が、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、天然もしくは非天然核酸、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アンチセンス分子、miRNA、siRNA、プラスミド、低分子量化合物、糖、脂質、糖脂質、造影物質、薬物、ナノ粒子、及び量子ドットからなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
  8. Lys、His及びArgから選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸の組み合わせが、2以上連続するカチオン性配列を含む第2のポリペプチドをさらに含有する、請求項又はに記載の組成物。
  9. 前記第1のポリペプチドの少なくとも一部と、前記第2のポリペプチドの少なくとも一部とが結合している請求項に記載の組成物。
  10. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む細胞内デリバリーキット。
  11. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリペプチドをインビトロで細胞に接触させることにより、前記ポリペプチドと一体になって存在する、及び/又は前記ポリペプチドとは独立して存在する少なくとも1種の対象物質を前記細胞内に導入することを含む、細胞内への物質輸送方法。
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