好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
対象者の心臓の拍動間隔を拍動間隔測定手段4で測定し、この拍動間隔測定手段4で測定された連続する所定個数(例えば、少なくとも21個程度)の拍動間隔Rから拍動間隔変換手段8により拍動間隔像rを算出し、この拍動間隔像rの時間的に隣り合う拍動間隔像rから正規化拍動間隔演算手段9により正規化拍動間隔NDRを算出し、この正規化拍動間隔演算手段9で算出された連続する所定個数の正規化拍動間隔NDRのうち絶対値が所定の正常拍動間隔閾値を超えるものを異常正規化拍動間隔積算手段11により異常正規化拍動間隔としてカウントし、この異常正規化拍動間隔積算手段11によりカウントされた異常正規化拍動間隔の個数(積算個数)が前記正常拍動間隔閾値を超えているか否かを比較判定手段12により判定し、この比較判定手段12の判定結果に基づいて心房細動の有無を検出する(例えば、異常正規化拍動間隔の個数が正常拍動間隔閾値を超えていた場合、心房細動有りと出力する。)。
このように、本発明は、第1の従来システムと同様、対象者の心臓の拍動間隔のみの測定で、対象者に心房細動が発生(発症)しているか否かを簡易に検出することができ、また、短時間の拍動間隔値から心房細動(の兆候)を検出することができるから、被検者に掛かる負担が軽減され、さらに、短時間に生じる発作性の心房細動も検出することができる。
また、例えば、本発明にエントロピー処理を追加し、第2の従来システムのように期外収縮を除外しなくても偽陽性の検出を低減し信頼性の高い判定結果(検出結果)が得られる心房細動検出システムとした場合、本発明は、エントロピーSの算出に必要な拍動間隔像rを、あらかじめ拍動間隔変換手段8により下式(1)で表される拍動間隔像rとして算出しているから、すなわち、本発明は、対数関数を用いて少ない演算量で拍動間隔像rを算出しているから、第2の従来システムに比べて、エントロピーSの算出に要する計算量が低減され、電子計算機に掛かる負荷が軽減されることとなり、これにより、処理能力を上げることなく、実用的な時間で信頼度の高い検出結果を得ることができる心房細動検出システムを実現可能とすることができる。
ここで、対数の底bはb≠1且つb>0であり、また、添え字nは時系列である。
本発明の具体的な実施例1について図1,8~11に基づいて説明する。
本実施例は、対象者の心房細動の有無を検出する心房細動検出システム1であって、心臓の拍動間隔を測定する拍動間隔測定手段4と、この拍動間隔測定手段4により測定した心臓の拍動間隔から心臓の拍動間隔の時系列をRnとしたとき下式(1)で表される拍動間隔像rnを算出する拍動間隔変換手段8と、時間的に隣り合う拍動間隔像rnから下式(2)で表される正規化拍動間隔NDRを算出する正規化拍動間隔演算手段9と、この正規化拍動間隔演算手段9で算出された連続する所定の個数の正規化拍動間隔NDRにおいて絶対値が正常拍動間隔閾値を超える異常正規化拍動間隔の個数を積算する異常正規化拍動間隔積算手段11と、異常正規化拍動間隔の積算個数と正常積算個数閾値とを比較し異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えているか否かを判定する比較判定手段12とを有し、この比較判定手段12の判定結果に基づいて心房細動の有無を検出するように構成されているものである。
ここで、式(1)における対数の底bはb≠1且つb>0であり、また、式(1)及び式(2)における添え字nは時系列であり、n-1はnに対して過去を意味する。
具体的には、本実施例の心房細動検出システム1は、図1に示すように、拍動間隔測定手段4及び拍動間隔送信手段5を有する拍動間隔測定用センサ2と、拍動間隔受信手段6、拍動間隔変換手段8、正規化拍動間隔演算手段9、異常正規化拍動間隔積算手段11、比較判定手段12及び表示手段15を有する解析器3とから成るものである。
なお、解析器3は一連の演算、比較、表示を行う電子計算機や計測器であり、この解析器3として、上記の各手段を備えた専用の機器、パーソナルコンピュータ、タブレット型のコンピュータ、スマートフォン若しくは携帯電話等を採用することができる。
以下、本実施例の心房細動検出システムに係る構成各部について説明する。
拍動間隔測定手段4は、対象者の心臓の拍動間隔を測定するものであり、例えばマイコン等を用いて電極から得た電圧の変化をもとにした心電図から一のR波とこれに隣り合う他のR波との間隔、若しくは、一のS波とこれに隣り合う他のS波との間隔から拍動間隔を測定するように構成されている。
また、この拍動間隔測定手段4は、測定した拍動間隔データを後述する拍動間隔送信手段5へ転送するように構成されている。
すなわち、本実施例の心房細動検出システムは、例えば、拍動間隔測定用センサ2を小型化し電極を介して皮膚に貼り付けるように構成することで、拍動間隔測定用センサ2を衣服の下に隠すことができ、日常生活に支障をきたすことなく拍動間隔の測定を行うことができるように構成されている。
なお、拍動間隔測定手段4は、例えば、赤外線の反射光から脈波を測定し、そのピーク間隔などから拍動間隔を測定するように構成しても良い。この場合、耳たぶや手首や腕などにクリップやバンドで拍動間隔測定用センサ2を固定するだけで良く、装着し易いものとなる。また、心音や脈音を捉え、これを電気的に処理することで拍動間隔を測定するように構成しても良い。この場合、聴診器や血圧計に拍動間隔測定用センサ2を内蔵することが可能となり、広く普及させることが可能となる。
また、拍動間隔送信手段5は、拍動間隔測定手段4から転送された拍動間隔データを解析器3に設けられた拍動間隔受信手段6へ送信(転送)するものであり、本実施例においては、送信方法として、電波や光を用いた無線方式が用いられており、無線化により拍動間隔測定用センサ2の小型化を可能とし、被検者が日常生活を妨げられることなく簡易に装着して拍動間隔を測定することができるように構成されている。
なお、送信方法としては有線を採用しても良く、例えば、プリント基板上の配線や電線や光ケーブルを用いることもでき、この場合、拍動間隔測定用センサ2と解析器3とを一体化したシステムを構築する場合に好適である。また、電話回線やインターネットなどの公衆回線を用いることも可能であり、この場合、被検者に対して遠隔で心房細動の有無を検出することが可能となる。
また、拍動間隔受信手段6は、拍動間隔測定用センサ2に設けられた拍動間隔送信手段5から送信された拍動間隔データを受信するものであり、受信した拍動間隔データを拍動間隔変換手段8に送信するように構成されている。
また、拍動間隔変換手段8は、拍動間隔受信手段6から送信された拍動間隔データから拍動間隔像rを算出するものであり、拍動間隔測定手段4で測定された拍動間隔Rの変化の程度をほぼ一定にする関数、下式(1)によって変換して拍動間隔像rを算出し、この算出した拍動間隔像rを正規化拍動間隔演算手段9へ送信するように構成されている。
ここで、対数の底bはb≠1且つb>0であり、また、添え字nは時系列である。
なお、この式(1)において、対数の底bをネイピア数eとした自然対数を採用することも可能である(なぜなら、logbR=logR/logbであり、単に正規化拍動間隔NDRのスケールを変更するだけで良いからである。)。
また、正規化拍動間隔演算手段9は、拍動間隔変換手段8から送信された拍動間隔像rから正規化拍動間隔NDRを算出するものであり、下式(2)を用いて正規化拍動間隔NDRを算出し、この算出した正規化拍動間隔NDRを異常正規化拍動間隔積算手段11に送信するように構成されている。
ここで、添え字nは時系列であり、n-1はnに対して過去を意味する。
また、異常正規化拍動間隔積算手段11は、正規化拍動間隔演算手段9から送信された正規化拍動間隔NDRのうちの異常正規化拍動間隔数をカウントするものであり、正規化拍動間隔演算手段9から送信された連続する所定個数(所定拍数区間)の正規化拍動間隔NDRのうち、その絶対値が所定の正常拍動間隔閾値を超えたものを異常正規化拍動間隔としてその個数を積算(カウント)し、所定拍数区間あたりの異常正規化拍動間隔数を比較判定手段12に送信するように構成されている。
また、比較判定手段12は、異常正規化拍動間隔積算手段11から送信された異常正規化拍動間隔数が所定の正常積算個数閾値を超えているか否かを判定するものであり、本実施例においては、異常正規化拍動間隔数と所定の正常積算個数閾値とを比較し、所定拍数区間あたりの異常正規化拍動間隔数が所定の正常積算個数閾値を超えた所定拍数区間を心房細動発生箇所として検出し、その結果を表示手段15に送信するように構成されている。
また、表示手段15は、比較判定手段12から送信された結果、すなわち、心房細動が検出されたか否かを表示するものであり、例えば、文字や画像などを表示するディスプレイを用いることができる。この場合、拍動間隔の時系列を時刻と共にグラフで表示し、どの時間の拍動間隔で心房細動が発生しているか分かり易く表示することができる。
また、表示手段15として光(例えばLED)、音(例えばブザーやイヤフォン)、振動(例えばモータ)を用いても良い。この場合、心房細動の発生を直ちに報知することができる。
次に、本実施例の心房細動検出システムが心房細動を検出できることの裏付けを説明する。
健常者4名、心房細動患者5名を対象者として、夫々、2時間の拍動間隔から前記式(2)で表される正規化拍動間隔NDRを計算し、その分布を調べた。図8は健常者の正規化拍動間隔NDRの度数分布を示すグラフであり、図9は心房細動患者の正規化拍動間隔NDRの度数分布を示すグラフである。なお、各グラフの横軸は階級(階級間隔:0.01)、縦軸は頻度である。
健常者の分布の標準偏差はσN=0.0577、心房細動患者の分布の標準偏差はσaf=0.366であった。
図9に示すように、心房細動患者では健常者の標準偏差の2倍である±2σN=±0.115の範囲外に多くの正規化拍動間隔NDRが分布しており、実測で心房細動患者の73.9%を占めていた。
前述の健常者と心房細動患者とで正規化拍動間隔NDRの分布に大きな差があるから、健常者の正常正規化拍動間隔、これをTNとし、所定の拍数のうちTNよりも大きな正規化拍動間隔NDRの絶対値を数えれば、心房細動を検出できると考えられる。
例えば、正常正規化拍動間隔を先に得られた健常者の分布の2σNとし、20個の正規化拍動間隔NDRのうち、|NDR|>TN=0.115となる異常正規化拍動間隔を数えると、異常正規化拍動間隔数は、健常者は1で心房細動患者は15となることが期待できるので(±2σN=±0.115の範囲外に心房細動患者全頻度の73.9%が分布していることから、20拍中15拍はその範囲外にあると考えられるため。)、心房細動はこの方法で鑑別できる。
ひとつのケースとして、拍動間隔の時系列を21拍ごとに区切り、この21拍から得られた20個の正規化拍動間隔NDRのうち|NDR|>TN=0.115である異常正規化拍動間隔の数をカウントした場合について調べた。このとき、心房細動患者の異常正規化拍動間隔数はおよそ15であると期待できる。一方、健常者は1程度と思われる。そこで、15と1の間をとって、異常正規化拍動間隔数が6よりも大きいときに心房細動と判定することにした。
健常者と心房細動患者について、各20拍区間における異常正規化拍動間隔数を調べ、異常正規化拍動間隔数とその頻度をプロットした結果を図10,図11に示す(なお、図10及び図11において、異常正規化拍動間隔は異常NDRと記している。)。
図10に示すとおり、健常者では全1949区間中、偽陽性は4区間あり、偽陽性の割合は0.205%(すなわち、特異度99.8%)であった。
また、図11に示すとおり、心房細動患者では全1953区間中、偽陰性は3区間あり、偽陰性の割合は0.154%(すなわち、感度99.8%)であった。なお、特異度は、(真陰性の区間数/(真陰性の区間数+偽陽性の区間数))×100%で表される指標であり、また、感度は、(真陽性の区間数/(真陽性の区間数+偽陰性の区間数))×100%で表される指標である。
以上から、本実施例の心房細動検出システム(本実施例の心房細動検出システムの検出方法)は、健常者と心房細動患者を高い精度で分別することができる。
本発明の具体的な実施例2について図2に基づいて説明する。
本実施例は、実施例1の心房細動検出システムにおいて、拍動間隔測定用センサ2と解析器3との間の送受信手段が異なるものである。
具体的には、本実施例の心房細動検出システム1は、図2に示すように、拍動間隔測定手段4及び拍動間隔保存手段16を有する拍動間隔測定用センサ2と、拍動間隔変換手段8、正規化拍動間隔演算手段9、異常正規化拍動間隔積算手段11、比較判定手段12、表示手段15及び拍動間隔読出手段17を有する解析器3とから成るものである。
すなわち、本実施例は、実施例1において、拍動間隔送信手段5の代わりに拍動間隔保存手段16を拍動間隔測定用センサ2に設け、拍動間隔受信手段6の代わりに拍動間隔読出手段17を解析器3に設けた構成とした場合である。
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。なお、拍動間隔保存手段16、拍動間隔読出手段17以外は実施例1と同様の構成であるので、図面に同符号を付すことで説明を省略する。
拍動間隔保存手段16は、拍動間隔測定手段4で測定した拍動間隔を保存するものであり、具体的には、テープや半導体メモリ等の適宜な記録媒体を用いることが可能である。
本実施例の心房細動検出システムは、ホルター心電計とは異なり、心電図波形を保存する必要がないから、拍動間隔保存手段16として半導体メモリを用いた場合、非常に小型で低消費電力のメモリを用いることができるので、小型且つ軽量で被検者の負担にならない拍動間隔測定用センサ2を構成することが可能となる。
また、拍動間隔読出手段17は、拍動間隔測定用センサ2に設けられた拍動間隔保存手段16に保存された拍動間隔を読み出すものであり、この読み出した拍動間隔を拍動間隔変換手段8へ送信するように構成されている。
また、この拍動間隔読出手段17は、拍動間隔を読み出すタイミングを測定しながらリアルタイムで読み出すように構成しても良いし、また、所定時間測定した後にまとめて読み出すように構成しても良い。
また、拍動間隔を拍動間隔保存手段16から読み出す経路は、有線、無線のいずれでも良く、有線とした場合、例えば、USB(Universal Serial Bus)やRS-232C等の規格に準拠した通信手段を用いることができ、高速且つ確実に拍動間隔を読み出すことができ、また、無線とした場合、光や電波等を用いることができ、使用者は簡便に拍動間隔を読み出すことができ、より実用的な心房細動検出システムとなる。
本発明の具体的な実施例3について図3に基づいて説明する。
本実施例は、実施例1の心房細動検出システムにおいて、エントロピー処理を追加したものである。
具体的には、本実施例の心房細動検出システム1は、心臓の拍動間隔を測定する拍動間隔測定手段4と、この拍動間隔測定手段4により測定した心臓の拍動間隔から心臓の拍動間隔の時系列をRnとしたとき下式(1)で表される拍動間隔像rnを算出する拍動間隔変換手段8と、時間的に隣り合う拍動間隔像rnから下式(2)で表される正規化拍動間隔NDRを算出する正規化拍動間隔演算手段9と、この正規化拍動間隔演算手段9で算出された連続する所定の個数の正規化拍動間隔NDRにおいて絶対値が正常拍動間隔閾値を超える異常正規化拍動間隔の個数を積算する異常正規化拍動間隔積算手段11と、異常正規化拍動間隔の積算個数と正常積算個数閾値とを比較し異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えているか否かを判定する比較判定手段12と、拍動間隔変換手段8で算出された拍動間隔像rnからエントロピーSを算出するエントロピー演算手段13と、このエントロピー演算手段13で算出されたエントロピーSと所定のエントロピー閾値とを比較しエントロピーSが所定のエントロピー閾値を超えているか否かを判定するエントロピー比較判定手段14とを有し、比較判定手段12において異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えていると判定された場合、エントロピー演算手段13で拍動間隔像rnからエントロピーSを算出して、エントロピー比較判定手段14において、エントロピーSと所定のエントロピー閾値とを比較し、エントロピーSが所定のエントロピー閾値を超えていると判定されたとき、心房細動有りと出力するように構成されているものである。
ここで、式(1)における対数の底bはb≠1且つb>0であり、また、式(1)及び式(2)における添え字nは時系列であり、n-1はnに対して過去を意味する。
また、本実施例は、実施例1の心房細動検出システムと同様、拍動間隔送信手段5、拍動間隔受信手段6及び表示手段15を備え、図3に示すような心房細動検出システム1に構成されている。
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。なお、拍動間隔変換手段8、エントロピー演算手段13、エントロピー比較判定手段14以外の構成各部は実施例1に記載のものと同様であるので、図面に同符号を付すことで説明を省略する。
拍動間隔変換手段8は、実施例1と同様、拍動間隔測定手段4で測定された拍動間隔Rの変化の程度をほぼ一定にする関数、下式(1)によって変換して拍動間隔像rを算出するものであるが、本実施例においては、この算出した拍動間隔像rを正規化拍動間隔演算手段9及びエントロピー演算手段13へ送信するように構成されている。
ここで、対数の底bはb≠1且つb>0であり、また、添え字nは時系列である。
また、エントロピー演算手段13は、比較判定手段12が異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えていると判定した場合、拍動間隔変換手段8から送信された拍動間隔像rを用いてエントロピーSを算出し、この算出したエントロピーSをエントロピー比較判定手段14へ送信するように構成されている。
また、エントロピー比較判定手段14は、エントロピー演算手段13から送信されたエントロピーSと所定のエントロピー閾値と比較し、このエントロピーSが所定のエントロピー閾値を超えていたとき、心房細動有りと出力し、その結果を表示手段15へ送信するように構成されている。
ところで、第2の従来システムに開示されるエントロピーSの算出方法は、以下のとおりである。
拍動間隔変換手段8により得られた連続するN個の拍動間隔像rの夫々の値を中心に下式(4)で表される所定の分布gを持たせ、下式(5)によりN個の分布gの和から得られる分布Gを正規化することで、下式(6)の通り確率分布密度pを算出し、下式(7)によりエントロピーSを算出する。
ここで、rは式(1)で変換される拍動間隔像空間の変数で、r
1とr
2は所定の積分区間の下端と上端である。
この第2の従来システムは特許文献2に開示されるとおり、心房細動患者20例と健常者20例の夫々の21拍の拍動間隔Rから、式(1)で21個の拍動間隔像rnを算出し、式(4)の標準偏差をσ=0.032とし、また、式(6)と式(7)の積分区間をr1=log300、r2=log2000としてエントロピーSを算出したとき、心房細動患者20例のエントロピーSの平均値は8.92で標準偏差は0.17、健常者20例のエントロピーSの平均値は7.42で標準偏差は0.11であった。
したがって所定のエントロピー閾値を8.01とすれば感度と特異度100%で心房細動かどうかを判定することができる。
また、さらに前述の心房細動患者20例と、心房細動以外の期外収縮をもつ患者20例(そのうち12例は、前述した実施例1の方法で心房細動と誤判定するもの)を前述の条件でエントロピーSを算出した結果、心房細動以外の期外収縮をもつ患者20例のエントロピーSの平均値は8.03で標準偏差は0.21であった。
したがって、所定のエントロピー閾値を8.52とすれば感度と特異度99.0%で心房細動かどうかを判定することができ、このエントロピーSによって心房細動かどうか判定する方法は心房細動以外の期外収縮に影響されにくいことがわかる。
しかしながら、式(4)から式(7)の数値計算には非常に大きな演算コストが必要であり、明らかに全ての健常な拍動間隔に対してエントロピーSを算出するのは非効率である。例えば、1拍についての式(4)の分布を、拍動間隔300msから2000msの領域において1msの間隔で数値的に求めるだけでも、1700回の自然指数関数expの計算が必要であり、自然指数関数expの展開のために電子計算機内部では必要な精度までテーラー展開する必要がある。これが式(5)のために21回必要であり、式(7)でも必要な精度に応じて数値積分のために数百から数千回の自然対数logのテーラー展開が必要である。
一方、実施例1で示したように、正規化拍動間隔NDRを算出し、連続した所定の個数の正規化拍動間隔NDRのうち、その絶対値が正常拍動間隔閾値を超えた異常正規化拍動間隔の個数を積算し、この異常正規化拍動間隔の積算個数と正常積算個数閾値とを比較し、この異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えた場合に心房細動と判定する方法では、正規化拍動間隔NDRを算出するための21回の自然対数logのテーラー展開と20回の減算、及び20回の比較と加算のみで評価が完了する。
本実施例の心房細動検出システム1は、上述した両者(第2の従来システムと実施例1の心房細動検出システム)の長所を合わせたものであり、比較判定手段12によって異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えたと判定された場合、エントロピー演算手段13でエントロピーSを算出し、エントロピー比較手段14によって最終的に心房細動の有無を検出することで、エントロピー算出処理が少なく、電子計算機に掛かる負荷が軽減され、処理能力を上げることなく、実用的な時間で心房細動の有無を検出することができる実用性に優れた画期的な心房細動検出システムとなる。
本発明の具体的な実施例4について図4に基づいて説明する。
本実施例の心房細動検出システム1は、実施例3の心房細動検出システムにおいて、解析器3に拍動間隔から対象者の心臓の拍動に由来しない不正な拍動間隔と心房細動以外の期外収縮に由来する拍動間隔のいずれか一方若しくは両方を除外する不正拍動間隔除外手段7を設けたものである。
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。なお、拍動間隔受信手段6、不正拍動間隔除外手段7以外の構成各部は実施例1及び実施例3に記載のものと同様であるので、図面に同符号を付すことで説明を省略する。
拍動間隔受信手段6は、実施例1と同様、拍動間隔測定用センサ2に設けられた拍動間隔送信手段5から送信された拍動間隔データを受信するものであるが、本実施例では、受信した拍動間隔データを不正拍動間隔除外手段7に送信するように構成されている。
また、不正拍動間隔除外手段7は、受信した拍動間隔データのうち、不正な拍動間隔を逐次間引き処理し、拍動間隔変換手段8へ送信するように構成されている。
不正拍動間隔除外手段7は、対象者の体動や筋電によるアーチファクトと呼ばれるノイズで生じた対象者の心臓の拍動に由来しない不正な拍動間隔を除外するもので、本実施例では、拍動間隔データから健常者のQT間隔(心室興奮時間)に基づいて設定される時間Aよりも小さい拍動間隔と徐脈時の拍動間隔に基づいて設定される時間Bよりも大きい拍動間隔とを除外するように構成されている。
具体的には、時間Aは350ms以上470ms以下とし、時間Bは2000ms以上が好適である。
また、不正拍動間隔除外手段7は、筋電によるアーチファクトの影響範囲に広がりがあることを想定し、時間Aよりも小さい拍動間隔の前NB拍と後NF拍をさらに除外するように構成することで、より一層不正な拍動間隔を確実に除外できるものとなる。なお、閾値NBとNFは、いずれも5以上60以下が好適である。
さらに、不正拍動間隔除外手段7は、時間Bよりも大きい拍動間隔の前MB拍と後MF拍をさらに除外するように構成することで、より一層不正な拍動間隔を確実に除外できるものとなる。なお、閾値MBとMFは、いずれも10以上100以下が好適である。
上記構成により、本実施例の心房細動検出システム1は、体動や筋電によるアーチファクトと呼ばれるノイズで生じた対象者の心臓の拍動に由来しない不正な拍動間隔を除外できるものとなり、心房細動の誤検出を減少し、不正拍動間隔除外手段7より後段を処理するための電子計算機の負荷が軽減され、演算時間が短縮され、よりコスト安な心房細動検出システムとなる。
また、本実施例の心房細動検出システム1においては、不正拍動間隔除外手段7を対象者の心房細動以外の期外収縮に由来する拍動間隔を除外するように構成しても良い。この場合、心房細動以外の期外収縮に由来する拍動間隔が拍動間隔変換手段8に送信されず、これにより、拍動間隔変換手段8から心房細動以外の期外収縮に由来する拍動間隔像rが正規化拍動間隔演算手段9及びエントロピー演算手段13に送信されなくなり、よって、誤検出がより一層低減され、より信頼性の高い検出性能を有するものとなる。
具体的には、不正拍動間隔除外手段7は、所定の数の拍動間隔Rの平均値を所定の方法で算出し、当該拍動間隔Rと拍動間隔Rの平均値の差の大きさに基づいて当該拍動間隔を除外するように構成されている。
なお、不正拍動間隔除外手段7においては、拍動間隔Rの平均値算出のために種々の方法をとることができ、例えば、拍動間隔Rnに対応する平均値を、下式(8)に示す拍動間隔Rnを含む前後合わせてK個の拍動間隔Rの移動平均RバーMVnを採用しても良い。
また、高周波ノイズを除去する効果のあるSavitzky Golay法を用いることもでき、例えば、K=5の拍動間隔Rの平均RバーSGnは、下式(9)となる。
一般に、心室性期外収縮や心房性期外収縮が生じると、2つの連続する拍動間隔RnとRn+1のうち、拍動間隔Rnは早期収縮のため正常洞調律よりも10%程度小さくなり、拍動間隔Rn+1は代償性休止期のため正常洞調律よりも10%程度大きくなる。したがって、期外収縮の拍動間隔RnとRn+1が含まれる次の正規化拍動間隔NDRnとNDRn+1は、下式(10)を満たすことになる。
ここで、AとBは0より大きい値で、期外収縮の特徴を考慮すると、AとBいずれも0.05以上0.2以下が好適である。
また、期外収縮があると、早期収縮の拍動間隔Rnと代償性休止期の拍動間隔Rn+1と平均値RバーSGnとRバーSGn+1は、Rn<RバーSGn及びRバーSGn+1<Rn+1の関係がある。したがって、期外収縮ならば、下式(11)を満たすことになる。
ここで、閾値C及びDは0より大きい値で、早期収縮の拍動間隔Rnが、正常洞調律の拍動間隔から10%程度小さいことを考慮すると、Cは0.5以上1.0以下が好適であり、また代償性休止期と早期収縮の拍動間隔の差R
n+1-R
nから正常洞調律の拍動間隔Rを差し引いた値は、正常洞調律から早期収縮の拍動間隔R
nを差し引いた値よりも小さいことから、Dは1.0以上1.2以下が好適である。
さらに、早期収縮時と代償性休止期の拍動間隔を加算したRn+Rn+1は、正常洞調律による拍動間隔の2倍にほぼ等しいので、下式(12)を満たすことになる。
ここで、閾値EとFは、E<Fを満たす値で、Eは0.8以上1.0以下、Fは1.0以上1.2以下が好適である。
このように式(10)から式(12)を同時に満たす拍動間隔RnとRn+1を除外すれば、心房細動以外の期外収縮、特に心房性及び心室性の期外収縮に由来する拍動間隔が拍動間隔変換手段8に送信されず、これにより、拍動間隔変換手段8から心房細動以外の期外収縮、とくに心房性及び心室性の期外収縮に由来する拍動間隔像rが正規化拍動間隔演算手段9及びエントロピー演算手段13に送信されなくなり、よって、誤検出がより一層低減され、より信頼性の高い検出性能を有する心房細動検出システムとなる。
本発明の具体的な実施例5について図5に基づいて説明する。
本実施例の心房細動検出システム1は、実施例3の心房細動検出システムにおいて、解析器3に、正規化拍動間隔NDRから心房細動に由来せず不要な期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外する不要期外収縮除外手段10を設けたものである。
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。なお、正規化拍動間隔演算手段9、不要期外収縮除外手段10以外の構成各部は実施例1及び実施例3に記載のものと同様であるので、図面に同符号を付すことで説明を省略する。
正規化拍動間隔演算手段9は、実施例1と同様、拍動間隔変換手段8から送信された拍動間隔像rから下式(2)を用いて正規化拍動間隔NDRを算出するものであるが、本実施例においては、この算出した正規化拍動間隔NDRを不要期外収縮除外手段10に送信するように構成されている。
ここで、添え字nは時系列であり、n-1はnに対して過去を意味する。
また、不要期外収縮除外手段10は、受信した正規化拍動間隔NDRのうち、心房細動以外の期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外し、残った(除外されなかった)正規化拍動間隔NDRを異常正規化拍動間隔積算手段11へ送信するように構成されている。
この不要期外収縮除外手段10で心房細動以外の期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外することで、比較判定手段12において、心房細動以外の期外収縮のために異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えていると誤って判定することが防止されることとなり、よって、エントロピー演算手段13でエントロピーSを算出する頻度を減らすことができ、したがって、電子計算機の負荷が軽減され、演算時間が短縮されることとなり、よりコスト安な心房細動検出システムとなる。
また、この不要期外収縮除外手段10により、例えば、心室性期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外できる。
具体的には、心臓の拍動間隔の時系列をRnとした正規化拍動間隔NDRnのうち、下式(13)及び下式(14)を満たす正規化拍動間隔NDRnを検索し、続いて、この検索された正規化拍動間隔NDRnから、NDRnとこれに連続する2つの値NDRn+1及びNDRn+2を除外する。
ここで、T
pとT
Nは、T
p>0とT
N>0を満たす所定の閾値であり、添え字nは時系列であり、nはn+1に対して過去を意味する。また、Rバー
n(X)は、Xが1以上の整数のとき、下式(15)で表される。
なお、閾値Tpは、心室性期外収縮の性質に鑑み0.2~0.3が適当であり、0.25が最も好適である。また、一般には、健常者の拍動間隔の変動は概ね10%以内なので、異常拍動間隔を識別する閾値TNは0.1が最も好適である。また、パラメータMはいくらでも良いが、M=1でも十分な除外能力があるので、M>1の場合よりも演算量が少ないことも考慮すると、これが最も好適である。
また、この不要期外収縮除外手段10により、例えば、心房性期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外できる。
具体的には、心臓の拍動間隔の時系列をRnとした正規化拍動間隔NDRnのうち、下式(16)及び下式(17)を満たす正規化拍動間隔NDRnを検索する。続いて、この検索された正規化拍動間隔NDRnから、NDRnとこれに連続するNDRn+1とを除外する。
ここで、T
NとT
Aは、T
N>0と-T
N≦T
A≦0を満たす所定の閾値、添え字nは時系列であり、nはn+1に対して過去を意味する。また、Mは1以上の整数であり、Kは0以上の整数である。Rバー
n(X)は式(15)で表されるが、X=0のときは下式(18)で表される。
なお、閾値TNは、前述した通り健常者の拍動間隔の変動が概ね10%以内であることから0.1が最も好適である。また、閾値TAは、0のとき除外能力が最も高いが、心房性期外収縮のビートが健常者の拍動間隔の変動を超えて早期に出現することを考慮すると、TA=TNとしても除去能力は十分ある。また、パラメータMとKは、M=K=1でも除外能力は十分であり、M>1、K>1の場合よりも計算量が少ないことを考慮すると、これが最も好適である。
また、この不要期外収縮除外手段10により、例えば、洞房ブロックに関する正規化拍動間隔NDRを除外できる。
具体的には、下式(19)及び下式(20)、下式(21)及び下式(22)若しくは下式(23)及び下式(24)を満たす拍動間隔Rnを含む正規化拍動間隔NDRを除外する。
ここで、T
a及びT
bは、T
a>0及びT
b>0を満たす所定の閾値である。また、mは整数であり、所定の最大値をMとしてm={2,3,4,5,・・・,M}である。
なお、健常者の正規化拍動間隔の大きさは0.1よりも小さいことから、Ta及びTbは、夫々、0.05以上0.15以下が好適である。
また、m-1が洞結節の興奮をブロックした回数である。洞房ブロックが何回連続したか特定できないので、所定の最大値をMとしてm={2,3,4,5,・・・,M}の全てを式(19)~式(24)に適用する。ただし、Mが大きいと血液を脳に運べないので、M=8程度が好適である。
また、この不要期外収縮除外手段10により、例えば、間入性期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外できる。
具体的には、下式(25)、下式(26)及び下式(27)を満たす拍動間隔Rn並びにRn+1を含む正規化拍動間隔NDRを除外する。
ここで、T
c、T
d及びT
eは、T
c>0、T
d>0及びT
e>0を満たす所定の閾値である。
なお、健常者の正規化拍動間隔の大きさは0.1よりも小さいことから、Tc、Td及びTeは、夫々、0.05以上0.15以下が好適である。
また、この不要期外収縮除外手段10により、例えば、連発心室性期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外できる。
具体的には、下式(28)、下式(29)、下式(30)、下式(31)及び下式(32)、若しくは下式(29)、下式(30)、下式(31)、下式(33)及び下式(34)を満たす拍動間隔Rn、Rn+1、・・・、Rn+mを含む正規化拍動間隔NDRを除外する。
ここで、T
f、T
g、T
h、T
i及びT
jは、T
f>0、T
g>0、T
h>0、T
i>0及びT
j>0を満たす所定の閾値である。また、mは整数であり、所定の最大値をMとしてm={2,3,4,5,・・・,M}である。
なお、健常者の正規化拍動間隔の大きさは0.1よりも小さいことと心室性期外収縮の性質から、Tf、Tg、Th及びTiは、夫々、0.05以上0.15以下が好適であり、また、式(32)と式(34)は2つの拍動間隔を合計して考えているのでTjは0.1以上0.3以下が好適である。
また、この不要期外収縮除外手段10により、例えば、二段脈に関する正規化拍動間隔NDRを除外できる。
具体的には、下式(35)、下式(36)、下式(37)、下式(38)、下式(39)及び下式(40)を満たす拍動間隔Rn、Rn+1、・・・、Rn+3+jを含む正規化拍動間隔NDRを除外する。
ここで、jは整数であり、j={0,1,・・・,m-2}で、mを2の倍数としてm/2+1が連続で発生した二段脈の回数である。また、T
k、T
l、T
m、T
n及びT
pは、T
k>0、T
l>0、T
m>0、T
n>0及びT
p>0を満たす所定の閾値である。
なお、健常者の正規化拍動間隔の大きさは0.1よりも小さいことと心室性期外収縮の性質から、Tk、Tl、Tm、Tn及びTpは、夫々、0.05以上0.15以下が好適である。
本発明の具体的な実施例6について図6に基づいて説明する。
本実施例の心房細動検出システム1は、図6に示すように、実施例5の心房細動検出システムの解析器3に、拍動間隔から対象者の心臓の拍動に由来しない不正な拍動間隔と心房細動以外の期外収縮に由来する拍動間隔のいずれか一方若しくは両方を除外する不正拍動間隔除外手段7をさらに設けたものである。なお、本実施例に係る構成各部は、実施例3、実施例4及び実施例5に記載のものと同様であるので、図面に同符号を付すことで説明を省略する。
本実施例の心房細動検出システム1は、上記のように構成したから、不正拍動間隔除外手段7が、体動や筋電によるアーチファクトと呼ばれるノイズで生じた対象者の心臓の拍動に由来しない不正な拍動間隔を除外するので、心房細動の誤検出を減少し、不正拍動間隔除外手段7より後段の処理のための電子計算機の負荷と演算時間を短縮し、また、心房細動以外の期外収縮に由来する拍動間隔が拍動間隔変換手段8に送信されず、これにより、拍動間隔変換手段8から心房細動以外の期外収縮に由来する拍動間隔像rがエントロピー演算手段13と正規化拍動間隔演算手段9に送信されなくなることで心房細動の誤検出が減少し、さらに、不要期外収縮除外手段10で心房細動以外の期外収縮に関する正規化拍動間隔NDRを除外することで、比較判定手段12において、心房細動以外の期外収縮のために異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えていると誤って判定することが防止されることとなり、よって、エントロピー演算手段13でエントロピーSを算出する頻度を減らすことができ、したがって、電子計算機の負荷が軽減され、演算時間が短縮されることとなり、よりコスト安な心房細動検出システムとなる。
本発明の具体的な実施例7について図7に基づいて説明する。
本実施例の心房細動検出システム1は、図7に示すように、実施例6の心房細動検出システムにおいて、拍動間隔変換手段8を比較判定手段12の後段に配置したものである。
したがって、本実施例の心房細動検出システム1では、正規化拍動間隔演算手段9は拍動間隔変換手段8を介さず、不正拍動間隔除外手段7から直接、拍動間隔データを受信するように構成されている。このとき正規化拍動間隔演算手段9は、下式(3)によって正規化拍動間隔NDRを算出する。
以下に、本実施例の正規化拍動間隔演算手段9が式(3)を用いることができる理由を説明する。
まず、拍動間隔Rnを下式(41)のようにおく。
ΔRがRnとRn-1に比べ十分小さいものとして、上式(3)をテーラー展開すると、下式(42)が得られる。
また、下式(1)の対数の底bをネイピア数eとして下式(2)をテーラー展開すると、下式(43)が得られ、その差はせいぜいO[(ΔR/Rn-1)3]程度である。
なお、健常者の場合大きくともΔR/Rn-1は0.1程度であり(近似的に等しい)、つまり、(ΔR/Rn-1)3は0.001程度であるから、式(3)を用いて正規化拍動間隔NDRを算出しても構わないと言える。
このような構成とすることで、正規化拍動間隔NDRを算出するのに対数を用いる必要がなくなり、1つの正規化拍動間隔NDRを算出するための計算コストは、2回の整数の加減算と、1回のビットシフト及び1回の浮動小数点の除算となる。
一方、対数を用いて正規化拍動間隔NDRを算出するためには、拍動間隔変換手段8によって必要な精度のテーラー展開が2回必要であり、そこには多数の浮動小数点の乗算が含まれる。比較判定手段12が、異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えていると判定しなければ、心房細動ではないので後段の拍動間隔変換手段8とエントロピー演算手段13へ進まないから、拍動間隔変換手段8による拍動間隔像rの算出を、比較判定手段12が異常正規化拍動間隔の積算個数が正常積算個数閾値を超えていると判定するまで遅延することができる。
したがって、より一層電子計算機への負荷少なくなり、よりコスト安な心房細動検出システムとなる。
なお、本発明は、実施例1~7に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。