JP7255852B2 - 核酸アプタマー及びその使用 - Google Patents

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Description

本発明は、核酸アプタマー、並びに、前記核酸アプタマーを含む抗がん剤及びがん治療キットに関する。
近年、がん治療薬として抗体医薬が隆盛を極めているが、その高い薬価に加え、対応可能な疾患関連タンパク質の種類が頭打ちの状態であり、抗体医薬の限界も見えてきている。そのため、抗体とは異なる母体構造を有するポスト抗体医薬の開発が強く望まれている。一本鎖DNAやRNAから形成され、タンパク質を含む生体分子に対して高い結合能と選択性を有するDNA/RNAアプタマーは、安価に合成可能であり抗原性も低いことから、抗体に替わる標的認識分子として注目されている。これまでに認可されたアプタマー薬剤としては、加齢黄斑変性症治療薬であるpegaptanib(商品名「Macugen」、2004年米国承認、2008年日本承認)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
一方、脱リン酸化酵素であるProtein phosphatase magnesium-dependent 1 Delta(PPM1D)は、乳がんを含む多くのがんにおいてその過剰発現が報告されており、近年PPM1Dを標的とした抗がん剤開発が国内外で精力的に展開されている。PPM1Dの発がん活性には、その酵素活性が必須であることから、PPM1D阻害剤は有用な抗がん剤として期待されている。しかしながら、PPM1Dは多くのがん細胞でその発現が検出される一方、正常細胞では、精巣や血球細胞においても発現しており、PPM1Dノックアウトマウスでは、精子形成異常や免疫不全が引き起こされることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。そのため、PPM1D特異的阻害剤は、生殖機能や免疫応答に重大な副作用を引き起こすことが危惧されている。
米国特許第6011020号明細書
正常細胞に影響を与えず、PPM1Dに対する結合能を時空間的に制御可能なPPM1D阻害剤の開発が強く望まれているが、これまでに上記課題を克服したPPM1D阻害剤は報告されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、正常細胞に影響を与えず、PPM1Dに対する結合能を時空間的に制御可能な核酸アプタマー、並びに、前記核酸アプタマーを含む抗がん剤及びがん治療キットを提供する。
発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、グアニンリッチなDNA分子が陽イオンに応答し四重鎖構造を形成することに着目し、イオン刺激により立体構造を変化するイオン刺激応答性DNAアプタマー(Ion- responsive DNA Aptamer;IRDAptmer)ライブラリを独自にデザインし、当該ライブラリから同定されたPPM1Dの特定の部位を特異的に認識するDNAアプタマーがPPM1Dに対して高い特異性及び選択性を有し、且つ陽イオン刺激によりPPM1Dへの結合能を時空間的に制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る核酸アプタマーは、下記一般式(I)~(III)のいずれかに示される塩基配列を含むポリヌクレオチドからなり、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する結合能を有する。
Figure 0007255852000001
(一般式(I)中、Cはシトシンである。「-」はヌクレオチド結合である。n11は2以上3以下の整数である。n12、n13及びn14はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X11、X12、X13及びX14はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
11は、以下の(a11)又は(a12)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a11)配列番号1に示される塩基配列;
(a12)配列番号1に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
12は、以下の(a13)又は(a14)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a13)配列番号2に示される塩基配列;
(a14)配列番号2に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
13は、以下の(a15)又は(a16)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a15)配列番号3に示される塩基配列;
(a16)配列番号3に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
Figure 0007255852000002
(一般式(II)中、Tはチミンである。「-」はヌクレオチド結合である。n21は2以上3以下の整数である。n22、n23及びn24はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
21は、以下の(a21)又は(a22)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a21)配列番号4に示される塩基配列;
(a22)配列番号4に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
22は、以下の(a23)又は(a24)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a24)配列番号5に示される塩基配列;
(a25)配列番号5に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
23は、以下の(a25)又は(a26)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a25)配列番号6に示される塩基配列;
(a26)配列番号6に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
Figure 0007255852000003
(一般式(III)中、Gはグアニンである。「-」はヌクレオチド結合である。n31は2以上3以下の整数である。n32、n33及びn34はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X31、X32、X33及びX34はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
31は、以下の(a31)又は(a32)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a31)配列番号7に示される塩基配列;
(a32)配列番号7に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
32は、以下の(a33)又は(a34)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a33)配列番号8に示される塩基配列;
(a34)配列番号8に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
33は、以下の(a35)又は(a36)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a35)配列番号9に示される塩基配列;
(a36)配列番号9に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
前記Y11が配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、
前記Y12が配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、且つ、
前記Y13が配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
前記Y21が配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、
前記Y22が配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、且つ、
前記Y23が配列番号6に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
前記Y31が配列番号7に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、
前記Y32が配列番号8に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、且つ、
前記Y33が配列番号9に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
上記第1態様に係る核酸アプタマーは、配列番号10~15のいずれかに示される塩基配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。
本発明の第2態様に係る抗がん剤は、上記第1態様に係る核酸アプタマーを有効成分として含有する。
本発明の第3態様に係るがん治療キットは、上記第2態様に係る抗がん剤と、陽イオンチャネル作用剤と、を含む。
上記態様の核酸アプタマーによれば、正常細胞に影響を与えず、PPM1Dに対する結合能を時空間的に制御可能な核酸アプタマーを提供することができる。上記態様の抗がん剤及びがん治療キットによれば、がん細胞におけるPPM1Dを選択的に阻害することで、副作用を抑制しながら効果的にがんを治療又は予防することができる。
PPM1Dのホモロジーモデルを示す図である。 グアニン四重鎖構造の分類型を示す図である。 実施例1におけるSELEX法を用いたDNAアプタマーのスクリーニング方法のフローを模式的に示す図である。 実施例1におけるPPM1DのB-loop欠損体を用いたDepletion法のフローを模式的に示す図である。 実施例1における各DNAアプタマーによるPPM1Dの阻害活性を示すグラフである。 実施例1における各DNAアプタマーによるPPM1Dの阻害曲線を示すグラフである。 実施例1における野生型PPM1D及びPPM1DのB-loop欠損体に対するM1D-Q5Fの結合量を示すグラフである。 実施例1におけるM1D-Q5Fによる各ホスファターゼの阻害曲線を示すグラフである。 実施例1におけるカリウムイオン又はナトリウムイオン存在下でのM1D-Q5FとPPM1Dと結合曲線を示すグラフである。 実施例1におけるカリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下又は非存在下でのM1D-Q5F及びM1D-Q5FCの円偏光二色性(Circular Dichroism;CD)スペクトルを示すグラフである。 実施例1における異なる濃度のカリウムイオン又はナトリウムイオン存在下でのM1D-Q5FのCDスペクトルを示すグラフである。 図11に示すCDスペクトルにおける264nmでの極大値のカリウムイオン又はナトリウムイオンの濃度の違いによる変化を解析したグラフである。 実施例1におけるカリウムイオン又はナトリウムイオン存在下でのM1D-Q5FのPPM1Dに対する阻害活性を示すグラフである。 実施例1におけるカリウムイオン又はナトリウムイオン存在下で形成されるM1D-Q5Fのグアニン四重鎖構造を模式的に示す図である。 実施例1におけるM1D-Q5F又はM1D-Q1Fを投与したMCF7細胞でのp53及びp21のタンパク質発現量をウエスタンブロッティング法で解析した結果を示す画像である。 実施例1における異なる濃度のM1D-Q5Fを投与したMCF7細胞及びA549細胞の細胞増殖率の変化を示すグラフである。 実施例1における異なる濃度のM1D-Q5F又はM1D-Q1Fを投与したMCF7細胞の細胞増殖率の変化を示すグラフである。 実施例1における陽イオン(塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム)存在下又は非存在下のM1D-Q5F又はM1D-Q5FCのDNase Iに対する分解耐性をポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した結果を示す画像である。 図18に示すバンドのシグナルを定量化したグラフである。 実施例1における陽イオン(塩化ナトリウム及び塩化カリウム)存在下のM1D-Q5F又はM1D-Q5FCの血清に対する安定性をポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した結果を示す画像である。 図20に示すバンドのシグナルを定量化したグラフである。 実施例1におけるM1D-Q5F、M1D-Q5及びM1D-Q5F Randomの構造を模式的に示す図である。 実施例1におけるM1D-Q5F、M1D-Q5及びM1D-Q5F RandomによるPPM1Dの阻害曲線を示すグラフである。 実施例1におけるM1D-Q5Fを投与したMCF7細胞の蛍光染色像である。 実施例1における異なる濃度のカリウムイオン存在下でのM1D-Q5F及びM1D-Q5のCDスペクトルを示すグラフである。 実施例1におけるウアバイン投与によるがん細胞内へのナトリウムイオンの流入とM1D-Q5Fの立体構造変化を模式的に示す図である。 実施例1におけるウアバイン投与下又は未投与下であって、M1D-Q5F投与下又は未投与下のMCF7細胞でのp53及びp21のタンパク質発現量をウエスタンブロッティング法で解析した結果を示す画像である。 図29に示すバンドのシグナルを定量化したグラフである。 実施例2における各DNAアプタマーによるPPM1D阻害活性を示すグラフである。 実施例2における各DNAアプタマーによるPPM1Dの阻害曲線を示すグラフである。 実施例2におけるG4CAA1及びG4CAA2による各ホスファターゼの阻害曲線を示すグラフである。 実施例2におけるカリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下又は非存在下でのG4CAA1及びG4CAA1 rdmのCDスペクトルを示すグラフである。 実施例2におけるカリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下又は非存在下でのG4CAA2及びG4CAA2 rdmのCDスペクトルを示すグラフである。 実施例2における異なる濃度のカリウムイオン存在下でのG4CAA2及びM1D-Q5FのCDスペクトルを示すグラフである。 実施例2におけるG4CAA1、G4CAA2及びM1D-Q5FのCDスペクトルについて264nm(M1D-Q5F)又は267nm(G4CAA1及びG4CAA2)でのモル楕円率のカリウムイオンの濃度の違いによる変化を解析したグラフである。 実施例2におけるカリウムイオン又はナトリウムイオン存在下での各DNAアプタマーのPPM1Dに対する阻害活性を示すグラフである。
<PPM1D>
PPM1Dは、605アミノ酸残基からなり、PPMファミリーに分類されるPP2C型Ser/Thrホスファターゼである。PPM1Dは乳がんや卵巣がん等の様々ながん細胞において、その遺伝子の増幅や過剰発現が報告されており、抗がん剤の標的として注目されている。PPM1Dの構造の特徴点としては、塩基性アミノ酸残基を豊富に含むループ構造の領域(Basic-residue-rich loop;B-loop)を有し、当該B-loopは酵素の活性中心近傍に位置している(図1参照)。図1に示すように、B-loopのアミノ酸配列は「VWKRPRLTHNGPVRRSTVIDQIPF」(配列番号16)である。このB-loopは他のPPMファミリーに分類されるホスファターゼ(例えば、PPM1A等)には存在せず、B-loopはPPM1Dの基質認識や細胞内局在に寄与していると考えられている。これらのことから、発明者らは、PPM1DのB-loopを標的としたDNAアプタマーの探索を行った結果、PPM1Dに特異的に結合する核酸アプタマーを開発するに至った。なお、ここでいう「PPM1DのB-loopに特異的に結合する」とは、PPM1D以外のホスファターゼに結合せず、さらに、PPM1DのB-loop以外の部位にも結合せず、PPM1DのB-loopにのみ結合することを意味する。本実施形態の核酸アプタマーは、後述する実施例に示すように、酵素選択性を有し、PPM1DのB-loopを標的とするPPM1D特異的阻害剤である。
また、ヒトPPM1D遺伝子の塩基配列及びPPM1Dのアミノ酸配列の情報は、Genbank等のデータベースから入手できる。ヒトPPM1Dのアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NP_003611として開示されている。
<グアニン四重鎖構造>
グアニン四重鎖(「G-quadruplex」、「G4」、「Gカルテット」とも呼ばれる)構造は、DNAの高次構造の一つであり、4組のグアニン配列により形成される特定の立体構造である。グアニンリッチなDNA分子では陽イオンに応答し、グアニン四重鎖構造を形成する。このことに着目し、発明者らは、2.8×1011種の多様性を有し、陽イオン刺激により立体構造が変化しグアニン四重鎖構造を形成する骨格を母体としたDNAアプタマー(以下、「イオン刺激応答性DNAアプタマー(Ion- responsive DNA Aptamer;IRDAptmer)」と称する場合がある)のライブラリを独自にデザインした。当該ライブラリの中から、PPM1DのB-loopに特異的に結合する核酸アプタマーをスクリーニングし、同定した。
本実施形態の核酸アプタマーは、後述する実施例に示すように、陽イオンの濃度が0.1mM未満程度の低濃度の環境下では、グアニン四重鎖構造を形成せずPPM1Dに対する阻害活性が低いが、陽イオンの濃度が0.1mM以上100mM以下程度の生体内濃度変化域下では、立体構造が変化し、グアニン四重鎖構造を形成することで、PPM1DのB-loopに特異的に結合することができる。なお、ここでいう「PPM1Dに対する阻害活性」とは、PPM1Dの酵素活性を阻害する活性を意味する。PPM1Dの酵素活性は、後述する実施例に示すように、基質に対するPPM1Dの脱リン酸化活性を解析することで確認することができる。核酸アプタマーがPPM1Dに対する阻害活性を有することは、例えば、核酸アプタマー非存在下でのPPM1Dの酵素活性と、核酸アプタマー存在下でのPPM1Dの酵素活性と、を比較し、核酸アプタマー非存在下でのPPM1Dの酵素活性よりも核酸アプタマー存在下でのPPM1Dの酵素活性のほうが低い場合に、当該核酸アプタマーはPPM1Dに対する阻害活性を有すると判断することができる。また、PPM1Dに対する阻害活性は、以下の式により、定量化することができる。
(PPM1Dに対する阻害活性)
=(核酸アプタマー存在下でのPPM1Dの酵素活性)/(核酸アプタマー非存在下でのPPM1Dの酵素活性)×100
グアニン四重鎖構造は、そのトポロジーから、プロペラ型、バスケット型、プロペラ型とバスケット型を組み合わせたハイブリット型に分類される(図2参照)(参考文献1:Zhou J et al., “The NEIL glycosylases remove oxidized guanine lesions from telomeric and promoter quadruplex DNA structures.”, Nucleic Acids Res., Vol. 43, No. 8, p4039-4054, 2015.)。
本実施形態の核酸アプタマーは、後述する実施例に示すように、プロペラ型のグアニン四重鎖構造を形成する。
なお、本実施形態の核酸アプタマーがグアニン四重鎖構造を形成しているか否かについては、公知の方法を用いて確認することができる。プロペラ型のグアニン四重鎖構造の存在は、例えば、円偏光二色性(Circular Dichroism;CD)スペクトル測定によって、245nm付近の負のピークと、265nm付近の正のピークとを検出することにより確認することができる。また、グアニン四重鎖構造は陽イオンの存在下で形成されるため、後述する実施例に示すように、例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン等の陽イオンを含む溶液中の核酸アプタマーのCDスペクトルと、陽イオンを含まない溶液中の核酸アプタマーのCDスペクトルとを比較することで、グアニン四重鎖構造の存在をより高い信頼性で確認することができる。
グアニン四重鎖構造の形成に用いられる陽イオンとしては、生体に存在する陽イオンであれば、特に限定されず、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等の一価の陽イオンであってもよく、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の二価の陽イオンであってもよい。
<核酸アプタマー>
アプタマーとは、一般に、標的分子に特異的に結合する分子であり、核酸アプタマーやペプチドアプタマーが知られている。
本実施形態の核酸アプタマーは、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する結合能を有する核酸アプタマーであり、具体的には、陽イオンの濃度が0.1mM未満程度の低濃度ではグアニン四重鎖構造を形成せず、一方で、陽イオンの濃度が0.1mM以上100mM以下程度の生体内濃度変化域下では、立体構造が変化し、グアニン四重鎖構造を形成することで、PPM1DのB-loopに特異的に結合することができるものである。そのため、陽イオン刺激を与える場所及び時間を制御することで、本実施形態の核酸アプタマーのPPM1Dに対する結合能を時空間的に制御することができ、正常細胞に影響を与えず、PPM1Dを過剰発現しているがん細胞に対して特異的に抗がん活性を発揮することができる。
本明細書において、核酸は、DNAやRNA等の天然の核酸であってもよく、LNA(locked nucleic acid)やBNA(bridged nucleic acid)等の人工核酸であってもよく、核酸と同様の機能を有するものであれば、PNA(peptide nucleic acid)等のペプチド核酸のような核酸誘導体であってもよい。本実施形態のアプタマーを構成する核酸は、例えば、DNAとLNAとの組み合わせ等、2種以上の核酸を組み合わせることができる。
[ポリヌクレオチド(I)]
本実施形態の核酸アプタマーは、下記一般式(I)に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(以下、「ポリヌクレオチド(I)」と称する場合がある)からなり、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する結合能を有する。
Figure 0007255852000004
(一般式(I)中、Cはシトシンである。「-」はヌクレオチド結合である。n11は2以上3以下の整数である。n12、n13及びn14はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X11、X12、X13及びX14はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
11は、以下の(a11)又は(a12)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a11)配列番号1に示される塩基配列;
(a12)配列番号1に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
12は、以下の(a13)又は(a14)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a13)配列番号2に示される塩基配列;
(a14)配列番号2に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
13は、以下の(a15)又は(a16)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a15)配列番号3に示される塩基配列;
(a16)配列番号3に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
(n11、n12、n13及びn14)
n11、n12、n13及びn14はそれぞれX11、X12、X13及びX14の個数を示す。また、一般式(I)中、「-(X11)n11-」、「-(X12)n12-」、「-(X13)n13-」及び「-(X14)n14-」は、核酸アプタマーにおいてグアニン四重鎖構造を形成する母体骨格である。
n11は2又は3であり、3が好ましい。n12、n13及びn14はそれぞれ独立に2以上6以下の整数であり、4以上6以下の整数が好ましく、6がより好ましい。
n11、n12、n13及びn14が上記数であることで、より安定したグアニン四重鎖構造を形成することができる。
(X11、X12、X13及びX14
11、X12、X13及びX14はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。グアニン残基の他にチミン残基、アデニン残基又はウラシル残基を含んでもよく、チミン残基又はアデニン残基を含むことが好ましい。
好ましい「-(X11)n11-」としては、例えばn11が3である場合に、「AGG」(配列番号17)等が挙げられる。
好ましい「-(X12)n12-」、「-(X13)n13-」及び「-(X14)n14-」としては、例えばn12、n13及びn14が6である場合に、「TTAGGG」(配列番号18)等が挙げられる。
(Y11、Y12及びY13
11は、以下の(a11)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a11)配列番号1に示される塩基配列
12は、以下の(a13)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a13)配列番号2に示される塩基配列
13は、以下の(a15)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a15)配列番号3に示される塩基配列
11、Y12及びY13は、核酸アプタマーにおいて標的分子であるPPM1DのB-loopに対する特異的な結合能を有するポリヌクレオチド残基であり、後述する実施例に示すように、Y11、Y12及びY13がそれぞれ(a11)、(a13)及び(a15)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である核酸アプタマーは、陽イオン存在下で、PPM1Dに対する優れた結合能を有する。
また、Y11は、(a11)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a12)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a12)配列番号1に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
また、Y12は、(a13)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a14)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a14)配列番号2に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
また、Y13は、(a15)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a16)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a16)配列番号3に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
ここで、欠失、置換、挿入又は付加されてもよい塩基数としては、1個又は2個であり、1個が好ましい。
ポリヌクレオチド(I)は、後述する実施例に示すように、SELEX法で増幅するためのプライマー配列の全部又は一部が5’末端及び3’末端のうち少なくともいずれか一方に付加されていてもよい。
好ましいポリヌクレオチド(I)としては、例えば、配列番号10又は11に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。配列番号10又は11に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、特に、カリウムイオン存在下で、グアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する優れた結合能を有する。
[ポリヌクレオチド(II)]
他の実施形態の核酸アプタマーは、下記一般式(II)に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(以下、「ポリヌクレオチド(II)」と称する場合がある)からなり、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する結合能を有する。
Figure 0007255852000005
(一般式(II)中、Tはチミンである。「-」はヌクレオチド結合である。n21は2以上3以下の整数である。n22、n23及びn24はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
21は、以下の(a21)又は(a22)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a21)配列番号4に示される塩基配列;
(a22)配列番号4に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
22は、以下の(a23)又は(a24)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a24)配列番号5に示される塩基配列;
(a25)配列番号5に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
23は、以下の(a25)又は(a26)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a25)配列番号6に示される塩基配列;
(a26)配列番号6に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
(n21、n22、n23及びn24)
n21、n22、n23及びn24はそれぞれX21、X22、X23及びX24の個数を示す。また、一般式(II)中、「-(X21)n21-」、「-(X22)n22-」、「-(X23)n23-」及び「-(X24)n24-」は、核酸アプタマーにおいてグアニン四重鎖構造を形成する母体骨格である。
n21は2又は3であり、3が好ましい。n22、n23及びn24はそれぞれ独立に2以上6以下の整数であり、4以上6以下の整数が好ましく、6がより好ましい。
n21、n22、n23及びn24が上記数であることで、より安定したグアニン四重鎖構造を形成することができる。
(X21、X22、X23及びX24
21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。グアニン残基の他にチミン残基、アデニン残基又はウラシル残基を含んでもよく、チミン残基又はアデニン残基を含むことが好ましい。
好ましい「-(X21)n21-」としては、例えばn21が3である場合に、「AGG」(配列番号17)等が挙げられる。
好ましい「-(X22)n22-」、「-(X23)n23-」及び「-(X24)n24-」としては、例えばn22、n23及びn24が6である場合に、「TTAGGG」(配列番号18)等が挙げられる。
(Y21、Y22及びY23
21は、以下の(a21)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a21)配列番号4に示される塩基配列
12は、以下の(a23)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a23)配列番号5に示される塩基配列
13は、以下の(a25)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a25)配列番号6に示される塩基配列
21、Y22及びY23は、核酸アプタマーにおいて標的分子であるPPM1DのB-loopに対する特異的な結合能を有するポリヌクレオチド残基であり、後述する実施例に示すように、Y21、Y22及びY23がそれぞれ(a21)、(a23)及び(a25)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である核酸アプタマーは、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する優れた結合能を有する。
また、Y21は、(a21)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a22)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a22)配列番号4に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
また、Y22は、(a23)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a24)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a24)配列番号5に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
また、Y23は、(a25)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a26)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a26)配列番号6に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
ポリヌクレオチド(II)は、後述する実施例に示すように、SELEX法で増幅するためのプライマー配列の全部又は一部が5’末端及び3’末端のうち少なくともいずれかに付加されていてもよい。
好ましいポリヌクレオチド(II)としては、例えば、配列番号12又は13に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。配列番号12又は13に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、特に、カリウムイオン存在下で、グアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する優れた結合能を有する。
[ポリヌクレオチド(III)]
さらに他の実施形態の核酸アプタマーは、下記一般式(III)に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド(以下、「ポリヌクレオチド(III)」と称する場合がある)からなり、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する結合能を有する。
Figure 0007255852000006
(一般式(III)中、Gはグアニンである。「-」はヌクレオチド結合である。n31は2以上3以下の整数である。n32、n33及びn34はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X31、X32、X33及びX34はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
31は、以下の(a31)又は(a32)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a31)配列番号7に示される塩基配列;
(a32)配列番号7に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
32は、以下の(a33)又は(a34)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a33)配列番号8に示される塩基配列;
(a34)配列番号8に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
33は、以下の(a35)又は(a36)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a35)配列番号9に示される塩基配列;
(a36)配列番号9に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
(n31、n32、n33及びn34)
n31、n32、n33及びn34はそれぞれX31、X32、X33及びX34の個数を示す。また、一般式(III)中、「-(X31)n31-」、「-(X32)n32-」、「-(X33)n33-」及び「-(X34)n34-」は、核酸アプタマーにおいてグアニン四重鎖構造を形成する母体骨格である。
n31は2又は3であり、3が好ましい。n32、n33及びn34はそれぞれ独立に2以上6以下の整数であり、4以上6以下の整数が好ましく、6がより好ましい。
n31、n32、n33及びn34が上記数であることで、より安定したグアニン四重鎖構造を形成することができる。
(X31、X32、X33及びX34
31、X32、X33及びX34はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。グアニン残基の他にチミン残基、アデニン残基又はウラシル残基を含んでもよく、チミン残基又はアデニン残基を含むことが好ましい。
好ましい「-(X31)n31-」としては、例えばn31が3である場合に、「AGG」(配列番号17)等が挙げられる。
好ましい「-(X32)n32-」、「-(X33)n33-」及び「-(X34)n34-」としては、例えばn32、n33及びn34が6である場合に、「TTAGGG」(配列番号18)等が挙げられる。
(Y31、Y32及びY33
31は、以下の(a31)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a31)配列番号7に示される塩基配列
32は、以下の(a33)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a33)配列番号8に示される塩基配列
33は、以下の(a35)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
(a35)配列番号9に示される塩基配列
31、Y32及びY33は、核酸アプタマーにおいて標的分子であるPPM1DのB-loopに対する特異的な結合能を有するポリヌクレオチド残基であり、後述する実施例に示すように、Y31、Y32及びY33がそれぞれ(a31)、(a33)及び(a35)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である核酸アプタマーは、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する結合能を有する。
また、Y31は、(a31)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a32)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a32)配列番号7に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
また、Y32は、(a33)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a34)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a34)配列番号8に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
また、Y33は、(a35)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基と機能的に同等なポリヌクレオチド残基として、以下の(a36)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であってもよい。
(a36)配列番号9に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列
ポリヌクレオチド(III)は、後述する実施例に示すように、SELEX法で増幅するためのプライマー配列の全部又は一部が5’末端及び3’末端のうち少なくともいずれかに付加されていてもよい。
好ましいポリヌクレオチド(III)としては、例えば、配列番号14又は15に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。配列番号14又は15に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、特に、ナトリウムイオン存在下で、グアニン四重鎖構造を形成し、PPM1Dに対する優れた結合能を有する。
核酸アプタマーのPPM1Dに対する結合能は、公知の結合測定法を用いて確認することができる。例えば、標識された核酸アプタマーを含む試料溶液を固相に固定化されたPPM1Dと接触させる。一定時間の接触後、洗浄等により試料溶液を固相上から除去し、固相上でのアプタマーの存在を示す標識を検出することで確認することができる。標識が検出された場合には、核酸アプタマーはPPM1Dと結合しており、当該核酸アプタマーはPPM1Dに対する結合能を有すると判断することができる。
また、核酸アプタマーのPPM1DのB-loopに対する結合能は、野生型のPPM1DとPPM1DのB-loop欠損体とを用いて、上記測定方法を行うことで確認することができる。具体的には、標識の検出時に、野生型のPPM1Dでは標識が検出され、一方で、PPM1DのB-loop欠損体では標識が検出されなかった場合には、核酸アプタマーはPPM1DのB-loopに結合しており、当該核酸アプタマーはPPM1DのB-loopに対する結合能を有すると判断することができる。
本実施形態の核酸アプタマーは、PPM1Dに対する結合能を損なわない範囲内で、上記ポリヌクレオチド(I)~(III)の5’末端及び3’末端の少なくともいずれか一方に、タンパク質、脂質、糖鎖、低分子化合物、ポリエチレングリコール鎖等が付加されていてもよい。
<抗がん剤>
本実施形態の抗がん剤は、上記核酸アプタマーを有効成分として含有する。
上記核酸アプタマーを生体に投与することにより、陽イオン刺激の制御下において、PPM1Dの酵素活性を制御することができる。その結果、PPM1Dを過剰に発現しているがん細胞の細胞増殖を抑制することができる。すなわち、上記核酸アプタマーによれば、がんを治療又は予防することができる。
本実施形態の抗がん剤は、単独で生体に投与されてもよく、或いは、薬学的に許容可能な担体と混合して、がんの治療又は予防用の医薬組成物として投与されてもよい。
医薬組成物は、経口的に使用される剤型であってもよく、非経口的に使用される剤型であってもよいが、非経口的に使用される剤型が好ましい。経口的に使用される剤型としては、例えば錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等が挙げられる。非経口的に使用される剤型としては、例えば注射剤、吸入剤、坐剤、貼付剤等が挙げられる。
薬学的に許容される担体としては、通常医薬組成物の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤;アルギン酸等の膨化剤;水、エタノール、グリセリン等の注射剤用溶剤等が挙げられる。
医薬組成物は添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤等が挙げられる。
医薬組成物は、上記抗がん剤と、上記薬学的に許容される担体及び添加剤を適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
医薬組成物は、上記抗がん剤以外の抗がん作用を有する治療薬及び他の疾患の治療薬からなる群より選択される少なくとも1つと組合せて、使用してもよい。上記抗がん剤と他の薬剤とは、同一の製剤にしてもよいし、別々の製剤にしてもよい。また、各製剤は、同一の投与経路で投与してもよいし、別々の投与経路で投与してもよい。更に、各製剤は、同時に投与してもよいし、逐次的に投与してもよいし、一定の時間乃至期間を空けて別々に投与してもよい。一実施態様において、上記抗がん剤と他の薬剤とは、これらを包含するキットとしてもよい。
また、上記抗がん剤に含まれる上記核酸アプタマーは、陽イオン刺激により、PPM1Dに対する結合能が時空間的に制御されていることから、陽イオンチャネル作用剤と組み合わせて、使用することが好ましい。なお、ここでいう「陽イオンチャネル作用剤」とは、細胞内のナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の陽イオン濃度を上昇させるように構成されている作用剤である。例えば、当該作用剤により細胞内のカリウムイオンが上昇した場合に、ナトリウムイオン等の他の陽イオン濃度も共に上昇してもよく、低下してもよく、変化しなくともよい。具体的な陽イオンチャネル作用剤としては、例えば、ウアバイン、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。また、各製剤は、同一の投与経路で投与してもよいし、別々の投与経路で投与してもよい。更に、各製剤は、同時に投与してもよいし、逐次的に投与してもよいし、一定の時間乃至期間を空けて別々に投与してもよい。一実施態様において、上記抗がん剤と陽イオンチャネル作用剤とは、これらを包含するキットとしてもよい。
医薬組成物を投与する対象としては、限定されるものではないが、例えば、ヒト、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、及びそれらの細胞等が挙げられる。中でも、哺乳動物又は哺乳動物細胞が好ましく、ヒト又はヒト細胞が特に好ましい。
患者又は患畜への投与は、例えば、髄腔内注射、腹腔内注射、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射等のほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、又は経口的に当業者に公知の方法により行うことができる。
医薬組成物の投与量は、患者又は患畜の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、例えば、投与単位形態あたり0.1mg/kg体重以上10mg/kg体重以下の有効成分(核酸アプタマー)を投与すればよい。また、注射剤の場合には、例えば、投与単位形態あたり0.01mg以上10mg以下の有効成分(核酸アプタマー)を投与すればよい。
また、医薬組成物の1日あたりの投与量は、患者又は患畜の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、例えば、成人1日あたり0.1mg/kg体重以上10mg/kg体重以下の有効成分を1日1回又は2回以上4回以下程度に分けて投与すればよい。
上述した抗がん剤又は医薬組成物に含有される上記核酸アプタマーは、当該核酸アプタマーを発現可能なベクターの状態であってもよい。
<他の実施形態>
一実施形態において、本発明は、上記核酸アプタマーの有効量を、治療を必要とする患者又は患畜に投与する、がんの治療方法又は予防方法を提供する。
一実施形態において、本発明は、がんの治療又は予防のための、上記核酸アプタマーを提供する。
一実施形態において、がんの治療又は予防用の医薬組成物を製造するための、上記核酸アプタマーの使用を提供する。
一実施形態において、上記核酸アプタマーを含有する、細胞培養用組成物を提供する。上記核酸アプタマーを含有する培地(細胞培養用組成物)でPPM1Dを過剰に発現する細胞を培養することで、細胞の増殖を抑制することができる。
細胞培養用組成物は、上記核酸アプタマーのみからなるものであってもよく、上記核酸アプタマーと公知の希釈剤とが混合された組成物であってもよい。希釈剤としては、例えば、水、バッファー、各種培地等が挙げられる。
細胞培養用組成物中の上記核酸アプタマーの濃度としては、例えば、10nM以上100μM以下とすることができ、1μM以上が好ましい。
一実施形態において、本発明は、上記核酸アプタマーを含む培地で、PPM1Dを発現しているがん細胞を培養する、細胞培養方法を提供する。
細胞の培養には、上記細胞培養用組成物を用いることができる。
一実施形態において、本発明は、上記核酸アプタマーを、PPM1Dを発現しているがん細胞に接触させる、PPM1Dと前記PPM1Dの基質との結合阻害方法を提供する。
核酸アプタマーによるPPM1DとPPM1Dの基質(例えば、p53等)との結合阻害を確認する方法としては、例えば、核酸アプタマーを接触させた細胞と、核酸アプタマーを接触させていない細胞とを比較し、接触させた細胞のほうが、PPM1Dの酵素活性が低下している又はPPM1Dによって脱リン酸化された基質の割合が低下している場合に、核酸アプタマーがPPM1DとPPM1Dの基質との結合を阻害していると判断することができる。
一実施形態において、本発明は、上記核酸アプタマーを、PPM1Dを発現しているがん細胞に接触させる、細胞の増殖抑制方法を提供する。
核酸アプタマーによる細胞増殖抑制を確認する方法としては、例えば、核酸アプタマーを接触させた細胞と、核酸アプタマーを接触させていない細胞とを比較し、接触させた細胞のほうが、細胞増殖率が低い場合に、核酸アプタマーが細胞の増殖を抑制していると判断することができる。
一実施形態において、本発明は、上記核酸アプタマーを、PPM1Dを発現しているがん細胞に接触させる、p53の活性化方法を提供する。
核酸アプタマーによるp53の活性化を確認する方法としては、例えば、核酸アプタマーを接触させた細胞と、核酸アプタマーを接触させていない細胞とを比較し、接触させた細胞のほうが、リン酸化状態のp53の割合が増加している場合に、核酸アプタマーがp53を活性化していると判断することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.SELEX法を用いたPPM1D結合DNAアプタマーのスクリーニング
陽イオン刺激により立体構造が変化しグアニン四重鎖構造を形成するDNAアプタマー(以下、「イオン刺激応答性DNAアプタマー(Ion- responsive DNA Aptamer;IRDAptmer)」と称する場合がある)のライブラリを独自に開発し、SELEX法を用いて陽イオン存在下でPPM1DのB-loopに特異的に結合するDNAアプタマーをスクリーニングした(図3参照)。イオン刺激応答性DNAアプタマーは下記一般式(IV)に示される塩基配列からなる。なお、一般式(IV)中、Nは任意の塩基であり、アデニン、グアニン、シトシン又はチミンのいずれかの塩基である。「common seq.」は、common sequence(共通配列)の略記であり、DNAアプタマーの増幅のために用いられたプライマー配列である。また、一般式(IV)において「AGG」(配列番号17)及び3つの「TTAGGG」(配列番号18)からなる4組のグアニンを含む配列によりグアニン四重鎖構造が形成される。
5’-(common seq.)-NAGG-N6-TTAGGG-N6-TTAGGG-N6-TTAGGG-(common seq.)-3’ (IV)
また、1回目、4回目、8回目及び12回目のSELEXプロセスの前処理として、PPM1DのB-loop欠損体(以下、「PPM1DSubB」と略記する場合がある)を用いてDepletion法を行った。PPM1DSubBでは、N末端から245番目から268番目までのB-loopの領域が、PPM1A相当配列であるNGS(配列番号19)からなるペプチド残渣に置換されている。具体的には、PPM1DのB-loop欠損体が固定化されたカラムにDNAアプタマーを含む溶液を送液して、PPM1DのB-loop以外の部位に吸着するDNAアプタマーを取り除いた後、フロースルーをPPM1Dの野生型が固定化されたカラムに送液してPPM1DのB-loopに特異的に結合するDNAアプタマーを結合させた。その後、溶出溶液を用いて、PPM1DのB-loopに特定的に結合するDNAアプタマーを溶出させた(図4参照)。なお、カラムにDNAアプタマーをアプライする際に用いられる溶液の組成は、1×PBS(リン酸緩衝食塩水)、0.05% Tween、1μg/mL BSA(ウシ血清アルブミン)である。また、溶出溶液の組成は、0.5M imidazole-HCl(pH7.4)である。
図3に示す処理を12ラウンド繰り返し、得られた4種類のDNAアプタマーをクローニングし、シーケンシングを行って、配列を同定した。各配列を以下の表1に示す。これら同定されたDNAアプタマーをPPM1D結合DNAアプタマー候補とした。
Figure 0007255852000007
2.同定されたDNAアプタマーのPPM1Dに対する阻害活性解析
p53(15P)を基質として用いた。p53(15P)のアミノ酸配列は、「Ac-VEPPLXQETFSDLW-NH2」(配列番号23)である。「Ac」はアセチル基を示し、Xはリン酸化されたセリン残基である。p53(15P)(10μM)、PPM1D(4nM)、及び各DNAアプタマー(10μM)を緩衝液に添加し、混合溶液を調製し、10分間静置した。混合溶液の調製に用いられた緩衝液の組成は、50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.02% β-mercaptoethanol、0.1mM EGTA(グリコールエーテルジアミン四酢酸)、30mM MgCl2、100mM NaClである。その後に、遊離リン酸検出試薬Biomol Green (Enzo Life Sciences,Inc.社製、型番:BML-AK111-1000)を用いて、脱リン酸化されたp53(15P)の量を算出することにより、PPM1Dの酵素活性を定量し、各DNAアプタマーによるPPM1Dの阻害効果を確認した。結果を図5に示す。図5において、「Control」はp53(15P)及びPPM1Dを混合し、DNAアプタマーを含まない反応系である。「Library」は、「5’-(common seq.)-N40-(common seq.)-3’」である。「M1D-Q1F」、「M1D-Q4F」及び「M1D-Q5F」は、上記M1D-Q1、M1D-Q4及びM1D-Q5の5’末端及び3’末端にそれぞれSELEX法で用いられたプライマー配列(配列番号24及び25)が付加されたものである。「M7F」は、「5’-(common seq.)-CCCCAAGCCCACTAAGATTAGTTTAATTTGAACTCCGGTG-(common seq.)-3’」(配列番号26)である。各DNAアプタマーを添加した反応系における酵素活性は、Controlでの酵素活性を100%としたときの相対値で表している。
図5から、M1D-Q5FがPPM1Dに対する強い阻害効果を示すことが確認された。
3.同定されたDNAアプタマーのPPM1Dに対する配列依存的阻害効果
次いで、M1D-Q5FのPPM1Dに対する阻害効果が配列依存的なものであることを確認するために、M1D-Q5Fの配列をランダム化したDNAアプタマー(以下、「M1D-Q5F Random」と略記する場合がある)を用いて、上記「2.」と同様の反応系にて、阻害効果を確認した。反応液中の各DNAアプタマーの濃度が100nM、1μM、2μM、3.3μM、5μM又は10μMとなるように濃度をふって添加し、各濃度における酵素活性を測定した。結果を図6に示す。図6において、「IC50」は50%阻害濃度を示し、M1D-Q5Fを用いた反応系について阻害曲線から「IC50 = 2.9±0.2μM」と算出された。
図6から、M1D-Q5F Randomは、ほとんど阻害効果を示されないことから、M1D-Q5FのPPM1Dに対する阻害効果が配列依存的なものであることが確認された。
4.M1D-Q5FのB-loop結合能
Q5FがPPM1DのB-loopを標的としていることを確認するために、PPM1DSubB及び野生型のPPM1D(以下、「PPM1DWT」と略記する場合がある)とM1D-Q5Fとの結合試験を行った。0、0.050、0.10、0.50又は1.00μgのPPM1Dをそれぞれ基板上にコーティングし、0.5μMの5'末端にビオチンを付加したM1D-Q5Fを含む1×PBS溶液を滴下し、120分間静置した後に、基板を洗浄した。次いで、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を加えて、60分間静置した後に、基板を洗浄した。次いで、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホネート)(ABTS)基質を添加した。この基質はHRPによって酸化されて青緑色を生ずる。基質添加後の溶液について、プレートリーダーを用いて測定した405nmにおける吸光度(OD405)を測定した。結果を図7に示す。
図7から、M1D-Q5FがPPM1DのB-loopを標的としていることが明らかとなった。
5.M1D-Q5FのPPM1D特異性
次いで、M1D-Q5FがPPM1D特異的に結合することを確認するために、他の種類のホスファターゼであるPPM1A及びScp1を用いて、阻害効果を確認した。基質としては、pNPPを用いた。pNPP(1mM)、各ホスファターゼ(20nM)、及びM1D-Q5F(100nM、1μM、5μM又は10μM)を緩衝液に添加し、混合溶液を調製し、10分間静置した。混合溶液の調製に用いられた緩衝液の組成は、PPM1D及びPPM1Aにおいては50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.02% β-mercaptoethanol、0.1mM EGTA、10mM MnCl2、100mM NaClである。Scp1においては、50mM Tris-Acetate(pH5.5)、0.02% β-mercaptoethanol、0.1mM EGTA、10mM MgCl2、100mM NaClである。各濃度における酵素活性を測定した。結果を図8に示す。図8において、「IC50」は50%阻害濃度を示し、PPM1Dを用いた反応系について阻害曲線から「IC50 = 1.75±0.04μM」と算出された。
図8から、M1D-Q5FはPPM1A及びScp1の酵素活性をほとんど阻害しなかった。このことから、M1D-Q5Fの高いPPM1D特異性が確認された。
6.M1D-Q5Fのイオン応答性
BLItzTM systemを用いて、120mMのカリウムイオン又はナトリウムイオン存在下でのM1D-Q5FとPPM1Dとの結合相互作用の速度定数及びアフィニティ(ka、kd、KD)を算出した。結合曲線を図9に、解離定数(KD)を以下の表2に示す。
Figure 0007255852000008
図9及び表2から、M1D-Q5FはnMオーダーの解離定数を有し、陽イオンにより結合能が変化することが示唆された。また、M1D-Q5Fはカリウムイオン存在下に比べて、ナトリウムイオン存在下で、PPM1Dに対して高い結合能を有することが明らかとなった。
7.M1D-Q5Fの円偏光二色性(Circular Dichroism;CD)スペクトル
円偏光二色性分光計(日本分光社製、型番:JASCO CD J-720WI)を用いて、140mMのカリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下でのM1D-Q5FのCDスペクトルを得た。結果を図10に示す。図10において、「M1D-Q5FC」とは、M1D-Q5Fのグアニン四重鎖構造を形成する配列のGをCに置換したオリゴDNA「5’-(common seq.)-GACCTAATTGTTACCCGCGTTGTTACCCTGGGACTTACCC-(common seq.)-3’」(配列番号:27)である。
図10から、M1D-Q5Fは陽イオンの存在下でプロペラ型のグアニン四重鎖構造を形成することが確認された。また、M1D-Q5FのPPM1D阻害効果は陽イオンの存在有無により切り替わる可能性が示唆された。
次いで、カリウムイオン又はナトリウムイオンの濃度を、0、1、5、10、30、60、140若しくは500mM又は1Mに振った条件下でM1D-Q5FのCDスペクトルを得た。結果を図11に示す。また、グアニン四重鎖構造誘起の指標であるCD分光解析における264nmの極大値のイオン濃度の違いによる変化を解析した。結果を図12に示す。
図11から、M1D-Q5Fはナトリウムイオンの濃度の上昇に伴い、ゆるやかに構造変化を起こすのに対して、カリウムイオンの濃度の上昇により急激に構造変化を起こすことが明らかとなった。また、図12から、ナトリウムイオン又はカリウムイオン刺激により誘起されるM1D-Q5Fの立体構造変化は、生体内濃度変化領域(dynamic range)内で生じることが明らかとなった。
8.カリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下でのM1D-Q5FのPPM1Dに対する阻害効果
100mMのカリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下で上記「2.」と同様の反応系にて、阻害効果を確認した。反応液中のM1D-Q5Fの濃度が5μMとなるように調製した。結果を図13に示す。
図13から、M1D-Q5FのPPM1Dに対する阻害効果は、カリウムイオン存在下に比べて、ナトリウムイオン存在下で強く、上記表2のPPM1Dに対する親和性の結果と合致していた。
これらのことから、カリウムイオン存在下では、構造変化が大きいものの、グアニン四重鎖構造内での結合が強く、PPM1DのB-loopにフィットしにくいのに対して、ナトリウムイオン存在下では構造変化が小さいが、グアニン四重鎖構造内での結合がカリウムイオン存在下よりも弱く、程良く不安定であり、B-loopにフィットしやすいものと推察された(図14参照)。
9.M1D-Q5Fによるヒト乳がん由来MCF7細胞増殖抑制効果
PPM1Dが過剰発現していることが知られているヒト乳がん由来MCF7細胞(2×105cells/well)に3μMのM1D-Q5F又はM1D-Q1Fをリポフェクション法により導入し、2日間培養した。細胞を回収して、ウエスタンブロッティング法により、p53及びp21のタンパク質発現量を検出した。結果を図15に示す。p53はPPM1Dの基質であり、細胞周期においてがん抑制因子として働き、アポトーシス誘導に関連する因子である。p21はp53により発現が制御されており、S期のおける細胞周期進行の制御因子である。図15においてコントロールとしてアクチンのタンパク質も検出した。
図15から、M1D-Q5Fを投与したMCF7細胞では、p53及びp21のタンパク質発現量が増加していた。
次いで、0、1、5μMと濃度をふってM1D-Q5Fを投与したMCF7細胞(5×103cells/well)を3日間培養し、細胞増殖率を確認した。結果を図16に示す。図16において、対照群として、PPM1Dの発現量が正常レベルであるヒト肺胞基底上皮腺がん由来A549細胞も同様の条件下で培養した。また、M1D-Q5Fを投与していない各細胞群をコントロール群として、コントロール群での細胞数に対するM1D-Q5F投与群での細胞数を細胞増殖率として算出した。
図16から、M1D-Q5Fは、PPM1Dが過剰発現していることが知られているMCF7細胞の細胞増殖を抑制したが、PPM1Dの発現量が正常レベルであるA549細胞の細胞増殖を抑制しなかった。
また、図17は、M1D-Q1F又はM1D-Q5Fを投与したMCF7細胞の細胞増殖率を比較したグラフである。図17から、M1D-Q5FはMCF7細胞の増殖抑制効果が見られたが、PPM1Dの阻害効果が低いM1D-Q1FはMCF7細胞の増殖抑制効果がほとんど見られなかった。
これらのことから、M1D-Q5FはPPM1D阻害を介して抗がん活性を惹起することが示唆された。
10.M1D-Q5Fのヌクレアーゼ耐性
陽イオン(140mMの塩化ナトリウム若しくは塩化カルシウム)存在下又は非存在下のM1D-Q5F又はM1D-Q5FC(1μM)に10μg/mLのDNase Iを添加し、添加から0、10、20、30及び60分後にサンプルを回収して、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いてヌクレアーゼ耐性を確認した。なお、「M1D-Q5FC」とは、上記「7.」と同様のDNAアプタマーである。結果を図18に示す。また、図18に示すバンドのシグナルを定量化したグラフを図19に示す。図19において、各条件下の0分でのバンドのシグナルを100%としたときの相対値で表している。
図18及び図19から、カリウムイオン存在下のM1D-Q5Fは、ヌクレアーゼ耐性を有することが明らかとなった。
このことから、グアニン四重鎖構造の形成により、M1D-Q5Fのヌクレアーゼ耐性が上昇することが示唆された。
11.M1D-Q5Fの血清安定性
M1D-Q5FC(1μM)又はM1D-Q5FC(1μM)を、10%のウシ胎児血清(FBS)、110mMの塩化ナトリウム及び5mMの塩化カリウムを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に添加し、0、1、2、3及び5日間インキュベートした。各日数経過後にサンプルを回収して、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いてM1D-Q5Fの血清存在下での安定性を確認した。結果を図20に示す。また、図20に示すバンドのシグナルを定量化したグラフを図21に示す。図21において、各条件下の0日後(インキュベート開始時)でのバンドのシグナルを100%としたときの相対値で表している。
図20及び図21から、M1D-Q5FはM1D-Q5FCよりも高い血清安定性を有することが確かめられた。
以上のことから、グアニン四重鎖構造の形成により、インビボ系においてM1D-Q5Fは高い安定性を有することが示唆された。
12.M1D-Q5Fの構造-活性相関解析
M1D-Q5Fの5’末端側及び3’末端側のプライマー配列を全て削ったM1D-Q5(配列番号14)を作製し(図22参照)、上記「2.」と同様の反応系にて、PPM1D阻害効果を確認することで、M1D-Q5Fの低分子量化を検討した。結果を図23に示す。また、図23の阻害曲線から算出されたIC50を表3に示す。
Figure 0007255852000009
図23及び表3から、M1D-Q5はM1D-Q5Fよりも高いPPM1D阻害効果であった。
13.M1D-Q5Fの細胞内局在
Cy3標識したM1D-Q5F(0.5 μM)及び未標識のM1D-Q5F(2.5 μM)をリポフェクション法によりMCF7細胞に導入し、48時間培養した。培養後、核染色用のDAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)を用いた蛍光染色を行い、細胞をスピニングディスク型共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス製、型番:SpinSR10)、倍率:(全体像)100倍で観察した。結果を図24に示す。図24において、一番下の蛍光像は、右上の蛍光像(Merge)において四角で囲まれた部分を拡大した像(375倍)である。また、一番下の蛍光像では、DAPIの染色像内部におけるM1D-Q5Fの局在点を中心に、X軸(横軸)、Y軸(縦軸)で切断した断面をオリンパスFV31S-SWソフトウェアで解析した。その結果をそれぞれ下側(X軸)及び右側(Y軸)に示している。
図24から、M1D-Q5Fは細胞内、特にPPM1Dが存在する核内にも導入されていることが確かめられた。
14.M1D-Q5Fの配列とイオン応答性の相関解析
M1D-Q5F、及びM1D-Q5について、上記「7.」と同様の方法を用いて、M1D-Q5FのCDスペクトル(カリウムイオンの濃度:0、5、10、30、60、140若しくは500mM又は1M)、及びM1D-Q5のCDスペクトル(カリウムイオンの濃度:0、1、30、140若しくは500mM又は1M)を得た。結果を図25に示す。
図25から、M1D-Q5においても、M1D-Q5Fと同様に、カリウムイオン応答性が示された。
16.イオン刺激を用いたM1D-Q5Fの制御
ウアバインは、強心配糖体のひとつであり、Na+, K+-ATPアーゼの特異的阻害剤であり、細胞内のナトリウムイオンの上昇及びカリウムイオンの減少を誘起することが知られている。このウアバインをM1D-Q5Fと共に細胞に導入することによるM1D-Q5Fの活性制御を検討した(図26参照)。具体的には、100nMのウアバイン及び3μMのM1D-Q5Fをリポフェクション法によりMCF7細胞に導入し、2日間培養した。また、ウアバイン及びM1D-Q5F無添加の細胞群、ウアバインを添加せず、M1D-Q5Fを添加した細胞群、ウアバインを添加し、M1D-Q5Fを添加しない細胞群も同様に準備し、培養した。培養後、「9.」と同様の方法を用いて、p53及びp21のタンパク質発現量を検出した。結果を図27に示す。図27においてコントロールとしてアクチンのタンパク質も検出した。また、図27に示すバンドのシグナルを定量化したグラフを図28に示す。図28において、ウアバイン及びM1D-Q5F無添加の細胞群でのバンドのシグナルを1としたときの相対値で表している。
図27及び図28から、M1D-Q5Fを投与したMCF7細胞では、M1D-Q5Fが未投与であるMCF7細胞よりも、p53及びp21のタンパク質発現量が増加しており、M1D-Q5F及びウアバインを投与したMCF7細胞では、p53及びp21のタンパク質発現量が特に増加していた。
[実施例2]
1.SELEX法を用いたPPM1D結合DNAアプタマーのスクリーニング
実施例1の「1.」と同様の方法(1回目、4回目及び8回目のSELEXプロセスの前処理として、PPM1DSubBを用いてDepletion法も実施)を用いて、カリウムイオン存在下で、PPM1Dに結合するDNAアプタマーをスクリーニングした。なお、実施例1の「1.」で用いたライブラリと比べて、Common sequenceが異なるライブラリを用いた。5’末端のプライマー配列を配列番号28に示し、3’末端のプライマー配列を配列番号29に示す。
その結果、得られた2種類のDNAアプタマーをクローニングし、シーケンシングを行って、配列を同定した。各配列を以下の表4に示す。これら同定されたDNAアプタマーをカリウムイオン応答性のPPM1D結合DNAアプタマー候補とした。
Figure 0007255852000010
2.同定したDNAアプタマーのPPM1Dに対する阻害活性解析1
上記「1.」で同定されたG4CAA1及びG4CAA2の5’末端及び3’末端にプライマー配列を付加したもの(以下、それぞれ「G4CAA1F」及び「G4CAA2F」と称する場合がある)を用いた。G4CAA1Fの塩基配列を配列番号11に示し、G4CAA2Fの塩基配列を配列番号13に示す。また、G4CAA1及びG4CAA2の塩基配列について、核酸組成は同じで配列をランダム化したもの(以下、それぞれ「G4CAA1 rdm」及び「G4CAA2 rdm」と称する場合がある)も作製した。G4CAA1 rdmの塩基配列を配列番号30に示し、G4CAA2 rdmの塩基配列を配列番号31に示す。G4CAA1 rdm及びG4CAA2 rdmは、イオン応答性のグアニン四重鎖構造を形成できないものであると考えられる。
これらのDNAアプタマーを用いて、実施例1の「2.」と同様の反応系にて、PPM1Dに対する阻害活性を解析した。反応液中の各DNAアプタマーの濃度が5μMとなるように添加し、酵素活性を測定した。結果を図29に示す。
図29から、それぞれのアプタマーに関してプライマー配列の有無にかかわらずPPM1D阻害効果を示したため、プライマー配列を含まないG4CCAA1及びG4CAA2を今後の解析に用いることとした。
3.同定したDNAアプタマーのPPM1Dに対する阻害活性解析2
上記「2.」の結果を踏まえて、G4CAA1、G4CAA2、G4CAA1 rdm及びG4CAA2 rdmを用いて、PPM1Dに対する阻害活性を解析した。基質としては、pNPPを用いた。pNPP(1mM)、ホスファターゼ(20nM)、及び各DNAアプタマー(100nM、1μM、5μM又は25μM)を緩衝液に添加し、混合溶液を調製し、10分間静置した。混合溶液の調製に用いられた緩衝液の組成は、50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.02% β-mercaptoethanol、0.1mM EGTA、10mM MnCl2、100mM KClである。各濃度における酵素活性を測定した。結果を図30に示す。また、図30に示す阻害曲線から算出されたIC50を表5に示す。
Figure 0007255852000011
図30及び表5から、G4CAA1及びG4CAA2は濃度依存的にPPM1Dの活性を阻害し、それぞれのIC50値は14.2±0.4μM、7.0±0.3μMであった。一方、G4CAA1 rdm及びG4CAA2 rdmでは、ほとんどPPM1Dに対する阻害活性を示さなかった。
4.G4CAA1及びG4CAA2のPPM1D特異性
次いで、G4CAA1及びG4CAA2がPPM1D特異的に結合することを確認するために、他の種類のホスファターゼであるPPM1A及びScp1を用いて、阻害効果を確認した。基質としては、pNPPを用いた。pNPP(1mM)、各ホスファターゼ(20nM)、及び各DNAアプタマー(100nM、1μM、5μM又は25μM)を緩衝液に添加し、混合溶液を調製し、10分間静置した。混合溶液の調製に用いられた緩衝液の組成は、PPM1D及びPPM1Aで50mM Tris-HCl(pH7.5)、0.02% β-mercaptoethanol、0.1mM EGTA、10mM MnCl2、75mM KClである。Scp1で50mM Tris-acetate(pH5.5)、0.02% β-mercaptoethanol、0.1mM EGTA、10mM MgCl2、75mM KClである。各濃度における酵素活性を測定した。結果を図31に示す。図31において、PPM1Dを用いた反応系について阻害曲線からG4CAA1では「IC50 = 7.68±0.87μM」と算出され、G4CAA2では「IC50 = 0.65±0.16μM」と算出された。
図31から、G4CAA1及びG4CAA2はPPM1A及びScp1の酵素活性をほとんど阻害しなかった。このことから、G4CAA1及びG4CAA2の高いPPM1D特異性が確認された。
5.G4CAA1、G4CAA2、G4CAA1 rdm及びG4CAA2 rdmのCDスペクトル
G4CAA1、G4CAA2、G4CAA1 rdm及びG4CAA2 rdmについて、実施例1の「7.」と同様の方法を用いて、CDスペクトルを得た。結果を図32(G4CAA1及びG4CAA1 rdm)、並びに、図33(G4CAA2及びG4CAA2 rdm)に示す。
図32から、G4CAA1はナトリウムイオン存在下ではほとんど構造変化を起こさず、カリウムイオンの刺激により、急激な構造変化(グアニン四重鎖構造の誘起)を引き起こした。一方で、G4CAA1 rdmは、ナトリウムイオン及びカリウムイオン存在下で構造変化が見られたが、現時点ではどのような構造変化かは不明であり、イオン種による構造変化の違いは見られなかった。
図33から、G4CAA2はG4CAA1と同様に、ナトリウムイオン存在下ではほとんど構造変化を起こさず、カリウムイオンの刺激により、急激な構造変化(グアニン四重鎖構造の誘起)を引き起こした。一方で、G4CAA2 rdmについてもG4CAA1 rdmと同様に、ナトリウムイオン及びカリウムイオン存在下で構造変化が見られたが、現時点ではどのような構造変化かは不明であり、イオン種による構造変化の違いは見られなかった。また、G4CAA2 rdmのイオン刺激による構造変化は小さかった。
次いで、イオン刺激に伴う構造変化が大きかったG4CAA2について、カリウムイオンの濃度を、0、0.1、1、10、30、75又は100mMに振った条件下でCDスペクトルを得た。結果を図34に示す。また、対照として、カリウムイオンの濃度をふった条件下でのM1D-Q5FのCDスペクトル(図11の右側のグラフ)を記載している。
図34から、ナトリウムイオンの存在下でPPM1Dに対する阻害活性を強く有するM1D-Q5Fのカリウム応答性に比べて、G4CAA2では低濃度のカリウムイオン濃度で構造変化が引き起こされることが明らかとなった。
また、グアニン四重鎖構造誘起の指標であるCD分光解析における構造変化最大の波長である267nmにおけるモル楕円率について、イオン濃度の違いによる変化を解析した。結果を図35に示す。
図35から、G4CAA1及びG4CAA2のグアニン四重鎖構造の誘起が、M1D-Q5Fと比べて低濃度のカリウムイオン濃度で引き起こされることが明らかとなった。
6.カリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下でのG4CAA1及びG4CAA2のPPM1Dに対する阻害活性変換
75mMのカリウムイオン又はナトリウムイオンの存在下で上記「2.」と同様の反応系にて、阻害効果を確認した。反応液中の各DNAアプタマーの濃度が10μMとなるように調製した。結果を図36に示す。
図36から、G4CAA1及びG4CAA2は、ナトリウムイオン存在下に比べて、カリウムイオン存在下で高いPPM1Dに対する阻害活性を示すことが明らかとなった。一方で、G4CAA1 rdm及びG4CAA2 rdmでは、PPM1Dに対する阻害活性がほとんど見られず、イオン種による阻害効果の違いについても見られなかった。
本実施形態の核酸アプタマーによれば、正常細胞に影響を与えず、PPM1Dに対する結合能を時空間的に制御可能な核酸アプタマーを提供することができる。本実施形態の抗がん剤及びがん治療キットによれば、がん細胞におけるPPM1Dを選択的に阻害することで、副作用を抑制しながら効果的にがんを治療又は予防することができる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(I)~(III)のいずれかに示される塩基配列を含むポリヌクレオチドからなり、陽イオン存在下でグアニン四重鎖構造を形成し、Protein phosphatase magnesium-dependent 1 Deltaに対する結合能を有する、核酸アプタマー。
    Figure 0007255852000012
    (一般式(I)中、Cはシトシンである。「-」はヌクレオチド結合である。n11は2以上3以下の整数である。n12、n13及びn14はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X11、X12、X13及びX14はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
    11は、以下の(a11)又は(a12)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a11)配列番号1に示される塩基配列;
    (a12)配列番号1に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
    12は、以下の(a13)又は(a14)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a13)配列番号2に示される塩基配列;
    (a14)配列番号2に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
    13は、以下の(a15)又は(a16)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a15)配列番号3に示される塩基配列;
    (a16)配列番号3に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
    Figure 0007255852000013
    (一般式(II)中、Tはチミンである。「-」はヌクレオチド結合である。n21は2以上3以下の整数である。n22、n23及びn24はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X21、X22、X23及びX24はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
    21は、以下の(a21)又は(a22)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a21)配列番号4に示される塩基配列;
    (a22)配列番号4に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
    22は、以下の(a23)又は(a24)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a24)配列番号5に示される塩基配列;
    (a25)配列番号5に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
    23は、以下の(a25)又は(a26)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a25)配列番号6に示される塩基配列;
    (a26)配列番号6に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
    Figure 0007255852000014
    (一般式(III)中、Gはグアニンである。「-」はヌクレオチド結合である。n31は2以上3以下の整数である。n32、n33及びn34はそれぞれ独立に2以上6以下の整数である。X31、X32、X33及びX34はそれぞれ独立に連続する2つ以上のグアニン残基を含むポリヌクレオチド残基である。
    31は、以下の(a31)又は(a32)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a31)配列番号7に示される塩基配列;
    (a32)配列番号7に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
    32は、以下の(a33)又は(a34)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a33)配列番号8に示される塩基配列;
    (a34)配列番号8に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列;
    33は、以下の(a35)又は(a36)の塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である。
    (a35)配列番号9に示される塩基配列;
    (a36)配列番号9に示される塩基配列において、1又は2個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。)
  2. 前記Y11が配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、
    前記Y12が配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、且つ、
    前記Y13が配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である、請求項1に記載の核酸アプタマー。
  3. 前記Y21が配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、
    前記Y22が配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、且つ、
    前記Y23が配列番号6に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である、請求項1記載の核酸アプタマー。
  4. 前記Y31が配列番号7に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、
    前記Y32が配列番号8に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基であり、且つ、
    前記Y33が配列番号9に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド残基である、請求項1記載の核酸アプタマー。
  5. 配列番号10~15のいずれかに示される塩基配列からなるポリヌクレオチドである、請求項1記載の核酸アプタマー。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸アプタマーを有効成分として含有する、抗がん剤。
  7. 請求項6に記載の抗がん剤と、
    陽イオンチャネル作用剤と、
    を含む、がん治療キット。
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