JP7252536B2 - ポリリジン生産菌及びそれを用いるポリリジン製造方法 - Google Patents
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Description
EPLは、ストレプトミセス属(Streptomyces)に属する放線菌の二次代謝産物として生産され、特にストレプトミセス・アルブラス(Streptomyces
albulus)が有用な生産菌として知られている(特許文献1)。これまでに、様々な手法で、EPL生産菌の優良株の作出が行われてきた。例えば、ニトロソグアニジン処理などの化学的変異処理によりEPLアナログに耐性を有する変異株が取得されている(特許文献2~4)。また、ストレプトミセス・アルブラスで機能し得る宿主ベクターも開発され、それを用いて該細菌へ遺伝子導入することによるEPL生産性の改良もなされている(特許文献5)。
そこで本発明は、ゲノム配列解析及び網羅的遺伝子発現(トランスクリプトーム)解析に基づいた合理的な遺伝子工学的育種法により、EPLの生産性がさらに高められたストレプトミセス・アルブラスを提供することを課題とする。
[1]ジアミノプロピオン酸ポリマー合成経路、テトラマイシン類合成経路、及びナイスタチン合成経路からなる群から選択されるいずれか1以上を破壊するように改変された、ストレプトマイセス・アルブラス(Streptmyces albulus)。
[2]前記ジアミノプロピオン酸ポリマー合成経路が、遺伝子クラスター13に含まれる1以上の遺伝子の発現の減弱によって破壊されている、[1]に記載のストレプトマイセス・アルブラス。
[3]前記テトラマイシン類合成経路が、遺伝子クラスター19に含まれる1以上の遺伝子の発現の減弱によって破壊されている、[1]に記載のストレプトマイセス・アルブラス。
[4]前記ナイスタチン合成経路が、遺伝子クラスター4及び5に含まれる1以上の遺伝子の発現の減弱によって破壊されている、[1]に記載のストレプトマイセス・アルブラス。
[5]前記1以上の遺伝子の発現が、前記1以上の遺伝子の不活性化によって減弱されている、[2]~[4]のいずれかに記載のストレプトマイセス・アルブラス。
[6]前記1以上の遺伝子が欠失している、[5]に記載のストレプトマイセス・アルブラス。
[7][1]~[6]のいずれかに記載のストレプトマイセス・アルブラスを培地中で好気的に培養する工程、及び前記培地からε-ポリ-L-リジンを回収する工程を含む、ε-ポリ-L-リジンの製造方法。
本発明の第一の態様は、EPL生産菌である。
また、本明細書において「ε-ポリ-L-リジン(EPL)生産能」という記載は、細菌を培地中で培養した場合に、培養培地又は細菌細胞からEPLを回収することができるようなレベルまで、培養培地中又は細菌細胞内でEPLを生産し、放出若しくは分泌し、かつ/又は蓄積させる細菌の能力を意味する。
ストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構生物資源センター(NBRC)(郵便番号:292-0818、住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)から入手することができる。
また、ストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147株のゲノムは、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 DDBJセンターに、アクセッションナンバー:BHXC01000001、BHXC01000002、BHXC01000003、BHXC01000004、BHXC01000005、BHXC01000006、BHXC01000007、及びBHXC01000008として登録されている。
ストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147株の全ゲノム解析及び遺伝子破壊実験により、ストレプトマイセス・アルブラスの遺伝子クラスター13が、ジアミノプロピオン酸ポリマー生合成に関与する遺伝子群であることが明らかになった。クラスター13は、NBRC14147株のゲノムSequence6(アクセッションナンバー:BHXC01000006.1)上の第602403~615851塩基に位置し、配列番号1に示される塩基配列の遺伝子群である。
クラスター13の全機能は解明されていないが、少なくとも9つのORF(ORF1~9)が含まれることが分かっている。ORF4がコードするオルニチンシクロデアミナーゼにより、L-オルニチンがL-プロリンに変換されるとともにアンモニアが脱離し、ORF5がコードするシステインシンターゼによりL-セリンと前記アンモニアからL-2,3-ジアミノプロピオン酸へ変換され、さらにEPL合成酵素等の既知のアミノ酸ポリマー合成酵素とは全く構造の異なるORF1、2がコードする酵素によりポリマー化されてポリ-L-ジアミノプロピオン酸が生成されるものと推測される。したがって、ジアミノプロピオン酸ポリマー合成経路は、クラスター13に含まれる1以上の遺伝子、好ましくはORF1~9のいずれかを含む遺伝子、より好ましくは遺伝子群全体の発現を減弱させることにより破壊される。
本発明者らにより、ストレプトマイセス・アルブラスの遺伝子クラスター19が、テトラマイシン類生合成に関与する遺伝子群であることが明らかになった。クラスター19は、NBRC14147株のゲノムSequence6(アクセッションナンバー:BHXC01000006.1)上の第1658602~1758801塩基に位置し、配列番号2に示される塩基配列の遺伝子群である。
クラスター19の機能はまだほとんど解明されていないが、該クラスターを欠損させたストレプトマイセス・アルブラスにおいてテトラマイシン類の生成が抑制されることが確認されている。したがって、テトラマイシン類合成経路は、クラスター19に含まれる1以上の遺伝子、好ましくは遺伝子群全体の発現を減弱させることにより破壊される。
本発明者らにより、ストレプトマイセス・アルブラスの遺伝子クラスター4及び5として配列未解読領域を介して二分されている遺伝子群が、ナイスタチン生合成に関与することが明らかになった。クラスター4及び5は、NBRC14147株のゲノムSequence1(アクセッションナンバー:BHXC01000001.1)上の第313157~350584塩基(配列番号3)と、Sequence2(アクセッションナンバー:BHXC01000002.1)上の第1~96733塩基(配列番号4)にまたがって存在する遺伝子群である。
クラスター4及び5の機能はまだほとんど解明されていないが、該クラスターを欠損させたストレプトマイセス・アルブラスにおいてナイスタチンの生成が抑制されることが確認されている。したがって、ナイスタチン合成経路は、クラスター4及び5に含まれる1以上の遺伝子、好ましくは遺伝子群全体の発現を減弱させることにより破壊される。
また、EPLの収量増加の観点から、好ましくはジアミノプロピオン酸ポリマー合成経路が破壊されていることが好ましい。また、テトラマイシン類合成経路又はナイスタチン合成経路が破壊されている態様は、副生成物の低下によりEPLの精製が容易になる点で好ましい。
記載は、改変された菌において、同経路が減弱されているような様式で、菌が改変されたことを意味するものとすることもできる。
「改変された細菌において、~経路が減弱されている」という記載は、改変された菌において、同経路由来の酵素をコードする少なくとも1つの遺伝子の発現が減弱されているような様式で、菌が改変されたことを意味するものとすることができる。例えば、ジアミノプロピオン酸ポリマー合成経路由来の酵素をコードするORF1~9から選択される1又は数個の遺伝子の発現を減弱させることができ、その発現を減弱させることのできる遺伝子の組合せは特に限定されない。
「減弱」又は「減弱された」という記載は、細菌中の1以上の酵素の量又は活性が減少するか、又は存在しなくなり、これにより遺伝子産物の活性が減少するか、又は完全に除去されるよう、破壊対象の経路由来の酵素をコードする細菌中の少なくとも1つの遺伝子を減弱させるか、又は改変することを意味するものとすることができる。
遺伝子の一部の欠失又は全遺伝子の欠失、遺伝子によってコードされるタンパク質中でアミノ酸の置換を引き起こす1以上の塩基の交換(ミスセンス変異)、ストップコドンの導入(ナンセンス変異)、遺伝子のリーディングフレームのシフトを引き起こす1又は2の塩基の欠失、薬剤耐性遺伝子及び/又は転写終止信号の挿入、又はプロモータ(1又は複数)、エンハンサ(1又は複数)、アテニュエータ(1又は複数)、リボソーム結合部位(1又は複数)(RBS)等などの遺伝子発現を調節する配列を含む、遺伝子の隣接する領域の改変のために、破壊対象のクラスターに含まれる改変されたDNA領域の少なくとも1つが、遺伝子を自然に発現することができないということも可能である。遺伝子クラスターに含まれる少なくとも1つの遺伝子の不活性化は、例えば、UV照射又はニトロソグアニジン(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)を使用する変異誘発処理、部位特異的変異誘発、相同組換えを使用する遺伝子破壊、及び/又は「Red/ET-駆動組込み(Red/ET-driven integration)」又は「λRed/ET-媒介組込み(λRed/ET-mediated integration)」に基づいた挿入-欠失変異誘発(Yu D.ら、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 2000, 97(11):5978-5983; Datsenko K.A.とWanner B.L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97(12):6640-6645; Zhang Y.ら、Nature Genet., 1998, 20:123-128)などの従来の方法によって行うこともできる。
どの改変されていない菌と比較して、低減されていることを意味するものとすることができる。
は配列番号2に示される塩基配列を有し、クラスター4及び5は配列番号3及び4に示される塩基配列を有する。ストレプトマイセス・アルブラスの株間で、DNA配列が幾分異なり得ることから、前記各クラスター又はそれに含まれる遺伝子の配列は前記配列にそれぞれ示す遺伝子に限定されるものではないが、該配列番号の変異体(variant)ヌクレオチド配列またはそれに相同なものであって、それぞれ該クラスターに含まれる遺伝子がコードするタンパク質の変異体をコードする遺伝子を含むものとすることができる。
られるヒューリスティックなサーチアルゴリズムであり、これらのプログラムは、Samuel
K.とAltschul S.F. (「一般的なスコアリングスキームを使用することにより分子配列特徴の統計的な有意性を評価する方法」Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1990, 87:2264-2268; 「分子配列におけるマルチプルな高スコアリング断片についての応用と統計」Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993, 90:5873-5877)の統計的な方法を使用するその所見に有意性を帰するものである。コンピュータプログラムBLASTにより、3つのパラメータ:スコア、同一性及び類似性が計算される。FASTAサーチ法は、Pearson W.R. (「FASTP及びFASTAを用いる迅速で感度の高い配列比較」, Methods Enzymol., 1990, 183:63-98
)によって記載されている。ClustalW法は、Thompson J.D.ら(「CLUSTAL W:配列の重み付け、位置特異的ギャップペナルティ及びウエイトマトリックス選択により斬新的なマルチプル配列の並びの感度を改良する」, Nucleic Acids Res., 1994, 22:4673-4680)によって記載されている。
前述した本発明のストレプトマイセス・アルブラスは、EPLの製造に好適に用いることができる。すなわち、本発明の第二の態様は、本発明のEPL生産菌を用いるEPLの製造方法である。
本発明のストレプトマイセス・アルブラスの培養培地は、合成又は天然培地、例えば、炭素源、窒素源、硫黄源、無機イオン、及び必要に応じて他の有機及び無機成分を含む典型的な培地とすることができる。
炭素源としては、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、ショ糖、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボース、及び澱粉の加水分解物などの糖類;グリセリン、マンニトール、及びソルビトールなどのアルコール;グルコン酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、及びコハク酸などの有機酸等を使用することができる。その含有量は0.1~10%(w/v)が好ましい。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及びリン酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩;酵母エキス、ペプトン、カゼイン加水分解物、アミノ酸、大豆加水分解物などの有機窒素;アンモニアガス;アンモニア水等を使用することができる。その含有量は0.1~5%(w/v)が好ましい。
硫黄源としては、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン等を含むものとすることができる。その含有量は0.1~10%(w/v)が好ましい。
無機イオンとしては、リン酸イオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、鉄イオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、硫酸イオン等を与えるものが挙げられる。その含有量は0.1~5%(w/v)が好ましい。
また、培養工程の途中で、炭素源や窒素源を逐次添加してもよい。また、L-リジンを液体培地に添加することが好ましく、その量は通常0.1~2%(w/v)である。また、クエン酸、リンゴ酸を添加することは好ましく、その量は通常0.1~5%(w/v)である。
EPL生産菌であるストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147株の網羅的遺伝子発現解析(トランスクリプトーム解析)を行った。
(1)ストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147株の培養
M3G培地(グルコース5wt%、酵母エキス0.5wt%、硫酸アンモニウム1wt%、K2HPO40.08wt%
、KH2PO4 0.136wt%、MgSO4・7H2O 0.05wt%、ZnSO4・7H2O 0.004wt%、FeSO4・7H2O 0.003wt%(pH 6.8))を用いて、ストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147を培養した。30℃で20時間好気的に培養して得た100mLの前培養液を1Lの培地に加え、3L容ジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社製)を使用して30℃、500rpm、通気量3.0 L/minで好気的に培養した。菌体の増殖に伴って培養液のpHは徐々に低下したため、培養液pHが4.2に達した時点(培養開始後12時間)から10w/v%アンモニア水を添加して培養液pHを4.2に維持した。この培養過程において、EPLの生産はpH4.2に低下した後にのみ観察された。従って、培養開始8時間後及び35時間後に培養液から遠心分離により菌体を回収し、それぞれ生育期菌体及び生産期菌体とした。
生育期菌体及び生産期菌体それぞれを、Tris-HCl飽和フェノール/クロロホルム混合液に懸濁し、超音波で菌体を破砕した。菌体破砕液にトリイソプロピルナフタレン硫酸塩を含んだトリス/フェノール混合液を加え、良く混合後遠心分離し、水層のみを分取することでタンパク質などの不純物を除去した。分取した水層に酢酸ナトリウム、イソプロパノールを加え、静置した後、遠心分離し、上清を捨て、70v/v%エタノールを加えた。さらにこれを良く混合後、遠心分離して上清をきれいに取り除き沈殿を回収した。続いて回収した沈殿を適当な緩衝溶液に懸濁した後、塩化リチウムを加え静置し、遠心分離した。上清を捨て、沈殿したRNAを70v/v%エタノールでリンスし、風乾後適当な緩衝液に溶解させてRNA試料とした。RNA試料に対して、A260、A260/A280の吸光度測定、アガロース電気泳動により純度確認を行なった。
抽出したRNA試料から、Ribo-ZeroTM Magnetic Kit (Gram-Positive Bacteria)によってrRNAを除去した。得られたmRNAを断片化し、逆転写反応により一本鎖cDNAを合成した。これを鋳型としてdUTPを取り込ませた二本鎖cDNAを合成した後、両末端を平滑化・リン酸化処理を施し、更に3’-dA突出処理を行ってIndexアダプターと連結した。続いてアダプターと連結した二本鎖cDNAを鋳型としてdUTPを持つ鎖を増幅しないポリメラーゼによりPCR増幅したものをシーケンスライブラリーとした。このライブラリーからHiSeq PE Rapid
Cluster Kit v2-HSを用いてクラスター形成を行い、イルミナ社製次世代シーケンサー(HiSeq 2500)を用いて塩基配列を取得した。シーケンス解析の結果、得られた総リード数は47,724,626(総塩基数4,772,462,600塩基)であった。
このリード配列をGenedata Profiler Genome (Genedata社)を用いてNBRC14147株のゲノムデータにマッピングした結果、97.8%のリードがマッピングされた。その後、マッピングで得られたゲノム位置情報からアノテーションを行い、遺伝子ごと、転写産物毎に発現量の算出を行った。得られた一次データからFPKM(Fragments Per Kilobase of
exon per Million mapped fragments)値を用いた正規化処理、フィルタリング(リードカウント16未満の除去)、対数変換(logFPKM値)を行った。これらのデータ前処理を行った後、Integrative Genome Viewerソフトウエアを用いて、前述のNBRC14147株のゲノムデータからAntiSMASHにより検出された37の推定二次代謝産物生合成遺伝子群について発現量比較解析を行った。
また、興味深いことにOrn cyclodeaminase遺伝子、Cysteine Synthase遺伝子、及びNRPS様酵素遺伝子を含む二次代謝遺伝子群(クラスター13)の発現量も同様にEPL生産期に顕著に増加することが確認された。なお、別の実験において、該クラスターを破壊し
た株では、非破壊株では著量生産されるジアミノプロピオン酸ポリマーが非検出となった。一方、Zhaoxian Xuらにより(Scientific Reports, 5:17400 (2015))ジアミノプロピオン酸ポリマー生合成遺伝子として同定されている遺伝子(pdaps)は、トランスクリプトーム解析において二次代謝期に全く発現していないことが判明し、実際に当該遺伝子を破壊しても、当該ポリマーの生産は維持された。これらのことから、pdaps遺伝子ではなくクラスター13がジアミノプロピオン酸ポリマーの生合成に関与する遺伝子群であることが確認された。
(1)クラスター13破壊プラスミドの構築
ストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147株の染色体DNAを鋳型として、クラスター13の上流及び下流領域それぞれ約3-kbpを以下のプライマーを用いてPCR増幅し、それぞれLeft arm及び Right armとした。同様にpUC19-aac(3)IV-codAプラスミドからアプラマイシン耐性遺伝子(aac(3)IV)を含む約2.4-kbp領域をPCR増幅した。
前記構築したプラスミドpK18mob-Δcluster13をE. coli ET12567株へ導入し、更にpUB3
07プラスミドを有するE. coli ET12567株との三親性接合伝達によってストレプトマイセス・アルブラスNBRC14147株へ導入した(参考文献:J Am Chem Soc 134:12434-12437、2012)。その後、アプラマイシン耐性且つネオマイシン感受性株をクラスター13破壊候補株として選抜した。この候補株から抽出した染色体DNAを鋳型として、以下のプライマーを用いたマルチプレックスPCRによりクラスター13の欠失及びaac(3)IV遺伝子との置換、すなわち当該遺伝子群の破壊を確認した。
M3G培地(グルコース5wt%、酵母エキス0.5wt%、硫酸アンモニウム1wt%、K2HPO4 0.08wt%、KH2PO4 0.136wt%、MgSO4・7H2O 0.05wt%、ZnSO4・7H2O 0.004wt%、FeSO4・7H2O 0.003wt%(pH 6.8))を用いて、S. albulus NBRC14147株及びS. albulus Δcluster 13株をそれぞれ培養した。30℃で20時間好気的に培養して得た100mLの前培養液を1Lの培地にそれぞれ加え、3L容ジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ社製)を使用して30℃、400rpm、通気量3.0 L/minで好気的に培養した。菌体の増殖に伴って培養液のpHは徐々に低下したため、培養液pHが4.2に達した時点(培養開始後12時間)から10w/v%アンモニア水を添加して培養液pHを4.2に維持した。培養開始後24時間からフィード液(グルコース 50wt%、硫酸アンモニウム5wt%)を適宜追加してグルコース濃度をコントロールし、8時間、16時間ごとに培養液を回収して、EPLの生産を確認しつつ120時間まで培養を実施した。
なお、培養液中に蓄積したEPLは、メチルオレンジを用いたItzhakiの方法(Analitical Biochemistry vol. 50, 569-574(1972))によって定量した。すなわち、培養液上清0.1mLに0.1 Mリン酸バッファー(pH6.9)1.9 mLを加えた液に1 mMメチルオレンジ水溶液2 mLを混合し、30℃で30分放置後、生じたEPLとメチルオレンジの複合体を遠心分離によって除去し、その上清の465 nmにおける吸光度を測定した。一方、EPLの標準品を用いて作製した検量線から、EPL量を算出した。さらにグルコース消費量からEPLの対糖収率も算出した。
る。該細菌を培養することにより、EPLを高収率で発酵生産することができ、また副生成物の産生を抑制することができる。その結果、EPL生産量の増大に加え、生産コストの削減や、発酵液からのEPLの分離・精製工程の簡略化も実現されるため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
Claims (4)
- 以下の(a)、(b)及び(c)からなる群から選択されるいずれか1以上を満たすように改変された、ストレプトマイセス・アルブラス(Streptomyces albulus)。
(a)ジアミノプロピオン酸ポリマー合成経路が、遺伝子クラスター13に含まれる1以上の遺伝子の発現の減弱によって破壊されている(ただし、前記遺伝子クラスター13に含まれる遺伝子は、配列番号1に示される塩基配列に含まれる塩基配列、又は配列番号1に示される塩基配列に含まれる塩基配列がコードするタンパク質のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する)
(b)テトラマイシン類合成経路が、遺伝子クラスター19に含まれる1以上の遺伝子の発現の減弱によって破壊されている(ただし、前記遺伝子クラスター19に含まれる遺伝子は、配列番号2に示される塩基配列に含まれる塩基配列、又は配列番号2に示される塩基配列に含まれる塩基配列がコードするタンパク質のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する)
(c)ナイスタチン合成経路が、遺伝子クラスター4及び5に含まれる1以上の遺伝子の発現の減弱によって破壊されている(ただし、前記遺伝子クラスター4に含まれる遺伝子は、配列番号3に示される塩基配列に含まれる塩基配列、又は配列番号3に示される塩基配列に含まれる塩基配列がコードするタンパク質のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有し、前記遺伝子クラスター5に含まれる遺伝子は、配列番号4に示される塩基配列に含まれる塩基配列、又は配列番号4に示される塩基配列に含まれる塩基配列がコードするタンパク質のアミノ酸配列に対して90%以上の相同性を有するタンパク質をコードする塩基配列を有する) - 前記1以上の遺伝子の発現が、前記1以上の遺伝子の不活性化によって減弱されている、請求項1に記載のストレプトマイセス・アルブラス。
- 前記1以上の遺伝子が欠失している、請求項2に記載のストレプトマイセス・アルブラス。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のストレプトマイセス・アルブラスを培地中で好気的に培養する工程、及び前記培地からε-ポリ-L-リジンを回収する工程を含む、ε-ポリ-L-リジンの製造方法。
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