JP7240623B2 - 蒸着マスク装置の製造装置及び蒸着マスク装置の製造方法 - Google Patents

蒸着マスク装置の製造装置及び蒸着マスク装置の製造方法 Download PDF

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Description

本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造装置及び蒸着マスク装置の製造方法に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置に対して、高精細であること、例えば画素密度が500ppi以上であることが求められている。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、ウルトラフルハイビジョンに対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度が例えば800ppi以上であることが求められる。
表示装置の中でも、応答性の良さ、消費電力の低さやコントラストの高さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔が形成された蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板に対して蒸着マスクを密着させ、次に、密着させた蒸着マスクおよび基板を共に蒸着装置に投入し、有機材料を基板に蒸着させる蒸着工程を行う。この場合、高い画素密度を有する有機EL表示装置を精密に作製するためには、蒸着マスクの貫通孔の位置や形状を設計に沿って精密に再現することが求められる。
有機材料などの蒸着材料を基板に蒸着させる蒸着工程を行う蒸着装置は、蒸着マスクと、蒸着マスクを支持するフレームと、を含む蒸着マスク装置を備える。フレームは、蒸着マスクが撓まないように、蒸着マスクを引っ張った状態で支持する。蒸着マスクは、溶接によってフレームに固定される。
特許第5382259号公報 特開2001-234385号公報
蒸着材料を所望のパターンで精度良く基板に蒸着させるためには、蒸着マスクの厚みが小さいことが好ましい。ところで、蒸着マスクの厚みを小さくした場合、蒸着マスクを引っ張った状態でフレームに支持させた際に、蒸着マスクに撓みや波打ち形状が発生することがある。このため、蒸着マスクとフレームとの密着性が低下し、蒸着マスクとフレームとの非密着部において溶接不良が発生することにより、蒸着マスクの溶接部の強度が十分に確保できないことが考えられる。とりわけ、蒸着マスクの厚みが小さい場合には、この溶接部の強度が問題になり得る。
本開示は、このような課題を効果的に解決し得る蒸着マスク装置の製造装置及び蒸着マスク装置の製造方法を提供する。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造装置であって、蒸着マスクを載せる載置台と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプと、前記上方クランプ及び前記下方クランプを駆動する駆動装置と、を備え、前記駆動装置は、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの一方のクランプが前記蒸着マスクに接触した後、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの他方のクランプが前記蒸着マスクに接触するように、前記上方クランプ及び前記下方クランプを駆動する、蒸着マスク装置の製造装置である。
本開示の一実施形態による蒸着マスク装置の製造装置において、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方は、前記蒸着マスクとの間で位置決めを行う位置決め部を有してもよい。
本開示の一実施形態による蒸着マスク装置の製造装置において、前記載置台は、前記蒸着マスクを磁力によって保持する電磁石装置を有してもよい。
本開示の一実施形態による蒸着マスク装置の製造装置において、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方は、前記載置台の載置面の法線方向周りに回転可能であってもよい。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造装置であって、蒸着マスクを載せる載置台と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプと、を備え、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方は、前記蒸着マスクとの間で位置決めを行う位置決め部を有する、蒸着マスク装置の製造装置である。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造装置であって、蒸着マスクを載せる載置台と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプと、を備え、前記載置台は、前記蒸着マスクを磁力によって保持する電磁石装置を有する、蒸着マスク装置の製造装置である。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造装置であって、蒸着マスクを載せる載置台と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプと、を備え、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方は、前記載置台の載置面の法線方向周りに回転可能である、蒸着マスク装置の製造装置である。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造方法であって、載置台に蒸着マスクを載置する工程と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプとによって、前記蒸着マスクを掴む工程と、を備え、前記蒸着マスクを掴む工程において、前記上方クランプ及び前記下方クランプは、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの一方のクランプが前記蒸着マスクに接触した後、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの他方のクランプが前記蒸着マスクに接触するように駆動される、蒸着マスク装置の製造方法である。
本開示の一実施形態による蒸着マスク装置の製造方法において、前記蒸着マスクを掴む工程において、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方の位置決め部を用いて、前記蒸着マスクとの間で位置決めを行ってもよい。
本開示の一実施形態による蒸着マスク装置の製造方法において、前記載置台は、前記蒸着マスクを磁力によって保持する電磁石装置を有し、前記載置台の前記電磁石装置の磁力によって、前記蒸着マスクが保持されてもよい。
本開示の一実施形態による蒸着マスク装置の製造方法において、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方が、前記載置台の載置面の法線方向周りに回転することにより、前記蒸着マスクの位置を修正する工程を更に備えてもよい。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造方法であって、載置台に蒸着マスクを載置する工程と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプとによって、前記蒸着マスクを掴む工程と、を備え、前記蒸着マスクを掴む工程において、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方の位置決め部を用いて、前記蒸着マスクとの間で位置決めを行う、蒸着マスク装置の製造方法である。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造方法であって、電磁石装置を有する載置台に蒸着マスクを載置する工程と、前記載置台の前記電磁石装置の磁力によって、前記蒸着マスクを保持する工程と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプとによって、前記蒸着マスクを掴む工程と、を備えた、蒸着マスク装置の製造方法である。
本開示の一実施形態は、蒸着マスク装置の製造方法であって、載置台に蒸着マスクを載置する工程と、前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプとによって、前記蒸着マスクを掴む工程と、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方が、前記載置台の載置面の法線方向周りに回転することにより、前記蒸着マスクの位置を修正する工程と、を備えた、蒸着マスク装置の製造方法である。
本開示の一実施形態によれば、蒸着マスクに撓みや波打ち形状が発生することを抑制することができる。
本開示の一実施形態による蒸着マスク装置を備えた蒸着装置を示す図である。 図1に示す蒸着マスク装置を用いて製造した有機EL表示装置を示す断面図である。 本開示の一実施形態による蒸着マスク装置を示す平面図である。 図3に示す蒸着マスク装置の耳部を拡大して示す平面図(図3のIV部に対応する平面図)である。 図4の蒸着マスク装置をV-V方向から見た断面図である。 蒸着マスクの中間部を拡大して示す平面図である。 図6の中間部をVII-VII方向から見た断面図である。 本開示の一実施形態による蒸着マスク装置の製造装置を示す平面図である。 蒸着マスク装置の製造装置の載置台を示す平面図である。 蒸着マスク装置の製造装置の載置台をX-X方向から見た断面図である。 図8の蒸着マスク装置の製造装置をXI-XI方向から見た断面図である。 図11のクランプを拡大して示す断面図である。 母材を圧延して所望の厚みを有する金属板を得る工程を示す図である。 圧延によって得られた金属板をアニールする工程を示す図である。 蒸着マスクの製造方法の一例を全体的に説明するための模式図である。 金属板上にレジストパターンを形成する工程を示す図である。 第1面エッチング工程を示す図である。 第2面エッチング工程を示す図である。 金属板から樹脂及びレジストパターンを除去する工程を示す図である。 蒸着マスクを上方クランプ及び下方クランプによって掴む工程を示す図である。 溶接工程を説明する図である。 溶接工程を説明する図である。 図23は、有機EL基板に蒸着材料を蒸着させる工程を示す図である。 図24は、有機EL基板に蒸着材料を蒸着させる工程を示す図である。 図25は、有機EL基板に蒸着材料を蒸着させる工程を示す図である。 蒸着マスク装置の製造装置の第1の変形例を示す平面図である。 図26の蒸着マスク装置の製造装置をXXVII-XXVII方向から見た断面図である。 蒸着マスク装置の製造装置の第2の変形例を示す平面図である。 図28の蒸着マスク装置の製造装置をXXIX-XXIX方向から見た断面図である。 蒸着マスク装置の製造装置の第3の変形例を示す平面図である。 図30の蒸着マスク装置の製造装置の作用を示す概略平面図である。
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、例えば、「板」との用語は、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材と同等の意味を有するものとして使用している。
本明細書において、「平面視」とは、対称となる板状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において、板状の部材の平面方向に直交する法線方向から見た状態を指す。例えば、ある板状の部材が「平面視において矩形状の形状を有する」とは、当該部材を法線方向から見たときに、当該部材が矩形状の形状を有していることを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
なお、本開示の実施形態は、矛盾の生じない範囲で、その他の実施形態や変形例と組み合わせられ得る。また、その他の実施形態同士や、その他の実施形態と変形例も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられ得る。また、変形例同士も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられ得る。
また、本開示の実施形態において、製造方法などの方法に関して複数の工程を開示する場合に、開示されている工程の間に、開示されていないその他の工程が実施されてもよい。また、開示されている工程の順序は、矛盾の生じない範囲で任意である。
本実施形態においては、マスクが、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクである例について説明する。ただし、マスクの用途が特に限定されることはなく、種々の用途に用いられるマスクに対し、本実施形態を適用することができる。例えば、仮想現実いわゆるVRや拡張現実いわゆるARを表現するための画像や映像を表示又は投影するための装置を製造するために、本実施形態のマスクを用いてもよい。
まず、対象物に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置90について、図1を参照して説明する。図1に示すように、蒸着装置90は、蒸着源(例えばるつぼ94)、ヒータ96、及び蒸着マスク装置10を備える。るつぼ94は、有機発光材料などの蒸着材料98を収容する。ヒータ96は、るつぼ94を加熱して蒸着材料98を蒸発させる。蒸着マスク装置10は、るつぼ94と対向するよう配置されている。
次に、蒸着マスク装置10について説明する。図1に示すように、蒸着マスク装置10は、蒸着マスク20と、蒸着マスク20を支持するフレーム15と、を備える。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように、蒸着マスク20をその面方向に引っ張った状態で支持する。蒸着マスク装置10は、図1に示すように、蒸着マスク20が、蒸着材料98を付着させる対象物である基板、例えば有機EL基板92に対面するよう、蒸着装置90内に配置される。以下の説明において、蒸着マスク20の面のうち、有機EL基板92側の面を第1面20aと称し、第1面20aの反対側に位置する面を第2面20bと称する。このうち蒸着マスク20の第2面20bにフレーム15の表面15aが面している。
蒸着マスク装置10は、図1に示すように、有機EL基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面に配置された磁石93を備えていてもよい。磁石93を設けることにより、磁力によって蒸着マスク20を磁石93側に引き寄せて、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができる。
図3は、蒸着マスク装置10を蒸着マスク20の第1面20a側から見た場合を示す平面図である。図3に示すように、蒸着マスク装置10は、平面視において細長い形状を有する複数の蒸着マスク20を備え、各蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向における一対の端部20eの近傍に位置する後述する溶接部17aにおいて、溶接によってフレーム15に固定されている。
図1に示すように、蒸着マスク20は、蒸着マスク20を貫通する複数の貫通孔25を含む。るつぼ94から蒸発して蒸着マスク装置10に到達した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する。これによって、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98を有機EL基板92の表面に成膜することができる。
図2は、図1の蒸着装置90を用いて製造した有機EL表示装置100を示す断面図である。有機EL表示装置100は、有機EL基板92と、パターン状に設けられた蒸着材料98を含む画素と、を備える。なお、図2の有機EL表示装置100においては、蒸着材料98を含む画素に電圧を印加する電極等が省略されている。また、有機EL基板92上に蒸着材料98をパターン状に設ける蒸着工程の後、図2の有機EL表示装置100には、有機EL表示装置のその他の構成要素が更に設けられ得る。従って、図2の有機EL表示装置100は、有機EL表示装置の中間体と呼ぶこともできる。
なお、複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク20が搭載された蒸着装置90をそれぞれ準備し、有機EL基板92を各蒸着装置90に順に投入する。これによって、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料および青色用の有機発光材料を順に有機EL基板92に蒸着させることができる。
ところで、蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される場合がある。この場合、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と有機EL基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、有機EL基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
このような課題を解決するため、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数が、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、有機EL基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20およびフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。鉄合金は、ニッケルに加えてコバルトを更に含んでいてもよい。例えば、蒸着マスク20を構成する金属板の材料として、ニッケル及びコバルトの含有量が合計で30質量%以上且つ50質量%以下であり、且つコバルトの含有量が0質量%以上且つ6質量%以下である鉄合金を用いることができる。ニッケル若しくはニッケル及びコバルトを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上且つ38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上且つ34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、48質量%以上且つ54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。
なお蒸着処理の際に、蒸着マスク20、フレーム15および有機EL基板92の温度が高温には達しない場合は、蒸着マスク20およびフレーム15の熱膨張係数を、有機EL基板92の熱膨張係数と同等の値にする必要は特にない。この場合、蒸着マスク20を構成する材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル-コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
次に、蒸着マスク20について詳細に説明する。図3に示すように、蒸着マスク20は、蒸着マスク20の長手方向における一対の端部20eを構成する一対の耳部17と、一対の耳部17の間に位置する中間部18と、を備えている。
耳部17について詳細に説明する。耳部17は、蒸着マスク20のうちフレーム15に固定される部分である。本実施の形態において、耳部17は、第2面20b側において溶接によってフレーム15に固定される。以下の説明において、耳部17及びフレーム15のうち溶接によって互いに接合されている部分のことを、接合部19と称する。
図4は、蒸着マスク装置10の耳部17及びその周辺部分を拡大して示す平面図である。この耳部17は、フレーム15の表面15aに溶接される溶接部17aと、溶接部17aと蒸着マスク20の端部20eとの間に位置する延在部17bと、を含む。本実施の形態において、溶接部17aは、蒸着マスク20の長手方向において、図4の仮想線(二点鎖線)で囲まれる領域に対応し、延在部17bは、図4の仮想線(二点鎖線)のうち、端部20e側の仮想線と、端部20eとの間の領域に対応している。このうち溶接部17aは、接合部19が形成される部分である。耳部17の溶接部17aに形成される接合部19は、溶接痕19aを含む。溶接痕19aとは、蒸着マスク20の第2面20bをフレーム15に溶接したことに起因して、蒸着マスク20及びフレーム15の一部に形成された痕跡である。例えば、図4に示すように、接合部19は、蒸着マスク20の幅方向に沿って並ぶ複数の点状の溶接痕19aを含む。このような複数の点状の溶接痕19aは、例えば、蒸着マスク20の幅方向に沿う各位置において、後述する溶接装置76により耳部17にレーザー光を間欠的に点状に照射することによって形成される。なお、平面視における溶接痕19aの配置や形状が特に限られることはない。例えば、溶接痕19aは、蒸着マスク20の幅方向に沿って線状に延びていてもよく、あるいは、点状に形成された溶接痕と線状に形成された溶接痕とを含んでいてもよい。
図4に示すように、耳部17のうち、端部20e側の領域に、切欠き17cが形成されている。切欠き17cは、蒸着マスク20の端部20e側に向けて切り欠かれている。また切欠き17cは、蒸着マスク20の短手方向中央部に形成されている。なお、切欠き17cは、フレーム15及び接合部19から離間した位置に存在する。切欠き17cの縁部は、平面視略U字状となっているが、これに限らず、平面視略V字状、平面視略コ字状(U字状の角部を直角にした形状)、平面視略半円状としても良い。このように蒸着マスク20の端部20eに切欠き17cを形成したことにより、蒸着マスク20の切欠き17cの両側には、第1突出片16a及び第2突出片16bが設けられる。第1突出片16a及び第2突出片16bは、切欠き17cを介して互いに蒸着マスク20の短手方向に離間して配置されている。
図5は、図4の蒸着マスク装置をV-V方向から見た断面図である。図5に示すように、溶接痕19aは、耳部17の第1面20aから第2面20bを介してフレーム15に至っている。溶接痕19aは、蒸着マスク20の耳部17及びフレーム15のうち、溶接時に溶融した部分が固化した部分であり、耳部17の第1面20aから第2面20bに至る部分及びフレーム15の一部を含んでいる。この溶接痕19aは、蒸着マスク20の耳部17とフレーム15とを互いに接合している。
また、図3乃至図5に示すように、延在部17bは、フレーム15の後述する外側面15cよりも外側にまで延びている。「外側」とは、図3において矢印Aで表すように、蒸着マスク20の長手方向において、蒸着マスク20の中心線CLから遠ざかる側である。ここで、蒸着マスク20の中心線CLとは、蒸着マスク20の長手方向に直交する方向に延びる直線のうち、蒸着マスク20の長手方向における一対の端部20e間を二等分する中間点C(図3参照)を通る直線である。この延在部17bは、後述するクランプ装置50に支持される部分であり、本実施の形態においては、上方クランプ51及び下方クランプ52に挟持される部分である。
なお、図5において、蒸着処理の際に蒸着マスク20に密着する有機EL基板92を、点線で表す。図5に示すように、有機EL基板92は、蒸着マスク20のうち接合部19が形成される部分にまで延在していてもよい。
次に、中間部18について説明する。図3乃至図5に示すように、中間部18は、第1面20aから第2面20bに至る貫通孔25が形成された有効領域22と、有効領域22を取り囲む周囲領域23と、を含む。周囲領域23は、有効領域22を支持するための領域であり、有機EL基板92へ蒸着されることを意図された蒸着材料が通過する領域ではない。例えば、有効領域22は、蒸着マスク20のうち、有機EL基板92の表示領域に対面する領域である。
図3に示すように、有効領域22は、例えば、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有する。なお図示はしないが、各有効領域22は、有機EL基板92の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。例えば各有効領域22は、円形状の輪郭を有していてもよい。
図3に示すように、中間部18は、蒸着マスク20の長手方向に沿って所定の間隔を空けて配列された複数の有効領域22を含む。一つの有効領域22は、一つの有機EL表示装置100の表示領域に対応する。このため、図1に示す蒸着マスク装置10によれば、有機EL表示装置100の多面付蒸着が可能である。
以下、中間部18について詳細に説明する。図6は、中間部18を拡大して示す平面図であり、図7は、図6の中間部18をVII-VII方向から見た断面図である。図6に示すように、複数の貫通孔25は、有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで規則的に配列される。
以下、有効領域22について詳細に説明する。図6は、蒸着マスク20の第2面20b側から有効領域22を拡大して示す平面図である。図6に示すように、図示された例において、各有効領域22に形成された複数の貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。
図7に示すように、複数の貫通孔25は、蒸着マスク20の第1面20aから、第2面20bへ貫通している。図示された例では、後に詳述するように、蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nにおける一方の側となる金属板64の第1面64aに第1凹部30がエッチングによって形成され、当該法線方向Nにおける他方の側となる金属板64の第2面64bに第2凹部35が形成される。第1凹部30は、第2凹部35に接続され、これによって第2凹部35と第1凹部30とが互いに通じ合うように形成される。貫通孔25は、第2凹部35と、第2凹部35に接続された第1凹部30とによって構成されている。図6及び図7に示すように、第1凹部30の壁面31と、第2凹部35の壁面36とは、周状の接続部41を介して接続されている。接続部41は、蒸着マスク20の平面視において貫通孔25の開口面積が最小になる貫通部42を画成する。
図7に示すように、蒸着マスク20の第1面20a側において、隣り合う二つの貫通孔25は、金属板64の第1面64aに沿って互いから離間している。蒸着マスク20の第2面20b側においても、隣り合う二つの第2凹部35が、金属板64の第2面64bに沿って互いから離間していてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に金属板64の第2面64bが残存していてもよい。以下の説明において、金属板64の第2面64bの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分のことを、トップ部43とも称する。このようなトップ部43が残るように蒸着マスク20を作製することにより、蒸着マスク20に十分な強度を持たせることができる。このことにより、例えば搬送中などに蒸着マスク20が破損してしまうことを抑制することができる。なおトップ部43の幅βが大きすぎると、蒸着工程においてシャドーが発生し、これによって蒸着材料98の利用効率が低下することがある。従って、トップ部43の幅βが過剰に大きくならないように蒸着マスク20が作製されることが好ましい。
図1に示すようにして蒸着マスク装置10が蒸着装置90に収容された場合、図7に二点鎖線で示すように、蒸着マスク20の第1面20aが、有機EL基板92に対面し、蒸着マスク20の第2面20bが、蒸着材料98を保持したるつぼ94側に位置する。したがって、蒸着材料98は、次第に開口面積が小さくなっていく第2凹部35を通過して有機EL基板92に付着する。図7において第2面20b側から第1面20aへ向かう矢印で示すように、蒸着材料98は、るつぼ94から有機EL基板92に向けて蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nに沿って移動するだけでなく、当該法線方向Nに対して大きく傾斜した方向に移動することもある。このとき、蒸着マスク20の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料98が、トップ部43、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31に引っ掛かり易くなり、この結果、貫通孔25を通過できない蒸着材料98の比率が多くなる。従って、蒸着材料98の利用効率を高めるためには、蒸着マスク20の厚みtを小さくし、これによって、第2凹部35の壁面36や第1凹部30の壁面31の高さを小さくすることが好ましいと考えられる。すなわち、蒸着マスク20を構成するための金属板64として、蒸着マスク20の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みtの小さな金属板64を用いることが好ましいと言える。この点を考慮し、本実施の形態において、蒸着マスク20の厚みtは、例えば30μm以下、好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下になっている。一方、蒸着マスク20の厚みが小さくなり過ぎると、蒸着マスク20の強度が低下し、蒸着マスク20に損傷や変形が生じやすくなる。この点を考慮し、蒸着マスク20の厚みtは、好ましくは5μm以上であることが好ましい。蒸着マスク20の厚みtは、8μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、12μm以上であってもよく、13μm以上であってもよく、15μm以上であってもよい。蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の1つと、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の1つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、蒸着マスク20の厚みtの範囲は、5μm以上30μm以下であってもよく、8μm以上25μm以下であってもよく、10μm以上20μm以下であってもよく、13μm以上20μm以下であってもよく、15μm以上20μm以下であってもよい。また、蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の複数の上限の候補値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、蒸着マスク20の厚みtの範囲は、20μm以上25μm以下であってもよい。また、蒸着マスク20の厚みtの範囲は、上述の複数の下限の候補値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、蒸着マスク20の厚みtの範囲は、13μm以上15μm以下であってもよい。なお厚みtは、周囲領域23の厚み、すなわち蒸着マスク20のうち第1凹部30および第2凹部35が形成されていない部分の厚みである。従って厚みtは、金属板64の厚みであると言うこともできる。
図7において、貫通孔25の最小開口面積を持つ部分となる接続部41と、第2凹部35の壁面36の他の任意の位置と、を通過する直線L1が、蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nに対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料98を、壁面36に到達させることなく可能な限り有機EL基板92に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。角度θ1を大きくする上では、蒸着マスク20の厚みtを小さくすることの他にも、上述のトップ部43の幅βを小さくすることも有効である。
図7において、符号αは、金属板64の第1面64aの有効領域22のうちエッチングされずに残っている部分(以下、リブ部とも称する)の幅を表している。リブ部の幅αおよび貫通部42の寸法rは、有機EL表示装置の寸法および表示画素数に応じて適宜定められる。例えば、リブ部の幅αは5μm以上且つ40μm以下であり、貫通部42の寸法rは10μm以上且つ60μm以下である。
なお、図6及び図7においては、隣り合う二つの第2凹部35の間に金属板64の第2面64bが残存している例を示したが、これに限られることはない。図示はしないが、隣り合う二つの第2凹部35が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部35の間に、金属板64の第2面64bが残存していない場所が存在していてもよい。
次に、フレーム15について詳細に説明する。図1及び図3乃至図5に示すように、フレーム15は、表面(すなわち第3面)15aと、表面15aに対向する裏面(すなわち第4面)15bと、表面15aと裏面15bとの間に延びる外側面(すなわち第5面)15cと、を含む。図5に示すように、表面15a及び裏面15bは、蒸着マスク20の第1面20a法線方向Nに沿った断面で見たとき、法線方向Nに直交する方向に互いに平行に延びている。外側面15cは、蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nに沿った断面で見たとき、法線方向Nに延びており、表面15a及び裏面15bに直交するように接続している。このようなフレーム15には、表面15aから裏面15bに至る貫通孔15dが形成されている。蒸着時には、るつぼ94から蒸発した蒸着材料98は、フレーム15の貫通孔15dを通って有機EL基板92に付着する。なお、外側面(すなわち第5面)15cは、蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nに沿った断面で見たとき、法線方向Nに対して傾斜するように延びていてもよい。
次に、図8乃至図12を参照して、蒸着マスク装置10の製造装置(以下、製造装置と記す)70について説明する。
図8に示すように、製造装置70は、蒸着マスク20を載せる載置台72と、蒸着マスク20を支持するクランプ装置50と、フレーム15と接触するステージ71と、を備えている。なお、図中、Dx方向は、蒸着マスク20の短手方向に平行な方向であり、Dy方向は、蒸着マスク20の長手方向に平行な方向であり、Dz方向は、Dx方向及びDy方向の両方に垂直な方向である。
図8乃至図10に示すように、載置台72は、ステージ71に隣接して配置されており、その上には蒸着マスク20が載置される。この載置台72に載せられた蒸着マスク20は、クランプ装置50及び搬送装置78によって順次ステージ71に搬送され、フレーム15に固定される。載置台72は、平坦なトレー79と、トレー79の上面79a上に位置する粘着部材81とを有している。トレー79は、平面視略矩形状であり、その上面は蒸着マスク20の第2面20bと接触する。粘着部材81は、平面視で蒸着マスク20の短手方向に直線状に延びている。この粘着部材81は、蒸着マスク20の第2面20bに粘着することにより、蒸着マスク20を一時的にトレー79上に仮固定するものである。この場合、粘着部材81は一対設けられ、それぞれ蒸着マスク20の長手方向両端部側に位置している。しかしながら、粘着部材81の個数や位置はこれに限られるものではない。例えば、1つ又は3つ以上の粘着部材81が設けられていても良く、粘着部材81が蒸着マスク20の長手方向端部から離れた位置にあっても良い。また、トレー79の上面79aからは、ガイドピン84が突き出している。このガイドピン84は、蒸着マスク20の側面20c(図9参照)に当たって接触することにより、蒸着マスク20の位置がずれないように、蒸着マスク20をトレー79上の所定位置に案内するものである。この場合、ガイドピン84は一対設けられ、それぞれ粘着部材81の近傍に位置している。しかしながら、ガイドピン84の個数や位置はこれに限られるものではない。例えば、1つ又は3つ以上のガイドピン84が設けられていても良く、ガイドピン84が粘着部材81から離れた位置にあっても良い。
クランプ装置50は、蒸着マスク20の各延在部17bをそれぞれ支持している。このクランプ装置50は、第1クランプ装置50Aと、蒸着マスク20を挟んで第1クランプ装置50Aの反対側に位置する第2クランプ装置50Bと、を有している。言い換えれば、蒸着マスク20の一対の耳部17のうち一方の耳部17の延在部17bを挟持する第1クランプ装置50Aと、一対の耳部17のうち他方の耳部17の延在部17bを挟持する第2クランプ装置50Bと、を有している。なお、以下の説明において、第1クランプ装置50Aおよび第2クランプ装置50Bに共通する構成、機能、動作などを説明する場合には、第1クランプ装置50Aおよび第2クランプ装置50Bを総称してクランプ装置50とも称する。
本実施の形態によるクランプ装置50は、それぞれ上方クランプ51と下方クランプ52とを含んでいる。上方クランプ51は、蒸着マスク20の上方に位置しており、下方クランプ52は、蒸着マスク20の下方に位置している。この上方クランプ51と下方クランプ52とが接近することにより、蒸着マスク20の各延在部17bを掴むように構成されている。本実施の形態においては、複数の上方クランプ51と複数の下方クランプ52とが設けられている。例えば、製造装置70は、一の延在部17bを2つの上方クランプ51と2つの下方クランプ52によって挟持するように構成されている。すなわち、図9に示すように、第1の上方クランプ51aと第1の下方クランプ52aとにより、蒸着マスク20の第1突出片16aが掴まれ、第2の上方クランプ51bと第2の下方クランプ52bとにより、第2突出片16bが掴まれる。この場合、各クランプ装置50の2つの上方クランプ51(第1の上方クランプ51a及び第2の上方クランプ51b)は、互いに平行に配置され、2つの下方クランプ52(第1の下方クランプ52a及び第2の下方クランプ52b)は、互いに平行に配置されている。なお、以下においては、第1の上方クランプ51a及び第2の上方クランプ51bを総称して上方クランプ51ともいい、第1の下方クランプ52a及び第2の下方クランプ52bを総称して下方クランプ52ともいう。このように、一の延在部17bを複数の上方クランプ51及び複数の下方クランプ52によって挟持することにより、蒸着マスク20の面方向に略均一に張力を加えることができる。なお、一の延在部17bに対して、上方クランプ51及び下方クランプ52の個数は任意であり、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
上方クランプ51及び下方クランプ52は、それぞれ平坦な板状の部材から構成されていても良い。上方クランプ51及び下方クランプ52は、例えば平坦な金属板を含む。また、この金属板のうち蒸着マスク20側の面に、シリコンラバー等の滑り止め部材が配置されていても良い。
クランプ装置50の上方クランプ51及び下方クランプ52は、駆動装置53によって駆動される。駆動装置53は、上方クランプ51を駆動する第1駆動手段53aと、下方クランプ52を駆動する第2駆動手段53bとを含んでいても良い。上方クランプ51及び下方クランプ52は、それぞれ第1駆動手段53a及び第2駆動手段53bに連結されている。第1駆動手段53a及び第2駆動手段53bは、それぞれ例えばエアシリンダや油圧シリンダ、サーボモータ等であっても良い。この場合、上方クランプ51及び下方クランプ52は、それぞれ第1駆動手段53a及び第2駆動手段53bによって制御され、少なくともDx方向、Dy方向及びDz方向に直線移動自在となっている。また、上方クランプ51及び下方クランプ52は、互いに独立して移動可能となっている。本実施の形態においては、1つの蒸着マスク20は、4つの上方クランプ51と4つの下方クランプ52とによって掴まれ、これらの上方クランプ51及び下方クランプ52が全て互いに独立して、対応する第1駆動手段53a及び第2駆動手段53bによって移動しても良い。これにより、蒸着マスク20に撓みや波打ち形状が発生すること抑えつつ、蒸着マスク20を引っ張った状態で搬送することができる。なお、駆動装置53は、必ずしも第1駆動手段53a及び第2駆動手段53bを有していなくても良く、1つの駆動手段が上方クランプ51及び下方クランプ52の両方を駆動するものであっても良い。
第1駆動手段53a及び第2駆動手段53bは、それぞれ搬送装置78に対して移動可能に取り付けられている。搬送装置78は、Dx方向に延びている。搬送装置78は、クランプ装置50(上方クランプ51、下方クランプ52)及び駆動装置53(第1駆動手段53a、第2駆動手段53b)をDx方向に直線移動させるものである。この搬送装置78は、蒸着マスク20の長手方向各端部に対応する位置にそれぞれ配置されている。これにより、上方クランプ51及び下方クランプ52に掴まれた蒸着マスク20が、載置台72からステージ71へ搬送されるようになっている。
図11及び図12に示すように、ステージ71は、3次元方向に移動可能に構成されるとともに、蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nに直交する所定の回動軸を中心に回動可能な駆動部73を介してベース74に支持されており、少なくとも法線方向Nに移動可能に構成されている。この際、ステージ71の移動範囲は、例えば30μm以上90μm以下の範囲内に設定されていてもよい。なお、このステージ71は、駆動部73を駆動することにより、法線方向Nに直交する水平方向(蒸着マスク20の第1面20aの面方向)に移動可能に構成されるとともに、例えば床面に対する角度を変更可能に構成されており、後述するように、フレーム15上に配置された蒸着マスク20の水平方向における位置等を調整できるようになっている。この場合、駆動部73は、例えば、エアシリンダや油圧シリンダ、サーボモータ等を用いて、ステージ71を移動させてもよい。
また図11及び図12に示すように、クランプ装置50は、ステージ71上で蒸着マスク20を支持した状態において、溶接部17aの第2面20bがフレーム15の表面15aに接触し、且つ、延在部17bの第2面20bが少なくとも部分的にフレーム15の表面15aよりもフレーム15の裏面15b側に位置するように構成されている。言い換えれば、蒸着マスク20の第2面20bのうち少なくとも一部がフレーム15の表面(すなわち第3面)15aに接触しており、蒸着マスク20の第2面20bのうち、フレーム15と重ならない部分は、表面15aと同一平面上になく、表面15aに対して裏面15b側(Dz方向マイナス側)に位置している。本実施の形態では、上方クランプ51及び下方クランプ52は、蒸着マスク20の延在部17bを挟持した状態において、溶接部17aの第2面20bがフレーム15の表面15aに接触し、且つ、延在部17bの第2面20bが少なくとも部分的にフレーム15の表面15aよりもフレーム15の裏面15b側に位置するように構成されている。このようにして、クランプ装置50は、フレーム15の表面15aに配置された蒸着マスク20に撓みや波打ち形状が発生してしまうことがないように、蒸着マスク20をその面方向に架張する。ここで、本明細書中、「架張」とは、張力を加えることを意味する。例えば、蒸着マスク20をその面方向に架張する、とは、蒸着マスク20に対して、その面方向に沿った張力を加えることを意味する。
また、図11に示すように、製造装置70は、蒸着マスク20の溶接部17aをフレーム15に接合する溶接装置76を更に備えている。この溶接装置76は、例えば、レーザー光Lを照射するレーザー装置であってもよい。この場合、レーザー光Lとしては、例えば、YAGレーザー装置によって生成されるYAGレーザー光(波長355nm、532nm、1064nm)を用いることができる。YAGレーザー装置としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)にNd(ネオジム)を添加した結晶を発振用媒質として備えたものを用いることができる。
次に、蒸着マスク装置10を製造する方法について説明する。まず、蒸着マスク装置10の蒸着マスク20を製造する方法について説明する。
はじめに、蒸着マスクを製造するために用いられる金属板の製造方法について説明する。
まず、鉄及びニッケル並びにその他の原材料を準備する。例えば、原材料全体に対する鉄の比率及びニッケルの比率がそれぞれ約64重量%及び約36重量%となるよう、各原材料を準備する。続いて、各原材料を必要に応じて粉砕した後、各原材料を溶解炉にて溶解する溶解工程を実施する。例えば、アーク放電などの気体放電を利用して各原材料を溶解して混合する。これによって、金属板のための母材を得ることができる。
溶解時の温度は、原材料に応じて設定するが、例えば1500℃以上である。溶解工程は、脱酸、脱水、脱窒素などのためにアルミニウム、マンガン、シリコンなどを溶解炉に投入する工程を含んでいてもよい。また、溶解工程は、大気圧よりも低い低圧状態で、アルゴンガスなどの不活性ガスの雰囲気下で実施してもよい。
母材を溶解炉から取り出した後、母材の表面を削り取る研削工程を実施してもよい。これによって、スケールなどの酸化物の被膜を除去することができる。この際、具体的な研削方法は特には限られないが、砥石車を回転させて母材の表面を削る、いわゆるグラインディング法や、母材を切削具に押し込んで母材の表面を削る、いわゆる押し込み法などを採用することができる。研削工程は、母材の厚みが均一になるように実施されてもよい。
続いて、図13に示すように、ニッケルを含む鉄合金から構成された母材60を圧延する圧延工程を実施する。例えば、一対の圧延ロール(ワークロール)66a,66bを含む圧延装置66に向けて、矢印D1で示す方向に沿って搬送する。一対の圧延ロール66a,66bの間に到達した母材60は、一対の圧延ロール66a,66bによって圧延され、この結果、母材60は、その厚みが低減されるとともに、搬送方向に沿って伸ばされる。これによって、所定の厚みを有する金属板64を得ることができる。図13に示すように、金属板64をコア61に巻き取ることによって巻き体62を形成してもよい。
なお図13は、圧延工程の概略を示すものに過ぎず、圧延工程を実施するための具体的な構成や手順が特に限られることはない。例えば圧延工程は、母材60を構成する鉄合金の結晶配列を変化させる温度以上の温度で母材を加工する熱間圧延工程や、鉄合金の結晶配列を変化させる温度以下の温度で母材を加工する冷間圧延工程を含んでいてもよい。また、一対の圧延ロール66a,66bの間に母材60や金属板64を通過させる際の向きが一方向に限られることはない。例えば、図13において、紙面左側から右側への向き、および紙面右側から左側への向きで繰り返し母材60や金属板64を一対の圧延ロール66a,66bの間に通過させることにより、母材60や金属板64を徐々に圧延してもよい。
また、冷間圧延工程においては、母材60と圧延ロール66a,66bとの間に灯油などのクーラントを供給してもよい。これにより、母材の温度を制御することができる。
その後、圧延によって金属板64内に蓄積された残留応力を取り除くため、図14に示すように、アニール装置67を用いて金属板64をアニール処理するアニール工程を実施してもよい。アニール工程は、図14に示すように、金属板64を搬送方向(長手方向)に引っ張りながら実施されてもよい。すなわち、アニール工程は、いわゆるバッチ式の焼鈍ではなく、搬送しながらの連続焼鈍として実施されてもよい。この場合、金属板64に座屈折れなどの変形が生じることを抑制するように温度や搬送速度を設定することが好ましい。アニール工程を実施することにより、残留歪がある程度除去された金属板64を得ることができる。
その後、金属板64の幅が所定の範囲内になるよう、圧延工程によって得られた金属板64の幅方向における両端をそれぞれ所定の範囲にわたって切り落とすスリット工程を実施してもよい。このスリット工程は、圧延に起因して金属板64の両端に生じ得るクラックを除去するために実施される。このようなスリット工程を実施することにより、金属板64が破断してしまう現象、いわゆる板切れが、クラックを起点として生じてしまうことを防ぐことができる。また、このスリット工程を、上述のアニール工程の前に実施してもよい。
なお、上述の圧延工程、アニール工程及びスリット工程のうちの少なくとも2つの工程を複数回繰り返すことによって、所定の厚みの長尺状の金属板64を作製してもよい。また図14においては、アニール工程が、金属板64を長手方向に引っ張りながら実施される例を示したが、これに限られることはなく、アニール工程を、金属板64がコア61に巻き取られた状態で実施してもよい。すなわちバッチ式の焼鈍が実施されてもよい。なお、金属板64がコア61に巻き取られた状態でアニール工程を実施する場合、金属板64に、巻き体62の巻き取り径に応じた反りの癖がついてしまうことがある。従って、巻き体62の巻き径や母材60を構成する材料によっては、金属板64を長手方向に引っ張りながらアニール工程を実施することが有利である。
また、圧延工程の後、若しくはアニール工程の後、金属板64の外観を検査する外観検査工程を実施してもよい。外観検査工程は、自動検査機を用いて金属板64の外観を検査する工程を含んでいてもよい。また、外観検査工程は、目視で金属板64の外観を検査する工程を含んでいてもよい。
また、圧延工程の後、若しくはアニール工程の後、金属板64の形状を検査する形状検査工程を実施してもよい。例えば、3次元測定器を用いて、厚み方向における金属板64の表面の位置を金属板64の所定の領域内で測定してもよい。
次に、上述した工程により得られた金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する方法について、主に図15乃至図19を参照して説明する。図15は、金属板64を用いて蒸着マスク20を製造する処理装置80を示す図である。まず、金属板64をコア61に巻き取った巻き体62を準備する。そして、このコア61を回転させて巻き体62を巻き出すことにより、図15に示すように、帯状に延びる金属板64を供給する。
供給された金属板64は、搬送ローラー85によって、加工装置82、分離装置83へ順に搬送される。加工装置82は、金属板64を加工して金属板64に貫通孔25を形成する加工工程を実施する。なお本実施の形態においては、複数枚の蒸着マスク20に対応する多数の貫通孔25を金属板64に形成する。言い換えると、金属板64に複数枚の蒸着マスク20を割り付ける。分離装置83は、金属板64のうち1枚分の蒸着マスク20に対応する複数の貫通孔25が形成された部分を金属板64から分離する分離工程を実施する。このようにして、枚葉状の蒸着マスク20を得ることができる。
図16乃至図19を参照して、加工工程について説明する。まず、金属板64の第1面64a上および第2面64b上に感光性レジスト材料を含むレジスト膜を形成する。例えば、カゼインなどの感光性レジスト材料を含む塗布液を金属板64に塗布し、その後、塗布液を乾燥させることにより、レジスト膜を形成する。若しくは、金属板64にドライフィルムを貼り付けることにより、レジスト膜を形成してもよい。続いて、レジスト膜を露光及び現像する。これにより、図16に示すように、金属板64の第1面64a上に第1レジストパターン65aを形成し、金属板64の第2面64b上に第2レジストパターン65bを形成することができる。
次に、図17に示すように、金属板64の第1面64aのうち第1レジストパターン65aによって覆われていない領域を、第1エッチング液を用いてエッチングする第1面エッチング工程を実施する。例えば、第1エッチング液を、搬送される金属板64の第1面64aに対面する側に配置されたノズルから、第1レジストパターン65a越しに金属板64の第1面64aに向けて噴射する。この結果、図17に示すように、金属板64のうちの第1レジストパターン65aによって覆われていない領域で、第1エッチング液による浸食が進む。これによって、金属板64の第1面64aに多数の第1凹部30が形成される。第1エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いる。
次に、図18に示すように、金属板64の第2面64bのうち第2レジストパターン65bによって覆われていない領域をエッチングし、第2面64bに第2凹部35を形成する第2面エッチング工程を実施する。第2面エッチング工程は、第1凹部30と第2凹部35とが互いに通じ合い、これによって貫通孔25が形成されるようになるまで実施される。第2エッチング液としては、上述の第1エッチング液と同様に、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いる。なお、第2面エッチング工程の際、図18に示すように、第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂69によって第1凹部30が被覆されていてもよい。
その後、図19に示すように、金属板64から樹脂69を除去する。樹脂69は、例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、除去することができる。アルカリ系剥離液が用いられる場合、図19に示すように、樹脂69と同時にレジストパターン65a,65bも除去される。なお、樹脂69を除去した後、樹脂69を剥離させるための剥離液とは異なる剥離液を用いて、樹脂69とは別途にレジストパターン65a,65bを除去してもよい。
その後、金属板64のうち1枚分の蒸着マスク20に対応する複数の貫通孔25が形成された部分を金属板64から分離することにより、蒸着マスク20を得ることができる。
なお、上述した分離工程の後に、蒸着マスク20を検査する蒸着マスク検査工程を実施してもよい。蒸着マスク検査工程においては、例えば、蒸着マスク20を構成する金属板64の表面に局所的な突起や凹みなどの変形部が存在するか否かを検査してもよい。
次に、上述のようにして得られた蒸着マスク20を、製造装置70を用いてフレーム15に搬送し、フレーム15に溶接する溶接工程を実施する。これによって、蒸着マスク20及びフレーム15を備える蒸着マスク装置10を得ることができる。
この間、まず蒸着マスク20を製造装置70の載置台72上に載せる(図8乃至図10参照)。具体的には、蒸着マスク20の第2面20bが載置台72のトレー79に接触するように、蒸着マスク20を配置する。この場合、蒸着マスク20はトレー79上に載せられ、その側面20cがガイドピン84に当たって接触することにより、蒸着マスク20の位置が予め定められた位置に位置決めされる。このとき蒸着マスク20は、粘着部材81に粘着するので、蒸着マスク20はトレー79上の所定位置に仮固定される。
次に、図20(a)に示すように、蒸着マスク20の各延在部17bにそれぞれクランプ装置50を配置する。具体的には、駆動装置53により、蒸着マスク20の各延在部17bの上方に上方クランプ51が配置され、蒸着マスク20の各延在部17bの下方に下方クランプ52が配置される。このとき、上方クランプ51は、蒸着マスク20の第1面20aから離れており、下方クランプ52は、蒸着マスク20の第2面20bから離れている。
続いて、図20(b)に示すように、駆動装置53の第2駆動手段53bにより、下方クランプ52が上昇するように駆動される。これにより、下方クランプ52が蒸着マスク20の第2面20bに接触し、下方クランプ52が停止する。これにより、蒸着マスク20が下方クランプ52によって下方から支持される。このとき、上方クランプ51は、蒸着マスク20の第1面20aから離れた状態を維持する。なお、下方クランプ52とともに上方クランプ51も一体となって上昇しても良い。
次に、図20(c)に示すように、駆動装置53の第1駆動手段53aにより、上方クランプ51が下降するように駆動される。これにより、上方クランプ51が蒸着マスク20の第1面20aに接触し、上方クランプ51が停止する。一方、下方クランプ52は、蒸着マスク20の第2面20bに接触した状態を維持する。このとき、上方クランプ51と下方クランプ52とが互いに圧力を加え、上方クランプ51及び下方クランプ52によって蒸着マスク20を挟んでも良い。このようにして、蒸着マスク20は、上方クランプ51及び下方クランプ52によって掴まれる。その後、上方クランプ51及び下方クランプ52は、蒸着マスク20を掴んだ状態で、トレー79から離れる方向(図20(a)-(c)の左方向)に移動し、蒸着マスク20を長手方向に引っ張る。
なお、上記作用については、第1の上方クランプ51a及び第1の下方クランプ52aと、第2の上方クランプ51b及び第2の下方クランプ52bとの両方について行われても良い(図9及び図10参照)。すなわち、第1の下方クランプ52aが蒸着マスク20の第1突出片16aに接触した後、第1の上方クランプ51aが蒸着マスク20の第1突出片16aに接触し、第1突出片16aを掴んでも良い。また、第2の下方クランプ52bが蒸着マスク20の第2突出片16bに接触した後、第2の上方クランプ51bが蒸着マスク20の第2突出片16bに接触し、第2突出片16bを掴んでも良い。さらに、上記作用については、蒸着マスク20の一対の延在部17bのそれぞれについて行われても良い。すなわち第1クランプ装置50Aおよび第2クランプ装置50のそれぞれに関して、まず下方クランプ52が蒸着マスク20に接触した後、上方クランプ51が蒸着マスク20に接触するように駆動しても良い。
ところで、蒸着マスク20を上方クランプ51及び下方クランプ52によって同時に掴んだ場合、そのときの衝撃で蒸着マスク20に撓みや波打ち現象が発生しやすい。これに対して、本実施の形態によれば、蒸着マスク20を掴む工程において、上方クランプ51及び下方クランプ52は、まず下方クランプ52が蒸着マスク20に接触した後、上方クランプ51が蒸着マスク20に接触するように駆動される。これにより、上方クランプ51及び下方クランプ52が蒸着マスク20を掴む際の衝撃が軽減され、衝撃によって蒸着マスク20に撓みや波打ち現象が生じることを抑えることができる。
なお、上記においては、まず下方クランプ52が蒸着マスク20に接触し、その後、上方クランプ51が蒸着マスク20に接触する場合を例にとって説明した。しかしながら、これに限らず、まず上方クランプ51が蒸着マスク20に接触し、その後、下方クランプ52が蒸着マスク20に接触するようにしても良い。この場合においても、上方クランプ51及び下方クランプ52が蒸着マスク20を掴む際の衝撃によって蒸着マスク20に撓みや波打ち現象が生じることを抑えることができる。
その後、蒸着マスク20は、製造装置70のステージ71上に位置するフレーム15に移動される。この際、蒸着マスク20は、その長手方向両端をそれぞれクランプ装置50の上方クランプ51及び下方クランプ52によって掴まれ、長手方向に引っ張られた状態のまま、搬送装置78によってステージ71に搬送される。このステージ71において、蒸着マスク20は、クランプ装置50によって張力を加えられたままフレーム15上で停止する。また、同様にして、複数の蒸着マスク20が順次載置台72からクランプ装置50及び搬送装置78によってステージ71に搬送され、フレーム15上に配置される。この場合、蒸着マスク20は、第2面20bがフレーム15に面するようにフレーム15上に配置される。
次に、製造装置70による蒸着マスク20の位置決めを行う。この場合、アライメントマークが形成されたガラススケール(図示せず)を準備し、アライメントマークに基づいて蒸着マスク20が所定の位置に位置付けられるように、クランプ装置50を蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nに直交する水平方向(第1面20aの面方向)に移動させる。このようにして、蒸着マスク20の仮の位置決めを行うとともに、蒸着マスク20を張った状態に保持する。次に、駆動部73を駆動し、ステージ71の位置および例えば床面に対する角度を調整することにより、ガラススケールのアライメントマークに基づいて蒸着マスク20の位置決めを行う。この際、各々のクランプ装置50を独立して駆動することにより、蒸着マスク20の位置を調整してもよく、各々のクランプ装置50を同時に駆動して蒸着マスク20の位置を調整してもよい。なお、ガラススケールを用いることなく、製造装置70による蒸着マスク20の位置決めを行ってもよい。この場合、蒸着マスク20の位置決めは、任意の位置決め手段を用いることにより行われてもよく、例えば製造装置70に設計座標を読み込み、設計座標に到達するように蒸着マスク20の位置を調整してもよい。さらに、製造装置70による蒸着マスク20の位置決めを行う場合、クランプ装置50とともに、製造装置70のステージ71を第1面20aの法線方向Nおよび面方向に移動させてもよい。
次に、図21に示すように、蒸着マスク20の第2面20bの少なくとも一部がフレーム15の表面(すなわち第3面)15aに接触し、且つ、第1面20aの法線方向Nから見た場合に、蒸着マスク20のうち、フレーム15と重ならない部分の第2面20bの少なくとも一部を、フレーム15の表面15aよりもフレーム15の裏面(すなわち第4面)15b側に位置させて、蒸着マスク20に張力を加える。すなわち、溶接部17aの第2面20bがフレーム15の表面15aに接触し、且つ、延在部17bの第2面20bが少なくとも部分的にフレーム15の表面15aよりもフレーム15の裏面15b側(図21における下方)に位置するように蒸着マスク20に張力を加える。この際、例えば、フレーム15を蒸着マスク20の第1面20aの法線方向Nのうち、第2面20bから第1面20aへ向かう方向へ移動させる。この場合、駆動部73を駆動することにより、製造装置70のステージ71を上昇させ、フレーム15を移動させる。
ところで、本実施の形態では、クランプ装置50(ここでは上方クランプ51及び下方クランプ52)が蒸着マスク20を挟持した状態において、溶接部17aの第2面20bがフレーム15の表面15aに接触し、且つ、延在部17bの第2面20bが少なくとも部分的にフレーム15の表面15aよりもフレーム15の裏面15b側に位置する。これにより、蒸着マスク20をフレーム15の表面15aよりもフレーム15の裏面15b側(図21における下方)に引っ張ることができる。また、この際、延在部17bのうち、フレーム15の外側面15cよりも外側に延びている部分に張力が加えられ、当該部分がフレーム15の裏面15b側に引っ張られる状態になる。このため、蒸着マスク20が全体としてフレーム15の裏面15b側に押し付けられるような状態になり、蒸着マスク20の中間部18の溶接部17aと、フレーム15との密着性を向上させることができる。このため、蒸着マスク20をその面方向に効果的に架張することができるとともに、蒸着マスク20とフレーム15との密着性を向上させることができる。この結果、蒸着マスク20に撓みや波打ち形状が発生すること抑制することができる。
次に、図22に示すように、蒸着マスク20の溶接部17aをフレーム15に接合する接合工程を実施する。この場合、蒸着マスク20に張力が加えられた状態で、蒸着マスク20の溶接部17aをフレーム15に接合する。この際、例えば、溶接装置76により、蒸着マスク20の第1面20a側からレーザー光Lを照射する。これによって、蒸着マスク20の耳部17の一部及びフレーム15の一部が溶融して、耳部17の第1面20aから第2面20bを介してフレーム15に至る溶融領域が形成される。
レーザー光Lとしては、例えば、YAGレーザー装置によって生成されるYAGレーザー光を用いることができる。YAGレーザー装置としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)にNd(ネオジム)を添加した結晶を発振用媒質として備えたものを用いることができる。この場合、基本波として、波長が約1064nmのレーザー光が生成される。また、基本波を非線形光学結晶に通すことによって、波長が約532nmの第2高調波が生成される。また、基本波および第2高調波を非線形光学結晶に通すことによって、波長が約355nmの第3高調波が生成される。
YAGレーザー光の第3高調波は、ニッケルを含む鉄合金に吸収され易い。従って、蒸着マスク20の耳部17およびフレーム15が、ニッケルを含む鉄合金を含む場合、蒸着マスク20の耳部17およびフレーム15の一部を効率良く溶融させるためにはレーザー光LがYAGレーザー光の第3高調波を含むことが好ましい。
レーザー光Lの照射が終了すると、溶融領域の温度が低下し、溶融領域が固化して溶接痕19aとなる。このことにより、蒸着マスク20の耳部17とフレーム15とが溶接痕19aによって互いに接合される。このようにして、フレーム15と、接合部19によってフレーム15に接合された蒸着マスク20と、を備える蒸着マスク装置10を得ることができる。
次に、上述した工程により得られた蒸着マスク装置10を用いて有機EL基板92に蒸着材料98を蒸着する蒸着材料の蒸着方法について、図23乃至図25を参照して説明する。
まず、図23に示すように、上述した工程により得られた蒸着マスク装置10を準備する。この際、蒸着材料98が収容されたるつぼ94及びヒータ96を準備し、蒸着装置90を準備する。
また、有機EL基板92を準備する。
次に、図24に示すように、有機EL基板92を蒸着マスク装置10の蒸着マスク20上に設置する。この際、例えば有機EL基板92の図示しないアライメントマークと、蒸着マスク20の図示しないアライメントマークとを直接観察し、当該アライメントマーク同士が重なるように有機EL基板92の位置決めを行いながら、有機EL基板92を蒸着マスク装置10に設置する。
次いで、蒸着マスク装置10の蒸着マスク20上に設置された有機EL基板92に蒸着材料98を蒸着させる。この際、例えば、図25に示すように、有機EL基板92の、蒸着マスク装置10と反対の側の面に磁石93が配置される。このように磁石93を設けることにより、磁力によって蒸着マスク装置10を磁石93側に引き寄せて、蒸着マスク20を有機EL基板92に密着させることができる。次に、蒸着装置90の内部が高真空状態となるように、蒸着装置90の内部を図示しない排気手段により排気する。次に、ヒータ96が、るつぼ94を加熱して蒸着材料98を蒸発させる。そして、るつぼ94から蒸発して蒸着マスク装置10に到達した蒸着材料98は、蒸着マスク20の貫通孔25を通って有機EL基板92に付着する(図1参照)。
このようにして、蒸着マスク20の貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98が有機EL基板92に蒸着される。
このように、本実施の形態によれば、製造装置70の上方クランプ51及び下方クランプ52を用いて蒸着マスク20を掴む際、まず下方クランプ52が蒸着マスク20に接触し、その後、上方クランプ51が蒸着マスク20に接触するように、上方クランプ51及び下方クランプ52が駆動される。これにより、蒸着マスク20を掴む際、蒸着マスク20と上方クランプ51及び下方クランプ52との衝撃が緩和され、衝撃によって蒸着マスク20と上方クランプ51及び下方クランプ52との位置関係にずれが生じにくい。この結果、蒸着マスク20に撓みや波打ち現象が生じることを抑えることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(蒸着マスク装置の製造装置の第1の変形例)
上述の本実施の形態においては、製造装置70の上方クランプ51及び下方クランプ52がそれぞれ平坦な板状部材である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図26及び図27に示すように、上方クランプ51及び下方クランプ52のうちの少なくとも一方は、蒸着マスク20との間で位置決めを行う位置決め部54を有してもよい。この場合、蒸着マスク20の第1突出片16a及び第2突出片16bに、それぞれ貫通孔27が形成されている。また、下方クランプ52は、円錐形状の突起ピンである位置決め部54を有している。この位置決め部54は、上方クランプ51側に向けて突出している。上方クランプ51は、位置決め部54の上端を収容する収容凹部51cを有する。下方クランプ52の位置決め部54は、蒸着マスク20の貫通孔27内に挿入され、蒸着マスク20の位置決めが行われる。
貫通孔27は平面視円形状であるが、これに限らず、平面視多角形状、平面視楕円形状等としても良い。なお、貫通孔27が平面視円形状である場合、上方クランプ51及び下方クランプ52が蒸着マスク20を引っ張った際に、蒸着マスク20が位置決め部54に対して動きやすいため好ましい。位置決め部54は、蒸着マスク20の貫通孔27に挿入可能な形状であれば良い。例えば蒸着マスク20の貫通孔27が平面視円形状である場合、位置決め部54は、円錐形状、円錐台形状、円柱形状等としても良い。なお、位置決め部54を円錐形状とした場合、位置決め部54が上昇するに従って、その傾斜した外面によって蒸着マスク20の位置を微調整することができる。なお、位置決め部54は、上方クランプ51に存在しても良い。また、上方クランプ51又は下方クランプ52に複数の位置決め部54が存在しても良い。なお、図示しないが、蒸着マスク20に貫通孔27に代えて切欠きを設け、この切欠きに下方クランプ52の位置決め部54を位置合わせしても良い。
本変形例において、上方クランプ51と下方クランプ52とによって蒸着マスク20を掴む工程において、下方クランプ52の位置決め部54を用いて、蒸着マスク20との間で位置決めを行う。具体的には、下方クランプ52の位置決め部54が蒸着マスク20の貫通孔27に挿入され、これにより位置決め部54と蒸着マスク20の貫通孔27とが所定の位置に位置決めされる。この場合、駆動装置53によって上方クランプ51及び下方クランプ52を駆動することにより、上方クランプ51及び下方クランプ52を同時に動かして、蒸着マスク20を掴んでも良い。あるいは、上述した実施の形態(図20(a)-(c)参照)と同様に、まず下方クランプ52が蒸着マスク20に接触し、その後、上方クランプ51が蒸着マスク20に接触するようにしても良い。
本変形例によれば、蒸着マスク20を掴む際、蒸着マスク20と上方クランプ51及び下方クランプ52とが所望の位置関係に位置合わせされる。このため、蒸着マスク20と上方クランプ51及び下方クランプ52とにずれが生じにくく、蒸着マスク20に撓みや波打ち現象が生じることを抑えることができる。
(蒸着マスク装置の製造装置の第2の変形例)
上述の本実施の形態においては、製造装置70の載置台72は、トレー79上に位置する粘着部材81を有している。しかしながら、これに限られることはなく、図28及び図29に示すように、載置台72は、鉄合金等の磁性体である蒸着マスク20を磁力によって保持する電磁石装置55を有してもよい。この場合、電磁石装置55は、トレー79上に位置しており、電磁石装置55の上面はトレー79の上面79aと同一平面上にある。電磁石装置55は、平面視で蒸着マスク20の短手方向に直線状に延びている。電磁石装置55は、電源装置56に電気的に接続されている。電磁石装置55は、電源装置56によって通電された際、蒸着マスク20の第2面20bを磁力で引き寄せることにより、蒸着マスク20を一時的にトレー79上に仮固定する。一方、電磁石装置55は、電源装置56による通電が停止した際、蒸着マスク20を引き寄せる磁力が失われ、これにより蒸着マスク20の仮固定が解除される。本変形例において、電磁石装置55は一対設けられ、それぞれ蒸着マスク20の長手方向端部側に位置している。しかしながら、電磁石装置55の個数や位置はこれに限られるものではなく、例えば、1つ又は3つ以上の電磁石装置55が設けられていても良く、電磁石装置55が蒸着マスク20の長手方向端部から離れた位置にあっても良い。
本変形例において、まず載置台72の電磁石装置55への通電を停止した状態で、載置台72のトレー79上に蒸着マスク20を載せる。次に、電磁石装置55を通電し、電磁石装置55の磁力によって、蒸着マスク20を磁力で引き付けて保持する。続いて、上方クランプ51と下方クランプ52とによって蒸着マスク20を掴み、その後、電磁石装置55の通電を停止する。これにより、上方クランプ51と下方クランプ52によって掴まれた蒸着マスク20を載置台72から移動させることができる。この場合、駆動装置53によって上方クランプ51及び下方クランプ52を駆動することにより、上方クランプ51及び下方クランプ52を同時に動かして、蒸着マスク20を掴んでも良い。あるいは、上述した実施の形態(図20(a)-(c)参照)と同様に、まず下方クランプ52が蒸着マスク20に接触し、その後、上方クランプ51が蒸着マスク20に接触するようにしても良い。
本変形例によれば、蒸着マスク20を掴む際、電磁石装置55の磁力によって蒸着マスク20がトレー79上にしっかり保持される。このため、蒸着マスク20をトレー79上で仮固定した状態で、蒸着マスク20を上方クランプ51及び下方クランプ52で掴むことができる。このため、蒸着マスク20が不意に動いてしまうことにより蒸着マスク20に撓みや波打ち現象が生じることを抑えることができる。一方、上方クランプ51と下方クランプ52により蒸着マスク20を掴んだ後、電磁石装置55の通電を解除することにより、上方クランプ51及び下方クランプ52を用いて蒸着マスク20をスムーズに移動することができる。
(蒸着マスク装置の製造装置の第3の変形例)
上述の本実施の形態においては、製造装置70の上方クランプ51及び下方クランプ52がそれぞれDx方向、Dy方向及びDz方向に直線移動する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図30及び図31に示すように、上方クランプ51及び下方クランプ52は、載置台72の載置面72a(トレー79の上面79a)の法線方向(Dz方向)周りに回転可能となっていてもよい。この場合、上方クランプ51及び下方クランプ52は、それぞれ第1駆動手段53a及び第2駆動手段53bによってDz方向周りに回転可能となっていてもよい。あるいは、上方クランプ51及び下方クランプ52は、図示しない他の駆動手段によってDz方向周りに回転可能となっていてもよい。また、上方クランプ51及び下方クランプ52のうち一方のみがDz方向周りに回転可能となっていてもよい。
図30及び図31において、第1突出片16aを掴む第1の上方クランプ51a及び第1の下方クランプ52aと、第2突出片16bを掴む第2の上方クランプ51b及び第2の下方クランプ52bとが存在する。この場合、第1の上方クランプ51a及び第1の下方クランプ52aと、第2の上方クランプ51b及び第2の下方クランプ52bとが、互いに独立してDz方向周りに回転可能となっていてもよい。すなわち第1の上方クランプ51a及び第1の下方クランプ52aの回転角度と、第2の上方クランプ51b及び第2の下方クランプ52bの回転角度とが互いに異なるように回転しても良い。
本変形例において、まず上方クランプ51と下方クランプ52とによって蒸着マスク20を掴む。この場合、駆動装置53によって上方クランプ51及び下方クランプ52を駆動することにより、上方クランプ51及び下方クランプ52を同時に動かして、蒸着マスク20を掴んでも良い。あるいは、上述した実施の形態(図20(a)-(c)参照)と同様に、まず下方クランプ52が蒸着マスク20に接触し、その後、上方クランプ51が蒸着マスク20に接触するようにしても良い。このとき、図31(a)に示すように、上方クランプ51及び下方クランプ52が、蒸着マスク20を平面視で曲がった状態で掴んだ場合を想定する。この場合、図31(b)に示すように、上方クランプ51及び下方クランプ52が、Dz方向に平行な回転軸Az周りに回転することにより、蒸着マスク20の位置を修正する。
本変形例によれば、蒸着マスク20を掴む際、仮に蒸着マスク20が平面視で曲がった状態で掴まれた場合でも、上方クランプ51及び下方クランプ52がDz方向に平行な回転軸Az周りに回転することにより、蒸着マスク20の位置を修正することができる。これにより、蒸着マスク20に生じた撓みや波打ち現象を修正することができる。
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
17 耳部
20 蒸着マスク
22 有効領域
23 周囲領域
50 クランプ装置
50A 第1クランプ装置
50B 第2クランプ装置
51 上方クランプ
52 下方クランプ
53 駆動装置
53a 第1駆動手段
53b 第2駆動手段
70 製造装置
71 ステージ
72 載置台

Claims (8)

  1. 蒸着マスク装置の製造装置であって、
    蒸着マスクを載せる載置台と、
    前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、
    前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプと、
    前記上方クランプ及び前記下方クランプを駆動する駆動装置と、を備え、
    前記駆動装置は、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方のクランプを移動させることにより前記一方のクランプが前記蒸着マスクに接触した後、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの他方のクランプを移動させることにより前記他方のクランプが前記蒸着マスクに接触するように、前記上方クランプ及び前記下方クランプを駆動する、蒸着マスク装置の製造装置。
  2. 前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方は、前記蒸着マスクとの間で位置決めを行う位置決め部を有する、請求項1記載の蒸着マスク装置の製造装置。
  3. 前記載置台は、前記蒸着マスクを磁力によって保持する電磁石装置を有する、請求項1又は2記載の蒸着マスク装置の製造装置。
  4. 前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方は、前記載置台の載置面の法線方向周りに回転可能である、請求項1乃至3のいずれか一項記載の蒸着マスク装置の製造装置。
  5. 蒸着マスク装置の製造方法であって、
    載置台に蒸着マスクを載置する工程と、
    前記蒸着マスクの上方に位置する上方クランプと、前記蒸着マスクの下方に位置する下方クランプとによって、前記蒸着マスクを掴む工程と、を備え、
    前記蒸着マスクを掴む工程において、前記上方クランプ及び前記下方クランプは、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方のクランプを移動させることにより前記一方のクランプが前記蒸着マスクに接触した後、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの他方のクランプを移動させることにより前記他方のクランプが前記蒸着マスクに接触するように駆動される、蒸着マスク装置の製造方法。
  6. 前記蒸着マスクを掴む工程において、前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方の位置決め部を用いて、前記蒸着マスクとの間で位置決めを行う、請求項記載の蒸着マスク装置の製造方法。
  7. 前記載置台は、前記蒸着マスクを磁力によって保持する電磁石装置を有し、前記載置台の前記電磁石装置の磁力によって、前記蒸着マスクが保持される、請求項又は記載の蒸着マスク装置の製造方法。
  8. 前記上方クランプ及び前記下方クランプのうちの少なくとも一方が、前記載置台の載置面の法線方向周りに回転することにより、前記蒸着マスクの位置を修正する工程を更に備えた、請求項乃至のいずれか一項記載の蒸着マスク装置の製造方法。
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