JP7236384B2 - 心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症 - Google Patents

心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症 Download PDF

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Description

本発明は、一般に、患者に有効量のシトルリンを投与することを含む、心肺バイパス中の患者におけるフリーラジカル生成による、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の発生率または重症度を低減するために、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の共役を維持する分野に関する。
心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症
先天性心臓病変を修復する手術を受けた小児は、手術直後の期間中、肺血管抵抗の突然または持続性の増大に対して非常に脆弱である。手術の後、肺血管系の反応性が増大する結果、血管攣縮性の刺激によって、肺動脈圧および抵抗が突然増大する場合がある。こうしたことは、ひいては、急性右心不全、三尖弁閉鎖不全、全身性低血圧、心筋虚血、および気道抵抗の増大につながりかねない。このような肺高血圧クリーゼは、最も悪化した形態では、致命的となりかねない。より軽い刺激事象では、より長く続き、集中発生するより軽いクリーゼに陥る結果、集中治療室(ICU)における滞在が長引く場合がある。AdatiaおよびBeghetti(2009年)Cardiol Young19巻(4号):315~319頁。
心肺バイパス(CPB)によって誘発される傷害は、バイパス術の過程によって誘発された主に体液性の全身性炎症応答の結果として生じる。Seghaye(2003年)Cardiol Young13巻(3号):228~239頁;DayおよびTaylor(2005年)Int J Surg3巻(2号):129~140頁;JaggersおよびLawson(2006年)Ann Thorac Surg81巻(6号):S2360~2366頁;KozikおよびTweddell(2006年)Ann Thorac Surg81巻(6号):S2347~2354頁;Warrenら(2009年)J Cardiothorac Vasc Anesth23巻(2号):223~231頁;Warrenら(2009年)J Cardiothorac Vasc Anesth23巻(3号):384~393頁。肺および他の組織が受ける損傷は、結果として、本明細書に記載する重度の臨床状態をもたらす。
CPBを受けている小児がCPBに対して肺傷害後遺症を発症する割合
心肺バイパスを受けている若年患者の約5分の1から3分の1が、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症に見舞われる。急性術後肺高血圧は、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症を示唆する重要な特徴であると考えられる。Russellは、臨床上重大な肺高血圧の基準を、(A)平均肺動脈圧が平均全身動脈圧の50%以上となった場合、または(B)心エコーデータから同程度の肺高血圧が示された場合のいずれかとして提示している。Russellら(1998年)Anesth Analg87巻(1号):46~51頁。これにより、先天性心臓修復手術(congenital heart repair surgery)を受けている患者の36人中13人、または36%が、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症に見舞われるという数字が得られる。
別の手法では、Lindbergが、重症術後肺高血圧を、平均肺動脈圧が平均全身動脈圧のレベルに等しいまたはそれを超えるとして定義することにより、重症の肺高血圧に注目した。Lindbergら(2002年)J Thorac Cardiovasc Surg123巻(6号):1155~1163頁。全体として、1349人の患者について、その集団の2%が、この厳格な基準に適合した。Lindbergは、肺高血圧の中程度の症例の存在について論じてはいるが、こうした症例を詳細に数量化していない。しかし、全カルテ審査について適格となった患者が、ICUにおいて肺動脈カテーテルが取り付けられ、4日を超えて機械的換気で過ごし、または死亡していた。臨床上重大な肺高血圧があったと思われるこうした患者の数は、総計で、集団の17%に相当する224人であった。同文献。
いくつかの研究が、同様の数字を挙げている。Bandoは、より最近では低下していることを指摘しながら、歴史的には、患者の約30%が肺高血圧を発症していたことに言及しているが、論文のデータは、約17%の比率を示している。Bandoら(1996年)J Thorac Cardiovasc Surg112巻(6号):1600~1607頁。Checchiaは、心臓手術を受けている小児における肺高血圧の正確な発生率は、不確かなままであると述べた。Checchiaら(2012年)Pediatr Cardiol33巻(4号):493~505頁。Checchiaは、20人のうち11人の乳児が術後肺高血圧を発症した、1件だけの研究に言及しており、偶発性肺高血圧症例も含めたとき、割合は、75%に上昇した。同文献。
術後肺高血圧を発症する小児の運命
Brownによる研究では、術後肺高血圧を発症する小児の運命を調べ、それを、臨床的に重要な期間および経済的に重要な期間に構成した(framed)。入院期間についての考えられるすべての危険因子が、いくつかの多変量モデルにおいて調べられている。肺高血圧を始めとする最も強い因子は、合併症スコアに組み入れられている。術後モデルと、合併症スコアの一部としての最終モデルの両方において、肺高血圧は、入院期間長期化の強い予知因子であった。入院期間長期化は、主要な経済的帰結である。入院期間について第95百分位数より上位になった小児は、病床日数の30%を占め、死亡率は、第95百分位数より下位になった小児の3倍であった。1つの施設において、7.1%の患者が、全集中治療日数の50.1%、全技術資源の47.7%を使用していた。特に、12%の患者は、14日またはこれより長期間のICU滞在が必要であった。全患者では、滞在中央値は、3日であった。対照的に、第95百分位数またはこれより上位の患者のICU滞在中央値は、27日であった。これと一致して、第95百分位数またはこれより上位の患者についての機械的換気の継続期間中央値は、23日であった。Brownら(2003年)Crit Care Med31巻(1号):28~33頁。
CPBによって誘発された肺傷害後遺症に対する現行療法
Landisは、成人肺バイパス術において術後肺高血圧の処置に使用されている種々の戦略の証拠に基づく検討を行って、一酸化窒素吸入およびことによると補体阻害薬だけが、真の価値をもたらすと結論付けた。Landisら(2014年)J Extra Corpor Technol46巻(3号):197~211頁。他の研究は、小児の心臓手術に注目していた。Apostolakisら(2010年)J Cardiothorac Surg5巻:1頁;Barstら(2010年)Pediatr Cardiol31巻(5号):598~606頁;FraisseおよびWessel(2010年)Pediatr Crit Care Med11巻(補遺2):S37~40頁;TaylorおよびLaussen(2010年)Pediatr Crit Care Med11巻(補遺2):S27~29頁;BronickiおよびChang(2011年)Crit Care Med39巻(8号):1974~1984頁;Fraisseら(2011年)Intensive Care Med37巻(3号):502~509頁;Checchiaら(2012年)Pediatr Cardiol33巻(4号):493~505頁;Brunnerら(2014年)Pulm Circ4巻(1号):10~24頁。現行療法の主力は、依然として一酸化窒素吸入(iNO)である。一酸化窒素は、他の療法のほとんどと同じく、療法を開始できる前に、まず第1に、患者が心肺バイパスの呼吸器合併症を発症している必要がある、リアクティブ療法である。その上、一酸化窒素吸入は、(A)一酸化窒素吸入は、中断すると、著しいリバウンド現象を伴い、(B)一酸化窒素は、ヘモグロビンと錯化すると、メトヘモグロビン血症をもたらすという、2つの主要な欠点を有する。一酸化窒素吸入のリバウンドを鈍らせるのに、シルデナフィルなどのホスホジエステラーゼ5阻害薬が使用されているが、結果は、まちまちとなっている。
したがって、患者において、CPBによって誘発される肺傷害の後遺症を、術中および術後に軽減するのにより有効な方法が当該技術分野で求められている。
AdatiaおよびBeghetti(2009年)Cardiol Young19巻(4号):315~319頁
本発明は、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の共役を維持して、心肺バイパス中の患者におけるフリーラジカル生成による、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の発生率または重症度を低減する方法であって、患者に有効量のシトルリンを投与することを含む方法を提供する。有効量のシトルリンは、手術中または手術後に患者に投与してよい。有効量のシトルリンは、手術中および手術後に患者に投与してよい。有効量のシトルリンは、手術前、手術中、および手術後に患者に投与してよい。
多くの実施形態では、シトルリンの有効量は、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の脱共役を低減するのに十分な量でよい。多くの実施形態では、シトルリンの有効量は、フリーラジカルの生成を低減するのに十分な量でよい。多くの実施形態では、シトルリンの有効量は、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の発生率または重症度を低減するのに十分な量でよい。多くの実施形態では、シトルリンは、手術より前に患者に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、手術の約12時間前に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、手術の開始時に患者に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、手術中に患者に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、手術後に患者に投与してよい。
この方法は、手術によって心臓欠陥が矯正されうるときに使用することができる。この方法は、心臓欠陥を、過剰な肺血流と関連付けることができるとき、使用することができる。特定の実施形態では、心臓欠陥は、心房中隔欠損である場合がある。特定の実施形態では、心房中隔欠損は、大きい心房中隔欠損(arterial septal defect)である場合がある。特定の実施形態では、心臓欠陥は、心室中隔欠損である場合がある。特定の実施形態では、心室中隔欠損は、非限定的な大きい心室中隔欠損(VSD)である場合がある。特定の実施形態では、心臓欠陥は、単心室病変である場合がある。特定の実施形態では、単心室病変は、グレンおよびフォンタン法によって修復され得る。多くの実施形態では、心臓欠陥は、大動脈弁狭窄(AVS)、心房中隔欠損(ASD)、大動脈縮窄(CoA)、完全房室管欠損(CAVC)、d-大血管転位(d-Transposition of the great artery)、エブスタイン奇形、I-大血管転位、動脈管開存(Patent Ductus Arteriosis)(PDA)、肺動脈弁狭窄、単心室欠損、ファロー四徴症、総肺静脈還流異常(TAPVC)、総動脈幹症(Truncus Arteriosus)、または心室中隔欠損(VSD)である場合がある。特定の実施形態では、手術は、動脈スイッチ手順である場合がある。特定の実施形態では、心肺バイパスは、部分的または完全な房室中隔欠損(AVSD)を修復するためのものであり得る。特定の実施形態では、心肺バイパスは、一次孔心房中隔欠損(primum ASD)を修復するためのものであり得る。
手術の開始時に投与され得るシトルリンは、約100~500mg/kgのシトルリンであり得る。好ましくは、手術開始時のシトルリンのボーラスは、約100~300mg/kgのシトルリンであり得る。好ましくは、手術開始時のシトルリンのボーラスは、約150mg/kgのシトルリンであり得る。好ましくは、手術の開始時に投与されるシトルリンは、約100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kgのシトルリンであり得る。好ましくは、手術中に投与されるシトルリンは、濾過に加えてよい。より好ましくは、手術中に投与されるシトルリンは、血液濃縮置換液(hemoconcentration replacement fluid)に加えてよい。
多くの実施形態では、シトルリンは、約100~500μmol/Lで加えてよい。多くの実施形態では、シトルリンは、約100~300μmol/Lで加えてよい。多くの実施形態では、シトルリンは、約100、150、200、250、300、350、400、450、または500μmol/Lで加えてよい。多くの実施形態では、シトルリンは、約200μmol/Lで加えてよい。
シトルリンボーラスは、手術から約5~60分後に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンボーラスは、手術から約15~45分後に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンボーラスは、手術から約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分後に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンボーラスは、手術から約30分後に投与してよい。
多くの実施形態では、シトルリンボーラスは、約5~50mg/kgのシトルリンであってよい。多くの実施形態では、シトルリンボーラスは、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mg/kgのシトルリンであってよい。特定の実施形態では、シトルリンボーラスは、約20mg/kgのシトルリンであってよい。
シトルリンボーラスは、心肺バイパスカニューレ抜管から約30後に投与してよい。
多くの実施形態では、シトルリンは、手術後に約12~48時間かけて患者に投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、手術後に約12、24、36、または48時間かけて患者に投与してよい。多くの実施形態では、手術後にシトルリンは、約48時間かけて患者に注入してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、約3~12mg/kg/時間での注入によって投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12mg/kg/時間での注入によって投与してよい。多くの実施形態では、注入は、約9mg/kg/時間であり得る。
多くの実施形態では、シトルリンは、静脈内投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンは、周術期に(perioperatively)投与してよい。多くの実施形態では、シトルリンのボーラスは、外科的手順の冒頭に投与してよい。
多くの実施形態では、シトルリンは、経口、静脈内、吸入、またはこれらを組み合わせて投与してよい。
多くの実施形態では、シトルリンボーラスは、約150mg/kgであり得る。
多くの実施形態では、シトルリンは、手術中に利用される濾過および血液濃縮液に、約200μmol/Lで加えてよい。
多くの実施形態では、約20mg/kgのシトルリンのボーラスが、心肺バイパスからのカニューレ抜管後に投与してよい。
多くの実施形態では、心肺バイパスからのカニューレ抜管後、シトルリンの9mg/kg/時間の持続注入が、必要に応じて約48時間かけて施行され得る。
多くの実施形態では、150mg/kgのシトルリンのボーラスが、手術の冒頭に投与され、続いて手術後から4時間、シトルリンが9mg/kg/時間で持続注入され得る。
多くの実施形態では、患者は、CPSI遺伝子におけるT1405N遺伝子型がCC、AC、AA、またはその組合せであり得る。特定の実施形態では、患者は、CPSI遺伝子におけるT1405N遺伝子型がCCであり得る。
多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、約37、50、100、150、または200μmol/Lを超えて上昇し得る。多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、術後、約37、50、100、150、または200μmol/Lを超えて上昇し得る。多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、約100μmol/Lを超えて上昇し得る。多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、術後、約100μmol/Lを超えて上昇し得る。多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、術後、約37~200μmol/L、好ましくは、術後、100~200μmol/Lに上昇し得る。多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、約37μmol/L~2.5mMに上昇し得る。多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、約37μmol/L~200μmol/L、100μmol/L~1mM/L、150μmol/L~500μmol/Lの間まで上昇し得る。
特定の一実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、術後少なくとも12~48時間にかけて上昇し得る。多くの実施形態では、患者の血漿シトルリンレベルは、術後48時間を超えても上昇し得る。
特定の実施形態では、患者は、新生児、思春期直前の子供(pre-adolescent)、青年、または成人であってよい。多くの実施形態では、患者は、約6才未満であってよい。多くの実施形態では、患者は、約10日齢未満であってよい。多くの実施形態では、患者は、早期産児であってよい。
多くの実施形態では、患者の集中治療室(ICU)滞在は、短縮される、好ましくは27日未満であり得る。
多くの実施形態では、患者は、急性右心不全、三尖弁閉鎖不全、全身性低血圧、心筋虚血、および気道抵抗の増大のリスクがある場合がある。
多くの実施形態では、患者は、新生児遷延性肺高血圧(PPHN)のリスクがある場合がある。
多くの実施形態では、シトルリンの有効量は、eNOSの脱共役を防ぐのに十分であり得る。
多くの実施形態では、患者は、急性肺傷害のリスクがある場合がある。特定の一実施形態では、患者は、急性肺傷害を有する場合がある。
多くの実施形態では、患者は、術後肺高血圧のリスクがある場合がある。特定の一実施形態では、患者は、術後肺高血圧を有する場合がある。
多くの実施形態では、方法によって、心肺バイパス手術中および術後に、患者における、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の発生率を低減させることができる。
本発明の方法の多くの実施形態では、方法によって、心肺バイパス手術中および術後に、患者における、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の重症度を軽減させることができる。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の共役を維持して、心肺バイパス中の患者におけるフリーラジカル生成による、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の発生率または重症度を低減する方法であって、該患者に有効量のシトルリンを投与することを含む方法。
(項目2)
前記有効量のシトルリンが、前記手術中または該手術後に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記有効量のシトルリンが、前記手術中および該手術後に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記有効量のシトルリンが、前記手術前、該手術中、および該手術後に前記患者に投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記有効量のシトルリンが、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の脱共役を低減するのに十分な量である、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記有効量のシトルリンが、フリーラジカルの生成を低減するのに十分な量である、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記有効量のシトルリンが、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の発生率または重症度を低減するのに十分な量である、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記シトルリンが、前記手術より前に前記患者に投与される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記シトルリンが、前記手術の約12時間前に投与される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記シトルリンが、前記手術の開始時に前記患者に投与される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記シトルリンが、前記手術中に前記患者に投与される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記シトルリンが、前記手術後に前記患者に投与される、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記手術が、心臓欠陥を矯正するためのものである、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記心臓欠陥が、過剰な肺血流と関連付けられる、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記心臓欠陥が心房中隔欠損である、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記心房中隔欠損が、大きい心房中隔欠損である、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記心臓欠陥が心室中隔欠損である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記心室中隔欠損が、非限定的な大きい心室中隔欠損(VSD)である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記心臓欠陥が単心室病変である、項目13に記載の方法。
(項目20)
前記単心室病変が、グレンおよびフォンタン法によって修復される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記心臓欠陥が、大動脈弁狭窄(AVS)、心房中隔欠損(ASD)、大動脈縮窄(CoA)、完全房室管欠損(CAVC)、d-大血管転位、エブスタイン奇形、I-大血管転位、動脈管開存(PDA)、肺動脈弁狭窄、単心室欠損、ファロー四徴症、総肺静脈還流異常(TAPVC)、総動脈幹症、または心室中隔欠損(VSD)である、項目13に記載の方法。
(項目22)
前記手術が動脈スイッチ手順である、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記心肺バイパスが、部分的または完全な房室中隔欠損(AVSD)を修復するためのものである、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記心肺バイパスが、一次孔心房中隔欠損(primum ASD)を修復するためのものである、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記手術の開始時に投与される前記シトルリンが、約100~500mg/kgのシトルリンである、項目1から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記手術開始時のシトルリンのボーラスが、約100~300mg/kgのシトルリンである、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記手術開始時のシトルリンのボーラスが、約150mg/kgのシトルリンである、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記手術の開始時に投与される前記シトルリンが、約100、150、200、250、300、350、400、450、または500mg/kgのシトルリンである、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記手術中に投与される前記シトルリンが濾過に加えられる、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記手術中に投与される前記シトルリンが、血液濃縮置換液に加えられる、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記シトルリンが、約100~500μmol/Lで加えられる、項目1から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記シトルリンが、約100~300μmol/Lで加えられる、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記シトルリンが、約100、150、200、250、300、350、400、450、または500μmol/Lで加えられる、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記シトルリンが、約200μmol/Lで加えられる、項目33に記載の方法。
(項目35)
シトルリンボーラスが、前記手術から約5~60分後に投与される、項目1から34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
シトルリンボーラスが、前記手術から約15~45分後に投与される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記シトルリンボーラスが、前記手術から約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分後に投与される、項目36に記載の方法。
(項目38)
シトルリンボーラスが、前記手術から約30分後に投与される、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記シトルリンボーラスが、約5~50mg/kgのシトルリンである、項目35に記載の方法。
(項目40)
前記シトルリンボーラスが、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50mg/kgのシトルリンである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記シトルリンボーラスが、約20mg/kgのシトルリンである、項目40に記載の方法。
(項目42)
シトルリンボーラスが、心肺バイパスカニューレ抜管から約30分後に投与される、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
シトルリンが、手術後に約12~48時間かけて前記患者に投与される、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記シトルリンが、手術後に約12、24、36、または48時間かけて前記患者に投与される、項目43に記載の方法。
(項目45)
手術後のシトルリンが、約48時間かけて前記患者に注入される、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記シトルリンが、約3~12mg/kg/時間での注入によって投与される、項目43に記載の方法。
(項目47)
前記シトルリンが、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12mg/kg/時間での注入によって投与される、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記注入が約9mg/kg/時間である、項目47に記載の方法。
(項目49)
シトルリンが静脈内投与される、項目1から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
シトルリンが周術期に投与される、項目1から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
シトルリンのボーラスが、外科的手順の冒頭に投与される、項目1から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記シトルリンが、経口、静脈内、吸入、またはこれらを組み合わせて投与される、項目1から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記シトルリンボーラスが、約150mg/kgである、項目1から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記シトルリンが、前記手術中に利用される濾過および血液濃縮液に、約200μmol/Lで加えられる、項目1から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
約20mg/kgのシトルリンのボーラスが、心肺バイパスのカニューレ抜管後に投与される、項目1から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
心肺バイパスからのカニューレ抜管後、シトルリンの9mg/kg/時間の持続注入が、必要に応じて約48時間かけて施される、項目1から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
150mg/kgのシトルリンのボーラスが、手術の冒頭に投与され、続いて手術後から4時間、シトルリンが9mg/kg/時間で持続注入され得る、項目1から56のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記患者において、CPSI遺伝子におけるT1405N遺伝子型が、CC、AC、AA、またはその組合せである、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記患者において、CPSI遺伝子におけるT1405N遺伝子型がCCである、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、約37、50、100、150、または200μmol/Lを超えて上昇する、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、術後、約37、50、100、150、または200μmol/Lを超えて上昇する、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、約100μmol/Lを超えて上昇する、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、術後、約100μmol/Lを超えて上昇する、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、術後、約37~200μmol/L、好ましくは、術後、100~200μmol/Lに上昇する、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、約37μmol/L~2.5mMに上昇する、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、約37μmol/L~200μmol/L、100μmol/L~1mM/L、150μmol/L~500μmol/Lの間まで上昇する、項目1から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、術後少なくとも12~48時間にかけて上昇する、項目1から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記患者の血漿シトルリンレベルが、術後48時間を超えて上昇する、項目1から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
前記患者が、新生児、思春期直前の子供、青年、または成人である、項目1から68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記患者が約6才未満である、項目1から69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記患者が約10日齢未満である、項目1から69のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記患者が早期産児である、項目1から69のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記患者の集中治療室(ICU)滞在が短縮される、好ましくは27日未満になる、項目1から72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記患者が、急性右心不全、三尖弁閉鎖不全、全身性低血圧、心筋虚血、および気道抵抗の増大のリスクにある、項目1から73のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記患者が、新生児遷延性肺高血圧(PPHN)のリスクにある、項目1から73のいずれか一項に記載の方法。
(項目76)
シトルリンの前記有効量が、eNOSの脱共役を防ぐのに十分である、項目1から73のいずれか一項に記載の方法。
(項目77)
前記患者が、急性肺傷害のリスクにある、項目1から76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記患者が急性肺傷害を有する、項目1から76のいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
前記患者が、術後肺高血圧のリスクにある、項目1から76のいずれか一項に記載の方法。
(項目80)
前記患者が術後肺高血圧を有する、項目1から79のいずれか一項に記載の方法。
(項目81)
心肺バイパス手術中および術後に、患者における、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の発生率を低減させる、項目1から79のいずれか一項に記載の方法。
(項目82)
心肺バイパス手術中および術後に、患者における、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の重症度を軽減させる、項目1から79のいずれか一項に記載の方法。
図1は、肝臓の尿素回路を示す。
図2は、CPSI多型(CC、AC、およびAA)の遺伝子型が血漿アルギニンおよびシトルリンレベルに及ぼす影響を示す。これらは、T1405N遺伝子型を生じるCPSI多型である。
図3は、手術中および術後に、患者においてCPBによって誘発される肺傷害の後遺症を処置するための典型的なプロトコールの流れ図を示す。
図4は、新生児遷延性肺高血圧(PPHN)を有する患者における、NOおよびNO前駆体である、アルギニンおよびシトルリンの減少を示す。
図5は、心肺バイパス(CPバイパス)からの血漿アルギニンレベルの低下を示す。CPバイパスによって、患者の血漿アルギニンレベルは低下する。
図6A~Bは、心肺バイパスからの血漿(図6A)および血清(図6B)シトルリンレベルの低下を示す。CPバイパスによって、患者の血漿および血清シトルリンレベルは低下する。
図7は、心肺バイパスからの血漿一酸化窒素(NO)レベルの低下を示す。CPバイパスによって、血漿NOレベルは低下する。
図8は、肺血管緊張の増大を伴うおよび伴わない(PVT-およびPVT+)患者における、術前、術後、ならびに術後12、24、および48時間のアルギニンレベルの低下を示す。
図9A~Cは、シトルリンのボーラスが投与されたおよび投与されていない患者における血漿シトルリンレベルを示す。図9Aは、患者6と8の平均を示す。図9Bは、患者9と10の平均を示す。図9Cは、患者13~16の平均を示す。患者には、シトルリンの用量(50、100、または150mg/kg)が術前および術後に与えられた。
図10A~Bは、PKモデル(図10A)およびPKパラメーター(図10B)を示す。
図11A~Bは、静脈内シトルリン(「IVシトルリン」)が投与されたおよび投与されていない乳児における、60時間にわたる平均シトルリンおよびアルギニンレベルを示す。図11Aは、乳児における平均シトルリンレベルの低下を60時間にわたって示す。図11Bは、乳児における平均アルギニンレベルの低下を60時間にわたって示す。
図12は、シトルリンの用量(50、100、または150mg/kg)が術後に投与された患者における、12時間にわたる血漿シトルリンレベルを示す。
図13は、術後にシトルリンの用量(50、100、または150mg/kg)が投与された患者であって、シトルリンの静脈内注入(9mg/kg/時間)を組み合わせて投与された患者における、16時間にわたる血漿シトルリンレベルを示す。
図14A~Bは、乳児における60時間にわたる平均シトルリンレベル(図14A)、および9人の個々の乳児の60時間にわたる平均シトルリンレベル(図14B)を示す。
図15は、異なる用量のシトルリンを用いた術後換気の長さを示す。
図16は、先天性心臓修復手術における、シトルリンの呼吸転帰に対する効果を示す。NB:単一のデータ点が軸境界外にある(プラセボ、672時間)。P=0.1911 Satterhwaite t検定、n=20人の使用可の患者
図17は、シトルリンが与えられた処置された患者(シトルリン)対シトルリンなしの患者(プラセボ)の平均変力物質スコアを示す。
図18A~Bは、シトルリンが与えられた患者(シトルリン)対シトルリンなしの患者(プラセボ)の収縮期および拡張期血圧ならびに平均動脈圧を示す。図18Aは、収縮期および拡張期血圧を示す。シトルリンが与えられた患者の収縮期および拡張期血圧に有意な変化なし。図18Bは、シトルリンが与えられた患者(シトルリン)対シトルリンなしの患者(プラセボ)の平均動脈圧を示す。シトルリンが与えられた患者の平均動脈圧に有意な変化なし。
図19は、術前ボーラス、周術期、および術後のシトルリンが与えられた患者におけるメジアン血漿シトルリンレベルを示す。
図20は、侵襲的な機械的換気の継続期間の、手術の終わりから最後の抜管までのカプラン・マイヤー生存分析である。(再挿管を除外、打ち切り)。シトルリンが与えられた患者では、機械的換気の継続期間の短縮が示された。機械的換気の差は、ウィルコクソンの順位和検定(p=0.0222)および分散分析t検定(p=0.0317)によって統計的に有意であった。
図21は、変力物質依存時間の長さ(length of time on inotrope)のカプラン・マイヤー生存分析を示す。単変量分析(p値):ウィルコクソンの順位和検定(0.0727)、T検定(0.097)。
図22は、変力物質依存時間の長さのカプラン・マイヤー生存分析を示す。単変量分析(p値):ウィルコクソンの順位和検定(0.0727)、T検定(0.0987)。
図23は、内皮細胞におけるアルギニン、シトルリン、およびヒスタミンによる一酸化窒素(NO)産生の比較を示す。アルギニンは、NO産生においてシトルリンと同等でない。
図24A~Bは、プラセボおよびシトルリンが与えられた患者における、メジアン血漿アルギニンレベル(図24A)およびメジアン血漿一酸化窒素(NO)レベル(図24B)を示す。
図25A~Bは、プラセボおよびシトルリンが与えられた患者における、再挿管時間を含めた、侵襲的な機械的換気の継続期間を示す。図25A、こうした患者についての術後の機械的換気の継続期間をゼロに設定し、換気時間がゼロであるすべての患者を打ち切りにした。図25Bでは、換気時間がゼロである患者を打ち切りにしなかった。両方の分析によって、シトルリンが与えられた患者についての侵襲的な機械的換気を用いた時間の統計的に有意な短縮が示されている。
図26A~Bは、1人の患者における侵襲的な機械的換気の継続期間を示す(再挿管時間を除外)。結果から、侵襲的な機械的換気を用いた時間の統計的に有意な短縮における、シトルリンのプラセボ処置に比べて有益な効果が確立される。
図27A~Bは、シトルリンが与えられた患者において、呼吸補助の必要がプラセボに比べて減ったことを示す、カプラン・マイヤー生存プロットを示す。
図28A~Bは、(静脈内(i.v.)変力物質使用の期間がゼロである患者を省いて)カプラン・マイヤー分析を示す。図28Aは、追加の打ち切りなしであり、図28Bは、ゼロを打ち切りとしている。図28A~Bは、シトルリンが与えられた患者では、プラセボが与えられた患者より変力物質スコアが低いことを示している。
図29は、プラセボが与えられた患者対シトルリンが与えられた患者を比較する、経時的な平均変力物質スコアを示す。
図30A~Bは、打ち切りになっているすべての患者(図30A)についておよび打ち切られた血管作動性薬物療法使用なしの患者(図30B)について、血管作動性薬物療法の合計継続期間に関するカプラン・マイヤープロットを示す。
図31は、シトルリンが与えられた患者対プラセボが与えられた患者についての小児集中治療室(PICU)滞在の合計継続期間を示す。
図32A~Bは、機械的換気、静脈内変力物質使用、または血管拡張薬使用の最長継続期間に基づく集中治療室(ICU)滞在の合計継続期間を示す。図32Aは、追加の打ち切りのないすべての患者を示す。図32Bは、再挿管を除外し、追加の打ち切りのない、すべての患者を示す。
図33A~Bは、機械的換気の継続期間および変力物質使用の継続期間の最長の長さである複合評価項目を示す。図33Aは、再挿管を含め、追加の打ち切りのないすべての患者を示す。図33Bは、再挿管を除外し、追加の打ち切りのないすべての患者を示す。この複合的な値は、変力物質使用の継続期間が48時間となり、機械的換気が48時間より短かった場合、打ち切りとした。
本発明では、心肺バイパス手術中および術後に、患者において、血漿シトルリンレベルを維持することにより、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の軽減が実現される。37μmol/Lより高い手術時血漿シトルリンレベルの、術後48時間までの持続を、本明細書に記載の方法によって実現することができる。好ましくは、100μmol/Lより高い手術時血漿シトルリンレベルの、術後48時間までの持続を、本明細書に記載の方法によって実現することができる。これにより、心肺バイパス手術中および術後に、患者において、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の発生率および/または重症度が低減される。
本発明者らは、驚いたことに、静脈内シトルリン補充によって、術後血漿アルギニンレベルが上昇し、eNOSの脱共役が低減されることにより、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症が予防されることを発見した。心肺バイパス手術中および術後に、患者において、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の発生率および/または重症度を低減させることで、コストが削減され、人員および設備が他の使用のために特別の制限を受けない。本明細書に記載する方法では、先天性心臓欠陥の手術を受けている小児患者において、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症を予防するために、静脈内シトルリンを使用する。
心肺バイパスは、臨床的には心血管および肺機能の急性の障害を特徴とする全身性炎症応答を引き起こす。Apostolakisら(2010年)Journal of Cardiac Surgery25巻(1号):47~55頁;HuffmyerおよびGroves(2015年)「Pulmonary Complications of Cardiopulmonary Bypass」、Best Practice & Research Clinical Anesthesiology。しかし、先天性心臓欠陥の外科的修復の間にCPBを受ける小児患者は、いくつかの医学的および生理学的理由のため、成人患者よりこのカスケードに影響されやすく、それからの医学的リスクがより大きくなる。KozikおよびTweddell(2006年)The Annals of Thoracic Surgery81巻(6号):S2347~S2354頁;Shekerdemian(2009年)Heart95巻(15号):1286~1296頁;Schure(2010年)Southern African Journal of Anesthesia and Analgesia16巻(1号):46~51頁。CPBによって誘発される急性肺傷害の重要な徴候の減少、すなわち、機械的換気および変力療法の術後の必要性の低減は、臨床的有効性の測定に使用することができる。
脱共役されたeNOSによる酸化的損傷
本発明者らは、患者が心肺バイパス(CPB)を受けるとき、血漿シトルリンレベルの低下のせいで全身性炎症応答が誘発されることを発見した。血漿シトルリンのこの低下は、eNOSの脱共役およびラジカル酸素種の産生をもたらす。結果として生じる酸化的損傷が、CPBと関連する肺傷害につながる。
いくつもの観察および臨床研究によって、先天性心手術(congenital cardiac surgery)のための心肺バイパス後48時間までの間、シトルリンおよびアルギニンの血漿レベルが急激に低下し、回復しないことが示されている。細胞内輸送機序および細胞内プロセシングにより、シトルリンは、一酸化窒素の内因性産生のための最終的な基質である。Barrら(2003年)The Journal of Pediatrics142巻(1号):26~30頁;Smithら(2006年)The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery132巻(1号):58~65頁;Barrら(2007年)The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery134巻(2号):319~326頁。
内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)は、十分に機能しうるとき、たとえば、アルギニンを一酸化窒素(NO)とシトルリンに変換しているとき、二量体である。eNOSの二量体形態を維持するには、有効なレベルのシトルリンが必要である。シトルリンが閾値レベルを下回るとき、eNOS二量体は、脱共役される。脱共役されたeNOSは、依然として基質を結合するが、NOではなくフリーラジカルを産生する。フリーラジカルは、炎症という損傷の一因となって、心肺バイパスの傷害後遺症をもたらす。脱共役されたeNOSによる不十分なNO産生によって、肺血管抵抗がより高くなり、その結果、肺高血圧が促進される。
様々な先天性心臓欠陥が修復された後の肺の肺傷害後遺症の病態生理は、ひいてはeNOS酵素の脱共役につながる血漿シトルリンレベルの低下(たとえば、37μmol/L未満)を含む。脱共役されたeNOS酵素は、心肺バイパス後の後遺症の一部となりうる肺の肺傷害(pulmonary lung injury)の根底にある酸化的損傷を引き起こす、酸素ラジカルを産生する。アルギニンは、eNOSの脱共役の防止、および結果としての、脱共役されたeNOSによる酸化的損傷の予防という役割を果たすことができないため、アルギニンパラドックスは、臨床上重要である。
アルギニンパラドックス
無細胞系を使用した初期の研究によって、一酸化窒素(NO)がアルギニンから産生されることが示唆された。1990年代初頭、科学者らは、一酸化窒素産生が、NO合成酵素によってプロセシングされた遊離アルギニンに左右されると考えていた。シトルリンは、この時点では、この過程のけん引役というより副産物であると考えられていた。実際に、当時、シトルリンは、NO産生の副産物であると誤って考えられていたため、NO産生の指標として使用されていた。たとえば、MoncadaおよびHiggs N. Engl. J. Med.329巻(27号)2002~2012頁(1993年)およびStamlerら、Science258巻(5090号)1898~1902頁(1992年)を参照されたい。しかし、この初期の理解は、後に生理的条件下で行われ、発表された研究と相容れず、そうした後の研究によって、「アルギニンパラドックス」が記載されている。「アルギニンパラドックス」は、血漿アルギニンレベルが変化しないにもかかわらず、NO産生が増加することによって明らかになる。
研究によって、eNOSについての半飽和アルギニン濃度は、10μM未満であることが示されている。細胞内アルギニン濃度が、内皮細胞培養物において0.1~0.8mMの範囲にあることも、学術誌において報告されている。したがって、eNOSの活性部位は、こうした細胞中の細胞内アルギニンによって飽和されることが予想され、細胞外アルギニンを増加させても、NO産生の増加は期待されないことになる。この所見は、Fikeら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol274巻:L517~L526頁(1998年)によって報告された。
しかし、in vitroおよびin vivo研究では、生理的条件下での内皮細胞によるNO産生が、飽和状態の細胞内アルギニン濃度にもかかわらず、細胞外アルギニンによって増加しうることが示されている。一方、内皮細胞におけるアルギニンの細胞内濃度は、一酸化窒素(NO)産生の変化なしに、100倍を超えて変動し得る。この所見、すなわち、細胞外アルギニン投与によって、細胞内アルギニンが超過して利用可能であるときでさえ、NO産生が推し進められることは、「アルギニンパラドックス」と呼ばれる。McDonaldら(1997年)The Journal of Biological Chemistry272巻(50号):31213~31216、31213頁。加えて、生理系においては外因性アルギニンによってNO産生が増加しないことも、この時期の間に見出された。たとえば、Blumら、Circulation101巻(18号):2160~2164頁(2000年)、およびChin-Dustingら、J.Am.Coll.Cardiol:27巻(5号):1207~1213頁(1996年)を参照されたい。
現在、シトルリンは、飽和レベルのアルギニンの存在下でさえ、一酸化窒素(NO)産生を刺激しうると理解されている。さらに、細胞外シトルリンは、細胞内アルギニンレベルに影響を及ぼさない。そのため、NO産生は、実際には、外因性のアルギニン供給ではなく、内部中間体としてのアルギニノコハク酸およびアルギニンとの酵素複合体に入る、尿素回路によって産生または再利用されるシトルリンの使用に左右される。Dioguardi(2011年)J Nutrigenet Nutrigenomics4巻:90~98頁。したがって、妥当な血漿レベルのシトルリンによって、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の重症度および発生率は、低減される。
心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症
いくつかの要素によって、CPB中に肺が傷害のリスクに曝される。中でも、主要な要素は、特に、好中球および他の白血球、補体、およびサイトカイン(炎症性および抗炎症性)の表面活性化、ならびに関連する全身性炎症カスケードである。Apostolakisら(2010年)Journal of Cardiac Surgery25巻(1号):47~55頁;Schure(2010年)Southern African Journal of Anesthesia and Analgesia16巻(1号):46~51頁。体外循環の際の白血球の接触活性化によって媒介される炎症応答によって肺が損傷を受ける度合いは、臨床的帰結のない顕微鏡的変化から、毛細管漏出症候群、または、最悪の場合では、急性呼吸不全まで、重症度が様々となりうる。
肺傷害は、幾通りかの方法で顕在化し、実質と血管両方の肺組織を巻き込む場合がある。CPBの実質への影響は、肺コンプライアンスの変化に反映され、最も一般的には、肺水分の増加と関係付けられる。これによって患者が受ける影響は、換気補助の強化の必要、および肺がガス交換の機能を果たす能力の低下である。血管への影響は、ひいては右心室の機能に影響を及ぼす、肺血管抵抗の変化によって顕在化する。この状態は、事実上、肺動脈高血圧をなす。肺は、循環において独特な位置にあり、したがって、異なる傷害機序に対して脆弱であり得る。CPB装置において表面と接触後、またはCPB機器による直接の損傷によって炎症メディエーターを作り出す循環白血球は、肺において起こりうる炎症性の損傷の一部を占めるに過ぎない。Clark(2006年)Perfusion21巻(4号):225~228頁。肺は、炎症細胞の重要な供給源でもあることに加えて、そうした同じ細胞による損傷のターゲットにもなる。肺に対する機械的および炎症性の影響の帰結は、機能的残気量の減少、コンプライアンスの低下、およびガス交換の障害である。こうした変化は、最終的に、肺血管抵抗および肺動脈圧の増加と関連する。
CPBによって誘発される急性肺傷害は、重大な心肺の問題をもたらす。炎症応答は、肺および全身の脈管構造の収縮につながる。収縮の結果、右心室および左心室の仕事量が増加する。炎症応答は、肺水腫ならびに肺コンプライアンスおよび術後肺機能の低下にもつながる。こうした術後合併症の標準処置には、肺機能が正常に戻るまでの機械的換気、ならびに肺および全身の血管緊張が正常に戻って、最終的に右心室および左心室の仕事量が減少するまでの変力支持(inotropic support)が含まれる。機械的換気および変力支持は、CPBによって誘発される急性肺傷害の有効なバイオマーカーとして働くことができる療法である。加えて、機械的換気の長期化は、ひいては、人工呼吸器関連肺傷害、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、中心ライン関連血流感染症(CLABSI)、およびより一層長期化した集中治療室滞在を始めとする、他の病的状態にも往々にしてつながりかねない。したがって、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の予防は、望ましい治療目標である。
小児CHD患者
先天性心臓欠陥の手術を受ける小児は、炎症応答の年齢による違いのため、未熟な臓器系では傷害に対する感受性が高いため、また小児と成人のCPBには明確な違いがあるために、CPBによって誘発される急性肺傷害を特に発症しやすい。KozikおよびTweddell(2006年)The Annals of Thoracic Surgery81巻(6号):S2347~S2354頁。新生児および乳児は、相対的に大きい体外回路サイズ、血液プライム、および流量増加要求の結果として、血液が外来表面により多く曝されるため、特に影響を受ける。Schure(2010年)Southern African Journal of Anesthesia and Analgesia16巻(1号):46~51頁。
先天性心手術のために、体外回路は、1.5kgの未熟児から100kgを超える青年または成人までの、広範な年齢群およびサイズ変化に合わせて調整しなければならない。乳児および小児は、循環血液量がより少なく、酸素消費速度がより速く、多くの場合、肺血管床の反応性がより高い。加えて、新生児および乳児は、体温調節が不安定であり、臓器系が未熟であり、虚血耐性および炎症応答に対する複数の影響を伴う。多くの複雑な修復には、無血手術野が必要となるが、心内または心外短絡、大動脈肺動脈側副血行路、または別な形での肺静脈還流の増加の存在下でこれを得ることは、困難な場合がある。Schure(2010年)Southern African Journal of Anesthesia and Analgesia16巻(1号):46~51頁。
成人CPBと小児CPBの違いを表1に示す。
Figure 0007236384000001
肺血管床の機能および構造の状態は、先天性心血管疾患を有する小児の症状発現(presentation)および転帰に中心的に関与する。しかし、このような小児患者が、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症に対して最も脆弱であるのは、手術直後の期間においてである。心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症は、患者の術前の状態(重要な点で、修復時の年齢、病変のタイプ、および症候群の存在)と、心臓手術の結果として起こる内分泌および血管作動性ペプチド環境における不可避の崩壊との間の複雑な相互作用を表わす。血管収縮の増強につながる重要な要素は、心肺バイパス、低体温法、およびある程度の虚血を伴う循環停止である。残存心臓病変、ならびにストレス応答、低酸素症、代謝性および呼吸性アシドーシスの後遺症はすべて、肺血管収縮に有利である付加的不均衡の一因となりうる。CPBと関連する急性肺傷害の顕在化の多くは、内皮機能障害によって完全または部分的に説明をつけることができ、これによって、考えられる統一的な仮説と潜在的な治療ターゲットが直ちに提示される。CPBと関連する急性肺傷害は、重要な有害心臓後遺症をもたらす場合もある。CHDの手術後の炎症応答は、異常な心室-血管相互作用、全身性血管収縮および後負荷の上昇、ならびに収縮期および拡張期機能の障害を伴う心筋傷害と一般に関連付けられる。一定割合の患者において、こうした血行力学の顕在化は、少ない心拍出量という深刻な帰結につながりかねない。Shekerdemian(2009年)Heart95巻(15号):1286~1296頁。
肺傷害の重度の後遺症は、転帰にとって臨床上重要である。こうした後遺症は、集中治療室滞在(intensive care stay)の長期化、および死の危険因子である。肺血管緊張の不安定性は、CHDの手術後の新生児および乳児においては一般的である。これは、術前の制限のない肺流量(大きい中隔欠損、共通動脈幹(common arterial trunk))または肺静脈高血圧(閉塞性異常肺静脈ドレナージ(obstructed anomalous pulmonary venous drainage))を有する患者における両室修復後に最も問題となりうる。肺血管抵抗の不安定性は、ノーウッド型手術、全身から肺への動脈短絡、または肺動脈絞扼を始めとする、機能的な単心室循環を有する患者における対症的な手術の後にも一般的である。多くの治療介入では、心筋および全身の脈管構造に対するその直接の影響によって、全身への酸素送達が最適化されるが、肺血管緊張の操作も、心疾患の手術を受ける小児の循環の最適化において重要な役割を果たしうる。Shekerdemian(2009年)Heart95巻(15号):1286~1296頁。
シトルリンは、その作用機序により、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症を発症するリスクを低減し、したがって、先天性心臓欠陥の手術を受ける小児患者の術後回復にプラスの影響を及ぼすための予防的な処置として企図される。
先天性心臓欠陥を含む心臓欠陥として、限定はしないが、過剰な肺血流と関連する心臓欠陥が挙げられる。心臓欠陥は、心房中隔欠損、たとえば、大きい心房中隔欠損である場合がある。心臓欠陥は、心室中隔欠損、たとえば、非限定的な大きい心室中隔欠損(VSD)である場合がある。心臓欠陥は、単心室病変である場合がある。単心室病変は、グレンおよびフォンタン法によって修復され得る。心臓欠陥は、大動脈弁狭窄(AVS)、心房中隔欠損(ASD)、大動脈縮窄(CoA)、完全房室管欠損(CAVC)、d-大血管転位、エブスタイン奇形、I-大血管転位、動脈管開存(PDA)、肺動脈弁狭窄、単心室欠損、ファロー四徴症、総肺静脈還流異常(TAPVC)、総動脈幹症、または心室中隔欠損(VSD)である場合がある。患者は、新生児、若年、青年、または成人である場合がある。
シトルリンとアルギニンは、機序および効果が異なる
アルギニンとシトルリンは、両方とも尿素回路の産物であるが、回路における段階が異なる。窒素を浄化する細胞中では、アルギニンは、アルギナーゼによって尿素にプロセシングされるが、一酸化窒素を産生する細胞中では、アルギニンは、一酸化窒素合成酵素(NOS)によるプロセシングを受けて、一酸化窒素とシトルリンを生じる。細胞外のアルギニンは、血管内皮細胞における刺激によるまたは刺激によらない一酸化窒素産生を有意に増加させることにおいて有効でない。Surdackiら、Wien Klin Wochenschr.(1994年)106巻(16号):521~6頁も参照されたい。対照的に、シトルリンは、NO産生の強力な刺激因子である。
図23は、作用物質(agent)なし(陰性対照)、アルギニン、シトルリン、およびヒスタミン(陽性対照)に曝したヒト血管内皮細胞による一酸化窒素の産生を測定する実験を示すものである。これらの作用物質を、アセチルコリンで刺激した培養ヒト血管内皮細胞に投与した。一酸化窒素の測定は、Seiverの硝酸/亜硝酸系によって行った。実験は、アルギニンが、ヒト血管内皮細胞による一酸化窒素の産生に対して効果を示さないことをはっきりと証明している。内皮細胞に直接適用されたアルギニンは、非常に高い濃度(10mM)でさえ、NO産生の増加の徴候をほとんど示さない。一方、内皮細胞にシトルリンを細胞外から加えると、こうした細胞によるNOの産生は増加する。さらに、本発明者らは、シトルリンの(SNAT1輸送体を介した)輸送を遮断すると、正常および低酸素条件下での一酸化窒素産生が有意に減少することも見出した。
この所見は、ある程度は、関与する酵素が複合体を形成し、シトルリンだけしか入ることのできない基質トンネルを生じることに起因する。基質のチャネリングを超えても、アルギニンの細胞への輸送は不十分である。これは、アルギニンが全細胞系において一酸化窒素産生の直接のエフェクターとして作用しないアルギニンパラドックスの根底にある原理である。たとえば、Summarら、Mol.Genet.Metab.2004年;81巻、補遺1:S12~9頁を参照されたい。
シトルリンは、生理的条件下では、飽和レベルのアルギニンの存在下でさえ、一酸化窒素(NO)産生を刺激しうる。さらに、細胞外シトルリンは、細胞内アルギニンレベルに影響を及ぼさない。したがって、NO産生は、実際には、外因性のアルギニン供給ではなく、内部中間体としてのアルギニノコハク酸およびアルギニンとの酵素複合体に入る、尿素回路によって産生または再利用されるシトルリンの使用に左右される。Dioguardi(2011年)J Nutrigenet Nutrigenomics4巻:90~98頁。
アルギニン分子とシトルリン分子は、たとえば、一酸化窒素の産生の点で異なる。シトルリンによって、新規タンパク質産生などの役割を始めとする、身体におけるアルギニンの役割のすべてを代用することができると考えるための証拠または理由は存在しない。アルギニンとシトルリンは、生物学的同等物ではない。
アルギニンは、一酸化窒素合成酵素(NOS)が、副産物のシトルリンを伴って一酸化窒素(NO)を生成するための基質である。シトルリンは、シトルリン-NO回路を構成するアルギニノコハク酸合成酵素(arginiosuccinic synthetase)(ASS)およびアルギニノコハク酸リアーゼ(arginiosuccinic lysase)(ASL)によって再びアルギニンに戻って再利用される。アルギニンは、この回路の酵素によってインサイチュで産生され、アルギニンの細胞外および外因性供給源によって、アルギニン欠乏は補充されない。たとえば、Erezら(2011年)Nature Medicine17巻(12号):1619~1626頁を参照されたい。さらに、eNOSは、酵素二量体を形成し、(活性)二量体形態のままでいるには十分なアルギニンが必要である。Erezが指摘しているとおり、シトルリンには、アルギニンのインサイチュの産生が必要であり、アルギニンの外因性供給源は、NOSがNO産生のために必要とするアルギニンを提供するのに不十分である。低酸素状態の間のように、アルギニンレベルが低下すると、二量体は、脱共役し、フリーラジカル酸素と ペルオキシナイトライトを産生し始める。高レベルの循環シトルリンによって、組織における酸化的損傷に対するいくらかの保護を提供することが実証されている。たとえば、GrisafiらLung(2012年)190巻(4号):419~30頁を参照されたい。
本発明者らは、生理系における外因性アルギニンは、NO産生を増加させないことを見出した。たとえば、Chin-Dustingら、J. Am. Coll. Cardiol:27巻(5号):1207~1213頁(1996年)を参照されたい。心肺手術およびその後の術後期間中のように、アルギニンレベルが低下すると、NOS二量体、すなわち酵素は、脱共役し、フリーラジカル酸素ラジカル(O)を産生し始める。加えて、NADPHオキシダーゼなどの、eNOS以外の酵素供給源から、スーパーオキシド産生が増加することもありうる。Liuら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol(2006年)290巻:L2~L10頁。この過剰なスーパーオキシド産生は、NOと直接に相互作用して、その局所産生を減少させる可能性がある。この場合に、妥当な血漿シトルリンレベルを維持することで、eNOS酵素を二量体として維持するのに十分なNO産生、および酸素ラジカルの産生を防ぐことが可能になる。
シトルリンは、血液濾過および透析によって意図せずに除去され得る。
先天性心手術を受ける小児の大規模前向き観察研究において、血漿シトルリンおよびアルギニンレベルは、手術後に有意に低下し、48時間までの間、術前のベースラインレベルに戻らなかった。
肺血管緊張(PVT)の増大は、先天性心手術を受ける小児において、術前には重症肺動脈高血圧の重大なリスクがあると考えられなかった患者についてでさえ、周術期の重要な問題となりうる。経口および静脈内シトルリンが、先天性心臓欠陥の修復を受ける乳児および小児において、有害な副作用なしに十分に耐容性があったことを示す、臨床的安全性および薬物動態研究を行った。後続のシトルリンの小規模無作為化プラセボ対照試験では、シトルリンが、有害事象なしに十分に耐容性があったが、しかし、一部の患者では、心肺バイパスの間に行われた血液濾過および透析中に重大なシトルリンの除去が起こっていたことが明らかになった。PVT増大の潜在的な遺伝的危険因子についての以前の研究では、主要な尿素回路酵素であるカルバミルリン酸合成酵素1の重要な多型の遺伝子型(CPSI T1405N)が、先天性心臓欠陥の外科的修復を受ける乳児および小児、ならびに術後肺高血圧(PPHN)のリスクのある新生児における肺血管緊張増大のリスクに影響を及ぼすことが言及された。加えて、多型遺伝子型にかかわらず、すべての患者に、シトルリンおよびアルギニンを始めとする主要な尿素回路中間体の血漿レベルの有意な低下があったことが言及された。こうした関連付けに促されて、本発明者らは、シトルリンの周術期の補充を研究するに至った。
最初の補充試験では、心肺バイパスの前、手術直後、および手術後に48時間継続して12時間毎に、経口シトルリンを1.9g/kgの用量で利用した。経口シトルリンは、重大な有害事象(全身性低血圧など)のエビデンスなしに十分に耐容性があった。加えて、12時間の血漿シトルリンレベルが37umol/L(正常レベルの上限)を超えていた患者は、PVTの増加を生じなかったことも示された。
残念なことに、経口シトルリンを与えられるすべての患者が、こうしたレベルに達したわけではない。こうした発見は、静脈内シトルリンでの後続の研究の設計において役立った。100μmol/L程度の持続的血漿レベルを目標とする用量漸増研究において、本発明者らは、静脈内シトルリンが、かなり短い半減期を有することを確認した。この問題に対処するために、本発明者らは、組合せのボーラスおよび持続注入薬物送達プロトコールを開発した。手術冒頭の150mg/kgのボーラスに続く、手術から4時間後の9mg/kg/時間の持続注入からなる組み合わせプロトコールによって、およそ100μmol/Lの持続的血漿シトルリンレベルが得られた。有害な副作用は確認されなかった。
ヴァンダービルト大では、77人の患者が、このプロトコールで処置を受けていた。この研究は、より大規模な多施設無作為化プラセボ対照試験に備えて中止された。こうした77人の患者からのデータを分析すると、シトルリンが与えられた大多数は、主として、以前は知られていなかった、心肺バイパスの間に行われる濾過および血液濃縮によるシトルリンの除去のせいで、約100μmol/Lの治療的持続性目標血漿シトルリンレベル(therapeutic sustained target plasma citrulline level)に達していなかったことが明らかになった。
シトルリンと心肺バイパス
周術期のシトルリン静脈内補充によって、術後血漿アルギニンレベルが増加し、eNOSの脱共役が回避される結果、心肺バイパスによって誘発される傷害の後遺症は減少する。本発明者らは、心肺バイパス(CPB)の開始時に、150mg/kgの静脈内シトルリンボーラスを投与し、心肺バイパス中に利用される濾過または血液濃縮置換液に、200μmol/Lの濃度でL-シトルリンを加え、CPBカニューレ抜管から30分後の20mg/kgのシトルリンボーラスの後直ちに、48時間にわたる9mg/kg/時間の持続注入を開始することを含む、手術中および手術後に肺血管緊張を維持するための改良されたプロトコールを開発した。一酸化窒素(NO)吸入は、他の療法のほとんどと同じく、療法を開始できる前に、まず第1に、患者が心肺バイパスの呼吸器合併症を発症している必要がある、リアクティブ療法である。これは、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の発症を予防すると思われるシトルリンとは著しく対照的である。
この修正されたプロトコールは、治療的な持続血漿シトルリンレベルを、心肺バイパスの開始から、手術の間ずっと、および手術後約48時間までの間、約100~200μmol/Lの目標閾値より高く維持するように設計されている。
シトルリンには、別個の静脈内アクセスの必要がない。シトルリン製剤は、等張性であり、末梢静脈内または中心静脈カテーテルのいずれかによって送ることができる。シトルリンは、アミノ酸であり、したがって、互換性の目的で、非経口栄養のように扱ってもよい。加えて、シトルリンは、心肺バイパス中に濾過または血液濃縮に使用される流体と適合する。
図3を参照して、例示的な流れ図は、手術中および手術後に患者にシトルリンを投与することを含む、妥当な血漿シトルリンレベルを維持する方法を示している。
図3に関して、術前段階の間には、150mg/kgのシトルリンボーラスを患者に投与することができる100。手術の間には、手術中に利用される濾過または血液濃縮置換液に、シトルリンを200μmol/Lの濃度で投与することができる200。術後段階の間には、20mg/kgのシトルリンボーラスを投与することができ300、続いて、9mg/kg/時間の持続注入を48時間かけて行うことができる400。
シトルリン製剤
シトルリン(2-アミノ-5-(カルバモイルアミノ)ペンタン酸)[C13]は、アミノ酸である。静脈内投与用のシトルリン溶液は、当該技術で公知の方法によって製造することができる。たとえば、Kakimotoら(1971年)Appl Microbiol22巻(6号):992~999頁を参照されたい。
使用方法
シトルリンは、外科的手順の前に投与してよい。適切な投薬は、心肺バイパスの開始時における150mg/kgの静脈内シトルリンボーラスを含んでよい。シトルリンは、外科的手順の間に投与してよい。適切な投薬は、心肺バイパス中に利用される濾過および血液濃縮液への、シトルリンの200μmol/Lの濃度での添加であり得る。シトルリンは、外科的手順の後に投与してよい。心肺バイパスからのカニューレ抜管から30分後の20mg/kgのシトルリンボーラスの後直ちに、48時間にわたる9mg/kg/時間の持続注入。本明細書に記載する方法を使用して、患者の血漿シトルリンレベルを約37μmol/Lより高く維持することができる。濾過または血液濃縮置換液は、シトルリンが200μmol/Lのシトルリン濃度になるように加えられている標準液、たとえば、Plasmalyte(登録商標)(非発熱性滅菌等張液)として提供され得る。用量は、麻酔が導入された後に配置される中心静脈内カテーテルによって、またはバイパス回路を介して与えてよい。
シトルリンは、血漿シトルリンレベルを維持するために、静脈内経路によって患者に注入してよい。手術中の血漿シトルリンの妥当な供給を維持するためのプロトコールは、心肺バイパス(CPB)の開始時に、静脈内シトルリンボーラス(たとえば、150mg/kg)の投与、手術中、必要に応じて、心肺バイパス中に利用される濾過または血液濃縮置換液への、シトルリンの(たとえば、200μmol/Lの濃度での)添加、CPBカニューレ抜管から30分後のシトルリンボーラス(たとえば、20mg/kg)の後直ちに、48時間にわたる持続注入(たとえば、9mg/kg/時間)を開始することを含み得る。
心肺バイパス(CPB)開始時の静脈内シトルリンボーラスは、約100~300mg/kgであってよい。心肺バイパス(CPB)開始時の静脈内シトルリンボーラスは、約100、125、150、175、200、225、250、275、または300mg/kgであってよい。好ましい一形態では、心肺バイパス(CPB)開始時の静脈内シトルリンボーラスは、約150mg/kgであり得る。
シトルリンは、必要に応じて心肺バイパスを含む手術中に利用される濾過または血液濃縮置換液に、約100~300μmol/Lの濃度で加えてよい。シトルリンは、手術中、必要に応じて、心肺バイパス中に利用される濾過または血液濃縮置換液に、約100、125、150、175、200、225、250、275、または300μmol/Lの濃度で加えてよい。好ましい一形態では、シトルリンは、手術中、必要に応じて、心肺バイパス中に利用される濾過または血液濃縮置換液に、約200μmol/Lの濃度で加えてよい。たとえば、手術の経過中終始約200μmol/Lのシトルリン濃度を維持するために、手術中に加えられるまたは除去されるいかなる流体も考慮に入れなければならない。
カニューレ抜管、通常は心肺バイパスから30分後に投与されるシトルリンボーラスは、約10~30mg/kgであってよい。約10、15、20、25、または30mg/kgのシトルリンボーラスが、心肺バイパスを終えた後すぐに、通常は、カニューレ抜管から約30分後に投与してよい。好ましい一形態では、約20mg/kgのシトルリンボーラスが、心肺バイパス後のカニューレ抜管から通常は30分後に投与してよい。
持続注入は、約5~15mg/kg/時間のシトルリン、すなわち、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15mg/kg/時間のシトルリンでなされ得る。持続注入は、約9mg/kg/時間のシトルリンでなされ得る。
シトルリンは、約5~15g/kg、すなわち、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15g/kgのシトルリンという投与量で経口投与してよい。シトルリンの経口投与量は、約9g/kgのシトルリンであってよい。
血漿シトルリンの目標レベルは、約37μmol/L~2.5mMで維持され得る。たとえば、患者の血漿シトルリンレベルは、約37、40、45、50、75、100、125、150、175、200、225、250、または300μmol/Lより高く維持され得る。患者の血漿シトルリンレベルは、約37、100、または200μmol/Lより高く維持され得る。本明細書に記載する方法を使用して、患者の血漿シトルリンレベルを、約37μmol/L~200μmol/L、100μmol/L~1mM/L、150μmol/L~500μmol/Lの間のシトルリンに保つことができる。
シトルリンは、用量単位形態で提供され得る。たとえば、シトルリンは、注射用に製剤された300mgの滅菌シトルリンを含有する容器に入って提供され得る。使用するには、これを、6mLの滅菌水を使用して復元し、およそ5.9mLの欧州薬局方0.9%滅菌NaCl溶液でさらに希釈して、総体積を12mL、濃度を300mg/12mL(すなわち、25mg/mL)とすることができる。シトルリンは、10~40mg/mL、たとえば、10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、または40mg/mLの濃度で注射用に製剤することができる。シトルリンは、滅菌水10mL中に注射用滅菌シトルリン500mgの薬物製品として提供され得る。これは、欧州薬局方0.9%塩化ナトリウムを使用して、患者への注入に使用することができる。
一実施形態では、手術当日、患者に、150mg/kgのシトルリンボーラスが投与され、濾過および血液濃縮液には、シトルリンが200μmol/Lで加えられる。手術から約30分後、20mg/kgのシトルリンボーラスが投与され、ボーラスの後(たとえば、ボーラスの投与後5~10分以内、好ましくは、ボーラスの投与直後に)、9mg/kg/時間でのシトルリンの持続静脈内注入が開始され、6~48時間、好ましくは、48時間維持される。
たとえば、心肺バイパス(CPB)の開始時に、150mg/kgのL-シトルリンボーラスを投与することができ、CPB中に利用される濾過および血液濃縮液には、200μmol/Lの濃度でシトルリンが加えられ、CPBからのカニューレ抜管から30分後に、20mg/kgのL-シトルリンボーラスを投与した後直ちに、9mg/kg/時間でのL-シトルリンの持続注入を48時間行うことができる。用量は、麻酔が導入された後に据え付け得る中心静脈内カテーテルによって、またはバイパス回路を介して投与することができる。この薬物投与には、別個の静脈内アクセスの必要がない。シトルリンは、等張性であり、末梢静脈内または中心静脈カテーテルのいずれかによって送ることができる。シトルリン(L-シトルリン)は、アミノ酸であり、したがって、互換性の目的で、薬物製品は、非経口栄養のように扱われる。加えて、シトルリンは、CPB中に濾過または血液濃縮に使用される流体と適合する。
術後パラメーター
静脈内シトルリンで処置された患者の臨床転帰は、術後の機械的換気の必要性および期間、心エコー図による術後PVT発生率の増加、血清クレアチニンおよび肝臓酵素レベル、変力物質スコア、胸腔チューブドレナージの期間および体積、ICU滞在の期間、入院の期間、および/または生存率によって評価することができる。
術後の機械的換気:術後の侵襲的な機械的換気の継続期間は、心肺バイパスからの分離から気管内抜管までの時間単位の所要時間(the time in hours)である。術後の侵襲的な機械的換気に費やされる時間の減少は、肯定的な術後転帰である。
心エコー図による術後PVT発生率の増加:PVTの増加は、右室(RV)圧が全身動脈圧の1/2より大きいことであると定義される。術後PVTが対照群に比べて変化しないままである場合、これは、肯定的な術後転帰である。
血清クレアチニンおよび肝臓酵素:血清電解質、クレアチニン、およびCBCレベルは、PCCUへの入院からPCCU退院まで毎日記録することができる。加えて、肝臓酵素は、ベースライン、24時間、および28日/退院期間の間に取得することができる。血清電解質、クレアチニン、およびCBCレベルが対照群に匹敵する場合、これは、肯定的な術後転帰となる。
変力物質スコア:変力物質用量は、次のスコア記入システムを使用して、PCCU入院時から術後にかけてモニターすべきである。
ドーパミン(mcg/kg/分)×1
+ドブタミン(mcg/kg/分)×1
+ミルリノン(mcg/kg/分)×10
+エピネフリン(アドレナリン)(mcg/kg/分)×100
+フェニレフリン(mcg/kg/分)×100
+ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)(mcg/kg/分)×100
=合計変力物質スコア
たとえば、Hoffmanら、Circulation(2003年)107巻:996~1002頁を参照されたい。変力物質スコアの減少は、肯定的な術後転帰となる。
胸腔チューブ使用期間:外科チームによって胸腔チューブが中止される前の、時間単位の合計術後期間および胸腔チューブドレナージのcc単位の合計容量を記録することができる。胸腔チューブドレナージの術後期間および/または合計体積が、比較群に比べて減少すれば、肯定的な術後転帰となる。
集中治療室(ICU)滞在期間:ICU滞在期間は、(1)患者に、非ICU区域に移せる状態になっていると医師チームが許可を与えるまで、ICUまたはICUステップダウンベッドで過ごした合計術後日数として、および(2)患者が、機械式人工呼吸器または継続的な静脈内変力物質もしくは血管拡張薬補助のいずれかを必要とした合計術後時間数としての2つの方法で算出され得る。これらいずれかの尺度によるICU滞在期間の短縮は、肯定的な術後転帰となる。
入院期間:入院期間は、病院を退院するまでの合計術後日数として算出することができる。入院期間の短縮は、肯定的な術後転帰となる。
生存:術後28日の生存と、病院を退院して家に戻る生存の両方を記録することができる。手術から28日後の生存の増加は、肯定的な術後転帰となる。
血行力学的改善:心拍数、全身動脈血圧、O飽和度、CVP、およびPAPを含む血行力学的データは、血漿シトルリンレベルの低下によりeNOSが脱共役される結果としての、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の重症度または発生率の指標としてモニターすることができる。
加えて、血行力学的改善および術後肺血管緊張(PVT)は、患者の状態の改善、たとえば、血漿シトルリンレベルの低下によりeNOSが脱共役される結果としての心肺バイパスによって誘発される肺傷害の重症度または発生率が低減していること、の指標として使用することができる。脂質過酸化(perodixation)最終産物およびタンパク質カルボニル基は、酸化的損傷の尺度として使用することができる。さらに、尿を始めとする体液中の過酸化水素を使用して、酸化的損傷を検出することもできる。たとえば、HalliwellおよびWhiteman British Journal of Pharmacology(2004年)142巻:231~255頁を参照されたい。
本発明者らは、驚いたことに、静脈内シトルリン送達によって、先天性心臓欠陥の修復を受ける小児対象における機械的換気および変力療法の術後の必要の減少によって証明されるとおり、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症が緩和されることを発見した。
たとえば、シトルリンが与えられた患者では、プラセボが与えられた患者に比べて、機械的換気の継続期間が短縮され、心拍出量を補助するための変力物質の使用期間が短縮され、血管作動性薬物療法併用による処置の継続期間が短縮され、全般的な呼吸器補助の必要が少なくなった。本明細書に記載の方法に従ってシトルリンが与えられた患者は、陽圧換気と変力療法の複合継続期間が、プラセボが与えられた患者より短くなった。本明細書に記載の方法に従ってシトルリンが与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より早めに集中治療室(ICU)を退院できる状態になっていた。さらに、全体の病院滞在期間も、シトルリンで処置された患者では、プラセボで処置された患者に比べて短かった。
理解を明確にする目的で、本発明について、説明および例によって多少詳しく述べてきたとはいえ、添付の請求項の範囲内で、ある特定の変更および改変を行ってもよいと理解すべきである。上記の開示を考慮して理解され、または本発明の日常的慣行または履行によって、外科学、生化学、医学、生理学、および/または関連分野の当業者に明白となる、本発明を実施するための上記の形態の改変は、以下の請求項の範囲内にあるものとする。
本明細書において言及するすべての刊行物(たとえば、非特許文献)、特許、特許出願公開、および特許出願は、本発明が属する分野の当業者の技量のレベルを示すものである。そのようなすべての刊行物(たとえば、非特許文献)、特許、特許出願公開、および特許出願は、個々の各刊行物、特許、特許出願公開、または特許出願について、参照により援用されることが詳細かつ個別に示されたかのように、同じ程度に参照により本明細書に援用される。
本明細書に含まれる実施例は、説明のためのものであって、いかなる限定の目的もなく提供される。
(実施例1)
アルギニン、シトルリン、および血漿ニトレートレベルならびにPPHNのリスク
PPHNを発症した新生児は、PPHNのない乳児に比べて、アルギニン、シトルリン、および血漿ニトレートレベルが低かった。10人の新生児において、変法Griess反応を使用して血漿NO代謝産物(NOx)を測定しており、5人がPPHN+であり、5人がPPHN-であった。PPHN+症例の方が、平均NOxレベルが有意に低かった(p=0.006)(図4)。PPHNを有する新生児の方が、アミノ酸分析において、血漿アルギニンおよびシトルリンレベルが有意に低かった(図4)。この2群間の他の個々のいかなるアミノ酸のレベルにも有意差はなかった。対象の数が少なすぎたため、NOxおよびアミノ酸レベルと遺伝子型との間の関係を評価することはできなかった。このデータは、PPHNを有する乳児では、尿素回路中間体および産物が減少していることを示している。
(実施例2)
先天性心臓欠陥を矯正するための心肺バイパスを受けた乳児および小児における尿素回路機能
心臓手術を受けた乳児および小児における術後肺血管緊張の増大および尿素回路機能の状態の有病率を研究した。先天性心臓欠陥を矯正するために6種の特定の外科的手順のうちの1つが必要となった169人の乳児および小児を、20か月間にわたって前向き研究を行った。表1を参照されたい。親の同意を得た後、すべての患者から、手術前に、遺伝子型用に血液を採取し、5つの異なる時点(術前、手術直後、術後12時間、24時間、および48時間)で、アミノ酸分析用に血液を集めた。ステージIノーウッド(Stage I Norwood)を受けた患者を除くすべての患者を、20mmHgを超える平均PA圧力であると定義される術後肺血管緊張増大(PVT+)についてモニターした。ステージIノーウッドを受けた乳児は、妥当な全身圧で60%未満の動脈血飽和度に利用されるNO吸入の臨床的必要があった場合、PVT+であると定義した。
表2に、6種の手順それぞれについての平均年齢および心肺バイパス曝露の期間を示す。169人の患者のうち56人(33.1%)に、術後肺血管緊張増大の臨床的証拠が現れた(PVT+)。こうした患者の多くは、鎮静、麻痺、および過換気を含めて、臨床的介入を必要とした。33人の患者は、NO吸入によって処置された(NO+)。
Figure 0007236384000002
心臓手術を受けた乳児および小児は、術後肺血管緊張の増大および尿素回路機能の状態を示した。
心肺バイパスが尿素回路機能に及ぼす影響
心肺バイパスによって尿素回路機能およびNO利用能が低下するかどうかを試験するため、周術期の尿素回路中間体および血漿一酸化窒素代謝産物を分析した。周術期の5時点で、169人の患者それぞれから血漿試料を集め、Beckmann 7300アミノ酸分析器(Beckmann、Palo Alto、CA)を使用する、陽イオン交換クロマトグラフィーによって分析した。アルギニンおよびシトルリンを尿素回路フラックスの一次マーカーとして使用した。Griess変法試薬を用いた比色アッセイを利用して、血漿一酸化窒素代謝産物レベルを、NO利用能の間接的な尺度として使用し、540nmでの吸光度を読み取った。すべての患者に、自身の心臓欠陥を矯正するための心肺バイパスが必要であった。研究集団内では、心肺バイパスによって、すべての術後時点における平均アルギニンレベルが、術前レベルに比べて有意に低下した(図5)。平均シトルリンレベルにおいても同様の低下が認められた(図6A~B)。血漿NO代謝産物レベルも、手術直後には低下したが、12および24時間の時点で部分的なリバウンドを示した後、48時間の時点で術前レベルに戻った(図7)。対照的に、尿素回路に関与しない総アミノ酸に対するバイパス術の影響はなかった。尿素回路に関与しないアミノ酸には影響が及ばなかったため、このデータからは、尿素回路機能およびNO基質合成に対する影響が、手術後約48時間まで存続しうることが示唆される。
術後PVT増大(PVT+)をその後生じた患者では、PVT増大なし(PVT-)の患者に比べて、血漿アルギニンレベルの低下が確認された。図8。シトルリンおよびNO代謝産物については、同様の所見が確認されなかった。
線形回帰を使用したところ、心肺バイパスの期間は、術後時点のいずれにおいても、血漿シトルリンおよびアルギニン、NO代謝産物レベルに対していかなる影響も示さなかった。
臨床的結果の概要
この研究は、先天性心臓欠陥の矯正に使用される心肺バイパスによって、尿素回路機能の有意な低下が引き起こされ、一酸化窒素合成の前駆体の利用能も大きく低下することを示している。先天性心臓欠陥の外科的矯正に使用される心肺バイパスによって、尿素回路における一酸化窒素前駆体の利用能、および血漿NO代謝産物によって間接的に測定される一酸化窒素レベルの、かなり有意な低下が引き起こされた。尿素回路に関与しないアミノ酸には影響が及ばなかったため、尿素回路機能およびNO基質合成に対する影響は、手術後48時間まで存続しうる。術後肺血管緊張が増大している患者は、正常な緊張の患者より、アルギニンレベルが有意に低下していた。
別の研究からは、術後肺血管緊張の増大のリスクが、CPSI T1405N遺伝子型の影響下にあったことが示された。手術から48時間後、アルギニンレベルは、CPSI T1405N遺伝子型の間で有意に異なっていた。
(実施例3)
静脈内シトルリン補充によって、血漿アルギニンレベルは上昇する
静脈内シトルリンの安全性および血清アルギニンレベルに対するその効果を、子ブタにおいて評価することを目標とした。目標最小体重が4kgである5~21日齢の合計9頭のDurocブタを利用した。すべての子ブタに、麻酔を導入し、気管開口術を施した。中心線を大腿動脈および大腿静脈に置き、血行力学を継続的にモニターした。シトルリン(静脈内600mg/kg)を5頭の子ブタに投与した。対照動物には食塩水を与えた。シトルリン投与の前、および投与からの各時間後に、血清アミノ酸を採取した。
血清アルギニンレベルは、静脈内シトルリン投与後1~2時間の時点でピークに達し、その後3時間ベースラインを上回って維持したままとなり、すべての時点で、対照に比べて有意性が得られた(p<0.001)。血行力学的不安定性は観察されなかった。表3~4を参照されたい。
Figure 0007236384000003
Figure 0007236384000004
したがって、シトルリンを静脈内投与すると、血漿シトルリンおよびアルギニンレベルの上昇が持続する。これは、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の発症を予防することにおいて有益となる。
(実施例4)
先天性心手術を受ける小児における周術期の経口シトルリン補充
この研究の目的は、吸収を評価し、静脈内シトルリンへの潜在的代替手段としての経口シトルリンの安全性を実証することであった。上で明らかにした5つの外科的診断の1つを有する40人の患者を無作為化して、プラセボに対して、5用量の経口シトルリン(1.9グラム/kg)を与えた。1回目の用量は、手術の直前に投与し、2回目の用量は、手術後小児ICUに到着して直ちに投与し、続いて3回分の用量を12時間毎に投与した。血漿シトルリンレベルは、シトルリン群において有意に高く(26μmol/Lに対して36μmol/L、p=0.013)、妥当な吸収が証明された。
Figure 0007236384000005
本研究は、術後肺高血圧(PHTN)の発生率への影響を検出するために十分な検出力がなかったが、しかし、血漿シトルリンレベルが37μmol//Lを超える患者は、肺高血圧を発症しなかった。これは、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の後遺症の発症を予防することにおいて有益となる。
(実施例5)
手術中のシトルリンの投与
最初の目標は、特定の先天性心臓欠陥の外科的修復を受ける小児における3種の用量の静脈内シトルリンの安全性および薬物動態を試験することであった。静脈内シトルリン投与には、理論上、全身性動脈低血圧のリスクがあった。平均動脈圧の有害な低下を、ベースラインからの20パーセントを超える低下であると定義した。ベースラインの術後平均動脈血圧は、術後の投与または注入の施行直前の30分間に5分毎に集めた平均動脈血圧測定値の平均として算出した。次いで、48時間の研究期間のいずれかの時点でその20%の低下に達した場合にアラームを発するよう、ベッドサイドモニターを設定した。
選択された当初の用量は、先行動物研究からのデータに基づき、200、400、および600mg/kgであった。当初の研究デザインは、3種の用量およびプラセボ対照を使用する4群研究であった。5人の患者が参加し、データ安全性および監視委員会(DSMB)モニターは、有害作用は確認されなかったものの、これらの用量で得られる血漿レベルが非常に高いことを即座に指摘した。その後、その研究デザインを、50mg/kgから始めて用量を50mg/kgきざみで漸増させる非盲検用量漸増試験に変更した。各患者に、心肺バイパスの開始後に手術室で1用量と、4時間後に集中治療室で1用量の、2用量を与えた。データを図9A~Cに要約する。
患者6および8は、50mg/kgの静脈内シトルリンが与えられ、ピークシトルリンレベルがおよそ220μmol/Lであり、4時間のトラフレベルが40μmol/Lであった。有害な副作用は確認されなかった。このトラフは、80~100μmol/Lの目標範囲を下回っており、その後用量を増やした。患者9および10は、100mg/kgの静脈内シトルリンが与えられ、ピークシトルリンレベルが375μmol/Lであり、4時間のトラフが50μmol/Lであった。ここでも、有害な副作用は確認されなかった。このトラフも、80~100μmol/Lの目標範囲を下回っており、その後用量を増やした。患者13~16は、150mg/kgの静脈内シトルリンが与えられ、ピークシトルリンレベルが660μmol/Lであり、4時間のトラフが80μmol/Lであった。この4時間トラフは、80~100μmol/Lの目標範囲にあり、これ以上の用量漸増は行わなかった。これら3種の用量のシトルリンの薬物動態プロファイルを図10に要約する。
半減期は、およそ85分になると算出されたが、これは、間欠的投与を進めるには短すぎた。薬物動態モデリング後、その研究デザインを変更して、心肺バイパス時に手術室で投与される150mg/kgのボーラス用量に続き、4時間後に、9mg/kg/時間の持続注入を48時間行うことにした。別の9人の患者が参加した。観察的コホートにおける患者(-静脈内シトルリン)と比較した、研究患者(+静脈内シトルリン)におけるシトルリンおよびアルギニンの平均血漿レベルを、図11A~Bに示す。
1件の重大な有害事象があったが、静脈内シトルリンの使用とは関係がなかった。その患者は、AVSD修復からおよそ8時間後に、全身性低血圧より前に起こったのでない徐脈性停止(bradycardic arrest)に陥った。この患者は、48時間の緊急ECMO支援を必要とし、その後完全に回復し、入院22日目に自宅へと退院した。DSMBは、この症例を再調査し、重大な有害事象は、シトルリン投与と関係がないようであると判定した。
このデータに基づき、静脈内シトルリンが安全であること、および心肺バイパスにおいて手術の冒頭で投与される150mg/kgのボーラスに続き、4時間後に9mg/kg/時間の持続注入を行う組合せによって、術後の肺血管緊張および血漿シトルリンの十分な供給を維持できることが確認された。
(実施例6)
先天性心手術を受ける小児における周術期の静脈内L-シトルリン薬物動態
静脈内シトルリンの単回ボーラス用量のクリアランスおよび最適な投与頻度を確認するために、50、100、および150mg/kgの3種の濃度の静脈内シトルリンを使用する用量漸増設計を利用した。シトルリンの用量は、手術室において、カニューレ挿入および心肺バイパス開始直後に投与した。全体としての目標は、最初の用量から4時間後まで、100μmol/Lまたはこれより高い持続シトルリンレベルを実現することであった。4時間の時点は、外科的手順の完了を可能にし、術後、患者がさらなる投薬の前に集中治療室(ICU)に戻れるように選択した。複合的なシトルリンデータを図12に示す。
このデータから、4時間のレベルが100μmol/Lに近くなったため、150mg/kgが最適な用量であることが確認された。静脈内シトルリンのいずれの濃度の投与からも、低血圧を始めとする有害作用はなかった。
しかし、上のデータから、静脈内シトルリンのボーラス用量の半減期が、およそ60~90分であり、ICU環境においてでも実際的でない、少なくとも4時間の投薬が必要となることも明らかになった。薬物動態モデリングから、およそ100μmol/Lの持続シトルリンレベルは、心肺バイパスが開始された後に手術の冒頭で投与される150mg/kgのボーラス用量の静脈内シトルリンに続き、4時間後に9mg/kg/時間の持続注入を行うことによって実現できることが示唆された。このレジメンのPKモデリングを図13に示す。
次いで、CPBの際の手術室での150mg/kgのボーラス用量と、初回ボーラス用量から4時間後にPICUにおいて術後に開始される9mg/kg/時間の持続注入を組み合わせた、この改訂したプロトコールを使用する患者が登録された。シトルリンデータは、9人の患者から入手可能であり、図14A~Bに示している。ここには、血漿シトルリンの妥当な供給の維持が示されている。
(実施例7)
静脈内シトルリン研究
実施した静脈内シトルリン研究は、主要な臨床転帰を、2つの処置群間(シトルリン対プラセボ)の術後の機械的換気の期間、第2には、術後肺高血圧の発生率とした、無作為化プラセボ対照二重盲検研究であった。
ヴァンダービルト小児病院(Vanderbilt Children’s Hospital)において、合計77人の患者が登録された。患者は、手術スケジュールに基づきスクリーニングされた。このスケジュールに基づき、この研究に含まれる計画された5種の心臓手術の1つを受ける患者をスクリーニングした(DSMBの勧告で、ノーウッド手順を受ける患者を今回は除外した)。
この研究は、より大規模な多施設無作為化プラセボ対照試験に備えて中止された。こうした77人の患者からのデータを分析すると、シトルリンが与えられた大多数は、主として、心肺バイパス中に行われる血液濾過によるシトルリンの除去のせいで、100μmol/Lの治療的持続性目標血漿シトルリンレベルに達していなかったことが明らかになった。こうした血液濾過技術は、研究中に変更されており、研究者らは、こうした変更を承知していなかった。
(実施例8)
心臓手術のためのシトルリン投与のプロトコール
当初の薬物動態モデルは、閉鎖系を想定していた。手術中に有意な代謝および尿量が存在しない中で、モデルは、当初のシトルリンボーラスによって得られる治療的レベルが、手術の継続期間中維持されるものと想定していた。しかし、研究過程における早期の不明な時点で、潅流手法が変わって、手術の間終始、積極的な限外濾過および晶質交換が組み込まれた。これは、限外濾過によって、循環からシトルリンが効果的に除去された結果、シトルリンレベルを再調査すると、治療的な薬物レベルを達成していた患者が事実上存在しなかったことを意味した。
限外濾過および晶質置換にもかかわらず治療的なシトルリンレベルを実現し、維持するように設計された、改訂した投薬プロトコールを試験するために、この実施例における研究に着手した。この薬物動態評価項目は、達成されていたようであるが、このデータ提示は、二次的評価項目として評価された有効性パラメーターに注目している。研究には、11人の等しい数の患者として、それぞれプラセボ群とシトルリン群に無作為化された、22人の患者が補充された。
結果
研究過程の早期に、2箇所の参加施設の一方が、すべての患者から、心肺バイパスを中止した後直ちに、手術室において型通りに抜管していたことが認められた。これによって、機械的換気の継続期間を評価項目として使用することが不可能になった。その代わりとして、すべての形態の換気補助の継続期間を可能な評価項目として使用して、事後分析を適用した。図15は、プラセボ対照群において、人工呼吸器時間の分布が概ね二峰形であり、幾人かの小児が、長時間呼吸補助を受けたままであることを示している。対照的に、シトルリンで処置された小児は、1つのアウトライアーを除き、単峰形の分布を示し、呼吸補助継続期間が短縮された。プラセボ群とシトルリン群間の差に、有意性は得られなかったが、Satterthwaite検定を適用すると、強い傾向(strong trend)が示された。対照的に、図16に示す分割表分析では、境界線上の有意性が得られた。全体として、結果は、強い傾向を表していると考えられる。
Figure 0007236384000006
心血管パラメーターからは、さらなる識見が得られる。図17は、シトルリン患者が、予想外に、特にICU入院後15~18時間以降、著しくより良好な変力物質スコアを示したことを示している。収縮期血圧は、シトルリン群において、バイパス術中止からおよそ20時間後に始まる緩やかな一過性の上昇を示したが、拡張期圧は、2群間で本質的に同一であった。図18A。平均動脈圧は、シトルリン群において、図18Bにおいて示されるとおり、収縮期圧の変化を反映する、わずかな一過性の上昇を示した。収縮期血圧上昇および動脈圧上昇の一過性の性質を考えると、収縮期血圧の上昇によって、変力物質が必要になる可能性は予想されるよりも低いことが示唆される。
全呼吸補助の継続期間は、先天性心臓手術修復の合併症となる急性肺高血圧を予防するためのシトルリンの研究にとって、実行可能な評価項目であるようである。血行力学的パラメーターに対する有害作用は認められなかった。
(実施例9)
シトルリン製剤
滅菌シトルリンは、アルギニンの細菌(Streptococcus faecalis)発酵に続く分離および抽出ステップからなる工程を利用して、まず非滅菌バルク粉末として製造することができる。次いで、非滅菌バルク粉末を復元し、内毒素低減および滅菌濾過ステップに続いて、無菌環境中での結晶化、乾燥、および微粒子化にかける。次いで、滅菌バルク粉末を、「原料」としてガラスバイアルへの無菌充填に使用して、使用前に滅菌希釈剤で復元される最終薬物製品が製造される。
注射用シトルリンの各滅菌バイアルは、約300mgの滅菌シトルリン粉末を含有してよい。各バイアルは、6mLのUSP注射用滅菌水で復元することができ、約5.9mLのUSP0.9%塩化ナトリウムでさらに希釈して、12mLの体積、かつ300mg/12mL=25mg/1mLの濃度に等しいものが作られる。典型的な患者注入物は、約25mg/mLの濃度で投与される、0.9%塩化ナトリウムUSP中のものであり得る。
(実施例10)
先天性心臓欠陥の外科的修復のために心肺バイパス(CPB)を受ける小児および乳児への静脈内L-シトルリン投与の薬物動態(PK)および安全性
先天性心臓欠陥の外科的修復のために心肺バイパス(CPB)を受ける小児および乳児への静脈内L-シトルリン投与の薬物動態(PK)および安全性を確認するために、多施設フェーズIB単盲検無作為化プラセボ対照研究を実施した。
研究の主たる目標は、心房中隔欠損(ASD)および/または心室中隔欠損(VSD)または部分的もしくは完全な房室中隔欠損(AVSD)の外科的修復を受ける小児における経過観察の間に、周術期に与えられる静脈内(IV)L-シトルリン送達の改訂したプロトコールによって、シトルリンが投与される群において100μmol/Lを超える血漿シトルリンレベルが実現されたかどうかを確認すること、およびそれをプラセボ群におけるシトルリンレベルと比較することであった。
安全性目標は、シトルリンの安全性プロファイルをさらに分析することであり、二次的な目標は、術後の臨床転帰に対するシトルリンの影響を確立することであった。
22人の患者が登録し、処置を受けた。患者は、CPBの開始時に始める固定投薬プロトコールに従って、術後48時間まで、または動脈ラインの除去まで、研究薬物またはプラセボの注入を受けた。研究への参加は、退院時または28日目のどちらか先に訪れる時点で終了した。投薬レジメンは、長期の血液濾過にもかかわらず血漿シトルリンレベルが維持されるように設計された。
22人の患者が登録され、処置を受けた。CPBの開始時に、患者に150mg/kgの静脈内シトルリンボーラスまたはプラセボを与えたのに続き、CPB中に使用される濾過または血液濃縮置換液に、200μmol/Lの濃度のL-シトルリンまたはプラセボを加えた。CPBからのカニューレ抜管から30分後に20mg/kgのシトルリンボーラスを投与したのに続き、直ちに、9mg/kg/時間のシトルリンまたはプラセボの持続注入を48時間行った。研究への参加は、退院時または28日目のどちらか先に訪れる時点で終了した。
血漿シトルリン濃度レベルを一次PK変数とし、これらを、周術期の7時点において集めた血液試料で評価した。二次PK変数を、同じ試料セットにおけるアルギニンおよび一酸化窒素(NO)代謝産物の濃度とした。PK値を群間で比較した。
CPBの開始時に、対象に150mg/kgの静脈内シトルリンボーラスまたはプラセボを与えたのに続き、CPB中に使用される濾過または血液濃縮置換液に、200μmol/Lの濃度のL-シトルリンまたはプラセボを加えた。CPBからのカニューレ抜管から30分後に20mg/kgのシトルリンボーラスを投与したのに続き、直ちに、9mg/kg/時間のシトルリンまたはプラセボの持続注入を48時間行った。
主要な安全性評価には、年齢別制限(age-specific limit)を使用して臨床上有意な低血圧を同定するための血行力学的モニタリングを含めた。有害事象情報を集め、術後の出血を記録した。
さらなる安全性評価、検査室評価、および臨床評価をベースラインから退院まで行い、二次的な臨床変数に、術後の機械的換気、全呼吸補助の継続期間、血行力学的改善、心エコー図による術後PVT、血清クレアチニンおよび肝臓酵素、変力物質スコア、胸腔チューブ使用期間、集中治療室滞在期間、入院期間、および生存を含めた。
研究結果の分析は、現在最終段階にあるが、すべての品質管理が完了していないわけではなく、このことは、以下のデータに軽微な変更が加えられる可能性があることを意味する。
やはり、以下で詳述する分析では、こうしたパラメーターそれぞれの長い方の継続期間から構成される複合的な変数を、集中治療室での滞在期間の代理手段として使用することがどちらかというと好ましいということが示された。ICU滞在の実際の継続期間は、とりわけ、時刻やベッドの利用可能性などの、無関係の変数による影響を受ける場合があるというのがこの、この好ましさの理由である。研究薬物が与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より、機械的換気および変力療法の複合的な継続期間が短かった。すなわち、複合的な代理手段マーカー変数によって評価されるとおり、研究薬物が与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より早めに、ICUから退院できる状態になっていた。図19において下方に示されるとおり、改訂した投薬プロトコールによって、100μmol/Lの目標レベルを一貫して上回る血漿シトルリンレベルが実現された。図20において示されるとおり、シトルリンが与えられた患者では、機械的換気の継続期間が短縮された。
機械的換気に関しては、現場間で、臨床診療に一部の差が確認された。一方の現場では、患者の抜管を、手術室において、そのような患者の抜管時間を記録せずに行う傾向があった。分析の目的で、そうした患者については、術後の機械的換気の継続期間をゼロに設定した。こうした患者を処置によって層別化すると、プラセボ群では6人のうち2人の患者(33%)だけであったのに比べて、静脈内L-シトルリンが与えられた6人全員の患者(100%)が、手術室で抜管されていたことが示された。
機械的換気の時間の長さと同様に、変力療法の継続期間でも、図21において示されるとおり、2つの処置群間に著しい差が示された。
図21において、データは、変力物質の使用開始時間と終了時間の間の時間として定義される。最初に測定されたスコアより前のすべての欠落または0の合計変力物質スコアは、0に設定され、したがって、変力物質に支えられているとはみなされない。ドーパミン、ドブタミン、ミルリノン、エピネフリン、フェニレフリン、およびノルエピネフリンに基づいて算出される合計変力物質スコアが考慮に入れられる。変力物質を使用していない患者の変力物質依存時間の長さは、0時間に設定される(打ち切りにしない)。
以前に言及したとおり、機械的換気の中止および変力療法の中止は、集中治療室を出られる状態になっていたことの2つの主な決定要因である。(各対象について)2つのパラメーター、すなわち、機械的換気または変力療法の継続期間の長い方から構成される複合的な変数は、集中治療室滞在期間の有効かつ正確な代理手段となりうる。図22は、シトルリン群とプラセボ群を比較する場合の複合的な変数の差を示すものである。研究薬物が与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より、機械的換気および変力療法の複合的な継続期間が短かった。すなわち、複合的な代理手段マーカー変数によって評価されるとおり、研究薬物が与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より早めに、PICUから退院できる状態になっていた。より短いPICU時間が示されることに加えて、機械的換気時間がより短いと、身体的な傷害の副次的リスクも低くなる。
この研究では、目標とされる血漿シトルリンレベルを実現することに加えて、22人の対象からなる小さい群における処置群と対照群間で、機械的換気および変力療法の継続期間に、シトルリン処置依存的な差を示す、統計的に有意およびほぼ有意な結果も得られた。
術後の侵襲的な機械的換気の継続期間は、心肺バイパスからの分離から気管内抜管までの時間による期間として得られた。抜管後24時間以内に患者に再挿管が必要となった場合、主分析では、再挿管時間を追加した。副分析には、再挿管時間を含めなかった。
再挿管時間を含めて、侵襲的な機械的換気の平均継続期間は、シトルリン処置群よりプラセボ群において明らかに長く、シトルリン処置患者には、平均で5時間の侵襲的換気しか必要でなかったが、プラセボ処置患者では37時間が必要であった(表8)。この差には、十中八九、プラセボ群における継続時間のばらつきが大きいことから、分散分析検定で統計的有意性が得られなかった。しかし、再挿管時間を除外すると、群間の差は依然として著しく、分散分析で統計的有意性が得られた(p=0.0317)。ウィルコクソンの順位和検定によって、両方の分析についての統計的有意性が示された。
陽圧換気および変力療法の中止は、集中治療室を出られる状態になっていたことの2つの主な決定要因である。まとめると、これらは、陽圧換気補助または変力療法の継続期間の長い方から構成される複合的な変数として、集中治療室滞在期間の有効な代理手段として働きうる。この後者の変数は、ベッドの利用可能性の欠如など、集中治療室滞在期間を偶発的に延長する場合がある、交絡因子の影響を受け易い。
要約すると、この研究からのデータは、施行された投薬レジメンによって薬物動態評価項目が達成されたことを示している。さらに、研究の試料サイズにもかかわらず、この研究では、機械的換気および変力療法の継続期間について、処置群と対照群間に、シトルリンに有利な、明らかな処置依存的な差が実証された。結果は、複合的な変数として組み合わせると、集中治療室を退院する時間について、シトルリンの臨床的に意義のある治療有効性を示している。したがって、この研究の結果から、静脈内シトルリン投与が、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の臨床的な後遺症を予防することにおいて有益な役割を果たしうることが示される。
(実施例10A)
薬物動態分析
CPB手順の間および後のシトルリン濃度レベルは、この研究における目的のPKパラメーターであった。静脈内シトルリンで処置された患者における目標レベルは、CPB直後の経過観察期間の間、100μmol/Lを超える血漿シトルリンレベルであった。血漿血収集は、周術期の7時点、すなわち、手術前のベースライン時、CPB中(ボーラス1後)、ならびに0時間(ボーラス2前)、6時間、12時間、24時間、および48時間の時点の手術/CPB後に行った。
各々の時点における平均およびメジアンシトルリン濃度を、表7において処置群ごとに要約する。データが入手可能であるすべての試料採取時間にわたって、シトルリン処置群における平均シトルリン濃度が、指定の100μmol/Lという下限を超えていたのに対し、プラセボ群における平均シトルリン濃度は、分析したすべての時点で、この閾値を下回っていた。注目されるのは、シトルリン群における高い平均ベースライン値(200.9μmol/L)である。この群における1人の患者(02-004)が、1919μmol/Lのベースラインシトルリンレベルを、すなわち、静脈内シトルリン処置前に示した。なぜベースラインシトルリンレベルがこの患者でそれほど高かったのかについて、入手可能な情報は存在しない。入手可能なデータは、ベースライン試料が、シトルリンでの最初の処置より前に採取されたことを示している。この群の他のすべての患者におけるベースラインシトルリン値は、それより著しく低く、8~42μmol/Lの範囲にあった。
Figure 0007236384000007
したがって、経時的なシトルリン濃度の変化を示すには、メジアンシトルリン値の方が適切である。術後と比較した、CPB手順中およびベースライン時のメジアンシトルリン値を、図19においてグラフで示す。シトルリン処置群におけるメジアンシトルリンレベルが、プラセボ群と比較して著しく上昇したことを、すべてのCPB後経過観察時点で認めることができる。
シトルリン処置群において採取された(ベースライン試料を除く)合計59の試料のうち5つだけが、100μmol/L以下の血漿シトルリンレベルを示した(表8)。比較すると、プラセボ処置患者から採取されたすべての試料において、シトルリンレベルは100μmol/L以下であった。シトルリン濃度のこの差は、統計的有意性が高かった(p=0.0006)。
Figure 0007236384000008
シトルリンは、アルギニンと一酸化窒素の前駆体である。試料採取時点それぞれにおけるアルギニン値および一酸化窒素値の概要を表9に示す。
Figure 0007236384000009
メジアン値は、図24Aおよび図24Bにもグラフで示している。シトルリンと異なり、シトルリン処置患者における血漿アルギニンは、最初のシトルリンボーラスの直後には、わずかしか上昇しなかった。アルギニンレベルのこの上昇の遅れは、おそらく、シトルリンがアルギニンの合成に利用可能になるのに必要となった時間を反映している。その結果として、ボーラス2前の時点では、シトルリン処置患者において、プラセボ処置患者と比較して顕著なアルギニンの上昇が示される。手術後、シトルリン群におけるアルギニンレベルは、60μmol/L付近で上昇したままであったが、プラセボ群では約30μmol/Lに低下した。
血漿一酸化窒素レベルは、処置群それぞれにおいて、試料採取時点にわたって、程度の差はあるが変化しないままであった。この結果は、一酸化窒素の産生が局所的な現象であるため、意外ではないといえる。シトルリンを加えると、局所的な厳格に調節されたNO産生が改善されることが予想されるが、しかし、増加は、モル基準では血流中に現れないことはほぼ確実である。
(実施例10B)
術後の侵襲的な機械的換気
術後の侵襲的な機械的換気の継続期間は、心肺バイパスからの分離から気管内抜管までの時間による期間として得られた。抜管後24時間以内に患者に再挿管が必要となった場合、主分析では、再挿管時間を追加した。副分析には、再挿管時間を含めなかった。
プラセボ群における1人の患者だけに、再挿管が必要となった。この患者(02-011)は、CPBの終了後4日目に最初に抜管されたが、翌日再挿管され、さらに6日間挿管されたままとなった。
再挿管時間を含めて、侵襲的な機械的換気の平均継続期間は、シトルリン処置群よりプラセボ群において明らかに長く、シトルリン処置患者には、平均で5時間の侵襲的換気しか必要でなかったが、プラセボ処置群では37時間が必要であった(表10)。この差には、十中八九、プラセボ群における継続時間のばらつきが大きいことから、分散分析検定で統計的有意性が得られなかった。しかし、再挿管時間を除外すると、群間の差は依然として著しく、分散分析で統計的有意性が得られた(p=0.0317)。ウィルコクソンの順位和検定によって、両方の分析についての統計的有意性が示された。
Figure 0007236384000010
カプラン・マイヤー生存分析によって、シトルリン群において、侵襲的な機械的換気の継続期間がプラセボ群に比べて短縮されたことが確認された。図25A~Bは、2つの処置群についての機械的換気の継続期間を、再挿管時間を含めて示すものである。現場02では、患者の抜管を手術室(OR)において行う傾向があり、そうした患者について抜管の時間を一般に記録していなかった。興味深いことに、現場02においてORで抜管された8人の患者のうち6人がシトルリン処置を受けており、プラセボが与えられていたのは2人だけであった。最初の分析では、こうした患者についての術後の機械的換気の継続期間をゼロに設定し、換気時間がゼロであるすべての患者を打ち切りにした(図25A)。副分析では、換気時間がゼロである患者を打ち切りにしなかった(図25B)。両方の分析において、ログランク検定に基づいて、処置群間の統計的有意差が示された(それぞれ、p=0.0498およびp=0.0089)。
1人の患者における再挿管時間を除外した、侵襲的な機械的換気の継続期間についてのカプラン・マイヤー曲線を、図26A~Bに示す。結果によって、シトルリンがプラセボ処置に優っていることが確認され、両方の分析において、シトルリンに有利な統計的有意性が示された。
(実施例10C)
全呼吸補助
全呼吸補助の分析は、研究期間中に必要となった、侵襲的および非侵襲的ないずれの呼吸補助も含む。シトルリン処置群における呼吸補助の平均合計継続期間は、プラセボ処置群における継続期間の半分より短く、その差は、統計的に有意であった(表11)。
Figure 0007236384000011
シトルリンがプラセボ処置に優っていることを確認するカプラン・マイヤー生存プロットを、すべての患者(打ち切りなし)について、また打ち切りにされた呼吸補助なしの患者について、図27A~Bに示す。
(実施例10D)
変力物質依存時間の長さおよび変力物質スコア
静脈内変力物質依存時間の長さは、手術後に最初に使用した時間から、48時間の時点で研究薬物療法が完了するまで記録に残され、すなわち、変力物質使用期間は、この分析においては最長48時間であった。手術後48時間目で依然として変力物質が与えられていた患者は、打ち切りとした。静脈内(IV)変力物質の平均使用期間は、シトルリン群において、プラセボ群より明らかに短かった(表12)。しかし、処置間の差について、統計的有意性は得られなかった。
Figure 0007236384000012
静脈内(IV)変力物質依存時間の長さについての生存分析プロットを、図28A~Bに示す。主カプラン・マイヤー分析では、48時間目で依然として変力物質を使用している患者を打ち切りとしたが、追加の打ち切りは適用しなかった(図27A)。副分析では、変力物質使用なし、すなわち、変力物質時間=0の患者も打ち切りとした(図27B)。両方の分析において、シトルリン群とプラセボ群間で、変力物質使用期間に著しい差が示された。シトルリン処置がプラセボ処置に優っていることは、いかなる追加の打ち切りもない主分析において、統計的に有意であった(p=0.0351、ログランク検定)。
第3のカプラン・マイヤー分析は、静脈内変力物質使用期間がゼロである患者を省いて行った。結果は、時間=0を打ち切りとした集団全体についての結果と同一であった。術後のすべての静脈内(IV)変力物質の使用を集約する合計変力物質スコアは、シトルリン群において、プラセボ群に比べて著しく低かった(表13)。変力物質スコアの差は、分析した全手術後時間にかけて明白であった(図29)。合計変力物質スコアに基づく、変力物質使用におけるシトルリンの優位性は、反復測定分散分析において統計的に有意であった(p=0.0438)。
Figure 0007236384000013
(実施例10E)
血管作動性薬物療法
ニトログリセリン、ニトロプルシド、およびバソプレシンを含む血管作動性薬物療法依存合計時間数を、手術の終わりから、血管作動性薬物療法の中止または研究薬物療法の終了(48時間目)のどちらかが先に生じる時点まで算出した。表14では、シトルリン処置群とプラセボ処置群について、血管作動性薬物療法依存時間の長さが比較される。併用血管作動性処置の全体としての継続期間は、シトルリン処置患者の方がプラセボ処置患者より短かったが、その差は、統計的に有意でなかった。合計血管作動性スコアについても、同様の結果が示されている。しかし、図30において示されるとおり、シトルリンが与えられた患者が示した血管作動性薬物療法の合計継続期間は、実際に、より短かった。
Figure 0007236384000014
(実施例10F)
ICU滞在期間
ICU滞在期間は、ICUで過ごした合計術後時間数として1回、患者に術後の機械式人工呼吸器または継続的な静脈内変力物質もしくは血管拡張薬補助が必要となった合計術後時間数として1回分析した。後者のパラメーターの組合せは、ICU滞在の別の代理手段評価項目を表わす。
どちらの定義を使用しても、プラセボで処置した患者では、シトルリンで処置した患者より、ICU滞在期間が明らかに長かった(表15)。プラセボ群における1人の患者について、再挿管の時間を除外しても、シトルリン処置患者におけるICU滞在期間は、プラセボ処置患者の期間の約半分程度の長さでしかなかった。処置間の差の統計的有意性が、ウィルコクソン検定において示された。
Figure 0007236384000015
最長継続期間の定義に従う、合計PICU滞在期間ならびにICU滞在期間のカプラン・マイヤープロットを、図31および図32A~Bに示す。特に、ICU滞在の最長継続期間定義の生存分析によって、シトルリンがプラセボに優ることが確認され、両方の分析において統計的有意性が示された。
(実施例10G)
複合評価項目
陽圧換気および変力療法の中止は、集中治療室を出られる状態になっていたことの2つの主な決定要因である。これらを複合的な変数として組み合わせると、ICU滞在期間についての追加の有効な代理手段評価項目として働く。
複合評価項目は、陽圧換気補助または変力療法の継続期間の長い方を含むものとした。変力物質使用は、手術後48時間目(研究薬物療法処置の終わり)までしか記録が残されなかったため、48時間目まで変力物質使用が続けられ、機械的換気継続期間が48時間以下である患者を、この時点で打ち切りとした。機械的換気が48時間の時点を超えて継続された場合、機械的換気のその継続時間を分析において使用した。
表16に、追加の機械的換気のために再挿管を必要としたプラセボ群における1人の患者についての再挿管時間を含めるおよび除外する複合評価項目についての結果を要約する。侵襲的な機械的換気と変力物質要求の組合せについても、シトルリンがプラセボ処置に比べて明らかに優っていた。処置間の差は、ウィルコクソンの順位和検定において統計的に有意であった。
Figure 0007236384000016
再挿管時間を含めたおよび除外したこの複合評価項目のカプラン・マイヤープロットを図33に示す。両方の分析において、変力物質使用が48時間の時点でもなお続いており、機械的換気が48時間未満である患者を打ち切りとした。両方の分析において、シトルリン処置患者には、プラセボ処置患者より統計的に有意に少ない機械的換気または変力物質しか必要とならなかった。
(実施例10H)
入院期間
入院期間は、病院を退院するまでの合計術後日数として算出した。平均入院期間は、シトルリンの方がプラセボ処置群より短かったが、しかし、その差は統計的に有意でなかった(表17)。
Figure 0007236384000017
実施例10A~10Hについての薬物動態および臨床転帰
実施例10A~10HにおけるPKおよび臨床転帰分析の結果は、統計的に有意な結果を示し、または本明細書に記載のプロトコールを使用して、血漿シトルリンレベルを維持し、その結果として、心肺バイパス肺傷害の発生率および重症度を低減できることを裏付ける強い傾向として示された。本明細書に記載の方法によって、シトルリンが与えられた患者において100μmol/Lを超える目標血漿シトルリンレベルが実現された。機械的換気の継続期間は、シトルリンが与えられた患者において、プラセボが与えられた患者に比べて短縮された。心拍出量を補助するための変力物質の使用期間は、シトルリンが与えられた患者において、プラセボが与えられた患者に比べて短縮された。併用血管作動性薬物療法を伴う処置の全体としての継続期間は、シトルリン処置患者の方がプラセボ処置患者より短かった。全般的な呼吸補助の必要は、シトルリン処置群では、プラセボ処置群に比べて低かった。研究薬物が与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より、陽圧換気および変力療法の複合的な継続期間が短かいことが示された。すなわち、複合的な代理手段マーカー変数によって評価されるとおり、シトルリンが与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より早めに、ICUから退院できる状態になっていた。これは、ICU滞在期間の分析、ならびに機械的換気、静脈内変力物質使用、または血管拡張薬使用の最長継続期間の分析においても示された。同様に、全体の入院期間も、シトルリン処置患者では、プラセボ処置患者に比べて短かった。
周術期に与えられる静脈内L-シトルリン送達の施行を含む本明細書に記載の方法によって、心房中隔欠損(ASD)および/または心室中隔欠損(VSD)または部分的もしくは完全な房室中隔欠損(AVSD)の外科的修復を受けている小児における経過観察の間に、100μmol/Lを超える血漿シトルリンレベルを実現する。加えて、シトルリン処置によって、予想外にPVTが低下し、その結果として、先天性心臓病変の外科的修復と関連する術後の侵襲的な機械的換気の延長の必要が低減される。
結果は、投与された用量(ボーラスおよび注入)の静脈内シトルリンによって、目標レベルを上回る高い血漿シトルリンレベルの持続が実現されたことを示している。分析したすべての試料採取時点にわたって、シトルリン処置群における平均シトルリン濃度が、指定の100μmol/Lという下限を超えていたのに対し、プラセボ群における平均シトルリン濃度は、分析したすべての時点で、この閾値を下回っていた。シトルリン濃度が目標レベルを上回った試料の数の差には、シトルリン処置に有利な高い統計的有意性(p=0.0006)があった。
本明細書に記載の方法に従ってシトルリンが与えられた患者は、機械的換気と変力療法の複合的な継続期間も、プラセボが与えられた患者より短かいことが示された。すなわち、複合的な代理手段マーカー変数によって評価されるとおり、研究薬物が与えられた患者は、プラセボが与えられた患者より早めに、ICUを退院できる状態になっていた。
一酸化窒素(NO)のレベルは、シトルリンまたはプラセボ処置の間、著しくは変化しなかった。この発見は、一酸化窒素の産生が非常に局所的であることによって説明をつけることができる。シトルリン処置は、局所的な厳格に調節されたNO産生を改善することが予想されるが、血流中でのNOの変化は記録できない可能性がある。
研究において収集された安全性データから、L-シトルリン投与が安全であり、この処置において、予想外のAEおよび/またはSAEが起こらないことが示された。シトルリン群のすべての患者(100%)およびプラセボ群の患者の73%が、処置中に出現したAEを少なくとも1回経験した。シトルリンで処置された患者において、最も頻繁なAEは、胸水(36%)、頻呼吸(27%)、高血圧(27%)、および低血圧(27%)であった。プラセボ群における最も頻繁なAEは、胸水(45%)、高血圧(36%)、結節調律(27%)、および嘔吐(27%)であった。死に至ったAE、SAE、および中止につながったAEは、報告されなかった。
胸腔チューブドレナージの長さおよび体積から示されるとおり、術後出血には、2つの処置群間で差がなかった。研究処置は、安全性の理由で調査された検査室パラメーターの大部分に対して、明らかな影響を有さなかった。処置開始後24時間までに、ASTレベルならびに総ビリルビン濃度が、両方の処置群において少なくとも2倍になったが、平均ALKPレベル。BUNは、プラセボ群では安定したままであったが、シトルリン群では、ベースラインから2日目にかけて増加した(p=0.0111)。
心拍数は、プラセボ群において、一貫してシトルリン群より高かった。酸素飽和度または全身動脈血圧に対して、処置が及ぼす注目すべき影響はなかった。全体として、この研究の結果は、本明細書に記載の方法に従うシトルリンの静脈内投与が、手術中にeNOS酵素の脱共役を防ぐことにより、CPBによって誘発される肺傷害の臨床的後遺症を予防することにおいて、有益な役割を果たしうることを示している。
前述の本発明について、この好ましい実施形態に関連して記載してきたが、本発明は、それによって限定されず、以下の請求項の範囲によってのみ限定される。

Claims (17)

  1. 患者における内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の共役を維持して、心肺バイパス手術中の患者におけるフリーラジカル生成による、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の発生率または重症度を低減するための組成物であって、該組成物は、シトルリンを含み、該手術前、該手術中、および該手術後に該患者に有効量のシトルリンが投与されることを特徴とし、該手術中に、該組成物が、該手術の開始時に100~500mg/kgのシトルリンで投与され、その後、該手術中に有効量のシトルリンが再度投与されることを特徴とし、該手術中に投与される該有効量のシトルリンが、濾過されたシトルリンを補充するに十分な有効量のシトルリンを含む血液濃縮置換液組成物であり、該有効量のシトルリンが、eNOSの脱共役を低減するのに十分な量であることを特徴とする、組成物。
  2. 前記有効量のシトルリンが、フリーラジカルの生成を低減するのに十分な量であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記有効量のシトルリンが、心肺バイパスによって誘発される肺傷害の発生率または重症度を低減するのに十分な量であることを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の組成物。
  4. 前記組成物が、前記手術より前に前記患者に投与され、該組成物が、該手術の12時間前に投与されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記手術が、心臓欠陥を矯正するためのものであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記心臓欠陥が、過剰な肺血流と関連付けられる心臓欠陥、心房中隔欠損、大きい心房中隔欠損、心室中隔欠損、非限定的な大きい心室中隔欠損(VSD)、単心室病変、グレンおよびフォンタン法によって修復される単心室病変、大動脈弁狭窄(AVS)、心房中隔欠損(ASD)、大動脈縮窄(CoA)、完全房室管欠損(CAVC)、d-大血管転位、エブスタイン奇形、I-大血管転位、動脈管開存(PDA)、肺動脈弁狭窄、単心室欠損、ファロー四徴症、総肺静脈還流異常(TAPVC)、総動脈幹症、または心室中隔欠損(VSD)である、請求項5に記載の組成物。
  7. 前記手術が動脈スイッチ手順であるか、または前記心肺バイパスが、部分的または完全な房室中隔欠損(AVSD)を修復するためのものであるか、または前記心肺バイパスが、一次孔心房中隔欠損(primum ASD)を修復するためのものである、請求項5または6に記載の組成物。
  8. 前記手術後に投与される前記組成物が、該手術後に12~48時間、100~500μmol/Lシトルリンの濃度においてであることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の組成物。
  9. 前記組成物が、100、150、200、250、300、350、400、450、または500μmol/Lのシトルリンの濃度で投与されることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
  10. 前記組成物が、3~12mg/kg/時間の投与速度で投与されることを特徴とする、請求項8または9に記載の組成物。
  11. 前記組成物が、経口、静脈内、吸入、またはこれらを組み合わせて投与されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
  12. 前記患者の血漿シトルリンレベルが、37、50、100、150、または200μmol/Lを超えて上昇することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
  13. 前記患者の血漿シトルリンレベルが、術後、37、50、100、150、または200μmol/Lを超えて上昇することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
  14. 前記患者が、早期産児、新生児、思春期直前の子供、青年、または成人であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
  15. 前記患者の集中治療室(ICU)滞在が短縮されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
  16. 前記患者のICU滞在が27日未満に短縮されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
  17. 前記患者が、急性右心不全、三尖弁閉鎖不全、全身性低血圧、心筋虚血、および気道抵抗の増大、または新生児遷延性肺高血圧(PPHN)のリスクにあるか、または術後肺高血圧のリスクにあることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
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