JP7235235B2 - 血液、血球又は凝固関連因子へ定量的にずり応力を加える剪断発生装置 - Google Patents
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これらの病因を引き起こす基礎疾患としては、(1)リンパ増殖性疾患や自己免疫疾患、(2)骨髄増殖性疾患(主に真性多血症並びに本態性血小板血症)やウイルムス腫瘍、(3)骨髄増殖性疾患、心臓弁膜症、補助人工心臓使用に伴う副作用、(4)甲状腺機能低下症などが挙げられる。
ずり応力は、粘度と血流速度に比例し、血管径に逆比例する応力である。高ずり応力下では、従来の静止系や閉鎖撹拌実験系で構築された古典的概念とは全く異なるメカニズムで血小板粘着・凝集反応が進行するので、血栓形成メカニズムの解析には血流・ずり応力の計測や制御は必須であると考えられる。(非特許文献1,2)
しかしながら、血液や血球に一定のずり応力をかけて、血液、血球、または凝固関連因子に該ずり応力のみが与える作用を独立して計測できるシステムは存在しない。
本発明は、血液、血球、凝固関連因子へのずり応力の作用を定量診断的に、解析・研究する剪断応力発生装置を提供することを課題とする。
本発明はまた、圧力と独立に、血液、血球、凝固関連因子へのずり応力の作用だけを解析することができる剪断応力発生装置を提供することを課題とする。
第一の血液収容部、
第二の血液収容部、
該第一および第二の血液収容部それぞれの流入口に接続されて第一および第二の血液収容部を連通する狭窄部、並びに、
該第一および第二の血液収容部に収容された血液を狭窄部に対し、気密に流出入させるための第一及び第二の可動部、を含み、
該第一の可動部が狭窄部に近づく方向に移動するときは第二の可動部は狭窄部から離れる方向に移動し、該第一の可動部が狭窄部から離れる方向に移動するときは第二の可動部は狭窄部に近づく方向に移動し、該第一および第二の可動部が往復運動することで、該血液を該狭窄部に往復させて、血液又は血液成分にずり応力を負荷することを特徴とする。
本発明の剪断応力発生装置、および
VWF高分子量マルチマー解析装置を含むことを特徴とする。
本発明の剪断応力発生装置を用いてインビトロで血液に剪断応力を負荷する工程、および
剪断応力が負荷された血液を用いてVWF高分子量マルチマーの分解を解析する工程、を含むことを特徴とする。
本発明に係る装置は、新しい治療法評価試験装置であり、血液試料に対して流体力学的剪断負荷を与え、剪断ストレスによって活性化する血液成分の変化プロセスを阻害する薬理学的有効性評価を可能とする。
図1の剪断応力発生装置は、第一の血液収容部1と、第二の血液収容部2と、第一および第二の血液収容部1,2それぞれの流入口に接続されて第一および第二の血液収容部1,2を連通する狭窄部3と、第一および第二の血液収容部1,2に収容された血液をそれぞれ狭窄部3に気密に流出入させるための第一及び第二の可動部4,5を備える。
第一の血液収容部1および第二の血液収容部2の少なくとも一方には血液が収容される。第一の可動部4が狭窄部3に近づく方向に移動するときは第二の可動部5は狭窄部3から離れる方向に移動し、第一の可動部4が狭窄部3から離れる方向に移動するときは第二の可動部5は狭窄部3に近づく方向に移動し、該第一の可動部4および第二の可動部5が往復運動することで、血液収容部1,2内の血液が狭窄部3を往復し、血液又は血液成分にずり応力が負荷される。すなわち、図1の場合、第一および第二の可動部がそろって左方向へ、次いで右方向へと移動し、往復運動することで、血液が狭窄部内を往復移動し、血液又は血液成分にずり応力が負荷される。
狭窄部3は第一および第二の血液収容部1,2を気密に連通する細管であるが、その内径は、血液に負荷するずり応力の大きさに応じて、任意に設計することができる。これにより、様々な圧力やずり応力を血液に負荷することができる。狭窄部3の内径は、好ましくは0.1~1.0mmであり、より好ましくは0.2~0.8mmである。内径を変化させることで様々なずり応力を負荷することができる。なお、狭窄部の内径は一様でもよいし、途中で変化してもよい。狭窄部の長さは特に制限はないが、例えば、1mm~10cmである。
また、狭窄部としては、これを介して該機構を組み合わせることができるものであれば、特に制限されない。狭窄部の具体例としては、所定のゲージの注射針を挙げることができる。
図2に、本発明の剪断応力発生装置の簡易的な一実施形態とその使用態様の模式図を示す。図2は、2本の注射器を1本の注射針で組み合わせ、ピストンの移動により血液を注
射針内に往復させているものである。
図3の剪断応力発生装置は、第一の血液収容部1と、第二の血液収容部2と、狭窄部3と、第一及び第二の可動部4,5を備え、さらに、該第一及び第二の可動部を駆動する駆動部6、および該駆動部を制御する制御部7を含む。
第一及び第二の可動部4,5は駆動部6に接続され、駆動部6は制御部7に接続されている。
また、狭窄部3は、その内部を血液が流通自在となるように設けられており、該血液収容部1から血液収容部2へ、または該血液収容部2から血液収容部1へと、該狭窄部3を経由して血液が流通する。血液が狭窄部3を流通する際に、該狭窄部3において血液にずり応力が加えられる。
血液収容部1,血液収容部2は、狭窄部3の一端および他端それぞれに接続されている。可動部4,可動部5はそれぞれ駆動部6に接続され、駆動部6は制御部7に接続されている。例えば、血液収容部1から狭窄部3に血液が流入するときには、可動部4は狭窄部3に近づく方向に移動し、可動部5は狭窄部3から離れる方向に移動し、血液は狭窄部3を通過して血液収容部2内に流入する。一方、血液収容部2から狭窄部3に血液が流入するときには、可動部5は狭窄部3に近づく方向に移動し、可動部4は狭窄部3から離れる方向に移動し、血液は狭窄部3を通過して血液収容部1内に流入する。このように、可動部4,可動部5は互いに反転位相となるように制御部で制御される。
すなわち、該制御部7は、前記第一及び第二の可動部4,5の移動速度を同期するように制御することが好ましい。第一及び第二の可動部4,5の移動速度が同期することで、狭窄部3を往復して通過する血液に圧力とは独立に一定のずり応力を負荷することができ、生体内での血流下のずり応力をより精度よく再現することができる。
さらにまた、本発明によれば、収容部と可動部とを備える機構を二つ以上組み合わせ、該機構を、同期し、または、独立にコントロールすることで、様々な圧力とずり応力を血液に付加することができる、剪断応力発生システムを提供することができる。
さらにまた、本発明によれば、収容部と可動部とを備える機構を二つ以上、狭窄部を介して組み合わせ、該機構を、同期し、または、独立にコントロールし、かつ、狭窄部の内径を適宜設計することで、様々な圧力とずり応力を血液に付加することができる、剪断応力発生システムを提供することができる。
子量マルチマーを解析できるようとしたものであってもよい。該装置の具体例としては、例えば、ゲルの電気泳動装置と、抗VWF抗体を用いたウェスタンブロッティング装置と、を組み合わせたものが挙げられる。
以下、本発明の方法によるVMF高分子量マルチマーの解析方法の一例を説明するが、以下の方法に限定されるものではない。
ずり応力の値は、狭窄部の内径や血液の流速などにより調節することができる。
血液試料は希釈されてもよいし、抗凝固処理されたものでもよい。
血液試料はまた、薬剤が添加されたものとすることができる。薬剤が添加されたものとされていないものとを共に解析することで、剪断応力によるVWF高分子量マルチマーの分解に対する薬剤の効果を評価することができる。
単離される血液試料は特にどの血管から単離されたものでもよいが、試料の入手しやすさから、末梢血を用いることが好ましい。
血液試料は単離後すぐに剪断応力負荷試験に供してもよいし、血漿として凍結保存したのち、解凍して剪断応力負荷試験に供してもよい。
このうち、VWF高分子量マルチマーとしては、ウェスタンブロッティングで得られるvWFのマルチマーのバンドパターンにおいて、最も低分子量側から数えて11番目以上のバンドとして検出されるマルチマーと定義することができる。ここで、当該11番目のバンドはvWFの22量体である。
て算出することができるが、この方法に限定されるものではない。
高分子量マルチマーの全vWFマルチマーに対する割合(高分子量マルチマーの存在比)は、例えば、血液試料をアガロースゲル電気泳動で分離した後に、タンパク質をPVDF膜やニトロセルロース膜に転写し、抗vWF抗体を用いたウエスタンブロットによりvWFを染色して得られるvWFマルチマーのバンドパターンを画像解析することによって算出することができる。
具体的には、ImageJ(NIHから入手可能)などの画像処理ソフトを使用して、11番目以上のバンドの濃さの合計と、全てのバンドの濃さの合計と、をそれぞれ算出し、前者を後者で除することによって、VWF高分子量マルチマーの全vWFマルチマーに対する割合を得ることができる。
また、薬剤を添加した血液を用いて本発明の装置を用いてずり応力を負荷し、vWFの高分子量マルチマー解析を行い、薬剤を添加しない場合の結果と比較することにより、当該薬剤がVWFマルチマーの分解を抑え、AVWSの治療薬となりうるかの指標とすることができる。
ずり応力(τ)=4μV/r
μ:粘度、V:平均流速、r:内径
なお、クエン酸処理血液、および、クエン酸処理血液+ADAMTS13抗体A10の粘度は、いずれも2.0mPa・sであった。
流速、粘度、および内径から計算したずり応力は216dyne/cm2であった。
なお、ADAMTS13の活性を阻害するADAMTS13抗体を加えた場合には、VWF高分子量マルチマーの分解が起こらなかったため、剪断応力でVWFの分解部位が露出し、ADAMTS13によって分解を受けるという生体内メカニズムが確認できた。このことは、ADAMTS13の活性を阻害する薬剤など、VWF高分子量マルチマーの分解を阻害する薬剤の評価やスクリーニングに本発明の装置及び方法が使用できることを示している。
2:第二の血液収容部
3:狭窄部
4:第一の可動部
5:第二の可動部
6:駆動部
7:制御部
8:圧調節バルブ
Claims (10)
- 第一の血液収容部、
第二の血液収容部、
該第一および第二の血液収容部それぞれの流入口に接続されて第一および第二の血液収容部を連通する狭窄部、
該第一および第二の血液収容部に収容された血液を狭窄部に対し、気密に流出入させるための第一及び第二の可動部、並びに、
前記第一及び第二の可動部を駆動する駆動部、および該駆動部を制御する制御部であって、第一及び第二の可動部の移動速度を同期するように駆動部を制御する制御部、
を含み、
該第一の可動部が狭窄部に近づく方向に移動するときは第二の可動部は狭窄部から離れる方向に移動し、該第一の可動部が狭窄部から離れる方向に移動するときは第二の可動部は狭窄部に近づく方向に移動し、該第一および第二の可動部が往復運動することで、該血液を該狭窄部に往復させて、血液又は血液成分にずり応力を負荷することを特徴とする、剪断応力発生装置。 - 前記狭窄部はその内径が0.1~1.0mmである、請求項1に記載の剪断応力発生装置。
- 前記狭窄部は内部の表面粗さRaが1~100μmとなるように表面処理されている、請求項1または2に記載の剪断応力発生装置。
- 第一の血液収容部、
第二の血液収容部、
該第一および第二の血液収容部それぞれの流入口に接続されて第一および第二の血液収容部を連通する狭窄部、並びに、
該第一および第二の血液収容部に収容された血液を狭窄部に対し、気密に流出入させるための第一及び第二の可動部、を含み、
該第一の可動部が狭窄部に近づく方向に移動するときは第二の可動部は狭窄部から離れる方向に移動し、該第一の可動部が狭窄部から離れる方向に移動するときは第二の可動部は狭窄部に近づく方向に移動し、該第一および第二の可動部が往復運動することで、該血液を該狭窄部に往復させて、血液又は血液成分にずり応力を負荷することを特徴とする、剪断応力発生装置、および
VWF高分子量マルチマー解析装置を含む、
剪断応力による血液中のVWF高分子量マルチマーの分解を解析するためのシステム。 - 前記剪断応力発生装置の狭窄部はその内径が0.1~1.0mmである、請求項4に記載の剪断応力による血液中のVWF高分子量マルチマーの分解を解析するためのシステム。
- 前記剪断応力発生装置の狭窄部は内部の表面粗さRaが1~100μmとなるように表面処理されている、請求項4または5に記載の剪断応力による血液中のVWF高分子量マルチマーの分解を解析するためのシステム。
- 前記剪断応力発生装置は、さらに、前記第一及び第二の可動部を駆動する駆動部、および該駆動部を制御する制御部を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の剪断応力による血液中のVWF高分子量マルチマーの分解を解析するためのシステム。
- 前記剪断応力発生装置の制御部は、第一及び第二の可動部の移動速度を同期するように駆動部を制御する、請求項7に記載の剪断応力による血液中のVWF高分子量マルチマーの分解を解析するためのシステム。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の剪断応力発生装置または請求項4~8のいずれか一項に記載のシステムを用いてインビトロで血液に剪断応力を負荷する工程、および
剪断応力が負荷された血液を用いてVWF高分子量マルチマーの分解を解析する工程、を含む、剪断応力による血液中のVWF高分子量マルチマーの分解を解析する方法。 - 前記血液は薬剤が添加された血液であり、該血液に剪断応力を負荷し、VWF高分子量マルチマーの分解を解析することにより、剪断応力によるVWF高分子量マルチマーの分解に対する薬剤の効果を評価する、請求項9に記載の方法。
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