JP7235105B2 - 点群解析装置、推定装置、点群解析方法、およびプログラム - Google Patents

点群解析装置、推定装置、点群解析方法、およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、点群解析装置、推定装置、点群解析方法、およびプログラムに係り、特に、3次元点からなる点群から、線状構造物をモデル化する点群解析装置、推定装置、点群解析方法、およびプログラムに関する。
電力や通信インフラ設備は膨大な数が存在しており、その設備の安全性を確保するために、企業や自治体はその設備の保守保全業務を定期的に行う必要がある。例えば、電柱点検項目では、電柱の劣化変形として、ひびの発生状況やたわみの量を確認する。たわみとは、ケーブルによる引っ張り荷重が不平衡なとき(合力の大きさが0にならない)、つまり特定の方向に大きな力が加わっている場合に、電柱の形状が曲がる変形を意味する。たわみや屈曲の状況が進行すると、最終的には倒壊するおそれがある。これを防ぐためにも、定期点検では電柱のたわみやひびの状況を確認しつつ、さらにたわみを発生させる原因となる引張荷重を定期的に確認する必要がある。
ここで、電柱に加わる引張荷重について、ケーブルの弛度をもとに算出する技術がある(非特許文献1)。この技術は弛度とケーブルの密度、ケーブルの端点位置をもとに、端点位置での水平張力を算出できる。また、端点位置におけるケーブルの接線方向から、引張張力も算出可能である。
しかしながら、従来この弛度を計測するために、現地で作業をする必要があった。所外設備は膨大な数が存在し、設備が存在する範囲が広範囲であるため、その保守保全業務の稼働量は大きいという問題がある。
一方、近年では、モバイルマッピングシステム(MMS(Mobile Mapping System))と呼ばれるカメラやレーザースキャナを搭載した車が、街中を走行することで道路周辺の構造物である建造物や道路などの物体の表面の形状を計測できるシステムの利用が普及しつつある。このシステムは、GPS(全地球測位システム)やIMS(慣性計測装置)を用いて物体の表面を3次元の座標情報として記録できる。この技術を利用して、インフラ設備の状態を自動推定することへの活用が期待されている。ここで、3次元の座標情報とは、現実空間における位置と対応した、3次元の座標情報であり、座標情報での相対的位置が、現実空間における位置関係と対応している。
MMSを屋外で走行し、レーザ計測することでインフラ構造物(以下、被写体とよぶ)の表面形状をミリ単位の精度で記録することができ、非特許文献2のように、ケーブルを2次曲線(カテナリ曲線や放物線曲線など)近似することで、計測した点群の欠損の有無にかかわらず、正確に弛度の値を算出することが可能となる。
この技術では、計測した点群からケーブル上の点群を検出し、そのケーブル上の点群に対して、2次曲線モデルをあてはめることで、ケーブルの形状をモデルパラメータとして推定することができる。推定したモデル形状において、端点を結んだ線分とモデルとの鉛直方向(Z軸方向)における差分値の最大値が、弛度として求まる。2つの端点のZ軸方向の値が違う場合、斜め弛度とも呼ばれるが、以下においては全て弛度と表現する。
計測した点群情報から、点群を手動操作により計測することで弛度を求めることもできるが、欠損した位置での弛度は計測できない。しかし、モデル化することで、計測点群の欠損だけでなく、部分的な位置に生じたMMSの大きな計測誤差の影響に頑健に弛度を推定することができる。計測誤差とは、例えば、レーザ計測した点群については、車両が振動していることに起因した数センチ単位の計測誤差や空気中の水滴や砂埃などのノイズにより生じるものである。
山本、金子、大和、"架空送電線の弛角測定用クリノメータ"、日立評論 39(3), 1957-03, URL:http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1957/03/1957_03_11.pdf G. Sohn, Y. Jwa, and H. B. Kim, AUTOMATIC POWERLINE SCENE CLASSIFICATION AND RECONSTRUCTION USING AIRBORNE LIDAR DATA, SPRS Ann. Photogramm. Remote Sens. Spatial Inf. Sci., I-3, 167-172, 2012
しかしながら、市街地内に配線されたケーブルは、引込線や中間分岐などが連結されていることもあり、ケーブル自体にも引っ張り荷重が生じているために形状がカテナリやパラボラ曲線等の2次曲線の形状から乖離してしまう。図1は、レーザ計測した点群に対してカテナリ曲線あてはめ時の推定弛度d1、変形したケーブルの実際の弛度d2を示したイメージ図である。図1のAとBとは電柱に連結されたケーブルの2つの端点を表し、実線の丸はレーザ計測された点群を表す。図1において、一点鎖線は、引込線からの張力(集中荷重)がないときのケーブルの形状を表す。図1に示すように変形を考慮せずに、計測された点群にモデル当てはめをして弛度d1を推定し、その弛度をもとに張力を計算してしまうと、誤った張力が求まってしまう。つまり、引張荷重などの集中荷重が生じている場合には、従来技術の手法では誤った弛度と張力が算出される。
本発明は、上記事情を鑑みて成されたものであり、変形したケーブルの形状を考慮して精度よく弛度および張力を推定することができる点群解析装置、推定装置、点群解析方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の態様に係る点群解析装置は、物体上の3次元点からなる点群から求められた、ケーブルを表す2次曲線モデルを含むワイヤモデルについて、前記ワイヤモデルをウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域を複数設定する注目領域設定部と、前記注目領域の各々について、前記注目領域に含まれる点群および前記2次曲線モデルに基づいて、前記第一の領域に関する情報と、前記第二の領域に関する情報とを比較して、前記注目領域の前記第一の領域および前記第二の領域の分割位置が、前記ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出し、前記注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、前記2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する境界点検出部と、を含んで構成されている。
第2の態様に係る点群解析方法は、注目領域設定部が、物体上の3次元点からなる点群から求められた、ケーブルを表す2次曲線モデルを含むワイヤモデルについて、前記ワイヤモデルをウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域を複数設定し、境界点検出部が、前記注目領域の各々について、前記注目領域に含まれる点群および前記2次曲線モデルに基づいて、前記第一の領域に関する情報と、前記第二の領域に関する情報とを比較して、前記注目領域の前記第一の領域および前記第二の領域の分割位置が、前記ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出し、前記注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、前記2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する。
第3の態様に係るプログラムは、コンピュータに、物体上の3次元点からなる点群から求められた、ケーブルを表す2次曲線モデルを含むワイヤモデルについて、前記ワイヤモデルをウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域を複数設定し、前記注目領域の各々について、前記注目領域に含まれる点群および前記2次曲線モデルに基づいて、前記第一の領域に関する情報と、前記第二の領域に関する情報とを比較して、前記注目領域の前記第一の領域および前記第二の領域の分割位置が、前記ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出し、前記注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、前記2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する、ことを実行させるためのプログラムである。
第4の態様に係る推定装置は、2点の間に貼られたケーブルのたるみを変形させる力が加えられている前記ケーブル上の位置を推定する推定装置であって、前記位置の候補を基準とし、前記基準より一方側の領域に含まれる第一領域と、前記基準より他方側の領域に含まれる第二領域と、から前記位置の候補が前記位置である度合を算出する算出部を有し、前記度合は、前記第一の領域から推定される前記第二の領域と前記第二の領域の誤差、前記第二の領域から推定される前記第一の領域と前記第一の領域の誤差の少なくとも一方、に基づき求められる、ように構成されている。
本発明の点群解析装置、推定装置、点群解析方法、およびプログラムによれば、変形したケーブルの形状を考慮して精度よく弛度を推定することができる、という効果が得られる。
変形したケーブルの実際の弛度d2を示したイメージ図である。AとBとはケーブルの端点を表し、実線の丸は3次元点を表す。 二本の電柱間に架かったケーブルの弛度を表す一例を示す図である。 変形したケーブルの例として、集中荷重による変形を誇張表現したイメージ図である。 2つの領域ごとにケーブルをモデル化する例として、一点鎖線が領域の境界となるイメージ図である。 2つの領域ごとに弛度を算出する例を示す図である。 ケーブル上に設定した注目領域の位置における分割境界度のイメージ図である。 第1の実施形態に係る点群解析装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。 注目領域で分割された第一の領域および第二の領域の一例を示す図である。 2次曲線モデルごとの注目領域の設定範囲の一例を示す図である。 第1の実施形態の境界点検出部の構成の一例を示す図である。 分割境界点位置での端点間の位置関係を示す図である。 点群解析装置として機能するコンピュータの一例を示す概略ブロック図である。 第1の実施形態に係るプログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。 第1の実施形態に係る分割境界度の算出の処理の流れの一例を示すフローチャートである。 第2の実施形態に係る点群解析装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。 第2の実施形態の境界点検出部の構成の一例を示す図である。 第2の実施形態に係る分割境界度の算出の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る手法は、検出した点群から、電柱間に架かったケーブルの弛度を推定するための技術である。弛度とは、ケーブル支持点と電線のなす曲線の最低点との高さの差(距離)である。弛度をもとにして電柱に加わる水平張力を推定することが可能となる。なお、点群は一例であり、他の検出対象でも適用可能である。
まず、本発明の実施の形態の前提となる弛度の推定の原理について簡単に説明する。
図2は、二本の電柱間に架かったケーブルの弛度を表す一例を示す図である。
図2に示すように、弛度により電柱にかかる荷重を可視化する。単位長さあたりの荷重[N]をW、支持点間の水平距離をS[m](ケーブルを地面に射影したときの長さ)とすると、以下(1)式における弛度d[m]を測定することで水平張力T[N]を算出できる。カテナリ曲線について、原点付近でテイラー展開するとき、パラボラ(放物線)曲線として十分近似できることが知られており、弛度dは次の(1)式で求まる。
Figure 0007235105000001

・・・(1)
なお、水平張力Tは以下(2)式で近似できる。
Figure 0007235105000002

・・・(2)
ここで、d’とは、S’をケーブル上の任意の2点A’とB’の水平距離(地面XY平面へ射影したときの距離)としたときの、A’B’を結んだ線分とケーブルの斜め弛度を意味する。つまり、S’=(S/2)の値を入力することで、任意のA’B’の位置で計測した弛度からも、端点ABに加わる張力を推定することを意味する。
しかしながら、図3に示すようにケーブルに外部から荷重が加わる場合には、ケーブルの形状がカテナリ形状から変形してしまう。図3は、変形したケーブルの例として、集中荷重による変形を誇張表現したイメージ図である。電柱間のケーブルをMMSで検出した点群に、懸垂線(カテナリ)モデルをあてはめても、あてはめ精度が悪い。つまり、図1に示したように、あてはめたモデルと実際のケーブルの形状とに乖離が生じており、カテナリモデルから推知した弛度を用いると、正しい水平張力を算出することはできない。
水平張力を求める(2)式は、ケーブルの自重以外の引き込み線等の力(集中荷重)の影響によるケーブルの形状の変形を考慮しておらず、集中荷重が加わる場合には弛度推定式として適用できない。
そこで、本発明の実施の形態では、集中荷重による変形を考慮して、任意のケーブルの形状に対応できるように、区分的になめらか(微分可能)で、かつ連続した複数の曲線モデルとしてケーブルを表現する。張力がかかる部分を境界として変形した形状が発生するため、本発明の実施の形態においてはケーブルをその境界位置前後で領域を分割して、分割した領域ごとに2次曲線としてモデル化することで、そのモデルをもとに集中荷重の発生箇所を特定して弛度および張力を推定する。
つまり、変形の原因である張力が発生する位置(以降、分割境界点と呼ぶ)をもとにケーブルを分割し、分割された領域ごとに曲線モデルで近似を行う。図4は、2つの領域ごとにケーブルをモデル化する例として、一点鎖線が領域の境界となるイメージ図である。
図5は、2つの領域ごとに弛度を算出する例を示す図である。集中荷重位置Qを原点として、地面に平行な軸をX、垂直(鉛直)方向の軸をYとし、これらの区間ごとに推定した弛度をもとにして、以下のようにして水平張力を算出する。
図5の左側の領域について、ケーブル形状は次の(2-1)式であらわされる。
Figure 0007235105000003

・・・(2-1)
端点Aでの原点からの距離L1と弛度d2とを入力すると、下記(2-2)式が導かれる。
Figure 0007235105000004

・・・(2-2)
同様に図5の右側の領域について、ケーブル形状は次の(2-3)式、(2-4)式であらわされる。
Figure 0007235105000005

・・・(2-3)
Figure 0007235105000006

・・・(2-4)
また、原点Qでの力のつり合いを考えると次の(2-5)式が成り立つ。
Figure 0007235105000007

・・・(2-5)
これらの式を整理すると、AB間距離S(=L1+L2)として、水平張力Tと弛度d0は次の(2-6)式で求まる。
Figure 0007235105000008

・・・(2-6)
この式より、張力Tについて、集中荷重位置Qと集中荷重の大きさPを求めることで、算出することが可能である。しかし、現場作業中に集中荷重Pを計測することが難しいことも多く、その場合には、集中荷重Pと位置Qを同時に求める必要がある。
集中荷重Pの大きさが不明な場合、点群にあてはめた2次曲線モデルの形状から推定する。集中荷重の位置Qを原点としたケーブル形状の式について、tanθと荷重Wと張力Tをα、βとした一般化した式で書くと下記(2-7)式で表現できる。
Figure 0007235105000009

・・・(2-7)
この係数αは、集中荷重が発生したあとのケーブルの形状変形量の影響を表しており、係数βは集中荷重が発生したあとの各領域におけるケーブルの自重による変形量の項目を表している。これは、この式の係数が直接求まれば、集中荷重Pの大きさが未知でも、張力と弛度が直接推定可能なことを意味する。
つまり、ケーブルを計測した3次元点群を平面ABQ上に射影したときの座標値x,yから、直接係数αとβとを求めればよい。係数については、数値解析により回帰問題として解けることが知られている。例えば、最小二乗法やRANSACなどの処理により求めることができる。
領域2に着目し、推定した係数をα、βと表現すると、弛度dおよび水平張力Tは次の(3-1)式、(3-2)式で求まる。
Figure 0007235105000010

・・・(3-1)
Figure 0007235105000011

・・・(3-2)
以降では、原点とした位置Qの求め方について詳細な説明を記載する。
以上示したように、張力推定時にはケーブルの領域を分割することが重要であるが、本発明の実施の形態において、領域として分割する際の境界位置を以降では分割境界点とよぶ。ケーブルの張力計算に必要な弛度を算出する際に、ケーブルについて張力が発生する位置分割境界点が無いかを探索し、その探索結果をもとにケーブルを区分的な連続曲線として表現して各区間での弛度を推定する。
以上の説明からもわかるように、2つの支持点と1つの集中荷重点(要は変形量)とがわかれば弛度および張力を推定することができる。前提として、変形はケーブルの分岐等によって、外部から力が加わることによって生じる。そのため、外部から力が加わっている箇所が推定できれば、変形量を推定することができるのである。従って、以下に説明する手法においては、外部からの力が加わっている箇所を分岐境界点とし、分岐境界点を探すために、任意の区間の隣接区間等から推定される任意の区間の形状らしさと、任意の区間の実際の形状と、の距離を指標とする。
図6は、ケーブル上に設定した注目領域の位置における分割境界度のイメージ図である。電柱間に張られたケーブルで、かつ2か所の引張荷重により変形をしているケーブルについて、分割境界点の存在する可能性の大きさとケーブル位置との関係を模式的に表した図である。
本発明の実施の形態では、荷重の発生位置において分割境界度が高くなるような指標として、分割境界度を求める。具体的には、図6のように、ケーブル上の注目位置Qを境界として設定した2つの領域において、それぞれの領域内でのモデルパラメータを推定し、各領域内のパラメータの相関が低いほど分割している可能性(尤度)が高いと考える。図6に示すように、分割境界度は分割境界度のピーク(極大値)の位置が集中荷重位置となり分岐点が存在するようになる。
ここで、推定するモデルパラメータは、分割された領域の全てのモデルパラメータである。例えば、分割境界点が3つの場合は、4つのモデルが求まる。X,Y,Z座標値を持つデータ(点群)からモデルパラメータを求めているため、モデルパラメータは、結果として方向を含む概念である。モデルパラメータからは、鉛直方向とモデル(2次曲線の存在する平面)のなす角度、つまりモデルの水平面に対する傾き方向がわかる。また、モデルパラメータおよび地面点群があれば、地面からの最低地上高やその最低地上となる3次元位置も求めることができる。
引張荷重が生じていない場合、ある領域について着目したときに、2次曲線モデルで精度よく近似可能である。しかし、張力により変形した場合には、形状が乖離するために、一つの2次曲線モデルで表現できず、その位置を境界として曲線近似をする必要がある。そのため、領域を分けてモデル化した方が、近似精度が高くなるかどうかを調べることにより、分割境界点位置を推定することが可能となる。
また、変形が生じるためには、周辺にその原因となるケーブル(引き込み線)が計測されている可能性が高い。そこで、実施形態では、注目するケーブルだけでなく、周辺構造物の位置関係も考慮することで、より精度を高く分割境界度位置を推定する。
ここで、図4のように、境界点候補位置を境界として、ケーブルを2つの領域に分けずに2つの領域(一定の範囲)を設定する理由は、注目したあるケーブルについて、荷重が生じた位置が1つとは限らないからである。図6に示しているように、2つの分割境界点が存在する可能性も考慮して、領域を設定する必要がある。
[第1の実施形態]
<第1の実施形態に係る点群解析装置の構成>
図7は、第1の実施形態に係る点群解析装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、点群解析装置10が推定装置の一例である。
図7に示すように、点群解析装置10は、演算部20と、3次元データ記憶部12と、入力部14と、を備えている。
3次元データ記憶部12は、点群情報を記憶する装置である。ここで、3次元点群とは、固定レーザセンサやMMSのように移動体に搭載され、かつ、計測位置をスキャンしながら、物体上の3次元点を表す点群を計測されたデータを想定している。計測センサは、例えばレーザレンジファインダや、赤外線センサ、または超音波センサなど、被写体とセンサとの距離を測定可能な装置であればよい。
移動体に搭載された計測システムとは、例えばレーザレンジファインダを、GPSが搭載された車の上、もしくはGPSの搭載された飛行機に搭載し、移動しながら計測することで、屋外の環境の地物を被写体とし、例えば、ケーブル、建物、ガードレール、道路地面などであり、これら被写体表面の3次元位置を計測するシステムである。第1の実施形態においては、3次元データ記憶部12へ入力されるデータは、車上にGPSとレーザレンジファインダとが搭載されているMMSを用いて、被写体の物体の表面上の位置を計測した計測結果である3次元点群とする。第1の実施形態においては、被写体の物体は電柱、ケーブル、および電柱に係るその他の支線および電柱周辺に存在する構造物とする。
また、3次元データ記憶部12は、取得した点群から求められた、ケーブルを表すワイヤモデルの各々を保持している。
ワイヤモデルとは、3次元空間中に存在するN次多項式やスプライン曲線、または区分的に滑らかな連続な線とする。数学的には、一部区間に微分不可であるが、連続な線分を意味し、例えば原点で微分不可なy=|x|(絶対値)が該当する。
ワイヤモデルは、2つの端点を持つ連続線によってケーブルの中心軸として表現する。中心軸に2つの端点を決められ、かつ、一方の端点からの距離に応じた1つのみのパラメータを用いて、3次元位置やワイヤモデルの地上高などの物理的な値を一意に決められるモデルと定義する。ここで、ワイヤモデルにおいて、端点における始点と終点との区別は必要なく、中心軸上に2つ端点が設定できればよい。3次元点群について、例えば、非特許文献2によって、ワイヤモデルを検出することができる。以降、ケーブルについては太さを無視して、中心軸をワイヤモデルで表現されるものとし、点群から事前に検出されたワイヤモデルが3次元データ記憶部12に格納されているとし、ワイヤモデルにおいて分割境界点位置を検出する方法について記載する。
本発明の実施の形態において、ワイヤモデルとは、ある電柱区間に張られた1つのケーブルに対応する。すなわち、張力等により変形されたケーブルであろうと、変形されないケーブルであってもワイヤモデルで表現される。例えば、中間分岐ケーブルにより注目するケーブルが変形しているときには、そのケーブルは2つの2次曲線で表現される。この2つの2次曲線によりワイヤモデルは構成され、分割境界点位置において2つのモデル端点の3次元位置は一致するという制約がある。
例えば、変形されたケーブルについては、複数の2次曲線で構成されたワイヤモデルで表現され、変形がないケーブルについては、1つの2次曲線で構成されたワイヤモデルで表現される。構成される2次曲線の数は分割境界点により決定され、同一のワイヤモデルを構成する2次曲線は、連結位置において不連続である。つまり、ワイヤモデルは、1つの2次曲線、または複数の2次曲線で構成された、2つの端点を有する線分である。
入力部14は、マウスやキーボードなどのユーザーインターフェースであり、点群解析装置10で使用するパラメータを入力として受け付けるものである。パラメータは、例えば、予め求められた電柱位置およびケーブル位置等のモデルと点群とを照合するための情報である。また、入力部14は、計測情報を記憶したUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの外部記憶媒体でもよい。
演算部20は、注目領域設定部30、境界点検出部32、および推定部34を備えている。
演算部20では、3次元データ記憶部12に記憶されているワイヤモデルの各々について以下の処理を行う。
注目領域設定部30は、物体上の3次元点からなる点群から求められた、ケーブルを表す2次曲線モデルを含むワイヤモデルについて、ワイヤモデルをウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域を設定する。
ここで、注目領域とは、引張張力等によりケーブルが変形した位置を探索するための、ユーザが設定した一定の大きさの領域を意味する。具体的には、あるケーブルを表現したワイヤモデルの端点について、一方の端点から片方の端点の位置まで、注目領域を一定の間隔でずらしつつ注目領域を設定する。
2次元の画像解析処理でいえば、ウインドウサーチが対応する。本手法では、検出対象物の位置が不明なため、ユーザが設定した一定の領域ROI(Region of Interest)を、入力画像の様々な領域に設定することで対応する。本発明の実施の形態においては、分割境界点はケーブル上にあるため、ケーブルを表現するワイヤモデルの端点間において、このROIを設定すれば十分である。
図8は、注目領域で分割された第一の領域および第二の領域の一例を示す図である。図8に示すように、ケーブル上に注目位置Qについて、Qから距離dを注目領域Piと設定する。そして、注目領域Pを分割し、第一の領域pi1、および第一の領域pi2とする。図9は、ワイヤモデルごとの注目領域の設定範囲の一例を示す図である。図9に示すように、注目領域は端点から距離2d分を差し引いた範囲で設定する。
境界点検出部32は、注目領域の各々について、注目領域に含まれる点群およびワイヤモデルに基づいて、第一の領域に関する情報と、第二の領域に関する情報とを比較して、注目領域の第一の領域および第二の領域の分割位置が、ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出する。また、境界点検出部32は、注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する。
図10は、第1の実施形態の境界点検出部32の構成の一例を示す図である。図10に示すように、境界点検出部32は、分割領域誤差推定部40と、分割境界度算出部42とを含んで構成されている。
ここで、境界点検出部32により分割境界点を検出する原理について説明する。第1の実施形態では、以下の実現手法1または実現手法2で示される方法であり、注目領域P内でのケーブルの形状から求まる分割境界度を推定し、閾値処理により分割境界点として判定する。
例えば、第一の領域または第二の領域において求まる誤差を用いた以下の実現手法1と実現手法2とがあり、いずれの手法を用いても良い。第1の実施形態では、実現手法2を用いる。
実現手法1は、以下の(4)式に示すように、第一の領域および第二の領域の何れか一方から得られる2次曲線モデルで、他方の領域のケーブル形状を推定できる割合を表すモデル近似誤差Eとして分割境界度を求める。一方の領域から推定した2次曲線モデルにより、他方の領域のケーブル(ケーブル上の点群)形状を予測できるほど、相関が高いと考えられる。すなわち、2つの領域それぞれについて、他方の領域から求めた曲線モデルを用いた際の点群の近似誤差が大きいほど、分割境界度は大きいと出力される。
これは、一方の領域について他方の領域から形状を予測しにくいほど、分割境界度が高いことを意味する。つまり、一方の領域から他方の領域が推定できるほど、両方の領域に存在するケーブルの形状に相関がある、すなわち注目領域の境界点位置で変形が生じていないことを意味する。
位置Qにおける注目領域内の全ての点群をP、注目領域1内の点群をpi1、注目領域2内の点群をpi2とすると、分割境界度は次式Eで求まる。
Figure 0007235105000012

・・・(4)
ここで、
Figure 0007235105000013

は、第一の領域に含まれる点pi1と、第二の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルMi2との誤差である。言い換えれば、2次曲線モデルMi2から推定される第一の領域内の2次曲線と、第一の領域内の点pi1との誤差である。
Figure 0007235105000014

は、第二の領域に含まれる点pi2と、第一の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルMi1との誤差である。言い換えれば、2次曲線モデルMi1から推定される第二の領域内の2次曲線と、第二の領域内の点pi2との誤差である。
N2は、第二の領域に含まれる点群の数である。N1は、第一の領域に含まれる点群の数である。
実現手法2は、以下の(5)式に示すように、注目領域誤差から、第一誤差、および第二誤差の何れか大きい方を引いて、モデル近似誤差を求める。注目領域誤差とは、注目領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、注目領域に含まれる点群との誤差である。第一誤差とは、第一の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、第一の領域に含まれる点群との誤差である。第二誤差とは、第二の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、第二の領域に含まれる点群との誤差である。
Figure 0007235105000015

・・・(5)
中間分岐など大きな張力が発生して、注目するケーブルの変形量が大きいほど、注目領域誤差よりも第一誤差および第二誤差の方が小さくなる。(5)式についてMaxではなく、注目領域誤差から、第一誤差および第二誤差の平均を差し引くようにしてもよい。
第一誤差および第二誤差の何れか大きい方(maxの値)との差分をとる理由は、どちらか片方の領域に小さな付属品がある場合などに対処するためのである。この場合、片方の領域のみが近似誤差が小さくなり、注目領域誤差との乖離が大きくなることが考えられる。そのため、変形がほぼないにもかかわらず分割境界点があると判定することを抑制するために、平均値やmaxの値を用いて差分を算出している。変形有無について近似誤差から推定するためには、計測誤差および付属品等の影響を抑える必要がある。
上述したように、本実施の形態に係る分割領域誤差推定部40は、注目領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、注目領域に含まれる点群との誤差である注目領域誤差、第一の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、第一の領域に含まれる点群との誤差である第一誤差、および第二の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、第二の領域に含まれる点群との誤差である第二誤差を推定する。
分割境界度算出部42は、上記(5)式に従って、注目領域誤差と、第一誤差および第二誤差の何れか大きいほうとの差分であるモデル近似誤差に基づいて、分割境界度を算出する。
境界点検出部32は、分割境界度算出部42により注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、分割境界度のピークとなる位置を、2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点として検出する。
推定部34は、検出された分割境界点で分割されたケーブルについて、分割された領域ごとに2次曲線モデルが表すケーブルの弛度および張力を推定する。例えば、検出した分割境界点が2つであれば、ケーブルは3つの2次曲線によって表現される。分割されたケーブルの領域ごとに2次曲線モデルを推定し、推定されたモデルから弛度および張力を算出する。
以降、分割境界点位置により分割された各領域のケーブルのことをサブケーブルと呼び、それぞれのサブケーブルごとにサブケーブルに対応する2次曲線であるサブ2次曲線をあてはめて弛度を推定する。
ここで、分割境界点のQの位置を検出した後処理例として、サブケーブルモデルの推定方法について記載する。
ある注目ケーブルについて、分割境界点があった場合、かつ引込線等による集中荷重Pが未知であるときに、張力推定式の係数αとβとを求める必要がある。
サブケーブルにおけるサブ2次曲線のモデルパラメータは、従来技術により実施できる。ただし、それぞれの領域ごとにサブケーブルを検出してしまうと、領域内の計測データ(点群)の量が少なくなる分計測ノイズの影響を受けやすくなり、係数の推定精度が悪くなるという傾向がある。そこで、各領域について求めたサブ曲線モデルにおいて、分割境界点の位置では端点間の位置ずれがないようにするという制約つきのモデルあてはめを実施する。図11は、分割境界点位置での端点間の位置関係を示す図である。図11の破線の丸は推定した分割境界点Q(ワイヤモデル上の点)の位置である。
すなわち、分割境界点位置での隣接する2次曲線について、分割境界点Qの位置のずれ量が、非常に小さくなるような制約項を評価関数に設定してモデルパラメータを推定すればよい。
例えば、ある分割境界点位置Qとの位置との最短距離が閾値より大きい場合には、モデル評価関数の値が小さくなるようなペナルティ項Eを以下のように設定すればよい。
Figure 0007235105000016

・・・(6)
ここで、
Figure 0007235105000017

は領域1に存在する点群pi1(∈P)(総数N1個)と、曲線モデルM1との距離が閾値ε以下の場合は1、それ以外は0を出力する関数である。
Figure 0007235105000018

は領域2に存在する点群pi2(∈P)(総数N2個)と、曲線モデルM2との距離が閾値ε以下の場合は1、それ以外は0を出力する関数である。iは点を区別する番号、N1+N2は2つの領域内の点群Pの総数、
Figure 0007235105000019

は推定したモデルパラメータである。Eはペナルティ項を意味し、2つの曲線モデルM1とM2の分割境界点位置における位置qM1と位置qM2の距離がζ[m]の閾以上のときは負のマイナス無限大を出力する関数とする。評価関数Jは各領域の近似精度の高いモデルであり、かつ分割境界点位置においてモデル位置のずれが少ない2つのサブ曲線モデルを求めることができる。
ここで、注目領域の長さd[m]および閾値ζ[m]は実験的に決めるパラメータであり、本発明の実施の形態においてd=2.0、ζ=0.01とした。
図12は、点群解析装置として機能するコンピュータの一例を示す概略ブロック図である。点群解析装置10は、一例として、図12に示すコンピュータ84によって実現される。コンピュータ84は、CPU86、メモリ88、プログラム82を記憶した記憶部92、モニタを含む表示部94、およびキーボードやマウスを含む入力部96を含んでいる。CPU86、メモリ88、記憶部92、表示部94、および入力部96はバス98を介して互いに接続されている。
記憶部92はHDD、SSD、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶部92には、コンピュータ84を点群解析装置10として機能させるためのプログラム82が記憶されている。CPU86は、プログラム82を記憶部92から読み出してメモリ88に展開し、プログラム82を実行する。なお、プログラム82をコンピュータ可読媒体に格納して提供してもよい。
<第1の実施形態に係る点群解析装置の作用>
次に、図13を参照して、第1の実施形態に係る点群解析装置10の作用を説明する。なお、図13は、第1の実施形態に係るプログラム82による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
本第1の実施形態に係る点群解析装置10は、操作者の操作により点群解析処理の実行が指示されると、CPU86が記憶部92に記憶されているプログラム82を読み出して実行する。なお、以下の処理は、ワイヤモデルについて実行する。また、各2次曲線モデルについて実行する以下の処理は、プログラム82において並列して計算可能である。
まず、ステップS100では、注目領域設定部30が、3次元点群とケーブルを表現するワイヤモデル群と、入力部14から入力された予め求められたパラメータとを取得する。
ステップS102では、注目領域設定部30が、ワイヤモデルの始点と終点の間の領域について、ワイヤモデル上をウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域Pを設定する。注目領域Pは、2次曲線モデルの始点から終点までの間で定めた間隔Dstep[m]で移動するように設定する。ここで、Dstepは実験的に決めてよいパラメータであり、本実施の形態ではDstep=0.1とした。
ステップS104では、境界点検出部32が、注目領域の各々について、注目領域に含まれる点群および2次曲線モデルに基づいて、第一の領域に関する情報と、第二の領域に関する情報とを比較して、分割境界度を算出する。
ステップS106では、境界点検出部32が、2次曲線モデルについて終点(ワイヤモデル端点)まで分割境界度を算出したかを判定し、終点まで処理が終了していればステップS108へ移行し、終点まで処理が終了していなければステップS102に戻って次の注目領域Pを設定して処理を繰り返す。
ステップS108では、境界点検出部32が、ワイヤモデル上に注目領域を設定していき、各注目領域で求めた分割境界度から分割境界点を検出する。集中荷重の発生した位置での分割境界度が大きな値として出力され、注目領域Pの中心位置Qを分割境界点として検出する。ここで極大値とは、例えば、上記図6に示したようなピークとなる点である。
ステップS110では、推定部34が、検出された分割境界点で分割された領域からサブ2次曲線モデルを推定し、その曲線モデルのパラメータから弛度および張力を推定する。
次に、ステップS104の処理の詳細を説明する。図14は、第1の実施形態に係る分割境界度の算出の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS200では、分割領域誤差推定部40が、注目領域Pについて、第一の領域Pi1の第一誤差および第二の領域Pi2の第二誤差を推定する。具体的には、第一の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルMi1と第一の領域Pi1に含まれる点群との第一誤差、および第二の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルMi2と第二の領域Pi2に含まれる点群との第二誤差を推定する。
ステップS202では、分割領域誤差推定部40が、注目領域Pについて、当該注目領域Pの注目領域誤差を推定する。具体的には、注目領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルMと注目領域Pに含まれる点群との注目領域誤差を推定する。
ステップS204では、分割境界度算出部42が、上記(5)式に従って、注目領域誤差から、第一誤差、および第二誤差の何れか大きい方を引いて求めたモデル近似誤差を、当該注目領域Pの分割境界度として算出する。
以上説明したように、第1の実施形態に係る点群解析装置10は、注目領域の各々について、注目領域に含まれる点群および2次曲線モデルに基づいて、第一の領域に関する情報と、第二の領域に関する情報とを比較して、注目領域の第一の領域および第二の領域の分割位置が、ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出し、注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する。これにより、弛度を推定するための基準となる分割境界点を検出することができる。
また、上述した分割領域誤差推定部40は、第一の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、第二の領域に含まれる点群との誤差である第一誤差、および第二の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、第一の領域に含まれる点群との誤差である第二誤差を推定し、分割境界度算出部42は、上記(4)式に従って、第一誤差および第二誤差の何れか大きいほうであるモデル近似誤差に基づいて、分割境界度を算出するようにしてもよい。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では近似誤差の大きさを基にして分割境界度の算出を行っていたが、第2の実施形態では特徴ベクトルを用いた機械学習によって分割境界度の算出を実現する。なお、第1の実施形態と同様となる箇所は同一符号を付して説明を省略する。
図15は、第2の実施形態に係る点群解析装置210の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
境界点検出部232は、注目領域の各々について、所定の特徴量ベクトルを求めて、予め学習された中間分岐を求めるためのモデルへ入力し、分割境界度を算出する。
図16は、第2の実施形態の境界点検出部232の構成の一例を示す図である。図16に示すように、境界点検出部232は、分割領域誤差推定部40と、分割境界度算出部242と、ベクトル計算生成部244とを含んで構成されている。ベクトル計算生成部244は周辺距離検出部254と、ベクトル生成部256とを含む。
ベクトル計算生成部244は、注目領域の周辺の2次曲線モデルと注目領域との間の距離を表す周辺情報を計算し、モデル近似誤差と、周辺情報とを含む特徴量ベクトルを生成する。
特徴量ベクトルは、具体的には以下(1)~(3)の特徴量を連結して生成する。(1)は形状乖離に関する特徴量、(2)、(3)は周辺構造物との相対的な位置関係についての特徴量である。周辺情報は(2)、(3)の特徴量である。なお、特徴量の連結は、全てを結合してもよいし、選択して結合してもよい。
(1)第1の実施形態の境界点検出部32と同様の手法により求めたモデル近似誤差、および注目領域の第一の領域および第二の領域に含まれる点の数の各々を特徴量とする。中間分岐がない場合、2次曲線の変形がなく、第一の領域および第二の領域の点群情報(モデル)のいずれかから、片方の領域の形状を推定することが可能である。上記(5)式で求められるモデル近似誤差は、2次曲線が変形しているほど大きくなる。よって、変形が大きいほど、中間分岐の存在確率が高くなる。
(2)周辺ケーブルの端点の延長線分と中心位置との最短距離を特徴量とする。延長線分は曲線または直線である。線分が直線であれば、注目領域の中心位置から線分に対して引いた垂線が最短距離になる。中間分岐が存在する場合、周辺に引込線等の外部ケーブルが存在し、外部ケーブルと注目しているケーブルが交差することが多い。MMS計測の特性上、交点近くの点群がオクルージョンの影響で欠損していることが多いが、欠損部分について引込線(外部ケーブル)を延長することで、交差もしくはケーブル近くまでモデルを接近させることが可能である。最短距離が短いほど、中間分岐が存在する可能性が高い。
(3)周辺ケーブルの端点と注目領域の中心位置との距離の特徴量である。上記(2)の理由と同様に、外部ケーブルと注目するケーブルとの交点位置の付近で点群欠損があるとしても、中間分岐がある場合は、外部ケーブル端点がケーブル近くに存在することが多い。つまり、近傍に周辺ケーブル端点が存在する場合に、中間分岐が存在する可能性が高い。
周辺距離検出部254は、注目領域の各々について、周辺情報として、注目領域に対する周辺の2次曲線モデルの端点を延長した線分と注目領域の中心位置との最短距離を検出する。また、周辺距離検出部254は、周辺情報として、周辺の2次曲線モデルの端点と注目領域の中心位置との距離を検出する。
ベクトル生成部256は、注目領域の各々について、モデル近似誤差と、周辺情報とを含む特徴量ベクトルを生成する。
分割境界度算出部242は、注目領域の各々について、ベクトル生成部256が生成した特徴量ベクトルに基づいて、予め定めた機械学習の手法を用いて、分割境界度を算出する。なお、機械学習の手法は、ロジティクス回帰分析、およびAdaRank、RankNetといったランク学習等どのような手法でもよい。分割境界度の算出に用いる機械学習のモデルは、上記特徴量ベクトルに正解ラベルを付した学習データを用いて予め学習しておけばよい。また、モデル近似誤差には、第一の領域および第二の領域の各々の各領域の点群数を含めるため、分割境界度算出部242は、各領域の点群の数を取得する。
<第2の実施形態に係る点群解析装置の作用>
次に、第2の実施形態に係る点群解析装置210の作用を説明する。なお、第2の実施形態に係るプログラム82による処理の流れは、第1の実施形態の上記図13の一例を示すフローチャートと同様であり、ステップS108において、分割境界度算出部242が、ベクトル生成部256が生成した特徴量ベクトルに基づいて、予め定めた機械学習の手法を用いて、分割境界度を算出する。
第2の実施形態ではステップS104の分割境界度の算出の処理が第1の実施形態と異なる。図17は、第2の実施形態に係る分割境界度の算出の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
ステップS1200では、分割領域誤差推定部40および分割境界度算出部242が、注目領域のモデル近似誤差を算出する。モデル近似誤差は、上記図14のステップS200~204と同様の処理を行うことで算出する。
ステップS1202では、分割境界度算出部242が、注目領域について、第一の領域および第二の領域の各々の各領域の点群数を取得する。
ステップS1204では、周辺距離検出部254が、周辺情報として、注目領域に対する周辺の2次曲線モデルの端点を延長した線分と注目領域の中心位置との最短距離を検出する。
ステップS1206では、周辺距離検出部254が、周辺情報として、周辺の2次曲線モデルの端点と注目領域の中心位置との距離を検出する。
ステップS1208では、ベクトル生成部256が、各領域の点群数を含むモデル近似誤差と、周辺情報とを含む特徴量ベクトルを生成する。
以上説明したように、第2の実施形態に係る点群解析装置10は、境界点検出部32が、注目領域の各々について、モデル近似誤差と、周辺情報とを含む特徴量ベクトルを生成し、予め定めた機械学習の手法を用いて、分割境界度を算出し、注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する。これにより、変形したケーブルの形状を考慮して精度よく弛度を推定することができる。
また、特徴量ベクトルに周辺構造物との相対的な位置関係の特徴量を含める。これにより、周辺構造物を考慮した弛度の推定ができるようになる。
以上、実施形態として点群解析装置および方法を例示して説明した。実施形態は、コンピュータを、点群解析装置が備える各部として機能させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、このプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体の形態としてもよい。
その他、上記実施形態で説明した点群解析装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
10 点群解析装置
12 3次元データ記憶部
14 入力部
20 演算部
30 注目領域設定部
32 境界点検出部
34 推定部
40 分割領域誤差推定部
42 分割境界度算出部
210 点群解析装置
232 境界点検出部
242 分割境界度算出部
244 ベクトル計算生成部
254 周辺距離検出部
256 ベクトル生成部

Claims (8)

  1. 物体上の3次元点からなる点群から求められた、ケーブルを表す2次曲線モデルを含むワイヤモデルについて、前記ワイヤモデルをウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域を複数設定する注目領域設定部と、
    前記注目領域の各々について、前記注目領域に含まれる点群および前記2次曲線モデルに基づいて、前記第一の領域に関する情報と、前記第二の領域に関する情報とを比較して、前記注目領域の前記第一の領域および前記第二の領域の分割位置が、前記ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出し、前記注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、前記ワイヤモデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する境界点検出部と、
    を含む点群解析装置。
  2. 検出された前記分割境界点で分割されたワイヤモデルの各々について、前記ワイヤモデルが表す前記ケーブルの弛度を推定する推定部
    を更に含む請求項1に記載の点群解析装置。
  3. 前記境界点検出部は、分割領域誤差推定部と、分割境界度算出部とを含んで構成され、
    前記分割領域誤差推定部は、
    前記第一の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、前記第二の領域に含まれる点群との誤差である第一誤差、および前記第二の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、前記第一の領域に含まれる点群との誤差である第二誤差を推定し、
    前記分割境界度算出部は、前記第一誤差および前記第二誤差の何れか大きいほうであるモデル近似誤差に基づいて、前記分割境界度を算出する請求項1または請求項2に記載の点群解析装置。
  4. 前記境界点検出部は、分割領域誤差推定部と、分割境界度算出部とを含んで構成され、
    前記分割領域誤差推定部は、前記注目領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、前記注目領域に含まれる点群との誤差である注目領域誤差、前記第一の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、前記第一の領域に含まれる点群との誤差である第一誤差、および前記第二の領域に含まれる点群から求められる2次曲線モデルと、前記第二の領域に含まれる点群との誤差である第二誤差を推定し、
    前記分割境界度算出部は、前記注目領域誤差と、前記第一誤差および前記第二誤差に基づく誤差との差分であるモデル近似誤差に基づいて、前記分割境界度を算出する請求項1または請求項2に記載の点群解析装置。
  5. 前記境界点検出部は、ベクトル計算生成部をさらに含んで構成され、
    前記ベクトル計算生成部は、前記注目領域の周辺のワイヤモデルと前記注目領域との間の距離を表す周辺情報を計算し、前記モデル近似誤差と、前記周辺情報とを含む特徴量ベクトルを生成し、
    前記分割境界度算出部は、前記特徴量ベクトルに基づいて、予め定めた機械学習の手法を用いて、前記分割境界度を算出する請求項3または4に記載の点群解析装置。
  6. 前記ベクトル計算生成部は、周辺距離検出部と、ベクトル生成部とを含み、

    前記周辺距離検出部は、前記周辺情報として、前記注目領域に対する周辺のワイヤモデルの端点を延長した線分と前記注目領域の中心位置との最短距離、および前記周辺のワイヤモデルの端点と前記注目領域の中心位置との距離を含む周辺距離情報を検出し、
    前記ベクトル生成部は、前記モデル近似誤差と、前記周辺情報とを含む特徴量ベクトルを生成する請求項5に記載の点群解析装置。
  7. 注目領域設定部が、物体上の3次元点からなる点群から求められた、ケーブルを表す2次曲線モデルを含むワイヤモデルについて、前記ワイヤモデルをウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域を複数設定し、
    境界点検出部が、前記注目領域の各々について、前記注目領域に含まれる点群および前記2次曲線モデルに基づいて、前記第一の領域に関する情報と、前記第二の領域に関する情報とを比較して、前記注目領域の前記第一の領域および前記第二の領域の分割位置が、前記ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出し、前記注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、前記2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する、
    点群解析方法。
  8. コンピュータに、
    物体上の3次元点からなる点群から求められた、ケーブルを表す2次曲線モデルを含むワイヤモデルについて、前記ワイヤモデルをウインドウサーチすることにより得られる注目領域であって、第一の領域および第二の領域に分割された注目領域を複数設定し、
    前記注目領域の各々について、前記注目領域に含まれる点群および前記2次曲線モデルに基づいて、前記第一の領域に関する情報と、前記第二の領域に関する情報とを比較して、前記注目領域の前記第一の領域および前記第二の領域の分割位置が、前記ケーブルの分岐点である度合いを表す分割境界度を算出し、前記注目領域の各々について算出された分割境界度に基づいて、前記2次曲線モデルが表すケーブルの分岐点である分割境界点を検出する、
    ことを実行させるためのプログラム。
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