JP7232509B2 - レーザ装置、波長変換デバイス、及び光出力方法 - Google Patents

レーザ装置、波長変換デバイス、及び光出力方法 Download PDF

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本発明は、レーザ装置、波長変換デバイス、及び光出力方法に関する。
レーザ技術の発展にともなって様々な機能を持つレーザの開発が進み、可視光や近赤外光の帯域では、これらのレーザ光を用いた高次の非線形光学効果も観測されてきた。しかし、真空紫外域においては、透明な固体(非線形光学結晶)がほとんど存在せず、この波長域において有用なレーザ、たとえば、単一周波数(波長可変)レーザを実現することは、現状でも、尚、極めて困難な課題として残されたままである。
非線形光学過程に関与する複数の周波数(または波長)成分の間の相対位相関係を所望の値へと近似的に制御することで、目的とする非線形光学過程を実現する構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
再公表特許WO2015/170780号
上記の特許文献の典型例(高次誘導ラマン散乱過程)では、非線形光学媒質と、非線形光学媒質中に配置される透明な分散媒質とを含むケーシングの全体が、液体窒素等により低温に維持される。また、目的とする非線形光学過程を実現して真空紫外域で所定の光を取り出すためには、多数の分散媒質の挿入が必要である。たとえば、100nmに近い波長へ変換するためには、10枚前後の分散媒質の挿入が必要になる。
本発明は、小型かつ室温で動作して真空紫外レーザ光を発生するレーザ装置を提供することを目的とする。
本発明では、希ガス中に分散媒質を配置し、その位置と厚みを所望の値に調整することで、二光子励起による非線形光学過程を経て、室温で高効率に真空紫外レーザ光を発生させる。
具体的には、本発明のレーザ装置は、
セル内に封入される希ガスと、
前記希ガスの中に光軸に沿って、その位置と厚みが所望の値に調整された1以上の分散媒質と、
二光子励起光源と、
シード光源と、
を有し、二光子励起光とシード光が前記希ガスと前記分散媒質に入射して、二光子励起による非線形光学過程を経て真空紫外レーザ光が出力される。
用いる分散媒質の数を低減し、小型かつ室温で動作して真空紫外レーザ光を発生するレーザ装置が実現される。
実施形態の真空紫外レーザ光発生の基本概念を説明する図である。 実施形態のレーザ装置の模式図である。 実施形態で用いる二光子励起光源の構成例である。 実施形態で用いる二光子励起光源の変形例である。 二光子励起による光パラメトリック増幅を説明する図である。 真空紫外レーザ光の発生スキームとして、パラメトリックダウンコンバージョンと和周波光発生を示す図である。 図2のレーザ装置を用いたパラメトリックダウンコンバージョンの数値計算例である。 図2のレーザ装置を用いた和周波光発生の数値計算例である。
図1は、実施形態の真空紫外レーザ光発生の基本概念を説明する図である。実施形態では、He(ヘリウム)、Ne(ネオン)、Ar(アルゴン)、Kr(クリプトン)、Xe(キセノン)等の希ガス中に透明な分散媒質を配置し、その位置と厚みを所望の値に高精度に調整する。希ガスと分散媒質に、二光子励起レーザ光とシード光を入射し、二光子励起による非線形光学過程により、室温で高効率に真空紫外レーザ光を発生させる。
二光子励起とは、二つの励起光子が同時に吸収される現象である。二光子励起により、希ガスへの入射光のエネルギーは2倍になり、1/2波長の励起と同じ効果が得られる。希ガスは非線形光学媒質であり、高エネルギーの光が入射することで、希ガスの内部に入射電場に対して非線形な(2次以上の)分極が生じ、その分極の振動から入射光と異なる周波数成分が発生する。実施形態では、真空紫外レーザ光として波長が200nm以下、より好ましくは120nm~140nmの真空紫外レーザ光を取り出す。
分散媒質は、その屈折率が周波数または波長に依存する媒質である。実施形態では、分散媒質は、入射した二光子励起光、新たに発生するアイドラー光(真空紫外レーザ光)とシグナル光の間の相対位相関係が、真空紫外レーザ光の出射端まで整合した状態に維持されるように、挿入位置と厚さが制御されている。分散媒質が挿入された位置で、複数の周波数成分の間に生じる位相不整合を修正して、比較的長い相互作用長にわたって位相整合を保つことができる。
具体的には、分散媒質は、希ガスとの界面である入射面で、非線形光学過程で生じる2以上の光成分の位相不整合量(ΔkL)がπになる位置に配置され、かつ、その厚さは、分散媒質の出射面で位相不整合量(ΔkL)がほぼ0になる厚さに制御されている。分散媒質を希ガス中のどの位置に挿入するかについての具体例は、後述する。
図2は、実施形態のレーザ装置1の模式図である。レーザ装置1は、セル10の内部に封入される希ガス15と、希ガス15の中に、光軸OAに沿って配置された1以上の分散媒質17a~17dと、二光子励起光源2と、シード光源3を有する。セル10内の希ガス15と分散媒質17で、波長変換デバイス10が構成される。
セル11は、入射側に透過窓12を有し、出射側に透過窓13を有する。透過窓12は入射する二光子励起光とシード光に対して透明な材料で形成されている。透過窓13は、出力される真空紫外レーザ光に透明な材料で形成されている。このような材料として、石英、ケイ酸塩、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等の窓を用いることができる。
分散媒質17a~17dは、合成石英、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム等で形成されている。図2では、例示のために4枚のプレート状の分散媒質17a~17dが描かれているが、この例に限定されない。分散媒質17a~17dは、希ガス15内での位置と厚さが所望の値になるように高精度に調整されている。一例として、分散媒質17a、17bのように、分散媒質17を光軸OAに対して傾ける、または回転させることで、希ガス15中での分散媒質17の入射面と出射面の位置、及び厚さ(実効的な光学長)を変えることができる。
あるいは、分散媒質17c、17dのように、分散媒質17を一対のくさび型のパーツを組み合わせて構成し、矢印で示すように、パーツの少なくとも一方を他方に対してくさびの稜線に沿った方向に相対的に動かすことで、分散媒質17の入射面と出射面の位置、及び厚さを制御してもよい。
図2のように、回転可能な分散媒質17とくさび型ペアの分散媒質17の両方を用いる必要はなく、いずれか一方のタイプだけを用いてもよいし、位置と実効的な光路長を調整することができれば、どのような構成であってもよい。適切な位置と厚さで分散媒質17を配置して二光子励起を用いることで、1~3枚の分散プレートを挿入するだけで、真空紫外レーザ光を高効率で発生させることができる。
希ガス15の密度は、ターゲットとする真空紫外レーザ光を発生させるために、利得またはコヒーレンスに応じて適切な密度に設定されている。たとえば、波長が160nm~200nmの真空紫外レーザ光を発生させる場合、コヒーレンスが0.1~0.2の条件では、希ガスの密度を1017cm-3程度に設定する。
実施形態の特徴として、レーザ装置1は室温で動作し、波長変換デバイス10を低温環境に置く必要はない。また、分散媒質17を10枚近くも使用する必要はない。波長変換デバイス10を用い、パラメトリックダウンコンバージョン、和周波光発生等により、室温で真空紫外レーザ光を取り出すことができる。
二光子励起光源2は、たとえば、チタンサファイアレーザのように、高い密度で光子を発生させるパルスレーザである。二光子励起光源2の種類、構成等に制限はないが、たとえば、図3のようなナノ秒注入同期パルスレーザを用いることができる。
図3Aは、実施形態で用いる二光子励起光源2Aの模式図である。二光子励起光源2Aは、4枚のミラーM1~M4と、レーザ媒質51を有するボウタイ型共振器の注入同期レーザである。ミラーM1とミラーM2を凹面ミラーとすることで、ビームをきつく絞ってマルチモード発振を抑制することができる。
パラメトリックダウンコンバージョン、和周波光発生等により真空紫外レーザ光を取り出すには、高出力な単一波長の二光子励起光を入射する必要がある。高出力で単一波長の二光子励起レーザ光を得るために、注入同期を利用する。注入同期とは、エネルギーの高い自励発振器に、周波数の安定した単一波長の外部光を注入することで、発振出力を外部光に同期させる技術である。
励起光(図中の破線矢印)として、固体レーザであるQスイッチNdドープYAGパルスレーザ(1064nm)の第二高調波(532nm)を用いる。QスイッチYAGレーザは励起レーザの一例であり、その他の励起光源を用いてもよい。注入同期用のシード光源として、たとえば748.88nmにチューニングした周波数安定なECDL(External Cavity Diode Laser:外部共振器半導体レーザ)を用いる。
レーザ媒質51として、650nm~1100nmで発振可能であり、800nm付近に増幅利得の中心があるチタンサファイア結晶を用いる。4枚のミラーM1~M4の間を反復し、レーザ媒質51で増幅されて出力されるレーザ光は、外部光の周波数である748.88nmに同期される。
この出力光に対して第2高調波発生(SHG:Second Harmonic Generation)または第3高調波発生(THG:Third Harmonic Generation)を適用して、単一波長、単一横モードの二光子励起レーザ光を生成する。たとえば、THGにより波長が249.628nmの二光子励起レーザ光を二光子励起光源2Aから出力することができる。注入同期用のシード光源に波長可変光源を用いる場合は、図3Aの構成で所望の波長を有する単一波長、単一横モードの二光子励起レーザ光を出力することができる。
図3Bは、図3Aの変形例である二光子励起光源2Bの模式図である。図3Bでは、ミラーM1とミラーM2の間に真空セル52を配置して、きつく絞られたビームの焦点近傍での放電を抑制する。また、ミラーM1とミラーM2の間に、非点収差補正プレート53、54を挿入して、非点収差を軽減してもよい。さらに、ミラーM4の抜け光をミラーM2の位置制御にフィードバックして、共振器をロックし安定性を高めてもよい。
真空セル52、非点収差プレート53,54、及びフィードバック機構の全て備える必要はなく、必要に応じてこれらの一部を組み合わせてもよい。共振器はボウタイ型に限定されず、三角形型、Z型等、その他の共振器構成を用いてもよい。
図2に戻って、シード光源3はどのような光源を用いてもよい。このシード光源3は二光子励起光源2で用いられる注入同期用のシード光源とは異なっていてもよいし、共用してもよい。この例ではシード光源3として、たとえば、赤外から遠赤外の帯域の光を出力する別個の光源を用いる。シード光源3は波長可変光源であってもよい。
図4は、二光子励起による光パラメトリック増幅を説明する図である。図4では、ダウンコンバージョンを例にとっている。実施形態では、希ガスの二光子許容遷移の量子準位に近共鳴させた断熱二光子励起により、高コヒーレンスで光パラメトリック増幅を行う。二光子励起レーザ光を二光子許容遷移の量子準位に近共鳴させて、離長δを制御することで、系は断熱励起されて、現実的な励起強度で最大に近いコヒーレンスを生成することができる。
図4で、基底状態|g>、二光子遷移が許容される励起状態を|e>とすると、二光子励起により系に与えられるエネルギーが、二光子遷移のスペクトル拡がりに相当する数GHz程度の離長δだけ、励起準位(共鳴準位)からずれている方がコヒーレンスを高めることができる(近共鳴)。これを断熱二光子励起という。ここで「断熱」とは、系が外部との間でエネルギーのやりとりが無いことを意味する。
非線形光学媒質としての希ガス15に入射した二光子励起レーザ光は、希ガス15の電子状態を、二光子許容遷移の量子準位の近傍に励起する。その状態にシード光(シグナル光)をさらに希ガス15に導入すると、新たな周波数の真空紫外レーザ光(VUV:Vacuum Ultra-Violet)が発生する。ここでは真空紫外レーザ光はアイドラー光とも呼ばれる。真空紫外レーザ光(アイドラー光)のエネルギーは、2つの励起光子のエネルギーの和から、シード光のエネルギーだけ小さくなったエネルギーである。
図5は、真空紫外レーザ光の発生スキームとして、パラメトリックダウンコンバージョンと、和周波光発生を示す図である。図5(a)のパラメトリックダウンコンバージョンは、図4を参照して説明したとおりである。
図5(b)の和周波光発生では、二光子励起により、希ガス15の二光子許容遷移の量子準位(|e>)の近傍のエネルギー状態に、シード光のエネルギーが加算されて、真空紫外レーザ光(和周波光)が生成される。2つの励起光子のエネルギーの合計に、さらにシード光のエネルギーが足し合わされて真空紫外レーザ光が生成されるので、パラメトリックダウンコンバージョンよりも短い波長の真空紫外レーザ光が生成される。
二光子励起光が希ガス15に入射して、図5(a)のパラメトリックダウンコンバージョンが支配的になるか、図5(b)の和周波光発生が支配的になるかは、エネルギーの流れによって決まり、希ガス15中に配置される分散媒質17の位置と厚さを制御することで、波長変換デバイス10の伝搬長にわたって位相整合条件を満たし、かつ、パラメトリックダウンコンバージョンと和周波光発生を選択することも可能である。
図6は、図2のレーザ装置1におけるパラメトリックダウンコンバージョンの数値計算例である。図6(B)は、希ガス15中の光の伝搬過程で生成される光をフォトン発生数で表したものである。図6(A)は、図6(B)の数値計算結果を白黒画像で示したものである。図6(A)と図6(B)で、横軸の伝搬長のスケールは一致している。
数値計算条件として、セル11内にXeガスを、室温でのXe原子の密度N=2.88×1016cm-3で充填する。二光子励起光源2の励起強度IはI=0.65GW/cm2、二光子励起レーザ光の波長は249.6285nm、シード光波長は3.959315μmである。
図6(A)で、-1チャネルがアイドラー光としての真空紫外レーザ光(VUV)の観測チャネル、0チャネルがシード光(シグナル光)の観測チャネル、+1チャネルは和周波光の観測チャネルである。ここで発生するVUVレーザ光の波長は128.8770nmである。右端の白黒のスケールバーは、正規化されたフォトン数であり、図6(B)の縦軸のスケールと一致している。
図6(B)の数値計算結果で、実線は入射シード光を含む発生したフォトン数の総和である。二光子励起レーザ光の希ガス15への入射直後は、二光子励起レーザ光と希ガスの相互作用はまだ発生していない。
その後、伝搬過程での非線形な相互作用により、二光子励起のエネルギーから、シード光と真空紫外レーザ光(VUV)へとエネルギーが流れる。伝搬長が2cmに近づくと、図中のサークルAで示すように、VUVレーザ光(アイドラー光)の発生光子数が停滞する一方で、和周波光の強度が強くなる。これは希ガス15を伝搬するパラメトリックダウンコンバージョンに関わる光成分の間で、位相がずれてきていることに起因する。
そこで、VUVレーザ光の発生が停滞する2cm近傍の位置に1番目の分散媒質17を挿入して、複数の光成分の間で位相整合条件が満たされるように補正する。具体的には、分散媒質17への入射面で複数の光成分の位相不整合量(ΔkL)がπになる位置に分散媒質17を配置し、かつ、この分散媒質17の出射面で光成分間の位相不整合量(ΔkL)がゼロになる厚さに分散媒質17の厚さを調整する。
この位置と厚さで分散媒質17を配置することで、停滞していたVUV光の発生が回復し、かつ和周波光の成分が低減する。その結果、シード光(シグナル光)、VUVレーザ光(アイドラー光)ともに生成が促進される。
伝搬長が3.5cmを超えるあたりで、サークルBで示すように、再度VUVレーザ光の発生が停滞する。そこで、この位置に第2の分散媒質17を配置する。第2の分散媒質17もその入射面で複数の光成分間の位相不整合量(ΔkL)がπになる位置に配置され、かつその出射面で位相不整合量(ΔkL)がゼロまたは最小になる厚さに制御される。
第1の分散媒質と第2の分散媒質を適切な位置と厚さで挿入することで、比較的長い伝搬長にわたって位相不整合量(ΔkL)がゼロまたはその近傍に抑制されて、ほぼ100%に近い量子効率でVUVレーザ光を出射することができる。
図7は、図2のレーザ装置1における和周波光発生の数値計算例である。セル11に封入する希ガスの種類と密度、二光子励起光源2の条件、波長等は図6と同じであるが、図7では、25cmの伝搬長にわたって和周波光発生の過程を観測追跡している。
図7(A)で、+1チャネルが和周波光発生で生成される真空紫外レーザ光(VUV)の観測チャネル、0チャネルがシード光の観測チャネル、-1チャネルはパラメトリックダウンコンバージョンの観測チャネルである。右端の白黒のスケールバーは、正規化されたフォトン数であり、図7(B)の縦軸のスケールと一致している。
和周波光発生では、Xeガスに入射する2光子励起光のエネルギーと、シード光のエネルギーを足し合わせたエネルギーから、VUVレーザ光が生成される。発生するVUVレーザ光の波長は、121.0000nmである。
図7(A)及び図7(B)からわかるように、伝搬長の関数としてのVUVレーザ光とシード光の光子数は、周期的に変化し、かつ互いに逆のプロファイルをとる。
Xe中を伝搬する複数の光成分の間で位相整合が崩れる位置に、分散媒質17を挿入して位相整合関係を補正する。この例では、伝搬長が2.5cmの近傍でVUVレーザ光(和周波光)の発生が停滞し、パラメトリックダウンコンバージョンによるアイドラー光の割合が多くなる。そこで、この位置に1番目の分散媒質17を配置することで、アイドラー光を低減してVUVレーザ光(和周波光)の発生を増大させる。分散媒質17の位置と厚さは、その入射面で位相不整合量(ΔkL)がπになり、かつ出射面で位相不整合量(ΔkL)がゼロまたは最小となるように制御されている。
伝搬長が5cmを超えたあたりで、再度アイドラー光が増大し、VUVレーザ光(和周波光)の発生が停滞する。そこで、この位置に第2の分散媒質17を配置する。第2の分散媒質17も、その入射面で複数の光成分間の位相不整合量(ΔkL)がπになる位置に制御され、かつ、その出射面で位相不整合量(ΔkL)が0になる厚さに制御される。
第1の分散媒質と第2の分散媒質を適切な位置と厚さで挿入することで、比較的長い伝搬長にわたってターゲット波長と異なるアイドラー光をきわめて低いレベルに、かつほぼ一定量に抑制して、100%に近い効率でVUVレーザ光(和周波光)を出射することができる。
以上、特定の実施例に基づいて本発明を説明してきたが、本発明は上記の構成に限定されない。Xeに替えて、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス等をセル11に封入して二光子励起レーザ光とシード光を入射する場合も、分散媒質17を適切な位置と厚さで配置することで、高い効率で真空紫外レーザ光を生成することができる。分散媒質を、その入射面で複数の光成分間の位相不整合量(ΔkL)がπとなる位置に配置し、かつ出射面で位相不整合量(ΔkL)がゼロまたは最小となる厚さに設定したときに、真空紫外レーザ光の発生効率は最も高くなる。
Xe以外の希ガスを用いる場合も、二光子許容遷移の量子準位に近共鳴させた(ガス分子のスペクトル拡がり程度の離長δをとった)断熱励起を行うことで、高コヒーレンスを生成し、効率よく真空紫外レーザ光を生成することができる。
二光子励起光源は、固体パルスレーザにSHG、またはTHG、またはFHG等を組み合わせることで、非線形光学過程でターゲットの真空紫外レーザ光を生成することのできる波長の二光子レーザ光を出力することができる。
このような高効率の真空紫外レーザ装置は、光学顕微鏡等の理化学機器、半導体リソグラフィ光源、短波長加工レーザ、遠隔環境計測レーザ光源など、さまざまな用途への利用が期待される。
1 レーザ装置
2、2A、2B 二光子励起光源
3 シード光源
10 波長変換デバイス
11 セル
15 希ガス
17、17a~17d 分散媒質

Claims (7)

  1. セル内に封入される希ガスと、
    前記希ガスの中に光軸に沿って配置される、位置と厚みが所望の値に調整された1以上の分散媒質と、
    二光子励起光源と、
    シード光源と、
    を有し、二光子励起光とシード光が前記希ガスと前記分散媒質に入射して、二光子励起による非線形光学過程を経て真空紫外レーザ光が出力され、
    前記分散媒質は、前記希ガスとの界面である入射面で、前記非線形光学過程で生じる2以上の光成分の位相不整合量(ΔkL)がπになる位置に配置され、かつ、前記分散媒質の出射面で前記位相不整合量(ΔkL)がゼロまたは最小になる厚みに制御されていることを特徴とするレーザ装置。
  2. 前記希ガスは、He、Ne、Ar、Xe、Krから選択される1以上のガスであることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
  3. 前記二光子励起は、前記希ガスの二光子許容遷移の量子準位に近共鳴させた断熱励起であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ装置。
  4. 前記非線形光学過程は、和周波光発生と光パラメトリックダウンコンバージョンの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のレーザ装置。
  5. 前記二光子励起光源は固体パルスレーザを有し、前記二光子励起光は、前記固体パルスレーザの出力の2倍高調波、または3倍高調波であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のレーザ装置。
  6. 光入射窓および光出射窓を有するセルと、
    前記セル内に封入される希ガスと、
    前記希ガスが封入された前記セル内に光軸に沿って配置される1以上の分散媒質と、
    を有し、
    前記分散媒質は、前記希ガスとの界面である入射面で、非線形光学過程により生じる2以上の光成分の位相不整合量(ΔkL)がπになる位置に配置され、かつ、前記分散媒質の出射面で前記位相不整合量(ΔkL)がゼロまたは最小となる厚みに調整されていることを特徴とする波長変換デバイス。
  7. 希ガスと、前記希ガスの中に光軸に沿って配置されて位置と厚みが所望の値に調整された1以上の分散媒質とが封入されたセルに二光子励起光とシード光を入射し、
    二光子励起による非線形光学過程を経て前記セルから真空紫外レーザ光を出力し、
    前記分散媒質は、前記希ガスとの界面である入射面で、前記非線形光学過程で生じる2以上の光成分の位相不整合量(ΔkL)がπになる位置に配置され、かつ、前記分散媒質の出射面で前記位相不整合量(ΔkL)がゼロまたは最小となる厚みに調整されていることを特徴とする光出力方法。
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