JP7232063B2 - 迷走電流推定システム、迷走電流推定方法、および迷走電流推定プログラム - Google Patents
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Description
このような迷走電流を計算する従来技術として、特許文献1が知られている。
そこで、迷走電流を高い精度で計算しようとすると、特許文献1の想定する抵抗1層分のみの単純な回路モデルでは足りず、回路モデルの規模は格段に大きくなる。そのため、迷走電流の計算に時間がかかるという問題が生じる。
図1は、実施例1の迷走電流推定システムの概略構成図である。
図1に示す迷走電流推定システムは、大地モデル作成部101と、等価抵抗作成部102と、電車回路計算部103と、迷走電流計算部104とを備えて構成される。さらに、この迷走電流計算部104は迷走電流提示部105を備える。また、大地モデル作成部101はデータベース131を備える。
大地モデル作成部101の処理について説明する。
大地モデル作成部101では、迷走電流計算の対象路線における、レールおよびレール周辺の構造物、大地に関する電気抵抗パラメータを取得し、格子状抵抗111を作成する。
また、レールや構造物や大地などの抵抗体における断面積[m2]、長さ[m]、および断面積あたりの抵抗率[Ω・m]を用いて式[1]で計算した値を設定してもよい。
抵抗値[Ω]=長さ[m]/断面積[m2]×断面積あたりの抵抗率[Ω・m] [1]
抵抗値[Ω]=長さ[m]×長さあたりの抵抗率[Ω/m] [2]
等価抵抗作成部102の処理を説明する前に、等価抵抗を作成することによる効果について説明する。
この格子状抵抗111は、特許文献1とは異なり、大地や構造体の多様な抵抗分布にも対応した回路モデルであり、迷走電流を正確に計算する上で好適である。
また、電車や変電所は非線形な特性を有しており、回路方程式を一度解くだけでは解が適切に定まらないため、電車と変電所の電気回路を解く際には、計算周期ごとに収束計算を実施し、妥当な解が得られるまで計算を繰り返す。
この等価抵抗112を含む回路モデルについて計算することにより、等価抵抗112と電車との節点N、等価抵抗112と変電所との節点Nについて、節点Nごとに電車や変電所との間に流れる電車電流115a,115b・・や変電所電流116a,116b・・(または電車や変電所の節点Nの電位)が確定する。そして、図4(B)に示す格子状抵抗111の回路モデルに対して、節点Nについても求めた電車電流115a,115b・・や変電所電流116a,116b・・の電流源(または電車や変電所と格子状抵抗との節点Nの電位の電圧源)を与えて、格子状抵抗111の電流分布を計算することにより、格子状抵抗111の各節点を通過する迷走電流を求めることができる。
続いて、ステップ503における、1層の等価抵抗112を作成する手順について図8を用いて説明する。
そこで、式[4]を用いて等価抵抗の値を算出する。
(Vn+1_0-Vn_0):格子状抵抗の最上層における左端から(n+1)番目の節点とn番目の節点との電位差
(In_0+…+In_x):格子状抵抗の左端から最上層0番目から最下層のx番目のレール方向抵抗に流れる電流の総和
電車回路計算部103の構成について、図9を用いて説明する。
電車回路計算部103は、電車操作出力部901、トルク計算部902、電車位置計算部903、電車電力計算部904、電気回路計算部905で構成される。
このように電車回路計算部103から出力される電車電流115、変電所電流116、および電車位置117は、位置電流情報113として迷走電流計算部104に出力される。
迷走電流計算部の処理を、図10を用いて説明する。図10は、迷走電流計算部の処理フローを示した図である。
ここでは、図4(B)に示す回路モデルのように、格子状抵抗における変電所位置に相当する節点Nに対して、変電所電流116を与える。また、格子状抵抗の電車位置117に相当する節点Nに対して、電車電流115を与える。なお、電車は常に移動しており、電車位置117は必ずしも格子状抵抗の節点と一致しない場合がある。そこで、電車位置が節点間に来る場合は、その電車位置117に最も近い節点に全電流を流すか、その電車位置117に近い2節点に電流を配分する。
この2節点の電流配分量は、各節点を節点A、節点Bとした場合、下式を用いて計算される。
IB=IT×LA/(LA+LB)
IA:節点Aに流す電流
IB:節点Bに流す電流
IT:節点Aおよび節点Bの間にいる電車の電流
LA:電車と節点Aまでの距離
LB:電車と節点Bまでの距離
さらに、ステップ1002では、迷走電流計算部104は、迷走電流の計算結果を迷走電流提示部105に供給する。迷走電流提示部105は、迷走電流の時系列データや、迷走電流の積算データの形態で出力する。
実施例2における迷走電流推定システムの構成を図11に示す。
大地モデル作成部101、電車回路計算部103、迷走電流提示部105、データベース131はそれぞれ実施例1に示した迷走電流推定システムと同等であるため、説明を省略する。
等価抵抗作成部1102の処理を図12に示す。ステップ1201から1203までの処理は、実施例1で説明した図5におけるステップ501からステップ503までの処理とそれぞれ同等であるため、詳細な説明を省略する。
迷走電流計算部1104の処理フローを図14に示す。
ステップ1401は、図15に示すように、等価複数層抵抗1112に対して、電車位置117に相当する節点に電車電流115a,115b・・の電流源を与え、変電所位置に相当する節点に変電所電流116a,116b・・の電流源を与えて(または、節点の電位に相当する電圧源を与えて)、回路モデルを作成し、ステップ1402へ進む。
実施例3における迷走電流推定システムの構成を図16に示す。
電車回路計算部103、迷走電流計算部104、迷走電流提示部105、データベース131は、上述した実施例に示した迷走電流推定システムと同等であるため、説明を省略する。
大地モデル作成部1601で出力する格子状抵抗111の一例について、図17を用いて説明する。図17(A)に示す格子状抵抗は、電車位置117を考慮していない格子状抵抗である。図17(B)は、図17(A)に示した格子状抵抗の節点Cと節点Dの間に電車が位置しており、電車位置117に新たな節点が設けられた格子状抵抗を示している。
実施例4における迷走電流推定システムの構成を図18に示す。
迷走電流推定システムは、大地モデル作成部1801、等価抵抗作成部102、電車回路計算部103、迷走電流計算部104を備えて構成される。迷走電流計算部104は迷走電流提示部105を備える。大地モデル作成部181はデータベース131、迷走電流取得部1806、電車回路取得部1807、パラメータ補正部1808を備える。
大地モデル作成部1801と迷走電流取得部1806、電車回路取得部1807、パラメータ補正部1808以外の構成については、格子状抵抗111の代わりに補正後格子状抵抗1811を入力して処理を実施すること以外、上述した実施例で示した例と同等であるため、説明を省略する。
パラメータ補正部1808の処理の一例を、図19を用いて説明する。
ステップ1901はループ処理であり、迷走電流の計測地点の数だけ繰り返す。
ステップ1902はループ処理であり、迷走電流の計測区分内で抵抗値を変更しながら処理を繰り返す。迷走電流の計測区分の詳細は後述する。
実施例5における迷走電流推定システムの構成を図21に示す。
迷走電流推定システムは、大地モデル作成部2101、等価抵抗作成部102、電車回路計算部103、迷走電流計算部104を備えて構成される。迷走電流計算部104は迷走電流提示部105を備える。大地モデル作成部2101はデータベース131を備える。大地モデル作成部2101以外の構成については、上述した実施例で示した例と同等であるため、説明を省略する。
図22は、計算対象期間の開始を0年度として構造物1,2や大地3の抵抗パラメータの経時変化を示したものである。大地モデル作成部2101には、代表的な構造物について抵抗パラメータの経時変化のテーブルデータが記録されている。
なお、上記の実施例では、レール方向と深さ方向に展開した2次元の格子状抵抗について説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、レール横方向(マクラギの方向)に格子状抵抗を拡張して3次元の格子状抵抗としてもよい。この場合も、実施例と同様にして等価的抵抗に変換できる。例えば、3次元の格子状抵抗に給電した状態で、格子状抵抗のレール抵抗の節点と、等価抵抗の節点との電圧電流分布が等しくなるように、等価抵抗の抵抗体それぞれを設定すればよい。
Claims (9)
- 電気鉄道の迷走電流を推定する迷走電流推定システムにおいて、
レールおよび当該レール周辺の構造物並びに大地に関する電気抵抗パラメータを入力し、所定のレール区間のレール方向および前記大地の深さ方向の二方向に展開した格子状抵抗を作成する大地モデル作成部と、
前記格子状抵抗を前記深さ方向の最上層のレール抵抗に等価圧縮することで等価抵抗を作成する等価抵抗作成部と、
前記格子状抵抗が分布する範囲に存在する変電所、電車、架線およびレールと前記等価抵抗とから成る回路モデル並びに前記迷走電流を計算する計算対象期間における前記電車の操作パターンを用いて、前記変電所の電流と前記電車の位置および電流とを示す位置電流情報を計算する電車回路計算部と、
前記格子状抵抗と前記位置電流情報とに基づく回路モデルを作成して、当該格子状抵抗の各抵抗に流れる前記迷走電流を計算する迷走電流計算部と
を備える迷走電流推定システム。 - 請求項1に記載の迷走電流推定システムにおいて、
前記等価抵抗作成部が作成する前記等価抵抗とは、当該等価抵抗を用いて計算したレール方向の電圧降下と前記格子状抵抗を用いて計算したレール方向の電圧降下とが同等になることを満足する
ことを特徴とする迷走電流推定システム。 - 電気鉄道の迷走電流を推定する迷走電流推定システムにおいて、
レールおよび当該レール周辺の構造物並びに大地に関する電気抵抗パラメータを入力し、所定のレール区間のレール方向および前記大地の深さ方向の二方向に展開した格子状抵抗を作成する大地モデル作成部と、
前記格子状抵抗から、前記迷走電流を計算する対象となる抵抗が接続されている第1の節点および当該第1の節点の一つ隣の第2の節点に接続されている抵抗を残し、前記第1および前記第2の節点以外に接続されている抵抗を圧縮して等価複数層抵抗を作成する等価抵抗作成部と、
前記格子状抵抗が分布する範囲に存在する変電所、電車、架線およびレールと前記等価複数層抵抗とから成る回路モデル並びに前記迷走電流を計算する計算対象期間における前記電車の操作パターンを用いて、前記変電所の電流と前記電車の位置および電流とを示す位置電流情報を計算する電車回路計算部と、
前記等価複数層抵抗と前記位置電流情報とに基づく回路モデルを作成して、当該等価複数層抵抗の各抵抗に流れる前記迷走電流を計算する迷走電流計算部と
を備える迷走電流推定システム。 - 請求項1または2に記載の迷走電流推定システムにおいて、
前記大地モデル作成部は、前記電車の位置に応じて当該位置を新たな前記格子状抵抗の節点として設け、前記格子状抵抗を再構築して作成する
ことを特徴とする迷走電流推定システム。 - 請求項1または2に記載の迷走電流推定システムにおいて、
前記大地モデル作成部は、
前記電車が走行する対象路線の迷走電流を計測して迷走電流計測情報として取得する迷走電流取得部と、
前記変電所の電流と前記電車の位置および電流とを位置電流実測情報として取得する電車回路取得部と、
前記迷走電流計測情報および前記位置電流実測情報に基づいて前記格子状抵抗を補正するパラメータ補正部と
を備え、
前記パラメータ補正部は、前記迷走電流の計測値と前記迷走電流の計測区分内の抵抗値を変更して計算した前記迷走電流の計算値との誤差が所定範囲内となる前記抵抗値を求めて前記格子状抵抗を補正する
ことを特徴とする迷走電流推定システム。 - 請求項1~5のいずれか1項に記載の迷走電流推定システムにおいて、
前記大地モデル作成部は、前記電気抵抗パラメータの経時変化を反映した前記格子状抵抗を作成する
ことを特徴とする迷走電流推定システム。 - 請求項1~6のいずれか1項に記載の迷走電流推定システムにおいて、
前記迷走電流計算部は、前記迷走電流の計算結果を指定された位置における当該迷走電流の時系列データまたは当該迷走電流の積算値の少なくとも一方で提示する迷走電流提示部を備える
ことを特徴とする迷走電流推定システム。 - 電気鉄道の迷走電流を推定する迷走電流推定方法において、
レールおよび当該レール周辺の構造物並びに大地に関する電気抵抗パラメータを入力し、所定のレール区間のレール方向および前記大地の深さ方向の二方向に展開した格子状抵抗を作成する大地モデル作成ステップと、
前記格子状抵抗を前記深さ方向の最上層のレール抵抗に等価圧縮することで等価抵抗を作成する等価抵抗作成ステップと、
前記格子状抵抗が分布する範囲に存在する変電所、電車、架線およびレールと前記等価抵抗とから成る回路モデル並びに前記迷走電流を計算する計算対象期間における前記電車の操作パターンを用いて、前記変電所の電流と前記電車の位置および電流とを示す位置電流情報を計算する電車回路計算ステップと、
前記格子状抵抗と前記位置電流情報とに基づく回路モデルを作成して当該格子状抵抗の各抵抗に流れる前記迷走電流を計算する迷走電流計算ステップと
を有する迷走電流推定方法。 - コンピュータを、
請求項1~7のいずれか1項に記載の前記大地モデル作成部、前記等価抵抗作成部、前記電車回路計算部および前記迷走電流計算部として機能させる
ことを特徴とする迷走電流推定プログラム。
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