JP7222233B2 - 制動制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、制動制御装置に関する。
近年、乗用車等の各種の車両に電動駐車ブレーキ(以下、EPB(Electric Parking Brake)または電動ブレーキ装置という。)が多く採用されている。EPBによる制動を実行する制動制御装置は、例えば、モータを制御して車輪ブレーキ機構を駆動することで電動制動力を発生させる。
また、EPBによる制動を実行すると、様々な理由により、左車輪側に設けられた左モータと右車輪側に設けられた右モータの停止タイミングが異なる場合がある。
しかしながら、EPBによる制動の実行時に、左モータと右モータの停止タイミングが異なっていると、作動音の左右差が生じ、乗員に違和感や不快感を与えてしまう場合があった。
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、EPBによる制動の実行時に作動音による違和感や不快感を低減することができる制動制御装置を提供することである。
本発明は、例えば、左車輪側に設けられた左モータを駆動することによって左車輪に電動制動力を発生させ、右車輪側に設けられた右モータを駆動することによって右車輪に電動制動力を発生させる電動ブレーキ装置を備える車両に適用される制動制御装置であって、前記電動ブレーキ装置に対する駆動要求があった場合、停車保持に必要な目標制動力を算出するとともに、前記目標制動力を発生させるための前記左モータに対する目標電流値である左目標電流値と前記右モータに対する目標電流値である右目標電流値とを算出し、前記左モータと前記右モータを駆動して、前記左モータの実電流値が前記左目標電流値以上に到達したことと、前記右モータの実電流値が前記右目標電流値以上に到達したこととの一方が成立したときに、前記左モータと前記右モータの両方を同時に停止させる停止制御を実行する電動ブレーキ制御部を備える。
また、上記の制動制御装置では、例えば、前記電動ブレーキ制御部は、前記停止制御を実行する前に、他方の前記左モータ、または、前記右モータの実電流値が前記目標電流値以上に到達しているという条件が満たされているか否かを判断し、前記条件が満たされていないと判断した場合、前記停止制御の実行を禁止し、前記他方の前記左モータ、または、前記右モータの実電流値を前記目標電流値以上に到達させた後、前記停止制御を許可して前記左モータと前記右モータの両方を同時に停止させる。
また、上記の制動制御装置では、例えば、前記電動ブレーキ制御部は、前記左モータの実電流値が前記左目標電流値よりも大きく設定される左限界電流値に到達したとき、または、前記右モータの実電流値が前記右目標電流値よりも大きく設定される右限界電流値に到達したときに、前記左モータと前記右モータの両方を同時に停止させる。
また、上記の制動制御装置では、例えば、前記電動ブレーキ制御部は、前記停止制御の実行後、前記車両のずり下がりを検知した場合、前記目標制動力を高くするよう補正し、補正後の前記目標制動力を発生させるように前記左モータと前記右モータの少なくとも一方を駆動させる。
また、上記の制動制御装置では、例えば、前記電動ブレーキ制御部は、前記停止制御の実行後、前記左車輪と前記右車輪において発生している制動力の合計が前記目標制動力よりも低い場合、前記左モータと前記右モータの少なくとも一方を駆動して前記目標制動力を発生させる調整制御を実行する。
また、上記の制動制御装置では、例えば、前記電動ブレーキ制御部は、乗員が降車したことを推定するための所定の車両操作を検知するまでは前記調整制御を禁止し、前記所定の車両操作を検知した場合に前記調整制御を実行する。
また、上記の制動制御装置では、例えば、前記電動ブレーキ制御部は、前記調整制御を実行できない場合、乗員に報知する報知制御を実行する。
以下、本発明の例示的な実施形態(第1実施形態~第5実施形態)が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、以下の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
(第1実施形態)
第1実施形態では、後輪系にディスクブレーキタイプのEPBを適用している車両用ブレーキ装置を例に挙げて説明する。図1は、第1実施形態の車両用ブレーキ装置の全体概要を示す模式図である。図2は、第1実施形態の車両用ブレーキ装置に備えられる後輪系の車輪ブレーキ機構の断面模式図である。以下、これらの図を参照して説明する。
第1実施形態では、後輪系にディスクブレーキタイプのEPBを適用している車両用ブレーキ装置を例に挙げて説明する。図1は、第1実施形態の車両用ブレーキ装置の全体概要を示す模式図である。図2は、第1実施形態の車両用ブレーキ装置に備えられる後輪系の車輪ブレーキ機構の断面模式図である。以下、これらの図を参照して説明する。
図1に示すように、第1実施形態の車両用ブレーキ装置は、サービスブレーキ1(液圧ブレーキ装置)と、EPB2(電動ブレーキ装置)と、を備えている。
サービスブレーキ1は、運転者によるブレーキペダル3の踏み込みに基いて、車輪と一体に回転する被制動部材(図2のブレーキディスク12)に向けて、液圧によって制動部材(図2のブレーキパッド11)を押圧して、サービスブレーキ力(液圧制動力)を発生させる液圧ブレーキ機構である。具体的には、サービスブレーキ1は、運転者によるブレーキペダル3の踏み込みに応じた踏力を倍力装置4にて倍力したのち、この倍力された踏力に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ(以下、M/Cという。)5内に発生させる。そして、このブレーキ液圧を各車輪の車輪ブレーキ機構に備えられたホイールシリンダ(以下、W/Cという。)6に伝えることでサービスブレーキ力を発生させる。また、M/C5とW/C6との間にブレーキ液圧制御用のアクチュエータ7が備えられている。アクチュエータ7は、サービスブレーキ1により発生させるサービスブレーキ力を調整し、車両の安全性を向上させるための各種制御(例えば、アンチスキッド制御等)を行う。
アクチュエータ7を用いた各種制御は、サービスブレーキ力を制御するESC(Electronic Stability Control)-ECU8にて実行される。例えば、アクチュエータ7に備えられる図示しない各種制御弁やポンプ駆動用のモータを制御するための制御電流をESC-ECU8が出力することにより、アクチュエータ7に備えられる液圧回路を制御し、W/C6に伝えられるW/C圧を制御する。これにより、車輪スリップの回避などを行い、車両の安全性を向上させる。
例えば、アクチュエータ7は、各車輪毎に、W/C6に対してM/C5内に発生させられたブレーキ液圧もしくはポンプ駆動により発生させられたブレーキ液圧が加えられることを制御する増圧制御弁や、各W/C6内のブレーキ液をリザーバに供給することでW/C圧を減少させる減圧制御弁等を備えており、W/C圧を増圧・保持・減圧制御できる構成とされている。また、アクチュエータ7は、サービスブレーキ1の自動加圧機能を実現可能にしており、ポンプ駆動および各種制御弁の制御に基いて、ブレーキ操作がない状態であっても自動的にW/C6を加圧できる。
一方、EPB2は、モータ10によって車輪ブレーキ機構を駆動させることで電動制動力を発生させるものであり、モータ10の駆動を制御するEPB-ECU9(制動制御装置。電動ブレーキ制御部)を有して構成されている。具体的には、例えば、EPB2は、駐車時に車両が意図しない移動をしないように、被制動部材(図2のブレーキディスク12)に向けて、モータ10を駆動することによって制動部材(図2のブレーキパッド11)を押圧して、電動制動力を発生させる。なお、EPB-ECU9とESC-ECU8は、例えばCAN(Controller Area Network)通信によって情報の送受信を行う。
車輪ブレーキ機構は、第1実施形態の車両用ブレーキ装置においてブレーキ力を発生させる機械的構造であり、まず、前輪系の車輪ブレーキ機構はサービスブレーキ1の操作によってサービスブレーキ力を発生させる構造とされている。一方、後輪系の車輪ブレーキ機構は、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対してブレーキ力を発生させる共用の構造とされている。前輪系の車輪ブレーキ機構は、後輪系の車輪ブレーキ機構に対して、EPB2の操作に基いて電動制動力を発生させる機構をなくした従来から一般的に用いられている車輪ブレーキ機構であるため、ここでは説明を省略し、以下では後輪系の車輪ブレーキ機構について説明する。
後輪系の車輪ブレーキ機構では、サービスブレーキ1を作動させたときだけでなくEPB2を作動させたときにも、図2に示す摩擦材であるブレーキパッド11を押圧し、ブレーキパッド11によって被摩擦材であるブレーキディスク12(12RL、12RR、12FR、12FL)を挟み込むことにより、ブレーキパッド11とブレーキディスク12との間に摩擦力を発生させ、ブレーキ力を発生させる。
具体的には、車輪ブレーキ機構は、図1に示すキャリパ13内において、図2に示すようにブレーキパッド11を押圧するためのW/C6のボディ14に直接固定されているモータ10を回転させることにより、モータ10の駆動軸10aに備えられた平歯車15を回転させる。そして、平歯車15に噛合わされた平歯車16にモータ10の回転力(出力)を伝えることによりブレーキパッド11を移動させ、EPB2による電動制動力を発生させる。
キャリパ13内には、W/C6およびブレーキパッド11に加えて、ブレーキパッド11に挟み込まれるようにしてブレーキディスク12の端面の一部が収容されている。W/C6は、シリンダ状のボディ14の中空部14a内に通路14bを通じてブレーキ液圧を導入することで、ブレーキ液収容室である中空部14a内にW/C圧を発生させられるようになっており、中空部14a内に回転軸17、推進軸18、ピストン19などを備えて構成されている。
回転軸17は、一端がボディ14に形成された挿入孔14cを通じて平歯車16に連結され、平歯車16が回動させられると、平歯車16の回動に伴って回動させられる。この回転軸17における平歯車16と連結された端部とは反対側の端部において、回転軸17の外周面には雄ネジ溝17aが形成されている。一方、回転軸17の他端は、挿入孔14cに挿入されることで軸支されている。具体的には、挿入孔14cには、Oリング20と共に軸受け21が備えられており、Oリング20にて回転軸17と挿入孔14cの内壁面との間を通じてブレーキ液が漏れ出さないようにされながら、軸受け21により回転軸17の他端を軸支持している。
推進軸18は、中空状の筒部材からなるナットにて構成され、内壁面に回転軸17の雄ネジ溝17aと螺合する雌ネジ溝18aが形成されている。この推進軸18は、例えば回転防止用のキーを備えた円柱状もしくは多角柱状に構成されることで、回転軸17が回動しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられない構造になっている。このため、回転軸17が回動させられると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いにより、回転軸17の回転力を回転軸17の軸方向に推進軸18を移動させる力に変換する。推進軸18は、モータ10の駆動が停止されると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により同じ位置で止まるようになっており、目標とする電動制動力になったときにモータ10の駆動を停止すれば、推進軸18がその位置で保持され、所望の電動制動力を保持してセルフロック(以下、単に「ロック」という。)できるようになっている。
ピストン19は、推進軸18の外周を囲むように配置されるもので、有底の円筒部材もしくは多角筒部材にて構成され、外周面がボディ14に形成された中空部14aの内壁面と接するように配置されている。ピストン19の外周面とボディ14の内壁面との間のブレーキ液漏れが生じないように、ボディ14の内壁面にシール部材22が備えられ、ピストン19の端面にW/C圧を付与できる構造とされている。シール部材22は、ロック制御後のリリース制御時にピストン19を引き戻すための反力を発生させるために用いられる。このシール部材22を備えてあるため、基本的には旋回中に傾斜したブレーキディスク12によってブレーキパッド11およびピストン19がシール部材22の弾性変形量を超えない範囲で押し込まれても、それらをブレーキディスク12側に押し戻してブレーキディスク12とブレーキパッド11との間が所定のクリアランス(図2のクリアランスC2)で保持されるようにできる。
また、ピストン19は、回転軸17が回転しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられないように、推進軸18に回転防止用のキーが備えられる場合にはそのキーが摺動するキー溝が備えられ、推進軸18が多角柱状とされる場合にはそれと対応する形状の多角筒状とされる。
このピストン19の先端にブレーキパッド11が配置され、ピストン19の移動に伴ってブレーキパッド11を紙面左右方向に移動させるようになっている。具体的には、ピストン19は、推進軸18の移動に伴って紙面左方向に移動可能で、かつ、ピストン19の端部(ブレーキパッド11が配置された端部と反対側の端部)にW/C圧が付与されることで推進軸18から独立して紙面左方向に移動可能な構成とされている。そして、推進軸18が通常リリースのときの待機位置であるリリース位置(モータ10が回転させられる前の状態)のときに、中空部14a内のブレーキ液圧が付与されていない状態(W/C圧=0)であれば、後述するシール部材22の弾性力によりピストン19が紙面右方向に移動させられ、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から離間させられるようになっている。
また、モータ10が回転させられて推進軸18が初期位置から紙面左方向に移動させられているときには、W/C圧がゼロになっても、移動した推進軸18によってピストン19の紙面右方向への移動が規制され、ブレーキパッド11がその場所で保持される。なお、図2のクリアランスC1は、推進軸18の先端とピストン19の間の距離を示す。EPBのリリース完了後、推進軸18は、ボディ14に対し位置固定される。
このように構成された車輪ブレーキ機構では、サービスブレーキ1が操作されると、それにより発生させられたW/C圧に基いてピストン19が紙面左方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、サービスブレーキ力を発生させる。また、EPB2が操作されると、モータ10が駆動されることで平歯車15が回転させられ、それに伴って平歯車16および回転軸17が回転させられるため、雄ネジ溝17aおよび雌ネジ溝18aの噛合いに基いて推進軸18がブレーキディスク12側(紙面左方向)に移動させられる。そして、それに伴って推進軸18の先端がピストン19に当接してピストン19を押圧し、ピストン19も同方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、電動制動力を発生させる。このため、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対してブレーキ力を発生させる共用の車輪ブレーキ機構とすることが可能となる。
なお、第1実施形態の車両用ブレーキ装置では、モータ10の電流を検出する電流センサ(不図示)による電流検出値を確認することにより、EPB2による電動制動力の発生状態を確認したり、その電流検出値を認識したりすることができるようになっている。
前後Gセンサ25は、車両の前後方向(進行方向)のG(加速度)を検出し、検出信号をEPB-ECU9に送信する。
M/C圧センサ26は、M/C5におけるM/C圧を検出して、検出信号をEPB-ECU9に送信する。
温度センサ28は、車輪ブレーキ機構(例えばブレーキディスク)の温度を検出して、検出信号をEPB-ECU9に送信する。
車輪速センサ29は、各車輪の回転速度を検出し、検出信号をEPB-ECU9に送信する。なお、車輪速センサ29は、実際には各車輪に対応して1つずつ設けられるが、ここでは、詳細な図示や説明を省略する。
EPB-ECU9は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムにしたがってモータ10の回転を制御することにより駐車ブレーキ制御を行うものである。また、EPB-ECU9は、左車輪(例えば左後輪)側に設けられた左モータ(モータ10)を駆動することによって左車輪に電動制動力を発生させ、右車輪(例えば右後輪)側に設けられた右モータ(モータ10)を駆動することによって右車輪に電動制動力を発生させる電動ブレーキ装置を備える車両に適用される制動制御装置である。
EPB-ECU9は、例えば車室内のインストルメントパネル(図示せず)に備えられた操作SW(スイッチ)23の操作状態に応じた信号等を入力し、操作SW23の操作状態に応じてモータ10を駆動する。さらに、EPB-ECU9は、モータ10の電流検出値に基いてロック制御やリリース制御などを実行するものであり、その制御状態に基いてロック制御中であることやロック制御によって車輪がロック状態であること、および、リリース制御中であることやリリース制御によって車輪がリリース状態(EPB解除状態)であることを認識する。そして、EPB-ECU9は、インストルメントパネルに備えられた表示ランプ24に対し、各種表示を行わせるための信号を出力する。
以上のように構成された車両用ブレーキ装置では、基本的には、車両走行時にサービスブレーキ1によってサービスブレーキ力を発生させることで車両に制動力を発生させるという動作を行う。また、サービスブレーキ1によって車両が停車した際に、運転者が操作SW23を押下してEPB2を作動させて電動制動力を発生させることで停車状態を維持したり、その後に電動制動力を解除したりするという動作を行う。すなわち、サービスブレーキ1の動作としては、車両走行時に運転者によるブレーキペダル3の操作が行われると、M/C5に発生したブレーキ液圧がW/C6に伝えられることでサービスブレーキ力を発生させる。また、EPB2の動作としては、モータ10を駆動することでピストン19を移動させ、ブレーキパッド11をブレーキディスク12に押し付けることで電動制動力を発生させて車輪をロック状態にしたり、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から離すことで電動制動力を解除して車輪をリリース状態にしたりする。
具体的には、ロック・リリース制御により、電動制動力を発生させたり解除したりする。ロック制御では、モータ10を正回転させることによりEPB2を作動させ、EPB2にて所望の電動制動力を発生させられる位置でモータ10の回転を停止し、この状態を維持する。これにより、所望の電動制動力を発生させる。リリース制御では、モータ10を逆回転させることによりEPB2を作動させ、EPB2にて発生させられている電動制動力を解除する。
また、車両の走行時であっても、例えば、緊急時、自動運転時、サービスブレーキ1の故障時等、EPB2を使用することが有効な場面もあるので、それらの場面ではEPB2を使用してもよい。
また、EPB-ECU9は、EPB2による制動の実行時における左モータと右モータの停止タイミングが異なることによる違和感や不快感を低減するために、以下の処理を行う。なお、左モータと右モータの停止タイミングが異なる原因は、例えば、左モータと右モータに関して、回転速度等の特性に違いがあることや、作動開始時のクリアランスC1、C2が違っていたりすることなどである。
EPB-ECU9は、EPB2に対する駆動要求があった場合、停車保持に必要な目標制動力を算出するとともに、目標制動力を発生させるための左モータに対する目標電流値である左目標電流値と、右モータに対する目標電流値である右目標電流値とを算出する。また、EPB-ECU9は、左モータと右モータを駆動して、左モータの実電流値が左目標電流値以上に到達したことと、右モータの実電流値が右目標電流値以上に到達したこととの一方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させる停止制御を実行する。
また、EPB-ECU9は、停止制御を実行する前に、他方の左モータ、または、右モータの実電流値が目標電流値以上に到達しているという条件が満たされているか否かを判断し、条件が満たされていないと判断した場合、停止制御の実行を禁止し、他方の左モータ、または、右モータの実電流値を目標電流値以上に到達させた後、停止制御を許可して左モータと右モータの両方を同時に停止させるようにしてもよい。
また、EPB-ECU9は、停止制御の実行後、車両のずり下がりを検知した場合、目標制動力を高くするよう補正し、補正後の前記目標制動力を発生させるように左モータと右モータの少なくとも一方を駆動させるようにしてもよい。その場合、EPB-ECU9は、車両のずり下がりを、例えば、車輪速センサ29による検出信号に基いて検知することができる。
また、EPB-ECU9は、停止制御の実行後、左車輪と右車輪において発生している制動力の合計が目標制動力よりも低い場合、左モータと右モータの少なくとも一方を駆動して目標制動力を発生させる調整制御を実行してもよい。その場合、EPB-ECU9は、乗員が降車したことを推定するための所定の車両操作を検知するまでは調整制御を禁止し、所定の車両操作を検知した場合に調整制御を実行するようにしてもよい。所定の車両操作とは、例えば、シフトレバーがパーキング位置になったことや、イグニッションスイッチがオフにされたことや、シートベルトが解除されたことや、ドアが開放されたことなどである。
また、EPB-ECU9は、調整制御を実行できない場合、乗員に報知する報知制御を実行してもよい。調整制御を実行できない場合とは、例えば、故障によって調整制御を開始できない場合や、調整制御を開始したが所定時間内に終了せず、調整制御を完了できなかったものとする場合である。その場合、例えば、表示ランプ24を点滅表示させることによって、調整制御を実行できないことを乗員に報知すればよい。なお、調整制御が所定時間内に終了しない原因としては、例えば、供給電圧低下等が考えられる。
次に、図3を参照して、第1実施形態の制動制御装置による全体処理について説明する。図3は、第1実施形態の制動制御装置による全体処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、EPB-ECU9は、EPB2によるロック制御の要求があったか否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS1に戻る。例えば、運転者が停車後にEPB2の作動のために操作SW23の操作を行った場合、ステップS1でYesとなる。
ステップS2において、EPB-ECU9は、ロック制御の処理を実行する。ここで、図4は、第1実施形態の制動制御装置によるロック制御の処理を示すフローチャートである。ステップS201において、EPB-ECU9は、停車保持に必要な目標制動力を算出する。
次に、ステップS202において、EPB-ECU9は、目標制動力を発生させるための左モータに対する左目標電流値と、右モータに対する右目標電流値を算出する。
次に、ステップS203において、EPB-ECU9は、左モータと右モータをロック側に駆動する。
次に、ステップS204において、EPB-ECU9は、左モータの実電流値(左実電流値)が左目標電流値に到達したか否かを判定し、Yesの場合はステップS206に進み、Noの場合はステップS205に進む。
ステップS205において、EPB-ECU9は、右モータの実電流値(右実電流値)が右目標電流値に到達したか否かを判定し、Yesの場合はステップS206に進み、Noの場合はステップS204に戻る。
ステップS206において、EPB-ECU9は、左モータと右モータの両方を停止させる停止制御を実行する。
次に、ステップS207において、EPB-ECU9は、左実電流値をパラメータの左到達電流値に代入する。
次に、ステップS208において、EPB-ECU9は、右実電流値をパラメータの右到達電流値に代入する。
次に、ステップS209において、EPB-ECU9は、表示ランプ24を点灯(例えば赤色に点灯)させる。これで、ロック制御の処理を終了する。
図3に戻って、ステップS2の後、ステップS3において、EPB-ECU9は、実軸力推定の処理を実行する。ここで、図5は、第1実施形態の制動制御装置による実軸力推定の処理を示すフローチャートである。
ステップS31において、EPB-ECU9は、左到達電流値に基いて左推定軸力を算出する。具体的には、例えば、以下の式(1)を用いて算出する。
左推定軸力=左到達電流値×α+β ・・・式(1)
左推定軸力=左到達電流値×α+β ・・・式(1)
ここで、αとβは、係数であり、各部品の構造のバラツキによる固定値や、各部品の劣化や環境(温度等)等による可変値を考慮して決定される。また、この軸力の推定では、推定される軸力の幅のうち、例えば、部品劣化や環境(温度等)を考慮して安全側にたって低いほうの値を採用することが好ましいが、これに限定されない。また、式ではなくマップやテーブル等の情報に基いて算出してもよい。
次に、ステップS32において、EPB-ECU9は、右到達電流値に基いて右推定軸力を算出する。具体的な算出法はステップS31と同様である。
次に、ステップS33において、EPB-ECU9は、左推定軸力と右推定軸力を合計して総推定軸力を算出する。これで、実軸力推定の処理を終了する。
図3に戻って、ステップS3の後、ステップS4において、EPB-ECU9は、必要軸力算出の処理を実行する。ここで、図6は、第1実施形態の制動制御装置による必要軸力算出の処理を示すフローチャートである。
ステップS41において、EPB-ECU9は、各情報を取得する。各情報とは、例えば、車両重量(仕様または推定)、タイヤ径(仕様または推定)、パッド(ブレーキパッド11)μ(摩擦係数)(設計値または推定)、シリンダ有効径(設計値)、道路勾配(検出値または推定)である。
次に、ステップS42において、EPB-ECU9は、各情報に基いて必要制動力を算出する。具体的には、例えば、以下の式(2)を用いて算出する。
必要制動力=9.8(重力加速度)×車両重量×
Arcsin(道路勾配のtan値)×タイヤ径 ・・・式(2)
必要制動力=9.8(重力加速度)×車両重量×
Arcsin(道路勾配のtan値)×タイヤ径 ・・・式(2)
次に、ステップS43において、EPB-ECU9は、ステップS42で算出した必要制動力に基いて、必要軸力を算出する。具体的には、例えば、以下の式(3)を用いて算出する。
必要軸力=必要制動力/(2(パッド数)×パッドμ×シリンダ有効径)
・・・式(3)
これで、必要軸力算出の処理を終了する。
必要軸力=必要制動力/(2(パッド数)×パッドμ×シリンダ有効径)
・・・式(3)
これで、必要軸力算出の処理を終了する。
図3に戻って、ステップS4の後、ステップS5において、EPB-ECU9は、フォロー制御の処理を実行する。ここで、図7は、第1実施形態の制動制御装置によるフォロー制御の処理を示すフローチャートである。
ステップS501において、EPB-ECU9は、図5のステップS33で算出した総推定軸力が、図6のステップS43で算出した必要軸力以上か否かを判定し、Yesの場合はフォロー制御を終了し、Noの場合はステップS503に進む。
ステップS503において、EPB-ECU9は、調整制御が可能か否かを判定し、Yesの場合はステップS504に進み、Noの場合はステップS502に進む。例えば、調整制御を行うための装置が故障している場合、ステップS503でNoとなる。
ステップS504において、EPB-ECU9は、乗員が降車したことを推定するための所定の車両操作を検知したか否かを判定し、Yesの場合はステップS505に進み、Noの場合はステップS504に戻る。
ステップS505において、EPB-ECU9は、調整制御を開始する。
次に、ステップS506において、EPB-ECU9は、左実電流値と右実電流値を合計した総実電流値が目標電流値以上か否かを判定し、Yesの場合はステップS509に進み、Noの場合はステップS507に進む。
ステップS509において、EPB-ECU9は、調整制御を終了し、フォロー制御の処理を終了する。
ステップS507において、EPB-ECU9は、調整制御の開始(ステップS505)から所定時間が経過したか否かを判定し、Yesの場合はステップS508に進み、Noの場合はステップS506に戻る。
ステップS508において、EPB-ECU9は、調整制御を終了する。ステップS502において、EPB-ECU9は、表示ランプ24を点灯から点滅(例えば赤色の点滅)に変更し、フォロー制御の処理を終了する。
図3に戻って、ステップS5の後、ステップS6において、EPB-ECU9は、車両のずり下がりを検知したか否かを判定し、Yesの場合はステップS7進み、Noの場合はステップS6に戻る。
ステップS7において、EPB-ECU9は、再ロック制御の処理を実行する。なお、説明の都合上、ステップS5の後にステップS6を実行するものとしたが、実際には、ステップS2の終了後は、常に、このステップS6およびステップS6でYesの場合のステップS7の処理を実行するようにしてもよい。
具体的には、ステップS7において、EPB-ECU9は、車両のずり下がりが停止するように、左モータと右モータの少なくとも一方を駆動させ、制動力を大きくする。その場合、実制動力が目標制動力に達していない場合は、例えば、目標制動力をそのままとして再ロック制御の処理を実行すればよい。また、実制動力が目標制動力に達しているにもかかわらず車両のずり下がりが発生している場合は、必要に応じて目標制動力を高くするように補正し、その補正後の目標制動力に基いて再ロック制御の処理を実行すればよい。
このようにして、第1実施形態によれば、EPB2による制動の実行時に、最初のロック制御(図3、図4のステップS2)において、左モータと右モータを同時に停止させる(図4のステップS206)ので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
次に、図8~図11を参照して、第1の制御例~第4の制御例について説明する。図8は、第1実施形態における第1の制御例を示すタイムチャートである。開始時において、車両は停止しているものとする。
まず、時刻t1においてロック制御(ステップS2)が開始する。その後、時刻t2において、右実電流値と左実電流値が突入電流後の安定状態に入る。その後、右実電流値は、時刻t3で上昇を開始し、時刻t5で右目標電流値に到達する(図4のステップS205でYes)。また、左実電流値は、時刻t3よりも遅い時刻t4で上昇を開始し、時刻t5ではまだ左目標電流値に到達していない。
この状態で、左モータと右モータが停止する(図4のステップS206)ので、時刻t5で右実電流値と左実電流値はゼロまで低下する。
この場合、右推定軸力は時刻t3から時刻t5まで上昇し、左推定軸力は時刻t4から時刻t5まで上昇するが、左実電流値が左目標電流値に到達していないことから、右推定軸力と左推定軸力を合計した総推定軸力は時刻t5において必要軸力に到達していない。
そして、この第1の制御例では、図7のステップS504がないものとし、すぐに調整制御を開始する(図7のステップS505)ものとする。その場合、左モータの左実電流値は、時刻t5の直後の時刻t6において突入電流によって急上昇し、時刻t7で安定状態に入ってその後上昇し、時刻t8で左目標電流値に到達してからゼロまで低下する。
これにより、左推定軸力が時刻t7から時刻t8まで上昇し、右推定軸力と左推定軸力を合計した総推定軸力は時刻t8において必要軸力を上回っている。
また、表示ランプ24は、最初のロック制御が完了した時刻t5に消灯から点灯に変わる(図4のステップS209)。
このようにして、第1の制御例によれば、まず、最初のロック制御(時刻t1~t5)において、時刻t5で左モータと右モータを同時に停止させるので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
また、時刻t5において総推定軸力が必要軸力に到達していないが、その直後の時刻t6から調整制御を行うことで、総推定軸力を必要軸力に到達させることができ、安全性をより向上させることができる。
また、表示ランプ24による表示が、消灯から点灯に変わるだけで、調整制御を実行できない場合を示す点滅に変わらないので、乗員は、調整制御を実行できない事態が発生していないことを認識することができる。
次に、第2の制御例について説明する。図9は、第1実施形態における第2の制御例を示すタイムチャートである。時刻t1~t5については第1の制御例と同様なので、説明を省略する。
この第2の制御例では、最初のロック制御が完了した時刻t5の後に車両のずり下がりが発生した場合を想定する。その場合、時刻t11に車両のずり下がりが検知されると(図3のステップS6でYes)、再ロック制御が実行される(図3のステップS7)。具体的には、左モータの左実電流値は、時刻t11において突入電流によって急上昇し、時刻t12で安定状態に入ってその後上昇し、時刻t13で右目標電流値に到達してからゼロまで低下する。
これにより、左推定軸力が時刻t12から時刻t13まで上昇し、右推定軸力と左推定軸力を合計した総推定軸力は時刻t13において必要軸力を上回っている。
このようにして、第2の制御例によれば、まず、最初のロック制御(時刻t1~t5)において、時刻t5で左モータと右モータを同時に停止させるので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
また、車両のずり下がりの発生に対応して制動力を増加させるので、安全性の面でも問題がない。
また、表示ランプ24による表示が、消灯から点灯に変わるだけで、調整制御を実行できない場合を示す点滅に変わらないので、乗員は、調整制御を実行できない事態が発生していないことを認識することができる。
次に、第3の制御例について説明する。図10は、第1実施形態における第3の制御例を示すタイムチャートである。時刻t1~t5については第1の制御例と同様なので、説明を省略する。
この第3の制御例では、最初のロック制御が完了した時刻t5の後に故障により調整制御が不能になった場合を想定する。その場合、時刻t21に故障により調整制御が不能になったことが検知されると(図7のステップS503でNo)、表示ランプ24が点灯から点滅に変わる(図7のステップS502)。
このようにして、第3の制御例によれば、まず、最初のロック制御(時刻t1~t5)において、時刻t5で左モータと右モータを同時に停止させるので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
また、表示ランプ24による表示が、故障により調整制御が不能になると点灯から点滅に変わるので、乗員は、調整制御を実行できない事態が発生していることを認識し、対応することができる。
次に、第4の制御例について説明する。図11は、第1実施形態における第4の制御例を示すタイムチャートである。時刻t1~t5については第1の制御例と同様なので、説明を省略する。
この第4の制御例では、最初のロック制御が完了した時刻t5の後に調整制御を実行するが所定時間内に完了できない場合を想定する。その場合、左モータの左実電流値は、時刻t5の直後の時刻t6において突入電流によって急上昇し、時刻t7で安定状態に入ってその後上昇するが、所定時間が経過した時刻t31で左目標電流値に到達していないため調整制御終了となりゼロまで低下する(図7のステップS507でYes→ステップS508)。
これにより、左推定軸力が時刻t7から時刻t31までわずかに上昇するが、右推定軸力と左推定軸力を合計した総推定軸力は時刻t31において必要軸力に到達していない。
また、表示ランプ24は、最初のロック制御が完了した時刻t5に消灯から点灯に変わり、さらに、時刻t31において点灯から点滅に変わる(図7のステップS508の後のステップS502)。
このようにして、第4の制御例によれば、まず、最初のロック制御(時刻t1~t5)において、時刻t5で左モータと右モータを同時に停止させるので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
また、調整制御が完了しなかったことに対応して時刻t31において表示ランプ24による表示が点灯から点滅に変わるので、乗員は、調整制御を実行できない事態が発生していることを認識し、対応することができる。
また、第1の制御例~第4の制御例に共通して、左モータを早く停止させることによって、次のような効果もある。まず、次のリリース動作時間を短くすることができる。また、消費電力を小さく抑えることができる。また、キャリパ13への負担を低減することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第1実施形態では、左実電流値が左目標電流値に到達したことと、右実電流値が右目標電流値に到達したことの、一方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させることとした。第2実施形態では、その一方だけではなく両方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させる。
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第1実施形態では、左実電流値が左目標電流値に到達したことと、右実電流値が右目標電流値に到達したことの、一方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させることとした。第2実施形態では、その一方だけではなく両方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させる。
図12は、第2実施形態の制動制御装置によるロック制御の処理を示すフローチャートである。図12のフローチャートは、図4のフローチャートと比較して、ステップS204がステップS204aに置き換えられ、また、ステップS205が削除されている点で異なっている。以下、相違点についてのみ説明する。
ステップS203の後、ステップS204aにおいて、EPB-ECU9は、左モータの実電流値(左実電流値)が左目標電流値に到達したことと、右モータの実電流値(右実電流値)が右目標電流値に到達したことの、両方が成立したか否かを判定し、Yesの場合はステップS206に進み、Noの場合はステップS204aに戻る。
図13は、第2実施形態における制御例を示すタイムチャートである。なお、必要軸力(バラツキなし)とは、各部品の経年劣化や個体バラツキを考慮しない場合の必要軸力であり、例えば、一番安全側にたった値として設定される。また、必要軸力(バラツキあり)とは、各部品の経年劣化や個体バラツキを考慮した場合の必要軸力であり、例えば、各情報に基いて適宜算出されるか、あるいは、各条件を考慮して設定される。したがって、一般的に、必要軸力(バラツキなし)よりも必要軸力(バラツキあり)のほうが大きい値となる。
時刻t1~t3については図8と同様なので、説明を省略する。右実電流値は、時刻t3で上昇を開始し、時刻t5で右目標電流値に到達するが、その後も上昇を続ける。また、左実電流値は、時刻t4で上昇を開始し、時刻t5を過ぎて時刻t42で左目標電流値に到達する(図12のステップS204aでYes)。
この状態で、左モータと右モータが停止する(図12のステップS206)ので、時刻t42で右実電流値と左実電流値はゼロまで低下する。
この場合、右推定軸力は時刻t3から時刻t42まで上昇し、左推定軸力は時刻t4から時刻t42まで上昇し、総推定軸力は時刻t42において必要軸力(バラツキなし)と必要軸力(バラツキあり)のいずれにも到達している。したがって、その後に調整制御を実行する必要がない。
このようにして、第2実施形態によれば、最初のロック制御(時刻t1~t42)において、時刻t42で左モータと右モータを同時に停止させるので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
また、左実電流値が左目標電流値に到達し、かつ、右実電流値が右目標電流値に到達した場合に左モータと右モータの両方を同時に停止させるので、総推定軸力が必要軸力(バラツキなし)と必要軸力(バラツキあり)のいずれにも到達しており、安全性をより向上させることができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第2実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第2実施形態では、左実電流値が左目標電流値に到達したことと、右実電流値が右目標電流値に到達したことの、両方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させることとした。第3実施形態では、その両方が成立する前でも、現総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)に到達したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させる。
次に、第3実施形態について説明する。第2実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第2実施形態では、左実電流値が左目標電流値に到達したことと、右実電流値が右目標電流値に到達したことの、両方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させることとした。第3実施形態では、その両方が成立する前でも、現総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)に到達したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させる。
図14は、第3実施形態の制動制御装置によるロック制御の処理を示すフローチャートである。図14のフローチャートは、図12のフローチャートと比較して、ステップS211~S213が追加されている点で異なっている。以下、相違点についてのみ説明する。
ステップS204aでNoの場合、ステップS211において、EPB-ECU9は、現軸力推定を行う。図15は、第3実施形態の制動制御装置による現軸力推定の処理を示すフローチャートである。
ステップS2111において、EPB-ECU9は、左実電流値に基いて現左推定軸力を算出する。次に、ステップS2112において、EPB-ECU9は、右実電流値に基いて現右推定軸力を算出する。次に、ステップS2113において、EPB-ECU9は、現左推定軸力と現右推定軸力を加算することで、総推定軸力を算出する。これで、現軸力推定の処理を終了する。
図14に戻って、ステップS211の後、ステップS212において、EPB-ECU9は、必要軸力(バラツキあり)推定を行う。図16は、第3実施形態の制動制御装置による必要軸力(バラツキあり)推定の処理を示すフローチャートである。
ステップS212において、EPB-ECU9は、各情報(図6のステップS41参照)を取得する。次に、ステップS2122において、EPB-ECU9は、各情報に基いて必要制動力(バラツキあり)を算出する。次に、ステップS2123において、EPB-ECU9は、ステップS42で算出した必要制動力(バラツキあり)に基いて、必要軸力(バラツキあり)を算出する。これで、必要軸力(バラツキあり)推定の処理を終了する。
図14に戻って、ステップS212の後、ステップS213において、EPB-ECU9は、現総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)以上か否かを判定し、Yesの場合はステップS206に進み、Noの場合はステップS204aに戻る。
このような処理を実行することにより、例えば、図13の例では、時刻t42よりも前の時刻41に、現総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)に到達して、右モータと左モータを同時に停止させることができる。したがって、必要な軸力を発生しつつ、過度な軸力の発生を抑制でき、各部品に対する過剰な負荷を抑制し、各部品の長寿命化を図ることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第2実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第2実施形態では、左実電流値が左目標電流値に到達したことと、右実電流値が右目標電流値に到達したことの、両方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させることとした。第4実施形態では、その両方が成立する前でも、EPB-ECU9は、左モータの実電流値が左目標電流値よりも大きく設定される左限界電流値に到達したとき、または、右モータの実電流値が右目標電流値よりも大きく設定される右限界電流値に到達したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させる。なお、左限界電流値と右限界電流値は、各部品の耐久性や環境等に基いて、算出または設定される。
次に、第4実施形態について説明する。第2実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。第2実施形態では、左実電流値が左目標電流値に到達したことと、右実電流値が右目標電流値に到達したことの、両方が成立したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させることとした。第4実施形態では、その両方が成立する前でも、EPB-ECU9は、左モータの実電流値が左目標電流値よりも大きく設定される左限界電流値に到達したとき、または、右モータの実電流値が右目標電流値よりも大きく設定される右限界電流値に到達したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させる。なお、左限界電流値と右限界電流値は、各部品の耐久性や環境等に基いて、算出または設定される。
図17は、第4実施形態の制動制御装置によるロック制御の処理を示すフローチャートである。図17のフローチャートは、図12のフローチャートと比較して、ステップS221が追加されている点で異なっている。以下、相違点についてのみ説明する。
ステップS204aでNoの場合、ステップS221において、EPB-ECU9は、左モータの実電流値が左限界電流値に到達したことと、右モータの実電流値が右限界電流値に到達したこと、の少なくとも一方が成立したか否かを判定し、Yesの場合はステップS206に進み、Noの場合はステップS204aに戻る。
図18は、第4実施形態における制御例を示すタイムチャートである。時刻t1~t3については図13と同様なので、説明を省略する。右実電流値は、時刻t3で上昇を開始し、時刻t5で右目標電流値に到達するが、その後も上昇を続け、時刻t51で右限界電流値に到達する(図17のステップS221でYes)。
この状態で、左モータと右モータが停止する(図17のステップS206)ので、時刻t51で右実電流値と左実電流値はゼロまで低下する。
この場合、右推定軸力は時刻t3から時刻t51まで上昇し、左推定軸力は時刻t4から時刻t51まで上昇し、総推定軸力は時刻t51において必要軸力(バラツキなし)と必要軸力(バラツキあり)のいずれにも到達している。したがって、その後に調整制御を実行する必要がない。なお、例えば、総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)に到達していない場合は、調整制御を実行してもよい。
このようにして、第4実施形態によれば、最初のロック制御(時刻t1~t51)において、時刻t51で左モータと右モータを同時に停止させるので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
また、左実電流値が左限界電流値に到達するか、あるいは、右実電流値が右限界電流値に到達したときに、左モータと右モータの両方を同時に停止させるので、各部品が破損したり劣化したりすることを抑制できる。
なお、右限界電流値や左限界電流値に代えて、図18に示す限界軸力(一例として左右モータ共通とする。)を用いて、左推定軸力と右推定軸力のいずれかがその限界軸力に到達した場合に左モータと右モータを同時に停止させるようにしてもよい。
また、第3実施形態の場合と同様に、現総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)に到達した場合は右モータと左モータを同時に停止させる、という処理を併用してもよい。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第1実施形態~第4実施形態の少なくともいずれかと同様の事項については説明を適宜省略する。第5実施形態の処理は、第1実施形態~第4実施形態の処理を組み合わせたものである。
次に、第5実施形態について説明する。第1実施形態~第4実施形態の少なくともいずれかと同様の事項については説明を適宜省略する。第5実施形態の処理は、第1実施形態~第4実施形態の処理を組み合わせたものである。
図19は、第5実施形態の制動制御装置によるロック制御の処理を示すフローチャートである。ステップS201~S205については、図4と同様である。ステップS211~S213は図14と同様である。ステップS204a、S221、S206~209については、図17と同様である。
つまり、この図19の処理では、ステップS204、S205のいずれかでYesになってステップS211に移行した後、ステップS213、S204a、S221のいずれかでYesになった場合に、ステップS206に移行する。これによって、よりきめ細かい処理を実現できる。
図20は、第5実施形態における制御例を示すタイムチャートである。時刻t1~t3については図13と同様なので、説明を省略する。右実電流値は、時刻t3で上昇を開始する。また、左実電流値は、時刻t4で上昇を開始する。そして、時刻t41で、総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)に到達する(図19のステップS213でYes)。
この状態で、左モータと右モータが停止する(図19のステップS206)ので、時刻t41で右実電流値と左実電流値はゼロまで低下する。
この場合、右推定軸力は時刻t3から時刻t41まで上昇し、左推定軸力は時刻t4から時刻t41まで上昇し、総推定軸力は時刻t41において必要軸力(バラツキあり)に到達している。したがって、その後に調整制御を実行する必要がない。
このようにして、第5実施形態によれば、最初のロック制御(時刻t1~t41)において、時刻t41で左モータと右モータを同時に停止させるので、作動音の左右差が生じることがなく、乗員に違和感や不快感を与えてしまう事態を回避できる。
また、総推定軸力が必要軸力(バラツキあり)に到達したときに左モータと右モータを同時に停止させるので、軸力が過不足なくより適切となる。
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、数等)は、適宜に変更して実施することができる。
例えば、上述の第1実施形態では、調整制御や再ロック制御において、左モータだけを駆動することとしたが、これに限定されず、右モータだけを駆動してもよいし、左モータと右モータの両方を駆動してもよい。
また、表示ランプ24による点灯や点滅のときの色は、赤色に限定されず、黄色等の他の色であってもよい。
また、上述の報知制御における報知の手法は、表示ランプ24による表示に限定されず、音声や画面表示等の別の手法であってもよい。
また、EPBによる制動の対象となる車輪は、後輪に限定されず、前輪であってもよい。また、本発明の対象となる車両の車輪数は、四輪に限定されず、六輪以上であってもよい。
また、図14のステップS213において、必要軸力(バラツキあり)の代わりに必要軸力(バラツキなし)を用いてもよい。
1…サービスブレーキ、2…EPB、5…M/C、6…W/C、7…アクチュエータ、8…ESC-ECU、9…EPB-ECU、10…モータ、11…ブレーキパッド(制動部材)、12…ブレーキディスク(被制動部材)、13…キャリパ、14…ボディ、14a…中空部、14b…通路、17…回転軸、17a…雄ネジ溝、18…推進軸、18a…雌ネジ溝、19…ピストン、23…操作SW、24…表示ランプ、25…前後Gセンサ、26…M/C圧センサ、28…温度センサ、29…車輪速センサ。
Claims (7)
- 左車輪側に設けられた左モータを駆動することによって左車輪に電動制動力を発生させ、右車輪側に設けられた右モータを駆動することによって右車輪に電動制動力を発生させる電動ブレーキ装置を備える車両に適用される制動制御装置であって、
前記電動ブレーキ装置に対する駆動要求があった場合、停車保持に必要な目標制動力を算出するとともに、前記目標制動力を発生させるための前記左モータに対する目標電流値である左目標電流値と前記右モータに対する目標電流値である右目標電流値とを算出し、前記左モータと前記右モータを駆動して、前記左モータの実電流値が前記左目標電流値以上に到達したことと、前記右モータの実電流値が前記右目標電流値以上に到達したこととの一方が成立したときに、前記左モータと前記右モータの両方を同時に停止させる停止制御を実行する電動ブレーキ制御部を備える制動制御装置。 - 前記電動ブレーキ制御部は、前記停止制御を実行する前に、他方の前記左モータ、または、前記右モータの実電流値が前記目標電流値以上に到達しているという条件が満たされているか否かを判断し、前記条件が満たされていないと判断した場合、前記停止制御の実行を禁止し、前記他方の前記左モータ、または、前記右モータの実電流値を前記目標電流値以上に到達させた後、前記停止制御を許可して前記左モータと前記右モータの両方を同時に停止させる、請求項1に記載の制動制御装置。
- 前記電動ブレーキ制御部は、前記左モータの実電流値が前記左目標電流値よりも大きく設定される左限界電流値に到達したとき、または、前記右モータの実電流値が前記右目標電流値よりも大きく設定される右限界電流値に到達したときに、前記左モータと前記右モータの両方を同時に停止させる、請求項1または請求項2に記載の制動制御装置。
- 前記電動ブレーキ制御部は、前記停止制御の実行後、前記車両のずり下がりを検知した場合、前記目標制動力を高くするよう補正し、補正後の前記目標制動力を発生させるように前記左モータと前記右モータの少なくとも一方を駆動させる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制動制御装置。
- 前記電動ブレーキ制御部は、前記停止制御の実行後、前記左車輪と前記右車輪において発生している制動力の合計が前記目標制動力よりも低い場合、前記左モータと前記右モータの少なくとも一方を駆動して前記目標制動力を発生させる調整制御を実行する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制動制御装置。
- 前記電動ブレーキ制御部は、乗員が降車したことを推定するための所定の車両操作を検知するまでは前記調整制御を禁止し、前記所定の車両操作を検知した場合に前記調整制御を実行する、請求項5に記載の制動制御装置。
- 前記電動ブレーキ制御部は、前記調整制御を実行できない場合、乗員に報知する報知制御を実行する、請求項5に記載の制動制御装置。
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WO2014013971A1 (ja) | 2012-07-16 | 2014-01-23 | 株式会社アドヴィックス | 電動駐車ブレーキ制御装置 |
WO2015163179A1 (ja) | 2014-04-22 | 2015-10-29 | Ntn株式会社 | ブレーキ装置 |
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