JP7221163B2 - 手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物 - Google Patents
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Description
[1]以下(1)~(3)の特性すべてを満たす架橋線維化コラーゲンゲルで構成された手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物。
(1)上記架橋線維化コラーゲンゲル中のコラーゲン濃度が、10~30質量%の範囲である。
(2)上記架橋線維化コラーゲンゲルの水抽出液の電気伝導度が、0.5~10mS/cmの範囲である。
ここで、上記水抽出液は、架橋線維化コラーゲンゲル1質量部に対しイオン交換水7質量部添加したものを粉砕し、遠心分離した後の上澄液である。
(3)上記架橋線維化コラーゲンゲルの10%歪み時強度が、0.5~50kPaの範囲である。
[2]手術用エネルギーデバイスが電気メスであって、電気メスのメス先電極としてモノポーラタイプのものを用い、前記手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物中の架橋線維化コラーゲンゲルに対して放電凝固の施術を行ったときに、当該架橋線維化コラーゲンゲルの表面が炭化する、上記[1]記載の手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物。
[3]上記[1]又は[2]記載の手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物を、手術用エネルギーデバイスの施術試験の被験物として用いる方法。
なお、本発明において、数値範囲に関する「数値1~数値2」という表記は、数値1を下限値とし数値2を上限値とする、両端の数値1及び数値2を含む数値範囲を意味し、「数値1以上数値2以下」と同義である。
(1)上記架橋線維化コラーゲンゲル中のコラーゲン濃度が、10~30質量%の範囲である。
(2)上記架橋線維化コラーゲンゲルの水抽出液の電気伝導度が、0.5~10mS/cmの範囲である。ここで、上記水抽出液は、架橋線維化コラーゲンゲル1質量部に対しイオン交換水7質量部添加したものを粉砕し、遠心分離した後の上澄液である。
(3)上記架橋線維化コラーゲンゲルの10%歪み時強度が、0.5~50kPaの範囲である。
線維化コラーゲンゲルを構成するコラーゲンの種類は、特に限定されることなく、例えば、希酸で抽出する方法によって得られる酸可溶化コラーゲン、酵素で可溶化処理する方法によって得られる酵素可溶化コラーゲン、アルカリで可溶化処理する方法によって得られるアルカリ可溶化コラーゲン等が挙げられる。また、コラーゲンの型も特に限定されることないが、生体内での存在量が多いI型コラーゲンが好ましい。また、抗原決定基であるテロペプタイドが除去されたアテロコラーゲンであることが好ましい。また、通常、哺乳類、魚介類、鳥類、爬虫類等の生物原料由来のコラーゲンであることが好ましいが、ヒトと共通のウイルスを有しない魚介類由来のコラーゲンがより好ましい。特に、魚類由来のコラーゲンが好適であり、採取部位としては鱗、皮等が挙げられる。鱗は、魚臭の原因となる脂質など不純物が少なく、純度が高いコラーゲンが得られることが利点である。好適な一態様は、魚類由来のI型アテロコラーゲンであり、更に好ましくは魚類の鱗由来のI型アテロコラーゲンである。また、製造時の操作の利便性の観点から、魚種の好例は、変性温度が高いオレオクロミス属である。オレオクロミス属の中でも中国から東南アジアにかけて食用として主力に養殖されており、入手が容易であるティラピアが特に好ましい。
架橋線維化コラーゲンゲルは、線維化コラーゲンゲルが架橋されたものである。架橋方法として、物理的架橋法と化学的架橋法が挙げられる。架橋方法は、上記特性(3)を満たす架橋線維化コラーゲンゲルが得られるのであれば、特に限定されることはない。架橋処理は、1種の架橋法によって施されたものであってもよいし、2種以上の架橋法が組み合わされて施されたものであってもよい。また、1種の架橋法が2回以上施されたものであってもよい。2種以上又は2回以上のときは、基本的には低架橋度が得られる架橋法の後に高架橋度が得られる架橋法によって架橋処理されることが好ましいが、高架橋度が得られる複数種の架橋法によって架橋処理されても構わない。架橋法及び架橋度合いを適切に選択・設計することが好ましい。
この点につき、物理的架橋法と化学的架橋法について説明すると、物理的架橋法によって架橋された架橋線維化コラーゲンゲルについては、未架橋線維化コラーゲンゲルとの違いは架橋点の多寡くらいしかないため、分析によって両者を判別することは極めて困難である。また、化学的架橋法によって架橋された架橋線維化コラーゲンゲルについては、仮に、化学架橋剤を検出できれば、両者の判別は可能であるが、EDCのようにコラーゲンと結合しないタイプのものを用いたときには、架橋体を分析しても化学的架橋剤の痕跡を見出すことはほぼ不可能である。
特性(1)は、架橋線維化コラーゲンゲル中のコラーゲン濃度が、10~30質量%の範囲であることに関する。コラーゲン濃度が10質量%未満であると、架橋線維化コラーゲンゲルを電気メスで切開又は凝固したときに、火花が発生することがある。コラーゲン濃度が30質量%超であると、架橋線維化コラーゲンゲルの成形性が低下したり、十分な均一性が得られないことがある。コラーゲン濃度は、好ましくは15~25質量%の範囲である。
特性(2)は、架橋線維化コラーゲンゲルの水抽出液の電気伝導度(EC)が、0.5~10mS/cmの範囲であることに関する。この範囲内であれば、例えば、切開モードにおいて、電気メスのメス先電極に架橋線維化コラーゲンゲルの焦げつき(炭化物)が多量に引っ付くことなく、切開することが可能である。上記水抽出液を調製するための好適な一方法は、細かく刻んだ架橋線維化コラーゲンゲル1質量部に対しイオン交換水7質量部を添加し、これをホモジナイザーで粉砕した後、遠心分離することにより上澄液を得る方法である。ECの下限値は1mS/cmであることが好ましい。また、ECの上限値は、8mS/cmであることが好ましい。なお、上記EC値は、いずれも25℃換算の値である。
特性(3)は、架橋線維化コラーゲンゲルの10%歪み時強度が、0.5~50kPaの範囲であることに関する。10%歪み時強度が0.5kPa未満であると、生体組織から乖離した柔らかさとなる。10%歪み時強度が50kPa超であると、生体組織から乖離した硬さとなる。ところで、10%歪み時強度は、架橋処理だけでなく、特性(1)のコラーゲン濃度の影響も受けるため、10%歪み時強度が上記範囲内となるように、コラーゲン濃度を適宜設定することが好ましい。10%歪み時強度の下限は、好ましくは1kPaである。10%歪み時強度の上限については、好ましくは30kPaであり、より好ましくは20kPaであり、更に好ましくは10kPaであり、更により好ましくは5kPaである。
10%歪み時強度の測定方法は、以下のとおりである。
[1]架橋線維化コラーゲンゲルを上記測定装置の試料台上面に載置する。なお、架橋線維化コラーゲンゲルとしては、湿潤状態のものを供試する。架橋線維化コラーゲンゲルが液体中で保存されている場合は、液体から取り出してそのまま供試する。架橋線維化コラーゲンゲルが液体中で保存されていない場合は、D-PBS中に1日以上完全に浸漬させた後、D-PBSから取り出してそのまま供試する。測定中は、架橋線維化コラーゲンゲルの湿潤状態が保たれるようにする。
[2]プローブを鉛直下向きに0.1mm/secの一定速度で移動させる。このプローブ移動条件下で次の[3]と[4]を実施する。
[3]プローブが架橋線維化コラーゲンゲルに接した後、0.5g応力が計測されたときの試料台上面からの高さを基準高さHとする。
[4]架橋線維化コラーゲンゲルが基準高さHから10%歪んだとき、即ち、プローブと接している部分の架橋線維化コラーゲンゲルの試料台上面からの高さが0.9Hとなったときの応力を10%歪み時強度として測定する。
架橋線維化コラーゲンゲルの形状は、特に限定されることはなく、目的に応じて種々の形状をとることができる。形状は、線維化コラーゲンゲルを得る過程において目的とする形状の容器を用いることによって形成させてもよいし、線維化コラーゲンゲルを得た後又は架橋線維化コラーゲンゲルを得た後に所定の形状に加工してもよい。
架橋線維化コラーゲンゲルは、その他成分の1つとして、水を含有する。また、その他成分として水以外の成分を含む場合の好例は、フィブリン、トロンビン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸等である。
本発明の組成物は、架橋線維化コラーゲンゲルのみで構成されたものであってもよいが、手術用エネルギーデバイスの施術試験が阻害されない限り、試験目的に応じて、付加物として架橋線維化コラーゲンゲル以外のものを含んでいても構わない。付加物として、例えば、架橋線維化コラーゲンゲルと接着したもの、架橋線維化コラーゲンゲルに嵌装(嵌装には、嵌合、遊嵌等の概念も含まれるものとする)したもの、架橋線維化コラーゲンゲルに包埋されたもの等が挙げられる。付加物の形状として、例えば、シート状、フィルム状、ヒモ状、棒状、板状、織物状、不織布状、チューブ状等の各種形状が挙げられる。付加物の接着、嵌装又は包埋は、架橋線維化コラーゲンゲルの全体に対してであってもよいし、一部に対してであってもよい。付加物の構成材料として、例えば、乳酸ポリマー、乳酸-グリコール酸共重合体、乳酸-カプロラクトン共重合体、乳酸-グリコール酸-カプロラクトン共重合体、PVA、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、寒天、ゼラチン、アルギン、キチン、キトサン、未架橋コラーゲン、架橋コラーゲン等が挙げられる。
本発明の組成物は、これを被験物として、手術用エネルギーデバイスの施術試験方法に用いることができるものである。例えば、手術用エネルギーデバイスが電気メスである場合、当該施術試験方法は、電気メスによる切開及び/又は凝固の試験方法である。ここで、電気メスのメス先電極としては、モノポーラタイプとバイポーラタイプが挙げられ、また、凝固としては、放電凝固とソフト凝固が挙げられる。被験物としての用い方は、特に限定されることはなく、常法に従って用いればよい。
コラーゲン水溶液として、ティラピアの鱗から製造された多木化学(株)製「ブルーコラーゲン F-15A」(コラーゲン濃度15質量%)を用いた。
コラーゲン水溶液をシリコンモールド(30mm×30mm×高さ5mm)に4.5g注入した。ここに5倍濃度のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)を注ぎ入れ、24時間静置することによって、線維化コラーゲンゲルを得た。
次に、線維化コラーゲンゲルを2質量%のDMT-MM溶液中に24時間浸漬し架橋を施した後、水道水を用いて流水洗浄した。得られた架橋線維化コラーゲンゲルを保存液A(防腐剤としてケーソンCGを600ppm添加した5倍濃度D-PBS)で共洗いした後、保存液A中に完全に浸漬させた状態で保存した。
実施例1と同様にして得られた架橋線維化コラーゲンゲルを保存液B(防腐剤としてケーソンCGを600ppm添加した2倍濃度D-PBS)で共洗いした後、保存液B中に完全に浸漬させた状態で保存した。
「ブルーコラーゲン F-15A」を常法によるPEGを用いた透析で濃縮することにより、コラーゲン濃度23質量%のコラーゲン水溶液を得た。このコラーゲン水溶液を用いて、実施例1と同様に実施することにより、架橋線維化コラーゲンゲルを得た。これを保存液Aで共洗いした後、保存液A中に完全に浸漬させた状態で保存した。
実施例1と同様にして得られた架橋線維化コラーゲンゲルを保存液C(防腐剤としてケーソンCGを600ppm添加したイオン交換水)で共洗いした後、保存液C中に完全に浸漬させた状態で保存した。
実施例1と同様にして得られた架橋線維化コラーゲンゲルを保存液D(防腐剤としてケーソンCGを600ppm添加した10倍濃度D-PBS)で共洗いした後、保存液D中に完全に浸漬させた状態で保存した。
「ブルーコラーゲン F-15A」をイオン交換水で希釈して、コラーゲン濃度1質量%のコラーゲン水溶液を調製した。このコラーゲン水溶液を用いて、実施例1と同様に実施することにより、架橋線維化コラーゲンゲルを得た。これを保存液Aで共洗いした後、保存液A中に完全に浸漬させた状態で保存した。
保存液から取り出した架橋線維化コラーゲンゲルを細かく刻み、試験管に入れた。この細かく刻んだ架橋線維化コラーゲンゲル1質量部に対し、イオン交換水を7質量部添加した。これをホモジナイザー(IKA製 ULTRA TURRAX T18basic DISPERSING TOOL S18N/19G)を用いて24000rpm・1分間粉砕した後、遠心分離により固形分を沈殿させた。上澄のECをHORIBA製pHメータ D-54にて測定した。
測定装置として、Stable Micro Systems社製の「TEXTURE ANALYSER TA.XT.plus」を用いた。また、そのプローブとして、Stable Micro Systems社製の「1/2″Cyl.Delrin(P/0.5)」を用いた。このプローブが試料と接触する部分の面積は1.27cm2である。プローブは、試料台の上方向に設置され、鉛直方向に移動する。
[1]保存液から取り出した湿潤状態のまま架橋線維化コラーゲンゲルを上記装置の水平な試料台上面に載置した。
[2]プローブを鉛直下向きに0.1mm/秒の一定速度で移動させた。このプローブ移動条件下で次の[3]と[4]を実施した。
[3]プローブが架橋線維化コラーゲンゲルに接した後、0.5g応力が計測されたときの試料台上面からの高さを基準高さHとした。
[4]架橋線維化コラーゲンゲルが基準高さHから10%歪んだとき、即ち、プローブと接している部分の架橋線維化コラーゲンゲルの試料台上面からの高さが0.9Hとなったときの応力を10%歪み時における圧縮強度として測定した。
なお、測定終了までの間、架橋線維化コラーゲンゲルの湿潤状態は維持されていた。
電気メス装置として、Erbe Elektromedizin GmbH製「VIO(登録商標) 200S」を用いた。メス先電極としてモノポーラタイプのものを用いた。切開には、「AUTO CUT」モードを用いた。放電凝固には、「FORCED COAG(登録商標)」モードを用いた。
架橋線維化コラーゲンゲルを切開と放電凝固のそれぞれに供した。切開時は切削感触を評価し、放電凝固時は炭化状態を評価した。
切開時の切削感触の評価は、新鮮な豚肉と同等の切削が得られたときを〇、それ以外を×とした。
放電凝固時の炭化状態の評価は、新鮮な豚肉と同等の炭化状態が得られたときを〇、それ以外を×とした。
Claims (3)
- 以下(1)~(3)の特性すべてを満たす架橋線維化コラーゲンゲルで構成された手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物。
(1)上記架橋線維化コラーゲンゲル中のコラーゲン濃度が、10~30質量%の範囲である。
(2)上記架橋線維化コラーゲンゲルの水抽出液の電気伝導度が、0.5~10mS/cmの範囲である。
ここで、上記水抽出液は、架橋線維化コラーゲンゲル1質量部に対しイオン交換水7質量部添加したものを粉砕し、遠心分離した後の上澄液である。
(3)上記架橋線維化コラーゲンゲルの10%歪み時強度が、0.5~50kPaの範囲である。 - 手術用エネルギーデバイスが電気メスであって、電気メスのメス先電極としてモノポーラタイプのものを用い、前記手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物中の架橋線維化コラーゲンゲルに対して放電凝固の施術を行ったときに、当該架橋線維化コラーゲンゲルの表面が炭化する、請求項1記載の手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物。
- 請求項1又は2記載の手術用エネルギーデバイスの施術試験用組成物を、手術用エネルギーデバイスの施術試験の被験物として用いる方法。
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