JP7219517B1 - 紙力増強剤の効果向上方法 - Google Patents
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Abstract
Description
近年、製紙工場では古紙の使用比率の増加により古紙由来の短繊維が含まれた紙力強度の弱い原料パルプが使用されている。また、古紙の使用により、抄紙白水中に含まれる金属イオンが抄紙系内の電気伝導度を上昇させ、原料パルプへ添加される紙力増強剤の効果を発揮しにくくしている。このような環境下で、紙力増強剤の効果を向上させる必要が生じているが、紙力増強剤の添加量を多くすることは水質の悪化を招き、環境上好ましくない。
また、製紙工程の原料を殺菌する方法が開示されている上記特許文献4にも紙力増強剤自体の効果を向上させる方法は開示されていなかった。
紙力増強剤の効果向上用組成物は、アンモニウム塩とハロゲン系酸化剤とを混合することにより生成される、又は、アンモニウム塩及びアルカリ剤を含む第一組成物とハロゲン系酸化剤とを混合する、若しくは、ハロゲン系酸化剤及びアルカリ剤を含む第二組成物とアンモニウム塩とを混合する、ことにより生成される、ことが好ましい。
アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、臭化アンモニウム及びスルファミン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ハロゲン系酸化剤は、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩及び二酸化塩素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ハロゲン系酸化剤とアンモニウム塩とのモル比(ハロゲン系酸化剤:アンモニウム塩)は、残留塩素量と窒素とのモル比として1:1~1:2であることが好ましい。
第一組成物のpHが、4.5~8.5であることが好ましい。
紙力増強剤の効果向上用組成物と、紙力増強剤とが接触する際の前記紙力増強剤の効果向上用組成物の接触濃度が、0.1~35mg/Lであることが好ましい。
組成物添加工程後の調成工程水中の残留塩素濃度が、0.1~35mg/Lであることが好ましい。
本発明は、上述した製紙工程中の調成工程における紙力増強剤の効果向上方法である。
具体的には、上記調成工程において、紙力増強剤を添加する紙力増強剤添加工程と、上記調成工程に添加される白水に上記紙力増強剤の効果向上用組成物を添加する組成物添加工程とを有する。
本発明における紙力増強剤としては、製紙工程で通常用いられているものを特に制限なく用いることができ、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性いずれのイオン性を持つものでもよい。例えば、カチオン性基が導入されたポリアクリルアミド、ポリアミドアミン・エピクロロヒドリン、ポリアミドアミン、グリオキサール変性ポリアミドアミン・エピクロロヒドリン、アミンポリエステルポリエーテル及びこれらの塩等のカチオン性の構造が導入された紙力増強剤;アニオン性基が導入されたポリアクリルアミド、ポリアクリルアミド-アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド部分加水物、ポリアクリルアミド-2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合物、カルボキシメチルセルロース及びこれらの塩等のアニオン性の構造が導入された紙力増強剤;ポリアクリルアミドやデンプンにカチオン性基とアニオン性基の両方が導入された化合物及びこれらの塩等の両性の構造が導入された紙力増強剤;ポリアクリルアミド、澱粉、ポリビニルアルコール及びこれらの塩等の非イオン性の構造をもつ紙力増強剤等が挙げられる。本発明における紙力増強剤としては、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これら紙力増強剤は溶液(液体)および粉体(固体)などどのような形態であっても良い。特に紙力増強効果を促進させる観点から、紙力増強剤としては、カチオン性紙力増強剤を用いることが好ましい。
上記カチオン性紙力増強剤として、例えば、内添紙力増強剤及び表面紙力増強剤が挙げられ、内添紙力増強剤はさらに乾燥紙力増強剤と湿潤紙力増強剤に分類される。内添紙力増強剤としてはポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドにカチオン性基、アニオン性基またはその両方を導入したもの及びポリアミドアミン・エピクロロヒドリン等が挙げられる。表面紙力増強剤としてはポリアクリルアミド及びポリビニルアルコール等が挙げられる。好ましくは、乾燥紙力増強剤としてポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドにカチオン性基、アニオン性基またはその両方を導入したもの、湿潤紙力増強剤としてポリアミドアミン・エピクロロヒドリンが好ましい。
また、製紙工程では様々な薬剤がその目的に応じて添加されており、例えば、pH調整剤(アルカリ剤)、サイズ剤、濾水性向上剤等も添加されている。これらの薬剤は、各薬剤の効果が発揮されるように添加されており、一つの薬剤の効果が他の薬剤により阻害されないように添加されている。
上述の通り、紙力増強剤には、カチオン性紙力増強剤とアニオン性紙力増強剤があるが、紙力増強剤の種類に応じて他の薬剤の添加位置を変更することは行われておらず、紙力増強剤は、アニオン性薬剤と接触しないように添加されている。なぜなら、カチオン性紙力増強剤とアニオン性薬剤(酸化剤等の殺菌剤)とが反応して凝集が生じると、紙力増強剤が均一に分散せずに薬剤効果が充分に発揮されない可能性が生じるためである。製紙工程における紙力増強剤の不均一分散は、製造される紙の品質悪化を招くため、従来は、紙力増強剤とアニオン系殺菌剤(酸化剤等)とは、反応する程度の濃度で接触しないように添加されていた。
一方、本発明は、紙力増強剤そのものの効果を向上させることを検討した結果、紙力増強剤に対し、紙力増強効果向上用組成物を特定の方法で接触させることにより、紙力増強剤の効果を向上できることを初めて見出し完成されたものである。
上記白水とは、製紙工程の各工程で生じる脱水、濾過され循環使用される処理水であり、調成工程に添加される白水は工場毎に異なるのが通常である。
1つは、製紙工程水に添加された組成物中の酸化剤が、製紙工程水に含まれるパルプ繊維上のアニオンと結合しているカチオン性のカルシウムイオンなどを剥離させ、繊維のアニオンをむき出しにすることで、カチオン基を有するカチオン性の紙力増強剤の定着を促進させていると考えられる。
もう1つは、製紙工程水に酸化剤が添加されると、塩素や臭素などのマイナスの電荷を帯びた成分を中心に、カチオン基を有する紙力増強剤が引き寄せられ、パルプ繊維と紙力増強剤とが凝集し、紙力増強効果が向上すると考えられる。
本発明では、上記調成工程に添加される白水に上記紙力増強剤の効果向上用組成物を添加する上記組成物添加工程を有することで、上記紙力増強剤の効果向上を十分に図ることができる。この理由は明確ではないが、以下の通りであると考えられる。なお、以下の説明は上記紙力増強剤の効果向上用組成物として後述するモノクロラミンを使用した場合で説明する。
モノクロラミンを添加した白水を調成工程に添加した場合と、調成工程に原料等と合せてモノクロラミンを添加した場合とを比較すると、モノクロラミンを添加した白水を調成工程に添加した場合の方が、調成工程における残留塩素濃度が高くなる。これはモノクロラミンを添加した白水を調成工程に添加した場合の方がモノクロラミンの無駄な消費が抑えられるからと考えられる。
また、白水中にモノクロラミンが分散されている状態で原料と一緒になることで効率よく紙力増強剤やパルプ繊維と接触することで効果が良くなっていると考えられる。
具体的には、上記効果向上用組成物としては、アンモニウム塩とハロゲン系酸化剤とを混合することにより生成される、又は、アンモニウム塩及びアルカリ剤を含む第一組成物とハロゲン系酸化剤とを混合する、若しくは、ハロゲン系酸化剤及びアルカリ剤を含む第二組成物とアンモニウム塩とを混合する、ことにより生成される、ことが好ましい。
また、上記モノクロラミン及び/又はモノブロラミンの作製時に、ハロゲン系酸化剤にアルカリ剤を含有させたものをアンモニウム塩と反応させて生成されるモノクロラミン及び/又はモノブロラミンは、アルカリ剤を含有しないハロゲン系酸化剤とアンモニウム塩とを反応させて生成される従来のモノクロラミン及び/又はモノブロラミン、並びに、従来のモノクロラミン及び/又はモノブロラミンにアルカリ剤を含有させたものと比較して、優れた紙力増強剤の効果向上作用を有する。
例えば、次のような反応により二酸化塩素を製造することができ、市販の二酸化塩素発生器(装置)を用いることもできる。
(1)次亜塩素酸ナトリウムと塩酸と亜塩素酸ナトリウムとの反応
NaOCl+2HCl+2NaClO2 → 2ClO2+3NaCl+H2O
(2)亜塩素酸ナトリウムと塩酸との反応
5NaClO2+4HCl → 4ClO2+5NaCl+2H2O
(3)塩素酸ナトリウム、過酸化水素および硫酸との反応
2NaClO3+H2O2+H2SO4 → 2ClO2+Na2SO4+O2+2H2O
具体的に、アンモニウム塩が硫酸アンモニウムである場合の第一組成物のpHが、4.5~8.5であることが好ましく、臭化アンモニウムである場合の第一組成物のpHが、7.0~8.5であることが好ましい。また、アンモニウム塩がスルファミン酸アンモニウムである場合の第一組成物のpHが、5.5~8.5であることが好ましい。
なお、本発明において、pHは、一般的に使用されている測定器を用いて測定することができ、例えば、堀場製作所製のpH計を用いて測定することができる。
なお、本明細書においては、「上流側」は、調成工程水の流れ方向に対する上流側を意味する。また、本明細書において、同一箇所とは、同一の機器、同一のタンク、同一の配管(機器と機器との間の配管)を意味する。
[原料の作製]
(1)段ボールを3cm×3cmの大きさに裁断したものを固形分濃度3%になるように上水に浸した後、実験室用離解機を用いて2000rpmの回転数で20分間離解を行った。
(2)得られたパルプスラリーから未離解物を取り除くため、実験室用フラットスクリーンに通し、得られたパルプスラリーのパルプ濃度が3%となるように調成し、これを原料とした。
[模擬白水の作製]
得られた原料を一部採取し、固形分濃度0.2%となるように上水で希釈し、これを模擬白水とした。
[原料の調成、紙力測定用シートの作製・紙力の測定]
(1)模擬白水に予め下記製法で得られた効果向上用組成物(1)又は効果向上用組成物(2)を、最終的に原料と模擬白水を混ぜてパルプ濃度1%のスラリーとなったものに対して、表1に示した濃度となるように添加し、スリーワンモーターを用いて150rpmで30秒間攪拌し、これを模擬白水(効果向上用組成物含)とした。なお、効果向上用組成物(1)又は(2)は、下記工程(2)で全ての薬剤を添加し、攪拌し終わって最終的に得られる調成した原料の一部を採取し、全残留塩素濃度を測定するために、対1%パルプスラリーの濃度で添加した。
<効果向上用組成物(1)>
硫酸アンモニウム(キシダ化学社製試薬)3.5mol/Lと次亜塩素酸ナトリウム(キシダ化学社製試薬)1.7mol/Lとを混合した反応物。
<効果向上用組成物(2)>
硫酸アンモニウム(キシダ化学社製試薬)3.5mol/L及び水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬社製試薬)2.7×10-3mol/Lを含む第一組成物(pH6.8)と次亜塩素酸ナトリウム(キシダ化学社製試薬)1.7mol/Lを含む第二組成物とを混合した反応物。
(2)原料をスリーワンモーターを用いて150rpmで攪拌しながら15秒おきに硫酸バンド(硫酸アルミニウム)(対パルプ30kg/ton)、サイズ剤(対パルプ6.0kg/ton)、下記紙力増強剤(対パルプ16kg/ton)を添加し、最後にパルプ濃度が1%になるように模擬白水(効果向上用組成物含)を加え、さらに60秒間攪拌した。得られた調成した原料の残留塩素濃度を測定した。結果を表1に示した。
紙力増強剤:内添タイプの乾燥紙力増強剤(カチオン性ポリアクリルアミド乾燥紙力増強剤)
(3)上記工程(2)で調成した原料を用いJIS P8222に準じてシートを作製した。
(4)得られたシートを用いJIS P8112の方法で比破裂強度を測定した。結果を表1に示した。
(残留塩素濃度の測定)
残留塩素測定器:笠原工業社製
(比破裂強度の測定)
比破裂試験機:日本T.M.C社製
(1)得られた各パルプシートの紙重量を測定し、坪量を算出した。
(2)(1)のパルプシートを、JIS P 8223「試験用手抄き紙-物理的特性の試験方法」に規定されている、JIS P 8112「紙及び板紙のミューレン低圧破裂試験機による破裂強さ試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。
(3)上記(1)で得られた坪量と上記(2)で得られた破裂強度から、比破裂強度を算出した。
(4)下記式に基づいて紙力向上率を算出し、表1に示した。
[式](紙力向上率)=(各実施例の比破裂強度)/(比較例1の比破裂強度)×100
[原料]
現場(某板紙工場)で採取した調成前原料(パルプ濃度3%)を準備した。
[白水]
現場(某板紙工場)で採取した白水を準備した。
[原料の調製、紙力測定用シートの作製・紙力の測定]
準備した白水に予め上記効果向上用組成物(2)を、最終的に原料と白水を混ぜてパルプ濃度1%のスラリーとなったものに対して、表2に示した濃度となるように添加し、スリーワンモーターを用いて150rpmで30秒間攪拌し、これを白水(効果向上用組成物含)とした。
模擬白水(効果向上用組成物含)に代えて得られた白水(効果向上用組成物含)を用いた以外は、実施例1と同様にして原料を調成し、シートの作製及び比破裂強度の測定をした。結果を表2に示した。
Claims (6)
- 製紙工程中の調成工程における紙力増強剤の効果向上方法であって、
前記調成工程において、紙力増強剤を添加する紙力増強剤添加工程と、前記調成工程に添加される白水に前記紙力増強剤の効果向上用組成物を添加する組成物添加工程とを有し、
前記組成物添加工程後の調成工程におけるパルプスラリーの残留塩素濃度が0.1~35mg/Lとなるような量の前記紙力増強剤の効果向上用組成物を前記白水に添加する
ことを特徴とする紙力増強剤の効果向上方法。 - 紙力増強剤の効果向上用組成物は、アンモニウム塩とハロゲン系酸化剤とを混合することにより生成される、又は、アンモニウム塩及びアルカリ剤を含む第一組成物とハロゲン系酸化剤とを混合する、若しくは、ハロゲン系酸化剤及びアルカリ剤を含む第二組成物とアンモニウム塩とを混合する、ことにより生成される、請求項1に記載の紙力増強剤の効果向上方法。
- アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、臭化アンモニウム及びスルファミン酸アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項2に記載の紙力増強剤の効果向上方法。
- ハロゲン系酸化剤は、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩及び二酸化塩素からなる群より選択される少なくとも1種である請求項2又は3に記載の紙力増強剤の効果向上方法。
- ハロゲン系酸化剤とアンモニウム塩とのモル比(ハロゲン系酸化剤:アンモニウム塩)は、残留塩素量と窒素とのモル比として1:1~1:2である請求項2、3又は4に記載の紙力増強剤の効果向上方法。
- 第一組成物のpHが、4.5~8.5である請求項2、3、4又は5に記載の紙力増強剤の効果向上方法。
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