JP7216625B2 - 電力変換器、並びに電力変換器の制御方法 - Google Patents
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Description
本発明は、太陽光発電システム用の電力変換器およびその制御方法に関する。
近年、電力固定金額買取り制度(以降、FITと記す)や税制上の優遇措置により、太陽光発電システムが世界中に普及している。大量普及と、市場競争原理により太陽光発電システムのkWあたりのコストが低下し、日射条件の良い地域においては火力発電などの従来の発電システムによる発電コストに比べて太陽光発電システムによる発電コストが安くなる、いわゆるグリッドパリティが成立し始めている。
一方で、太陽光発電が普及したことにより、地域によっては、FITでの電力買取り金額が低下したり、廃止されたりしている。これを受け、売電目的ではなく、太陽光で発電する電力を自設備内で消費する自家消費型太陽光発電の導入ケースが増えてきている。
電力系統運営者は、需要家内に発電設備が導入される場合、系統の安定運用のために、系統への逆潮流を防止する逆潮流防止リレーの設置を需要家に要求する場合がある。本リレーは、需要家の受電点電力を検出し、受電点電力に基づいて逆潮流の発生を検出した場合には、受電点の遮断器を開放する。そのため、逆潮流が発生すると需要家側は停電となる。このため、自家消費型太陽光発電システムでは逆潮流の発生を防止する手段が求められる。
逆潮流の防止に関する従来技術として、特許文献1および特許文献2に記載の技術が知られている。
特許文献1(段落0142~0150)に記載される技術では、集中管理装置が、連系点電力と逆潮流回避目標値とに基づいて、逆潮流を抑制するための抑制指標および充放電指標を算出し、算出した抑制指標および充放電指標を複数のパワーコンディショナに送信する。複数のパワーコンディショナは、受信したこれらの指標に応じて分散的に制御される。
特許文献2(要約書など)に記載される技術では、系統からの受電電力を測定する電力測定ユニットが、受電電力に関するデータと逆潮流の有無に関する信号をパワーコンディショナに送信する。パワーコンディショナは、受信したこれらデータおよび信号に基づいて、出力電力が制御される。
上記の従来技術では、電力変換器と制御手段との間の通信異常が発生すると、設備内負荷の低下や日射増加により逆潮流が発生するおそれがある。
そこで、本発明は、通信異常時に逆潮流の発生を防止できる電力変換器およびその制御方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明による電力変換器は、太陽光発電による直流電力を交流電力に変換するものであって、電力変換器の交流側は、電力系統から電力を受電しかつ負荷が接続される母線に接続され、通信によって取得される情報に基づいて電力変換器の出力電力の上限を設定して電力変換器の出力電力を制御する制御装置を備え、制御装置は、通信の異常が発生すると、出力電力の上限を、負荷に応じて設定される零より大きな所定値に切り替え、出力電力を抑制する。
また、上記課題を解決するために、本発明による電力変換器の制御方法は、太陽光発電による直流電力を交流電力に変換する電力変換器の制御方法であり、電力変換器の交流側は、電力系統から電力を受電しかつ負荷が接続される母線に接続され、通信によって取得される情報に基づいて電力変換器の出力電力の上限を設定して電力変換器の出力電力を制御し、通信の異常が発生すると、出力電力の上限を、負荷に応じて設定される零より大きな所定値に切り替え、出力電力を抑制する。
本発明によれば、通信異常時に、電力変換器の停止を回避しつつ、逆潮流を防止することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明の実施形態について、下記の実施例1~5により、図面を用いながら説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
図1は、本発明の実施例1である太陽光発電システムの全体構成図である。なお、本実施例1の太陽光発電システムは自家消費用である(他の実施例も同様)。
本太陽光発電システムから電力が供給される配電系統においては、太陽電池パネル90が発電する直流電力を交流電力に変換する電力変換器1の交流側および負荷70が母線80に接続される。なお、電力変換器1の交流側は、変圧器60を介して母線80に接続される。このような配電系統が、遮断器20を介して図示しない電力系統(例えば、商用交流電源系統)に接続される。したがって、電力変換器1を含む太陽光発電システムは、遮断器20を介して電力系統に連系している。
連系点における電力潮流は、電圧検出器10および電流検出器11を用いて検出される。電圧検出器10および電流検出器11による各検出値は、逆潮流防止リレー5000および監視制御装置30に出力される。逆潮流防止リレー5000は、所定値を超過する逆潮流が所定時間以上継続している場合に、遮断器20を開放することで、太陽光発電システムからの逆潮流を防止する。
本実施例では、逆潮流防止リレー5000は逆潮流検出条件成立時に遮断器20を開放するとしているが、電力変換器1へ停止指令を送信する構成としてもよい。
監視制御装置30は、電圧検出器10および電流検出器11による各検出値に基づいて、電力変換器1へ通信線40を介して発電電力上限値(Plim)および無効電力指令値(Qref)を送信する。電力変換器1は、通信線40を介して、電力変換器1が変圧器60へ出力する有効電力Pacおよび無効電力Qacの各値を監視制御装置30に送信する。
電力変換器1の主回路の直流側には太陽電池パネル90が接続されている。電力変換器1は、発電電力上限値(Plim)を超えない範囲で、太陽電池パネル90からの発電量を最大化するように、直流入力電圧を制御する。すなわち、電力変換器1においては、いわゆるMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御が実行される。
電力変換器1は、IGBTアセンブリ50、フィルタリアクトル55、電圧検出器12,15、電流検出器13,14および変換器制御装置100を備える。
IGBTアセンブリ50は電力変換器1の主回路を構成する。本実施例では、IGBTアセンブリ50は、図10(IGBTアセンブリ50の回路構成図)に示すように、3相2レベルの電圧形の電力変換器用アセンブリであり、半導体スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に環流ダイオードが逆並列に接続されるアームを備える、IGBTモジュールIGBT_UP,IGBT_UN,IGBT_VP,IGBT_VN,IGBT_WPおよびIGBT_WN、並びに直流コンデンサCdcを備える。IGBTモジュールIGBT_UP,IGBT_UN,IGBT_VP,IGBT_VN,IGBT_WPおよびIGBT_WNは三相フルブリッジ回路を構成し、三相フルブリッジ回路の直流側に、直流コンデンサCdcが接続される。
本図10においては、各IGBTモジュールについて、一つのアームが図示されているが、各IGBTモジュールは、電力変換器1の電力容量に応じて、一つないし、互いに並列接続される複数のアームを備える。また、各IGBTモジュールは、単位のIGBTモジュールが複数並列接続されるIGBTモジュール群から構成されてもよい。
なお、IGBTアセンブリ50は、2レベルの電力変換器用アセンブリに限らず、3レベルなどの電力変換器用アセンブリでもよい。
フィルタリアクトル55は、図1に示すように、IGBTアセンブリ50の交流側と変圧器60との間に接続される。フィルタリアクトル55は高調波フィルタとして機能する。なお、フィルタリアクトル55に代えて、LCフィルタやLCLフィルタなどの高調波フィルタが適用されてもよい。
電圧検出器12および電流検出器13は、フィルタリアクトル55を介して、それぞれIGBTアセンブリ50の交流側の電流および電圧を検出する。また、電圧検出器15および電流検出器14は、それぞれIGBTアセンブリ50の直流側の電流および電圧を検出する。
変換器制御装置100は、電圧検出器12,15および電流検出器13,14の検出値、並びに通信線40を介して受信する情報(発電電力上限値(Plim)および無効電力指令値(Qref))に応じて、IGBTアセンブリ50のゲート信号GateSigを算出して出力する。これにより、変換器制御装置100は、後述するように、発電電力制限および無効電力制御を実行する。
図2は、変換器制御装置100の構成を示す制御ブロック図である。
変換器制御装置100は、通信インターフェース1008、アナログセンサ(電流検出器13,14、電圧検出器12,15)用インターフェース1009、およびIGBTアセンブリ50にゲート信号を出力するPWMインターフェース1011を備える。
通信インターフェース1008は、通信線40を介して監視制御装置30に接続され、監視制御装置30から出力電力上限値Plimおよび無効電力指令値Qrefを受信するとともに、電力変換器1の出力する有効電力Pacおよび無効電力Qacの各値を監視制御装置30へ送信する。
出力電力上限値Plimは、後述の切替スイッチ1007に入力され、切替スイッチ1007の出力が発電上限値Plim2としてリミッタ付MPPT1002に入力される。
リミッタ付MPPT1002は、電力変換器1が変圧器60に出力する有効電力が発電上限値Plim2を超えないようにするために、入力直流電圧指令値Vdc_refを作成して出力する。
電力変換器1の有効電力および無効電力の制御手段について、以下説明する。
電力変換器1が連系する配電系統の系統電圧は、電圧検出器12で検出され、電力変換器1が配電系統に出力する電流は、電流検出器13で検出される。電圧検出器12の検出値である変換器連系点電圧Vsと、電流検出器13の検出値である交流出力電流検出値Isとは、電力算出器1001に入力される。電力算出器1001は、変換器連系点電圧Vsおよび交流出力電流検出値Isに基づいて、電力変換器1が出力する有効電力Pacと無効電力Qacを算出する。有効電力Pacはリミッタ付MPPT1002および通信インターフェース1008に入力され、無効電力Qacは無効電力制御器1004および通信インターフェース1008に入力される。
リミッタ付MPPT1002には、発電上限値Plim2および有効電力Pacに加え、電圧検出器15で検出される直流入力電圧Vdc、電流検出器14で検出される直流入力電流Idcが入力される。
リミッタ付MPPT1002は、有効電力Pacが発電上限値Plim2を超えない範囲で、直流入力電圧Vdcと直流入力電流Idcの積である入力直流電力を最大化する直流入力電圧指令値Vdc_refを探索する。有効電力Pacが発電上限値Plim2を超える場合、リミッタ付MPPT1002は、直流入力電圧指令値Vdc_refを高め補正する。
直流電圧制御器1003は、直流入力電圧指令値Vdc_refと直流入力電圧Vdcに基づいて、Vdc_refとVdcの差を低減するような有効電流指令値Id_refを算出する。
無効電力Qacおよび無効電力指令値Qrefは、無効電力制御器1004に入力される。無効電力制御器1004は、無効電力指令値Qrefと無効電力Qacに基づいて、QrefとQacの差を低減するような無効電流指令値Iq_refを算出する。
有効電流指令値Id_ref、無効電流指令値Iq_ref、並びに交流出力電流検出値Isは、電流制御器1005に入力される。電流制御器1005は、交流出力電流検出値Isが電流指令値(Id_ref,Iq_ref)に追従するように、IGBTアセンブリ50の交流出力電圧指令値V_refを算出し、PWMインターフェース1011に出力する。ここでは、いわゆるベクトル制御が用いられ、回転座標系におけるIsのd軸電流成分(Isd)およびq軸電流成分(Isq)が、それぞれ、Id_refおよびIq_refに一致するようなV_refが算出される。
PWMインターフェース1011は、IGBTアセンブリ50の交流出力電圧の瞬時平均値がV_refと一致するように、いわゆるPWM(Pulse Width Modulation)制御により、IGBTアセンブリにおける各IGBTへのゲート信号GateSigを作成して出力する。すなわち、PWMインターフェース1011は、V_refを変調波とし、所定周波数(fc)の搬送波(例えば三角波)とV_refとを比較をすることで、ゲート信号GateSigを作成する。
上記のような変換器制御装置100により、電力変換器1は、発電電力を発電上限値以下に抑制された有効電力を出力するとともに、監視制御装置30から送信される無効電力指令値Qrefに追従する無効電力を出力する。
次に、本実施例における通信状態判定機能および有効電力上限値切替機能について説明する。
通信インターフェース1008が受信する情報(Plim,Qref)は通信処理演算器1010および通信状態判定器1006に入力される。
通信状態判定器1006は、後述する通信状態判定処理を所定の時間周期で実行する。通信状態判定器1006は、監視制御装置30から送信される送信情報開始の間隔(通信間隔)を計測し、所定時間より通信間隔が長くなったら通信状態フラグC_Statusを1から0に変更し、通信間隔が所定時間より短くなったらC_Statusを1に戻す。
図3は、通信状態判定器1006が実行する通信状態判定処理を示すフローチャートである。
通信状態判定器1006は、処理を開始すると(ステップS1)、通信間隔を計測するためのカウンタTcountおよび通信状態フラグC_Statusを、それぞれ0(零)および1に初期化する(ステップS2)。
次に、通信状態判定器1006は、カウンタTcountを1インクリメントする(ステップS3)。
次に、通信状態判定器1006は、通信開始の割込みが発生したかを判定する(ステップS4)。通信状態判定器1006は、割込みが発生した場合(ステップS4のYes)、次にステップS5を実行し、割込みが発生しなかった場合(ステップS4のNo)、次にステップS6を実行する。
ステップS5では、通信状態判定器1006は、カウンタTcountを0に設定し、通信状態フラグC_Statusを1に設定する。通信状態判定器1006は、ステップS5を実行後、次に、ステップS6を実行する。
ステップS6では、通信状態判定器1006は、カウンタTcountが所定の値であるMax_countより大きいかを判定する。通信状態判定器1006は、TcountがMax_countよりも大きい場合(ステップS6のYes)、次にステップS7を実行し、TcountがMax_count以下である場合(ステップS7のNo)、再度ステップS3を実行する。なお、Max_countは、通信異常の誤検出を避けるため、監視制御装置30と電力変換器1の間の通信周期の2倍に相当する値より大きく、かつ逆潮流防止リレー5000の作動時間より短く設定する。
ステップS7では、通信状態判定器1006は、通信スタートの間隔が長いことから通信異常発生と判断し、通信状態フラグC_Statusを0に設定する。通信状態判定器1006は、ステップS7を実行後、再度ステップS3を実行する。
上述のように、本実施例では通信開始の割込み発生間隔によって通信不良を判断しているが、これに限らず、通信のパリティービットが不成立となる連続回数によって通信不良を判断してもよい。この場合、パリティービットが不成立となる連続回数が所定の値より多い場合にC_Statusを0とする。
図2に示すように、通信状態判定器1006は、上述の処理によって設定する通信状態フラグC_Statusを切替スイッチ1007に出力する。
切替スイッチ1007は、C_Statusが1である場合、すなわち通信状態判定器1006が、通信状態が正常であると判定している場合、通信処理演算器1010が通信インターフェース1008の受信情報から抽出して出力する太陽光発電出力上限値Plimを、補正太陽光発電出力上限値Plim2としてリミッタ付きMPPT1002に出力する。また、切替スイッチ1007は、C_Statusが0である場合、すなわち通信状態判定器1006が、通信が異常であると判定している場合、所定の出力電力上限値P0を補正太陽光発電上限値Plim2としてリミッタ付きMPPT1002に出力する。
ここで、P0は、負荷70(図1)の最小消費電力以下の電力値に設定される。これにより、通信異常時には、太陽光発電システムによる発電量の上限が負荷70の消費電力を下回るので、逆潮流の発生を防止することができる。また、P0を0(零)よりも大きな電力値とすることで、通信異常時でも、太陽光発電システムは逆潮流を防止しつつ負荷に電力を供給することが可能となる。また、監視制御装置30と電力変換器1との間の通信の信頼性を、通信網を冗長化や多重化などにより過度に高める必要性が無くなるので、通信コストの増大を回避することができる。
図4は、本実施例1の太陽光発電システムの動作状態例を示すグラフである。なお、グラフの縦軸および横軸は、それぞれ電力および時間を示す。
なお、図4中には、負荷70の消費電力PL、太陽電池パネル90の出力電力Ppv、補正出力上限値Plim2、電力変換器1が出力する有効電力Pacを示す。
時刻t1より太陽が昇り、Ppvが増える。
電力変換器1は、PacがPLを超過しないように、すなわち逆潮流を起こさないように、PacをPlim2以下に抑制する。
時刻t2に通信の異常が通信状態判定器1006により判定され、その後、時刻t3まで通信の異常が続いている。時刻t2と時刻t3の間、補正出力上限値Plim2はP0(≦負荷の最小消費電力)に切替えられるが、P0>0であり電力変換器1は有効電力Pac(=P0)を継続して出力する。
時刻t3には、通信状態判定器1006が通信は正常と判定し、電力変換器1は出力(Pac)を上昇させる。
図4に示すように、電力変換器1が出力する有効電力Pacは、通信異常時には、負荷の最低消費電力を下回っている。このため、通信異常が起きても、逆潮流の発生が防止される。
なお、時刻t2から時刻t3までの間、電力変換器1と監視制御装置30との間の通信異常のため、電力変換器1を含む太陽光発電システムの状態を監視制御装置30によって把握することが難しい。そこで、本実施例1では、電力変換器1側で、太陽光発電システムの状態を表示する。
図11は、本実施例1における電力変換器1が備える液晶表示器の表示画面の一例を示す。
液晶表示器2000は、電力変換器1周辺の開閉器の状況や発電状況(“Generated Power”, “Reactive Power”)のほか、監視制御装置30との通信状態(“Communication status”)や通信不良継続時間(“Duration”)を表示する。
図11の表示画面の一例では、上述の通信状態フラグC_Statusが0(零)であることに応じて、通信状態(“Communication status”)の表示を “ERROR”として、通信異常が発生していることが示されている。また、上述のTcountの値に応じて、通信不良継続時間(“Duration”)が “1000 sec”と表示されている。このように、本実施例1では、変換器制御装置100が、通信異常を判定し、さらに通信異常の継続時間をカウントアップするので、電力変換器1側で通信状態を表示することができる。
このような表示装置により、システム運用者は、意図しない発電電力の低下原因を把握できるとともに、通信不良継続時間から監視制御装置30のリセットや通信線40の健全性を確認することができる。
図5は、本発明の実施例2である太陽光発電システムにおける変換器制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
本実施例2の太陽光発電システムの全体構成は実施例1(図1)と同様である。以下、主に、変換器制御装置について、実施例1と異なる点について説明する。
本実施例2においては、実施例1と異なり、通信状態判定器1006が通信異常と判定するときの太陽光発電上限値P0を、時間帯や曜日によって変化させる。
太陽光発電システムがビルや工場に設置される場合は、ビル内や工場内にいる人の数や、工場における生産計画などにより消費電力の最小値が変化する。これに対し、本実施例2では、時間帯や曜日によりP0を変更する手段を備えることにより、通信異常時の発電電力上限値P0を、通信異常が判定された時点で想定される最小消費電力より小さい値とする。これにより、最小消費電力の変動に応じて、通信異常時における太陽光発電システムの発電量の上限値を変更できる。このため、通信異常時に、逆潮流の発生を防止しながら、通信異常が発生した時点での最小消費電力の大きさに見合った発電量を確保することができる。
本実施例2の具体的な構成について、以下に説明する。なお、実施例1と同様の構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する(図6~9についても同様)。
図5に示すように、変換器制御装置100Aは、日時情報を出力する時計1020と、曜日・時間に応じて変動する最小消費電力に応じた出力電力上限値P0の情報を蓄える出力電力上限値データベース1021とを備える。出力電力上限値データベース1021は、負荷70(図1)の一時間ごとの想定最小消費電力より小さい値をP0として蓄積しており、時計1020の出力(時刻)に応じて、当該出力が示す時刻に対応するP0を切替スイッチ1007に出力する。
さらに、変換器制御装置100Aは、出力電力上限値データベース1021を外部から変更するためのメンテナンス機器とのインターフェース1023を備える。これにより、負荷70の最小消費電力の様々な変動パターンや、負荷機器の変更に伴う最小消費電力の変動パターンの変更に応じて、出力電力上限値データベース1021に、適確に、P0の情報を設定もしくは変更することができる。
図6は、実施例2の変形例である太陽光発電システムにおける変換器制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
本変形例では、上述の時計(図5中の「1020」)および出力電力上限値データベース(図5中の「1021」)は、監視制御装置30(図1)が備えている。したがって、変換器制御装置100Bは、P0の情報を監視制御装置30から通信線40を介して受信する。この場合、通信処理演算器1022は、通信異常時に、通信異常発生直前の通信正常時点で受信して保持するP0の情報を切替スイッチ1007に出力する。
本実施例2によれば、実施例1と同様に、通信異常時でも、逆潮流を防止しつつ負荷に太陽光発電システムから電力を供給することが可能となる。また、実施例1と同様に、通信コストの増大を回避することができる。さらに、本実施例2によれば、負荷の最小消費電力が曜日や時間で変動しても、最小消費電力通信異常時に、逆潮流の発生を防止しながら、通信異常が発生した時点での最小消費電力の大きさに見合った発電量を確保することができる。
図7は、本発明の実施例3である太陽光発電システムにおける変換器制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
本実施例3の太陽光発電システムの全体構成は実施例1(図1)と同様である。以下、主に、変換器制御装置について、実施例1と異なる点について説明する。
本実施例3においては、実施例1と異なり、通信状態フラグC_Statusが1の場合、監視制御装置30(図1)から受信した無効電力指令値Qrefを補正無効電力指令値Qref2として無効電力制御器1004に入力し、C_Statusが1から0に変化した場合は、C_Statusが1であった最後の時点での無効電力指令値Qrefを保持し、保持された無効電力指令値Qrefを補正無効電力指令値Qref2として無効電力制御器1004に入力する。これにより、通信異常時に電力変換器1が出力する無効電力の変動を防ぎ、母線80(図1)の電圧変動を軽減することができる。
本実施例3の具体的な構成について、以下に説明する。なお、実施例1と同様の構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する
図7に示すように、変換器制御装置100Cは、通信処理演算器1010が、監視制御装置30から受信した情報から抽出して出力する、無効電力指令値Qrefと、通信状態判定器1006の出力する通信状態フラグC_Statusと、を入力する、サンプルホールド1040を備える。サンプルホールド1040は、C_Statusが1のときは補正無効電力指令値Qref2として、入力したQrefをそのまま出力する。また、サンプルホールド1040は、C_Statusが1のときに入力したQrefを保持する記録手段(例えば、メモリ)を有する。
図7に示すように、変換器制御装置100Cは、通信処理演算器1010が、監視制御装置30から受信した情報から抽出して出力する、無効電力指令値Qrefと、通信状態判定器1006の出力する通信状態フラグC_Statusと、を入力する、サンプルホールド1040を備える。サンプルホールド1040は、C_Statusが1のときは補正無効電力指令値Qref2として、入力したQrefをそのまま出力する。また、サンプルホールド1040は、C_Statusが1のときに入力したQrefを保持する記録手段(例えば、メモリ)を有する。
C_Statusが1から0に変わったとき、サンプルホールド1040は、記録手段から保持されているQrefを読み出し、読み出したQrefを補正無効電力指令値Qref2として出力するとともに、記録手段の上書きを禁止する。
本実施例3によれば、実施例1と同様に、通信異常時でも、逆潮流を防止しつつ負荷に太陽光発電システムから電力を供給することが可能となる。また、実施例1と同様に、通信コストの増大を回避することができる。さらに、本実施例3によれば、通信異常時には通信正常時に取得した無効電力指令値に従い、電力変換器1の出力する無効電力を制御できるので、母線電圧の変動を軽減することができる。
図8は、本発明の実施例4である太陽光発電システムにおける変換器制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
本実施例4の太陽光発電システムの全体構成は実施例1(図1)と同様である。以下、主に、変換器制御装置について、実施例1と異なる点について説明する。
本実施例4においては、実施例1と異なり、通信異常時には無効電力指令値を、所定の値Q0に、所定の変化率で切替える。
監視制御装置30と電力変換器1との間の通信異常時には、逆潮流を回避するため電力変換器1の出力電力を制限すると、電力系統からの受電電力が増加し、負荷設備の受電電圧が低下する可能性がある。これに対し、通信異常時に設定する無効電力指令値Q0を、電力変換器1の運転状態がコンデンサ運転となる極性とすることで、受電点電圧の低下を緩和することできる。また、無効電力指令値の変化速度を制限することにより、母線電圧の急変を回避することができる。
本実施例4の具体的な構成について、以下に説明する。なお、実施例1と同様の構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する
図8に示すように、変換器制御装置100Dは、通信処理演算器1010が出力する無効電力指令値Qrefと、固定値である無効電力指令値Q0とを、C_Statusに応じて切替える切替スイッチ1030を備えるとともに、C_Statusが0に変わったときには切替スイッチ1030の出力の変化率を制限し、変化率を制限した値を補正無効電力指令値Qref2として無効電力制御器1004に出力する変化率リミッタ1031を備える。Q0は、電力変換器1がコンデンサ運転をする極性の値を有する。
図8に示すように、変換器制御装置100Dは、通信処理演算器1010が出力する無効電力指令値Qrefと、固定値である無効電力指令値Q0とを、C_Statusに応じて切替える切替スイッチ1030を備えるとともに、C_Statusが0に変わったときには切替スイッチ1030の出力の変化率を制限し、変化率を制限した値を補正無効電力指令値Qref2として無効電力制御器1004に出力する変化率リミッタ1031を備える。Q0は、電力変換器1がコンデンサ運転をする極性の値を有する。
本実施例4によれば、実施例1と同様に、通信異常時でも、逆潮流を防止しつつ負荷に太陽光発電システムから電力を供給することが可能となる。また、実施例1と同様に、通信コストの増大を回避することができる。さらに、本実施例4によれば、通信異常時には電力変換器1からコンデンサ運転の極性を持つ無効電力を出力することができるので、母線電圧の低下を抑制できる。さらに、通信異常時に電力変換器1から出力する無効電力の変化率を抑制できるため、母線電圧の急変を回避することができる。
図9は、本発明の実施例5である太陽光発電システムにおける変換器制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
本実施例5の太陽光発電システムの全体構成は実施例1(図1)と同様である。以下、主に、変換器制御装置について、実施例1と異なる点について説明する。
本実施例5においては、実施例1と異なり、通信異常の継続時間が所定の時間より長く継続した場合、電力変換器1の出力する電流をランプ状に低減させた後に電力変換器1の動作が停止される。さらに、出力電流をランプ状に低減するときには、有効電流より無効電流の変化率を緩やかにする。
これにより、監視制御装置30と電力変換器1の間の通信異常が長時間継続した場合に、太陽光発電システムによる発電を停止することで、逆潮流を確実に防止することができる。また、出力電流をランプ状に絞ることにより、母線電圧の急変を回避することができる。さらに、無効電流を有効電流より緩やかに低減することにより、電力系統側での電圧制御が電圧変動に追従できるようになり、母線電圧の変動を抑制することができる。
本実施例5の具体的な構成について、以下に説明する。なお、実施例1と同様の構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する(ただし、図9中の「1040」については、図7参照)。
図9に示すように、変換器制御装置100Eは、C-Statusが0(零)を継続する期間を計測する通信異常時間判定器1050と、通信異常時間判定器1050の出力に基づいて有効電流指令値Id_refおよび無効電流指令値Iq_refをそれぞれランプ状低減する電流指令値リミッタ1053および電流指令値リミッタ1054と、通信異常時間判定器1050の出力を遅延させる遅延器1051と、遅延器1051の出力に応じIGBTアセンブリ50に出力するゲート信号を全てOFFにするPWMインターフェース1052を備える。
以下、本実施例5の動作を説明する。
通信異常時間判定器1050は、通信状態判定器1006が出力する通信状態フラグC_Statusが0を維持する時間(すなわち通信異常継続時間)を計測する。さらに、通信異常時間判定器1050は、C_Statusが0を維持する時間が所定の時間を越えたか否かを判定し、所定の時間を越えた場合、自出力を1から0に変更する。
ここで、通信異常時間判定器1050において通信異常継続時間と比較される所定の時間は、例えば、次のように設定される。
通信経路にノイズが混入した場合、もしくは通信より優先度の高い割込みが監視制御装置30側もしくは電力変換器1側に発生した場合には通信が断続する。このような単発の通信異常から復帰するため、一般に通信系にはリトライ機能が実装される。しかし、多数回のリトライにも関わらず通信失敗する場合、すなわち通信異常継続時間が長くなる場合、通信線の断線や監視制御装置30のハングアップなどが想定されるため、監視制御装置30で制御される機器は安全に停止することが望ましい。通信のリトライ許容回数は、システムが安全に運転継続可能な時間に応じて設定されるため、通信異常時間判定器1050が出力を0に変更する判断基準である上述の所定の時間は、逆潮流防止リレー5000の作動時間および通信リトライ許容回数相当の時間より長く設定することが好ましい。
通信異常時間判定器1050の出力は、電流指令値リミッタ1053と電流指令値リミッタ1054と遅延器1051に入力される。
電流指令値リミッタ1053および電流指令値リミッタ1054は、それぞれ有効電流指令値Id_refおよび無効電流指令値Iq_refの大きさを、通信異常時間判定器1050の出力が1から0に変化した時点での大きさから0(零)に向けて所定の変化率で低減させる。そして、電流指令値リミッタ1053の出力および電流指令値リミッタ1054の出力は、それぞれ新たな有効電流指令値および無効電流指令値として電流制御器1005に入力される。
ここで、電力変換器1は、逆潮流防止のために監視制御装置30によって制御されている一機器であるので、上述のように、通信異常継続時間が長くなる場合、安全に停止することが望ましい。しかし、電力変換器1の停止時における出力電流の急激な変化は、母線80の電圧の急変を引き起こし、母線80に接続される負荷70の不要停止を招くおそれがある。そこで、本実施例5では、電流指令値リミッタ1053,1054により、出力電流を、変化率を抑制しつつ0(零)まで低減する。これにより、母線80の電圧の急変を抑えながら、電力変換器1を停止させることができる。
なお、無効電流は有効電流に比べて大きな電圧変化を引き起こす。そこで、本実施例5では、電流指令値リミッタ1054は、電流指令値リミッタ1053に比べて緩やかな変化率で無効電流指令値を制限する。なお、母線電圧の安定化のためには、電力系統側に設置される電圧制御装置の動作時限に比べて緩やかに無効電流を制限することが好ましい。
遅延器1051は、通信異常時間判定器1050の出力信号を、電流指令値リミッタ1054が無効電流指令値を0(零)に制限するまでの時間だけ遅延させて、PWMインターフェース1052に出力する。PWMインターフェース1052は、遅延器1051の出力が1から0に変わったら、IGBTアセンブリ50に出力するゲート信号GateSigをOFFにする。すなわち、電流指令値リミッタ1053および電流指令値リミッタ1054により出力電流が、変化の大きさを抑制しつつ0(零)まで低減されると、ゲート信号GateSigがOFFされる。このとき、図10に示す全てのIGBTモジュールへのゲート信号がOFFされ、すなわち電力変換器1はゲートブロックされ、電力変換器1は停止する。
本実施例5によれば、実施例1と同様に、通信異常時でも、逆潮流を防止しつつ負荷に太陽光発電システムから電力を供給することが可能となる。また、実施例1と同様に、通信コストの増大を回避することができる。さらに、本実施例5によれば、通信異常が継続した場合に、母線電圧の変動を緩和しつつ電力変換器1の出力電流を抑制し、安定に電力変換器1の動作を停止することができる。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
1…電力変換器、10…電圧検出器、11…電流検出器、12…電圧検出器、
13…電流検出器、14…電流検出器、15…電圧検出器、20…遮断器、
30…監視制御装置、40…通信線、50…IGBTアセンブリ、
55…フィルタリアクトル、60…変圧器、70…負荷、80…母線、
90…太陽電池パネル、
100,100A,100B,100C,100D,100E…変換器制御装置、
1001…電力算出器、1002…リミッタ付MPPT演算器、
1003…直流電圧制御器、1004…無効電力制御器、1005…電流制御器、
1006…通信状態判定器、1007…切替スイッチ、
1008…通信インターフェース、1009…アナログセンサ用インターフェース、
1010…通信処理演算器、1011…PWMインターフェース、1020…時計、
1021…出力電力上限値データベース、1022…通信処理演算器、
1023…インターフェース、1030…切替スイッチ、1031…変化率リミッタ、
1040…サンプルホールド、1050…通信異常時間判定器、1051…遅延器、
1052…PWMインターフェース、1053…電流指令値リミッタ、
1053…電流指令値リミッタ
13…電流検出器、14…電流検出器、15…電圧検出器、20…遮断器、
30…監視制御装置、40…通信線、50…IGBTアセンブリ、
55…フィルタリアクトル、60…変圧器、70…負荷、80…母線、
90…太陽電池パネル、
100,100A,100B,100C,100D,100E…変換器制御装置、
1001…電力算出器、1002…リミッタ付MPPT演算器、
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1006…通信状態判定器、1007…切替スイッチ、
1008…通信インターフェース、1009…アナログセンサ用インターフェース、
1010…通信処理演算器、1011…PWMインターフェース、1020…時計、
1021…出力電力上限値データベース、1022…通信処理演算器、
1023…インターフェース、1030…切替スイッチ、1031…変化率リミッタ、
1040…サンプルホールド、1050…通信異常時間判定器、1051…遅延器、
1052…PWMインターフェース、1053…電流指令値リミッタ、
1053…電流指令値リミッタ
Claims (11)
- 太陽光発電による直流電力を交流電力に変換する電力変換器において、
前記電力変換器の交流側は、電力系統から電力を受電しかつ負荷が接続される母線に接続され、
前記電力変換器は、通信によって取得される情報に基づいて前記電力変換器の出力電力の上限を設定して前記電力変換器の出力電力を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記通信の異常が発生すると、前記上限を、前記負荷に応じて設定される零より大きな所定値に切り替え、前記出力電力を抑制することを特徴とする電力変換器。 - 請求項1に記載の電力変換器において、
前記所定値は、前記負荷の最小消費電力以下の電力値であることを特徴とする電力変換器。 - 請求項1に記載の電力変換器において、
前記制御装置は、前記通信の前記異常の発生を判定する通信状態判定器を有することを特徴とする電力変換器。 - 請求項3に記載の電力変換器において、
前記通信状態判定器は、上記母線と上記電力系統との間に設けられる逆潮流防止リレーの作動時間より短い時間で前記通信の前記異常の発生を判定することを特徴とする電力変換器。 - 請求項1に記載の電力変換器において、
前記所定値は、前記通信の前記異常が発生する日時に応じて変更されることを特徴とする電力変換器。 - 請求項1に記載の電力変換器において、
前記制御装置は、第1の無効電力指令値を前記通信によって取得される前記情報に基づいて設定し、前記第1の無効電力指令値に応じて、前記電力変換器が出力する無効電力を制御することを特徴とする電力変換器。 - 請求項6に記載の電力変換器において、
前記制御装置は、前記通信の前記異常が発生すると、前記通信の正常時における最後の時点で保持される前記第1の無効電力指令値に応じて、前記電力変換器が出力する前記無効電力を制御することを特徴とする電力変換器。 - 請求項6に記載の電力変換器において、
前記制御装置は、前記通信の前記異常が発生すると、前記無効電力の制御に用いる無効電力指令値を前記第1の無効電力指令値から所定の第2の無効電力指令値に切替えることを特徴とする電力変換器。 - 請求項1に記載の電力変換器において、
前記制御装置は、前記通信の前記異常の継続時間が所定の時間より長い場合、前記電力変換器の動作を停止させることを特徴とする電力変換器。 - 請求項1に記載の電力変換器において、
前記通信の状態に関する情報を表示する表示装置を備えることを特徴とする電力変換器。 - 太陽光発電による直流電力を交流電力に変換する電力変換器の制御方法において、
前記電力変換器の交流側は、電力系統から電力を受電しかつ負荷が接続される母線に接続され、
通信によって取得される情報に基づいて前記電力変換器の出力電力の上限を設定して前記電力変換器の出力電力を制御し、
前記通信の異常が発生すると、前記上限を、前記負荷に応じて設定される零より大きな所定値に切り替え、前記出力電力を抑制することを特徴とする電力変換器の制御方法。
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