JP7214696B2 - 新規in vitro皮膚感作性試験法 - Google Patents
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Description
近年は、EUにおける欧州化学品規制では、安全性評価は、コンピューターを用いた定量的構造活性相関(QSAR:Quantitative Structure-Activity Relationship)モデルやin vitro試験等による代替法が推奨されており、さらに、動物実験により安全性が評価された成分を含んだ化粧品の輸入及び販売も禁止された(2013年3月全面施行)。そのため、動物を用いない化学物質の皮膚感作性を評価する代替法の開発が強く求められている。そして、化学物質の安全性評価のための動物試験の使用を縮小し減少させるために尽力が行われてきた。
しかし、この方法は、予測精度が十分でない点と、試験において細胞生存率を個別に測定する必要があり、操作が煩雑である。
しかし、非特許文献1の試験方法は、実験のたびに化学薬品による遺伝子導入が必要となることに加え、遺伝子導入に1週間程度の期間を要する。また用いる細胞数や遺伝子導入効率の変動がある。さらに、2種類のプラスミドにそれぞれ導入効率の影響を受けるため、改良の余地があるといえる。
しかしながら、これらのアッセイは、予備試験のための用量を決定するための別個の細胞毒性試験を必要とし、本試験は、これにより計算された細胞生存率が50%となる濃度(IC50)に基づいて行われるか、又は細胞生存率が75%の濃度(CV75)の用量において行う手順が必要となる。
また、既存の標準化試験ではいくつかの物質において偽陰性もしくは偽陽性を示す精度上の問題があった。
そして、さらなる信頼性のある効果的な体系的試験法の開発が望まれる。
<1> 皮膚感作性をin vitroで試験する方法であって、
下記工程(1)~(4):
(1)抗酸化反応エレメント(antioxidant response element:ARE)によって発現が制御されるホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子及びウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を用い、
前記ホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルス、及び
前記ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルス
で二重に感染させたヒトケラチノサイト細胞株を提供する工程、
(2)前記細胞株に被験物質を曝露させる工程、
(3)ホタルルシフェラーゼ活性を測定する工程、
(4)ウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定する工程、
(5)下記式:
被験物質のnRLU=(ARE活性を示すホタルルシフェラーゼ活性)/(生細胞数を示すウミシイタケルシフェラーゼ活性)
によりnRLUを算出し、そして、下記式:
nAA=(被験物質のnRLU)/(溶媒対照の平均nRLU)
により、皮膚感作性評価指標をnAA値として算出する工程、
(6)前記工程(5)におけるnAA値を、皮膚感作性物質(陽性対照物質)群について前記工程(1)から前記工程(5)をそれぞれ行った結果及び非感作性物質(陰性対照物質)群について前記工程(1)から前記工程(5)をそれぞれ行った結果と比較し、陽性もしくは陰性対象物質と判定するための最適カットオフ値を求めて、そのカットオフ値を判定基準として被験物質の皮膚感作性の判定を行う工程、
からなる、皮膚感作性試験方法。
<2> 前記(1)工程のホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子が、レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ遺伝子を有し、
その上流に、配列番号1で表される配列から調製される配列を有するプロモーターを有し、そして、
その上流にエンハンサーとして配列番号3で表される抗酸化反応エレメント(ARE)を有することを特徴とする、<1>に記載の方法。
<3> 前記(1)工程のホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子が、
レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ遺伝子を有し、
その上流に、配列番号2で表される配列を有するプロモーターを有し、そして、
その上流にエンハンサーとして配列番号3で表される抗酸化反応エレメント(ARE)を有することを特徴とする、<1>に記載の方法。
<4> 前記(1)工程のウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子が、
ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有し、そして、その上流にチミジンキナーゼ(TK)プロモーターを有することを特徴とする、<1>に記載の方法。
<5> 前記(1)工程のホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子が、
レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ遺伝子を有し、
その上流に、配列番号2で表される配列を有するプロモーターを有し、そして、
その上流にエンハンサーとして配列番号3で表される抗酸化反応エレメント(ARE)を有するものであり、
前記ホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子配列を挿入したレンチウイルスを用いて感染させ、かつ、前記ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルスで感染させた、ヒトケラチノサイト細胞株を提供することを特徴とする、<1>に記載の方法。
<6> 前記工程(1)で提供される細胞株が、ヒトケラチノサイト細胞株が生存できない濃度の抗生物質である、50μg/mLのハイグロマイシンBゴールド及び2.5μg/mLのピューロマイシンの存在下においても増殖可能な安定細胞株である、<1>に記載の方法。
<7> 前記工程(6)における、皮膚感作性物質(陽性対照物質)群及び非感作性物質(陰性対照物質)群が、少なくとも下記:
皮膚感作性物質がオキサゾロン、2,4-ジニトロクロロベンゼン、4-フェニレンジアミン、グリオキサール、4-ニトロベンジルブロミド、4-メチルアミノフェノールサルフェート、5-クロロ-2-メチルイソチアゾリノン、桂皮アルデヒド、イソオイゲノール、テトラメチルチウラムジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、メチルジブロモグルタロニトリル、オイゲノール、シンナミルアルコール、ヘキシルシンナムアルデヒド、シトラール、安息香酸フェニル、イミダゾジニル尿酸、エチレングリコール ジメタクリレート、及び
非感作性物質がサリチル酸メチル、サリチル酸、イソプロパノール、クロロベンゼン、スルファニルアミド、フタル酸ジメチル、ラウリル硫酸ナトリウム、乳酸、グリセロール、
の群であって、それぞれについて前記工程(1)から工程(5)を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法、
である。
本発明における「被験物質」とは、特に限定されるものではなく、化粧品、医薬、医療用具、生活用品等としての、ヒトその他生物に用いられ、皮膚と接触する可能性のある全ての化学物質が対象である。
本発明における「LLNA」とは、「ローカルリンフノードアッセイ(Local Lympho Node Assay)」を指し、OECD TG(経済協力開発機構試験法ガイドライン)429に記載の皮膚感作・局所リンパ節試験をいう。
「ケラチノセンス(登録商標)」とは、Givaudan社(ジボダン社、ヴェルニエ、スイス国)の開発したOECD TG(経済協力開発機構試験法ガイドライン)442Dに記載の皮膚感作性予測に用いるin vitro試験であるARE-Nrf2 ルシフェラーゼ試験法をいう。
「LuSens」とは、BASF社(ルートヴィヒスハーフェン・アム・ライン、ドイツ国)の開発したOECD TG(経済協力開発機構試験法ガイドライン)442Dに記載の皮膚感作性予測に用いるin vitro試験であるARE-Nrf2 ルシフェラーゼ試験法をいう。
本明細書における「ヒトデータ」とは、Tzutzuyら,「LuSens:A keratinocyte based ARE reporter gene assay for use in integrated testing strategies for skin sensitization hazard identifications」,Toxicology in vitro,第28巻,1482-1497頁(2014年)に記載されたヒトでの結果を指す。
即ち、
皮膚感作性をin vitroで試験する方法であって、
下記工程(1)~(4):
(1)抗酸化反応エレメント(antioxidant response element:ARE)によって発現が制御されるホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子及びウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を用い、
前記ホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルス、及び
前記ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルス
で二重に感染させたヒトケラチノサイト細胞株を提供する工程、
(2)前記細胞株に被験物質を曝露させる工程、
(3)ホタルルシフェラーゼ活性を測定する工程、
(4)ウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定する工程
からなり、さらに、工程(5)及び(6)を有する。
工程(5)下記式:
被験物質のnRLU=(ARE活性を示すホタルルシフェラーゼ活性)/(生細胞数を示すウミシイタケルシフェラーゼ活性)
によりnRLUを算出し、そして、下記式:
nAA=(被験物質のnRLU)/(溶媒対照の平均nRLU)
により、皮膚感作性評価指標をnAA値として算出する。
工程(6)前記工程(5)におけるnAA値を、皮膚感作性物質(陽性対照物質)群について前記工程(1)から前記工程(5)をそれぞれ行った結果及び非感作性物質(陰性対照物質)群について前記工程(1)から前記工程(5)をそれぞれ行った結果と比較し、陽性もしくは陰性対象物質と判定するための最適カットオフ値を求めて、そのカットオフ値を判定基準として被験物質の皮膚感作性の判定を行う。
前記ホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルス及び前記ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルスで二重に感染させたヒトケラチノサイト細胞株を提供する工程は、本発明のアッセイのための細胞株の確立の工程である。
当該不死化正常ヒトケラチノサイト、PHK 16-0bをHKGS(サーモフィッシャーサイエンスK.K.マサチューセッツ州、米国)サプリメントを添加したEpi-Life培地(サーモフィッシャーサイエンスK.K.マサチューセッツ州、米国)中に5%CO2存在下37℃の加湿環境下にて培養を行う。
α2U-グロブリンプロモーター(AUG)及び抗酸化反応エレメント(ARE:5’-TGGTCGCAAGGTGTGCAAGCTGCTGAGTCACCCTGACTGCATCAACCCCAGGAGCT―3’)によって発現が制御されるホタルルシフェラーゼ遺伝子配列を、pLVSINに挿入し、pLVSIN-ARE-AUG-Lucを作製する。
TKプロモーター及びウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子(TK-rLuc)をpLVSINに挿入しpLVSIN-TK-rLucを作製する。
被験物質は、溶媒に溶解し、細胞培養液を用いて適切な濃度に希釈する必要がある。例えば、被験物質を、200mMを最大濃度とし公比2において段階希釈し、そして細胞培養液を用いて50倍に希釈する。
細胞は、96穴マイクロプレート(#136102、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)のウェルに、培地100μL中にウェル当たり20000個の細胞となるよう播種し、そして24時間の前培養を行った。
上記の前培養の後、被験物質100μLを添加しそして24時間培養する。
培養液をウェルから除去し、そして50μLの第1のDual-Glo(登録商標)試薬(プロメガ社、ウィスコンシン州、米国)をウェルに添加し、試薬の添加10分後の室温下での化学発光をプレートリーダー(ARVO X2、パーキンエルマー社、ウォルサム、米国)を用いて測定する。
第1のDual-Glo(登録商標)試薬添加後、50μLの第2のDual-Glo(登録商標)ストップ及びGlo(登録商標)試薬(プロメガ社、ウィスコンシン州、米国)を同一ウェルに添加し、10分後に室温下での化学発光を、プレートリーダーを用いて測定する。
生細胞数により標準化したRLU値(nRLU)は、各ウェルのARE活性を示すホタルルシフェラーゼ活性のRLU値を、同一ウェルの生細胞数を示すウミシイタケルシフェラーゼ活性のRLU値で除すことにより算出される。本発明で用いる新規な評価パラメーター:生細胞数で標準化したARE活性(nAA)は、以下の通り算出される。
nRLU=(ARE活性を示すホタルルシフェラーゼ活性)/(生細胞数を示すウミシイタケルシフェラーゼ活性)
として求められるが、評価指標はこれに限定されるものではない。
感作性物質と非感作性物質との鑑別のための最適カットオフ値
アッセイを、各被験物質について3回行い、各アッセイの最大nAA値を測定し、そして各被験物質の平均最大nAA及び標準偏差(SD)を算出する。
例えば、後述の試験結果によれば、最適カットオフ値は、非感作性物質の最高平均nAA+2SDを超え、LLNAの結果及びヒトデータとの一致率が最も高い値として決定され得る。
そして、被験物質のnAAがカットオフ値を超えた場合に、陽性と判定する。
本目的のために、発明者らは、新しいパラメーターnAAを採用した。ウミシイタケルシフェラーゼ活性系の細胞毒性試験を用いて測定した実際の細胞条件により標準化されたARE-Nrf2を介した転写活性は、本アッセイ系における転写活性のある細胞の実際の転写活性を得ることができることが考えられるためである。
その結果、最適対象カットオフ値はnAA≧1.6と決定され、これは非感作性物質から得られた最大nAA+2SD(=約1.57)を超えるものである。一方、LLNA及びヒトデータに対する判定結果の一致率(%)は、それぞれ96.4及び100.0であった(表3)。
さらにまた、本試験方法は、血清フリーのEpi-Life培地を使用するため、アッセイ系はまた動物福祉上の観点からも利点を有する。このことはまた、比較的反応性の高い化学物質、とりわけ血清タンパク質との反応により偽陰性を示す物質の適正な評価に寄与できる。(Otakeら、Toxicology,第393巻、第9-14頁(2018年))。
また、非特許文献1の方法では遺伝子導入に用いる化学薬品は細胞毒性があるため、遺伝子導入のために多くの細胞を用意する必要があるが、本発明の方法においては試験に必要な細胞数のみで良い。
さらにまた、非特許文献1においては遺伝子導入効率が変わるためにデータのばらつきが生じる点に対し、本発明の方法は安定したデータの取得が可能である。データの安定性については上述の通りである。
そして、本発明の方法によれば、nAAによる高精度な皮膚感作性評価が可能となり、従来の方法で偽陰性、偽陽性であった化学物質も正確に判定可能となった。
本発明の試験に使用した化学物質(以下、被験物質とする)を、表1に一覧する。下記の皮膚感作性物質19物質及び非感作性物質9物質を含む全28の化学物質を、各試験方法の評価実験に用いた。試験したすべての化学物質は、ジメチルスルホキシド(DMSO、富士フイルム和光純薬株式会社、大阪、日本)に溶解した。
1: 東京化成工業株式会社., 2: 富士フイルム和光純薬株式会社, 3:DB-ALM, 2013, 4: ICCVAM, 2009, 5: Tzutzuy et al., 2014
本発明のアッセイのための細胞株の樹立
不死化正常ヒトケラチノサイト、PHK 16-0b(JCRB細胞バンク、大阪、日本)細胞株を、宿主細胞として使用した。当該細胞をHKGS(サーモフィッシャーサイエンスK.K.マサチューセッツ州、米国)サプリメントを添加したEpi-Life培地(サーモフィッシャーサイエンスK.K.マサチューセッツ州、米国)中に5%CO2存在下37℃の加湿環境下にて培養した。
α2U-グロブリンプロモーター(配列番号2)(武吉ら、2003年)及び抗酸化反応エレメント(ARE:5’-TGGTCGCAAGGTGTGCAAGCTGCTGAGTCACCCTGACTGCATCAACCCCAGGAGCT―3’)により発現が制御されるホタルルシフェラーゼ遺伝子配列をpLVSIN(タカラバイオ株式会社、滋賀、日本)に挿入し、pLVSIN-ARE-AUG-Lucを作製した。
TKプロモーター及びウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子(rLuc)をpLVSINに挿入しpLVSIN-TK-rLucを作製した。
pLVSIN-ARE-AUG-Luc又はpLVSIN-TK-rLucのそれぞれについてを、TransIT(登録商標)-293トランスフェクション試薬(タカラバイオ株式会社、滋賀、日本)を用いて、接着性の細胞であるLenti-X(登録商標)293T(タカラバイオ株式会社、滋賀、日本)に、pLentiviral High Titer Packaging Mix(タカラバイオ株式会社、滋賀、日本)と同時に遺伝子導入し、5%CO2存在下37℃の加湿環境下において48時間培養した。次に、この培養液を収集しそしてDISMIC-25ASフィルター(0.44μm、東洋ろ紙株式会社、東京、日本)を用いてろ過し細胞残屑を除去し、ろ液を感染に使用するレンチウイルスベクターとして得た。
本発明のアッセイ
全ての被験物質を、200mMを最大とし、公比2において段階希釈し、その後細胞培養液を用いて50倍希釈した。
細胞を、96穴マイクロプレート(#136102、サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)のウェルに、培地100μLにウェル当たり20000個の細胞となるよう播種し、そして5%CO2存在下37℃の加湿環境下において24時間の前培養を行った。
前培養の後、被験物質100μLを添加しそして5%CO2存在下37℃の加湿環境下において24時間培養した。
培養液をウェルから除去し、50μLの第1のDual-Glo(登録商標)試薬(プロメガ社、ウィスコンシン州、米国)をウェルに添加し、試薬の添加10分後の室温下における化学発光をプレートリーダー(ARVO X2、パーキンエルマー社、ウォルサム、米国)を用いて測定し、ホタルルシフェラーゼの活性を測定した。第1のDual-Glo(登録商標)試薬添加後、50μLの第2のDual-Glo(登録商標)ストップ及びGlo(登録商標)試薬(プロメガ社、ウィスコンシン州、米国)を同一ウェルに添加し、10分後に室温下における化学発光を、プレートリーダーを用いて測定し、ウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定した。
として求めた。
最適カットオフ値は、上述の試験方法による結果からは、非感作性物質の最高平均nAA+2SDを超える最も高い補正後の結果(%)の値を以下の通り決定した。
本発明のアッセイにおけるnAA値の計算結果を表2に纏める。その結果、表中の下から9物質、即ち、非感作性物質9物質のnAA値の最大値は0.85乃至1.32の範囲であり、そして感作性物質19物質の値は1.75乃至26.42の範囲であった。
ミトコンドリア還元酵素活性及びウミシイタケルシフェラーゼ活性に基づく細胞毒性試験の比較
OECD TG442Dの陽性対照物質である桂皮アルデヒド(富士フイルム和光純薬株式会社、大阪、日本)を、ケラチノセンス(登録商標)アッセイ及びLuSensにおいて採用されるミトコンドリア還元酵素活性に基づく細胞毒性試験をOECD TG442Dに基づき行い、その結果を、同物質のrLucの転写活性に基づく細胞毒性試験と比較した。
この試験において、Cell Counting Kit-8(CCK-8、同仁堂社、大阪、日本)を用いたWST-8アッセイを、従来のMTTアッセイと同様の原理を用いる細胞毒性テストに基づくミトコンドリ還元酵素活性として行った。
桂皮アルデヒドを、20mMを最大とし、公比2において段階希釈し、そして細胞培養液を用いて50倍希釈した。細胞を、平板のウェル当たり20000個の細胞となるよう、培地100μL中に播種し、そして24時間の前培養を行った。前培養の後、被験被験物質100μLを添加しそして24時間培養した。
培養終了後に、培養液を各ウェルから除去し、そして次に細胞培養液で5倍に希釈したCCK-8を各ウェル添加した。5%CO2存在下37℃の加湿環境下で1時間インキュベーションしたのち、450nmにおける吸光度を、プレートリーダー(ARVO X2、パーキンエルマー社、ウォルサム、米国)を用いて測定した。細胞生存率は、下記式を用いて算出した。
ミトコンドリア還元酵素活性及びウミシイタケルシフェラーゼ活性に基づく細胞毒性試験の比較
OECD TG442Dの陽性対照物質桂皮アルデヒドを、WST-8アッセイを用いた細胞毒性試験及び、rLucの転写活性に基づく細胞毒性試験に供し、両試験法の結果を比較し、図1に示す。rLucの転写活性に基づく細胞毒性試験において、この被験物質のIC50値を61.9μMと算出され、そして200μMにおけるこの細胞生存率は0.9%であった。しかし、WST-8アッセイにおけるIC50値は、200μMにおけるこの細胞生存率は>50%であったため、200μMより高く評価された。
本発明の方法によるアッセイの感度(LLNA又はヒトデータにおける陽性に対する本発明の方法によるアッセイにおける陽性結果の百分率)、特異度(LLNA又はヒトデータにおける陰性に対する本発明の方法によるアッセイにおける陰性結果の百分率)、及び正確度(補正後の予測値の総合的な百分率)を、クーパー(Cooper)統計量(Cooperら、1979年)に基づき算出した。ケラチノセンス(登録商標)及びLuSensの性能パラメーターも同様に算出した。
ケラチノセンス(登録商標)のLLNAに対するものは、それぞれ89.3%、85.0%及び100.0%と算出され、そしてヒトデータに対するものは、それぞれ92.2%、89.5%及び100.0%と算出された。
LuSensのLLNAに対するものは、それぞれ89.3%、90.0%及び87.5%と算出され、そして、ヒトデータに対するものは、それぞれ92.9%、94.7%及び88.9%と算出された。
また、本発明の方法では安息香酸フェニル及びオイゲノールの結果は明らかに陽性と示された(これらは、ケラチノセンス(登録商標)又はLuSensにおいて偽陰性であった。表4参照)。
ケラチノセンス(登録商標)及びLuSensの両試験法において偽陰性となった安息香酸フェニルは、誘導倍率による評価では、細胞生存率が減少するにつれ誘導倍率も減少し偽陰性となったが、生細胞数で補正したnAAでは濃度依存的な増加が認められ正しく陽性と示された。
これらの事実は、予測精度に関し、従来の同様の方法と比較して、nAAを用いて達成されたより良い改善を示している。
しかしながら、WST-8アッセイにおけるIC50値は200μM以上と評価された(図1)。
以上から、既存のアッセイ法では50%以上の細胞生存率をクリアしている200μMの用量ではrLucは殆ど活性が認められない結果となった。
同じエンドポイントであるARE依存性のレポーター遺伝子においても同様の影響を及ぼしている可能性が考えられ、rLucを指標とした細胞毒性評価の方が、化学物質がARE依存性の遺伝子発現に与える影響を正しく評価可能であると考えられた。
・Cooper,J.A. Saracci,R. and Cole,P.(1979).Describing the validity of carcinogen screening tests, Br. J. Cancer. 39,87.
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Claims (7)
- 皮膚感作性をin vitroで試験する方法であって、
下記工程(1)~(4):
(1)抗酸化反応エレメント(antioxidant response element:ARE)によって発現が制御されるホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子及びウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を用い、
前記ホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルス、及び
前記ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルス
で二重に感染させたヒトケラチノサイト細胞株を提供する工程、
(2)前記細胞株に被験物質を曝露させる工程、
(3)ホタルルシフェラーゼ活性を測定する工程、
(4)ウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定する工程、
(5)下記式:
被験物質のnRLU=(ARE活性を示すホタルルシフェラーゼ活性)/(生細胞数を示すウミシイタケルシフェラーゼ活性)
によりnRLUを算出し、そして、下記式:
nAA=(被験物質のnRLU)/(溶媒対照の平均nRLU)
により、皮膚感作性評価指標をnAA値として算出する工程、
(6)前記工程(5)におけるnAA値を、皮膚感作性物質(陽性対照物質)群について前記工程(1)から前記工程(5)をそれぞれ行った結果及び非感作性物質(陰性対照物質)群について前記工程(1)から前記工程(5)をそれぞれ行った結果と比較し、陽性もしくは陰性と判定するための最適カットオフ値を求めて、そのカットオフ値を判定基準として被験物質の皮膚感作性の判定を行う工程、
からなる、皮膚感作性試験方法。 - 前記(1)工程のホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子が、レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ遺伝子を有し、
その上流に、配列番号1で表される配列から調製される配列を有するプロモーターを有し、そして、
その上流にエンハンサーとして配列番号3で表される抗酸化反応エレメント(ARE)を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - 前記(1)工程のホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子が、
レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ遺伝子を有し、
その上流に、配列番号2で表される配列を有するプロモーターを有し、そして、
その上流にエンハンサーとして配列番号3で表される抗酸化反応エレメント(ARE)を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - 前記(1)工程のウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子が、
ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有し、そして、その上流にチミジンキナーゼ(TK)プロモーターを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - 前記(1)工程のホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子が、
レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼ遺伝子を有し、
その上流に、配列番号2で表される配列を有するプロモーターを有し、そして、
その上流にエンハンサーとして配列番号3で表される抗酸化反応エレメント(ARE)を有するものであり、
前記ホタルルシフェラーゼ遺伝子を有するARE活性測定用レポーター遺伝子配列を挿入したレンチウイルスを用いて感染させ、かつ、前記ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞生存率測定用レポーター遺伝子を挿入したレンチウイルスで感染させた、ヒトケラチノサイト細胞株を提供することを特徴とする、請求項1に記載の方法。 - 前記工程(1)で提供される細胞株が、ヒトケラチノサイト細胞株が生存できない濃度の抗生物質である、50μg/mLのハイグロマイシンBゴールド及び2.5μg/mLのピューロマイシンの存在下においても増殖可能な安定細胞株である、請求項1に記載の方法。
- 前記工程(6)における、皮膚感作性物質(陽性対照物質)群及び非感作性物質(陰性対照物質)群が、少なくとも下記:
皮膚感作性物質がオキサゾロン、2,4-ジニトロクロロベンゼン、4-フェニレンジアミン、グリオキサール、4-ニトロベンジルブロミド、4-メチルアミノフェノールサルフェート、5-クロロ-2-メチルイソチアゾリノン、桂皮アルデヒド、イソオイゲノール、テトラメチルチウラムジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、メチルジブロモグルタロニトリル、オイゲノール、シンナミルアルコール、ヘキシルシンナムアルデヒド、シトラール、安息香酸フェニル、イミダゾジニル尿酸、エチレングリコール ジメタクリレート、及び
非感作性物質がサリチル酸メチル、サリチル酸、イソプロパノール、クロロベンゼン、スルファニルアミド、フタル酸ジメチル、ラウリル硫酸ナトリウム、乳酸、グリセロール、
の群であって、それぞれについて前記工程(1)から工程(5)を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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