JP7213246B2 - 眼鏡レンズ - Google Patents

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Description

本発明は、眼鏡レンズに関する。
特許文献1(米国出願公開第2017/131567号)には、近視等の屈折異常の進行を抑制する眼鏡レンズが記載されている。具体的には、眼鏡レンズの物体側の面である凸面に対し、例えば、直径1mm程度の球形状の微小凸部(本明細書における基材凸部)を形成している。眼鏡レンズでは、通常、物体側の面から入射した光線を眼球側の面から出射させて装用者の網膜上(本明細書においては所定の位置A)に焦点を結ぶ。その一方、前記の微小凸部を通過した光は、眼鏡レンズに入射した光線を所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bにて焦点を結ぶ。その結果、近視の進行が抑制される。
米国出願公開第2017/131567号
特許文献1に記載の眼鏡レンズにおいて微小凸部が設けられた面(物体側の面である凸面)に対し、被膜(例:ハードコート膜または反射防止膜)を従来と同様とした場合、近視の進行抑制作用が低下するおそれがあるという知見が、本発明者により得られた。
本発明の一実施例は、レンズ基材に対して被膜を形成した後でも近視抑制効果を十分に発揮可能な技術を提供することを目的とする。
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。前記被膜は、基材凸部を有する面を覆う。そうなると、被膜の最表面形状は、基材凸部に由来する被膜凸部を有する。
被膜が無い状態ならば基材凸部によって、所定の位置Aよりも物体側寄りの位置にて焦点が結ばれる。しかしながら、レンズ基材の上に被膜が形成されている場合、基材凸部と同様の位置またはその近傍にて焦点が結ばれるかどうかは、被膜の最表面形状すなわち被膜凸部形状による。
そこで本発明者は以下の手法を想到した。
眼鏡レンズの最表面にある凸部の形状を基材凸部近似形状とする場合、近視抑制効果が十分に発揮可能となるという知見を得た。
好適には、実際の被膜凸部形状から基材凸部形状(すなわち部分球面形状)を仮想する。この仮想部分球面形状と実際の被膜凸部形状とを比べたときに差異が所定の値に留まる場合、近視抑制効果が更に発揮可能となるという知見を得た。
本発明は、前記知見を基に案出されたものである。
本発明の第1の態様は、
物体側の面から入射した光線を眼球側の面から出射させて所定の位置Aに収束させる眼鏡レンズにおいて、
前記物体側の面と前記眼球側の面とのうち少なくとも一方の面に基材凸部を複数有するレンズ基材と、
前記基材凸部を有する面を覆う被膜と、
を備え、
前記基材凸部を有する側の眼鏡レンズの最表面にある凸部の形状は、前記眼鏡レンズに入射した光線を、前記所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させる基材凸部近似形状である、眼鏡レンズである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記被膜の最表面形状は、前記基材凸部に由来する被膜凸部を有し、
前記被膜凸部は、前記眼鏡レンズに入射した光線を、前記所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させ、
前記被膜凸部形状に対して最適近似させた球面と、実際の被膜凸部形状との間のレンズ厚さ方向での差の絶対値の最大値が0.1μm以下である、眼鏡レンズである。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の態様であって、
前記被膜凸部は、前記眼鏡レンズに入射した光線を、前記所定の位置Aよりも物体側に0mmを超え且つ10mm以下の範囲で寄せた位置Bに収束させる。
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様に記載の態様であって、
光線追跡計算により得られる、前記眼鏡レンズの前記物体側の面の所定範囲内に均等に入射して前記被膜を通過する多数の光線のうち、前記所定の位置A近傍を通過せず、且つ、前記物体側寄りの位置B近傍も通過しない迷光光線の本数は入射光線本数の30%以下である。
本発明の第5の態様は、第2~第4のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記被膜の最表面形状に対する非点収差分布における前記被膜凸部の根元での非点収差の断面曲線が0.20mm以下である。
本発明の第6の態様は、第1~第5のいずれかの態様に記載の態様であって、
前記被膜は、前記レンズ基材と接するλ/4膜と、前記λ/4膜の上に形成されたハードコート膜と、前記ハードコート膜の上に形成された反射防止膜とを有する。
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の態様であって、
前記レンズ基材の屈折率は前記λ/4膜よりも高く、前記λ/4膜の屈折率は前記ハードコート膜よりも高い。
本発明の一実施例によれば、レンズ基材に対して被膜を形成した後でも近視抑制効果を十分に発揮可能となる。
図1は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズの一例を示す断面図である。 図2は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズが被膜凸部以外の部分(すなわちベース部分)により、物体側の面から入射した光線を眼球側の面から出射させて、眼球の網膜上における所定の位置Aに収束させる様子を示す概略側断面図である。 図3は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズが被膜凸部により、物体側の面から入射した光線を眼球側の面から出射させて所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させる様子を示す概略側断面図である。 図4は、実際の眼鏡レンズの被膜凸部と仮想部分球面形状を示す概略断面図である。 図5は、本発明の一態様による眼鏡レンズの検査方法の流れを示すフローチャートである。 図6は、光線が集光する位置を特定する方法を説明するための図(その1)である。 図7は、光線が集光する位置を特定する方法を説明するための図(その2)である。 図8は、光線が集光する位置を特定する方法を説明するための図(その3)である。 図9は、光線が集光する位置を特定する方法を示すフローチャートである。 図10は、設計値(すなわち被膜無し)であって、基材凸部およびその近傍に対する非点収差分布における、基材凸部の頂点(すなわち平面視での基材凸部の中心)を通過する断面での非点収差分布(すなわち非点収差断面曲線)のプロット(実線)を示す図である。 図11は、実際の被膜凸部およびその近傍に対する非点収差分布における、被膜凸部の頂点(すなわち平面視での被膜凸部の中心)を通過する断面での非点収差分布(すなわち非点収差断面曲線)のプロット(実線)を示す図である。 図12(a)は、実際の眼鏡レンズの被膜凸部と基材凸部を示す概略断面図である。図12(b)は、被膜凸部の頂点と基材凸部の頂点とを一致させた概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について述べる。以下における図面に基づく説明は例示であって、本発明は例示された態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1の一例を示す断面図である。
図1では、物体側の面3が凸面であり、眼球側の面4が凹面である例(いわゆるメニスカスレンズの例)を挙げる。
本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1は、物体側の面3と眼球側の面4とを有する。「物体側の面3」とは、眼鏡レンズ1を備えた眼鏡が装用者に装用された際に物体側に位置する表面であり、「眼球側の面4」とは、その反対、すなわち眼鏡レンズ1を備えた眼鏡が装用者に装用された際に眼球側に位置する表面である。
本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1は、特許文献1に記載の微小凸部(すなわち後述の基材凸部6ひいてはその上の被膜凸部11)を除いたベース部分は、従来の眼鏡レンズ1と同様、物体側の面3から入射した光線を眼球側の面4から出射させて所定の位置Aに収束させる機能を奏する。
図2は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1が被膜凸部11以外の部分(すなわちベース部分)により、物体側の面3から入射した光線を眼球側の面4から出射させて、眼球20の網膜20A上における所定の位置Aに収束させる様子を示す概略側断面図である。
本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1はレンズ基材2を備える。レンズ基材2も物体側の面3と眼球側の面4とを有する。レンズ基材2の両面の形状は、眼鏡レンズ1の種類に応じて決定してよく、凸面、凹面、平面のいずれかまたはそれらの組み合わせであってもよい。
レンズ基材2の物体側の面と眼球側の面との少なくとも一方を覆うように、被膜が形成され、眼鏡レンズ1が構成される。
本発明の一態様に係るレンズ基材2においては、物体側の面3と眼球側の面4とのうち少なくとも一方の面に基材凸部6が複数形成される。この基材凸部6の上に被膜が形成され、被膜の最表面形状に、基材凸部6に由来する被膜凸部11が形成された状態において、この被膜凸部11は、眼鏡レンズ1に入射した光線を所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させる。
図3は、本発明の一態様に係る眼鏡レンズ1が被膜凸部11により、物体側の面3から入射した光線を眼球側の面4から出射させて所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させる様子を示す概略側断面図である。なお、この収束位置Bは、複数の被膜凸部11の各々に応じて配置B、B、B、・・・Bとして存在する。本明細書における収束位置Bは、配置B、B、B、・・・Bをまとめた表現である。
本発明の一態様においては、基材凸部6を有する側の眼鏡レンズの最表面にある凸部(例:被膜凸部11)の形状が、眼鏡レンズに入射した光線を、前記所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させる基材凸部近似形状である。
基材凸部近似形状とは、被膜凸部11形状に対して最適近似させた球面(以降、仮想部分球面形状と呼称)と基材凸部6形状とが近似した状態の形状を指す。
基材凸部近似形状の一具体例は以下のとおりである。被膜凸部11形状に対して最適近似させた球面と、実際の被膜凸部11形状との間のレンズ厚さ方向での差の絶対値の最大値が0.1μm以下(好ましくは0.06μm以下)とするのが好ましい。
以下、仮想部分球面形状および前記差を規定することのメリットについて説明する。
被膜が無い状態ならば基材凸部6は略部分球面形状であり、物体側寄りの位置Bにて焦点が結ばれる。いかに、レンズ基材2の上に被膜が形成され、被膜凸部11が基材凸部6に比べて鈍った形状となったとしても、少なくとも被膜凸部11の頂点部分は、基材凸部6に追従した形状を有している。
本発明の一態様においては、被膜凸部11の頂点部分の略部分球面形状から、該略部分球面形状に対して最適近似させた球面を仮想する。これにより仮想部分球面形状を得る。そしてこの仮想部分球面形状と実際の被膜凸部11形状とを対比する。
図4は、実際の眼鏡レンズ1の被膜凸部11と仮想部分球面形状を示す概略断面図である。実線が実際の眼鏡レンズ1の被膜凸部11を示し、破線が仮想部分球面形状を示し、一点鎖線が実際の眼鏡レンズ1のベース部分を示し、横線部分が、仮想部分球面形状と、実際の被膜凸部11形状との間のレンズ厚さ方向での差を示す。
仮想部分球面形状は、実際の眼鏡レンズ1の被膜凸部11の形状に対して最適近似させた球面の部分形状である。この仮想部分球面形状は、例えば最小二乗法によって得られる。
最適近似の一具体的は以下の通りである。被膜凸部11形状に対して球面形状を重ねて配置する。眼鏡レンズ1の最表面におけるベース部分の形状から起立開始して頂点に向かった後に起立が終了する部分までにおいて、両形状の間のレンズ厚さ方向(光軸方法、Z軸)での差を二乗する。それらの値の合計が最小となるような仮想部分球面形状を設定する。
最小二乗法以外の方法としては、被膜凸部11の頂点およびその近傍の複数点の位置から仮想部分球面形状を得てもよい。その場合、仮想部分球面形状の頂点を、実際の眼鏡レンズ1の被膜凸部11の頂点と一致させ、前記差を調べてもよい。
この差の絶対値の最大値が0.1μm以下(好ましくは0.06μm以下)であれば、被膜凸部11が部分球面形状に非常に近いことになる。その結果として近視抑制効果が十分に発揮可能となる。更に、この規定を適用することにより、近視抑制効果が十分に発揮可能となることに加え、実際に作製した眼鏡レンズ1の断面をわざわざ表出させて、被膜凸部形状が基材凸部形状を忠実に反映できているか否かを確認する必要がなくなる。
最表面におけるベース部分の形状からの起立開始部分としては、被膜凸部11の形状を曲線化したものを1回微分した曲線において増加に転じた点を起立開始部分としてもよい。また、後述の図11(b)に示す非点収差断面曲線のピークの立上り部分を起立開始部分としてもよい。起立終了部分も同様に設定してもよい。
以下、本発明の一態様の更なる具体例、好適例および変形例について説明する。
本発明の一態様においては、光線追跡計算により得られる、眼鏡レンズの物体側の面の所定範囲内に均等に入射して被膜を通過する多数の光線のうち、所定の位置A近傍を通過せず、且つ、物体側寄りの位置B近傍も通過しない迷光光線の本数は入射光線本数の30%以下に設定するのが好ましい。
以下、迷光光線、および迷光光線の割合を減らすことのメリットについて説明する。
迷光光線は、眼鏡レンズ1の物体側の面3から入射して眼球側の面4から出射する光線であって、眼鏡レンズ1自体によって光線が収束する所定の位置A近傍も通過せず、基材凸部6ひいては被膜凸部11によって光線が収束する位置B近傍も通過しない光線のことを指す。迷光光線により装用者の視野にボヤケがもたらされる。そのため、眼鏡レンズ1の物体側の面3から入射して眼球側の面4から出射する光線における迷光光線の割合を減らすのが好ましい。
迷光光線が生じる理由の一つは被膜である。被膜凸部11の根元において、ベースとなる物体側の面3である凸面からの形状の変化が緩やか過ぎると、基材凸部6の球形状から離れた形状となり且つ物体側の面3である凸面とも離れた形状となる。そうなると、装用者の網膜20A上(本明細書においては所定の位置A近傍)にも焦点を結ばないし、前記の物体側寄りの位置B近傍にも焦点を結ばないことになる。
その一方、前記の本発明の一態様の眼鏡レンズ1のように、迷光光線の割合を30%以下に設定することにより、レンズ基材2に対して被膜を形成した後でも近視抑制効果を十分に発揮可能となる。
迷光光線の割合の設定には光線追跡計算を使用する。その計算の際には、眼鏡レンズの物体側の面の所定範囲内に均等に入射して被膜を多数の光線が通過する状況(いわゆる眼鏡レンズを装用して外界を見る状況)を想定する。この「所定範囲」とは、物体側の面における光学領域であればよい。この光学領域とは物体側の面およびそれに対向する眼球側の面において装用者ごとに設定された度数を実現する曲面形状を有する部分を指す。
迷光光線が生じる理由の一つが被膜であり、本発明の一態様の眼鏡レンズ1では被膜を必須とする点を考慮すると、迷光光線の割合を0%超え(または1%以上、さらには3%以上)且つ30%以下と設定しても構わない。また、迷光光線の割合を減らすのが好ましいことから、20%以下と設定するのが好ましく、15%以下と設定するのがより好ましい。
ここで迷光光線の割合を決定する際の条件を以下に述べる。
図5は、本発明の一態様による眼鏡レンズの検査方法の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、まず、ステップ101において、実際の眼鏡レンズ1の物体側の面(以降、凸面とも称する。)の形状を測定し、凸面3の形状を表す曲面データを作成する(形状測定ステップ)。凸面3の形状は、例えば、光の干渉を利用して測長を行う非接触三次元顕微鏡により測定する。凸面3の三次元形状は、例えば、離散三次元データ(x、y、z)として取得される。
次に、ステップ102において、得られた眼鏡レンズ1の凸面形状を示すデータから曲面データを生成する(曲面データ生成ステップ)。なお、眼鏡レンズ1の凸面形状を示すデータとして、離散三次元データを用いた場合には、例えば、B-スプライン曲線の集合を生成すればよい。また、測定した離散三次元データにノイズがある場合には、例えば、移動平均処理を行って平均値を用いてもよい。
次に、ステップ103において、前記曲面データに基づいて実際の眼鏡レンズ1のモデルを設定する(モデル設定ステップ)。
実際の眼鏡レンズ1のモデルを設定すると共に、眼球モデルも設定する。眼球モデルは装用者に係る情報(例えば眼軸長や眼の調節量等)を使用すればよい。その際に、フレームに取り付けられた際の眼鏡レンズの傾き(前傾角及びフレームあおり角)を考慮して、眼球モデル32に対する眼鏡レンズモデル30を配置してもよい。
次に、ステップ104において、光線追跡処理により、実際の眼鏡レンズ1を光線が通過した際に光線が最も収束する位置を特定する(収束位置特定ステップ)。具体的には、実際の眼鏡レンズ1の曲面データに基づくモデルに対し、無限遠の点光源から出射した光線が通過した後の、光線による輝度分布を表すPSF(Point spread function:点広がり関数)を求める。
PSFは点光源から発射した多数の光線を追跡し、任意の面上のスポットの密度を計算することで得られる。そして、複数の任意の面のPSFを比較して、複数の任意の面の内、最も光線が集光する位置(面)を特定する。なお、光線の直径は動向径に基づいて設定すればよく、例えば4φとしても良い。
ここで、ステップ104において最も光線が集光する位置を特定する方法をより詳細に説明する。図6~図8は、光線が集光する位置を特定する方法を説明するための図である。また、図9は、光線が集光する位置を特定する方法を示すフローチャートである。
まず、図6に示すように、ステップ201において、モデル上での物体側の面(凸面)33におけるモデル上での被膜凸部36を光線が通過する状況を想定する。その上で、眼球モデル32の網膜32A上の0mm位置から、所定の距離(例えば、眼球の硝子体の厚みである16mm程度の位置)から網膜32Aまで所定の離間間隔Δd(例えば、0.1mm)間隔で、測定面P1、1~P1、nを設定する。なお、離間間隔Δdは0.2mm間隔としてもよいし、眼軸長の1/50としてもよい。
次に、ステップ202において、光線追跡処理を行い、各測定面P1、1~P1、nにおける光線の密度を計算する。光線の密度の計算は、例えば、各測定面に格子状のグリッド(例えば0.1mm×0.1mm)を設定しておき、各グリッドを通過する光線の数を計算すればよい。
次に、ステップ203において、凸部に入射した光線が最大密度となる測定面を特定するため、測定面P1、1~P1、nの中で前記の所定の距離から最初の極大密度の測定面P1、iを特定する。計算を省くため、測定面P1から光線の密度の計算を始めて、最初の極大値検出の後、測定面P1における値と最初の極大値との中間値程度まで光線の密度の計算値が低下したところで、本ステップの計算を打ち切ってもよい。
次に、図7に示すように、ステップ204において、最大密度の測定面P1、iの前後の離間距離Δd/2の位置に測定面P2、1及び測定面P2、2を設定する。そして、ステップ205において、測定面P2、1及び測定面P2、2における光線の密度を計算する。次に、ステップ206において、測定面P2、1と、測定面P2、2と、測定面P1、iにおける最大密度の測定面を特定する。
その後、ステップ207において、離間距離が十分に小さくなるまで、ステップ204~206と同様の工程を繰り返す。すなわち、図8に示すように、直前に最大密度となった測定面(図8ではP2,2)の前後に、直前の離間距離の半分の新たな離間距離(図8ではΔd/4)の位置に新たな測定面(図8ではP3、1及びP3、2)を設定する工程と、新たな測定面の光線の密度を計算する工程と、直前に最大密度となった測定面及び新たな測定面の中で最大となった測定面を特定する工程とを繰り返す。
以上の工程により、光軸方向(レンズ厚さ方向、Z軸)における、光線が集光する位置を特定可能となる。
次に、光軸方向に垂直な面上(すなわち特定された前記測定面上)における、光線の収束位置を特定する。この特定には先ほど述べたPSFを使用する。PSFにより、最も光線(前記測定面上では点)が密集した箇所を、前記測定面上における光線の収束位置Bとする。
そして、前記測定面上における光線の収束位置Bから例えば半径0.1mmの範囲外にある光線数を算出する。本明細書においては収束位置Bから例えば半径0.1mmの範囲内を前記「位置B近傍」とする。
前記範囲外にある光線のうち、眼鏡レンズ1自体にて光線が収束する所定の位置Aの半径0.1mmの範囲内にある光線(すなわち位置Aにて収束する正常な光線)を差し引く。本明細書においては収束位置Aから例えば半径0.1mmの範囲内を前記「位置A近傍」とする。
差し引かれた後の本数の光線は、眼鏡レンズ1自体にて光線が収束する位置A近傍には収束しないし、被膜凸部11にて光線が収束する物体側寄りの位置B近傍にも収束しない。このような光線を本明細書では迷光としている。そしてこの迷光光線の割合を30%以下に設定することにより、レンズ基材2に対して被膜を形成した後でも近視抑制効果を十分に発揮可能となる。
被膜凸部11は、眼鏡レンズ1に入射した光線を、所定の位置Aよりも物体側に0mmを超え且つ10mm以下の範囲で寄せた位置Bに収束させるのが好ましい。言い方を変えると、本発明の一態様の眼鏡レンズ1の最表面(すなわち被膜の最表面)は、眼鏡レンズ1に入射した光線を、所定の位置Aよりも物体側に0mmを超え且つ10mm以下の範囲で寄せた位置Bに収束させる形状を有する。なお、前記範囲は0.1~7mmが好ましく、0.1~5mmがより好ましく、0.3~3mmが更に好ましい。
前記被膜凸部11の突出距離Lと、前記基材凸部6の突出距離Lとの関係が以下の式(1)を満たすのが好ましい。
0.6≦L/L≦1.5 ・・・式(1)
この条件を満たせば、基材凸部6に被膜が形成されたとしても、基材凸部6に由来する被膜凸部11は、眼鏡レンズ1に入射した光線の収束位置Bを、前記所定の位置Aよりも物体側に十分に寄せられる。これは、被膜凸部11ひいては本発明の一態様の眼鏡レンズ1が、十分な近視抑制効果を発揮できることを意味する。
なお、突出距離は、眼鏡レンズ1の最表面形状のベース部分から被膜凸部11の頂点までの光軸方向(レンズ厚さ方向、Z軸)の距離である。
前記被膜の最表面形状に対する非点収差分布における前記被膜凸部11の根元での非点収差の断面曲線の半値幅が0.20mm以下であるのが好ましい。
図10は、設計値(すなわち被膜無し)であって、基材凸部6およびその近傍に対する非点収差分布における、基材凸部6の頂点(すなわち平面視での基材凸部6の中心)を通過する断面での非点収差分布(すなわち非点収差断面曲線)のプロット(実線)を示す図である。
図11は、実際の被膜凸部11およびその近傍に対する非点収差分布における、被膜凸部11の頂点(すなわち平面視での被膜凸部の中心)を通過する断面での非点収差分布(すなわち非点収差断面曲線)のプロット(実線)を示す図である。
図10および図11において、横軸はX軸すなわち眼鏡レンズ1の物体側の面3を平面視した際の水平方向位置を示し単位はmmである。X軸の代わりにY軸すなわち眼鏡レンズ1の物体側の面3を平面視した際の垂直(天地)方向を使用しても構わない。
左縦軸は非点収差(および平均度数)の値を示し単位はディオプターである。
右縦軸は被膜凸部11または基材凸部6の高さを示し単位はmmである。
なお、被膜凸部11または基材凸部6は横軸において0.3~1.3mmの部分である。また、平均度数分布(すなわち平均度数分布断面曲線)のプロット(点線)、および被膜凸部11または基材凸部6のZ軸の高さのプロット(破線)も示す。
図10に示すように、設計上、非点収差断面曲線は、基材凸部6でも、ベース部分である略水平部分でも略一定であり、基材凸部6とベース部分との間の部分のみが球面形状から離れた形状となる。そのため、該部分のみにおいて高い非点収差の値を示す。
その一方、図11に示すように、実際の被膜凸部11およびその近傍に対する非点収差断面曲線だと、被膜凸部11とベース部分との間(X=0.3mm近傍およびX=1.3mm近傍)ではX軸方向に比較的広い範囲で非点収差が増加している。これは、被膜凸部11とベース部分との間では、設計値である図10に比べて比較的広い範囲で球面形状から離れた形状となっていることを示す。
迷光光線の原因の一つは、被膜凸部11の根元において、ベース部分からの形状の変化が緩やか過ぎることにある。つまり、ベース部分と被膜凸部11とが明確に分かれていれば迷光光線の原因の一つを排除でき、ひいてはレンズ基材2に対して被膜を形成した後でも近視抑制効果を十分に発揮可能となる。そこで、ベース部分と被膜凸部11との間に、迷光光線の原因の一つとなる中途半端な形状の部分があまり存在しないことを示すべく、前記非点収差断面曲線を利用する。つまり、被膜凸部11に対する非点収差断面曲線により、被膜凸部11の根元の形状の変化の度合い(すなわち勾配変化)を規定する。
実際の眼鏡レンズに係る図11における半値幅は、その名の通りピーク頂点の値(ディオプター)の半値におけるピーク幅を採用すればよい。例えば図11だと、X=0.3mm近傍においてもX=1.3mm近傍においても約0.10mmとなる。
前記非点収差断面曲線の半値幅を0.20mm以下と規定することにより、ベース部分から被膜凸部11へと急激に変化していることが示され、ひいては本発明の一態様の眼鏡レンズ1が、十分な近視抑制効果を発揮できる。
前記被膜は、前記レンズ基材2と接するλ/4膜(不図示)と、前記λ/4膜の上に形成されたハードコート膜8と、前記ハードコート膜8の上に形成された反射防止膜10とを有するのが好ましい。
λ/4膜は、光学的にλ/4の厚さを有する膜であれば特に限定は無く、反射防止フィルター等に使用される膜を使用しても構わない。一具体例としては、λ/4膜としてウレタン樹脂(屈折率n=1.54)を使用しても構わず、厚さは70~90nmであってもよい。
ハードコート膜8は、眼鏡レンズ1の耐擦傷性を向上させるものならば特に限定は無い。一具体例としては、ハードコート膜8として金属を含まないケイ素化合物(屈折率n=1.50)を使用しても構わず、厚さは1.5~1.9μmであってもよい。
反射防止膜10は、公知のものを使用して構わない。
前記レンズ基材2の屈折率は前記λ/4膜よりも高く、前記λ/4膜の屈折率は前記ハードコート膜8よりも高くするのが好ましい。
以下、前記内容以外の具体的内容について述べる。
[レンズ基材2]
基材凸部6のサイズおよびレンズ基材2の表面における複数の基材凸部6の配置の態様は、特に限定されるものではなく、例えば、基材凸部6の外部からの視認性、基材凸部6によるデザイン性付与、基材凸部6による屈折力調整等の観点から決定できる。基材凸部6の高さは、例えば0.1~10μmとしてもよく、基材凸部6の表面の曲率半径は、例えば50~250mmRとしてもよい。また、隣り合う基材凸部6間の距離(ある基材凸部6の端部とこの基材凸部6と隣り合う基材凸部6の端部との距離)は、例えば基材凸部6の半径の値と同じ程度としてもよい。また、複数の基材凸部6は、例えばレンズ中心付近にほぼ均一に配置できる。
レンズ基材2としては、眼鏡レンズ1に一般的に使用される各種レンズ基材2を使用可能である。レンズ基材2は、例えばプラスチックレンズ基材またはガラスレンズ基材としてもよい。ガラスレンズ基材は、例えば無機ガラス製のレンズ基材としてもよい。レンズ基材2としては、軽量で割れ難いという観点から、プラスチックレンズ基材が好ましい。プラスチックレンズ基材としては、(メタ)アクリル樹脂をはじめとするスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR-39)等のアリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、イソシアネート化合物とジエチレングリコールなどのヒドロキシ化合物との反応で得られたウレタン樹脂、イソシアネート化合物とポリチオール化合物とを反応させたチオウレタン樹脂、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を含有する硬化性組成物を硬化した硬化物(一般に透明樹脂と呼ばれる。)を挙げられる。硬化性組成物は、重合性組成物と称しても構わない。レンズ基材2としては、染色されていないもの(無色レンズ)を用いてもよく、染色されているもの(染色レンズ)を用いてもよい。レンズ基材2の厚さおよび直径は特に限定されるものではないが、例えば、厚さ(中心肉厚)は1~30mm程度としてよく、直径は50~100mm程度としてもよい。レンズ基材2の屈折率は、例えば、1.60~1.75程度としてもよい。ただしレンズ基材2の屈折率は、前記範囲に限定されるものではなく、前記の範囲内でも、前記の範囲から上下に離れていてもよい。本発明および本明細書において、屈折率とは、波長500nmの光に対する屈折率をいうものとする。レンズ基材2は、注型重合等の公知の成形法により成形できる。例えば、複数の凹部が備わった成形面を有する成形型を用い、注型重合によるレンズ基材2の成形を行うことにより、少なくとも一方の表面に基材凸部6を有するレンズ基材2が得られる。
[被膜]
レンズ基材2の基材凸部6を有する表面上に形成される被膜の一態様としては、硬化性化合物を含む硬化性組成物を硬化して形成される硬化膜が挙げられる。かかる硬化膜は、一般にハードコート膜8と呼ばれ、眼鏡レンズ1の耐久性向上に寄与する。硬化性化合物とは硬化性官能基を有する化合物を意味し、硬化性組成物とは硬化性化合物を一種以上含む組成物を意味する。
前記硬化膜を形成するための硬化性組成物の一態様としては、硬化性化合物として有機ケイ素化合物を含む硬化性組成物を挙げることができ、有機ケイ素化合物とともに金属酸化物粒子を含む硬化性組成物を挙げることもできる。前記硬化膜を形成可能な硬化性組成物の一例としては、特開昭63-10640号公報に記載されている硬化性組成物が挙げられる。
また、有機ケイ素化合物の一態様としては、下記一般式(I)で表される有機ケイ素化合物およびその加水分解物を挙げることもできる。
(R(RSi(OR4-(a+b) ・・・(I)
一般式(I)中、Rは、グリシドキシ基、エポキシ基、ビニル基、メタクリルオキシ基、アクリルオキシ基、メルカプト基、アミノ基、フェニル基等を有する有機基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアシル基または炭素数6~10のアリール基を表し、Rは炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、aおよびbはそれぞれ0または1を示す。
で表される炭素数1~4のアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であって、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
で表される炭素数1~4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、オレイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
で表される炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
で表される炭素数1~6のアルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であって、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
で表される炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、キシリル基、トリル基等が挙げられる。
前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、特開2007-077327号公報の段落0073に記載されている化合物を挙げられる。一般式(I)で表される有機ケイ素化合物は硬化性基を有するため、塗布後に硬化処理を施すことにより、硬化膜としてハードコート膜8を形成できる。
金属酸化物粒子は、硬化膜の屈折率の調整および硬度向上に寄与し得る。金属酸化物粒子の具体例としては、酸化タングステン(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタニウム(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化スズ(SnO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化アンチモン(Sb)等の粒子が挙げられ、単独または2種以上の金属酸化物粒子を組み合わせて使用可能である。金属酸化物粒子の粒径は、硬化膜の耐擦傷性と光学特性とを両立する観点から、5~30nmの範囲であることが好ましい。硬化性組成物の金属酸化物粒子の含有量は、形成される硬化膜の屈折率および硬度を考慮して適宜設定可能であり、通常、硬化性組成物の固形分あたり5~80質量%程度としてもよい。また、金属酸化物粒子は、硬化膜中での分散性の点から、コロイド粒子であることが好ましい。
前記硬化膜は、例えば、前記成分および必要に応じて有機溶媒、界面活性剤(レベリング剤)、硬化剤等の任意成分を混合して調製した硬化性組成物を、レンズ基材2の基材凸部6を有する表面に直接塗布するか、または他の膜を介して間接的に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜に硬化性化合物の種類に応じた硬化処理(例えば加熱および/または光照射)を施すことにより形成できる。硬化性組成物の塗布について、詳細は後述する。例えば硬化処理を加熱により行う場合、硬化性組成物の塗布膜が形成されたレンズ基材2を50~150℃の雰囲気温度の環境下に30分~2時間程度配置することにより、塗布膜中の硬化性化合物の硬化反応を進行させられる
レンズ基材2の基材凸部6を有する表面上に被膜を形成するための硬化性組成物の粘度は、スピンコートによる塗布適性の観点からは、1~50mPa・sの範囲であることが好ましく、1~40mPa・sの範囲であることがより好ましく、1~20mPa・sの範囲であることが更に好ましい。本発明および本明細書における粘度は、液温25℃での粘度をいうものとする。
また、レンズ基材2の基材凸部6を有する表面上に形成される被膜の一態様としては、一般にプライマー膜と呼ばれ層間の密着性向上に寄与する被膜を挙げることもできる。そのような被膜を形成可能な塗布液としては、ポリウレタン樹脂等の樹脂成分が溶媒(水、有機溶媒、またはそれらの混合溶媒)中に分散している組成物(以下、「乾燥固化性組成物」と記載する。)を挙げられる。かかる組成物は、溶媒を乾燥除去することにより固化が進行する。乾燥は、風乾、加熱乾燥等の乾燥処理によって行える。
レンズ基材2の基材凸部6を有する表面上に被膜を形成するための乾燥固化性組成物の粘度は、スピンコートによる塗布適性の観点からは、1~50mPa・sの範囲であることが好ましく、1~40mPa・sの範囲であることがより好ましく、1~20mPa・sの範囲であることが更に好ましい。
[塗布液の供給]
レンズ基材2の基材凸部6を有する表面上に被膜を形成するための塗布液の供給は、スピンコートにより行われる。塗布をスピンコートで行うことにより、基材凸部6周辺に液溜まりが生じること等に起因して被膜の膜厚が不均一になることを抑制できる。スピンコートによる塗布は、例えば、スピンコーターに基材凸部6を有する表面を鉛直上方を向けてレンズ基材2を配置し、スピンコーター上でレンズ基材2を回転させた状態で、前記表面上に上方から塗布液を供給する(例えば前記表面の上方に配置されたノズルから塗布液を吐出する)ことにより行える。ここでスピンコートにおけるレンズ基材2の回転速度は、膜厚がより均一な被膜を形成する観点から、10~3000rpm(rotations per minute)の範囲とすることが好ましく、50~2500rpmの範囲とすることがより好ましく、100~2000rpmの範囲とすることが更に好ましい。
前記塗布後、塗布液の種類に応じた処理(例えば硬化処理、乾燥処理等)を行うことにより被膜を形成できる。
以上の工程を経て形成される被膜の膜厚は、例えば0.5~100μmの範囲としてもよい。ただし、被膜の膜厚は、被膜に求められる機能に応じて決定されるものであり、前記の例示した範囲に限定されるものではない。
前記被膜の上には、更に一層以上の被膜を形成することもできる。そのような被膜の一例としては、反射防止膜10、撥水性または親水性の防汚膜、防曇膜等の各種被膜が挙げられる。これら被膜の形成方法については、公知技術を適用できる。
また、レンズ基材2の一方の表面が基材凸部6を有さない場合、そのようなレンズ基材2表面にも一層以上の被膜を形成できる。かかる被膜としては、眼鏡レンズ1に通常設けられる各種被膜(例えば、ハードコート膜8、プライマー膜、反射防止膜10、防汚膜、防曇膜等)を挙げることができ、これら被膜の形成方法についても公知技術を適用できる。
先に述べた本発明の一態様の眼鏡レンズの規定に加え、または規定に代えて、以下の規定を用いてもよい。
本発明の一態様においては、被膜凸部形状と基材凸部形状との間のレンズ厚さ方向での差の絶対値の最大値が0.1μm以下(好ましくは0.06μm以下)とする。
以下、前記差を規定することのメリットについて説明する。
いかに、レンズ基材2の上に被膜が形成され、被膜凸部11が基材凸部6に比べて鈍った形状となったとしても、少なくとも被膜凸部11の頂点部分は、基材凸部6に追従した形状を有している。
つまり、本発明の一態様においては、実際の被膜凸部11の略部分球面形状と、実際のレンズ基材2の部分球面形状とを対比する。
図12(a)は、実際の眼鏡レンズ1の被膜凸部11と基材凸部6を示す概略断面図である。図12(b)は、被膜凸部11の頂点と基材凸部6の頂点とを一致させた概略断面図である。実線が実際の眼鏡レンズ1の被膜凸部11を示し、破線が基材凸部6を示し、縦線部分が、被膜凸部形状と基材凸部形状との間のレンズ厚さ方向での差を示す。
図12(b)において、被膜凸部11の頂点と基材凸部6の頂点とを一致させたうえで、基材凸部6のベース部分の形状から起立開始して頂点に向かった後に起立が終了する部分までの実際の基材凸部6と、実際の眼鏡レンズ1の被膜凸部11との間のレンズ厚さ方向(光軸方法)での差を調べる。
この差の絶対値の最大値が0.1μm以下(好ましくは0.06μm以下)であれば、被膜の下に存在している基材凸部6の形状を忠実に追従できているとみなす。その結果として近視抑制効果が十分に発揮可能となるという知見が得られている。この規定を適用することにより、近視抑制効果が十分に発揮可能となる。なお、被膜凸部11形状と基材凸部6形状との相似率を規定してもよい。
本発明の前記一態様では、被膜凸部11形状に対して最適近似させた球面と、実際の被膜凸部11形状との間のレンズ厚さ方向での差の絶対値の最大値を0.1μm以下とした場合について述べた。その一方、本発明に係る眼鏡レンズ1はこの差の規定には限定されない。端的に言えば、基材凸部6を有する側の眼鏡レンズ1の最表面にある凸部は、眼鏡レンズ1に入射した光線を、たとえ被膜が形成された後であっても、所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させることに本発明の主旨があり、この主旨は新規である。
先に述べた本発明の一態様の眼鏡レンズの技術的思想は遠視抑制機能を奏する眼鏡レンズにも適用可能である。具体的に言うと、被膜凸部11および基材凸部6の「凸部」を「凹部」に変更する。それにより、被膜凹部は、眼鏡レンズに入射した光線を、所定の位置Aよりも「眼球側」寄りの位置B’に収束させられる。これまでに説明した本発明の一態様の眼鏡レンズにおいて、「凸部」を「凹部」に変更し、所定の位置Aよりも「眼球側」寄りの位置B’に収束するというように変更すれば、遠視抑制機能を奏する眼鏡レンズとなる。
1 眼鏡レンズ
2 レンズ基材
3 物体側の面(凸面)
4 眼球側の面(凹面)
6 基材凸部
8 ハードコート膜
10 反射防止膜
11 被膜凸部
20 眼球
20A 網膜
30 眼鏡レンズモデル
32 眼球モデル
32A 網膜
33 モデル上での物体側の面(凸面)
36 モデル上での被膜凸部

Claims (6)

  1. 物体側の面から入射した光線を眼球側の面から出射させて装用者の網膜上である所定の位置Aに収束させる眼鏡レンズにおいて、
    前記物体側の面と前記眼球側の面とのうち少なくとも一方の面に基材凸部を複数有するレンズ基材と、
    前記基材凸部を有する面を覆う被膜と、
    を備え、
    前記基材凸部の高さは0.1~10μmの範囲であり、
    前記基材凸部の表面の曲率半径は、50~250mmRの範囲であり、
    前記被膜は、ハードコート膜を含み、
    前記基材凸部を有する側の眼鏡レンズの最表面の凸部は、前記基材凸部に由来する被膜凸部であり、
    前記被膜凸部形状に近似する球面と、前記被膜凸部形状との間の、レンズ厚さ方向での差の絶対値の最大値が0.1μm以下であり、
    以下の(1)(2)のいずれかを満たし、
    前記基材凸部を有する側の眼鏡レンズの最表面における前記被膜凸部以外の部分であるベース部分は、前記眼鏡レンズに入射した光線を、前記所定の位置Aに収束させ、且つ、
    前記基材凸部を有する側の眼鏡レンズの最表面における前記被膜凸部は、前記眼鏡レンズに入射した光線を、前記所定の位置Aよりも物体側寄りの位置Bに収束させる、眼鏡レンズ。
    (1)前記被膜凸部形状に近似する球面の形状は、前記被膜凸部形状に対して重ねて配置され、前記眼鏡レンズの最表面におけるベース部分の形状から起立開始して頂点に向かった後に起立が終了する部分に至るまでの両形状の間のレンズ厚さ方向での差の二乗の合計が最小となる球面形状である。
    (2)前記被膜凸部形状に近似する球面の形状は、前記被膜凸部形状に近似する球面の形状の頂点を前記被膜凸部の頂点と一致させた球面形状である。
  2. 前記(1)を満たす、請求項1に記載の眼鏡レンズ。
  3. 前記被膜凸部は、前記眼鏡レンズに入射した光線を、前記所定の位置Aよりも物体側に0mmを超え且つ10mm以下の範囲で寄せた位置Bに収束させる、請求項1または2に記載の眼鏡レンズ。
  4. 前記被膜は、前記レンズ基材と接するλ/4膜と、前記λ/4膜の上に形成されたハードコート膜と、前記ハードコート膜の上に形成された反射防止膜とを有する、請求項1~3のいずれかに記載の眼鏡レンズ。
  5. 前記レンズ基材の屈折率は前記λ/4膜よりも高く、前記λ/4膜の屈折率は前記ハードコート膜よりも高い、請求項4に記載の眼鏡レンズ。
  6. 前記ハードコート膜の厚さは1.5~1.9μmである、請求項1~5のいずれかに記載の眼鏡レンズ。

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