(第1実施形態)
以下、本発明が適用された第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両に搭載される電源装置は、第1~第8電池パック1a~1hを備える。第1~第8電池パック1a~1hは、第1~第8電池スタック2a~2hと、制御装置としての第1~第8のECU10a~10hとをそれぞれ備える。第1~第8電池スタック2a~2hは、それぞれが同じ構成であって、ニッケル水素蓄電池などからなる単電池又は複数の単電池を接続した電池モジュールを複数連結して構成されている。以下、第1~第8電池スタック2a~2hのように、同じ構成を有する複数の部材について、互いに区別しないで説明する場合には、単に電池スタック2のようにして説明する。
第1及び第5電池スタック2a,2eは、電力配線3aを介して直列に接続され、第2及び第6電池スタック2b,2fは、電力配線3bを介して直列に接続されている。第3及び第7電池スタック2c,2gは、電力配線3cを介して直列に接続され、第4及び第8電池スタック2d,2hは、電力配線3dを介して直列に接続されている。さらに、第1~第4電池スタック2a~2dの正極は、電力配線4aに接続され、第5~第8電池スタック2e~2hの負極は、電力配線4bに接続されている。すなわち、第1及び第5電池スタック2a,2eと、第2及び第6電池スタック2b,2fと、第3及び第7電池スタック2c,2gと、第4及び第8電池スタック2d,2hとが並列に接続されている。電力配線4a,4bは、車両に接続されており、開閉器などを介して、インバータや、DC/DCコンバータを備えた図示しない高圧装置等に接続される。
第1~第8のECU10a~10hは、制御部11a~11hと、記憶部12a~12hと、検知部13a~13hと、接地端子14a~14hと、電力供給部15a~15hとをそれぞれ備える。なお、第1~第8のECU10a~10hは、量産性の観点から同じ構成であることが好ましく、本実施形態では、第1~第8のECU10a~10hの何れもが同じ構成を有する。但し、第1~第8のECU10a~10hは、ECU10毎に各部の接続状態を変更することで自身の一部の回路等を機能させない構成を有する。以下、第1のECU10aに含まれる制御部11a、記憶部12a、検知部13a、接地端子14a、及び、電力供給部15aについて説明し、第2~第8のECU10b~10hに含まれる各部についての説明を省略する。
制御部11aは、一例として、CPUであり、第1電池スタック2aの充放電の許可/不許可の判断、電池状態の管理、短絡等の異常判定などを行う。なお、充放電、電池状態の管理のための回路等については図示及び説明を省略する。また、制御部11aは、第1のECU10aに各電池パックに固有となるアドレスを設定する処理を行う。
記憶部12aは、不揮発性メモリであって、一例として、フラッシュメモリであり、制御部11aが各種情報処理を実行するためのデータ及びプログラムを記憶する。記憶部12aは、制御部11aが第1のECU10aにアドレスを設定するためのデータ及びプログラムを記憶し、制御部11aが第1のECU10aに設定したアドレスを記憶する。
検知部13aは、電圧検知器であり、自身に供給される電力信号の電圧の大きさを検知する。検知部13aは、検知した電力信号の電圧の大きさを検知結果として制御部11aに出力する。検知部13aには、検知部13aが接続された回路を接地させる接地端子14aが接続されている。なお、本実施形態では、第1及び第5のECU10a,10eの検知部13a,13eのみが接地端子14a,14eに接続されており、接地端子14b~14d,14f~14hは、機能しないように構成されている。
また、検知部13aは、所定の抵抗値を有する抵抗素子である抵抗部16aを備える(図2参照)。なお、第2~第8のECU10b~10hにおいても同様に、検知部13b~13hは、抵抗部16b~16hをそれぞれ備える。なお、本実施形態では、抵抗部16a~16hは、同一の抵抗値Rを有する。
電力供給部15aは、電圧値Vを有する電力信号を出力する電源であり、自身が接続される回路の下流に電力信号を供給する。また、電力供給部15aは、電源検知部17aと、切換スイッチ18aとを備える(図2参照)。電源検知部17aは、電力供給部15aから出力される電力信号の電圧の大きさを検知し、検知した電圧値Vα1を制御部11aに出力する。これにより、電力供給部15aが接続される回路に印加される電圧が、適切な大きさであることを確認している。切換スイッチ18aは、電力供給部15aの接続を開閉するための開閉器であり、制御部11aによって制御される。
なお、第2~第8のECU10b~10hにおいても同様に、電力供給部15b~15hは、電源検知部17b~17hと、切換スイッチ18b~18hとをそれぞれ備える。電源検知部17b~17hは、自身が検知した電圧値Vα2~Vα8を自身の制御部11b~11hに出力する。切換スイッチ18b~18hは、電力供給部15b~15hの接続を開閉するための開閉器であり、制御部11b~11hによってそれぞれ制御される。また、本実施形態において、第3~第8のECU10c~10hの電力供給部15c~15hは、それぞれの切換スイッチ18c~18hの出力端が開放されていることで、機能しないように構成されている。
電源装置は、各ECU10に固有のアドレスを設定するための回路である第1検知回路20及び第2検知回路30を備える。第1検知回路20は、第1のECU10aの電力供給部15aと、第2のECU10bの検知部13bと、第3のECU10cの検知部13cと、第4のECU10dの検知部13dと、第1のECU10aの検知部13aとが、この順に直列に接続されて構成される。第1検知回路20を構成する各部は、制御配線21~24によって接続される。
第1検知回路20は、電力供給部15aと検知部13bとを接続する制御配線21の途中に、安全スイッチ25を備える。安全スイッチ25は、例えば、電池パック1のカバーやサービスプラグ、上記高圧装置側のカバーの取り付け及び取り外しに連動し、感電防止構造を構成する安全開閉器である。安全スイッチ25は、1個でなく2個以上でもよい。安全スイッチ25は、例えば第2電池パック1bのカバーを取り外した状態で開くスイッチであり、当該カバーが取り外されると、第1検知回路20が遮断される。逆に、カバーが正常に取り付けられている状態であれば、安全スイッチ25が閉じられ、第1検知回路20を導通させる。
第1検知回路20は、回路中に安全スイッチ25を含むことで、電源装置に必要とされるインターロック機構としてのHVIL回路として利用できる。また、第1検知回路20を、アドレス設定用の回路とHVIL回路とに供用することで、電源装置における回路の複雑化や部品点数の増加によるコストアップを抑制できる。
第2検知回路30は、第2のECU10bの電力供給部15b、第6のECU10fの検知部13f、第7のECU10gの検知部13g、第8のECU10hの検知部13h、及び、第5のECU10eの検知部13eが、この順に直列に接続されて構成される。第2検知回路30を構成する各部は、制御配線31~34によって接続される。
また、第1~第8のECU10a~10hの制御部11a~11hは、それぞれが通信線5で互いに接続され、通信線5を介して各種情報を相互に送受信できる。通信線5は、例えば、CAN通信やLIN通信などに用いることのできる通信回線を提供する。通信方式は、マルチマスタ方式でもマスタースレーブ方式でもよい。本実施形態では、アドレス設定の処理が完了後、第1のECU10aがネットワークにおけるメインのECUとなって電源装置を統括管理する。例えば、電源装置と車両との間の通信は第1のECU10aを介して行う。
次に、第1検知回路20及び第2検知回路30の構成について詳細に説明する。
なお、切換スイッチ18a~18h及び安全スイッチ25は、閉じられているものとして説明する。また、機能しないように構成されている接地端子14b~14d,14f~14h、及び、電力供給部15c~15hについての説明を省略する。
図2に示すように、第1検知回路20において、第1のECU10aの電力供給部15aは、所定の電圧値Vを有する電力信号を、電源検知部17a、切換スイッチ18a、及び、安全スイッチ25を含む制御配線21を介して、検知部13bに出力する。このとき、電源検知部17aは、電力供給部15aが出力する電力信号の電圧の大きさを検知し、検知された電圧値Vα1を示す信号を制御部11aに出力する。電圧値Vα1は、電力供給部15aが出力する電力信号の電圧値Vと等しい。制御部11aは、電源検知部17aからの信号に基づき、第1検知回路20に適切な電圧が印加されていることを確認する。切換スイッチ18aは、第1検知回路20における電力供給部15aからの電力信号の給電を開閉する第1切換スイッチであり、第1検知回路20への給電を管理する第1制御装置としての第1のECU10aが備える制御部11aによって制御される。
検知部13bは、電力供給部15aから出力された電力信号の電圧の大きさを検知し、検知した電圧値Vβ2を示す信号を制御部11bに出力する。このとき、電圧値Vβ2は、電力供給部15aが出力する電力信号の電圧値Vと等しい。すなわち、「Vβ2=V」という関係が成り立つ。そして、検知部13bは、電力供給部15aから出力された電力信号を、抵抗部16b及び制御配線22を介して検知部13cに出力する。検知部13bから出力される電力信号は、電圧値Vから、抵抗部16bの抵抗値R及び第1検知回路20に流れる電力信号の電流値Iを乗算した値であるIRの分だけ電圧降下された電圧値を有する。
検知部13cは、検知部13bから出力された電力信号の電圧の大きさを検知し、検知した電圧値Vβ3を示す信号を制御部11cに出力する。このとき、電圧値Vβ3は、抵抗部16bによって電圧値Vβ2からIRの分だけ電圧降下された値となる。すなわち、「Vβ3=Vβ2-IR=V-IR」という関係が成り立つ。そして、検知部13cは、検知部13bから出力された電力信号を、抵抗部16cによってさらにIRの分だけ電圧降下させ、制御配線23を介して検知部13dに出力する。
検知部13dは、検知部13cから出力された電力信号の電圧の大きさを検知し、検知した電圧値Vβ4を示す信号を制御部11dに出力する。このとき、電圧値Vβ4は、抵抗部16cによって電圧値Vβ3からIRの分だけ電圧降下された値となる。すなわち、「Vβ4=Vβ3-IR=V-2×IR」という関係が成り立つ。そして、検知部13dは、検知部13cから出力された電力信号を、抵抗部16dでさらにIRの分だけ電圧降下させ、制御配線24を介して検知部13aに出力する。
検知部13aは、検知部13dから出力された電力信号の電圧の大きさを検知し、検知した電圧値Vβ1を示す信号を制御部11aに出力する。このとき、電圧値Vβ1は、抵抗部16dによって電圧値Vβ4からIRの分だけ電圧降下された値となる。すなわち、「Vβ1=Vβ4-IR=V-3×IR」という関係が成り立つ。検知部13aは、接地端子14aに接続されており、検知部13dから出力された電力信号を接地させる。
第1検知回路20は、電力供給部15aから接地端子14aまでの間に抵抗部16a~16dを備える。そのため、電力供給部15aから出力される電力信号の電圧値Vは、抵抗部16a~16dにより4つに分圧される。すなわち、「IR=(1/4)×V」という関係が成り立つ。したがって、第1検知回路20において、切換スイッチ18aが閉じられている場合、検知部13a~13dが検知する電圧値は、検知部13aが検知する電圧値Vβ1から順に、「Vβ1=(1/4)×V」、「Vβ2=V」、「Vβ3=(3/4)×V」、「Vβ4=(1/2)×V」となる。
第2検知回路30において、第2のECU10bの電力供給部15bは、電力供給部15aが出力する電力信号と同じ電圧値Vを有する電力信号を、電源検知部17b、切換スイッチ18b、及び、制御配線31を介して、検知部13fに出力する。検知部13fに出力された電力信号は、検知部13g、検知部13h、検知部13eを介して、接地端子14eにより接地される。検知部13e~13hは、自身に供給される電力信号の電圧の大きさを検知し、それぞれが検知した電圧値Vβ5~Vβ8を示す信号を、自身の制御部11e~11hに出力する。第2検知回路30は、電力供給部15bから出力される電力信号の電流値が、第1検知回路20における電力信号の電流値Iと等しくなるように構成されている。切換スイッチ18bは、第2検知回路30における電力供給部15bからの電力信号の給電を開閉する第2切換スイッチであり、第2検知回路30への給電を管理する第2制御装置としての第2のECU10bが備える制御部11bによって制御される。
第1検知回路20と同様に、第2検知回路30は、電力供給部15bから接地端子14eまでの間に抵抗部16e~16hを備える。そのため、電力供給部15bから出力される電力信号の電圧値Vは、抵抗部16e~16hにより4つに分圧される。したがって、「IR=(1/4)×V」という関係が成り立つ。すなわち、第2検知回路30において、切換スイッチ18bが閉じられている場合、検知部13e~13hが検知する電圧値は、検知部13eが検知する電圧値Vβ5から順に、「Vβ5=(1/4)×V」、「Vβ6=V」、「Vβ7=(3/4)×V」、「Vβ8=(1/2)×V」となる。
以上より、図4に示すように、切換スイッチ18a,18bが閉じられている場合において、検知部13a~13hが検知する電圧値は、「Vβ1=Vβ5=(1/4)×V」、「Vβ2=Vβ6=V」、「Vβ3=Vβ7=(3/4)×V」、「Vβ4=Vβ8=(1/2)×V」という関係を有する。
次に、図3を参照して、本実施形態において各ECUにアドレスを設定する手順を説明する。
先ず、ステップS1において、各制御部11は、自身のECU10の切換スイッチ18を閉じる処理を実行する。これにより、切換スイッチ18a~18hの全てが閉じられる。切換スイッチ18a,18bが閉じられることにより、第1検知回路20及び第2検知回路30に電力信号が供給される。
次いで、ステップS2において、各制御部11は、自身のECU10の検知部13に電力信号の電圧の大きさを検知させる処理を実行する。すなわち、各検知部13は、第1検知回路20及び第2検知回路30に電力信号が供給された状態でそれぞれが検知した検知結果を、第1検知結果として自身のECU10の制御部11に出力する。
図4に示すように、検知部13a~13hが検知する第1検知結果は、「Vβ1=Vβ5=(1/4)×V」、「Vβ2=Vβ6=V」、「Vβ3=Vβ7=(3/4)×V」、「Vβ4=Vβ8=(1/2)×V」となる。
次いで、ステップS3において、各ECU10の制御部11は、各検知部13から出力された第1検知結果に基づき、2桁の数字で構成されるアドレスの下位桁を自身のECU10に設定する処理を実行する。
具体的に、各ECU10の記憶部12は、検知部13が検知する電力信号の電圧の大きさと、アドレスの各桁とを対応させるための対応情報を記憶している。当該対応情報では、自身の検知部13で検知された電圧値が「(1/4)×V」の場合、制御部11は、自身のECU10のアドレスの下位桁、又は、上位桁として「1」を設定することが記憶されている。同様に、当該対応情報において、自身の検知部13で検知された電圧値が「V」、「(3/4)×V」、及び、「(1/2)×V」のそれぞれの場合、制御部11は、自身のECU10のアドレスの下位桁、又は、上位桁として「2」、「3」、及び、「4」をそれぞれ設定することが記憶されている。さらに、当該対応情報において、自身の検知部13で検知された電圧値が「0」の場合、制御部11は、自身のECU10のアドレスの下位桁、又は、上位桁の数字として「0」を設定することが記憶されている。但し、第1検知結果において何れかの検知部13で検知された電圧値が「0」の場合、制御部11は、安全スイッチ25が開いているものと判断し、アドレス設定の処理が中止される。
そして、図6に示すように、各制御部11は、自身の検知部13から出力された第1検知結果と、自身の記憶部12に記憶される当該対応情報とを対応させて、自身のECU10にアドレスの下位桁を設定する。具体的に、各ECU10のアドレスの下位桁として、制御部11a,11eは、「1」を設定し、制御部11b,11fは、「2」を設定し、制御部11c,11gは、「3」を設定し、制御部11d,11hは、「4」を設定する。
制御部11a,11eは、自身のECU10におけるアドレスの下位桁として「1」が設定されたことに基づき、自身のECU10を仮のメイン制御装置としての仮のメインECUとして設定する。以降の処理において、仮のメインECUとしての第1及び第5のECU10a,10eの制御部11a,11eは、通信線5を介して、他の制御部11に対して制御信号を送ることで、制御信号に応じた処理を他の制御部11に実行させる。このとき、制御部11a,11eは、マルチマスタ方式で他の制御部11と通信しており、例えば、制御部11a,11eのうち先に送信した方の制御信号が優先され、同時に制御信号を送信しようとした場合には、乱数等で待ち時間が設定された後、再度制御信号を送信する。また、仮のメインECUの制御部11は、各ECU10が持つアドレスの下位桁毎に異なる制御信号を送ることで、各ECU10が持つアドレスの下位桁毎に異なる処理を実行することが可能となる。なお、仮のメインECUは、電源装置全体のメイン制御装置としてのメインECUが設定されるまでの一時的なものであり、メインECUが設定された場合には、メインECUが電源装置全体のECU10を統括管理する。
また、仮のメインECUの制御部である制御部11a,11eは、通信線5を介して各制御部11と情報を授受し、各切換スイッチ18の開閉状態、及び、各検知部13の検知結果を取得する。そして、全ての切換スイッチ18が閉じられ、かつ、全ての検知部13が検知する電力信号の大きさが0でないことに基づいて、安全スイッチ25が閉じられていることを確認する。これにより、電源装置の安全性が維持されるようになる。
次いで、ステップS4において、仮のメインECUの制御部である制御部11a,11eは、特定のアドレスの下位桁を有するECU10の制御部11に第1制御信号を送信し、それぞれが制御する切換スイッチ18を開く処理を実行することを要求する。そして、それ以外のアドレスの下位桁を有するECU10の制御部11に第2制御信号を送信し、それぞれが制御する切換スイッチ18を閉じる処理を実行することを要求する。これにより、各制御部11は、自身のECU10が特定の下位桁を有する場合、自身が制御する切換スイッチ18を開く処理を実行する。
本実施形態では、制御部11a,11eは、アドレスの下位桁として「1」を有するECU10の制御部11a,11eに、第1制御信号を送信し切換スイッチ18a,18eを開く処理を実行することを要求する。このとき、制御部11a,11eのうち、先に第1制御信号を送信した方の制御部の信号が適用される。例えば、制御部11aが先に第1制御信号を制御部11eに送信した場合、制御部11aは、制御部11eに切換スイッチ18eを開く処理を実行することを要求するとともに、自身の切換スイッチ18aを開く処理を実行する。これにより、制御部11a,11eは、切換スイッチ18a,18eを開く処理を実行する。
そして、制御部11a,11eは、制御部11b~11d,11f~11hに第2制御信号を送信し、切換スイッチ18b~18d,18f~18hを閉じる処理を実行することを要求する。これにより、制御部11b~11d,11f~11hは、切換スイッチ18b~18d,18f~18hを閉じる処理を実行する。切換スイッチ18aが開かれることで第1検知回路20への電力信号の供給が遮断され、切換スイッチ18bが閉じられることで第2検知回路30のみに電力信号が供給される。このように、切換スイッチ18a,18bを制御する第1及び第2のECU10a,10bに異なるアドレスの下位桁が設定されることで、仮のメインECUの制御部11a,11eが、各ECU10のアドレスの下位桁毎に制御信号を送信することにより、第1検知回路20及び第2検知回路30への給電を好適に制御できる。
次いで、ステップS5において、仮のメインECUの制御部である制御部11a,11eは、各制御部11に第3制御信号を送信し、再度、自身のECU10の検知部13に電力信号の電圧の大きさを検知させる処理を実行することを要求する。すなわち、各検知部13は、第2検知回路30のみに電力信号が供給された状態でそれぞれが検知した検知結果を、第2検知結果として自身のECU10の制御部11に出力する。
図5に示すように、検知部13a~13dが検知する第2検知結果は、「Vβ1=Vβ2=Vβ3=Vβ4=0」となる。また、検知部13e~13hが検知する第2検知結果は、検知部13eから順に、「Vβ5=(1/4)×V」、「Vβ6=V」、「Vβ7=(3/4)×V」、「Vβ8=(1/2)×V」となる。さらに、各制御部11は、自身の検知部13から出力された第2検知結果を、通信線5を介して、制御部11a,11eに出力する。
最後に、ステップS6において、仮のメインECUの制御部である制御部11a,11eは、各制御部11から出力された第2検知結果と、自身の記憶部12に記憶される当該対応情報とを対応させて、各ECU10にアドレスの上位桁を設定する処理を実行する。
図6に示すように、各ECU10のアドレスの上位桁として、第1~第4のECU10a~10dには、「0」が設定され、第5のECU10eには、「1」が設定され、第6のECU10fには、「2」が設定され、第7のECU10gには、「3」が設定され、第8のECU10hには、「4」が設定される。
以上の手順により、第1~第8のECU10a~10hに設定されるアドレスは、第1のECU10aから順に、「01」、「02」、「03」、「04」、「11」、「22」、「33」、「44」となる。これにより、第1~第8のECU10a~10hは、それぞれを識別可能な固有のアドレスが論理的に設定される。なお、本実施形態では、第1のECU10aは、「01」のアドレスが設定されることに基づき、自身がメインECUであることを認識し、電源装置を統括管理する。
以上のような第1実施形態によれば以下に列挙する効果を得ることができる。
(1-1)本実施形態では、各ECU10の検知部13を第1検知回路20及び第2検知回路30に分けて構成し、各検知部13で検知される第1検知結果及び第2検知結果に基づいて、各ECU10におけるアドレス設定の処理を行う。これにより、電源装置における全てのECU10の検知部13が一つの検知回路として直列に接続される場合よりも、各検知部13で検知される電力信号の大きさの差が大きくなる。したがって、ECU10の搭載数が多い場合でも、各ECU10のアドレス設定に係る信頼性を向上できる。
また、電源装置における全てのECU10の検知部13が一つの検知回路として直列に接続される場合では、各検知部13で検知される電力信号の大きさの差が小さくなるため、高精度の検出回路が必要とされる。これに対して、各検知部13を第1検知回路20及び第2検知回路30に分けて構成し、第1検知結果及び第2検知結果に基づいてアドレス設定の処理を行うことで、高精度の検出回路が不要となりコストアップの抑制ともなる。
(1-2)第1切換スイッチとしての切換スイッチ18a及び第2切換スイッチとしての切換スイッチ18bが、異なるアドレスの下位桁が設定されるECU10の制御部11に制御される構成とすることで、各ECU10に設定されたアドレスの下位桁に基づいて第1検知回路20及び第2検知回路30への給電を好適に管理できる。
(1-3)第1検知結果に基づいて仮のメインECUを設定することで、第2検知結果を得るための処理において、仮のメインECUの制御部11a,11eが他の制御部11を統括管理できる。これにより、ECU10の搭載数が多い場合でも、通信線5を介した制御部11同士の情報の授受を好適に行うことができるため、各ECU10へのアドレス設定の処理を好適に行うことができる。また、仮のメインECUの制御部としての制御部11a,11eは、各ECU10に設定されたアドレスの下位桁に基づいて、他の制御部11が制御する切換スイッチ18の開閉を管理できるようになるため、第1検知回路20及び第2検知回路30への給電を好適に管理できる。
(1-4)第1検知回路20を構成する検知部13の数と、第2検知回路30を構成する検知部13の数とを同数にすることで、各検知部13が検知する電力信号における大きさの差を均等にできるため、各ECU10のアドレス設定に係る信頼性を向上できる。
(1-5)第1検知回路20が安全スイッチ25を備えることで、全ての切換スイッチ18が閉じ、かつ、安全スイッチ25が開いている状態において、検知部13a~13dで検知される電力信号の大きさが0であることに基づき、安全スイッチ25が開放されていることを、通信線5によって全ての制御部11が認識できる。これにより、電源装置の安全性が維持されるようになる。したがって、アドレスの設定のための回路と、HVIL回路などのインターロック機構としての回路とを共用することができるため、部品点数等の増加を抑制することができる。
(1-6)第1検知回路20及び第2検知回路30を流れる電力信号の電圧が各抵抗部16を通じて順次降圧するため、第1検知回路20及び第2検知回路30のそれぞれにおいて、各検知部13は、それぞれ異なる電圧を検知する。したがって、電源装置におけるECU10の搭載数が多い場合でも、検知された電圧の大きさに基づいて各ECU10のアドレスを好適に設定できる。
(第2実施形態)
以下、本発明が適用された第2実施形態について図面を参照して説明する。
なお、本実施形態は、電力信号における電流の大きさを用いて各ECUのアドレスを設定する構成であることが、第1実施形態における各ECUのアドレスを設定する構成と相違するものの、それ以外の構成については同様である。よって以下では、説明の便宜上、第1実施形態に対して相違する構成について説明することとし、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を用い、その詳細な説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の電源装置において、第1~第8電池パック1a~1hは、第1~第8のECU40a~40hをそれぞれ備える。第1~第8のECU40a~40hは、制御部11a~11hと、記憶部12a~12hと、接地端子14a~14hと、電力供給部41a~41hと、検知部42a~42hとをそれぞれ備える。なお、本実施形態では、第1~第8のECU40a~40hは、何れも同じ構成を有するものである。但し、第1~第8のECU40a~40hは、ECU40毎に各部の接続状態を変更することで自身の一部の回路等を機能させない構成を有する。以下、第1のECU40aに含まれる電力供給部41a、及び、検知部42aについて説明し、第2~第8のECU10b~10hに含まれる各部についての説明を省略する。
電力供給部41aは、自身が接続される回路の下流に電力信号を供給する電源である。また、電力供給部41aは、定電流源43aと、電源検知部44aと、第1実施形態と同様の構成である切換スイッチ18aとを備える。電力供給部41aは、所定の制限電流値が設定された定電流源43aによって、下流に供給する電流が制限電流値以下となるように構成され、自身が接続される回路の下流に過電流が流れることが防止されている。
電源検知部44aは、電流検知器であり、電力供給部41aから出力される電力信号の電流の大きさを検知し、検知した電流値Iα1を制御部11aに出力する。これにより、制御部11aは、電力供給部41aが接続される回路に過電流が流れていないことを確認している。
なお、第2~第8のECU40b~40hにおいても同様に、電力供給部41b~41hは、定電流源43b~43hと、電源検知部44b~44hと、切換スイッチ18b~18hとをそれぞれ備える。電源検知部44b~44hは、自身が検知した電流値Iα2~Iα8を自身の制御部11b~11hに出力する。また、本実施形態において、第3~第8のECU10c~10hの電力供給部41c~41hは、それぞれの切換スイッチ18c~18hの出力端が開放されていることで、機能しないように構成されている。
検知部42aは、電流検知器であり、自身に供給される電力信号の電流の大きさを検知する。検知部42aは、検知した電力信号の電流の大きさを検知結果として制御部11aに出力する。検知部42aは、電流量の制限が制限電流値I2に設定された定電流源45aを備える。そして、検知部42aは、定電流源45aを介して接地端子14aに接続されている。すなわち、検知部42aは、定電流源45aから制限電流値I2の電流を接地端子14aに流出させることができる。換言すると、定電流源45aは、検知部42aに供給される電流から制限電流値I2の電流を流出させて検知部42aの下流に出力する流出回路である。
なお、本実施形態では、第2~第8のECU40b~40hにおいても同様に、検知部42b~42hは、定電流源45b~45hをそれぞれ備え、定電流源45b~45hを介して、接地端子14b~14hに接続されている。定電流源45a~45hは、何れも同じ制限電流値I2を有している。
本実施形態における電源装置は、各ECU40に固有のアドレスを設定するための回路である第1検知回路50及び第2検知回路60を備える。第1検知回路50は、第1のECU40aの電力供給部41aと、第2のECU40bの検知部42bと、第3のECU40cの検知部42cと、第4のECU40dの検知部42dと、第1のECU40aの検知部42aとが、この順に直列に接続されて構成される。第1検知回路50を構成する各部は、制御配線51~54によって接続される。また、電力供給部41aと検知部42bとを接続する制御配線51の途中に、安全スイッチ25を備える。
第2検知回路60は、第2のECU40bの電力供給部41b、第6のECU40fの検知部42f、第7のECU40gの検知部42g、第8のECU40hの検知部42h、及び、第5のECU40eの検知部42eが、この順に直列接続されて構成される。第2検知回路60を構成する各部は、制御配線61~64によって接続される。
第1検知回路50において、電力供給部41aから供給される電力信号の電流値I1は、定電流源43aの制限電流値、及び、定電流源45a~45dの制限電流値「I2」の合計値「I2×4」の何れか小さい値となるように構成されている。また、第1検知回路50において、定電流源43aは、その制限電流値として、定電流源45a~45dの制限電流値「I2」の合計値「I2×4」よりも大きな制限電流値が設定されている。すなわち、電力供給部41aから供給される電力信号の電流値I1は、定電流源45a~45dの制限電流値「I2」の合計値「I2×4」と等しくなるため、「I1=I2×4」という関係を有する。また、第2検知回路60についても同様に、電力供給部41bから供給される電力信号の電流値I1の値は、定電流源45e~45hの制限電流値「I2」の合計値「I2×4」と等しくなるように構成されているため、「I1=I2×4」という関係を有する。
第1検知回路50において、第1のECU40aの電力供給部41aは、電流値I1を有する電力信号を、定電流源43a、電源検知部44a、切換スイッチ18a、及び、安全スイッチ25を含む制御配線51を介して、検知部42bに出力する。このとき、電源検知部44aは、電力供給部41aが出力する電力信号の電流の大きさを検知し、検知した電流値Iα1を示す信号を制御部11aに出力する。電流値Iα1は、電力供給部41aが出力する電力信号の電流値I1と等しい。切換スイッチ18aは、第1検知回路50における電力供給部41aからの電力信号の給電を開閉する第1切換スイッチであり、第1検知回路50への給電を管理する第1制御装置としての第1のECU40aが備える制御部11aによって制御される。
検知部42bは、電力供給部41aから出力された電力信号の電流の大きさを検知し、検知した電流値Iβ2を示す信号を制御部11bに出力する。電流値Iβ2は、電流値I1と等しい値となる。すなわち、「Iβ2=I1」という関係が成り立つ。そして、検知部42bは、電力供給部41aから出力された電力信号を、定電流源45bによって制限電流値I2の分だけ減少させ、制御配線52を介して検知部42cに出力する。
検知部42cは、検知部42bから出力された電力信号の電流の大きさを検知し、検知した電流値Iβ3を示す信号を制御部11cに出力する。このとき、電流値Iβ3は、定電流源45bによって電流値Iβ2からI2の分だけ減少された値となる。すなわち、「Iβ3=Iβ2-I2=I1-I2」という関係が成り立つ。そして、検知部42cは、検知部42bから出力された電力信号を、定電流源45cによって制限電流値I2の分だけ減少させ、制御配線53を介して検知部42dに出力する。
検知部42dは、検知部42cから出力された電力信号の電流の大きさを検知し、検知した電流値Iβ4を示す信号を制御部11dに出力する。このとき、電流値Iβ4は、定電流源45cによって電流値Iβ3からI2の分だけ減少された値となる。すなわち、「Iβ4=Iβ3-I2=I1-2×I2」という関係が成り立つ。そして、検知部42dは、検知部42cから出力された電力信号を、定電流源45dによって制限電流値I2の分だけ減少させ、制御配線54を介して検知部42aに出力する。
検知部42aは、検知部42dから出力された電力信号の電流の大きさを検知し、検知した電流値Iβ1を示す信号を制御部11aに出力する。このとき、電流値Iβ1は、定電流源45dによって電流値Iβ4からI2の分だけ流出された値となる。すなわち、「Iβ1=Iβ4-I2=I1-3×I2」という関係が成り立つ。そして、検知部42aは、定電流源45aを介して接地端子14aから電流値I2を有する電流を流出させる。
また、上述したように、第1検知回路50において、「I1=I2×4」という関係が成り立つ。換言すると、「I2=(1/4)×I1」という関係が成り立つ。したがって、切換スイッチ18aが閉じられている場合、検知部42a~42dが検知する電圧値は、検知部42aが検知する電流値Iβ1から順に、「Iβ1=(1/4)×I1」、「Iβ2=I1」、「Iβ3=(3/4)×I1」、「Iβ4=(1/2)×I1」となる。
第2検知回路60において、第2のECU40bの電力供給部41bは、電力供給部41aが出力する電力信号と同じ電流値I1を有する電力信号を、定電流源43b、電源検知部44b、切換スイッチ18b、及び、制御配線61を介して、検知部42fに出力する。検知部42fに出力された電力信号は、検知部42g、検知部42h、検知部42eを介して、接地端子14eにより接地される。検知部42e~42hは、自身に供給される電力信号の電流の大きさを検知し、それぞれが検知した電流値Iβ5~Iβ8を示す信号を、自身の制御部11e~11hに出力する。切換スイッチ18bは、第2検知回路60における電力供給部41bからの電力信号の給電を開閉する第2切換スイッチであり、第2検知回路60への給電を管理する第2制御装置としての第2のECU40bが備える制御部11bによって制御される。
第1検知回路50と同様に、第2検知回路60において、切換スイッチ18bが閉じられている場合、検知部42e~42hが検知する電圧値は、検知部42eが検知する電流値Iβ5から順に、「Iβ5=(1/4)×I1」、「Iβ6=I1」、「Iβ7=(3/4)×I1」、「Iβ8=(1/2)×I1」となる。
以上より、図8に示すように、切換スイッチ18a,18bが閉じられている場合において、検知部42a~42hが検知する電流値は、「Iβ1=Iβ5=(1/4)×I1」、「Iβ2=Iβ6=I1」、「Iβ3=Iβ7=(3/4)×I1」、「Iβ4=Iβ8=(1/2)×I1」という関係を有する。
次に、図3を参照して、本実施形態において各ECUにアドレスを設定する手順を説明する。
本実施形態においても第1実施形態と同様な手順で各ECU40にアドレスが設定される。先ず、ステップS1において、各制御部11は、自身のECU40の切換スイッチ18を閉じる処理を実行する。これにより、切換スイッチ18a~18hの全てが閉じられる。切換スイッチ18a,18bが閉じられることにより、第1検知回路50及び第2検知回路60に電力信号が供給される。
次いで、ステップS2において、各制御部11は、自身のECU40の検知部42に電力信号の電圧の大きさを検知させる処理を実行する。すなわち、各検知部42は、第1検知回路50及び第2検知回路60に電力信号が供給された状態でそれぞれが検知した検知結果を、第1検知結果として自身のECU40の制御部11に出力する。
図8に示すように、検知部42a~42hが検知する第1検知結果は、「Iβ1=Iβ5=(1/4)×I1」、「Iβ2=Iβ6=I1」、「Iβ3=Iβ7=(3/4)×I1」、「Iβ4=Iβ8=(1/2)×I1」となる。
次いで、ステップS3において、各ECU40の制御部11は、各検知部42から出力された第1検知結果に基づき、2桁の数字で構成されるアドレスの下位桁を自身のECU40に設定する処理を実行する。
具体的に、各ECU40の記憶部12は、検知部42が検知する電力信号の電流の大きさと、アドレスの各桁とを対応させるための対応情報を記憶している。当該対応情報では、自身の検知部42で検知された電流値が「(1/4)×I1」の場合、制御部11は、自身のECU40のアドレスの下位桁、又は、上位桁として「1」を設定することが記憶されている。同様に、当該対応情報において、自身の検知部42で検知された電流値が「I1」、「(3/4)×I1」、及び、「(1/2)×I1」のそれぞれの場合、制御部11は、自身のECU40のアドレスの下位桁、又は、上位桁として「2」、「3」、及び、「4」をそれぞれ設定することが記憶されている。さらに、当該対応情報において、自身の検知部42で検知された電流値が「0」の場合、制御部11は、自身のECU40のアドレスの下位桁、又は、上位桁として「0」を設定することが記憶されている。但し、第1検知結果において何れかの検知部42で検知された電流値が「0」の場合、制御部11は、安全スイッチ25が開いているものと判断し、アドレス設定の処理が中止される。
そして、図10に示すように、各制御部11は、自身の検知部42から出力された第1検知結果と、自身の記憶部12に記憶される当該対応情報とを対応させて、自身のECU40にアドレスの下位桁を設定する。具体的に、各ECU40のアドレスの下位桁として、制御部11a,11eは、「1」を設定し、制御部11b,11fは、「2」を設定し、制御部11c,11gは、「3」を設定し、制御部11d,11hは、「4」を設定する。
第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、制御部11a,11eは、自身のECU40におけるアドレスの下位桁として「1」が設定されたことに基づき、自身のECU40を仮のメインECUとして設定する。以降の処理において、仮のメインECUとしての第1及び第5のECU40a,40eの制御部11a,11eは、通信線5を介して、他の制御部11に対して制御信号を送ることで、制御信号に応じた処理を他の制御部11に実行させる。
次いで、ステップS4において、制御部11a,11eは、仮のメインECUの制御部として各制御部11に第1制御信号を送り、特定の下位桁を有するECU40の制御部11に、それぞれが制御する切換スイッチ18を開く処理を実行させる。そして、それ以外のアドレスの下位桁を有するECU10の制御部11に第2制御信号を送信し、自それぞれが制御する切換スイッチ18を閉じる処理を実行することを要求する。これにより、各制御部11は、自身のECU40が特定の下位桁を有する場合、自身が制御する切換スイッチ18を開く処理を実行する。
本実施形態では、制御部11a,11eは、アドレスの下位桁として「1」を有するECU40の制御部11a,11eに、第1制御信号を送信し切換スイッチ18a,18eを開く処理を実行することを要求する。これにより、第1及び第5のECU40a,40eの制御部11a,11eは、自身の切換スイッチ18a,18eを開く処理を実行する。そして、制御部11b~11d,11f~11hは、自身の切換スイッチ18b~18d,18f~18hを閉じる処理を実行する。これらの処理によって、切換スイッチ18aが開かれることで第1検知回路50への電力信号の供給が遮断され、切換スイッチ18bが閉じられることで第2検知回路60のみに電力信号が供給される。
次いで、ステップS5において、仮のメインECUの制御部である制御部11a,11eは、各制御部11に第3制御信号を送信し、再度、自身のECU10の検知部13に電力信号の電流の大きさを検知させる処理を実行することを要求する。すなわち、各検知部42は、第2検知回路60のみに電力信号が供給された状態でそれぞれが検知した検知結果を、第2検知結果として自身のECU40の制御部11に出力する。さらに、各制御部11は、自身の検知部42から出力された第2検知結果を、通信線5を介して、制御部11a,11eに出力する。
図9に示すように、検知部42a~42dが検知する第2検知結果は、「Iβ1=Iβ2=Iβ3=Iβ4=0」となる。また、検知部42e~42hが検知する第2検知結果は、検知部42eから順に、「Iβ5=(1/4)×I1」、「Iβ6=I1」、「Iβ7=(3/4)×I1」、「Iβ8=(1/2)×I1」となる。
最後に、ステップS6において、仮のメインECUの制御部である制御部11a,11eは、各制御部11から出力された第2検知結果と、自身の記憶部12に記憶される当該対応情報とを対応させて、各ECU10にアドレスの上位桁を設定する処理を実行する。
図6に示すように、各ECU40のアドレスの上位桁として、第1~第4のECU40a~40dには、「0」が設定され、第5のECU40eには、「1」が設定され、第6のECU40fには、「2」が設定され、第7のECU40gには、「3」が設定され、第8のECU40hには、「4」が設定される。
以上の手順により、第1~第8のECU40a~40hに設定されるアドレスは、第1のECU40aから順に、「01」、「02」、「03」、「04」、「11」、「22」、「33」、「44」となる。これにより、第1~第8のECU40a~40hは、それぞれを識別可能な固有のアドレスが論理的に設定される。なお、本実施形態では、第1のECU40aは、「01」のアドレスが設定されることに基づき、自身がメインのECUであることを認識し、電源装置を統括管理する。
以上のような第2実施形態によれば、上記第1実施形態にて記載した(1-1)~(1-5)の効果に加えて、以下に列挙する効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態では、第1検知回路50及び第2検知回路60を流れる電力信号の電流が、各検知部42における流出回路としての定電流源45を通じて順次減少する。これにより、第1検知回路50及び第2検知回路60のそれぞれにおいて、各検知部42は、それぞれ異なる電流値を検知する。電源装置におけるECU40の搭載数が多い場合でも、検知された電圧の大きさに基づいて各ECU40のアドレスを好適に設定できる。
なお、上記実施形態は以下のように適宜変更して実施することもできる。
・上記各実施形態において、安全スイッチ25は、第1検知回路20,50に設けられなくてもよく、例えば、安全スイッチ25は、電源装置において、アドレスの設定のための回路とは別の回路に設けられていてもよい。
・上記各実施形態において、安全スイッチ25は、第1検知回路20,50ではなく、第2検知回路30,60に設けられてもよく、第1検知回路20,50及び第2検知回路30,60の両方に設けられてもよい。この場合でも、アドレスの設定のための回路と、HVIL回路などのインターロック機構が設けられた回路とを共用することができる。
・上記各実施形態において、安全スイッチ25は、電力供給部15a,41aと検知部13b、42bとの間に接続される構成に限定されず、安全スイッチ25が開いたときに、各検知部13、42の何れかが検知する電力信号の大きさが0であるように接続されていればよい。このような構成でも、全ての切換スイッチ18a~18hが閉じ、かつ、安全スイッチ25が開いている状態において、各検知部13、42の何れかが検知する電力信号の大きさが0であることに基づいて、安全スイッチ25が開いていることを、通信線5によって全ての制御部11が認識できる。
・上記第2実施形態において、定電流源45a~45hは、制限電流値I2が同一である構成に限定されず、例えば、定電流源45a~45hの各制限電流値が相違していてもよい。この場合でも、第1検知回路50及び第2検知回路60のそれぞれにおいて、各検知部42で検知される電流の大きさが異なるため、各検知部42の検知結果に応じて各ECU40のアドレスを定めることができる。
・上記第1実施形態において、抵抗部16a~16hは、抵抗値Rが同一である構成に限定されず、抵抗部16a~16hの各抵抗値が相違していてもよい。この場合でも、第1検知回路20及び第2検知回路30のそれぞれにおいて、各検知部13で検知される電圧の大きさが異なるため、各検知部13の検知結果に応じて各ECU10のアドレスを定めることができる。
・上記第1実施形態において、第1検知回路20及び第2検知回路30のそれぞれにおける各検知部13で検知される電圧の大きさが異なるように構成されるのであれば、各検知部13は、抵抗部16を備えなくてもよい。例えば、第1検知回路20及び第2検知回路30における制御配線21~24、及び、制御配線31~34の導体抵抗によって、第1検知回路20及び第2検知回路30のそれぞれにおける各検知部13で検知される電圧の大きさが異なるように構成されてもよい。
・上記各実施形態において、第1検知回路20,50及び第2検知回路30,60は、それぞれが4個の検知部13,42を備える構成に限定されず、例えば、第1検知回路20が2個の検知部13によって構成され、第2検知回路30が6個の検知部13によって構成されてもよい。この場合でも、各ECU10に固有のアドレスを設定できる。
・上記各実施形態において、各制御部11は、第1検知結果に基づいて仮のメインECUを設定し、仮のメインECUとしての制御部11a,11eが、通信線5を介して他の制御部11に制御信号を送り、制御信号に応じて第2検知結果を得る処理を実行させる構成について例示した。しかし、これに限らず、例えば、各制御部11は、仮のメインECUからの制御信号によらずに、第1検知結果を得る処理と、第2検知結果を得る際に自身のアドレスの下位桁に基づいて自身の切換スイッチ18の開閉を制御する処理と、第2検知結果を得る処理とを実行してもよい。この場合でも、第1検知回路20及び第2検知回路30への給電を好適に管理することができる。また、この場合では、アドレス設定の処理において、制御部11同士の通信線5を介した情報の送受信が行われないため、通信線5は、設けられなくてもよい。
・上記各実施形態において、電力供給部15,41及び切換スイッチ18は、各ECU10,40に設けられる構成に限定されない。例えば、各ECU10が電力供給部15を備える構成ではなく、電源装置が1つの電力供給部を備え、当該電力供給部が第1検知回路20,50及び第2検知回路30,60のそれぞれに電力信号を供給し、各検知回路と開閉可能に接続されていてもよい。
・上記各実施形態において、第2検知結果を得る際に、第1検知回路20,50への給電を遮断する構成に限定されず、第2検知回路30,60への給電を遮断する構成でもよい。換言すると、仮のメインECUとしての制御部11a,11eが、アドレスの下位桁として「2」を有するECU10,40の制御部11b,11fに、第1制御信号を送信し切換スイッチ18b,18fを開く処理を実行することを要求する構成でもよい。この場合、切換スイッチ18b,18fが開かれる。そして、切換スイッチ18bが開かれることにより、第2検知回路30,60への電力信号の供給が遮断され、第1検知回路20,50のみに電力信号が供給される。この場合でも、各ECU10,40に固有のアドレスを設定できる。
・上記第1実施形態において、第2検知回路30は、電力供給部15bを含む構成に限定されず、電力供給部15b~15d,15f~15gの何れかを含む構成であればよい。また、上記第2実施形態において、第2検知回路60は、電力供給部41bを含む構成に限定されず、電力供給部41b~41d,41f~41gの何れかを含む構成であればよい。すなわち、第1検知回路20,50の接続を切り換える第1切換スイッチ、及び、第2検知回路30,60の接続を切り換える第2切換スイッチは、異なるアドレスの下位桁が設定されるECU10,40の制御部11によって、それぞれ制御される構成であればよい。このような構成でも、各制御部11は、第2検知結果を得る際に、各ECU10,40のアドレスの下位桁によって各切換スイッチ18を好適に管理できる。
・上記各実施形態において、電源装置に設けられる電池パック1の数は、8個に限定されず、電源装置として必要とする電源容量が確保できるのであれば、8個よりも少なくてもよいし、8個より多くてもよい。例えば、電源装置に設けられる電池パック1の数が12個、すなわち、ECU10の数が12個の場合、第1検知回路20及び第2検知回路30は、それぞれが6個の検知部13によって構成されてもよい。この場合でも、各ECU10,40に固有のアドレスを設定できる。
また、ECU10の数が12個の場合、第1検知回路20及び第2検知回路30と同様の構成の第3検知回路を新たに設け、第1検知回路20、第2検知回路30、及び、第3検知回路を構成する検知部13の数を4個ずつにしてもよい。例えば、各制御部11は、第1~第3検知回路の全てに給電されたときの検知結果を第1検知結果とし、第2及び第3検知回路に給電されたときの検知結果を第2検知結果とし、第3検知回路のみに給電されたときの検知結果を第3検知結果として、第1~第3検知結果に基づいて各ECU10に3桁のアドレスを設定する。なお、第1~第3検知回路を構成する各電力供給部15を含むECU10に、それぞれ異なるアドレスの最下位桁が設定される構成とすることで、第2~第3検知結果を得る際に、各切換スイッチ18を好適に管理できる。このように、電池パック1が増えた場合でも、新たに検知回路を設けることで、第1検知回路20及び第2検知回路30を構成する検知部13の数を増やす場合よりも、アドレス設定の精度を向上できる。
・上記各実施形態において、各ECU10,40は、同じ構成のものに限定されず、各ECU10,40のアドレスを設定する処理を行うことができるのであれば、その一部の構成が相違していてもよい。例えば、各ECU10の構成のうち、第1検知回路20及び第2検知回路30に接続されていない構成については、それら構成のうちの一部又は全部が除かれていてもよい。
・上記各実施形態において、アドレスの各桁は、数字で表現されるものに限定されず、例えば、文字、記号等を用いて表現されてもよい。また、各ECU10,40は、第1検知結果及び第2検知結果のそれぞれを、アドレスを特定するためのアドレス構成要素とし、2つのアドレス要素の組み合わせに基づく一意のアドレスを、別途設定してもよい。
・上記各実施形態において、電池スタック2同士の接続は、2個の電池スタック2を直列に接続し、さらに、直列に接続された2個の電池スタック2を1組として、4組を並列に接続する場合に限定されず、電池スタック2が直列に接続される数や、直列に接続された電池スタック2の各組が並列に接続される数はいくつでもよい。
・上記各実施形態において、電池スタック2を構成する単電池は、ニッケル水素蓄電池に限定されず、例えば、ニッケルカドミウム電池や、リチウムイオン電池等の二次電池であってもよいし、一次電池であってもよい。
・上記各実施形態において、電源装置の用途は、電気自動車や、ハイブリッド車に限定されず、例えば、自動車以外の移動体や、固定設置される電源として用いられてもよい。