特許法第30条第2項適用 平成31年2月26日 https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=194749&item_no=1&page_id=13&block_id=8にて公開
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における画像処理装置1の構成例を示す図である。画像処理装置1は、動画像に対して所定の画像処理を実行する装置である。所定の画像処理とは、例えば、ビデオ・マグニフィケーションの画像処理である。画像処理装置1は、動画像に対して所定の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化を強調又は減弱する。画像処理装置1は、動画像内の選択された画素値を強調又は減弱することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化を強調又は減弱する。ここで、選択された画素値とは、予め処理対象として選択される色又は輝度の画素値であって、例えばRの画素値、Gの画素値、Bの画素値、Yの画素値、Eの画素値、Qの画素値のいずれかの画素値である。Y、E、Qの画素値は、RGBから変換された明度を表す値である。
画像処理装置1は、画像入力部2と、画像分解部3と、変化検出部4と、信頼度推定部5と、変化量調整部7と、画像再構成部8とを備える。各機能部は、組み合わされて単体の機能部として設けられてもよいし、分割されて複数の機能部として設けられてもよい。
画像処理装置1の各機能部の一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)であるメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、ソフトウェアとして実現される。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記憶媒体である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。画像処理装置1の各機能部の一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた電子回路(electronic circuit又はcircuitry)を含むハードウェアを用いて実現されてもよい。
以下、動画像のフレームの輝度情報を表す画像を「輝度画像」という。以下、動画像のフレームの色情報を表す画像を「色画像」という。
画像入力部2は、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームと、処理対象として選択された色又は輝度の情報を入力とする。又は、画像入力部2は、動画像のフレームを任意の輝度空間もしくは色空間に変換した後の色画像又は輝度画像を入力とする。画像入力部2は、画像処理の対象となる原解像度の色画像又は輝度画像と、選択された色又は輝度の情報とを画像分解部3に出力する。以下の説明では、原解像度の色画像が入力された場合を例に説明する。なお、色画像の代わりに輝度画像が入力された場合も処理は、色画像が入力された場合と同様である。
画像分解部3は、画像処理の対象となる原解像度の色画像と、選択された色の情報とを入力とする。画像分解部3は、入力した動画像の時刻tの原解像度の色画像のうち、選択された色の情報の色画像を、互いに異なる解像度に分解する。具体的には、画像分解部3は、入力した原解像度の色画像のうち、選択された色の情報の色画像に対してガウシアンフィルタを畳み込んでからダウンサンプリングする処理を複数回繰り返すことで、入力された原解像度の色画像を複数の解像度に分解する。ダウンサンプリングとは、ダウンサンプル量に基づいて解像度を縮小する処理である。ダウンサンプル量は、1より小さい(例:1/2)値である。画像分解部3は、互いに異なる解像度の色画像を、変化検出部4に出力する。
図2は、動画像のフレーム内の画素の例を示す図である。以下では、動画像のフレームには、水平方向のx座標と、垂直方向のy座標とが定められている。図2に示されたフレームには、3つの電球が点灯されている様子が撮像されている。図2に示されたフレームは、画素410と、画素411と、電球画像412とを含む。画素410は、フレームの第1部分領域に撮像された背景の画像に含まれている画素である。画素411は、フレームの第2部分領域に撮像された電球画像412に含まれている画素である。
図3は、微小な色又は輝度変化の等方性拡散を示す図である。図3において、縦軸はフレーム内のある画素x1の色又は輝度の変化を表し、横軸はフレーム内のある画素x2の色又は輝度の変化を表す。図3に示された微小な色又は輝度の変化は、色画像又は輝度画像の時系列の微小な色又は輝度の変化である。意味のない微小な色又は輝度の変化は、図3に示された例のように、等方性拡散となる。
図4は、微小な色又は輝度変化の異方性拡散を示す図である。図4において、縦軸はフレーム内のある画素x1の色又は輝度の変化を表し、横軸はフレーム内のある画素x2の色又は輝度の変化を表す。図4に示された微小な色又は輝度の変化は、色画像又は輝度画像の時系列の微小な色又は輝度の変化である。意味のある微小な色又は輝度の変化は異方性拡散となる。意味のある微小な色又は輝度変化の変化量は、特定の方向に時間分布が偏るように変化する。
以下の説明では、数式において文字の上に付されている記号は、その文字の直前に記載される。例えば、数式において文字「C」の上に付されている記号「^」は、「^C」のように文字「C」の直前に記載される。例えば、数式において文字「t」の上に付されている記号「-」は、「(-)t」のように文字「t」の直前に記載される。例えば、数式において文字「C」の上に付されている記号「~」は、「(~)C」のように文字「C」の直前に記載される。
図1に戻り、画像処理装置1の構成例の説明を続ける。変化検出部4は、画像分解部3から出力された各解像度の色画像を入力とする。変化検出部4は、入力した各解像度の色画像に基づいて、各解像度の色画像における色の微小変化を検出する。変化検出部4は、検出した色画像又は輝度画像における色又は輝度の微小な変化を表す情報(以下「色又は輝度変化情報」という。)を解像度毎に信頼度推定部5及び乗算部6に出力する。
信頼度推定部5は、色又は輝度変化情報を入力とする。信頼度推定部5は、入力した色又は輝度変化情報に基づいて、微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」の信頼度を推定する。微小な色又は輝度変化の信頼度とは、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な色又は輝度変化であることの信頼度である。信頼度推定部5は、撮像素子の熱雑音等に起因して画像に混入したランダムノイズによって画像のピクセル値に生じた微小な色又は輝度変化の信頼度が、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な色又は輝度変化の信頼度よりも低くなるように、信頼度を推定する。信頼度推定部5は、推定した信頼度を、乗算部6に出力する。信頼度推定部5は、推定した信頼度を、乗算部6に出力する。本実施形態における信頼度推定部5が推定する信頼度は、微小な色又は輝度変化の時間分布が異方性を示すほど高い値となる。言い換えると、信頼度は、拡散結果が異方性を示すほど高い値となる。
乗算部6は、色又は輝度変化情報と、信頼度とを入力とする。乗算部6は、入力した色又は輝度変化情報と、信頼度とを、画素ごとに乗算し、乗算した結果(乗算結果)を変化量調整部7に出力する。乗算部6が色又は輝度変化情報と、信頼度とを乗算することによって、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な色又は輝度変化「^Cn(x,y,t,θ)」が、高精度に検出される。
変化量調整部7は、乗算部6が出力した乗算結果(信頼度が乗算された色又は輝度変化)を入力とする。変化量調整部7は、入力した乗算部6による乗算結果に対して、ビデオ・マグニフィケーションを実行する。すなわち、変化量調整部7は、信頼度が乗算された微小な色又は輝度変化の変化量を、強調又は減弱によって調整する。これによって、変化量調整部7は、微小な色又は輝度変化の変化量が調整された画像(以下「調整画像」という。)を解像度毎に生成する。変化量調整部7は、互いに異なる解像度の複数の調整画像を、画像再構成部8に出力する。
画像再構成部8(画像合成部)は、互いに異なる解像度の複数の調整画像を入力とする。画像再構成部8(画像合成部)は、入力した調整画像に基づいて画像を再構成する。具体的には、画像再構成部8は、互いに異なる解像度の複数の調整画像のサイズを同様のサイズに調整し、足し合わせることで微小な色又は輝度変化が強調された画像を再構成する。なお、画像再構成部8は、色空間や輝度空間への変換を行っていた場合、それらの逆変換を行うことで最終的な映像出力を得る。画像再構成部8は、ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像を、合成結果として、所定の外部装置に出力する。
所定の外部装置は、例えば、ビデオ・マグニフィケーション以外の画像処理を実行する装置、画像認識を実行する装置(以下「画像認識装置」という。)、又は、表示装置である。所定の外部装置が画像認識装置である場合、画像認識装置は、合成結果(ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像)を、画像認識のための特徴量として使用してもよい。
次に、画像処理装置1の詳細を説明する。画像入力部2は、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームと、処理対象として選択された色又は輝度の情報とを取得する。画像入力部2は、画像処理の対象となる原解像度の色画像又は輝度画像と、選択された色又は輝度の情報とを画像分解部3に出力する。
画像分解部3は、画像分解部3は、入力した動画像の時刻tの原解像度の色画像のうち、選択された色の情報の色画像を、互いに異なる解像度に分解する。画像分解部3は、互いに異なる解像度の色画像を変化検出部4に出力する。
変化検出部4は、各解像度の色画像における色画像における色の微小変化を検出する。なお、変化検出部4は、各解像度の輝度画像が入力された場合には、各解像度の輝度画像における輝度の微小変化を検出する。変化検出部4は、画像分解部3において求められる各解像度の映像における色又は輝度変化「In(x,y,t))」に対して、強調したい微小変化の周波数応答を持つ時系列フィルタ「H(t)」を畳み込んだり、大きい変化を除去するための時空間フィルタ「J(x,y,t)」を乗算することで、微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」を以下の式(1)のように検出する。なお、変化検出部4は、時空間フィルタ「J(x,y,t)」を乗算しなくてもよい。すなわち、変化検出部4は、微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」を検出する際に、時空間フィルタ「J(x,y,t)」を用いなくてもよい。
式(1)において、演算子のうちで「〇」印の中に「×」印を含む演算子は、畳み込み演算子を表しており,演算子「〇」は、乗算(要素積)を表す。なお、H(t)はバンドパスフィルタを表し、「J(x,y,t)」は急峻な変化のみを除去することを目的とした躍度フィルタといったものが代表的な例として挙げられる。変化検出部4が用いるフィルタは、これらに限定されない。
変化検出部4によって求められた微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」は自然現象や物理現象によって生じる「意味のある」微小な色又は輝度変化と、撮像素子の熱雑音等に起因して画像に混入したランダムノイズのように撮像過程で混入するノイズ由来の「意味のない」微小な色又は輝度変化が以下の式(2)のように共存している。撮像過程で混入するノイズは、例えば熱雑音、手振れ、地面の振動等である。
式(2)の、「^Bn(x,y,t)」は「意味のある」微小な色又は輝度変化を表し、「~Bn(x,y,t)」は「意味のない」微小な色又は輝度変化を表している。
信頼度推定部5は、変化検出部4によって求められる微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」を利用して、微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」の信頼度を推定する。具体的には、信頼度推定部5は、変化検出部4によって求められる微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」の時間的な振る舞い(時間分布)を評価することで微小な色又は輝度変化の信頼度を推定する。変化検出部4から出力される微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」に対して、ある場所(x,y)を中心とした映像領域(-)x∈R(h×w)=Rdとある時間tを中心とした時間幅「(-)t」を考えると、微小な色又は輝度変化「Bn((-)x,(-)t)」に関する拡散方程式は以下の式(3)のように定式化することができる。
式(3)において「f(Bn((-)x,(-)t))」は微小な色又は輝度変化の時間分布を表しており、「D」は時間幅「(-)t」における拡散テンソル行列を表す。上記式(3)から、拡散テンソル行列は以下の式(4)のように得ることができる。
式(4)において、「cov(X)」はX行列の分散共分散行列を計算することを意味する。その後、信頼度推定部5は、「D」に対して固有値分解を行い、微小な色又は輝度変化の時間分布に関する特徴量であるFractional Anisotropy(以下「FA」という。)を以下の式(5)から得る。
式5において、(λ1,…,λd)は「D」の固有値であり、「(-)λ」はその平均であり、「d」は処理対象となる画素の数を表す。ここで、処理対象となる画素の数「d」は、調整を行いたい画素の数である。「FA」は、時間分布が異方性を示す際には「1」を、時間分布が等方性を示す場合に「0」を取る特徴量である。自然現象や物理現象によって生じる「意味のある」微小な色又は輝度変化はある特定の方向に時間分布が偏っており、異方性が高い。そのため、「意味のある」微小な色又は輝度変化はFA値が「1」に近い値を示す。一方で、撮像過程で混入するノイズ由来の「意味のない」微小な色又は輝度変化はランダムな方向に時間分布が拡散しており異方性が低く、等方性が高い。そのため、「意味のない」微小な色又は輝度変化はFA値が「0」に近い値を示す。したがって、信頼度推定部5は、FAを用いて、微小な色又は輝度変化の信頼度を以下の式(6)に基づいて推定する。
式(6)において、「FAFσ,γ
n(x,y,t)」は微小な色又は輝度変化の信頼度を表す時空間フィルタであり、「Gσ」は「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を空間的に平滑化する関数であり、パラメータ「σ」は平滑化の強さを表すパラメータである。また、「Norm(X)」は、引数「X」の値を0から1までの範囲に正規化することを表す。なお、パラメータ「Gσ」の空間平滑化の方法や、正規化の方法は、特定の方法に限定されない。信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」は、座標(x,y)を含む領域における微小な色又は輝度変化の信頼度を、0から1までの範囲で表す。微小な色又は輝度変化の信頼度は、値が大きくなるほど信頼度は高い。
乗算部6は、色又は輝度変化情報と、信頼度推定部5によって推定された信頼度とを、画素ごと又は領域ごとに乗算する。より具体的には、乗算部6は、式(6)に示された信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」と、式(1)に示された「Bn(x,y,t)」とを以下の式(7)のように乗算する。
式(7)によって、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な色又は輝度変化「^Bn(x,y,t)」が、高精度に検出される。
変化量調整部7は、式(7)によって求められた微小な色又は輝度変化「^Bn(x,y,t)」に対して、所定の調整率(強調率)「α」を乗算する。すなわち、変化量調整部7は、式(7)のように高い精度で導出された微小な色又は輝度変化「^Bn(x,y,t)」に、所定の調整率(強調率)「α」を、以下の式(8)のようにを乗算する。変化量調整部7は、元の色又は輝度の変化元の色又は輝度の変化「In(x,y,t)」と乗算結果とを加算することによって、緩やかで微小な色又は輝度の変化の変化量が調整(例えば、強調又は減弱)された色又は輝度の変化「^In(x,y,t)」を式(8)のように導出する。
このようにして、変化量調整部7は、検出された微小な色又は輝度の変化の変化量を調整する。なお、調整率は、解像度、方向、時刻又は位置ごとに同じでもよいし、異なっていてもよい。
微小な色又は輝度が強調される場合、所定の調整率「α」は、0より大きい正の値とされる。微小な色又は輝度が減弱される場合、所定の調整率「α」は、0より小さい負の値とされる。「α」の上限値及び下限値は、特に定められなくてもよいが、例えば、微小な色又は輝度が減弱される場合、元の微小な色又は輝度変化「In(x,y,t)」の値が0となる場合における所定の調整率「α」の値が「α」の下限値とされる。なお、「α」が0に設定された場合には、微小な色又は輝度変化は調整されない。
画像再構成部8(画像合成部)は、画像を再構成する。画像再構成部8は、解像度毎に式(8)を求め、アップサンプリングを行いながら解像度方向に足し合わせることによって「意味のある」微小な色又は輝度変化のみが強調された色又は輝度情報に変換して原解像度の画像を再構成する。画像再構成部8は、もし色空間や輝度空間への変換を行っていた場合、それらの逆変換を行うことで最終的な映像出力を得ることができる。
次に、画像処理装置1の動作例を説明する。
図5は、第1実施形態における画像処理装置1の動作例を示すフローチャートである。なお、図5では、画像入力部2に画像処理の対象となる原解像度の色画像と、選択された色の情報とを入力する場合を例に説明する。画像入力部2に画像処理の対象となる原解像度の輝度画像と、選択された輝度の情報とを入力する場合には、図5における処理において、原解像度の色画像を原解像度の輝度画像、色の情報を輝度の情報と読み替えればよい。
画像入力部2は、画像処理の対象となる原解像度の色画像と、選択された色の情報とを入力する(ステップS101)。画像入力部2は、原解像度の色画像と、選択された色の情報とを画像分解部3に出力する。画像分解部3は、入力した動画像の時刻tの原解像度の色画像のうち、選択された色の情報の色画像を、互いに異なる解像度に分解する(ステップS102)。画像分解部3は、各解像度の色画像を変化検出部4に出力する。
変化検出部4は、画像分解部3から出力された色画像に基づいて、各解像度の色画像における色の微小変化を検出する(ステップS103)。変化検出部4は、各解像度の検出した色の微小変化を色又は輝度変化情報として信頼度推定部5及び乗算部6に出力する。
信頼度推定部5は、変化検出部4から出力された色又は輝度変化情報に基づいて、微小な色又は輝度変化「Bn(x,y,t)」の信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を推定する(ステップS104)。信頼度推定部5は、推定した信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を乗算部6に出力する。
乗算部6は、変化検出部4から出力された色又は輝度変化情報と、信頼度推定部5から出力された信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」とを乗算する(ステップS105)。乗算部6は、乗算結果を変化量調整部7に出力する。変化量調整部7は、乗算部6から出力された乗算結果を用いて、信頼度が乗算された微小な色又は輝度の変化の変化量を強調又は減弱によって調整する(ステップS106)。変化量調整部7は、微小な色又は輝度の変化の変化量の情報を画像再構成部8に出力する。画像再構成部8は、互いに異なる解像度の複数の調整画像に基づいて、原解像度の色画像を再構成する(ステップS107)。
画像分解部3は、画像処理装置1が処理を終了するか否かを、例えばユーザから得られた命令に基づいて判定する(ステップS108)。画像処理装置1が処理を続ける場合(ステップS108:NO)、画像処理装置1の各機能部は、ステップS102に処理を戻す。画像処理装置1が処理を終了する場合(ステップS108:YES)、画像処理装置1の各機能部は、処理を終了する。
以上のように、第1実施形態の画像処理装置1は、変化検出部4と、信頼度推定部5とを備える。変化検出部4は、複数の解像度の色又は輝度画像における色又は輝度の変化のうち、予め定められた色又は輝度変化を検出する。信頼度推定部5は、色又は輝度画像内における時系列の色又は輝度変化に基づいて、検出された色又は輝度変化の信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を推定する。
これによって、画像処理装置1は、検出した映像内の微小変化のうち「意味のある」微小な色又は輝度変化をより精度よく検出することができる。したがって、「意味のある」微小な色又は輝度変化の変化量を調整することができる。そのため、動画像の微小な色又は輝度変化の変化量を調整する場合に、動画像に混入したランダムノイズが調整されることを低減することが可能である。
(第2実施形態)
第2実施形態では、画像処理装置が、被写体の特定の微小な色又は輝度変化に加えて、微小な運動変化を強調又は減弱する点が、第1実施形態と相違する。第2実施形態では、第1実施形態との相違点を説明する。
図6は、第2実施形態における画像処理装置1aの構成例を示す図である。画像処理装置1aは、動画像に対して所定の画像処理を実行する装置である。画像処理装置1aは、動画像に対して所定の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化及び被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1aは、画像入力部2aと、分解変換部30aと、変化検出部4aと、信頼度推定部5aと、乗算部6aと、変化量調整部7aと、画像再構成部8aとを備える。分解変換部30aは、画像分解部3を備える。
第2実施形態では、画像処理装置1aは、第1画像処理及び第2の画像処理を逐次実行する。すなわち、画像処理装置1aは、動画像に対して第1画像処理を実行し、更に、動画像に対して第2の画像処理を実行する。第1の画像処理と第2の画像処理との実行順は、逆でもよい。
第1の画像処理では、画像処理装置1aの各機能部は、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。すなわち、画像処理装置1aは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1aは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。第2の画像処理では、位相変化の調整率「α」は0である。
次に、被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する処理について説明する。
図7は、第2実施形態における被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する各機能部の構成例を示す図である。画像処理装置1aは、画像入力部2aと、分解変換部30aと、変化検出部4aと、信頼度推定部5aと、乗算部6aと、変化量調整部7aと、画像再構成部8aとを、第2実施形態における被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する各機能部として備える。
画像入力部2aは、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームを入力とする。画像入力部2aは、入力した動画像の複数のフレームから、輝度画像と色画像とをフレーム毎に生成する。画像入力部2aは、画像処理の対象となる原解像度の輝度画像を、分解変換部30aに出力する。画像入力部2aは、画像処理の対象となる原解像度の色画像を、画像再構成部8aに出力する。
分解変換部30aは、原解像度の輝度画像を入力とする。分解変換部30aは、入力した動画像の時刻tの原解像度の輝度画像における座標(x,y)の画素の輝度変化を、事前に定められた複数の方向における各輝度情報の位相変化及び振幅変化に変換するとともに、互いに異なる解像度に分解する。事前に定められた複数の方向とは、例えば、フレーム内の座標(x,y)の画素から放射状に広がる複数の方向である。放射状に広がる複数の空間方向は、例えば、フレーム内の画素の周囲における360度を、22.5度ごとに等分する。分解変換部30aは、事前に定められた複数の方向にそれぞれ沿った各輝度情報の位相変化を表す情報を位相変化情報として変化検出部4aに、事前に定められた複数の方向にそれぞれ沿った各輝度情報の振幅変化を表す情報を振幅変化情報として信頼度推定部5aに、それぞれ出力する。
変化検出部4aは、位相変化情報を入力とする。変化検出部4aは、入力した位相変化情報に基づいて各解像度の輝度画像における微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」を検出する。変化検出部4aは、検出した輝度画像における微小な位相変化を表す情報(以下「微小位相変化情報」という。)を解像度毎に乗算部6aに出力する。
信頼度推定部5aは、振幅変化情報を入力とする。信頼度推定部5aは、入力した振幅変化情報に基づいて、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」の信頼度を推定する。微小な位相変化の信頼度とは、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化であることの信頼度である。信頼度推定部5aは、撮像素子の熱雑音等に起因して画像に混入したランダムノイズによって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化の信頼度が、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化の信頼度よりも低くなるように、信頼度を推定する。信頼度推定部5aは、推定した信頼度を、乗算部6aに出力する。本実施形態における信頼度推定部5aが推定する信頼度は、振幅変化が大きくなるほど高い値となる。
乗算部6aは、微小位相変化情報と、信頼度とを入力とする。乗算部6aは、入力した微小位相変化情報と、信頼度とを、画素ごとに乗算し、乗算した結果(乗算結果)を変化量調整部7aに出力する。乗算部6aが微小位相変化情報と、信頼度とを乗算することによって、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化が、高精度に検出される。
変化量調整部7aは、乗算部6aが出力した乗算結果(信頼度が乗算された位相変化)を入力とする。変化量調整部7aは、入力した乗算部6aによる乗算結果に対して、ビデオ・マグニフィケーションを実行する。すなわち、変化量調整部7aは、信頼度が乗算された微小な位相変化(運動変化)の変化量を、強調又は減弱によって調整する。これによって、変化量調整部7aは、微小な運動変化の変化量が調整された輝度画像(以下「調整輝度画像」という。)を解像度毎に生成する。変化量調整部7aは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像を、画像再構成部8aに出力する。
画像再構成部8a(画像合成部)は、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像と、原解像度の色画像とを入力とする。画像再構成部8a(画像合成部)は、入力した調整輝度画像に基づいて画像を再構成する。
画像再構成部8aは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する。画像再構成部8aは、ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像を、合成結果として、所定の外部装置に出力する。
次に、画像処理装置1aの詳細を説明する。画像入力部2aは、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームを取得する。画像入力部2aは、取得された複数のフレームから、原解像度の輝度画像「I(x,y,t)」と、原解像度の色画像とを生成する。「x」は、動画像のフレーム(輝度画像等)におけるx座標を表す。「y」は、動画像のフレーム(輝度画像等)におけるy座標を表す。「t」は、時系列の動画像のフレームの時刻を表す。画像入力部2aは、原解像度の輝度画像「I(x,y,t)」を分解変換部3aに出力する。画像入力部2aは、原解像度の色画像を画像再構成部8aへ出力する。
分解変換部3aは、入力した原解像度の輝度画像のある場所(x,y)、ある時間tにおける映像の輝度変化「I(x,y,t)」に対してCSF(Complex Steerable Filter)を用いることで、映像の輝度変化「I(x,y,t)」を、ある解像度「n」と、ある方向「θ」における振幅変化「An(x,y,t,θ)」と、位相変化「φn(x,y,t,θ)」に以下の式(9)のように変換及び分解する。パラメータ「n」は解像度を表す。なお、本実施形態では、CSFを用いる構成を示したが、フィルタはこれに限定されない。ただし、以下の実施形態では、CSFを用いた場合について述べていく。
式(9)に示す演算子のうちで「〇」印の中に「×」印を含む演算子は、畳み込み演算子を表しており、「ψθ
n」はある解像度「n」、ある方向「θ」におけるCSFを表している。
変化検出部4aは、生成された各解像度の輝度画像における輝度の微小変化を検出する。変化検出部4aは、分解変換部3aにおいて求められる各解像度の映像における方向毎の位相変化「φn(x,y,t,θ)」に対して、強調したい微小変化の周波数応答を持つ時系列フィルタ「H(t)」を畳み込んだり、大きい変化を除去するための時空間フィルタ「J(x,y,t)」を乗算することで、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」を以下の式(10)のように検出する。なお、変化検出部4aは、時空間フィルタ「J(x,y,t)」を乗算しなくてもよい。すなわち、変化検出部4aは、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」を検出する際に、時空間フィルタ「J(x,y,t)」を用いなくてもよい。
式(10)における演算子「〇」は、乗算(要素積)を表す。なお、「H(t)」はバンドパスフィルタを表し、「J(x,y,t)」は急峻な変化のみを除去することを目的とした躍度フィルタといったものが代表的な例として挙げられる。変化検出部4aが用いるフィルタは、これらに限定されない。
変化検出部4aによって求められた微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」は自然現象や物理現象によって生じる「意味のある」微小な位相変化と、撮像素子の熱雑音等に起因して画像に混入したランダムノイズのように撮像過程で混入するノイズ由来の「意味のない」微小な位相変化が以下の式(11)のように共存している。撮像過程で混入するノイズは、例えば熱雑音、手振れ、地面の振動等である。
式(11)の、「^Cn(x,y,t,θ)」は「意味のある」微小な位相変化を表し、「~Cn(x,y,t,θ)」は「意味のない」微小な位相変化を表している。
信頼度推定部5aは、変化検出部4aによって求められる振幅変化を利用して、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」の信頼度を推定する。まず、振幅変化の解像度の違いを考慮するために、ある解像度n、ある方向θにおける振幅変化「An(x,y,t,θ)」を以下の式(12)のように複数解像度に渡り統合する。
式(12)において、「Nn」はこの統合にいくつの解像度を使用するか決定するものである。また、「Z(A)」はパラメータ「A」をzスコアに変換するz変換を表した関数であり、この関数を用いることによって複数解像度間のスケールの異なる振幅変化を規格化し、比較することが可能になる。「res(A(n+i),n)」は、解像度「n+i」(iは1以上の整数)における振幅変化を解像度「n」にリサイズする関数である。なお、Z(A)で用いられている規格化や「res(A(n+i),n)」で用いられるリサイズに関する手法はこれらに限定されない。
そして、信頼度推定部5aは、複数解像度の振幅変化を統合した式(12)の結果を用いて、振幅変化が大きくなるほど高い値となる微小な位相変化の信頼度を以下の式(13)のように推定する。
式(13)において、「HEARσ
n(x,y,t,θ)」は微小な位相変化の信頼度を表し、「Gσ」は「^An(x,y,t,θ)」を空間的に平滑化する関数であり、パラメータ「σ」は平滑化の強さを表すパラメータである。また、「Norm(X)」は、引数「X」の値を0から1までの範囲に正規化することを表す。なお、パラメータ「Gσ」の空間平滑化の方法や、正規化の方法は、特定の方法に限定されない。信頼度「HEARσ
n(x,y,t,θ)」は、座標(x,y)を含む領域における微小な位相変化の信頼度を、0から1までの範囲で表す。微小な位相変化の信頼度は、値が大きくなるほど信頼度は高い。
乗算部6aは、微小位相変化情報と、信頼度推定部5aによって推定された信頼度とを、画素ごとに乗算する。より具体的には、乗算部6aは、式(13)に示された信頼度「HEARσ
n(x,y,t,θ)」と、式(10)に示された「Cn(x,y,t)」とを以下の式(14)のように乗算する。
式(14)によって、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」が、高精度に検出される。
変化量調整部7aは、式(14)によって求められた微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」に対して、所定の調整率(強調率)「α」を乗算する。すなわち、変化量調整部7aは、式(14)によって高い精度で求められた微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」に、所定の調整率(強調率)「α」を、以下の式(15)のように乗算する。変化量調整部7aは、元の位相変化元の位相変化「φn(x,y,t,θ)」と乗算結果とを加算することによって、緩やかで微小な位相変化の変化量が調整(例えば、強調又は減弱)された位相変化「^φn(x,y,t,θ)」を式(15)のように導出する。
このようにして、変化量調整部7aは、検出された微小な位相変化の変化量を調整する。なお、調整率は、解像度、方向、時刻又は位置ごとに同じでもよいし、異なっていてもよい。
微小な位相変化が強調される場合、所定の調整率「α」は、0より大きい正の値とされる。微小な位相変化が減弱される場合、所定の調整率「α」は、0より小さい負の値とされる。「α」の上限値及び下限値は、特に定められなくてもよいが、例えば、微小な位相変化が減弱される場合、元の位相変化「φn(x,y,t)」の値が0となる場合における所定の調整率「α」の値が「α」の下限値とされる。なお、「α」が0に設定された場合には、微小な位相変化は調整されない。
画像再構成部8aは、各解像度・方向毎に式(15)を求める。画像再構成部8aは、各解像度・方向毎に求めた調整された位相変化「φn(x,y,t,θ)」に対して、CSFの逆フィルタを掛けることで、微小な運動変化が強調された輝度情報に変換する。その後、色映像と足し合わせることで最終的な映像出力を得ることができる。
画像再構成部8a(画像合成部)は、画像を再構成する。画像再構成部8aは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像を、変化量調整部7aから取得する。画像再構成部8aは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像を合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。具体的には、画像再構成部8aは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像及び方向毎にCSFの逆フィルタを掛けることで微小な運動変化が強調された輝度情報に変換して合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。
画像再構成部8aは、原解像度の色画像を、画像入力部2aから取得する。画像再構成部8aは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する。画像再構成部8aは、ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像を、合成結果として、所定の外部装置に出力する。
画像再構成部8aは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像とを合成する。例えば、画像再構成部8aは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像との平均画像を生成する。
次に、画像処理装置1aの動作例を説明する。
図8は、第2実施形態における画像処理装置1aの動作例を示すフローチャートである。画像入力部2aは、動画像の複数のフレームから、輝度画像と色画像とを生成する(ステップS201)。画像入力部2aは、原解像度の輝度画像を分解変換部3aに出力する。画像入力部2aは、原解像度の色画像を画像再構成部8aに出力する。分解変換部3aは、画像入力部2aから出力された原解像度の輝度画像に基づいて、輝度変化を位相変換及び振幅変化に変換するとともに、複数の解像度に分解する(ステップS202)。分解変換部3aは、各解像度の位相変化情報を変化検出部4aに出力する。分解変換部3aは、各解像度の振幅変化情報を信頼度推定部5aに出力する。
変化検出部4aは、分解変換部3aから出力された位相変化情報に基づいて、各解像度の輝度画像における輝度の微小変化を検出する(ステップS203)。変化検出部4aは、各解像度の微小位相変化情報を乗算部6aに出力する。
信頼度推定部5aは、分解変換部3aから出力された振幅変化情報に基づいて、微小な位相変化「Cn(x,y,t)」の信頼度「HEARσ
n(x,y,t,θ)」を推定する(ステップS204)。信頼度推定部5aは、推定した信頼度「HEARσ
n(x,y,t,θ)」を乗算部6aに出力する。
乗算部6aは、変化検出部4aから出力された微小位相変化情報と、信頼度推定部5aから出力された信頼度「HEARσ
n(x,y,t,θ)」とを乗算する(ステップS205)。乗算部6aは、乗算結果を変化量調整部7aに出力する。変化量調整部7aは、乗算部6aから出力された乗算結果を用いて、信頼度が乗算された微小な運動変化の変化量を強調又は減弱によって調整する(ステップS206)。変化量調整部7aは、運動変化の変化量の情報を画像再構成部8aに出力する。画像再構成部8aは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像に基づいて、原解像度の輝度画像を再構成する(ステップS207)。画像再構成部8aは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する(ステップS208)。
分解変換部3aは、画像処理装置1aが処理を終了するか否かを、例えばユーザから得られた命令に基づいて判定する(ステップS209)。画像処理装置1aが処理を続ける場合(ステップS209:NO)、画像処理装置1aの各機能部は、ステップS202に処理を戻す。画像処理装置1aが処理を終了する場合(ステップS209:YES)、画像処理装置1aの各機能部は、処理を終了する。
以上のように、第2実施形態の画像処理装置1aは、変化検出部4aと、信頼度推定部5aとを備える。変化検出部4aは、複数の解像度の輝度画像における位相変化のうち、所定の変化量の位相変化を検出する。信頼度推定部5aは、検出された位相変化の信頼度「HEARσ
n(x,y,t,θ)」を推定する。
これによって、画像処理装置1aは、検出した映像内の微小変化のうち「意味のある」微小な位相変化をより精度よく検出することができる。したがって、「意味のある」微小な位相変化の変化量を調整することができる。そのため、動画像の微小な運動変化の変化量を調整する場合に、動画像に混入したランダムノイズが調整されることを低減することが可能である。
第2実施形態における画像処理装置は、第1実施形態の画像処理装置1が実行する色又は輝度の微小変化の変化量を調整する処理と、本実施形態で説明した被写体の特定の微小な運動変化を調整する処理とを並列に実行するように構成されてもよい。このように構成される場合の構成を図9に示す。図9は、第2実施形態における画像処理装置1aaの構成例を示す図である。画像処理装置1aaは、画像入力部2aaと、分解変換部30aaと、変化検出部4aaと、信頼度推定部5aaと、乗算部6aaと、変化量調整部7aaと、画像再構成部8aaと、画像分解部3と、変化検出部4と、信頼度推定部5と、乗算部6と、変化量調整部7とを備える。
画像処理装置1aaは、第1の画像処理及び第2の画像処理を並列に実行する。画像処理装置1aaは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の色又は輝度の微小変化を強調又は減弱する。画像処理装置1aaが実行する第1の画像処理では、画像入力部2aaと画像分解部3と変化検出部4と信頼度推定部5と乗算部6と変化量調整部7と画像再構成部8aaとは、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。
画像処理装置1aaは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、被写体の微小な運動変化を強調又は減弱する。画像処理装置1aaが実行する第2の画像処理では、画像入力部2aaと分解変換部30aaと変化検出部4aaと信頼度推定部5aaと乗算部6aaと変化量調整部7aaと画像再構成部8aaとは、図7に示す同名の機能部と同様の処理を実行する。
画像再構成部8aaは、互いに異なる解像度の複数の画像を、変化量調整部7aaから取得する。画像再構成部8aaは、互いに異なる解像度の複数の画像を合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。画像再構成部8aaは、原解像度の色画像を、画像入力部2aaから取得してもよい。画像再構成部8aaは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成してもよい。
画像再構成部8aaは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像を、変化量調整部7から取得する。画像再構成部8aaは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像とを合成する。例えば、画像再構成部8aaは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像との平均画像を生成する。
(第3実施形態)
第3実施形態では、画像処理装置が、被写体の特定の微小な色又は輝度変化に加えて、微小な位相変化の時間的な振る舞いに基づいて得られる信頼度に基づいて微小な運動変化を強調又は減弱する点が、第1実施形態及び第2実施形態と相違する。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を説明する。
図10は、第3実施形態における画像処理装置1bの構成例を示す図である。画像処理装置1bは、動画像に対して所定の画像処理を実行する装置である。画像処理装置1bは、動画像に対して所定の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化及び被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1bは、画像入力部2bと、分解変換部30bと、変化検出部4bと、信頼度推定部5bと、乗算部6bと、変化量調整部7bと、画像再構成部8bとを備える。分解変換部30bは、画像分解部3を備える。
第3実施形態では、画像処理装置1bは、第1の画像処理及び第2の画像処理を逐次実行する。すなわち、画像処理装置1bは、動画像に対して第1の画像処理を実行し、更に、動画像に対して第2の画像処理を実行する。第1の画像処理と第2の画像処理との実行順は、逆でもよい。
第1の画像処理では、画像処理装置1bの各機能部は、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。すなわち、画像処理装置1bは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1bは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、微小な位相変化の時間的な振る舞いに基づいて得られる信頼度に基づいて被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。第2の画像処理では、位相変化の調整率「α」は0である。
次に、微小な位相変化の時間的な振る舞いに基づいて得られる信頼度に基づいて被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する処理について説明する。
図11は、第3実施形態における被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する各機能部の構成例を示す図である。画像処理装置1bは、画像入力部2bと、分解変換部30bと、変化検出部4bと、信頼度推定部5bと、乗算部6bと、変化量調整部7bと、画像再構成部8bとを、第3実施形態における被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する各機能部として備える。
画像入力部2bは、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームを入力とする。画像入力部2bは、入力した動画像の複数のフレームから、輝度画像と色画像とをフレーム毎に生成する。画像入力部2bは、画像処理の対象となる原解像度の輝度画像を、分解変換部30bに出力する。画像入力部2bは、画像処理の対象となる原解像度の色画像を、画像再構成部8bに出力する。
分解変換部30bは、原解像度の輝度画像を入力とする。分解変換部30bは、入力した動画像の時刻tの原解像度の輝度画像における座標(x,y)の画素の輝度変化を、事前に定められた複数の方向における各輝度情報の位相変化及び振幅変化に変換するとともに、互いに異なる解像度に分解する。分解変換部30bは、事前に定められた複数の方向にそれぞれ沿った各輝度情報の位相変化を表す情報を位相変化情報として変化検出部4bに出力する。
図12は、動画像のフレーム内の画素の例を示す図である。以下では、動画像のフレームには、水平方向のx座標と、垂直方向のy座標とが定められている。図12に示されたフレームには、切り株に斧が降り下ろされた動作(薪割りの動作)が撮像されている。図12に示されたフレームは、画素210と、画素211と、切り株画像212と、斧画像213とを含む。画素210は、フレームの第1部分領域に撮像された壁の画像に含まれている画素である。画素211は、フレームの第2部分領域に撮像された切り株画像212に含まれている画素である。
図13は、微小な位相変化の等方性拡散を示す図である。図13に示された微小な位相変化は、画素210の輝度情報における微小な位相変化である。図13に示されたグラフの原点からの距離は、画素210の輝度情報の位相変化の変化量を表す。図13では、予め定められた空間方向「θ」は、一例として、22.5°ごとの角度(0.0°、22.5°、45.0°、67.5°、90.0°、…)である。
意味のない微小な位相変化は、図13に示された例のように、等方性拡散となる。位相変化の変化量は、例えば、時刻t1では「θ=90度」の方向に「0.2」と、時刻t2では「θ=67.5度」の方向に「0.2」とのように変化する。
図14は、微小な位相変化の異方性拡散を示す図である。図14に示された微小な位相変化は、画素211の輝度情報における微小な位相変化である。図14に示されたグラフの原点からの距離は、画素211の輝度情報の位相変化の変化量を表す。図14では、予め定められた空間方向「θ」は、一例として、22.5°ごとの角度(0.0°、22.5°、45.0°、67.5°、90.0°、…)である。
時刻tを含む時間帯「(-)t」において、意味のある微小な位相変化は、複数の空間方向の軸のうちの少ない本数の軸の空間方向に生じる。図14では、各空間方向「θ」のうちの例えば「θ=90°」の軸(y軸)に対して、分散が大きい。図14に示された例のように、意味のある微小な位相変化は異方性拡散となる。意味のある微小な位相変化の変化量は、特定の方向に時間分布が偏るように変化する。
意味がある動きでは、単位時間内の特定時刻において、位相変化の空間方向θが互いに近い方向になる。例えば、斧に衝突された切り株の垂直方向の振動では、振動周期に応じた特定の各時刻(t1、t2、…)において、位相変化の空間方向θが、それぞれ例えば90度になる。
図11に戻り、画像処理装置1bの構成例の説明を続ける。変化検出部4bは、位相変化情報を入力とする。変化検出部4bは、入力した位相変化情報に基づいて各解像度の輝度画像における微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」を検出する。変化検出部4bは、検出した輝度画像における微小な位相変化を表す情報である微小位相変化情報を解像度毎に信頼度推定部5b及び乗算部6bに出力する。
信頼度推定部5bは、微小位相変化情報を入力とする。信頼度推定部5bは、入力した微小位相変化情報に基づいて、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」の信頼度を推定する。信頼度推定部5bは、撮像素子の熱雑音等に起因して画像に混入したランダムノイズによって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化の信頼度が、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化の信頼度よりも低くなるように、信頼度を推定する。信頼度推定部5bは、推定した信頼度を、乗算部6bに出力する。
本実施形態における信頼度推定部5bが推定する信頼度は、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」の時間的な振る舞いが近傍領域間で高い相関を示すほど高い値となる。すなわち、本実施形態における信頼度推定部5bが推定する信頼度は、微小な位相変化の時間分布が異方性を示すほど高い値となる。言い換えると、本実施形態における信頼度推定部5bが推定する信頼度は、拡散結果が異方性を示すほど高い値となる。
乗算部6bは、微小位相変化情報と、信頼度とを入力とする。乗算部6bは、入力した微小位相変化情報と、信頼度とを、画素ごとに乗算し、乗算した結果(乗算結果)を変化量調整部7bに出力する。乗算部6bが微小位相変化情報と、信頼度とを乗算することによって、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化「^Cn(x,y,t,θ)」が、高精度に検出される。
変化量調整部7bは、乗算部6bが出力した乗算結果(信頼度が乗算された位相変化)を入力とする。変化量調整部7bは、入力した乗算部6bによる乗算結果に対して、ビデオ・マグニフィケーションを実行する。すなわち、変化量調整部7bは、信頼度が乗算された微小な位相変化(運動変化)の変化量を、強調又は減弱によって調整する。これによって、変化量調整部7bは、微小な運動変化の変化量が調整された輝度画像(以下「調整輝度画像」という。)を解像度毎に生成する。変化量調整部7bは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像を、画像再構成部8bに出力する。
画像再構成部8b(画像合成部)は、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像と、原解像度の色画像とを入力とする。画像再構成部8b(画像合成部)は、入力した調整輝度画像に基づいて画像を再構成する。具体的には、画像再構成部8bは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像及び方向毎にCSFの逆フィルタを掛けることで微小な運動変化が強調された輝度情報に変換して合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。
画像再構成部8bは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する。画像再構成部8bは、ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像を、合成結果として、所定の外部装置に出力する。
次に、画像処理装置1bの詳細を説明する。画像入力部2bは、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームを取得する。画像入力部2bは、取得された複数のフレームから、原解像度の輝度画像「I(x,y,t)」と、原解像度の色画像とを生成する。画像入力部2bは、原解像度の輝度画像「I(x,y,t)」を分解変換部3bに出力する。画像入力部2bは、原解像度の色画像を画像再構成部8bへ出力する。
分解変換部3bは、入力した原解像度の輝度画像のある場所(x,y)、ある時間tにおける映像の輝度変化「I(x,y,t)」に対してCSFを用いることで、映像の輝度変化「I(x,y,t)」を、ある解像度「n」と、ある方向「θ」における振幅変化「An(x,y,t,θ)」と、位相変化「φn(x,y,t,θ)」に上式(9)のように変換及び分解する。
変化検出部4bは、生成された各解像度の輝度画像における輝度の微小変化を検出する。変化検出部4bは、分解変換部3bにおいて求められる各解像度の映像における方向毎の位相変化「φn(x,y,t,θ)」に対して、強調したい微小変化の周波数応答を持つ時系列フィルタ「H(t)」を畳み込んだり、大きい変化を除去するための時空間フィルタ「J(x,y,t)」を乗算することで、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」を上式(10)のように検出する。なお、変化検出部4bは、時空間フィルタ「J(x,y,t)」を乗算しなくてもよい。すなわち、変化検出部4bは、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」を検出する際に、時空間フィルタ「J(x,y,t)」を用いなくてもよい。
変化検出部4bによって求められた微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」は自然現象や物理現象によって生じる「意味のある」微小な位相変化と、撮像素子の熱雑音等に起因して画像に混入したランダムノイズのように撮像過程で混入するノイズ由来の「意味のない」微小な位相変化が上式(3)のように共存している。撮像過程で混入するノイズは、例えば熱雑音、手振れ、地面の振動等である。
信頼度推定部5bは、分解変換部30bによって求められる微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」を利用して、微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」の信頼度を推定する。具体的には、信頼度推定部5bは、変化検出部4bによって求められる微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」の時間的な振る舞い(時間分布)を評価することで微小な位相変化の信頼度を推定する。変化検出部4bから出力される微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」に対して、ある場所(x,y)を中心とした映像領域(-)x∈R(h×w)=Rdとある時間tを中心とした時間幅「(-)t」を考えると、位相の変化が方向θに依存していることに注意して微小な位相変化「Cn(x,y,t,θ)」に関する拡散方程式は以下の式(16)のように定式化することができる。
式(16)において、「f(Cn((-)x,(-)t,θ))」は微小な位相変化の時間分布を表しており、「D」は時間幅「(-)t」における拡散テンソル行列を表す。映像領域「(-)x」において、時間幅「(-)t」内で同じような位相変化が生じていると仮定し、それらの変化を時空間データサンプル「s」としてまとめると、式(16)は以下の式(17)のように変形できる。
上記の式(17)から拡散テンソル行列は、以下の式(18)のように得ることができる。
式(18)において、「cov(X)」はX行列の分散共分散行列を計算することを意味する。その後、信頼度推定部5bは、「D」に対して固有値分解を行うことによって、微小な位相変化の時間分布に関する特徴量であるFractional Anisotropy(以下「FA」という。)を以下の式(19)から得る。
式(19)において、(λ1,…, λd)は「D」の固有値であり、「(-)λ」はその平均である。「FA」は、時間分布が異方性を示す際には「1」を、時間分布が等方性を示す場合に「0」を取る特徴量である。自然現象や物理現象によって生じる「意味のある」微小な位相変化はある特定の方向に時間分布が偏っており、異方性が高い。そのため、「意味のある」微小な位相変化はFA値が「1」に近い値を示す。一方で、撮像過程で混入するノイズ由来の「意味のない」微小な位相変化はランダムな方向に時間分布が拡散しており異方性が低く、等方性が高い。そのため、「意味のない」微小な位相変化はFA値が「0」に近い値を示す。したがって、信頼度推定部5bは、FAを用いて、微小な位相変化の信頼度を以下の式(20)に基づいて推定する。
式(20)において、「FAFσ,γ
n(x,y,t)」は微小な位相変化の信頼度を表す時空間フィルタであり、「Gσ」は「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を空間的に平滑化する関数であり、パラメータ「σ」は平滑化の強さを表すパラメータである。また、「Norm(X)」は、引数「X」の値を0から1までの範囲に正規化することを表す。なお、パラメータ「Gσ」の空間平滑化の方法や、正規化の方法は、特定の方法に限定されない。信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」は、座標(x,y)を含む領域における微小な位相変化の信頼度を、0から1までの範囲で表す。微小な位相変化の信頼度は、値が大きくなるほど信頼度は高い。
乗算部6bは、微小位相変化情報と、信頼度推定部5bによって推定された信頼度とを、画素ごとに乗算する。より具体的には、乗算部6bは、式(20)に示された信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」と、式(10)に示された「Cn(x,y,t)」とを以下の式(21)のように乗算する。
式(21)によって、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」が、高精度に検出される。
変化量調整部7bは、式(21)によって求められた微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」に対して、所定の調整率(強調率)「α」を乗算する。すなわち、変化量調整部7bは、式(21)のように高い精度で導出された微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」に、所定の調整率(強調率)「α」を、以下の式(22)のように乗算する。変化量調整部7bは、元の位相変化元の位相変化「φn(x,y,t,θ)」と乗算結果とを加算することによって、緩やかで微小な位相変化の変化量が調整(例えば、強調又は減弱)された位相変化「^φn(x,y,t,θ)」を式(22)のように導出する。
このようにして、変化量調整部7bは、検出された微小な位相変化の変化量を調整する。なお、調整率は、解像度、方向、時刻又は位置ごとに同じでもよいし、異なっていてもよい。
画像再構成部8bは、各解像度・方向毎に式(22)を求める。画像再構成部8bは、各解像度・方向毎に求めた調整された位相変化「φn(x,y,t,θ)」に対して、CSFの逆フィルタを掛けることで、微小な運動変化が強調された輝度情報に変換する。その後、色映像と足し合わせることで最終的な映像出力を得ることができる。
画像再構成部8b(画像合成部)は、画像を再構成する。画像再構成部8bは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像を、変化量調整部7bから取得する。画像再構成部8bは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像を合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。
画像再構成部8bは、原解像度の色画像を、画像入力部2から取得する。画像再構成部8bは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する。画像再構成部8bは、ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像を、合成結果として、所定の外部装置に出力する。
次に、画像処理装置1bの動作例を説明する。
図15は、第3実施形態における画像処理装置1bの動作例を示すフローチャートである。画像入力部2bは、動画像の複数のフレームから、輝度画像と色画像とを生成する(ステップS301)。画像入力部2bは、原解像度の輝度画像を分解変換部3bに出力する。画像入力部2bは、原解像度の色画像を画像再構成部8bに出力する。分解変換部3bは、画像入力部2bから出力された原解像度の輝度画像に基づいて、輝度変化を位相変換及び振幅変化に変換するとともに、複数の解像度に分解する(ステップS302)。分解変換部3bは、各解像度の位相変化情報を変化検出部4bに出力する。
変化検出部4bは、分解変換部3bから出力された位相変化情報に基づいて、各解像度の輝度画像における輝度の微小変化を検出する(ステップS303)。変化検出部4bは、各解像度の微小位相変化情報を乗算部6bに出力する。
信頼度推定部5bは、分解変換部3bから出力された位相変化情報に基づいて、微小な位相変化「Cn(x,y,t)」の信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を推定する(ステップS304)。信頼度推定部5bは、推定した信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を乗算部6bに出力する。
乗算部6bは、変化検出部4bから出力された微小位相変化情報と、信頼度推定部5bから出力された信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」とを乗算する(ステップS305)。乗算部6bは、乗算結果を変化量調整部7bに出力する。変化量調整部7bは、乗算部6bから出力された乗算結果を用いて、信頼度が乗算された微小な運動変化の変化量を強調又は減弱によって調整する(ステップS306)。変化量調整部7bは、運動変化の変化量の情報を画像再構成部8bに出力する。画像再構成部8bは、互いに異なる解像度の複数の調整輝度画像に基づいて、原解像度の輝度画像を再構成する(ステップS307)。画像再構成部8bは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する(ステップS308)。
分解変換部3bは、画像処理装置1bが処理を終了するか否かを、例えばユーザから得られた命令に基づいて判定する(ステップS309)。画像処理装置1bが処理を続ける場合(ステップS309:NO)、画像処理装置1bの各機能部は、ステップS302に処理を戻す。画像処理装置1bが処理を終了する場合(ステップS309:YES)、画像処理装置1bの各機能部は、処理を終了する。
次に、画像の運動変化(位相変化)の変化量が調整された結果の例を説明する。
図16は、動画像のフレームの例を示す図である。図16に示されたフレームには、切り株に斧が降り下ろされた動作(薪割りの動作)が撮像されている。切り株に斧が衝突した時刻以降の時系列のフレームでは、y軸方向に切り株が微小振動する。
図16に示されたフレームは、画素群220と、画素221とを含む。画素群220は、フレーム内の第1部分領域に撮像された切り株画像212において垂直方向(y軸方向)に並ぶ画素である。画素221は、フレーム内の第2部分領域に撮像された壁の画像に含まれている画素である。
動画像のフレームでは、壁の画像の画素221のピクセル値には、ランダムな空間方向の微小な位相変化が、ランダムノイズによって定常的に生じている。切り株に向けてy軸方向に斧が降り下ろされた場合、切り株と斧との衝突に起因して、切り株画像212の画素群220のピクセル値には、主にy軸方向の微小な位相変化が、切り株画像212の振動によって生じる。
図17は、位相変化の拡散結果に基づいて運動変化の変化量が調整された画素群220のピクセル値の例を示す図である。図17では、位相変化の拡散結果に基づいて運動変化の変化量が調整されることによって、強調すべき部分は強調できており、ノイズが抑えられている。このため、切り株と斧とが衝突した時刻「t1」以降において、強調すべき部分のピクセル値(運動変化)の変化量が大きい。
図18は、運動変化の変化量が調整されていない元画像の画素221のピクセル値と、運動変化の変化量が調整された各画像の画素221のピクセル値との例を示す図である。横軸は、フレーム番号(時刻)を表す。縦軸は、各手法に基づいて求められたピクセル値の時間的な変動を表す。ここで、各手法として、加速度法、躍度法及び本手法が挙げられる。なお、これらの各手法との比較対象として、運動変化の変化量が調整されていない元画像のピクセル値の時間的な変動も示している。
加速度法又は躍度法に基づいて調整された画像の画素221と、元画像の画素221のピクセル値との差は、本手法、すなわち位相変化の拡散結果に基づいて調整された画像の画素221と、元画像の画素221のピクセル値との差よりも大きい。このように、位相変化の拡散結果に基づいて調整された画像では、微小な位相変化の変化量が調整されても、ランダムノイズが調整されることが低減されている。このように、動画像に混入したランダムノイズが調整されることを、位相変化の拡散結果に基づいて低減することが可能である。
以上のように、第3実施形態の画像処理装置1bは、変化検出部4bと、信頼度推定部5bとを備える。変化検出部4bは、複数の解像度の輝度画像における位相変化のうちから、予め定められた位相変化を検出する。信頼度推定部5bは、検出された位相変化の信頼度「FAFσ,γ
n(x,y,t)」を推定する。
これによって、画像処理装置1bは、検出した映像内の微小変化のうち「意味のある」微小な位相変化をより精度よく検出することができる。したがって、「意味のある」微小な位相変化の変化量を調整することができる。そのため、動画像の微小な運動変化の変化量を調整する場合に、動画像に混入したランダムノイズが調整されることを低減することが可能である。
第3実施形態における画像処理装置は、第1実施形態の画像処理装置1が実行する色又は輝度の微小変化の変化量を調整する処理と、本実施形態で説明した被写体の特定の微小な運動変化を調整する処理とを並列に実行するように構成されてもよい。このように構成される場合の構成を図19に示す。図19は、第3実施形態における画像処理装置1bbの構成例を示す図である。画像処理装置1bbは、画像入力部2bbと、分解変換部30bbと、変化検出部4bbと、信頼度推定部5bbと、乗算部6bbと、変化量調整部7bbと、画像再構成部8bbと、画像分解部3と、変化検出部4と、信頼度推定部5と、乗算部6と、変化量調整部7とを備える。
画像処理装置1bbは、第1の画像処理及び第2の画像処理を並列に実行する。画像処理装置1bbは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の色又は輝度の微小変化を強調又は減弱する。画像処理装置1bbが実行する第1の画像処理では、画像入力部2bbと画像分解部3と変化検出部4と信頼度推定部5と乗算部6と変化量調整部7と画像再構成部8bbとは、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。
画像処理装置1bbは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、被写体の微小な運動変化を強調又は減弱する。画像処理装置1bbが実行する第2の画像処理では、画像入力部2bbと分解変換部30bbと変化検出部4bbと信頼度推定部5bbと乗算部6bbと変化量調整部7bbと画像再構成部8bbとは、図11に示す同名の機能部と同様の処理を実行する。
画像再構成部8bbは、互いに異なる解像度の複数の画像を、変化量調整部7bbから取得する。画像再構成部8bbは、互いに異なる解像度の複数の画像を合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。画像再構成部8bbは、原解像度の色画像を、画像入力部2bbから取得してもよい。画像再構成部8bbは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成してもよい。
画像再構成部8bbは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像を、変化量調整部7から取得する。画像再構成部8bbは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像とを合成する。例えば、画像再構成部8bbは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像との平均画像を生成する。
(第4実施形態)
第4実施形態では、画像処理装置が、第1実施形態の画像処理装置1が実行する被写体の特定の微小な色又は輝度変化を調整する処理と、第2実施形態の画像処理装置1aが実行する被写体の微小な運動変化を強調又は減弱する処理と、第3実施形態の画像処理装置1bが実行する被写体の微小な運動変化を強調又は減弱する処理とを逐次処理する点が、第1実施形態から第3実施形態と相違する。第4実施形態では、第1実施形態から第3実施形態との相違点を説明する。
図20は、第4実施形態における画像処理装置1cの構成例を示す図である。画像処理装置1cは、動画像に対して所定の画像処理を実行する装置である。画像処理装置1cは、動画像に対して所定の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化及び被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1cは、画像入力部2cと、分解変換部30cと、変化検出部4cと、信頼度推定部5cと、乗算部6cと、変化量調整部7cと、画像再構成部8cと、信頼度推定部51cとを備える。分解変換部30cは、画像分解部3を備える。
第4実施形態では、画像処理装置1cは、第1の画像処理及び第2の画像処理を逐次実行する。すなわち、画像処理装置1cは、動画像に対して第1の画像処理を実行し、更に、動画像に対して第2の画像処理を実行する。第1の画像処理と第2の画像処理との実行順は、逆でもよい。
第1の画像処理では、画像処理装置1cの各機能部は、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。すなわち、画像処理装置1cは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1cは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。第2の画像処理では、位相変化の調整率「α」は0である。
次に、第4実施形態における被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する処理について説明する。
第4実施形態では、画像処理装置1cは、第1の信頼度推定処理及び第2の信頼度推定処理を実行する。すなわち、画像処理装置1aは、動画像に対して第1の信頼度推定処理を実行し、更に、動画像に対して第2の信頼度推定処理を実行する。第1の信頼度推定処理と第2の信頼度推定処理との実行順は、逆でもよい。第1の信頼度推定処理は、信頼度推定部5cにより実行される。一方、第2の信頼度推定処理は、信頼度推定部51cにより実行される。
第1の信頼度推定処理では、信頼度推定部5cは、第2実施形態と同様の手法により微小な位相変化の信頼度を推定する。以下、信頼度推定部5cにより推定される信頼度を第1の信頼度と記載する。
第2の信頼度推定処理では、信頼度推定部51cは、第3実施形態と同様の手法により微小な位相変化の信頼度を推定する。以下、信頼度推定部51cにより推定される信頼度を第2の信頼度と記載する。
乗算部6cは、変化検出部4cから出力された微小位相変化情報と、信頼度推定部5cから出力された第1の信頼度と、信頼度推定部51cから出力された第2の信頼度とを乗算し、乗算結果を変化量調整部7cに出力する。なお、乗算部6cは、入力した第1の信頼度及び第2の信頼度を、重み付け乗算又は重み付け加算してもよい。例えば、乗算部6cは、第1の信頼度及び第2の信頼度のうち処理において重要となる信頼度の重みを、他方の信頼度の重みより大きくして、第1の信頼度及び第2の信頼度の値に重み付けして重み付け乗算又は重み付け加算する。以降の処理は、第1実施形態から第3実施形態と同様であるため説明を省略する。
また、第4実施形態における画像処理装置1cは、色又は輝度の微小変化の変化量を調整する処理と、被写体の特定の微小な運動変化を調整する処理とを並列に実行するように構成されてもよい。このように構成される場合の構成を図21に示す。図21は、第4実施形態における画像処理装置1ccの構成例を示す図である。画像処理装置1ccは、画像入力部2ccと、分解変換部30ccと、変化検出部4ccと、信頼度推定部5ccと、乗算部6ccと、変化量調整部7ccと、画像再構成部8ccと、画像分解部3と、変化検出部4と、信頼度推定部5と、乗算部6と、変化量調整部7と、信頼度推定部51ccとを備える。
画像処理装置1ccは、第1の画像処理及び第2の画像処理を並列に実行する。画像処理装置1ccは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の色又は輝度の微小変化を強調又は減弱する。画像処理装置1ccが実行する第1の画像処理では、画像入力部2ccと画像分解部3と変化検出部4と信頼度推定部5と乗算部6と変化量調整部7と画像再構成部8ccとは、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。
画像処理装置1ccは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、被写体の微小な運動変化を強調又は減弱する。画像処理装置1ccが実行する第2の画像処理では、信頼度推定部5ccが第1の信頼度推定処理により第1の信頼度を推定し、信頼度推定部51ccが第2の信頼度推定処理により第2の信頼度を推定する。そして、画像入力部2ccと分解変換部30ccと変化検出部4ccと信頼度推定部5ccと乗算部6ccと変化量調整部7ccと画像再構成部8ccとは、図20に示す同名の機能部と同様の処理を実行する。
画像再構成部8ccは、互いに異なる解像度の複数の画像を、変化量調整部7ccから取得する。画像再構成部8ccは、互いに異なる解像度の複数の画像を合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。画像再構成部8ccは、原解像度の色画像を、画像入力部2ccから取得してもよい。画像再構成部8ccは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成してもよい。
画像再構成部8ccは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像を、変化量調整部7から取得する。画像再構成部8ccは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像とを合成する。例えば、画像再構成部8ccは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像との平均画像を生成する。
(第5実施形態)
第5実施形態では、画像処理装置が、第1実施形態から第4実施形態における方法と異なる手法で、微小な運動変化を強調又は減弱する点が、第1実施形態から第4実施形態と相違する。第5実施形態では、第1実施形態から第4実施形態との相違点を説明する。
図22は、第5実施形態における画像処理装置1dの構成例を示す図である。画像処理装置1dは、動画像に対して所定の画像処理を実行する装置である。画像処理装置1dは、動画像に対して所定の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化及び被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1dは、画像入力部2dと、分解変換部30dと、変化検出部4dと、信頼度推定部5dと、乗算部6dと、変化量調整部7dと、画像再構成部8dとを備える。分解変換部30dは、画像分解部3と、画像分解部3dと、画像変換部31dとを備える。
第5実施形態では、画像処理装置1dは、第1の画像処理及び第2の画像処理を逐次実行する。すなわち、画像処理装置1dは、動画像に対して第1の画像処理を実行し、更に、動画像に対して第2の画像処理を実行する。第1の画像処理と第2の画像処理との実行順は、逆でもよい。
第1の画像処理では、画像処理装置1dの各機能部は、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。すなわち、画像処理装置1dは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な色又は輝度変化を強調又は減弱する。
画像処理装置1dは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する。第2の画像処理では、位相変化の調整率「α」は0である。
次に、被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する処理について説明する。
図23は、被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する各機能部の構成例を示す図である。画像処理装置1dは、画像入力部2dと、分解変換部30dと、変化検出部4dと、信頼度推定部5dと、乗算部6dと、変化量調整部7dと、画像再構成部8dとを備える。各機能部は、組み合わされて単体の機能部として設けられてもよいし、分割されて複数の機能部として設けられてもよい。
画像入力部2dは、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームを入力とする。画像入力部2dは、動画像の複数のフレームから、輝度画像と色画像とを生成する。画像入力部2dは、画像処理の対象となる原解像度の輝度画像を、分解変換部30dに出力する。画像入力部2dは、画像処理の対象となる原解像度の色画像を、画像再構成部8dに出力する。
分解変換部30d(エッジ画像生成部)は、原解像度の輝度画像を入力とする。分解変換部30dは、互いに異なる解像度のエッジ画像を、原解像度の輝度画像から生成する。エッジ画像は、画像処理対象の画像内における一定周波数以上の空間周波成分(高周波成分)を表す画像である。例えば、エッジ画像では、被写体画像の輪郭(エッジ)が抽出される。分解変換部30dは、画像分解部3dと、画像変換部31dとを備える。
画像分解部3dは、原解像度の輝度画像を入力とする。画像分解部3dは、互いに異なる解像度の輝度画像(以下「多重解像度の輝度画像」という。)を、入力された原解像度の輝度画像から生成する。画像分解部3dは、互いに異なる解像度のエッジ画像(以下「多重解像度のエッジ画像」という。)を、多重解像度の輝度画像から生成する。例えば、画像分解部3dは、互いに異なる解像度のうちの所定解像度の輝度画像同士の差分画像を、多重解像度のエッジ画像として生成する。画像分解部3dは、多重解像度のエッジ画像(解像度方向のエッジ画像)を、解像度ごとに画像変換部31dに出力する。
以下、画素においてエッジに直交している尤もらしい方向の時間的変動を「方向変化」という。方向変化「θ(x,y,t)」は、時刻「t」のエッジ画像内の座標(x,y)の画素ごとに定まる。エッジに直交している尤もらしい方向は、一定量以上の輝度成分によって表現されるエッジが存在するエッジ画像に対するリース変換等の出力として導出される。したがって、方向変化「θ(x,y,t)」は、リース変換の出力である尤もらしい方向θ(x,y)が時刻「t」の動画像のフレームに関して保持された時系列データである。画素にエッジが存在していない場合でも、尤もらしい方向はリース変換等の出力として導出される。以下、方向変化に沿った高周波成分の位相の時系列変化を「位相変化」という。
画像変換部31dは、多重解像度のエッジ画像(解像度方向のエッジ画像)を入力とする。画像変換部31dは、エッジ画像ごとに、時刻「t」のエッジ画像内の座標(x,y)の画素ごとに、方向変化「θ(x,y,t)」に沿って生じている輝度変化を、同じ方向変化「θ(x,y,t)」に沿った輝度情報の位相変化「Φ(x,y,t)」及び振幅変化「A(x,y,t)」に変換する。すなわち、動画像において、方向変化「θ(x,y,t)」と、位相の時系列変化「φ(x,y,t)」と、振幅変化「A(x,y,t)」とが導出される。
例えば、画像変換部31dは、30枚のエッジ画像の時間幅「(-)t」内の時刻t(=15)について、エッジ画像内の座標(10,20)の画素における方向変化「θ(10,20,15)=18.3°」に沿って生じている輝度変化を、同じ方向変化「θ(10,20,15)=18.3°」に沿った輝度情報の位相変化「Φ(10,20,15)=0.4」に変換する。
なお、時系列のエッジ画像における輝度情報の位相変化は、時系列のエッジ画像における画像の運動変化を表す。
画像変換部31dは、多重解像度のエッジ画像における、方向変化に沿った位相変化を表す情報と、方向変化を表す情報(以下「方向変化情報」という。)とを、動画像の時刻「t」のエッジ画像内の画素ごとに、変化検出部4に出力する。第5の実施形態では、方向変化に沿った位相変化を表す情報を位相変化情報とする。
変化検出部4dは、多重解像度のエッジ画像の位相変化情報と方向変化情報とを入力とする。時刻「t」を中心とした時間幅「(-)t」(例えば、単位時間当たり)の各エッジ画像について、変化検出部4dは、方向変化情報「θn(x,y,t)」を、信頼度推定部5dに出力する。
時刻「t」を中心とした時間幅「(-)t」の各エッジ画像について、変化検出部4dは、多重解像度のエッジ画像内の画素における、方向変化に沿った微小な位相変化を検出する。変化検出部4dは、多重解像度のエッジ画像内の画素における、方向変化に沿った微小な位相変化を表す情報を、乗算部6dに出力する。第5の実施形態では、方向変化に沿った微小な位相変化を表す情報を微小位相変化情報とする。
信頼度推定部5dは、時間幅「(-)t」の方向変化情報を入力とする。信頼度推定部5dは、微小な位相変化「Cn(x,y,t)」の信頼度「maskSn」を、方向変化情報に基づいて推定する。ここで「n」は、n番目の解像度を表す。「n=0」番目の解像度は、最も高い解像度を表す。撮像素子の熱雑音等に起因して画像に混入したランダムノイズによって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化の信頼度が、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化の信頼度よりも低くなるように、信頼度推定部5dは信頼度を推定する。信頼度推定部5dは、推定された信頼度「maskSn」を、乗算部6dに出力する。
乗算部6dは、微小位相変化情報と、信頼度とを入力とする。乗算部6dは、微小位相変化情報(微小な位相変化を表す値)と、信頼度推定部5dによって推定された信頼度とを、エッジ画像内の画素ごとに乗算し、乗算された結果を変化量調整部7dに出力する。微小位相変化情報と信頼度とが乗算されることによって、微小位相変化情報と信頼度とが対応付けられる。そのため、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像のピクセル値に生じた微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」が、高精度に検出される。
変化量調整部7dは、乗算部6dが出力した乗算結果(信頼度が乗算された位相変化)を入力とし、乗算結果に対して、ビデオ・マグニフィケーションを実行する。すなわち、変化量調整部7dは、信頼度が乗算された微小な位相変化(運動変化)の変化量を、強調又は減弱によって調整する。調整によって、変化量調整部7dは、微小な運動変化の変化量が調整された輝度画像のエッジ画像(以下「調整エッジ画像」という。)を生成する。変化量調整部7dは、互いに異なる解像度の複数の調整エッジ画像を、画像再構成部8dに出力する。
画像再構成部8d(画像合成部)は、互いに異なる解像度の複数の調整エッジ画像を入力とし、画像を再構成する。画像再構成部8dは、互いに異なる解像度の複数の調整エッジ画像を、変化量調整部7dから取得する。画像再構成部8dは、互いに異なる解像度の複数の調整エッジ画像を合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。
画像再構成部8dは、原解像度の色画像を、画像入力部2dから取得する。画像再構成部8dは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する。画像再構成部8dは、合成後の画像を、ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像として、所定の外部装置に出力する。
次に、被写体の特定の微小な運動変化を強調又は減弱する処理を行う画像処理装置1dの詳細を説明する。
画像入力部2dは、画像処理の対象となる動画像の複数のフレームを入力とする。画像入力部2dは、取得された複数のフレームから、原解像度の輝度画像「I(x,y,t)」と、原解像度の色画像とを生成する。画像入力部2dは、原解像度の輝度画像「I(x,y,t)」を、画像分解部3dに出力する。画像入力部2dは、原解像度の色画像を、画像再構成部8dに出力する。
画像分解部3dは、動画像の複数のフレームの輝度画像を入力とする。画像分解部3dは、原解像度の輝度画像「I(x,y,t)」を、式(23)のように0番目の解像度(最も高い解像度)の輝度画像「I0(x,y,t)」とする。
画像分解部3dは、複数の解像度の輝度画像に対して、空間周波数の帯域を分割する処理(帯域分割処理)を実行する。すなわち、画像分解部3dは、複数の解像度の輝度画像に対して、エッジ検出処理を実行する。エッジ検出処理によって、画像分解部3dは、複数の解像度の輝度画像のエッジ画像(帯域分割画像)を生成する。
エッジ画像を生成する方法は、特定の方法に限定されない。例えば、画像分解部3dは、微分フィルタ又はハイパスフィルタ等の帯域分割フィルタ(エッジフィルタ)を輝度画像に対して用いて、エッジ画像を生成する。例えば、画像分解部3dは、輝度画像に対してウェーブレット変換(オクターブ分割)を実行することによって、エッジ画像を生成してもよい。以下では、画像分解部3dは、エッジ画像の一例として差分画像を生成する。画像分解部3dは、以下のようにダウンサンプリングとガウシアンフィルタとを用いて、差分画像「Ln(x,y,t)」を生成する。
図24は、差分画像の生成の例を示す図である。輝度画像301は、0番目の解像度(最も高い解像度)の輝度画像である。画像分解部3dは、輝度画像301に対してダウンサンプリングを実行することによって、輝度画像302を生成する。画像分解部3dは、輝度画像302に対してアップサンプリングを実行することによって、輝度画像303を生成する。画像分解部3dは、0番目の解像度の輝度画像301及び輝度画像303の差分を導出することによって、0番目の解像度の差分画像304を生成する。
画像分解部3dは、輝度画像302に対してダウンサンプリングを実行することによって、輝度画像305を生成する。画像分解部3dは、輝度画像305に対してアップサンプリングを実行することによって、輝度画像306を生成する。画像分解部3dは、0番目の解像度の輝度画像302及び輝度画像306の差分を導出することによって、1番目の解像度の差分画像307を生成する。このようにして、画像分解部3dは、多重解像度の輝度画像に基づいて、多重解像度のエッジ画像を生成する。
すなわち、画像分解部3dは、(n-1)番目の予め定められた解像度の輝度画像「In-1(x,y,t)」に対して、ダウンサンプリングを実行する。解像度の段階数は、3段階以上であり、例えば8段階である。画像分解部3dは、解像度の段階数が8段階と定められている場合、原解像度の輝度画像に対して7回のダウンサンプリングを実行する。
画像分解部3dは、ダウンサンプリングの結果に対して、ガウシアンフィルタ「Gσ(x,y)」を畳み込む。輝度画像の解像度の段階数は、ガウシアンフィルタのフィルタサイズに応じて定められる。すなわち、輝度画像に定められるブロックの最小サイズは、ガウシアンフィルタのフィルタサイズに応じて定められる。画像分解部3dは、式(24)に示された演算を1番目からn番目までの解像度の輝度画像に対して繰り返すことによって、多重解像度の輝度画像(「I0(x,y,t)」,…,「In(x,y,t)」)を生成する。以下では、数式に示された演算子のうちで「〇」印の中に「×」印を含む演算子は、畳み込み演算子である。
式(24)の右辺は、「Gσ(x,y)」と「downsample(In-1(x,y,z))」との畳み込み演算を表す。「Gσ(x,y)」は、分散「σ2」の2次元のガウシアンフィルタを表す。「downsample(Z)」は、解像度「Z」の画像をダウンサンプル量に基づいて縮小する処理(ダウンサンプリング)を表す。ダウンサンプル量は、分数であり、例えば2分の1である。以下、「n」は、0以上N以下の整数である。「N」は、予め定められた2以上の整数である。このように、画像分解部3dは、縮小する処理が実行された輝度画像に対して、所定の補間処理を実行してもよい。
画像分解部3dは、「n+1」番目の解像度の輝度画像「In+1(x,y,t)」に対してアップサンプリングを実行する。これによって、画像分解部3dは、「n+1」番目の解像度の輝度画像「In+1(x,y,t)」の解像度を、n番目の予め定められた解像度に揃える。すなわち、画像分解部3dは、「n+1」番目の解像度の輝度画像「In+1(x,y,t)」を、「n(=n+1-1)」番目の解像度の輝度画像「upsample(In+1(x,y,t))」にする。「upsample(X)」は、解像度「X」の画像をn番目の解像度に合わせるように拡大する処理(アップサンプリング)を表す。
式(24)に示されたn番目の解像度の輝度画像「In(x,y,t)」と、n番目の解像度の輝度画像「upsample(In+1(x,y,t))」との差分画像「Ln(x,y,t)」(解像度方向の差分画像)は、式(25)のように表される。
画像処理装置1dの各機能部は、n番目(0≦n<N)の解像度の差分画像「Ln(x,y,t)」に対して、所定の画像処理を実行する。
画像変換部31dは、n番目の解像度の差分画像「Ln(x,y,t)」を入力とする。画像変換部31dは、差分画像「Ln(x,y,t)」に含まれた処理領域(x,y)における方向変化に沿って生じている輝度変化を、同じ方向変化における輝度情報の位相変化及び振幅変化に変換する。
画像変換部31dは、例えば、低い(粗い)解像度から高い(細かい)解像度の順に、差分画像における時間方向の位相変化を検出する。すなわち、画像変換部31dは、低い解像度の差分画像において時間方向の位相変化を検出する処理を、高い解像度の差分画像において位相変化を検出する処理をよりも先に実行する。
方向変化に沿って生じている輝度変化を画像変換部31dが位相変化及び振幅変化に変換する方法は、特定の方法に限定されない。以下では、画像変換部31dは、一例としてリース変換によって、方向変化に沿って生じている輝度変化を、同じ方向変化に沿って生じている位相変化及び振幅変化に変換する。
画像変換部31dは、n番目の解像度の差分画像「Ln(x,y,t)」に対して、例えば、フーリエ変換「fft」と逆フーリエ変換「ifft」とを実行する。すなわち、画像変換部31dは、差分画像「Ln(x,y,t)」に対して式(26)から式(31)までのようにリース変換を実行する。
式(26)から式(28)までにおいて、式(29)から式(31)までの関係式が成立している。
ここで、「θn(x,y,t)」は、n番目の解像度の差分画像「Ln(x,y,t)」内の座標(x,y)の画素における方向変化を表す。「Φn(x,y,t)」は、方向変化「θn(x,y,t)」に沿って生じている位相変化を表す。「An(x,y,t)」は、方向変化「θn(x,y,t)」に沿って生じている振幅変化を表す。方向変化「θn(x,y,t)」に沿って生じている位相変化「Φn(x,y,t)」は、式(32)のように表される。画像変換部31dは、方向変化「θn(x,y,t)」に沿って生じている位相変化「Φn(x,y,t)」の情報を、変化検出部4dに出力する。
変化検出部4dは、方向変化「θn(x,y,t)」に沿って生じている位相変化「Φn(x,y,t)」の情報を、入力とする。変化検出部4dは、位相変化「Φn(x,y,t)」に、時系列フィルタ「H(t)」を畳み込む。これによって、変化検出部4dは、位相変化「Φn(x,y,t)」の微小変化(subtle changes)を検出する。時系列フィルタ「H(t)」は、調整対象(強調又は減弱の対象)とされた方向変化に沿った位相変化(例えば、微小な位相変化)に対して周波数応答を持つ時系列フィルタであれば、特定のフィルタに限定されない。時系列フィルタ「H(t)」は、例えば、バンドパスフィルタ(非特許文献1参照)である。
変化検出部4dは、方向変化に沿った位相変化(例えば、微小な位相変化)に対して、時空間フィルタ「J(x,y,t)」を乗算してもよい。乗算によって、変化検出部4dは、n番目の解像度の差分画像「Ln(x,y,t)」における時間及び空間について急峻な位相変化(緩やかでない位相変化)を除去することができる。
時空間フィルタ「J(x,y,t)」は、急峻な位相変化を除去する時空間フィルタであれば、特定のフィルタに限定されない。時空間フィルタ「J(x,y,t)」は、例えば、躍度フィルタ(非特許文献2参照)である。例えば、変化検出部4dは、微小な変化を三次微分して、微小ではない急峻な変化を検出及び正規化する。検出及び正規化の結果は、微小な変化が現れるときには0であり、急峻な変化が現れるときには1である。したがって、検出及び正規化の結果の逆は、微小な変化が現れるときには1であり、急峻な変化が現れるときには0である。変化検出部4dは、検出及び正規化の結果の逆を、躍度フィルタとする。
変化検出部4dは、三次微分と正規化と反転との順で、位相変化に対して演算を実行する。これによって、変化検出部4dは、微小ではない急峻な位相変化のみを除去する躍度フィルタを生成することができる。変化検出部4dは、元の位相変化に躍度フィルタを乗算する。
換言すれば、変化検出部4dは、位相変化に対して、三次微分と正規化の演算とを実行する。これによって、変化検出部4dは、微小な位相変化が差分画像に現れるときには、0の値を持つ演算結果を得る。変化検出部4dは、急峻な位相変化が差分画像に現れるときには、1の値を持つ演算結果を得る。
変化検出部4dは、演算結果を反転することによって、躍度フィルタを生成する。躍度フィルタは、微小な位相変化が差分画像に現れるときには、1の値のフィルタ応答を持つ。躍度フィルタは、急峻な位相変化が差分画像に現れるときには、0の値のフィルタ応答を持つ。変化検出部4dは、元の位相変化に躍度フィルタ「J」を乗算する。微小な位相変化が差分画像に現れる場合、元の位相変化に1の値が乗算されるので、変化検出部4dは、微小な位相変化のみを検出することができる。急峻な位相変化が差分画像に現れる場合、元の位相変化に0の値が乗算されるので、変化検出部4dは、急峻な位相変化を抑制することができる。
緩やかで微小な位相変化「Cn(x,y,t)」は、式(33)のように表される。式(33)に示された演算子「〇」は、乗算(要素積)を表す。
ここで、式(33)に示された微小な位相変化「Cn (x,y,t)」は、意味のある位相の微小変化「^Cn(x,y,t)」と、意味のない微小な位相変化「~Cn (x,y,t)」とを、式(34)のように含む。ここで、意味のない微小な位相変化(運動変化)とは、撮像素子の熱雑音、手振れ、地面の振動等に起因して画像に混入したランダムノイズによって画像のピクセル値に生じた位相変化である。意味のある微小な位相変化(運動変化)とは、ランダムノイズ以外の物理現象(例えば、撮像素子への光の入射)によって画像のピクセル値に生じた位相変化である。
信頼度推定部5dは、方向変化情報を入力とする。信頼度推定部5dは、方向変化「θn(x,y,t)」に基づいて、微小な位相変化「Cn(x,y,t)」の信頼度を推定する。これによって、信頼度推定部5dは、微小な位相変化「Cn(x,y,t)」における、意味のある位相の微小変化「^Cn(x,y,t)」と、意味のない微小な位相変化「~Cn(x,y,t)」とを切り分けることができる。
時刻tを含む時間幅「(-)t」において、意味のある微小な位相変化は、意味のない微小な位相変化と比較して、エッジ画像において限定された空間方向に生じる。このため、座標(x,y)の画素における時系列の方向変化「θn(x,y,(-)t)」の分散値は小さい。
そこで、信頼度推定部5dは、時間幅「(-)t」における時系列の方向変化「θn(x,y,(-)t)」の分散値に基づいて、微小な位相変化の信頼度「maskn(x,y,t)」を、式(35)のように推定する。微小な位相変化の信頼度は、時系列の方向変化の分散値が小さいほど高い。
式(35)において「Norm(X)」は、引数「X」の値を0から1までの範囲に正規化することを表す。正規化の方法は、特定の方法に限定されない。「Var(X)」は、時間幅「(-)t」における引数「X」の分散値を表す。「Gσ」は、Var(θn(x,y,(-)t))を空間的に平滑化する関数を表す。パラメータ「σ」は、空間的な平滑化の強さを表す。パラメータ「γ」は、信頼度を表す。
信頼度「maskn(x,y,t)」では、領域でない座標(x,y)における時系列の方向変化「θn(x,y,(-)t)」の分散値のみが考慮されている。このため、座標(x,y)の画素のピクセル値に瞬間的なノイズが混入した場合、分散値の推定精度が低下する可能性がある。そこで、信頼度推定部5は、座標(x,y)の画素を含む領域について、式(36)及び式(37)のように分散共分散行列を推定する。すなわち、信頼度推定部5dは、座標(x,y)の画素を含む領域における方向変化「θ(x,y,t)」の振る舞いに基づいて、信頼度を推定する。
式(36)及び式(37)において「(-)x」は、座標(x,y)の画素を含む領域を表す。「cov(X)」は、行列「X」の分散共分散行列「D」を生成する関数(次元を拡張する関数)を表す。「d」は、領域内の画素数(サンプル数)を表す。「w」は、領域の水平方向(x軸方向)の長さを表す。「h」は、領域の垂直方向(y軸方向)の長さを表す。
信頼度推定部5dは、分散共分散行列「D」に対して、固有値分解を実行する。信頼度推定部5dは、分散共分散行列「D」の固有値「λ1,…,λd」の平均「(-)λ」に基づいて、式(37)に示されたような座標(x,y)を含む領域における微小な位相変化の信頼度「maskSn(x,y,t)」を、式(38)のように推定する。信頼度「maskSn(x,y,t)」は、座標(x,y)を含む領域「S」における微小な位相変化の信頼度を、0から1までの範囲で表す。
乗算部6dは、式(38)に示された信頼度「maskSn(x,y,t)」と、式(33)に示された「Cn(x,y,t)」とを、式(39)のように乗算する。
なお、乗算部6dは、画素の座標(x,y)における微小な位相変化の信頼度「maskn(x,y,t)」と、式(33)に示された「Cn(x,y,t)」とを、乗算してもよい。
乗算によって、ランダムノイズ以外の物理現象によって画像内の画素のピクセル値に生じた微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」が、高精度に検出される。乗算部6dは、分散値が揃った微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」を検出することができる。
変化量調整部7dは、n番目の解像度の差分画像「Ln(x,y,t)」における緩やかで微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」の情報を、意味のある位相変化として、乗算部6dから取得する。変化量調整部7dは、緩やかで微小な位相変化「^Cn(x,y,t)」に対して、所定の調整率(強調率)「α」を乗算する。すなわち、変化量調整部7dは、式(39)のように高い精度で導出された微小な位相変化に、所定の調整率(強調率)αを、式(40)のように乗算する。変化量調整部7dは、元の位相変化「Φn(x,y,t)」と乗算結果とを加算することによって、時系列のエッジ画像内の画素ごとに定まる方向変化において緩やかで微小な位相変化の変化量が調整された位相変化「^Φn(x,y,t)」を、式(40)のように導出する。
このようにして、変化量調整部7dは、検出された微小な位相変化の変化量を調整する。なお、調整率は、解像度、方向、時刻又は位置ごとに同じでもよいし、異なっていてもよい。
画像再構成部8dは、変化量が調整された位相変化「^Φn(x,y,t)」に基づいて、緩やかで微小な運動変化の変化量が調整されたn番目の解像度の差分画像「^Ln(x,y,t)」を、式(41)のように生成する。すなわち、画像再構成部8は、n番目(0≦n≦N)の解像度の調整差分画像「^Ln(x,y,t)」を、変化量が調整された位相変化「^Φn(x,y,t)」と、振幅変化「An(x,y,t)」とに基づいて、式(41)のように生成する。
画像再構成部8dは、色画像を画像入力部2dから取得する。画像再構成部8dは、式(25)及び式(41)に基づいて、式(42)に示された処理を解像度番号「n」に関して逐次的に実行する。画像再構成部8dは、「n-1」番目の解像度の調整差分画像「^Ln-1(x,y,t)」と、n番目の解像度の輝度画像「^In(x,y,t)」とに基づいて、「n-1」番目の解像度の輝度画像「^In-1(x,y,t)」を、式(42)のように再構成する。
式(42)において、「upsample(X)」は、解像度「X」の画像をn番目の解像度に合わせるように拡大する処理(アップサンプリング)を表す。画像再構成部8dは、式(42)に示された処理を「n」に関して逐次的に実行することによって、原解像度(0番目の解像度)の輝度画像を再構成する。画像再構成部8dは、再構成された原解像度の輝度画像「^I0(x,y,t)」と、原解像度の色画像とを合成する。画像再構成部8dは、合成結果を、ビデオ・マグニフィケーションを用いて最終的に調整された画像として、所定の外部装置に出力する。
画像再構成部8dは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像とを合成する。例えば、画像再構成部8dは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像との平均画像を生成する。
次に、画像処理装置1dの動作例を説明する。
図25は、第5の実施形態における画像処理装置1dの動作例を示すフローチャートである。画像入力部2dは、動画像の複数のフレームから、輝度画像と色画像とを生成する(ステップS401)。画像入力部2dは、原解像度の輝度画像を、分解変換部30dに出力する(ステップS402)。画像入力部2dは、原解像度の色画像を、画像再構成部8dに出力する(ステップS403)。
画像分解部3dは、多重解像度の輝度画像を、原解像度の輝度画像から生成する(ステップS404)。画像分解部3dは、多重解像度のエッジ画像を、多重解像度の輝度画像から生成する(ステップS405)。
画像変換部31dは、時刻tを含む時間幅のエッジ画像内の画素において方向変化に沿って生じている輝度変化を、同じ方向変化に沿って生じている位相変化及び振幅変化に変換する(ステップS406)。画像変換部31dは、多重解像度のエッジ画像の位相変化情報と方向変化情報とを、エッジ画像内の画素ごとに変化検出部4dに出力する(ステップS407)。
変化検出部4dは、エッジ画像内の画素において方向変化に沿って生じている微小な位相変化を検出する(ステップS408)。変化検出部4dは、微小位相変化情報を、乗算部6dに出力する(ステップS409)。変化検出部4dは、方向変化情報を信頼度推定部5dに出力する(ステップS410)。
信頼度推定部5dは、方向変化に沿って生じている微小な位相変化「Cn(x,y,t)」の信頼度「maskSn」を、時系列の方向変化の分散値に基づいて推定する(ステップS411)。乗算部6dは、微小位相変化情報と、推定された信頼度とを乗算する(ステップS412)。変化量調整部7dは、式(39)のように信頼度が乗算された微小な運動変化の変化量を、式(40)のように強調又は減弱によって調整する(ステップS413)。
画像再構成部8dは、互いに異なる解像度の複数の調整エッジ画像に基づいて、原解像度の輝度画像を再構成する(ステップS414)。画像再構成部8dは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成する(ステップS415)。
画像変換部31dは、画像処理装置1dが処理を終了するか否かを、例えばユーザから得られた命令に基づいて判定する(ステップS416)。画像処理装置1dが処理を続ける場合(ステップS416:NO)、画像処理装置1dの各機能部は、ステップS406に処理を戻す。画像処理装置1dが処理を終了する場合(ステップS416:YES)、画像処理装置1dの各機能部は、処理を終了する。
次に、画像の運動変化(位相変化)の変化量が調整された結果の例を説明する。
図26は、動画像のフレームの例を示す図である。図26に示されたフレームには、切り株に斧が降り下ろされた動作(薪割りの動作)が撮像されている。切り株に斧が衝突した時刻以降の時系列のフレームでは、y軸方向に切り株が微小振動する。
図26に示されたフレームは、画素群320と、画素321とを含む。画素群320は、フレーム内の第3部分領域に撮像された切り株画像312において垂直方向(y軸方向)に並ぶ画素である。画素321は、フレーム内の第4部分領域に撮像された壁の画像に含まれている画素である。
動画像のフレームでは、壁の画像の画素321のピクセル値には、ランダムな空間方向の微小な位相変化が、ランダムノイズによって定常的に生じている。切り株に向けてy軸方向に斧が降り下ろされた場合、切り株と斧との衝突に起因して、切り株画像312の画素群320のピクセル値には、主にy軸方向の微小な位相変化が、切り株画像312の振動によって生じる。
図27、図28及び図29は、図30との比較用の画像である。横軸は時間を表す。縦軸は、図26に示された動画像のフレームにおける画素群320の各ピクセル値を表す。
図27は、元画像の画素群320のピクセル値の変化の例を示す図である。図27では、微小な運動変化の変化量が調整されていない。このため、切り株と斧とが衝突した時刻「t1」の前後において、画素群320の各ピクセル値(運動変化)の変化量が小さい。
図28は、加速度法に基づいて運動変化の変化量が調整された画素群320のピクセル値の例を示す図である。図28では、加速度法に基づいて運動変化の変化量が調整され、加速度に基づいてランダムノイズが拡大されている。このため、切り株と斧とが衝突した時刻「t1」以降(破線に囲まれた領域)において、ピクセル値(運動変化)の変化量が大きい。この場合、拡大(強調)されたランダムノイズによって、動画像の品質が低下する。
図29は、躍度法に基づいて運動変化の変化量が調整された画素群320のピクセル値の例を示す図である。図29では、躍度法に基づいて運動変化の変化量が拡大されている。このため、切り株と斧とが衝突した時刻「t1」以降において、ピクセル値(運動変化)の変化量が大きい。
図30は、単位時間当たりの方向変化の分散値に基づいて運動変化の変化量が調整された画素群320のピクセル値の例を示す図である。図30では、分散値に基づいて運動変化の変化量が拡大されている。このため、切り株と斧とが衝突した時刻「t1」以降において、ピクセル値(運動変化)の変化量が大きい。
以上のように、第5実施形態の画像処理装置1dは、変化検出部4dと、信頼度推定部5dとを備える。変化検出部4dは、分解変換部30dが実行する処理を、分解変換部30dの代わりに実行してもよい。変化検出部4dは、画像処理対象の画像内の高周波成分を表すエッジ画像内の画素ごとに定まるエッジに直交している尤もらしい方向の時間的変動である方向変化と、方向変化(尤もらしい方向)に沿った高周波成分の位相の時間的変動である位相変化とを検出する。変化検出部4dは、予め定められた変化量の微小な位相変化を検出してもよい。信頼度推定部5dは、検出された位相変化がノイズに起因する変化ではないことを表す信頼度「maskSn」を、単位時間当たりの方向変化の分散値に基づいて推定する。信頼度推定部5dは、信頼度「maskn」を、単位時間当たりの方向変化の分散値に基づいて推定してもよい。
これによって、動画像の微小な運動変化の変化量を画像処理装置が調整する場合に、動画像に混入したランダムノイズが調整されることを低減することが可能である。
第5実施形態の信頼度推定部5dは、検出された位相変化を示す画素における、方向変化の分散値に基づいて、検出された位相変化の信頼度を推定してもよい。信頼度は、方向変化の分散値が小さいほど高い値となる。信頼度推定部5dは、エッジ画像の画素を含む領域における位相変化に基づいて、画素ごとに信頼度を推定してもよい。
第5実施形態における画像処理装置は、第1実施形態の画像処理装置1が実行する色又は輝度の微小変化の変化量を調整する処理と、本実施形態で説明した被写体の特定の微小な運動変化を調整する処理とを並列に実行するように構成されてもよい。このように構成される場合の構成を図31に示す。図31は、第5実施形態における画像処理装置1ddの構成例を示す図である。画像処理装置1ddは、画像入力部2ddと、分解変換部30ddと、変化検出部4ddと、信頼度推定部5ddと、乗算部6ddと、変化量調整部7ddと、画像再構成部8ddと、画像分解部3と、変化検出部4と、信頼度推定部5と、乗算部6と、変化量調整部7とを備える。
画像処理装置1ddは、第1の画像処理及び第2の画像処理を並列に実行する。画像処理装置1ddは、動画像に対して第1の画像処理を実行することによって、被写体の色又は輝度の微小変化を強調又は減弱する。画像処理装置1ddが実行する第1の画像処理では、画像入力部2ddと画像分解部3と変化検出部4と信頼度推定部5と乗算部6と変化量調整部7と画像再構成部8ddとは、第1実施形態の画像処理装置1の各機能部と同様の処理を実行する。
画像処理装置1ddは、動画像に対して第2の画像処理を実行することによって、被写体の微小な運動変化を強調又は減弱する。画像処理装置1ddが実行する第2の画像処理では、画像入力部2ddと分解変換部30ddと変化検出部4ddと信頼度推定部5ddと乗算部6ddと変化量調整部7ddと画像再構成部8ddとは、図23に示す同名の機能部と同様の処理を実行する。
画像再構成部8ddは、互いに異なる解像度の複数の画像を、変化量調整部7ddから取得する。画像再構成部8ddは、互いに異なる解像度の複数の画像を合成することによって、原解像度の輝度画像を再構成する。画像再構成部8ddは、原解像度の色画像を、画像入力部2ddから取得してもよい。画像再構成部8ddは、再構成された原解像度の輝度画像と、原解像度の色画像とを合成してもよい。
画像再構成部8ddは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像を、変化量調整部7から取得する。画像再構成部8ddは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像とを合成する。例えば、画像再構成部8ddは、色又は輝度変化が強調された原解像度の画像と、再構成された原解像度の輝度画像との平均画像を生成する。
上記の各実施形態は、互いに組み合わされてもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。