以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示される三次元造形装置1は、粉末材料2から三次元の造形物3を製造するいわゆる3Dプリンタである。例えば、三次元造形装置1は、粉末材料2にエネルギビームを照射して粉末材料2を溶融又は焼結させて三次元の造形物(三次元造形物)3を造形する。本実施形態の三次元造形装置1は、敷き均した粉末材料2に対し電子ビームを照射して造形を行うパウダーベッド方式に適用したものである。粉末材料2は、金属の粉末であり、例えばチタン系金属粉末、インコネル粉末、アルミニウム粉末等である。また、粉末材料2は、金属粉末に限定されず、例えば樹脂粉末、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)などの炭素繊維と樹脂とを含む粉末であってもよい。また、粉末材料2は、導電性を有するその他の粉末でもよい。なお、本開示における粉末材料は、導電性を有するものには限定されない。例えばエネルギビームとしてレーザを用いる場合には、粉末材料は導電性を有しなくてもよい。
三次元造形装置1は、駆動部4、コントローラ5、処理部6及びハウジング7を備えている。駆動部4は、造形に要する種々の動作を実現する。例えば、駆動部4は、テーブル8を回転及び昇降させる。駆動部4は、回転ユニット9及び昇降ユニット10を有する。回転ユニット9は、上下方向の回転軸線Cを中心にテーブル8を回転させる回転駆動部として機能する。例えば、回転ユニット9の上端はテーブル8に連結され、回転ユニット9の下端には駆動源(例えばモータ)が取り付けられている。昇降ユニット10は、テーブル8を造形タンク13に対して相対的に昇降させる直線駆動部として機能する。この昇降は、回転ユニット9の回転軸線Cに沿っている。なお、駆動部4は、テーブル8を回転及び昇降させることができる機構であればよく、上述した機構に限定されない。
処理部6は、粉末材料2を処理して造形物3を得る。粉末材料2の処理は、例えば粉末材料2の供給処理及び粉末材料2の造形処理を含む。処理部6は、粉末材料2の予熱処理(予備加熱処理)を含んでもよい。ハウジング7は、複数のコラム11によって支持されている。ハウジング7は、造形空間12を形成するチャンバとして機能する。造形空間12は、粉末材料2を収容し、処理部6による粉末材料2の処理を行うための減圧可能な気密空間である。
造形空間12には、テーブル8と造形タンク13とが配置されている。テーブル8は、造形処理が行われる処理台である。テーブル8は、例えば円板状のものが用いられ、造形物3の原料である粉末材料2が配置される。テーブル8は、その回転軸線Cがハウジング7の中心軸線と重複するように配置されていてもよい。テーブル8には、駆動部4が接続されている。従って、テーブル8は、駆動部4によって、回転と、回転軸線Cに沿った直線移動と、を行う。
図2に示されるように、処理部6は、テーブル8に対し対面するように配置されている。例えば、処理部6は、テーブル8の上方に配置され、テーブル8の造形面(主面又は上面)8aに対面している。処理部6は、例えば、フィーダ14、第1ビーム源15及び第2ビーム源16を備えている。フィーダ14は、粉末材料2の供給処理を行う。第1ビーム源15及び第2ビーム源16は、粉末材料2の造形処理を行う。処理部6は、ヒータ17を備えていてもよい。ヒータ17は、粉末材料2の予熱処理を行う。
フィーダ14は、テーブル8上に粉末材料2を供給する供給部として機能する。例えば、フィーダ14は、図示しない原料タンクと均し部とを含んでもよい。原料タンクは、粉末材料2を貯留すると共にテーブル8上に粉末材料2を供給する。均し部は、テーブル8上の粉末材料2の表面を均す。なお、三次元造形装置1は、均し部に替えて、ローラー部、棒状部材、刷毛部などを有してもよい。
ヒータ17は、テーブル8上に供給された粉末材料2の予備加熱を行う加熱部として機能する。ヒータ17は、エネルギビームが照射される前の粉末材料2に対して予備加熱を行う。例えば、ヒータ17は、テーブル8の上方に配置され、放射熱によって粉末材料2の温度を上昇させる。ヒータ17は、他の方式により加熱するものであってもよく、例えば赤外線ヒータを用いてもよい。ヒータ17は、テーブル8の回転方向において、フィーダ14の下流に配置されている。ヒータ17は、テーブル8の回転方向において、第1ビーム源15及び第2ビーム源16の上流に配置されている。
第1ビーム源15は、電子ビームを出射し、その電子ビームを粉末材料2に照射するビーム出射部として機能する。例えば、第1ビーム源15として、電子銃が用いられる。第1ビーム源15は、カソードとアノードとの間に生じる電位差に応じた電子ビームを発生させ、電界調整により電子ビームを収束させ所望の位置に照射させる。第2ビーム源16は、第1ビーム源15と同様の構成であるので、説明を省略する。
第1ビーム源15及び第2ビーム源16は、テーブル8の径方向において互いに異なる位置に配置されている。例えば、テーブル8の円周8bは、回転軸線Cを中心とする仮想円に相当する。第1ビーム源15は、テーブル8の径方向において第2ビーム源16と比較して回転軸線Cに近い位置に配置されている。第2ビーム源16は、テーブル8の径方向において第1ビーム源15より外側に配置されている。
第1ビーム源15及び第2ビーム源16は、テーブル8の周方向において互いに異なる位置に配置されている。例えば、第1ビーム源15は、テーブル8の回転方向において、第2ビーム源16より上流に配置されている。
平面視において、回転軸線C回りの回転角を設定する。例えば、フィーダ14が配置されている位置を0degと設定する。回転角は右回り(時計回り)に増加するものとする。この場合、第1ビーム源15は、225degの位置に配置されていてもよい。第2ビーム源16は、270degの位置に配置されていてもよい。テーブル8の周方向において第1ビーム源15の位置P15と第2ビーム源16の位置P16との差を示す回転角であるビーム源位相差R1は、例えば45degである。なお、0degの位置は任意の位置でよい。ビーム源位相差R1は、45degに限定されず、その他の値でもよい。また、第1ビーム源15は、テーブル8の回転方向において、第2ビーム源16の上流に配置されているものに限定されず、第2ビーム源16の下流に配置されているものでもよい。
ビーム源位相差R1は、平面視において、直線L15と直線L16との角度に相当する。直線L15は、中心(回転軸線Cの位置)と第1ビーム源15の位置P15とを通る仮想の直線である。第1ビーム源15の位置P15は、例えば第1ビーム源15のビーム照射口の位置としてもよい。直線L16は、中心と第2ビーム源16の位置P16とを通る仮想の直線L16である。第2ビーム源16の位置P16は、例えば第2ビーム源16のビーム照射口の位置としてもよい。
図3に示されるコントローラ5は、三次元造形装置1の装置全体の制御を司る制御部である。コントローラ5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。コントローラ5は、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などを含む。コントローラ5は、演算部及びメモリ28を含む。コントローラ5は、回転ユニット9、昇降ユニット10、フィーダ14、第1ビーム源15、第2ビーム源16、及びヒータ17と電気的に接続されていてもよい。コントローラ5は、各種指令信号を生成できる。メモリ28は、各種制御に必要なデータを保存できる。コントローラ5は、テーブル8の昇降制御及び回転制御、フィーダ14の作動制御、ヒータ17の作動制御、第1ビーム源15の作動制御、第2ビーム源16の作動制御などを行う。
コントローラ5は、回転ユニット9に対し制御信号を出力し、回転ユニット9の動作を通じてテーブル8の回転制御を行う。例えば、コントローラ5は、回転ユニット9を作動させて、回転軸線Cを中心にテーブル8を回転させる。回転軸線Cは、上下方向に沿って設定され、例えば鉛直方向に沿って設定される。
コントローラ5は、平面視において右回り(時計回り)に一定の回転速度でテーブル8を回転させることができる。この回転速度は、例えば予備加熱及び造形における粉末材料2などの温度上昇速度に応じて決定してもよい。テーブル8の回転速度は、後述する照射範囲及び分割角度に応じて決定してもよい。
コントローラ5は、昇降ユニット10に対し制御信号を出力し、昇降ユニット10の動作を通じてテーブル8の昇降制御を行う。例えば、コントローラ5は、造形の初期においてテーブル8を造形タンク13の上部の位置に配置させ、造形物3の造形が進むに連れてテーブル8を降下させる。テーブル8の降下速度は、例えばテーブル8の回転速度に応じて決定してもよい。
コントローラ5は、フィーダ14に対し制御信号を出力し、粉末材料2の供給制御を行う。コントローラ5は、フィーダ14を作動させて、テーブル8上に粉末材料2を供給する。テーブル8上の粉末材料2の表面層は、テーブル8の回転に伴ってリコータに当接して敷き均される。
コントローラ5は、ヒータ17に対し制御信号を出力し、粉末材料2の予熱制御を行う。粉末材料2の加熱量は、粉末材料2の材質や種類、テーブル8の回転速度などに応じて設定してもよい。
コントローラ5は、第1ビーム源制御部21、第2ビーム源制御部22、二次元断面データ取得部23、担当領域設定部24、分割角度設定部25、ビーム源位相差設定部26、分割線位相差設定部27を含んでもよい。
第1ビーム源制御部21は、第1ビーム源15に制御信号を送信して、電子ビームの照射時期、照射位置等の制御(照射制御)を行う。第1ビーム源制御部21は、粉末材料2を溶融又は焼結させる際の電子ビームの照射制御を行う。第1ビーム源制御部21は、後述する第1担当領域31内の粉末材料2の照射位置に電子ビームを照射する。
第2ビーム源制御部22は、第2ビーム源16に制御信号を送信して、電子ビームの照射時期、照射位置等の制御を行う。第2ビーム源制御部22は、粉末材料2を溶融又は焼結させる際の電子ビームの照射制御を行う。第2ビーム源制御部22は、後述する第2担当領域32内の粉末材料2の照射位置に電子ビームを照射する。
二次元断面データ取得部23は、図4(a)に示すように、造形物3の水平断面のスライスデータD1を取得する。二次元断面データ取得部23は、造形物3の三次元CAD(Computer-Aided Design)データに基づいて、造形物3のスライスデータD1を生成する。図4(a)では、造形物3が円柱体である場合について図示している。造形物3の形状は、円柱体に限定されず、その他の形状でもよい。二次元断面データ取得部23は、造形物3の上下の位置に応じて複数のスライスデータD1を生成する。1層分のスライスデータD1は、1層分の粉末材料2に対応している。
担当領域設定部24は、図4(b)に示すように、第1担当領域31及び第2担当領域32を設定する。図4(b)では、1層分のスライスデータD1に含まれる造形物3の水平断面を回転軸線Cが延在する方向から示している。第1担当領域31は、第1ビーム源15によって担当される領域である。第2担当領域32は、第2ビーム源16によって担当される領域である。担当領域設定部24は、スライスデータD1に対して、径方向において異なる位置に配置された第1担当領域31及び第2担当領域32を設定する。
第1担当領域31は、例えば回転軸線Cを中心とする円形の領域でもよい。第1担当領域31は、回転軸線Cを中心とする円の周方向に連続する領域を含んでもよい。第2担当領域32は、例えば径方向において第1担当領域31の外側に配置され、第1担当領域31を取り囲むように連続するリング状の領域でもよい。第2担当領域32は、例えば回転軸線Cを中心とする円の周方向に連続する領域でもよい。第1担当領域31の円形の領域の直径は、例えば第2担当領域32の外径の半分の長さでもよい。第1担当領域31及び第2担当領域32の形状は、その他の形状でもよい。担当領域設定部24は、複数のスライスデータD1に対して、第1担当領域31及び第2担当領域32を設定する。
分割角度設定部25は、図5に示すように、周方向において第1担当領域31を複数の第1分割領域33に等分する第1分割角度θ1を設定する。分割角度設定部25は、周方向において第2担当領域32を複数の第2分割領域34に等分する第2分割角度θ2を設定する。第1分割角度θ1及び第2分割角度θ2は、回転軸線Cを中心とする回転角である。第1分割角度θ1及び第2分割角度θ2は同じ値でもよい。第1分割角度θ1及び第2分割角度θ2は、例えば90degでもよい。第1分割角度θ1は、第1担当領域31を例えば4等分する角度である。第2分割角度θ2は、第2担当領域を例えば4等分する角度である。
分割角度設定部25は、第1分割角度θ1を設定して、複数の第1分割領域33を設定することができる。第1分割領域33は、テーブル8の回転軸線Cを中心として、第1担当領域31を周方向に分割して生成される。第1分割領域33は、扇状の領域に対するデータとして生成される。分割角度設定部25は、第1分割角度θ1に応じて、回転軸線Cから径方向に延在する複数の第1分割線L1を設定することができる。第1分割線L1は、周方向において第1分割領域33の境界を示している。第1担当領域31において、複数の第1分割線L1によって区切られた領域が、第1分割領域33である。
分割角度設定部25は、第2分割角度θ2を設定して、複数の第2分割領域34を設定することができる。第2分割領域34は、テーブル8の回転軸線Cを中心として、第2担当領域32を周方向に分割して生成される。第2分割領域34は、扇状の領域に対するデータとして生成される。分割角度設定部25は、第2分割角度θ2に応じて、回転軸線Cから径方向に延在する複数の第2分割線L2を設定することができる。第2分割線L2は、周方向において第2分割領域34の境界を示している。第2担当領域32において、複数の第2分割線L2によって区切られた領域が、第2分割領域34である。図5に示す状態では、第1分割線L1及び第2分割線L2は、周方向において同じ位置に配置されている。図5では、後述する分割線位相差R2が設定される前の状態を示している。
ビーム源位相差設定部26は、図3に示されるように、ビーム源位相差R1を設定する。ビーム源位相差設定部26は、例えばメモリ28に記憶されている第1ビーム源15の位置P1、第2ビーム源16の位置P2に関するデータを読み取り、ビーム源位相差R1を取得してもよい。ビーム源位相差R1は、テーブル8の周方向における第1ビーム源15の位置P1と第2ビーム源16の位置P2との差を示す回転角である。ビーム源位相差R1は、例えば45degである。
分割線位相差設定部27は、図6に示されるように、ビーム源位相差R1に基づいて分割線位相差R2を設定する。分割線位相差R2は、テーブル8の周方向において、第1分割線L1と第2分割線L2との差を示す回転角である。担当領域設定部24は、図7に示されるように、第1ビーム源15による第1照射範囲35と第2ビーム源16による第2照射範囲36とが重なる領域内に、径方向における第1担当領域31と第2担当領域32との境界L3を設定することができる。第1照射範囲35は、第1ビーム源15から出射された電子ビームが到達可能な範囲である。第2照射範囲36は、第2ビーム源16から出射された電子ビームが到達可能な範囲である。第1照射範囲35と第2照射範囲36とが重なる領域は、第1ビーム源15から出射された電子ビームが到達可能であり、且つ、第2ビーム源16から出射された電子ビームが到達可能な範囲である。
分割角度設定部25は、図8(a)に示されるように、第2ビーム源16による第2照射範囲36内に2つ以上の第2分割領域34が含まれるように、第2分割角度θ2を設定することができる。また、分割角度設定部25は、図8(b)に示されるように、第1ビーム源15による第1照射範囲35内に2つ以上の第1分割領域33が含まれるように、第1分割角度を設定することができる。
コントローラ5は、設定した各種データをメモリ28に記憶することができる。コントローラ5は、設定した各種データとして、スライスデータD1、第1担当領域31に関するデータ、第2担当領域32に関するデータ、第1分割領域33に関するデータ、第2分割領域34に関するデータ、第1分割角度θ1に関するデータ、第2分割角度θ2に関するデータ、第1分割線L1に関するデータ、第2分割線L2に関するデータ、分割線位相差R2に関するデータをメモリ28に記憶することができる。
コントローラ5は、複数の第1分割領域33ごとに電子ビームの照射位置を設定することができる。コントローラ5は、複数の第2分割領域34ごとに電子ビームの照射位置を設定することができる。
コントローラ5は、図9(a)に示されるように、第1分割領域33ごとに設定される軌道データT1に沿って所定の間隔で配置される照射点として照射位置を設定することができる。コントローラ5は、図9(a)に示すように、軌道データT1として、一定の方向に沿って並んだ軌道のデータを生成することができる。電子ビームの照射位置は、電子ビームを照射するための目標位置である。照射位置の設定は、現実の照射位置に対応して設定してもよいし、電子ビームの照射制御の指令位置として設定してもよい。
図9(a)は、軌道データT1に沿って照射点として設定される照射位置を示している。図9(a)の例においては、照射位置のデータは、軌道データT1と点データ群により構成されている。つまり、図9(a)において、軌道データT1上に照射点が所定の間隔で設定され、この照射点が電子ビームの照射位置として設定される。軌道データT1及び軌道データT1上の照射点は、第1分割領域33内の照射位置を示している。
なお、第1分割領域33に対する照射位置の設定は、このようなものに限定されるものではない。すなわち、第1分割領域33に対する照射位置の設定は、軌道データT1及び点データ群を設定するものに限られず、第1分割領域33に対し電子ビームを所望の位置に照射できれば、その他の設定態様であってもよい。例えば、照射位置の設定として、一つの軌道データT1に対し一つの照射点を設定してもよい。また、照射位置の設定として、軌道データT1の設定のみを行い、軌道データT1に沿って電子ビームを走査して照射を行うものであってもよい。
コントローラ5は、第2分割領域34ごとに設定される軌道データT2に沿って所定の間隔で配置される照射点として照射位置を設定することができる。コントローラ5は、図9(b)に示すように、軌道データT2として、一定の方向に沿って並んだ軌道のデータを生成することができる。電子ビームの照射位置は、電子ビームを照射するための目標位置である。照射位置の設定は、現実の照射位置に対応して設定してもよいし、電子ビームの照射制御の指令位置として設定してもよい。
図9(b)は、軌道データT2に沿って照射点として設定される照射位置を示している。図9(b)の例においては、照射位置のデータは、軌道データT2と点データ群により構成されている。つまり、図9(b)において、軌道データT2上に照射点が所定の間隔で設定され、この照射点が電子ビームの照射位置として設定される。軌道データT2及び軌道データT2上の照射点は、第2分割領域34内の照射位置を示している。
なお、第2分割領域34に対する照射位置の設定は、このようなものに限定されるものではない。すなわち、第2分割領域34に対する照射位置の設定は、軌道データT2及び点データ群を設定するものに限られず、第2分割領域34に対し電子ビームを所望の位置に照射できれば、その他の設定態様であってもよい。例えば、照射位置の設定として、一つの軌道データT2に対し一つの照射点を設定してもよい。また、照射位置の設定として、軌道データT2の設定のみを行い、軌道データT2に沿って電子ビームを走査して照射を行うものであってもよい。
また、造形物3を造形するための軌道データとしては、テーブル8の回転に応じて座標変換した軌道データを設定してもよい。すなわち、第1分割領域33及び第2分割領域34は、テーブル8の回転により移動するため、コントローラ5は、テーブル8の回転速度に応じて座標変換を行って軌道データを生成してもよい。このとき、周方向に分割した第1分割領域33及び第2分割領域34を採用することにより、軌道データの計算又は設定が容易となる。なお、この軌道データの生成及び記憶は、造形前に予め行ってもよいし、造形中に行ってもよい。造形中に軌道データの生成を行う場合には、造形時において造形の中断を生じたときでも造形の再開が円滑に行えるというメリットがある。
次に、図10を参照して、コントローラ5における処理手順について説明する。まず、コントローラ5は、データの読み込み処理を実行する(ステップS1)。コントローラ5は、造形物3の三次元CADデータを読み込む。コントローラ5は、例えば記憶媒体に保存されている三次元CADデータを読み込むことができる。
次に、二次元断面データ取得部23は、二次元断面データを取得する(ステップS2)。二次元断面データ取得部23は、三次元CADデータから二次元断面データを生成することができる。三次元CADデータは、二次元断面データを含んでもよい。
担当領域設定部24は、第n層について、第1担当領域31及び第2担当領域32を設定する(ステップS3)。なお、第n層の「n」は自然数である。例えば、上下方向において、上から順に、第1層、第2層、第3層、…とすることができる。担当領域設定部24は、予め決定されている第1担当領域31及び第2担当領域32を適用してもよい。担当領域設定部24は、第1担当領域31及び第2担当領域32を算出してもよい。担当領域設定部24は、第1担当領域31及び第2担当領域32の位置、大きさ、範囲等を設定することができる。
次に、分割角度設定部25は、第1分割角度θ1及び第2分割角度θ2を設定する(ステップS4)。分割角度設定部25は、例えば、第2照射範囲36内に2つ以上の第2分割領域37が含まれるように、第2分割角度θ2を設定することができる。分割角度設定部25は、第2担当領域32を周方向に例えば8等分する角度(45deg)を第2分割角度θ2として設定する。また、分割角度設定部25は、第1照射範囲35内に2つ以上の第1分割領域33が含まれるように、第1分割角度θ1を設定することができる。なお、第1分割角度θ1及び第2分割角度θ2は、周方向に2等分する角度(180deg)でもよく、3等分する角度(120deg)でもよく、その他の角度でもよい。
次に、ビーム源位相差設定部26は、例えばメモリ28に記憶されている第1ビーム源15の位置P1、第2ビーム源16の位置P2に関するデータを読み取り、ビーム源位相差R1を設定する。ビーム源位相差設定部26は、ビーム源位相差R1を例えば45degと設定する。
次に、分割線位相差設定部27は、ビーム源位相差R1に基づいて、分割線位相差R2を設定する(ステップS6)。分割線位相差設定部27は、ビーム源位相差R1を分割線位相差R2として設定する。これにより、図6に示されるように、第1担当領域31、第2担当領域32、第1分割領域33、第2分割領域34、第1分割線L1、第2分割線L2の位置等が設定される。コントローラ5は、粉末材料2の全ての層について、第1担当領域31、第2担当領域32、第1分割領域33、第2分割領域34、第1分割線L1、第2分割線L2の位置等を設定することができる。コントローラ5は、これらの位置に関するデータをメモリ28に保存できる。コントローラ5は、複数の第1分割領域33ごとに、照射位置を設定すると共に、複数の第2分割領域34ごとに、照射位置を設定する。
次に、三次元造形装置1における造形の際の動作について説明する。図1において、コントローラ5は、昇降ユニット10を制御して、テーブル8を上方へ移動させる。テーブル8は、上方へ移動させられ造形タンク13の上部の位置に配置される。
コントローラ5は、回転ユニット9を制御して、テーブル8を回転させる。テーブル8は、回転軸線Cを中心に回転する。コントローラ5は、フィーダ14を制御して、テーブル8上に粉末材料2を供給する。テーブル8上の粉末材料2はリコータによって均される。
テーブル8上の粉末材料2は、テーブル8と共に回転する。フィーダ14によって供給された粉末材料2は、テーブル8の回転に伴って移動して、ヒータ17の下方の領域内に進入する。ヒータ17は、下方に配置された粉末材料2を予備加熱する。粉末材料2は、テーブル8の回転に伴って移動しながら加熱される。
ヒータ17の下方の領域を通過した粉末材料2は、テーブル8と共に回転する。ヒータ17によって予備加熱された粉末材料2は、テーブル8の回転に伴って移動して、テーブル8の周方向において、第1ビーム源15又は第2ビーム源16に接近する。
第1ビーム源15は、第1照射範囲35内に存在する粉末材料2に対して電子ビームを照射することができる。第2ビーム源16は、第2照射範囲36内に存在する粉末材料2に対して電子ビームを照射することができる。
具体的には、第1ビーム源15は、第1照射範囲35内に存在する第1分割領域33ごとに、電子ビームを照射する。第2ビーム源16は、第2照射範囲36内に存在する第2分割領域34ごとに、電子ビームを照射する。複数の第1分割領域33及び第2分割領域34は、テーブル8の回転に伴って回転軸線Cを中心として回転移動する。第1分割領域33の境界である第1分割線L1及び第2分割領域34の境界である第2分割線L2は、分割線位相差R2を維持したまま移動する。
ここで、分割線位相差R2は、ビーム源位相差R1と同じ値であるので、第1分割線L1が第1ビーム源15の位置に到達すると、同じタイミングで、第2分割線L2が第2ビーム源16の位置に到達することになる。換言すると、一つの第1分割領域33から隣の第1分割領域33に移行するタイミングと、一つの第2分割領域34から隣の第2分割領域34に移行するタイミングとを合わせることができる。これにより、一つ目の第1分割領域33内の粉末材料2に対する電子ビームの照射終了と、一つ目の第2分割領域34内の粉末材料2に対する電子ビームの照射終了とを、合わせることができる。すなわち、二つ目の第1分割領域33内の粉末材料2に対する電子ビームの照射開始と、二つ目の第2分割領域34内の粉末材料2に対する電子ビームの照射開始とを、合わせることができる。
例えば、テーブル8の1周において、4つの第1分割領域33に対する電子ビームの照射開始から照射終了までのタイミングと、4つの第2分割領域34に対する電子ビームの照射開始から照射終了までのタイミングとを合わせることができる。
第1ビーム源制御部21は、第1ビーム源15を制御して、第1分割領域33内の粉末材料2に対して電子ビームを照射する。第2ビーム源制御部22は、第2ビーム源16を制御して、第2分割領域34内の粉末材料2に対して電子ビームを照射する。これにより、粉末材料2が溶融又は焼結され、造形物3が造形されていく。
テーブル8は、造形物3の造形が進むに連れて降下される。すなわち、コントローラ5から昇降ユニット10に制御信号が出力され、昇降ユニット10の作動によりテーブル8が回転軸線Cに沿って降下する。このテーブル8の降下は、テーブル8の回転と同期させてもよいが、完全には同期させなくてもよい。
そして、全ての層について造形が完了したら、造形物3の造形が完了する。
この三次元造形装置1では、第1ビーム源15による照射開始と、第2ビーム源16による照射開始とのずれを抑制して、造形時間が延長するおそれを低減することができる。三次元造形装置1では、ビーム源位相差R1と、分割線位相差R2とを一致させることができるので、第1ビーム源15による照射開始と、第2ビーム源16による照射開始とのずれを精度良く抑制して、造形時間が延長するおそれを確実に低減することができる。第1ビーム源15による第1分割領域33に対する電子ビームの照射終了時期と、第2ビーム源16による第2分割領域34に対する電子ビーム照射終了時期とを合わせることができる。これにより、一方のビーム源による電子ビームの照射が終了した後に、他方のビーム源による電子ビームの照射終了を待つことによる造形時間の損失を抑制することができる。その結果、効率良く造形物3の造形を行うことができる。
担当領域設定部24は、第1ビーム源15による第1照射範囲35と第2ビーム源16による第2照射範囲36とが重なる領域内に、周方向における第1担当領域31と第2担当領域32との境界L3を設定することができる。第1ビーム源15及び第2ビーム源16の両方から電子ビームを照射可能な位置に、第1担当領域31と第2担当領域32との境界L3を配置することができる。第1担当領域31と第2担当領域32との間に、電子ビームを照射できない領域が存在することを防止することができる。
分割線位相差設定部27は、分割線位相差R2として、ビーム源位相差R1を設定することができる。これにより、ビーム源位相差R1と、分割線位相差R2とを一致させることができる。三次元造形装置1は、第1ビーム源15による照射開始と、第2ビーム源16による照射開始とのずれを精度良く抑制して、造形時間が延長するおそれを確実に低減することができる。
分割角度設定部25は、第2ビーム源16による第2照射範囲36内に2つ以上の第2分割領域37が含まれるように、第2分割角度θ2を設定することができる。この構成によれば、一方の第2分割領域37の造形終了時に、他方の第2分割領域37を第2照射範囲36に含ませることが可能である。分割角度設定部25は、第1ビーム源15による第1照射範囲35内に2つ以上の第1分割領域33が含まれるように、第1分割角度θ1を設定することができる。この構成によれば、一方の第1分割領域33の造形終了時に、他方の第1分割領域33を第1照射範囲35に含ませることが可能である。
次に、図11を参照して、第2実施形態に係る三次元造形装置1の第1ビーム源及び第2ビーム源の配置について説明する。第2実施形態に係る三次元造形装置1が、第1実施形態の三次元造形装置1と異なる点は、複数の第1ビーム源15A,15Bと、複数の第2ビーム源16A,16Bとを備える点である。
複数の第1ビーム源15A,15Bは、回転軸線Cを中心とする仮想円の径方向において同じ位置に配置されている。第1ビーム源15A,15Bは、回転軸線Cを中心とする仮想円の周方向において180deg異なる位置に配置されている。
複数の第2ビーム源16A,16Bは、回転軸線Cを中心とする仮想円の径方向において同じ位置に配置されている。第2ビーム源16A,16Bは、回転軸線Cを中心とする仮想円の周方向において180deg異なる位置に配置されている。
第1ビーム源15Aの位置と、第2ビーム源16Aの位置との差を示すビーム源位相差R1は、例えば45degである。第1ビーム源15Bと、第2ビーム源16Bとの差を示すビーム源位相差R1は、例えば45degである。この場合において、ビーム源位相差設定部26は、分割線位相差R2をビーム源位相差R1と同じ値であり、例えば45degに設定することができる。このような第2実施形態に係る三次元造形装置1においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
次に、図12を参照して、第1変形例に係る第2分割領域38について説明する。第1変形例に係る第2分割領域38の第2分割角度θ3は、第1分割領域33の第1分割角度θ1の半分となっている。図12において、第1分割角度θ1は例えば90degであり、第2分割角度θ3は例えば45degである。分割角度設定部25は、第1分割角度θ1を第2分割角度θ3の2倍(偶数倍)の値に設定することができる。第1担当領域31は、4つの第1分割領域33を含み、第2担当領域32は、8つの第2分割領域38を含む。この場合において、ビーム源位相差設定部26は、分割線位相差R2をビーム源位相差R1と同じ値であり、例えば45degに設定することができる。このような第1変形例に係る三次元造形装置1においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
次に、図13を参照して、第2変形例に係る造形物40、第1分割領域33及び第2分割領域34について説明する。造形物40の水平断面は例えば星形を成している。第1分割領域33及び第2分割領域34は、第1実施形態と同じである。第1変形例及び第2変形例においても第1照射範囲内に複数の第1分割領域が含まれ、第2照射領域内に複数の第2分割領域が含まれる。
図14(a)に示されるように、第1分割領域33ごとに電子ビームが照射されて、第1分割領域33内の粉末材料2が溶融又は焼結される。これにより、第1分割領域33内の造形物40の部分41が造形される。テーブル8の回転に伴って、周方向に隣接する第1分割領域33ごとに、造形物40の部分が順次造形される。
図14(b)に示されるように、第2分割領域34ごとに電子ビームが照射されて、第2分割領域34内の粉末材料2が溶融又は焼結される。これにより、第2分割領域34内の造形物40の部分42が造形される。テーブル8の回転に伴って、周方向に隣接する第2分割領域34ごとに、造形物40の部分が順次造形される。三次元造形装置1では、第1分割領域33ごとに電子ビームの照射を行うと共に、第2分割領域34ごとに電子ビームの照射を行うことができる。この場合においても、分割線位相差R2が設定されている。これにより、第1ビーム源15による照射開始と、第2ビーム源16による電子ビームの照射開始までのずれを抑制して、造形時間の延長のおそれを低減することができる。
図15は、第3実施形態に係る三次元造形装置の第1ビーム源及び第2ビーム源の配置を示す平面図である。図15に示されるように、三次元造形装置の第1ビーム源15は、テーブル8の回転方向において、第2ビーム源16よりも下流に配置されていてもよい。造形物における外周側の部分が先に造形される。つまり、内周部分より前に外周部分の温度が上昇する。その結果、外周部分の温度が高温に保たれる時間が長くなるので、造形物の温度低下を抑制しやすい。
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
上述した実施形態では、エネルギビームとして電子ビームを用いて造形物3を造形する場合について説明したが、電子ビーム以外のエネルギビームを用いて造形を行うものであってもよい。例えば、イオンビーム、レーザビーム、紫外線などを照射して造形物3を造形するものであってもよい。また、パウダーベッド方式以外の方式で造形物3を造形するものであってもよい。
上述した実施形態では、第1ビーム源15及び第2ビーム源16を備える構成について説明しているが、三次元造形装置1は3つ以上のビーム源を備える構成でもよい。例えば、テーブル8の径方向において、第2ビーム源16の外側に配置された第3のビーム源を備える三次元造形装置でもよい。
上述した実施形態では、分割線位相差R2として、ビーム源位相差R1を設定しているが、分割線位相差R2として、ビーム源位相差R1と異なる値を設定してもよい。例えば、第1ビーム源15の設置位置及び第2ビーム源16の設置位置の誤差を考慮して、ビーム源位相差R1に基づいて、分割線位相差R2を設定してもよい。
上述した実施形態では、図7に示されるように、第1照射範囲35と第2照射範囲36とが重なる領域内に、第1担当領域31と32第2担当領域との境界L3が設定されているが、境界L3は、第1照射範囲35と第2照射範囲36とが重なる領域の外に配置されていてもよい。
上述した実施形態では、第1分割線L1及び第2分割線L2は直線として説明しているが、第1分割線L1及び第2分割線L2は、湾曲部及び屈曲部を含んでもよい。