以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、GTCC(ガスタービンコンバインドサイクル発電システム)1を示す概略構成図である。図1に示されるように、GTCC1は、発電装置2と、発電装置3と、排熱回収ボイラー4と、発電装置5と、を有している。
発電装置2は、燃焼器21と、GT(第1ガスタービン)22と、空気圧縮機23と、発電機24と、を有している。燃焼器21は、気体燃料を燃料として高温の燃焼ガスを生成し、生成した燃焼ガスをGT22へ供給する。気体燃料は、後述するパーム農園で収穫された果実を原料として製造されたCO2排出ゼロ評価(CO2を排出しないと評価されたCO2フリー)の燃料である。GT22は、当該燃焼ガスの作用によって回転して動力を取り出す。つまり、GT22は、気体燃料を利用して稼働する。空気圧縮機23及び発電機24は、GT22に連結されている。空気圧縮機23は、GT22の回転にしたがって回転し、空気を圧縮して燃焼器21へ供給する。発電機24は、GT22の回転にしたがって回転し、発電する。
発電装置3は、燃焼器31と、GT(第2ガスタービン)32と、空気圧縮機33と、発電機34と、を有している。燃焼器31は、液体燃料を燃料として高温の燃焼ガスを生成し、生成した燃焼ガスをGT32へ供給する。液体燃料は、後述するパーム農園で収穫された果実を原料として製造されたCO2排出ゼロ評価の燃料である。GT32は、当該燃焼ガスの作用によって回転して動力を取り出す。つまり、GT32は、液体燃料を利用して稼働する。空気圧縮機33及び発電機34は、GT32に連結されている。空気圧縮機33は、GT32の回転にしたがって回転し、空気を圧縮して燃焼器31へ供給する。発電機34は、GT32の回転にしたがって回転し、発電する。
排熱回収ボイラー4は、密閉構造を有する。排熱回収ボイラー4は、熱交換器41と、脱硝触媒42と、センサー43と、センサー44と、凝縮水回収部45と、を有している。排熱回収ボイラー4は、排ガス中の水蒸気の潜熱を回収することにより排ガスの温度を大気温度まで下げると共に、水蒸気の潜熱の回収により発生した水を回収する。
熱交換器41は、筐体46内に配置されている。熱交換器41は、GT22及びGT32から排気される排ガスの熱を回収する。熱交換器41は、水(ここでは、クリーンな水)又は水蒸気を熱媒体として熱交換を行う。熱交換器41で得られた高圧蒸気は、後述するST51へ供給される。GT22及びGT32からの排ガスは、排熱回収ボイラー4を通過して熱交換された後、大気へ排気される。熱交換器41は、排ガス中の水蒸気の潜熱を回収することにより、筐体46の出口における排ガスの温度を調整する。熱交換器41は、排ガスの温度を十分に熱交換することで外気温にまで下げることができる。これが図2のS-GTCC(O1)である。図2のS-GTCC(O2)は排ガス温度を50℃程度まで排熱を回収することで排ガスを大気中に拡散させるための大型の天然ガス・LNGを燃料とする場合に適用する。
脱硝触媒42は、筐体46内に配置されている。脱硝触媒42は、発電装置2及び発電装置3からの排ガス中のNOxを除去する。脱硝触媒42は、選択接触還元法(SCR法)の乾式脱硝触媒である。脱硝触媒42は、ハニカム構造を有している。脱硝触媒42は、例えば、TiO2担持の五酸化バナジウム(V2O5)又はTiO2担持の酸化銅(CuO)により形成されている。脱硝触媒42では、脱硝反応に十分な表面積が確保されている。
センサー43は、脱硝触媒42の上流側に設けられている。センサー44は、脱硝触媒42の下流側に設けられている。センサー43及びセンサー44は、排ガス中のNOx濃度を連続測定する。センサー43及びセンサー44のそれぞれとしては、例えば、赤外線分析計を用いてもよいし、バッチ式の分析計を用いてもよい。センサー43及びセンサー44のそれぞれとしては、例えば、広く普及している汎用のガス測定器を用いてもよい。
凝縮水回収部45は、筐体46内において熱交換器41による潜熱の回収により発生した凝縮水を、回収して溜める。凝縮水回収部45としては、特に限定されず、種々の公知の構成を用いることができる。
発電装置5は、ST(蒸気タービン)51と、発電機52と、を有している。ST51は、熱交換器41から供給される高圧蒸気の作用によって回転して動力を取り出す。つまり、ST51は、排熱回収ボイラー4によって回収された熱を利用して稼働する。発電機52は、ST51に連結されている。発電機52は、ST51の回転にしたがって回転し、発電する。
図2は、比較例のS-GTCC(図示O2)の排熱量を100とした場合における、S-GTCC1(図示O1)、従来のGTCC、火力発電機のシステム及び原子力発電機のシステムのそれぞれの相対的な排熱量を示す図である。図2に示されるように、GTCCとしては3種類がある。S-GTCC1の排熱量は、約20%程度である。従来のGTCCの排熱量は、約200%程度である。石炭や石油を燃料とする蒸気タービン(ST)による火力発電機のシステムの排熱量は、約400%程度である。原子力発電機のシステムの排熱量は、約550%程度である。このように、複数の発電方式のうち、S-GTCC1のエネルギー効率がもっともよい。
図3は、自立型且つ地域分散型の電力製造供給システム(以下、「電力供給システム」という)10を示す概略図である。電力供給システム10は、複数のパーム農園(プランテーション)11で利用されている。パーム農園11は、アブラヤシを栽培する農園である。電力供給システム10は、複数のパーム農園11のそれぞれに配置された複数のGTCC1と、送電網12と、を備えている。それぞれのGTCC1は、当該GTCC1が配置されたパーム農園11で製造された気体燃料及び液体燃料を利用して発電する。なお、1つのパーム農園11には、複数のGTCC1が配置されていてもよい。
送電網12は、複数の第1送電線13と、1つの第2送電線14と、を有している。第1送電線13は、複数のパーム農園11のそれぞれにおけるGTCC1から電力消費地へ電力を送る。第2送電線14は、複数の第1送電線13を互いに接続する。第2送電線14には、複数の絶縁碍子14aが設けられている。「電力消費地」とは、電力を必要とする都市部等のことをいう。
送電網12は、電力会社の送配電網(地域の電力供給網)61に接続されている。複数のパーム農園11のそれぞれにおけるS-GTCC1は、送電網12を介して電力会社の送配電網61へ電力を送る。電力会社の送配電網61は、主幹線62と、幹線63と、変圧器64と、を有している。主幹線62には、複数の絶縁碍子62aが設けられている。幹線63には、複数の絶縁碍子63aが設けられている。変圧器64は、主幹線62と幹線63との間に設けられている。
送電網12は、電力会社の送配電網61に接続されている。第2送電線14は、それぞれのパーム農園に電力会社から引き込まれている第1送電線13によって、幹線63及び幹線65に接続されている。幹線65には、複数の絶縁碍子65aが設けられている。
送電網12は、電力会社の送配電網61に組込み移管が可能に構成されている。第1送電線13は、例えば、6kV架空配線60mm2である。第2送電線14は、例えば、6kV架空配線80mm2である。主幹線62は、例えば、22kV架空配線80mm2である。幹線63は、例えば、6kV架空配線80mm2である。変圧器64は、例えば、22kV/6kV三相変圧器である。送電網12は、幹線63と同一の仕様であるから、電力会社の送配電網61に移管が可能である。
GTCC1は、当該GTCC1が配置されたパーム農園11へ電力会社の送電線(送配電網61)を介して電力を送ることができる。また、複数のGTCC1は、送電網12を介して、複数のパーム農園11のそれぞれに電力を送る。換言すると、1つのGTCC1は、当該1つのGTCC1が配置されたパーム農園11だけではなく、他のパーム農園11にも電力を送る。
図4は、パーム農園11を示す概略図である。図4に示されるように、パーム農園11には、廃水池8が存在する。搾油工場(MILL)からは複数の廃水が出ることもあり、図4は単純化しているが実際は複数の廃水池がある。図5は、複数の廃水池の最終廃水池8を示す断面図である。図5に示されるように、廃水池8は、地面に形成された池である。廃水池8には、搾油装置からの生成物が貯留される。廃水池8の縁には、廃水池8の全周に亘って延在する壁81が設けられている。壁81の上部には屋根82が設けられている。壁81には、気体燃料供給装置7が連結されている。廃水池8、壁81及び屋根82は、貯留装置80を構成する。廃水池8、壁81及び屋根82は、空間Zを形成する。
廃水池8では、生成物が自然分解すると共に酸素がない嫌気性の状態で気体燃料が発生する。気体燃料は、メタン(CH4)及びCO2等を含むバイオガスである。空間Zは、気体燃料により充填される。気体燃料は、気体燃料供給装置7の除去装置71によりH2S等が除去された後、圧送機72によりGTの燃焼器21へ供給される。廃水池8からの排水(自然分解された後の生成物)は、浄化されて廃水基準に適合した状態であることを確認して、公共水域に放流される。
本実施形態で示す図3の電力供給システム10は、GTCC1を備えている。GTCC1は、パーム農園11に配置され、当該パーム農園11で製造された気体燃料及び液体燃料を利用して発電する。これにより、GTCC1に必要な燃料を容易に得ることができる。また、電力供給システム10は、複数のパーム農園11のそれぞれにおけるGTCC1から電力を送る第1送電線13、及び、複数の第1送電線13を互いに接続する第2送電線14を有する送電網12を備えている。これにより、例えば一部のパーム農園11におけるGTCC1から電力消費地へ電力を送ることが困難又は不能となった場合でも、他のパーム農園11におけるGTCC1から電力消費地へ電力を送ることができる。つまり、電力供給のバックアップを実現することができる。したがって、電力供給システム10によれば、パーム農園11間の電力の相互融通及びバックアップに加え、電力を安定して電力消費地へ供給することができる。
また、電力供給システム10では、排熱回収ボイラー4は、排ガス中のNOxを除去する脱硝触媒42と、排ガス中のNOx濃度を測定するセンサー43,44と、を有している。排熱回収ボイラー4は、排ガス中の水蒸気の潜熱を回収することにより排ガスの温度を大気温度まで下げると共に、水蒸気の潜熱の回収により発生した水を回収している。この構成によれば、排ガスの温度を大気温度まで下げることによって、排ガスの熱を十分に回収することができる。また、排ガス中の水蒸気を大量のクリーンな水として回収し、当該水を有効に利用することができる。
また、電力供給システム10では、複数のパーム農園11のそれぞれにおけるGTCC1は、送電網12を介して電力会社の送配電網61(幹線63及び幹線65へ電力を送る。送電網12は、電力会社の送配電網61に組込み移管が可能に構成されている。この構成によれば、上述したように電力供給のバックアップ及び電力の安定供給を実現すると共に、電力会社の送配電網61への電力の転換を図ることができる。
また、電力供給システム10は、アブラヤシのプランテーションである複数のパーム農園11のそれぞれからの果実により製造されるCO2排出ゼロ評価の気体燃料及び液体燃料の少なくとも一方を用いて発電する複数のGTCC1と、複数のGTCC1により発電した電力のそれぞれを地域の電力供給網へ送る送電網12と、を備えている。送電網12は、地域の電力供給網に組込み移管が可能に構成されている。
パーム農園11からのCO2排出ゼロ評価の安定型再生エネルギーである気体燃料及び液体燃料の1つまたは2つを燃料として発電し、自立型で地域分散型の発電システムを構築し、長期的・広域的な電力製造・供給・利用が可能になる。電力は貯められない、需要に応じて柔軟に適切に対応する必要がある。このために、電力の相互融通及びバックアップ用として複数のパーム農園11間に自家用電線を整備する。このことで、必要な時に必要なだけ、必要な場所で経済的に安定して電力を製造・送配電・利用への展開が可能になる。このシステムは、電力会社の送電線とも統合利用できる電力製造・送配電システムである。なお、GTCC1により電力消費地への大規模な電力の供給安定性などの観点から電力会社等と連携して送配電することも十分に可能である。
パーム農園11ではCO2排出ゼロ評価の安定型再生エネルギーを大量に生産できる。パーム農園11内でできる気体燃料に加え液体燃料もGT用として発電利用すると、最も付加価値の高い電力を確保できる。即ち自立型で地域分散型の発電所にできる。また、パーム農園11は広大な敷地を利用し、パーム油以外にCO2排出ゼロ評価の再生エネルギー(固形燃料及び液体燃料)を製造し輸出するために必要な電力を製造供給できる。さらに工場内の周辺のインフラ整備と相まって工業団地として発展可能である。なお、同時に燃焼排ガス中の水蒸気の熱回収と同時に、クリーンな大量の水を創出し、利用もできる。
パーム農園11が地域分散型の発電所としてネットワークを構築していくと新規のパーム農園計画において、必要な電力供給が容易に実現できる。また、クリーンな水供給の制約が緩和されるので、SDGs(Sustainable Developmet Goals)に配慮した新たなパーム農場の加速的な普及が期待できる。
インドネシアでのパーム油の生産量は、アブラヤシの品種改良及び栽培面積の拡大、作業性の改善により近年急成長してきた。パーム油の生産量は、世界の植物油市場で1/3以上を占める。パーム油の生産量の中でインドネシアの生産量は50%以上を占めている。
アブラヤシによるパーム油の生産性は、食料油で世界第2位の大豆油に比べ約10倍近く、1ヘクタール当たり年間3トンを超えている。言い換えると、作付面積は1/10で同量の食用油を生産できる。アブラヤシは、樹木であり、一度植えると20年以上安定して果実(FFB)を生産できる。FFBから食糧用の植物油を20%強収穫出来、残りの80%弱は一部が利用されている状況である。
今後も農業生産技術の向上が見込まれることから、植物性油は国際的に大豆、ココナッツをはじめ代替可能な植物が生産を伸ばすことが見込まれる。国際的にも植物性油としての供給量が需要量を上回る状況になっている。インドネシアでは経済成長に伴い、石油の輸入国になって久しい。このため、石油輸入を節約することを含め2019年9月からパーム油からバイオディーゼル油としての転用を図る政策が導入された。
今後、世界で最も重要なエネルギー環境問題は地球温暖化による気候変動への対応である。このことはSDGs実現のための中心課題である。このために、熱帯の湿潤な気候の下で、広大な土地と人的資源(労働力)があるインドネシアなどの常緑広葉樹林によるアブラヤシのパーム農園からできる果実(FFB)は、年間を通して安定して大量に生産できる資源であり、CO2排出ゼロ評価の安定型の再生可能エネルギー、燃料としてとして世界中から生産及び普及が強く期待されている。しかし、農業生産物であることから、燃料への転換という発想はまだ、部分的なレベルにとどまっている。
インドネシア政府は「地球温暖化による気候変動への対応を最重要視して2045年にはGDPを世界で5位以内にする」という長期政策及び戦略を2019年10月、大統領の就任時に発表した。FFBからCO2排出ゼロ評価の安定型の再生エネルギー、燃料にすることで外貨を獲得し経済発展を進めるとともに国内外で温暖化による気候変動への対応を推進して世界に貢献が図れる。
パーム農園でFFBから燃料を作り、国際市場に流通させるには燃料規格を作り、これに適合した品質の燃料を安定して作り、SDGsのコンセプトに沿って長期にわたり安定して持続可能な状態で国内のパーム農園外での発電用及び海外の需要地に輸送する必要がある。このために上流(燃料製造段階)から下流(燃料を輸入して利用する段階)に至るまで開発利用するために総合的に捉え最適解を求める。例えば、インフラとして重要な港湾への固形燃料、液体燃料の輸送、港湾から海外への船舶の輸送用燃料をCO2排出ゼロ評価の再生エネルギーの使用や船舶の帰り便の有効な貨物輸送などを検討し具体化していけばよい。
これに加え、燃料を作るために必要な電力をパーム農園内でつくり出すこと、自立型且つ地域分散型の発電システムを作り普及させることが大きな強みである。本開示はこれを実現するための政府の政策に沿って、長期的、広域的に国全体で活用できるシステム開発と製造した電力や燃料を利用する取組みである。
パーム農園では、FFBから蒸気を利用してパーム油粗油(CPO)を抽出したあとの油混じりの廃水(POME)から、農園内の複数の廃水池の最終の池で、嫌気性状態でバイオガスを製造及び捕囚する装置(図5参照)が技術確立して普及できる状況である。バイオガス中には60%程度のCH4及び40%程度のCO2を含んでいる。CH4は地球温暖化係数がCO2の20倍以上高いため、インドネシア政府及びマレーシア政府は、これを捕囚して利用することで温暖化を防止することを国際約束している。
インドネシア政府及びマレーシア政府は、CH4を捕囚し、最も付加価値の高い発電用燃料として利用する政策を進めている。バイオガスを捕囚することで標準的なパーム油の収穫量を3トン/ha、面積200km2として60万トン/年とすると、インドネシア国内では700ヶ所のパーム農園がある。標準的なパーム農園では1MW(1000kW)程度の発電を可能にするバイオガスを捕囚できる。このための設備投資は相当に巨額を必要とするが、華僑系財閥資本の大手事業者を中心に設置が進みつつあり、安定して発電できるシステムが確立すると一気に設置が進む。なお、本技術システムは、高温で湿度の多いアフリカやブラジルなどの地域でもアブラヤシのプランテーションが拡大し、適用していくことが見込まれる。
発電用燃料として使用する場合、腐食性のあるH2Sをスクラバーで反応させて吸着除去、精製したバイオガスを発電用に供給する。これらの前処理装置、エンジニアリングの取組みはパーム農園で相当期間の取組み実績があり、確立している。発電装置はガスエンジンとガスタービンによる2つの方式が考えられる。
日本でも工場等で利用されるコージェネレーション(熱と電気と両方を利用する)のガスタービンは、ジェット飛行機のエンジンを転用した5MW級が一般的であり、1MW級での利用は一般的ではない。ヨーロッパでも同様に1MW級での利用はガスエンジンが一般的である。
インドネシア政府は、関係組織と協力してバイオガスによる1MW規模のガスエンジンによる発電装置の開発及び実証普及に向けてヨーロッパのガスエンジンを導入して取り組んできた。パーム農園での利用には以下のような二つの大きな課題があり、いまだに開発実証段階にある。
一つ目は、バイオガスには40%程度のCO2を含んでいる。CO2が多いとガスエンジンでは安定した稼働が難しい。また、ガスの性状が変動することもあり、燃焼が不安定になる。二つ目は、ガスエンジンは自動車用などで大きな実績がある。ガスエンジンを稼働させるためには、常時点検管理が必要なことから、パーム農園という現場環境では点検調整などのためのエンジニアリングが必要である。運転管理を外部のエンジニアリング会社に委託するとコストが高まり安定操業に至っていない。
ガスタービンの羽根は回転体であり、基本原理は産業革命前から動力用として使用されてきた水車や風車と同じである。従って、熱応力や腐食性物質などの影響がない状態では、長期間安定して稼働できる。
常用のGTは、5MW以上が一般的であるが、地震や火災などの場合に稼働させる非常用発電装置として200kW(0.2MW)以上5MW規模の設備が広く普及しており、信頼性も高い。原理的に長期間の使用に耐えるものである。最近、日本では1MW級のGTが開発及び販売された。原理から考えても長期間の使用に耐えることを実証及び確認する手順をふむことで解決できる。
非常用発電機は、通常は液体燃料を使用する。したがって、パーム農園11では気体燃料だけでなく、パーム農園11で製造される液体燃料も使用できる。今後はパーム農園11内での電力需要は主として燃料製造用に発生するが、その規模や利用可能な時期は周辺の様々な状況に合わせて柔軟に対応できることが重要である。また、電気は貯められないから供給の安定性を確保することが重要である。必要な電力のためのこれらの燃料をパーム農園11ですべて賄うとともに、広大な土地があり、周辺のインフラ整備と相まって雇用の創出が可能で地域活性化、経済発展の原動力となる工業団地として必要な電力をパーム農園11内で製造する燃料で増強できる機能がある。即ち、国や共和国の地方政府の長期的な政策、マスタープランに沿って地方政府は地域開発計画を立て事業化推進が可能になる。
パーム農園11では農園内でできるバイオガス及びパーム油粗油(CPO)を燃料として最も付加価値の高い電力に変換利用することが最も有効である。GTの発電効率を25%程度に確保することは原理的にも可能である。そして発電後の排ガスの温度が700℃以上の高温であり、排熱回収ボイラー4で専用の蒸気ボイラーと遜色なく十分な熱回収が可能である。排熱回収ボイラー4は、燃焼器を持たないので安定した運転を実現出来る。電力は貯蔵できないから、安定して稼働させるために2基以上のGTの排ガスを集合させて利用することを基本とする。パーム農園11で捕囚及び回収するバイオガス中に可燃ガスであるCH4が60%程度で発熱量が小さいので、起動時に炎が吹き飛び着火の安定性が低い可能性がある。この場合、パーム農園11で供給可能な液体燃料(CPO:パーム油粗油)で着火させて、燃焼器が安定状態になってから気体燃料に切り替えることで、安定稼働への対応は解決できる。
パーム農園11でできる気体燃料及び液体燃料をもとに、GTで発電するとともに、排熱回収ボイラー4については、先に登録した評価試験装置及び評価試験システム(特許第6446160号)の特許システムの考え方を適用する。Zero Wasteの考え方で2つの究極の電力とクリーンな水を有効利用するシステムが実現できる。この点に関し、持続可能(SustainableのS)をとってS-GTCCとして機能表現することがインドネシア政府を含む関係者の間で定着している。排熱回収ボイラー4の中に脱硝触媒42を組み込んで大気汚染物質の排出をゼロにし、燃焼排ガス中の水蒸気の潜熱を外気温にまで熱交換し回収できる。回収したクリーンな水を有効利用出来る。回収される水は、例えばこれをボイラー等に利用可能であり燃料の2倍程度と大量に生成できる。このため、新規にパーム農園にGTCC1を導入する場合、システムは共通で、省エネ性、性能の安定性と運転及び点検管理の容易化、経済性の確保など改善及び改良が進むものになる。
パーム農園11では、燃焼排ガス中の水蒸気の潜熱を回収することにより、排ガス温度を外気温にまでさげることができる。熱回収可能量は、気体燃料の場合10%、液体燃料の場合6%である。したがって、S-GTCCでの発電効率の向上は,蒸気タービンの発電電効率を30%程度として発電効率の効率向上に換算すると、気体燃料で3%程度、液体燃料で2%程度になる。排熱回収ボイラー4で回収した水は、凝縮してできるクリーンな水である。これをパーム農園11内のプロセス蒸気として有効に利用出来る。また、パーム農園11外にクリーンな水を供給することも可能であり、地域のインフラ整備にも貢献できる。排熱回収ボイラー4で回収した水は、凝縮してできるクリーンな水である。化学式CH4 + 2O2 =CO2 +2H2Oからすると、CH4とH2Oとの気体の体積比が1:2であって、重量比が16:2×18=1:2.25である。即ち、燃料として使用するバイオガス中のメタンガスの重量に対して2倍強の重量の大量のクリーンな水が製造できる。パーム農園11でのS-GTCCの実証ができると、インドネシア政府は、700カ所の全てのパーム農園11に普及させる方針を示している。地球温暖化対策としてCO2排出ゼロ評価の安定型の再生エネルギーによりCO2排出量を最大限に抑制できる。同時にパーム農園11を核とした工業団地づくりまでを視野に入れた総合計画、マスタープランを作ることが可能になる。
パーム農園11は、広大な面積の中での利用であり、住民がいないので大気汚染の懸念はない。S-GTCCでは、排ガス中に汚染物質がない。アンモニアの少量の漏れや、白煙の発生対策などに配慮する必要はない。排気ガスからの熱回収は常温まで全量熱交換が可能であり煙突も不要である。実際に搾油工場(MILL)では、ボイラー等の燃焼により煙突から黒い煙があがっている。このシステムをLNGを燃料として大規模な発電用に利用するときに、パーム農園11での実績が大きな力を発揮できる。大気汚染がないので、住民の不安もなく地域社会に歓迎される。地域分散型の火力発電所の計画は、実質的に環境影響評価手続きなしに地域社会の合意を得ることができる。これは、日本は勿論、世界的にも大きな付加価値を生み出すことになる。
パーム農園11では、農園内でできるバイオガス及びパーム油粗油(CPO)を燃料として付加価値が高い電力に変換することが最も望ましい。そして、発電電力が豊富にあると、パーム農園11内で有効な液体燃料、固形燃料の製造やその他の製造用に活用できる。同時に、土地が広く豊富な労働力を教育と訓練により育てることでパーム農園事業者が工業団地としての機能及びポテンシャルを持っている。さらに、パーム農園11外への電力供給が可能になり、極めて効率的な電力のネットワーク構築を実現出来る。これを実現するために、次のパーム農園間の電力の相互融通及びバックアップシステムを通じて地域の電力インフラの整備にも大きな付加価値を生み出すことができる。広大なパーム農園11を複数のクラスターと捉えて、自家用電線で繋ぐことにより、電力の相互融通及びバックアップ電源の確保が可能になる。また、パーム農園11は、人口が希薄な地域で計画されることから、S-GTCCを導入採用することでパーム農園11で電力及びクリーンな水の使用が容易になる。同時に周辺の電力需要量が小さいことから電力会社は送配電網の整備の収支を圧迫することにもなって進めにくい。パーム農園11で自立型且つ地域分散型の発電所の建設が進むと、合理的な電力ネットワークの構築に繋がる。クラスターとしての自家用送電線は、6kV用で対応できるが、送配電線については、22kV仕様と同一である。電柱や鉄塔で使用する絶縁碍子は一般に6kV仕様を採用することで初期設備コストを抑制する。図3は、自家用電線を発展的に電力会社の電力ネットワークに展開していくモデルを示す。クラスター計画及び設置段階では、電力会社の幹線は整備されていないか、利用できないものとして専用電線を設置する。パーム農園11内の自家使用ないしはクラスターへの送電などの電力送電容量が大きくなると変圧器を介して電圧を22kVにする。このときに、自家用線を電力会社に移管するとともに、絶縁碍子を22kV仕様に交換する。パーム農園11は、CO2排出ゼロ評価の安定型の再生エネルギーを利用する自立型且つ地域分散型の発電所である。必要な時に必要な場所で合理的、経済的に主幹線へと接続し、地域の電力ネットワークを整備することで、地域発展の原動力になる。従来、電力会社の送配電網は、より高電圧の主幹線として66kV、基幹幹線として150kV以上で計画していたが、これらの必要性は極めて小さくなる。
パーム農園11でできる果実(FFB)からパーム油を抽出する際の廃液からできるバイオガスを捕囚して製造する気体燃料及びパーム油原料(パーム油粗油:CPO)からできる液体燃料はいずれもCO2排出ゼロ評価の安定型再生エネルギーである。この燃料により持続可能なS-GTCCシステムを備えた自立型で地域分散型発電システムを複数のパーム農園11に自家用電線でネットワーク化することで、相互融通及びバックアップ電力として安定した電力供給が可能になる。また、パーム農園11内で大量に生産できるFFBからCO2排出ゼロ評価の安定型の再生可能エネルギーとしての燃料生産用等に必要な自家用電力を利用計画に基づき柔軟に安定して増強し確保できる。さらに自家用線を電力会社の幹線と連携することで、付加価値の高い電力の製造、利用及び地域への供給が可能となり、地域のインフラ整備、工業団地などの地域開発、産業と雇用の創出、並びに、人々の教育及び訓練による能力向上など、政府や地方政府の総合的な政策の実現の支援が経済的に計画的に実現できる。将来的にはパーム農園の事業者自らが自家用電線を建設所有し運用することから政府や地方政府等とともに電力事業者になることも可能性が高い。また、排熱回収ボイラー4で水蒸気の熱回収、大量の回収水の有効利用を図ることができる。なお、気体燃料はパーム農園11での製造プロセスからできる廃水(POME)から発生するバイオガスを捕囚して精製したものを有効利用するなど、地球温暖化対策として長期的な目標を早期に確立及び実現出来る技術システムである。自立型且つ地域分散型の電力供給システム10が整備充実すると、周辺の広大な地域でのパーム農園11の建設計画に必要な電力とクリーンな水の供給及び確保が容易になる。これらを活用して新規に計画するパーム農園11は、温暖化対策とSDGsに対応したものとして一層の地域開発、経済発展の加速につながることになる。
図4は、パーム農園11のモデルを示す概略図である。図4に示されるように、パーム農園11は、例えば一年中温暖で降雨量の多い熱帯雨林地帯で生育するアブラヤシ等の植物を栽培する。パーム農園11の面積は、例えば約200km2である。パーム農園11の中には、搾油工場(MILL)及びこれに隣接する複数の廃水池8が存在する。パーム農園11では、アブラヤシの果実(FFB:Fresh Fruits Bunch:FFB)が毎日収穫されて搾油工場へ運ばれる。搾油工場を稼働させるために電力とクリーンな水が必要である。果実(FFB)に蒸気を注入して油分を抽出する。抽出に使用した蒸気は凝縮して油混じりの有機物を含んだ廃水(POME)として、廃水池8に排出される。廃水池8では、有機物が沈殿または自然分解する。最終の廃水池8では、嫌気状態でPOMEの油分を分解してバイオガスを発生させ60%程度、CO2が40%程度含まれているが、組成は変動する。このガス中の有害物質であるH2Sをスクラバーで吸着除去して精製して発電機に送り込む。
パーム農園11では、政府の方針に従って、バイオガスを捕囚し発電用燃料に利用する段階である。インドネシア政府は、2010年頃からガスエンジンによる1MW規模の発電に取り組んでいるが、まだエンジニアリング会社が工夫しながら運転しており発電設備としての性能が安定しない。また、バイオガスの捕囚装置の改造費が大きいことなどから、部分的な普及に留まっている。
バイオガスを利用してGTの常用発電機としては普及しておらず、パーム農園11でも使用された実績がない。しかし、GTは産業革命以前から動力をとりだすために風車や水車と同様に羽根(ブレード)を回転させるシステムであり、原理的に性能が安定している。人があまり手をかけずに長期間安定して稼働できる特徴がある。また、ガスエンジンと異なり、高速で回転させることによりコンパクトで大きな出力を取り出すことができる。このことから、非常用発電機として火災や地震などのときにスイッチを入れれば稼働できる機能が評価されて0.2MWから5MW、さらに大容量のGTまで広く普及している。また、燃料としては液体燃料が基本であるが、バイオマス燃料でも原理的に問題がない。ガスタービンは燃焼用空気量を理論空気量の4倍程度入れて燃焼温度を下げて、タービン羽根の耐熱性を維持する構造・方式である。このことから、電力は貯められないので、電力の出力を確保するため及び安定供給のためにパーム農園11内で自給できる気体燃料用と液体燃料用と複数台設置が基本構成になる。勿論、パーム農園11内等での電力需要の増大に伴い、それぞれを複数台設置することもできる。
さらにパーム農園11の果実(FFB)から製造できる液体燃料と気体燃料の組み合わせにより最も付加価値の高い大量の電力供給が可能になる。したがって、パーム農園11はCO2排出ゼロ評価の安定型再生エネルギーによる地域分散型発電所として地域の工業団地として国のマスタープランや地方政府の開発計画に大きく寄与することができる。可及的速やかに発電システムの実証を進めることが望まれる。実証装置で基本性能が確認されると、同型機を複数のパーム農園11で採用・実証して実用化を加速することが可能になる。小規模(0.2MW,200kW)から中規模(5MW級)であっても安定した規格品として市場で購入・調達してできる市販されている設備を採用・設置できる。したがって実証段階での開発スピードが速く、実用設備に規模を拡大したシステムとして短期間に普及が見込まれる。市場ニーズが大きくなると、GTは確立した技術であり、複数のGTメーカーの参入により品質と価格面のメリットがある市場を形成できる。今後、高速大容量の通信技術、AI、IoTの利用技術が急速に進展するので、AIやIoTを活用したドローンなどによる監視測定やデータ蓄積・活用などを現在700カ所、今後はさらに増大させて、パーム農園11での長期的、総合的な管理、改善を図ることに繋ぐことができる。同時に今後高速大容量化が進むAI、IoTの活用、有効利用により、品質の安定した液体燃料、固形燃料を年間を通じて安定して供給できることが、発電用燃料として重要であり、これを支える基盤技術になる。
パーム農園11内では付加価値の高い電力をより効率的に理想的な形で製造利用できることが望まれる。気体燃料及び液体燃料の複数台設置を基本とするGT出口の排ガス温度が700℃以上であり、これの排熱をすべて回収して蒸気を作り蒸気タービンにより発電し、最も付加価値の高い電力を取り出す。全ての排熱を回収するために、排ガス中の大気汚染物質を除去する。バイオガス中のH2Sはガスの精製装置にあるスクラバーで除去する。GT出口では燃焼に伴いNOxが発生するので、これに当量以上のNH3を注入してNOxを除去する。この脱硝反応は還元触媒を介して行う。熱交換器で液体と気体の熱交換をする。排ガスは常温まで熱交換する設計とする。排気ガス中には大気汚染物質がないので、パーム農園11内の小規模システムであり、煙突は不要である。
排熱回収ボイラーでの反応が適切に行われていることを計測監視する。必須項目は、GT入口でH2Sを測定、GT出口でのNOx濃度と排ガス量、回収水中の成分、PH、及び、排ガス量と温度(それぞれの装置の入口と出口で測定)がある。
発電した電力の特徴と活用について述べる。パーム農園11の主要構成部分は上述したように200km2もの広大な面積の中に事務所と搾油工場と搾油工場からでる廃水(POME)中の有機物を沈殿または自然分解させる複数の廃水池などからなる。従って、工場等で必要な電力を確保できると、パーム農園11内で新たな液体燃料、固形燃料製造工場などを作り、関連事業を拡大することも容易である。一般にGTは気体燃料、液体燃料の複数台で発電電力供給することに特徴があり、需要量に応じて柔軟に出力調整が可能である。また、メンテナンスや故障等の非常事態に対しても最低限の電力を自給できる。さらに自家用電線で複数のパーム農園を繋ぐことで電力の総合融通、バックアップが容易になり、自家用電線は将来的には電力事業の送配電線として重要なインフラになる。
外部との電力の需給の連携も大きなメリットがある。パーム農園で発電する電力はCO2排出ゼロ評価の安定型の再生可能エネルギーであり、地球温暖化対策としても極めて望ましい。そして、周辺部には電力会社による電力供給ネットワークを整備し、同時に道路等のインフラ整備を進めることで、国及び地方政府の地域開発は長期的な視点で総合的に計画を推進できる。パーム農園はインドネシアでは全国に約700カ所あり、政府はS-GTCCを実用化すると全国に拡大するとの方針を示している。CO2排出ゼロ評価の安定型再生エネルギーによる自立型で地域分散型の発電所が700カ所設置できる。そして、最も付加価値の高い電力を必要なときに必要なだけ経済的に安定して供給することが可能になる。
電力を外部のネットワークに接続することの優位性について述べる。GTCCで発電する電力は一般に周辺の電力需要が小さいので、6kVで送電できる仕様が基本である。パーム農園11の周辺に22kVの送電網がある場合はそのまま送出し、変圧器を介して電力会社が送電網に接続する。「高圧送電線」とは、公称電圧(JEC規格)が6kVの電線路で使用される電線のことをいう。公称電圧が低い電線路に使用される電線のコストは、公称電圧が高い電線路に使用される電線のコストよりも低い。ただし、公称電圧(JEC規格)が22kVの場合、公称電圧6kVの場合と送電線の仕様は同一である。例えば式W=31/2×EIcosθにより求めることができる。ただし、Wは電力(kW)、Eは電圧(V)、Iは電流(kA)である。電圧Eが22kVである場合、例えば電流Iが1kAであると仮定すると、電力Wは34MW程度となる。電力会社は、将来的に地域の電力需要量が増大する場合、22kVは6kVの送電線と同一仕様であるので、新規に送電網を計画・建設する場合、碍子22kV用に交換して対応することになる。パーム農園11でできる液体燃料により電力30MWもの電力供給に対応できるポテンシャルがある。実際には電線は重要なインフラであり、60mm2ではなく80mm2を使用することで、さらに大電力に対応できる選択肢もある。
地域の電力ネットワークが整備されると、次のメリットが生ずる。パーム農園11内のGTCC1に故障等のトラブルが発生した場合、隣接するパーム農園11から相互融通及びバックアップ用電力の託送をうけることが可能になり、地域の電力供給の安定供給性、信頼性はさらに大きなものになる。新規にパーム農園11の設置を計画する場合、6kVの送電線を延長することで、必要な電力供給を受けることが可能である。勿論パーム農園が稼働すると、パーム農園11相互の電力ネットワークに組み込まれることになる。
本開示の一形態に係る電力供給システム10は、パーム農園11で生成された生成物を貯留する貯留装置80から気体燃料を回収し、気体燃料をGTCC1へ供給する気体燃料供給装置7を備えている。この構成によれば、気体燃料供給装置7により貯留装置80から気体燃料を回収し、当該気体燃料を発電装置2に供給して発電しパーム農園11内で電力使用することができる。
また、本開示の一形態に係る電力供給システム10は、パーム農園11で搾油・生産したパーム油粗油(CPO)をもとにガスタービン用燃料として精製し供給する装置を備えている。この構成によれば、液体燃料供給装置により貯油装置を経て液体燃料をガスタービンに供給して発電し、パーム農園11内で電力使用することができる。この場合、電力は貯められないから、GTCC1は発電電力量を需要電力量に見合った形で出力調整できる特徴を有効に機能させることが重要である。
燃料として使用するバイオガス中のメタンガスの重量に対して2倍強の重量の大量のクリーンな水を製造できる。回収水は実証段階ではN分、S分などの微量物質の測定をするとともに、PHが7以上のアルカリ性であることを管理することで、搾油工場で使用するボイラー用水として大量に供給可能である。パーム農場で液体燃料を製造する場合、必要な給水量は果実(FFB)の29%、パーム油は24%に相当するとの報告書がある。したがって、液体燃料からの最大給水可能量は50%以上と大きいので、パーム農場内で必要な給水量をすべて賄うことが可能である。新規にパーム農園11の設置を計画する場合、搾油工程で必要とするクリーンな水の利用を計画に織り込むことで立地の自由度が広がる。また、給水用の初期設備投資額を抑制できる。新規のパーム農園11の計画では生産量が標準状態に拡大するまでに長期間を要する。アブラヤシは苗を育ててから3年目くらいで果実(FFB)ができる。その後20年間は果実を取り続けた後、伐採して新たに苗を植えて持続可能な循環をしているシステムである。したがって、パーム農園11の初期段階では、生産量が小さいことを考慮して必要な電力も水のユーティリティ計画に有効に反映できる。このクリーンな回収水をパーム農園11外の地域に供給することも可能である。ただし、水道法への適用などの事業の運営・管理面での配慮が必要になる。
地球温暖化対策を考慮すると、世界では長期的にはCO2排出原単位が少ない大規模な火力発電所による電力供給がどうしても必要になり、相当量を化石燃料に頼る必要がある。石油は1980年代以降、価格が高いこともあり発電電力用としては不向きであることが明確になった。石炭火力は天然ガスに比べてCO2の排出量が多く、地球温暖化の観点から好ましくないと位置づけられている。このために世界中で広く大量に埋蔵されている天然ガス、これを液化して輸送するLNGが経済性、供給安定性、環境保全性の面から最も優れている。これをS-GTCCとする技術システムは、確立した技術で対応できるが、実証できていないこともあり、世界中でまだ普及していない。これを実証するために評価実証装置及び評価実証システムとして特許が登録できた。これをパーム農園11で実証し、広く普及させることで実証の役割を果たすことができる。大規模な火力発電に適用するために、環境影響評価制度などで実証の実績があることは大きな推進力になる。原理的にはスケール・ニュートラル即ち発電規模と関係がないので、本発明の成果として初めて実現、世界に貢献できるものになる。