JP7199512B2 - 生体分子のコンジュゲーションの方法及び生体分子複合体形成のための金ドナーの新たな使用 - Google Patents

生体分子のコンジュゲーションの方法及び生体分子複合体形成のための金ドナーの新たな使用 Download PDF

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Description

本発明は、生化学分野に属する。遊離チオール基含有生体分子のコンジュゲーションのための方法であって、-S-Au-S-結合が形成される、生体分子と金ドナー剤との反応を含む方法に関する。詳細には、本方法は、タンパク質ケージ(protein cage)である複合体の形成をもたらす。
天然のタンパク質複合体は、重要な極めて洗練された生物学的ナノマシン(biological nanomachine)及びナノ構造を表す。天然の大型タンパク質複合体は、非共有結合相互作用(すなわち、水素結合、疎水性充填)により一緒に保持されているいくつもの個別のタンパク質から典型的に構築されている。このことはカプシド等のタンパク質ケージにおいて特に注目され、ここでは同一のタンパク質サブユニットの複数コピーが、この方法によって一緒に保持されている。合成構造生物学において、人工タンパク質集合体を設計及び構築する能力は有用であり、天然には現れない特性及び性能の導入が潜在的に可能になりうる。このため、個別のタンパク質を確定された方法で一緒に接続する、新たな方法が望ましい。
近年、本発明者らは、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)からのTRAP(trpRNA結合減弱タンパク質)をナノメートルビルディングブロック(nanometric building block)として使用するそのような可能性を研究してきた。このTRAPは、天然状態の11個のサブユニットオリゴマー環構造1-5を採用し、いくつもの他の環タンパク質とともに6,7、有用なバイオナノビルディングブロックであることが証明されている8-11
既知の方法における欠点を認識しながら、本発明者らは、タンパク質サブユニットを接続する他の方法を見出す努力をしてきた。2個又は他の数のタンパク質をこれらのシステインSH基を介して結合することに関していくつかの開示があるが、本発明者らは、金を「縫合」試薬として使用することを考慮して、この分野に焦点を合わせた。
金化合物と-SH基との反応は、よく知られており、文献に記載されている(例えば、MA Thesis of Stephanie A. Koening、The gold(I) mediated thoil/disulfide exchange reaction: a kinetic and mechanistic investigation、August 2007年8月、Los Angeles, USA、Hakkinen H.、The gold-sulfur interface at the nanoscale、Nat Chem. 2012年5月22日;4(6):443~55頁及びDaniel MC, Astruc D.、Gold nanoparticles: assembly, supramolecular chemistry, quantum-size-related properties, and applications toward biology, catalysis, and nanotechnology、Chem. Rev. 2004年1月; 104(l):293~346頁、並びに記載中の参考文献)。
金粒子をナノ構造に組み込むために金化合物を使用すること、又はナノ粒子をナノクラスター、複数の用途のためのタンパク質ケージ、とりわけ、送達系における標的分子として提供することも、文献、並びに特許文献に十分に記載されており、これらは本発明にとって従来技術である。例えば、国際出願第PCT/KR2013/004454号は、ヒアルロン酸金ナノ粒子/タンパク質複合体の調製方法を記載し、これは、体内で優れた安定性を有する金ナノ粒子を、生体適合性、生分解性及び肝組織特異的送達特性を有するヒアルロン酸で表面修飾すること、並びに肝疾患を治療するタンパク質薬を、金ナノ粒子の非修飾表面に結合させることにより、肝臓標的化薬物送達系として使用することができる。
米国特許出願第10/142,838号は、金等の貴金属原子を、アポフェリチン等のケージ様タンパク質に、ケージ様タンパク質の内部構造を修飾することにより導入し、よって、様々なマイクロ構造に適用可能な貴金属組換えケージ様タンパク質複合体を形成することを開示している。
国際出願第PCT/US2011/034190号は、金属チオール結合を介して抗体又はそのフラグメントに直接連結している2個以上のナノ粒子(例えば、金、パラジウム、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、イリジウム又はこれらの2つ以上の合金)を含む抗体ナノ粒子コンジュゲートを開示する。
別の例は、米国特許出願第14/849,379号であり、自己組織化タンパク質に縮合した標的指向ペプチド及び自己組織化したペプチドを還元する金イオンを含む、組換え自己組織化タンパク質を開示する。
異なる目的で生物学的分子を構成するために金化合物を使用する新規手法が、刊行物A. D. Malayら、Nanoletters、「Gold Nanoparticles-lnduced Formation of Artificial Protein Capsid」においても示されており、ここでは、金ナノ粒子(GNP)が、上記刊行物において決定されていないが、恐らく、S-Au-S結合によって環形状TRAPモノマーを一緒に連結するための触媒として使用される。反応におけるGNPの使用は、1.4nmのナノ粒子が毒性であることが知られていること12,13及び得られた構造に非特異的に結合して、過剰金ナノ粒子からタンパク質ケージ生成物を精製することが難しくなり、in vivo用途において将来的な可能性の妨げになりうるので、望ましくない。本開示は、これらの問題を解決する。
Au-S結合形成の機構に関して、また生物学的構造の形成についても、当該技術において多くの開示がある。反応のAuドナー/触媒としてのトリ-R-ホスフィン金クロリドの使用に関して、データも明らかになっている。ポリペプチド鎖に天然に発生するシステインSH基がAu(I)原子の標的として使用されることも、当該技術において知られている。いずれにしても、検出技術における、Au担持化合物を使用したSH遮断反応又は生物学的分子の表面へのAu担持マーカーの組み込み方法は、主に当該技術において報告されている。
本発明では、新たな手法が実現しており、金ナノ粒子の代わりに、(トリアリールホスフィン)金(I)ハライドが、タンパク質複合体の中へ自己組織化するタンパク質単位間の結合形成における触媒として使用され、ここでは、SH基は部分内に、好ましくは、タンパク質構造に天然に発生した又は人工的に組み込まれたシステイン部分内にある。この手法は、一実施形態において、カプシド様タンパク質複合体の組み立て又は分解の制御を可能にし、このことは技術の現状の観点から革新的である。
国際出願第PCT/KR2013/004454号 米国特許出願第10/142,838号 国際出願第PCT/US2011/034190号 米国特許出願第14/849,379号
MA Thesis of Stephanie A. Koening、The gold(I) mediated thoil/disulfide exchange reaction: a kinetic and mechanistic investigation、August 2007年8月 Los Angeles, USA、Hakkinen H.、The gold-sulfur interface at the nanoscale、Nat Chem. 2012年5月22日;4(6):443~55頁 Daniel MC, Astruc D.、Gold nanoparticles: assembly, supramolecular chemistry, quantum-size-related properties, and applications toward biology, catalysis, and nanotechnology、Chem. Rev. 2004年1月; 104(l):293~346頁 A. D. Malayら、Nanoletters、「Gold Nanoparticles-lnduced Formation of Artificial Protein Capsid」 PDBePISA (http://www.ebi.ac.uk/pdbe/pisa/)
本発明の主題は、生体分子の遊離チオール基部分のコンジュゲーションにより、生体分子複合体を形成させる方法であって、-S-Au-S-結合が形成される、生体分子と金ドナー剤の間の反応を含む方法において、金ドナー剤がハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)である方法である。
好ましくは、本方法に使用される生体分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質を含む群から選択される。
好ましくは、コンジュゲーションにより複合体を形成させ、複合体は、同じ生体分子である複数の単位から構成される。より好ましくは、複合体は、対称又は非対称である。
好ましくは、上記に記載された方法において、部分はシステインである。好ましくは、システイン部分は、生体分子における天然の部分である。また好ましくは、システイン部分は、生体分子中に人工的に導入されている。
好ましくは、ハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)である本方法における金ドナーにおいて、ハロゲンは、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロを含む群から選択され、アリールは、非置換フェニル、又はオルト、メタ若しくはパラ、モノ若しくはポリ置換フェニルを含む群から選択される。
より好ましくは、金ドナー剤は、クロロ[ジフェニル(3-スルホナトフェニル)ホスフィン]金(I)である。
より好ましくは、金ドナー剤は、クロロ(トリフェニルホスフィン)金(I)である。
好ましくは、上記に記載された方法は、
a.生体分子の調製工程、
b.生体分子と金ドナーとの反応による、生体分子のコンジュゲーション工程、
c.コンジュゲーション生成物の精製工程
を含む。
好ましくは、生体分子の調製は、適切な発現系における生体分子の発現及び発現生成物の精製によって実施される。
好ましくは、上記の方法の工程aの生体分子中に少なくとも1個のシステインが導入される。
好ましくは、コンジュゲーションは、水溶液中において、室温で、3日間まで実施され、生体分子:金ドナーのモル比は、典型的には3:1~1:4の範囲である。
好ましくは、コンジュゲーション生成物の精製は、濾過、結晶化、遠心分離、カラムクロマトグラフィーの群から選択される方法のうちの少なくとも1つにより実施される。
好ましくは、生体分子複合体はタンパク質ケージである。より好ましくは、生体分子はTRAPタンパク質である。TRAPタンパク質複合体は、好ましくは24個の生体分子単位からなる。
本発明の主題はまた、上記に記載された方法による生体分子複合体形成の方法における、金ドナー剤としてのハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)分子の使用である。
好ましくは、この使用は、-S-Au-S-結合が形成される反応による生体分子の遊離チオール基部分のコンジュゲーションからなる。好ましくは、複合体はタンパク質ケージである。より好ましくは、タンパク質はTRAPである。
本記載の目的において、-S-Au-S-結合を介して生体分子を接続する反応は、接続されて複合体になる2個の生体分子のアミノ酸である2個のシステインから誘導される2個の-SH基を、金が接続する反応である。好ましくは、少なくとも1個の-S-Au-S-連結が2個の生体分子の間に形成される。別の実施形態において、2個以上の-S-Au-S-連結が形成される。連結の量は、生体分子中のシステインの量及び金ドナーへの曝露における利用可能性によって左右される。
生体分子にシステインが存在しない場合又は存在するが、反応に利用できない場合、好ましくはシステインの基としての-SH基を生体分子に導入することができる。
システインの導入は、当該技術に既知の任意の方法によって実施することができる。例えば、システインの導入は、商業的な遺伝子合成又は修飾DNAプライマーを使用するPCRベース部位指向性変異誘発等の当該技術に既知の方法によって実施されるが、これらに限定されない。上記に記述された方法は、当業者に知られており、プロトコールを伴った直ぐに使用できるキットが市販されている。
-SH部分を、生体分子の他のアミノ酸の修飾によっても、すなわち、部位指向性変異誘発又は固相ペプチド合成によっても生体分子に導入することができる。
「単位」、「サブユニット」、「分子」、「生体分子」、「モノマー」は、記載中に代替的に使用され、複合体形成において一方の分子に接続するもう一方の分子を意味する。
「複合体」、「集合体」、「凝集体」は、記載中に代替的に使用され、生体分子間の反応により構築された超構造を意味する。それは-S-Au-S-連結により接続された単位により形成される。複合体に関与する単位の量は、生体分子の性質によって左右される。より詳細には、それは生体分子の量及び生体分子に存在する-SH基の量によって左右される。
接続反応を実行するため、すなわち、Au(I)源を使用して、S-Au-S結合形成を介して2個のシステインを一緒に連結するため、本発明者らは、最初にモノマーを作製及び精製し、関連する場合、反応性システインを導入し(図2A)、次いで、金ドナーとの、例えば、クロロ[ジフェニル(3-スルホナトフェニル)ホスフィン]金(I)ナトリウム塩水和物(Au-TPPMS、MDL番号MFCD19443491)との反応を実行する必要があった。-S-Au-S-結合の形成の結果、複合体が組み立てられる。S-Au-S結合形成を含む構造は、クライオEMを使用して確認され、S-Au-S結合の存在は、質量分析測定により更に確認され、安定性は、熱安定性試験他により確認される。
供与共有結合S-Au-Sが形成される、本発明の方法により得られる複合体の安定性は、一般に、モノマーが非共有的に連結される関連複合体より安定している。
-S-Au-S結合は、当該技術に既知のタンパク質-タンパク質複合体に存在するファンデルワールス型結合である非共有水素結合と比較して、主に供与共有結合特性を有すると考えられる。このことが、本発明の方法により得られる複合体の安定性がなぜ高いかについての要因であると思われる。
TRAPタンパク質は、本発明の方法に適した生体分子モデルである。これは、高い固有の安定性、環状体形状、天然システイン残基の欠如(コンジュゲーション方法における容易な制御のため)、及びシステインに変えることができ、得られたシステインがS-Au-S結合形成に適した適切な化学及び空間環境にある残基の利用能に起因すると思われる。
いずれにしても、当業者は、反応条件を他の生体分子モノマーに容易に適合するであろう。遊離チオール基及び/又はその構造を有する任意の生体分子モノマーに、本発明による生体分子のコンジュゲーションの方法に適切でありうるチオール基を導入することにより修飾を行うことが可能である。
金縫合反応のための金(I)含有化合物の例を例示する。図1A:モノスルホン化トリフェニルホスフィン金(I)クロリドである。図1B:トリフェニルホスフィン金(I)クロリドである。 金縫合反応及び結果として形成された複合体の例を例示する。図2A:2つの相互直交図で示されている単一のTRAP環(pdb 4v4f)の構造である。図2B:中空ケージ構造の構造の擬原子モデルである。図2C:TRAPケージの得られたクライオEM密度である。図2D:架橋金原子の存在を示す、生成されたタンパク質ケージにおける2つの隣接TRAP環の拡大図である。図2E:モノスルホン化トリフェニルホスフィン金(I)クロリドの作用により、向かい合っているシステイン側鎖の間に形成された化学結合であり、「R」は、TRAPタンパク質の残部を指す。 図3A:3つの形態のTRAPモノマーのLC-MSデータを例示し、(左から)リガンド非結合タンパク質(暗灰色)、単一金原子に結合したモノマー(灰色)、並びに金原子及びTPPMSリガンドに結合したモノマー(薄灰色)である。図3B:高衝突活性化により実施されたインタクトTRAPケージの未変性MSを例示する。図3C:図3Bにおける低m/z領域の拡大である。 金縫合反応の結果により一緒に保持されたタンパク質複合体の安定性を示す。図4A:形成されたTRAPケージの高い熱安定性を示す未変性PAGEゲルを例示する。図4B:熱処理を伴わないで形成されたTRAPケージのTEM画像を例示する(スケールバー200nm)。図4C:95℃で3時間のインキュベーションの後でケージ構造に有意な分解を示さない、形成されたTRAPケージのTEM画像を示す(スケールバー100nm)。
本発明の実現に用いた技術
透過電子顕微鏡法(TEM)
試料を、典型的には最終タンパク質濃度の0.025mg/mlに希釈し、デスクトップ遠心分離機により短時間遠心分離し、上清を、親水化炭素コート銅グリッド(STEM Co.社)に適用し、4%リンタングステン酸(phospotungstic acid)、pH8で陰性染色し、JEOL JEM-1230 80kV機器を使用して視覚化した。
未変性PAGE
試料を、製造会社(Life Technologies社)の推奨に従って3~12%の未変性ビス-トリスゲルにかけた。試料を4×未変性PAGE試料緩衝液(200mMのビストリス、pH7.2、40%w/vのグリセロール、0.015%w/vのブロモフェノールブルー)と混合した。移行バンドの分子量の定性ガイドとして、NativeMark未染色タンパク質標準(Life Technologies社)を使用した。ブルー未変性PAGEを実施する場合、タンパク質バンドを、製造会社(Life Technologies社)のプロトコールに従って視覚化し、そうでなければ、InstantBlue(商標)タンパク質染色(Expedeon社)を使用した。
電熱原子吸光分光法(ETAAS)
試料質量のおよそ2mgを25mlの0.2%HClに溶解した。次いで、ETAAS分光計(PinAAcle 900Z、Perkin Elmer社、Waltham、MA)により、ゼーマンバックグラウンド補正を伴って、242.80nmの波長(スリット幅0.7nm)で実施して総Auを決定する前に、溶液を25×に希釈した。試料溶液の測定体積は10μlであり、各試料に、マトリックス修飾剤の混合物:5μgのPd(NO3)2及び3μgのMg(NO3)2を加えた。各セット3回の反復からなる5セットの測定を実施した。
タンパク質発現及び精製
典型的な精製において、TRAP-CS遺伝子を有するpET21bプラスミドでトランスフォームした大腸菌(E. coli)BL21(DE3)細胞(Novagen社)を、100μg/mlのアンピシリンを有する3LのLB培地においてOD600=0.6になるまで振盪しながら37℃で増殖させ、0.5mMのIPTGで誘導し、次いで更に4時間振盪した。細胞を遠心分離により採取し、ペレットを使用するまで-80℃で保持した。細胞を、50mlの50mMトリスHCl、pH7.9、50mMのNaCl中において、プロテイナーゼ阻害剤(Thermo Scientific社)の存在下及び2mMのDTTの存在又は非存在下で、4℃での超音波処理により溶解し、溶解産物を66,063g、4℃で0.5時間遠心分離した。上清分画を70℃で10分間加熱し、4℃に冷却し、再び66,063g、4℃で0.5時間遠心分離した。上清分画を、50mMのトリスHCI、pH7.9、0.05MのNaCl+/-2mMのDTT緩衝液中で結合させ、0.05~1MのNaCl勾配で溶出する4×5mlのHiTrap QFFカラムを使用して、AKTA精製機(GE Healthcare Life Sciences社)のイオン交換クロマトグラフィーにより精製した。TRAPタンパク質を含有する分画をプールし、Amicon Ultra 10kDa MWCO遠心分離フィルターユニット(Millipore社)を使用して遠心分離し、試料を、HiLoad 16/60 Superdex 200カラム中の50mMのトリスHCl、pH7.9、0.15MのNaClによるサイズ排除クロマトグラフィーに室温で付した。タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce Biotechnology社)を使用して計算した。
液体クロマトグラフィー質量分析法
TRAPケージ試料を8Mの尿素を伴う50mMのトリスHCl緩衝液(pH8.0)において56℃で30分間変性させ、次いで、遠心分離濾過装置(Amicon 3kDa MWCO、Millipore社)を使用して50mMのトリスHCl緩衝液(pH8.0)に緩衝液交換した。変性LC-MS分析では、TRAPタンパク質をC18プレカラム(Acclaim PepMap100、C18、300μm×1cm; Thermo Scientific社)で脱塩し、次いでダイナミックナノスプレー源を介してハイブリッドLTQ Orbitrap XL質量分析計(Thermo Scientific社)に接続しているDionex UltiMate 3000 RSLCnano Systemにより、C18カラム(Acclaim PepMap100、C18、75μm×15cm; Thermo Scientific社)で分離した。二成分緩衝液系を使用し、緩衝液Aは、H2O中の0.1%ギ酸であり、緩衝液Bは、アセトニトリル中の0.1%ギ酸である。タンパク質を、1%~90%の緩衝液Bの勾配により流速300nL分-1で60分間かけて25℃で分離した。LTQ-Orbitrap XLを、ナノエレクトロスプレー電圧1.6kV及び毛管温度275℃で陽イオンモードにより稼働した。サーベイフルスキャン(survey full-scan)MSスペクトルを、解像度60000でOrbitrap(m/z300~4000)により取得した。データを、Xcalibur 2.2(Thermo Scientific社)を使用して処理した。
未変性質量分析
TRAPケージ試料の0.8mg ml-1を、ミニチュアスピンカラム(miniature spin column)(Micro Bio-Spin P-6、BioRad社)を使用して酢酸アンモニウム(pH6.9)に緩衝液交換することによって未変性MSのために調製した。これを2工程で実施し、第1では2.5Mの酢酸アンモニウムに交換し、第2では200mMの酢酸アンモニウムに交換した。未変性MSの実験を、大型タンパク質イオンの分析用に改変し15、Q-ToF2機器(Waters Corp.社)を用いて、以前に記載された方法14を使用して実施した。関連する機器のパラメーターは、ナノエレクトロスプレー毛管電圧:1.9kV;試料コーン:200V;抽出器コーン:10V;衝突セルへの加速:200Vであった。衝突セルをアルゴンにより約35μbarで加圧した。データを、MassLynxソフトウエア(Waters Corp.社)を使用して外部から較正し、バックグラウンド減算も最小限の平滑化もなしで示した。
(実施例1)
TRAP複合体の調製 - Au-TPPMSとの反応
(図1を参照すること)
金化合物:
クロロ[ジフェニル(3-スルホナトフェニル)ホスフィン]金(I)ナトリウム塩水和物(Au-TPPMS、MDL番号MFCD19443491)を、STREM Chemicals UK, limited社から購入し、水に溶解して所望の濃度(典型的には5mM)に構成した。使用した金ナノ粒子(GNP)は、STREM Chemicals UK社からの1~3nmのコア直径を有するジフェニル(m-スルホナトフェニル)ホスフィン-金ナノクラスター(MDL番号MFCD17018839)であった。
TRAPの調製:
Au-TPPMSの使用が成功したことを例示する、使用されたタンパク質は、システインが挿入されたTRAPタンパク質であった。リジン残基(K)番号35からシステインへの変異及びアルギニン残基(R)番号64からセリン(S)への追加の変異を含有するTRAP(「TRAP-CS」と呼ばれる)の発現及び精製は、TRAP-CSについて以前に記載されたもの11(及び上記に詳述されたもの)と類似しており、注目すべき変更は、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)が溶解工程に含まれないことであった。最終緩衝液は、典型的には20mMのトリスHCl、pH8.0、0.15MのNaClであった。
修飾TRAPタンパク質とAu(I)-TPPMSとの反応
精製されたTRAPタンパク質を、水性緩衝液中においてAu-TPPMSと室温で反応させた(図1A)。S-Au-S結合が反応によって形成され、TRAPケージ中へのTRAP環の組み立てを生じ、次いで精製し、更に特徴決定した。
TRAPケージの形成は、精製されたTRAP-CS及びAu-TPPMSを水溶液中で混合することによって実施した。反応物の正確な濃度を各反応において調整したが、典型的には以下の通りである。50mMのトリスHCI、pH 7.9、0.15MのNaCl中の1mMのTRAP-CS(8.3mg ml-1)及び1mMのAu-TPPMS。反応を室温で少なくとも3日間インキュベートした。TRAPケージの形成は、TEM及び未変性PAGEを使用して確認した。任意の沈殿物質を12,045×gで5分間遠心分離して除去し、TRAPケージを、Superose 6 Increase 10/300 GL若しくはHiPrep 16/60 Sephacryl S-500 FIRカラム(GE Flealthcare社)、又はHiLoad 16/600 Superdex 200pgのいずれかのサイズ排除クロマトグラフィーにより精製した。ケージタンパク質を含有する分画をプールし、Amicon Ultra 0.5 100kDa MWCOを使用して濃縮し、タンパク質濃度を、BCAタンパク質アッセイ(Pierce Biotechnology社)を使用して測定した。
(実施例2)
TRAP複合体の調製 - Au(I)-トリフェニルホスフィンとの反応
Au-TPPMSの代わりにトリフェニルホスフィン金(I)クロリド(Au-TPP、図1B)を用いて、類似した反応を実施することができる。Au-TPPをDMSOに溶解し、反応を、50mMのトリス、150mMのNaCl、pH7.9及びAu-TPPにおいて最終体積の10%を超えないDMSOと実施し、TRAPモノマーが、およそ1mMの濃度で存在する。Au-TPPのTRAPに対する比は4:2~4:3の範囲である。このことは、Au-TPPMSとの反応で得られる構造と同じ構造のTRAPケージの形成を生じる。試薬の量をそれぞれ調整した。TRAPモノマー/金ドナーの比及び反応の条件は、Au-TPPMSが金ドナーであった場合の反応と同じであった。
異なるハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)ドナー剤による2つの例を上記のように実施した。異なるアリール部分を有するハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)は、本発明による複合体形成に適切であることを示している。
(実施例3)
クライオEMを使用したTRAP複合体構造の確認
TRAPケージの初期(低解像度)クライオEM構造を、GNPを使用して形成されたTRAPケージにクライオEM単一粒子再構成技術を使用して得て10,11、この構造データを、本発明により得られるハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)との反応によって形成されたTRAPケージの高解像度クライオEM構造の解析用の初期モデルとして使用した。
クライオEMを使用して、TRAPケージの構造を3.9オングストローム解像度で解析した。これは、24個のTRAP環の配置を示すため及び環の向かい合っているシステイン側鎖の間の連結密度(Auと指定されている)の存在を実証するために十分であった(図2を参照すること)。
図2は、金縫合反応及び結果として形成された複合体の例を例示する。図2Aは、2つの相互直交図で示されている単一のTRAP環(pdb 4v4f)の構造を示す。変異残基35及び64は、それぞれのTRAPモノマーにおいて球体で示され、残基35は環の外周にある。金(I)含有化合物(矢印)との反応は、図2Bに示される構造、すなわち、中空ケージ構造の擬原子モデルの構造を生じる。ここでは、24個の環のそれぞれが模式図様式で示され、システインが環を架橋しており、間に金原子を表す球体を有する棒で示されている。このモデルは、図2Cに例示されている構造を使用して構成され、得られたクライオEM密度を示している。図2Dは、架橋金原子の存在を示す、生成されたタンパク質ケージにおける2つの隣接TRAP環の拡大図である。クライオEMマップが灰色のネットで示され、タンパク質が模式図様式で示され、システイン残基が棒で示されている。4個のシステイン残基が矢印で強調され、これらの架橋金原子が球体で示されている。Au-S連結の間の精密な距離が図2Eに示されており、向かい合っているシステイン側鎖の間にモノスルホン化トリフェニルホスフィン金(I)クロリドの作用により形成された化学結合が示され、「R」は、TRAPタンパク質の残部を指す。
Au-TPPMSを使用して形成されたTRAPケージの高解像度でのクライオEM単一粒子再構成
Au-TPPMSを使用して形成された精製試料(3μlの0.89mg ml-1)を、約10nmの厚さの無定形炭素薄膜が穴を覆っているグロー放電穴あき炭素グリッド(Quantifoil R 1.2/1.3、Mo 200メッシュ)に適用し、4℃及び100%湿度で30秒間インキュベートした。次いでグリッドを3.0秒間ブロットし、Vitrobot Mark IV(FEI社)を使用して液体エタンに浸した。データは、加速電圧の300kV及び名目倍率の75,000×で稼働する透過電子クライオ顕微鏡(FEI Titan Krios)によりEPUソフトウエアを使用して半自動的に記録した。画像(0.91Å/画素)を、Falcon IIダイレクトエレクトロンディテクタ(direct electron detector)(FEI社)により、2.0秒の露光で32フレームとして、全電子線量の40電子/Å2を用いて、およそ-0.9~-3.4μmの範囲のアンダーフォーカス(underfocus)値を適用して記録した。続いてデータを、MotionCor2を使用して整列及び合計して21、最終線量重み付け画像を得て、次いで2×ビニング(binning)を、Bsoftプログラムパッケージを使用して実施し22、1.82Åの画素サイズを得て、更に画像処理した。コントラスト伝達関数の推定を、CTFFIND4を使用して実施した23。Thon環の程度及び規則性に基づいて不十分な電力スペクトルを示す顕微鏡写真を不採用にした(96枚の顕微鏡写真)。最初に、およそ2,000個の粒子を手作業でピッキングし、EMAN2.1を使用して、無基準二次元(2D)分類に付した18。10個の代表的な2Dクラス平均を、Gautomatch(http://www.mrc-lmb.cam.ac.uk/kzhang/)を使用して、自動化粒子ピッキング用のテンプレートとして選択した。全ての後続処理工程をRELION 2.0で実施した20。10,290枚の顕微鏡写真から合計1,085,623個の自動ピッキングされた粒子を、無基準2D分類に付して、異常な粒子を取り除いた。球体形状を示す5つの代表的なクラスの粒子(578,865個の粒子)を以下の方法で選択した。選択された粒子を三次元(3D)分類に付して、対称性を有することなく(C1対称性)25回の繰り返しで3.7°の角度サンプリングを使用して3つのクラスに分け、上記に記載された初期低解像度構造を、60Åに低域濾過した後、3D分類における基準として使用した。規則的な密度分布を有する最も対称的なケージ構造を示すクラスにおける粒子(176,463個の粒子)を、以下の処理のために選択した。しかし密度マップは、全体的なTRAPケージ構造を、24個の11員環を有する球体として明確に示したが、個別の環のレベルでの構造は、奇妙なことにタンパク質キラルの特徴を欠いており、2つの鏡映タンパク質構造の混合型の特徴を示し、キラルケージ構造の存在を示唆しているX線結晶学により以前に決定されたタンパク質構造24から予想されるものに反している。したがって、2個のキラルケージ粒子を分離するため、本発明者らは、2回目の3D分類を実施して、対称性を有することなく(C1対称性)25回の繰り返しで1.8°のより精密な角度サンプリングを使用して2つのクラスに分けた。得られた2つのマップは、それぞれ、個別のタンパク質環のレベルで左手系及び右手系構造を明確に示した。各構造(クラスI:94,338個の粒子及びクラスII:82,125個の粒子)を、C1(非対称性再構成)、C4及びD4対称性によって個別に精密化した。データセットの半分を個別に精密化した2つの再構成に軟質球状マスクを適用した後、金基準フーリエシェル相関(FSC=0.143判定基準)により、クラスIの解像度を、3.9Å(D4対称性)、4.1Å(C4対称性)及び4.4Å(C1対称性)と推定し、クラスIIの解像度を、3.9Å(D4対称性)、4.2Å(C4対称性)及び4.5Å(C1対称性)と推定した。個別のタンパク質構造により、クラスIマップの利き手傾向を対向方向に修正した(クラスI:右手系ケージ構造及びクラスII:左手ケージ構造を生じた)。クラスI及びIIのマップを、それぞれ-229及び-231Å2のB因子により鮮明にした。局所解像度を、ResMapを使用して推定した25。図はUCSF Chimeraを使用して調製した26
構造精密化
初期原子座標モデルは、TRAP結晶構造に基づき(PDB受入4V4F9)、Cys35及びSer64置換をCootにモデル形成して27、TRAP-CS環構造を生成した。残基の位置は、G.ステアロサーモフィルス(G. stearothermophilus)のコード配列における実際の位置を反映して、初期委託PDBにより番号が付け替えられている(例えば、変異Lys→Cys残基は元のPDBファイル4V4Fでは残基番号37が指定されているが、本発明者らの分析では残基番号35に対応している)ことに留意すること。密度マップの初期検査は、弱又は欠測密度の域を明らかにし、したがって、各TRAPサブユニットの構造を残基6~72に切断し、加えて残基22~32(TRAPのアポ形態における高い柔軟性を示すループに対応する5)を、これを反映するモデルから省いた。LH及びRH構造の精密化は、類似したレジームに従った。TRAP-CS環の24個のコピーを、最初に、Phenix実空間精密化(real-space refinement)を使用する剛体精密化によりケージ密度に当てはめた28。高解像度TRAP結晶構造を基準として使用する元のクライオEMマップボクセルサイズの最適化24を、以前の報告と類似した方法において29,30、以下のように実施した。TRAP-CS環原子モデルの模擬マップと様々なボクセルスケール(元の1.82Åボクセル-1から出発し、0.01の増加により変わる)のクライオEMマップとの間の当てはめの相互相関スコアの比較を、Chimeraを使用して実施し、1.74Åボクセル-1のマップスケールに対応する最適な結果を得た。類似した結果を、Phenixを使用して、様々なスケールでクライオEM密度に24個のTRAP-CS環の個別のサブユニットの剛体精密化を実施することによって得た28。Au1原子(合計で120個)を、剛体当てはめモデルの隣接環からのCys35側鎖の間の密度の顕著なブロブに手作業でドッキングさせ、続いて、剛体精密化、大域的最小化、1回の疑似アニーリング及びadp精密化を含む、Phenix実空間精密化の15回のマクロサイクルを、1.74Åボクセル-1マップを使用して実行し、Au-S結合長さ及びS-Au-S結合角度の拘束を、精密化の後半段階に適用した。精密化モデルの確証を、MolProbityを使用して実施した31。TRAPケージモデルの界面接触の分析を、PDBePISA (http://www.ebi.ac.uk/pdbe/pisa/)を使用して実施した32
質量分析:
質量分析を更に使用して、TRAPケージ構造内のTRAPモノマーを連結する金原子の存在を支持した。
質量分析実験の結果を図3Aに表し、3つの形態のTRAPモノマーのLC-MSデータを例示し、(左から)リガンド非結合タンパク質(暗灰色)、単一金原子に結合したモノマー(灰色)、並びに金原子及びTPPMSリガンドに結合したモノマー(薄灰色)である。10+の電荷状態のみが明確さのために示されており、異なるピークの拡大が、明白な割当の正確な質量決定を可能にする。他の小さいピークは、塩付加物及び/又は他の電荷状態に対応する。挿入表はTRAP質量のリストを示し、質量の付加が、異なる修飾に起因して予想される。これは、10+の電荷状態の原因である10個のプロトンを考慮に入れると、測定された質量に非常に良好に対応している。図3Bは、高衝突活性化により実施されたインタクトTRAPケージの未変性MSを例示する。高衝突活性化により実施されたインタクトTRAPケージの未変性MSは、高いm/zのシグナルの広範囲の未解像領域及び低いm/zの一連のピークを明らかにした。これらの特徴は、インタクトケージの解離に対応し、ケージフラグメントの放出を生じ、低m/z領域の拡大を例示している。図3Cは図3Bに表された低m/z領域の拡大を示し、様々な一連の電荷状態の割当を示している。修飾及び非修飾形態の両方のモノマーTRAP(灰色、Aと同じ配色)は、観察された主なフラグメントである。上記に記載された質量スペクトルは、注目すべきことに、単一金原子を含有するTRAP二量体に明確に割り当てられうるピークが観察されることを示し、TRAP-Au(I)-TRAP連結の仮定を確証している。
電熱原子吸光分光法(ETAAS)は、ケージ集合体1つ当り112±8個の金原子を示し、推定値の120個に極めて合致している(下記のTable 1(表1))。
Figure 0007199512000001
上記の実験は、TRAP複合体の構造を確認した。ハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)との反応により得られるTRAP複合体の構造は、本発明者らの文献に以前に記載されたGNPとの反応より得られる構造と同じである。
(実施例4)
TRAP複合体の安定性試験
熱安定性試験を以下のように実施した。水性緩衝液中の1μgのTRAPケージタンパク質を含有する試料(7.5μl)を、異なる時間(0~180分間)で95℃に加熱した。加熱した後、試料を、ベンチトップ遠心分離機により10,000rpmで5分間遠心分離した。上清を取り出し、2.5μlの4×未変性PAGE試料緩衝液と混合し、試料を、未変性PAGE分析に付し、同じ試料をTEMにより更に分析した。典型的な結果を図4A~Cに示す。
金縫合反応の結果により一緒に保持されたタンパク質複合体の安定性を図4に示し、ここで図4Aは未変性PAGEゲルを例示し、形成されたTRAPケージの高い熱安定性を示す。試料を、ゲルに適用する前に、示された温度で示された時間にわたって処理した。TRAPケージに対応するバンドを矢印で示す。C=対照レーン(熱処理なし)。M=タンパク質分子量マーカー(質量をゲルの左側にkDaで示す)。図4Bは、熱処理を伴わないで形成されたTRAPケージのTEM画像を示す(スケールバー200nm)。図4Cは、95℃で3時間のインキュベーションの後でケージ構造に有意な分解を示さない、形成されたTRAPケージのTEM画像を例示する(スケールバー100nm)。
[参考文献]
Figure 0007199512000002
Figure 0007199512000003

Claims (22)

  1. 生体分子の部分の遊離チオール基のコンジュゲーションにより、生体分子複合体を形成させる方法であって、生体分子を、-S-Au-S-結合が形成される金ドナー剤との反応を介して接続する反応を含み、金ドナー剤がハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)であることを特徴とする方法。
  2. 前記生体分子が、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. コンジュゲーションにより複合体を形成させ、複合体が、同じ生体分子である複数の単位から構成される、請求項1に記載の方法。
  4. 複合体が、対称又は非対称である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記部分がシステインである、請求項1に記載の方法。
  6. システイン部分が、前記生体分子における天然の部分である、請求項5に記載の方法。
  7. システイン部分が、前記生体分子中に人工的に導入されている、請求項5に記載の方法。
  8. ハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)において、ハロゲンが、クロロ、ブロモ、ヨード、フルオロを含む群から選択され、アリールが、非置換フェニル、又はオルト、メタ若しくはパラ、モノ若しくはポリ置換フェニルを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 金ドナー剤が、クロロ[ジフェニル(3-スルホナトフェニル)ホスフィン]金(I)である、請求項1に記載の方法。
  10. 金ドナー剤が、クロロ(トリフェニルホスフィン)金(I)である、請求項1に記載の方法。
  11. a.生体分子の調製工程、
    b.生体分子と金ドナーとの反応による、生体分子のコンジュゲーション工程、
    c.コンジュゲーション生成物の精製工程
    を含む、請求項1に記載の方法。
  12. 生体分子の調製が、適切な発現系における生体分子の発現及び発現生成物の精製によって実施される、請求項11に記載の方法。
  13. 工程aの生体分子に少なくとも1個のシステインが導入される、請求項11に記載の方法。
  14. 前記コンジュゲーションが、水溶液中において、室温で、3日間まで実施され、生体分子:金ドナーのモル比が、3:1~1:4の範囲である、請求項11に記載の方法。
  15. 前記コンジュゲーション生成物の精製が、濾過、結晶化、遠心分離、カラムクロマトグラフィーの群から選択される方法のうちの少なくとも1つにより実施される、請求項11に記載の方法。
  16. 前記生体分子複合体がタンパク質ケージである、請求項1に記載の方法。
  17. 前記生体分子がTRAPタンパク質である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記タンパク質複合体が24個の生体分子単位からなる、請求項16に記載の方法。
  19. 請求項1から18のいずれか一項に記載の生体分子複合体を形成させる方法における、金ドナー剤としてのハロゲン(トリアリールホスフィン)金(I)分子の使用。
  20. -S-Au-S-結合の形成による生体分子の部分の遊離チオール基のコンジュゲーションである、複合体形成である、請求項19に記載の使用。
  21. 複合体がタンパク質ケージである、請求項20に記載の使用。
  22. タンパク質がTRAPである、請求項21に記載の使用。
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