JP7197827B2 - 蛍光標識ポリリジン及びこれを用いる観察方法 - Google Patents

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本発明は、蛍光色素化合物で標識した蛍光標識ポリリジン、及びこれを用いる対象の観察方法に関する。
皮膚外用薬や化粧料を効率的よく開発するため、生体表面組織の状態を精度よく観察することが重要である。従来その一般的な方法として、細胞採取用ブラシやテープストリッピング等の公知の手法により採取した生体材料を染色剤で染色したのち、顕微観察することが行われている。
このうち皮膚角層細胞の観察を目的とする場合には、例えば頬部や上腕内側部よりテープストリッピング法にて採取された角層細胞を、ゲンチアナバイオレット-ブリリアントグリーン染色、ローダミンB-メチレンブルー染色、ヘマトキシリン-エオジン染色などの染色方法で角層細胞を染色したのち、顕微鏡観察する方法が広く行われている。
しかしながら、これらの染色方法は操作手順が煩雑で、かつ染色に時間がかかるうえ測定者の技量に負うところが大きく、しばしば染色が不十分となり安定した顕微鏡観察が行えない問題があった。
この解決策として、例えば特許文献1では、上記した染色法と併せて、タンニン酸、クロム塩類、アルミニウム塩類、グルタールアルデヒド、ホルマリンの群から選ばれる一種または二種以上を媒染剤として使用した角層細胞の染色方法が提案されている。また、特許文献2では、染色剤を水と混和可能な有機溶剤を含有する溶媒に溶解したのち、角層細胞の染色に供する方法が提案されている。
これらの他に、染色剤を用いずに角層細胞を直接観察する方法も提案されている。例えば、特許文献3では、紫外線下、顕微鏡乃至はビデオマイクロスコープを介して観察する方法が、特許文献4ではテープストリッピングにて採取した角層細胞を共焦点レーザー顕微鏡で観察する方法が提案されている。
ところで、ε-ポリ-L-リジンは、L-リジンのε位のアミノ基とカルボキシル基とがペプチド結合により直鎖状に連なったポリマーである。ε-ポリ-L-リジンは、抗菌作用を示すことが知られており、保存料として食品添加物や化粧品原料等に実用化されている(非特許文献1)。また、ε-ポリ-L-リジンは、正電荷を帯びていることから、負に帯電している物と相互作用する。そして、角層細胞等にも吸着することが示唆されていたが、その吸着挙動については明らかではなかった。
特開2000-125854号公報 特開2003-202336号公報 特開2003-315331号公報 特開2017-111065号公報
Hiraki, J. Antibact. Antifung. Agents, Vol. 23, No.6, pp.349-354, 1995
角層細胞の観察方法に関して、特許文献1及び2の方法では、従来の染色方法を改良しながらも依然として操作手順は煩雑である。また、特許文献3及び4の方法では、高価な光学機器を要するため、大学等の小規模な研究室では利用が困難である。
このような問題に鑑み、本発明の課題は、操作が簡便で、かつ高価な分析機器を使用しなくても、高い精度で角層細胞を始めとする生体組織の観察方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、蛍光化合物で標識した蛍光標識ポリリジンを対象に吸着させることにより、蛍光染色された対象を容易に蛍光顕微鏡で観察できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]蛍光色素化合物で標識した蛍光標識ポリリジン。
[2]蛍光色素化合物が、3,6-ジアミノ-9-[2,4-ビス(リチオオキシカルボニル)フェニル]-4-(リチオオキシスルホニル)-5-スルホナトキサンチリウム/3,6-ジアミノ-9-[2,5-ビス(リチオオキシカルボニル)フェニル]-4-(リチオオキシスルホニル)-5-スルホナトキサンチリウム又はその誘導体である、[1]に記載の蛍光標識ポリリジン。
[3]蛍光色素化合物が、9-[2-カルボキシ-4(オア5)-[[(2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-カルボニル]フェニル]-3,6-ビス-(ジメチル
アミノ)-キサンチリウム インナーソルト又はその誘導体である、[1]に記載の蛍光
標識ポリリジン。
[4]蛍光色素化合物の導入率が蛍光標識ポリリジン全量の0.1~10重量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の蛍光標識ポリリジン。
[5]ポリリジンが、ε-ポリリジン及び/又はその塩である、[1]~[4]のいずれかに記載の蛍光標識ポリリジン。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の蛍光標識ポリリジンを含有する、観察用試薬。[7][1]~[5]のいずれかに記載の蛍光標識ポリリジンを対象に吸着させる工程を含む、対象の観察方法。
[8]対象が角層細胞、毛髪、微生物、及び繊維製品からなる群から選択される、[7]に記載の観察方法。
[9]吸着工程がpH6~8の条件下で行われる、[7]又は[8]に記載の観察方法。[10]対象がダメージ毛髪である、[8]又は[9]に記載の観察方法。
本発明の蛍光標識ポリリジンを用いれば、煩雑な染色操作や高価な分析機器を用いることなく、簡便な操作で精度よく、角層細胞を始めとする生体細胞や毛髪等の生体組織、微生物、天然繊維や化学繊維及び合成繊維等の繊維素材、天然樹脂や合成樹脂等の工業素材の状態を、観察することができる。
蛍光標識ポリリジンの概略図。 蛍光標識ポリリジンの概略図。 実施例2の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例3の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例4の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。比率はアミノ基モル濃度比を表す。 実施例5の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。比率はアミノ基モル濃度比を表す。 実施例6の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例7の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例8の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。比率はアミノ基モル濃度比を表す。 実施例8の、蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。比率はアミノ基モル濃度比を表す。 実施例9の蛍光標識ポリリジンで染色した毛髪の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例10の蛍光標識ポリリジンで染色した毛髪の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例11の蛍光標識ポリリジンで染色した毛髪の蛍光顕微鏡による観察写真。比率はアミノ基モル濃度比を表す。 実施例12の蛍光標識ポリリジンで染色した毛髪の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例13の蛍光標識ポリリジンで染色した微生物の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例14の蛍光標識ポリリジンで染色した微生物の蛍光顕微鏡による観察写真。比率はアミノ基モル濃度比を表す。 実施例16の蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。 実施例17の蛍光標識ポリリジンで染色した角層細胞の蛍光顕微鏡による観察写真。比率はアミノ基モル濃度比を表す。 実施例18の蛍光標識ポリリジンで染色した毛髪の蛍光顕微鏡による観察写真。
本発明の一の形態は、蛍光色素化合物で標識した蛍光標識ポリリジンである。すなわちポリリジンに蛍光色素化合物が結合したものであり、かかる結合は共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等特に限定されない。
本発明において、ポリリジンはα-ポリリジン、ε-ポリリジンのいずれでもよく特に限定されるものではないが、毒性の低さ、入手の容易さからε-ポリリジンが好ましい。また、通常はL-リジンのポリマーである。
また、ポリリジンは、通常はリジンのホモポリマーであるが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他のアミノ酸をモノマーとして含んでもよい。
また、ポリリジンの大きさは、特に限定されないが、重量平均分子量が好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上であり、好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下、さらに好ましくは6000以下であり、3000~6000の範囲が特に好ましい。なお、ここで重量平均分子量は、GPC-LALLS法により測定された値である。
ε-ポリリジンは、例えば特許第1245361号に記載の方法で製造することができる。具体的には、ストレプトマイセス・アルプラス・サブスピーシーズ・リジノポリメラスを、その組成が、グルコース5重量%、酵母エキス0.5重量%、硫酸アンモニウム1重量%、リン酸水素二カリウム0.08重量%、リン酸二水素カリウム0.136重量%、硫酸マグネシウム・7水和物0.05重量%、硫酸亜鉛・7水和物0.004重量%、
及び硫酸鉄・7水和物0.03重量%であり、pHが6.8に調整された培地にて培養し、得られた培養物からε-ポリリジンを分離・回収する。
他にも、化学的手法によりポリリジンを製造してもよい。
また、ε-ポリリジンは、遊離の形であってもよいし、塩酸、硫酸、リン酸及び臭化水素酸から選ばれた少なくとも1種の無機酸、または酢酸、プロピオン酸、フマル酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれた少なくとも1種の有機酸の塩の形であってもよい。
ポリリジン塩は常法により製造される。例えば含水メタノール溶液に前記ε-ポリリジンを溶解させ、これに前記酸を加え、溶液が中和点を過ぎたところで、冷アセトンを加えて沈澱した塩を乾燥させることによって得られる。
本発明において、蛍光色素化合物は、ポリリジンと結合するものであれば特に限定されず、任意のものを用いればよい。
蛍光色素化合物の例としては、Alexa類、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)又はその誘導体、TAMRA、Cy3、Cy5、ローダミン6G(R6G)又はその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン(TMR))、テキサスレッド、BODIPY類、ROX、Hex、JOE、BHQ類等が挙げられる。これらのうち、3,6-ジアミノ-9-[2,4-ビス(リチオオキシカルボニル)フェニル]-4-(リチオオキシスルホニル)-5-スルホナトキサンチリウム/3,6-ジアミノ-9-[2,5-ビス(リチオオキシカルボニル)フェニル]-4-(リチオオキシスルホニル)-5-スルホナトキサンチリウム(商品名Alexa Fluor488(Thermo Fisher Scientific社製))またはその誘導体、及び9-[2-カルボキシ-4(オア5)-[[(2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-カルボニル]フェニル]-3,6-ビス-(ジメチルアミノ
)-キサンチリウム インナーソルト(商品名NHS-Rhodamine(Therrmo Fisher Scientific社製))又はその誘導体が、入手のし易さ、取り扱いの簡便さから、好ましい。これら
の蛍光色素化合物は常法によりポリリジンに反応させることにより、共有結合、イオン結合、配位結合、又は水素結合等でポリリジンを蛍光標識する。これらの蛍光色素化合物はポリリジンの有するアミノ基を介して錯体を形成し、蛍光標識ポリリジンを得ることができる(図1及び図2)。
本発明において、蛍光色素化合物のポリリジンへの導入率は、蛍光標識ポリリジン全量の好ましくは0.1~10重量%であり、より好ましくは0.3~3重量%である。この範囲より導入率が小さいと蛍光検出をし難い場合があり、またこの範囲より大きいとポリリジンの対象への吸着が困難になる場合がある。
ポリリジンは塩基性アミノ酸L-リジンのホモポリマーであり、等電点以下の水中では側鎖アミノ基が正電荷を帯びることから、負電荷を帯びた物質に電気的に吸着してイオン複合体を形成する。また、炭化水素リッチな構造から、疎水性相互作用による対象への吸着も生じ得る。
そのため、本発明の蛍光標識ポリリジンは、ポリリジンが吸着し得る対象の観察用試薬として好適に用いることができる。かかる対象としては、特に限定されないが、角層細胞を始めとする生体細胞や毛髪等の生体組織、微生物、天然繊維や化学繊維及び合成繊維等の繊維素材、天然樹脂や合成樹脂等の工業素材などを好適に挙げられる。
本発明の他の形態は、本発明の蛍光標識ポリリジンを対象に吸着させる工程を含む、対象の観察方法である。前記吸着工程は、通常は水溶液の態様で蛍光標識ポリリジンを対象に接触させることにより行われる。
吸着工程を行う条件は、特に限定されないが、pH6~8が好ましい。また、温度は4~40℃が好ましい。また、蛍光標識ポリリジンは0.001~0.01重量%の濃度の水溶液で適用することが好ましい。かかる適用時間は、前記濃度にもよるが、5~60分
間で十分に吸着が行われる。
通常は、蛍光標識ポリリジンを対象に接触させて吸着した後、余剰の蛍光標識ポリリジンを洗浄等により除去した後に、蛍光顕微鏡や蛍光観察用デジタルマイクロスコープ等にて蛍光検出することにより、ポリリジンの対象上での分布状況を観察する。
観察対象は、特に限定されないが、角層細胞を始めとする生体細胞や毛髪等の生体組織、微生物、天然繊維や化学繊維及び合成繊維等の繊維素材、天然樹脂や合成樹脂等の工業素材などを好適に挙げられる。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>蛍光標識ポリリジンの調製1
ε-L-ポリリジン(以降「PLL」と記す、Mn:4090、Mw:4700、10質量%水溶液、JNC株式会社製)を0.1M NaHCO(pH9.0)溶液で希釈
して10mg/mLとした。これに、Alexa Fluor 488 5-TFP ester (Thermo Fisher Scientific)100μg/100μLを加えて室温にて1時間反応させた。反応液を遠心限外ろ過(Amicon Ultra 3K)に供し、未反応の蛍光色素を除去し、蛍光標識されたポリリ
ジンAlexa Fluor 488-PLL(AF-PLL)を得た。得られたAF-PLLは精製水で所
定の濃度に希釈して、以降の吸着実験に供した。
<実施例2>角層細胞への吸着1
角質チェッカー(日本アッシュ)を用いたテープストリッピングにより、健常人上腕内側より最外層角層の角層細胞を非侵襲的に採取した。これにAF-PLL水溶液(50μg/mL)を添加し、室温にて所定の時間インキュベートした。反応後、水洗した後に、角層に吸着したAF-PLLを蛍光顕微鏡EVOS-FL(Thermo Fisher Scientific)により観察した。
反応時間ごとの染色結果を図3に示す。AF-PLLにより角層細胞が均一に染色された。また、反応時間に依存して蛍光強度が大きくなり吸着量が増加し、約60分でほぼ飽和した。
<実施例3>濃度依存性1
AF-PLL水溶液の濃度を変えて(0~100μg/mL)、実施例2と同様に角層細胞を染色し(室温、2時間)、観察した。
結果を図4に示す。AF-PLLの濃度に依存して、蛍光強度の増大が認められた。
<実施例4>非標識PLLによる競合阻害1
AF-PLLと非標識PLLとを所定の割合で含有する水溶液(AF-PLL濃度:50μg/mL)を角層細胞に添加し、実施例2と同様に角層細胞を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を図5に示す。AF-PLLの角層細胞への吸着は、非標識PLLにより競合的に阻害された。この結果から、蛍光検出により観察されるのがPLLの角層細胞への吸着挙動であることが確認された。
<実施例5>L-リジンモノマーの影響
AF-PLLとL-リジンとを所定の割合で含有する水溶液(AF-PLL濃度:50μg/mL)を角層細胞に添加し、実施例2と同様に角層細胞を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を図6に示す。100倍濃度のL-リジンモノマー共存下でもAF-PLLの吸着
はほとんど阻害されなかった。
<実施例6>pH依存性
種々の緩衝剤を用いてAF-PLL水溶液(50μg/mL)のpHを2.5~9.0に調整し、実施例2と同様に角層細胞を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を図7に示す。酸性領域(pH2.5~5.0)では蛍光が検出されず、AF-PLLの吸着は阻害されていた。一方、中性領域(pH6.0~8.0)ではAF-PLL
の吸着は阻害されなかった。アルカリ性領域(pH9.0)では吸着は阻害される傾向であったが、用いる緩衝液により吸着挙動が異なっていた。
<実施例7>塩濃度の影響
NaClを0~1.0mol/Lで含有するAF-PLL水溶液(50μg/mL)を調製し、実施例2と同様に角層細胞を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を図8に示す。0.1mol/L以上ではNaCl濃度に依存して蛍光強度の減弱が認められ、1mol/Lではほぼ完全に吸着が阻害された。
実施例6及び7の結果から、ポリリジンと角層細胞との間の相互作用の少なくとも一部は、ポリリジンのアミノ基とのイオン結合を介したものであると推測できる。
<実施例8>カチオン化合物の影響
種々のカチオン性界面活性剤を含有するAF-PLL水溶液(50μg/mL)を調製し、実施例2と同様に角層細胞を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を表1並びに図9及び10に示す。いずれのカチオン性界面活性剤においても、炭素鎖長が長くなるほど、蛍光強度の減弱が認められ、ポリリジンと角層細胞との相互作用が阻害されることが認められた。
Figure 0007197827000001
<実施例9>毛髪への吸着1
市販のテスト用毛束(ビューラックス)、および健常人より採取した毛髪を角質チェッカー(日本アッシュ)に瞬間接着剤で固定したのち、精製水またはAF-PLL水溶液(100μg/mL)を添加し、室温にて2時間インキュベートした。反応後、水洗した後に、毛髪に吸着したAF-PLLを蛍光顕微鏡EVOS-FL(Thermo Fisher Scientific)により観察した。
染色結果を図11に示す。AF-PLLにより毛髪が均一に染色された。なお、毛髪には自家蛍光を示すものもあり、精製水においてもわずかに蛍光が観察された。
<実施例10>濃度依存性2
AF-PLL水溶液の濃度を変えて(0~100μg/mL)、実施例9と同様に毛髪を染色し(室温、2時間)、観察した。
結果を図12に示す。AF-PLLの濃度に依存して、蛍光強度の増大が認められた。
<実施例11>非標識PLLによる競合阻害2
AF-PLLと非標識PLLとを所定の割合で含有する水溶液(AF-PLL濃度:100μg/mL)を毛髪に添加し、実施例9と同様に毛髪を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を図13に示す。AF-PLLの毛髪への吸着は、非標識PLLにより競合的に阻害された。この結果から、蛍光検出により観察されるのがPLLの毛髪への吸着挙動であることが確認された。
<実施例12>ダメージ毛髪への吸着1
ダメージ毛髪は、市販のテスト用毛束をブリーチ処理して作製した。ブリーチ剤処理は、使用直前に1剤(アルカリ剤)と2剤(酸化剤)を混合して、テスト用毛束に塗布した。30分程放置し、水洗した後、実施例9と同様に毛髪を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を図14に示す。ダメージ毛髪ではAF-PLLにより蛍光輝度の顕著な上昇が認められた。また、ダメージ毛髪では自家蛍光の増加も観察された。
<実施例13>微生物への吸着
サブロー平板培地にて25℃/3日培養したSaccharomyces cerevisiae(NBRC10217)
を、滅菌綿棒を用いて、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)6mLに懸濁し、~10 CFU/mLの微生物懸濁液を得た。得られた微生物懸濁液を滅菌ピペットで適当量採取して、1.5mL容マイクロチューブ(Eppendorf製)に分注した後、10 mg/mL A
F-PLLを50 μL加え(最終濃度が500μg/mL)、トータル1mLの反応液を調製した。比較対照のため、AF-PLL水溶液に代えて同量の精製水を添加した試験区を調製した。これらを室温にて2時間インキュベートした後、遠心分離機(Eppendorf製
)にて遠心分離(5000rpm、10分)して上清を除去した。沈殿の菌体に1mLのPBSを加えて懸濁し、再度遠心分離し上清液を除去した。これを更に2回繰り返して洗浄した後、微生物に吸着したAF-PLLを蛍光顕微鏡EVOS-FL(Thermo Fisher Scientific)により観察した。
染色結果を図15に示す。AF-PLLを作用させることにより、微生物の形に沿うように蛍光が検出され、AF-PLLにより微生物が染色されることが観察された。
<実施例14>非標識PLLによる競合阻害3
実施例13と同様の方法で~10CFU/mLに調製した微生物懸濁液を950μL
取り、10 mg/mLのAF-PLLを10 μL(最終濃度100μg/mL)と250
mg/mLの非標識PLLを40 μL(最終濃度10 mg/mL)それぞれ加え(標識
ポリリジン:非標識ポリリジン=1:100)、実施例13と同様に微生物を染色(室温、2時間)した後、観察した。
結果を図16に示す。AF-PLLの微生物への吸着は、非標識PLLにより競合的に阻害された。この結果から、蛍光検出により観察されるのがPLLの微生物への吸着挙動であることが確認された。
<実施例15>蛍光標識ポリリジンの調製2
蛍光色素化合物をNHS-Rhodamineとした以外は実施例1と同様の処理を行い、蛍光標識
されたポリリジンRhodamine-PLL(Rho-PLL)を得た。得られたRho-PLLは
精製水で所定の濃度に希釈して、以降の吸着実験に供した。
<実施例16>角層細胞への吸着2
蛍光標識されたポリリジンをRho-PLL水溶液(濃度0~200μg/mL)とした以外は、実施例2と同様に角層細胞を染色(室温、2時間)した。反応後、水洗した後に、角層に吸着したRho-PLLを、蛍光顕微鏡EVOS-FL(RFPフィルター装着)により観察した。
結果を図17に示す。前述したAF-PLL同様に、Rho-PLLの濃度に依存して蛍光強度の増大が認められた。
<実施例17>非標識PLLによる競合阻害4
Rho-PLLと非標識PLLとを所定の割合で含有する水溶液(Rho-PLL濃度:20μg/mL、および200μg/mL)を角層細胞に添加し、実施例2と同様に角層細胞を染色(室温、2時間)した後、蛍光顕微鏡EVOS-FL(RFPフィルター装着)により観察した。
結果を図18に示す。前述したAF-PLL同様に、Rho-PLLの角層細胞への吸着は、非標識PLLにより競合的に阻害された。この結果から、蛍光検出により観察されるのがPLLの角層細胞への吸着挙動であることが確認された。
<実施例18>ダメージ毛髪への吸着2
蛍光標識されたポリリジンをRho-PLL水溶液(Rho-PLL濃度;100μg/mL)とした以外は、実施例12と同様に毛髪を染色(室温、2時間)した後、蛍光顕微鏡EVOS-FL(RFPフィルター装着)により観察した。
結果を図19に示す。ダメージ毛髪では、前述したAF-PLL同様に、Rho-PLLにより蛍光輝度の顕著な上昇が認められた。しかしながら、Rho-PLLではAF-PLLとは異なり、毛髪自身の自家蛍光はほとんど観察されず安定した観察が可能であった。
本発明の蛍光標識ポリリジンを用いれば、煩雑な染色操作や高価な分析機器を用いることなく、簡便な操作で精度よく、角層細胞を始めとする生体細胞や毛髪等の生体組織、微生物、天然繊維や化学繊維及び合成繊維等の繊維素材、天然樹脂や合成樹脂等の工業素材の状態を、観察することができるため、非常に有用である。

Claims (8)

  1. 蛍光色素化合物で標識した蛍光標識ポリリジンを含有する、観察用試薬であって
    角層細胞、毛髪、微生物、及び繊維製品からなる群から選択されるいずれかを観察するためのものである試薬
  2. 蛍光色素化合物が、3,6-ジアミノ-9-[2,4-ビス(リチオオキシカルボニル)フェニル]-4-(リチオオキシスルホニル)-5-スルホナトキサンチリウム/3,6-ジアミノ-9-[2,5-ビス(リチオオキシカルボニル)フェニル]-4-(リチオオキシスルホニル)-5-スルホナトキサンチリウム又はその誘導体である、
    請求項1に記載の試薬
  3. 蛍光色素化合物が、9-[2-カルボキシ-4(オア5)-[[(2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-カルボニル]フェニル]-3,6-ビス-(ジメチルアミ
    ノ)-キサンチリウム インナーソルト又はその誘導体である、請求項1に記載の試薬
  4. 蛍光色素化合物の導入率が蛍光標識ポリリジン全量の0.1~10重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の試薬
  5. ポリリジンが、ε-ポリリジン及び/又はその塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の試薬
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の試薬に含有される蛍光標識ポリリジンを対象に吸着させる工程を含む、対象の観察方法であって、
    対象が角層細胞、毛髪、微生物、及び繊維製品からなる群から選択される、観察方法
  7. 吸着工程がpH6~8の条件下で行われる、請求項に記載の観察方法。
  8. 対象がダメージ毛髪である、請求項又はに記載の観察方法。
JP2018205587A 2017-11-30 2018-10-31 蛍光標識ポリリジン及びこれを用いる観察方法 Active JP7197827B2 (ja)

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