JP7197622B2 - 帯電防止表面保護フィルム - Google Patents
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Description
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
また、液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。最近では、剥離帯電圧を+0.7kV~-0.7kVの範囲内にすることが求められてきている。
このため、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時に、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための、帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
また、特許文献2には、イオン性液体と酸価が1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート類が開示されている。
また、特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、イオン性液体、アルカリ金属塩、ガラス転移温度0℃以下のポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献5,6には、表面保護フィルムの粘着剤層の中に、ポリエーテル変性シリコーンを混合することが示されている。
被着体に対する汚染が少なく、且つ、帯電防止性能の経時変化も少なくするためには、被着体を汚染している原因と推測される帯電防止剤の添加量を減量させる必要がある。しかし、帯電防止剤の添加量を減量させた場合には、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧が高くなってしまう。本発明者らは、帯電防止剤の添加量の絶対量を増加させないで、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑える方法について検討した。その結果、粘着剤組成物の中に、帯電防止剤を添加し混ぜて粘着剤層を形成するのではなく、粘着剤組成物を塗工・乾燥させて粘着剤層を積層した後に、粘着剤層の表面に、適量の帯電防止剤の成分を付与することにより、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えられることを見出し、本発明を完成した。
本発明の帯電防止表面保護フィルムによれば、光学用フィルムの表面を確実に保護することができることから、生産性の向上と歩留まりの向上を図ることができる。
図1は、本発明の帯電防止表面保護フィルムの、概念断面図である。この帯電防止表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の片面の表面に、帯電防止剤を含有していない粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、帯電防止剤含有材料が存在する帯電防止剤層3が形成されており、さらに、帯電防止剤層3の表面には、剥離処理した剥離フィルム4が貼合されている。
また、必要に応じて、基材フィルム1の、粘着剤層2が形成された面の反対側の面に、表面の汚れを防止する防汚層、帯電防止層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
帯電防止剤としては、界面活性剤系、イオン性液体、アルカリ金属塩、金属酸化物、金属微粒子、導電性ポリマー、カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられるが、透明性や(メタ)アクリル系ポリマーに対する親和性などから、界面活性剤系、イオン性化合物、アルカリ金属塩が好ましい。
また、帯電防止剤と各種樹脂の混合物に用いられる樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、などが挙げられる。
また、帯電防止表面保護フィルム10から、剥離フィルム4を剥がす時の操作性に優れることから、剥離フィルム4を、帯電防止剤層3から剥離するときの剥離力が、0.2N/50mm以下であることが好ましい。
本発明の帯電防止表面保護フィルム10は、剥離処理した剥離フィルム4が剥がされて、帯電防止剤層3が表出した状態(図2の帯電防止表面保護フィルム11)で、その帯電防止剤層3を介して被着体である光学部品5に貼合される。
(実施例1)
(帯電防止表面保護フィルムの作製)
2-エチルヘキシルアクリレート80重量部、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート17重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート3重量部の共重合体からなる粘着剤の40%酢酸エチル溶液100重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(東ソー社製コロネート(登録商標)HX)2重量部を撹拌・混合して粘着剤組成物を調合した。厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、調合した粘着剤組成物を、アプリケーターを用いて、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布した。その後、100℃の熱風循環式オーブンにて3分間加熱乾燥し、粘着フィルムを得た。その後、粘着剤層の表面に、帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドの酢酸エチル溶液を、乾燥後の帯電防止剤層の厚さが0.1μmになるようにメイヤーバーNo.4を用いて塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間加熱乾燥し、粘着剤層の表面に帯電防止剤層を形成したサンプルを作成した。このサンプルの帯電防止剤層の表面に、剥離フィルム(三菱樹脂(株)製ダイヤホイルMRF38、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、シリコーン剥離剤を処理したもの)を貼合し、実施例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
2-エチルヘキシルアクリレート70重量部、ブチルアクリレート20重量部、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート7重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート2重量部の共重合体からなる粘着剤の40%酢酸エチル溶液100重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(東ソー社製コロネート(登録商標)HX)1重量部を撹拌・混合して粘着剤を調合した。厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、調合した粘着剤を、アプリケーターを用いて、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布した。その後、100℃の熱風循環式オーブンにて3分間加熱乾燥し、粘着フィルムを得た。その後、粘着剤面に、帯電防止剤としてリチウムビス(フルオロスルフォニル)イミドの酢酸エチル溶液を、乾燥後の帯電防止剤層の厚さが0.05μmになるようにメイヤーバーNo.4を用いて塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間加熱乾燥し、粘着剤層の表面に帯電防止剤層を形成したサンプルを作成した。このサンプルの帯電防止剤層の表面に、剥離フィルム(三菱樹脂(株)製ダイヤホイルMRF38、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、シリコーン剥離剤を処理したもの)を貼合し、実施例2の帯電防止表面保護フィルムを得た。
実施例1の帯電防止剤層の乾燥後の厚さを0.3μmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の帯電防止表面保護フィルムを得た。
実施例1の帯電防止剤を、トリ-n-ブチルメチルアンモニウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド(スリーエムジャパン社製、品番:FC-4400)に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の帯電防止表面保護フィルムを得た。
粘着剤層の上に帯電防止剤層を積層する代わりに、実施例1の粘着剤組成物の中に、実施例1の帯電防止剤を固形分比率で100:1.5となるように混合した、帯電防止剤を混合した粘着剤組成物を、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の帯電防止表面保護フィルムを得た。
帯電防止剤層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを得た。
帯電防止剤層の乾燥後の厚さを0.5μmにした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の帯電防止表面保護フィルムを得た。
〈剥離フィルムの剥離力の測定方法〉
帯電防止表面保護フィルムのサンプルを、幅50mm、長さ150mmに裁断する。23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、帯電防止剤層から剥離フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを剥離フィルムの剥離力(N/50mm)とした。
帯電防止表面保護フィルムのサンプルから剥離フィルムを剥離した後、帯電防止剤層の表面の表面抵抗率を、高抵抗抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定する。
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した帯電防止表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、帯電防止表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを粘着力(N/25mm)とした。
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した帯電防止表面保護フィルムを、帯電防止剤層を介して貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で帯電防止表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG-LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した帯電防止表面保護フィルムを、帯電防止剤層を介して貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に3日および30日保管した。その後、帯電防止表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染性を目視にて観察した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染移行が無かった場合を(○)とし、偏光板に汚染移行が確認された場合を(×)とした。
本発明に係わる実施例1~4の帯電防止表面保護フィルムは、帯電防止剤層を介した貼合でも適度な粘着力があり、被着体の表面に対する汚染がなく、かつ、帯電防止表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低い。
一方、帯電防止剤を粘着剤層に均一に混合した比較例1の表面保護フィルムは、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低く、良好であるが、30日保管した後の経時にて被着体に対する汚染性が悪化した。また、粘着剤層の表面に、帯電防止剤層を設けなかった比較例2の表面保護フィルムは、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が高くなった。さらに、帯電防止剤層の厚さを増やした比較例3は、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧は低く、良好であるが、剥離した後の、被着体に対する汚染が多くなった。
本発明の帯電防止表面保護フィルムは、被着体に対する汚染が少なく、さらには、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する。このことから、本発明の帯電防止表面保護フィルムは、各種の光学部品等の生産工程の歩留まりを向上させることができ、産業上の利用価値が大である。
Claims (1)
- 透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、帯電防止剤を含有しない粘着剤層と、帯電防止剤層とが、この順に積層されてなり、
前記帯電防止剤層の上に、樹脂フィルムの片面に剥離剤を処理してなる剥離フィルムが、前記剥離剤を処理した面を介して積層されてなり、
前記粘着剤層が、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなるアクリル系粘着剤組成物を用いて形成されてなり、
前記帯電防止剤層が、帯電防止剤単体から形成されてなり、
前記帯電防止剤層の帯電防止剤が、アルカリ金属塩の少なくとも1種であり、前記アルカリ金属塩が、Li + 、K + よりなるカチオン群から選択された1種と、BF 4 - 、PF 6 - 、CF 3 SO 3 - 、(FSO 2 ) 2 N - 、(CF 3 SO 2 ) 2 N - 、(C 2 F 5 SO 2 ) 2 N - 、(CF 3 SO 2 ) 3 C - よりなるアニオン群から選択された1種と、から構成されたアルカリ金属塩であり、
前記帯電防止剤層が、前記粘着剤層の全面に渡り、印刷または塗布により形成されてなり、前記帯電防止剤層の厚さが、0.01~0.3μmであることを特徴とする帯電防止表面保護フィルム。
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