JP7195020B2 - プライバシーシステム及びプライバシー向上方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プライバシーシステム、プライバシー向上方法、マスキング音生成システム及びマスキング音生成方法に関する。
スピーチプライバシーを守るため、従来は音楽を再生し、その音によってマスキング(聞こえにくくする)効果を得るという方法、あるいは疑似空調音といわれるノイズを放出し、同様にマスキング効果を得るノイズマスキング方式等が多く採用されていた。ただ、それらの方法においては、前者では音楽の好みの問題、また後者ではノイズが継続的に流されることによる不快感の問題等により、あまり良いソリューションとはなりえなかった。一方、近年ヤマハ株式会社は、人の音声から合成した撹乱音を用いることで撹乱音の中に会話音が溶け込み、上記の音楽使用やノイズマスキングに比べ、低い音量でも単語了解度を低下させることができるという情報マスキング技術を開発した。それが、スピーチプライバシーシステム「VSP-1」という製品である(下記非特許文献1記載のURL参照。)。
http://www.yamaha.co.jp/news/2011/11030302.html
上述のヤマハのスピーチプライバシーシステム「VSP-1」は、人の音声から合成した撹乱音をマスキングに利用している。これは、確かに会話のプライバシーを守るという点では有効であると思われる。しかし、その場の音環境を快適なものとするという点では、課題がある。つまり、上記の攪乱音自体が、その場の人々にとっては「騒音」にほかならないからである。
したがって、人の声だけしか存在しないような環境であれば、このヤマハのスピーチプライバシーシステム「VSP-1」は機能するが、どのような環境でも人の声以外の音が雑音として存在するのが普通であり、その環境に存在する機械音等の雑音の方が大きな課題となる場合が多い。そのような環境で、会話のプライバシーを守ると同時に、その環境に存在する多種多様な騒音に対応し、その環境において生活する人々を快適にさせるシステムが求められている。
本発明は、上記の課題を解決しようとするものであり、快適度を低下させずに会話のプライバシーを守ることを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の一つの観点によれば、プライバシーシステムを、環境音又は演出音を人の音声の周波数に変換した音を発生させるものとした。
また、本発明の他の観点によれば、プライバシーシステムを、対象空間において発生する発生音の周波数成分を分析し、前記分析した周波数成分をマスキングするのに有効は音成分を作成し、前記作成した音成分を出力するものとした。
また、本発明の他の観点によれば、プライバシー向上方法を、環境音又は演出音を人の音声の周波数に変換した音を発生させ、区分したい領域毎に色温度又は照度を変化させる方法とした。
また、本発明の他の観点によれば、マスキング音生成システムを、会話音声及び室内で聞こえる音に基づいて和声構成を抽出し、会話の速度又は声の大きさの変化に基づき発話タイミングを抽出し、和声構成、発話タイミング及び室内で聞こえる音に基づきマスキング音を生成するものとした。
また、本発明の他の観点によれば、マスキング音生成方法を、会話音声及び室内で聞こえる音に基づいて和声構成を抽出する工程と、会話の速度又は声の大きさの変化に基づき発話タイミングを抽出する工程と、和声構成、発話タイミング及び室内で聞こえる音に基づきマスキング音を生成するものとした。
本発明のプライバシーシステム及びプライバシー向上方法によれば、その空間にいる人の快適度を低下させずに、会話のプライバシーを守ることができる。
以下、本発明の実施例1を説明するが、本発明は以下に述べる実施形態に限定されるものではない。
従来の代表的技術の一例であるヤマハのスピーチプライバシーシステム「VSP-1」における課題は、人の声をマスキングするのに人の声と同じ音響成分(人の音声から合成した撹乱音)を使っていることである。この方式では、会話のプライバシーを守るという目的は達成できても、その場の音環境を快適にすることはできない。それに対し、本実施形態では、川のせせらぎ等の環境音や楽器音等の演出音を人の音声の周波数に変換して流すことにより、周囲の者の快適度を低下させずに、周囲の者が会話を認識することを困難にし、会話のプライバシーを確保することができる。さらに、ある環境における人の声だけではなく、その空間において発生する機械音等の雑音も含め、その環境に存在する全ての音を雑音として捉え、その雑音をマスキングすると同時に、人間の耳にとって快適なものとすることを目指すという方式を採用している。具体的には、ある環境における人の声を含め、その空間において発生する機械音等の雑音等の全ての音の周波数成分を分析し、それら騒音全般をマスキングするのに有効な音成分(人間の声を基にした攪乱音ではなく、それ自体を聴いた場合にも快適に感じられるような音響成分)を作成し、それら騒音に被せるという手法である(図1参照。)。
図1は、ATMコーナーの音環境と、これをマスクするために作成した音を示す図である。ATMコーナーの音環境を調査すると、空調等の持続的ノイズが存在し、機器のガイド音声、タッチパネルの反応音、記帳音、札を数える機器音が断続的に聞こえ、音環境を構成している。それらの音は、特定の周波数分布をしており、耳障りに感じられることが多いため、持続的ノイズ及び断続的ノイズに対しては、同じ周波数の調性を持った音群で、耳障りでない音を提示することでマスキング効果を持たせた。
ロビー、ラウンジでは、明るい調性の穏やかな持続音と適度な頻度で流れる音の組み合わせで、店内の印象を決定づける音環境を構成する、自然の木立を抜ける風によるさざめき等の要素を、それぞれの音量変化、音像の移動に取り入れ、音を均質化させないよう配慮し、その場の経過時間を短く感じさせる音環境とした。
本実施例によるマスキング音の生成方法を図2に示す。ポイントは、対象空間の機能や印象創出を支援するデザインされた付加音及び音楽の調性に合わせた耳障りでない「マスキング音」を生成する方法となる。
耳障りで無いマスキング音を生成する際に、室内で聞こえる付加音及び音楽(以下併せて「音」という場合がある。)と違和感の無い周波数の「和声構成」を会話音声から抽出し、会話の速度や声の大きさの変化を「発話タイミング」として抽出し、MIDIデータへ変換する。そのMIDIデータを元に、室内で聞こえる付加音及び音楽に合わせた音色をデザインし、聞かれたくない会話のプライバシーを確保するためのマスキング音として用いる。
マスキング音のみ単独で生成するのでは無く、空間の印象を形成する付加音及び音楽と違和感なく組み合わせできるところが従来と異なる部分といえる。
本発明者は、本実施例を「音と光のパーティション」と呼んでいるが、この名称から分かるとおり、本実施例は、聴覚的側面および視覚的側面の2点から構成されているところに大きな特徴がある。聴覚的側面についての説明は上記の通りである。一方、視覚的側面については、上記の聴覚的側面による快適性の向上を補完するところに、その役割がある。具体的には、当該空間において区分したい領域毎に照明の色温度および照度に変化を付け、領域間に視覚的にも違いがわかるようなめりはりのある照明計画を立案するのである。その照明計画も、人間の概日リズム(サーカディアンリズム)に基づいた快適で自然なものとする。そうすることによって、その場に来た人に対して聴覚的にも、また視覚的にも、その空間が分割されているという効果を生じさせるため、音響計画による聴覚からの刺激に加え、照明計画による視覚からの刺激により、その空間におけるパーティションの効果は相乗的に向上するのである。
実際、この「音と光のパーティション」は、科学的な根拠に基づいたデザイン(evidence based design)の好例であり、そこに新奇性がある。
本発明は、プライバシーシステム、プライバシー向上方法、マスキング音生成システム、マスキング音生成方法として産業上利用可能である。
ATMコーナーの音環境及び実施例1のマスキング音を示す図。 実施例2によるマスキング音生成法を示す図。

Claims (2)

  1. 会話音声及び室内で聞こえる音に基づいて和声構成を抽出し、
    前記会話音声における会話の速度又は声の大きさの変化に基づいて発話タイミングを抽出し、
    前記和声構成、前記発話タイミング及び前記室内で聞こえる音に基づいてマスキング音を生成する、プライバシーシステム。
  2. 会話音声及び室内で聞こえる音に基づいて和声構成を抽出する工程と、
    前記会話音声における会話の速度又は声の大きさの変化に基づいて発話タイミングを抽出する工程と、
    前記和声構成、前記発話タイミング及び前記室内で聞こえる音に基づいてマスキング音を生成する工程と、を備えたプライバシー向上方法。
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