以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
〈第1の実施形態〉
始めに、第1の実施形態にかかる対象物の変化を検出する方法について、図2ないし図5を用いて説明する。この対象物の変化を検出する方法は、工作物である送電鉄塔10を対象物として、この送電鉄塔10に鳥11がとまるという変化(図2参照)を、送電鉄塔10に作用する振動の観測データから検出する方法である。
ここで、送電鉄塔10に作用する振動の観測データは、送電鉄塔10に設置された加速度計10A(図2参照)によって収集される。この加速度計10Aは、設置の対象物に作用する振動を3軸の加速度波形の形で観測し、この加速度波形をコンピュータ読み取りが可能な形態のデータにして外部にリアルタイムで無線送信するようになっている。なお、送電鉄塔10に設置される加速度計10Aは、加速度波形を観測する3軸のうちの1軸が、送電鉄塔10における上下方向の加速度波形のデータ(図4参照)を観測するように調整されている。
ここで、上述した対象物の変化を検出する方法を技術者(図示せず)が実施する際に行われる一連の各ステップについて、図3に示すフローチャートを用いて説明する。この一連の各ステップにおいては、技術者は、まず、ステップS10を実行する。
ステップS10において、技術者は、送電鉄塔10に設置された加速度計10Aからリアルタイムで無線送信されるデータを受信し、このデータのうち所定の1方向における振動の観測データを、コンピュータ(図示せず)を用いて取得する。
ここで、上記振動の観測データは、例えば図4に示す、送電鉄塔10に作用した上下方向の振動の加速度波形である。この加速度波形は、送電鉄塔10に鳥11がとまる際の衝撃振動による加速度の変動を含みうるものである。ただし、上記加速度波形は、送電鉄塔10に常時作用する弱い振動である常時微動の波形も含むため、そのデータをそのまま分析することによっては、送電鉄塔10に小鳥11A(図2参照)がとまる際の衝撃振動による加速度の変動を検出することができない。なお、送電鉄塔10にとまる鳥11が大型鳥類11B(図2参照)である場合は、常時微動よりも大きな振幅(例えば2×10-2[m/秒2]程度)の加速度の変化が生じることで、この変化を加速度波形から直接読み取ることができる場合がある。
ステップS20において、技術者は、ステップS10で取得した振動(以下、単に「振動」とも称する。)の観測データのうち、変化の有無の検出を行うべき所定の時間範囲の観測データを、コンピュータを用いて処理する。これにより、技術者は、上記所定の時間範囲における振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で導出する。
ここで、ステップS20にて導出される非定常振幅スペクトルは、コンピュータにより導出されるものであるため、その変数である時間および振動周波数にはそれぞれ所定の定義域が設定される。このステップS20は、本発明における「非定常振幅スペクトル導出ステップ」に相当する。なお、ステップS20において、技術者は、振動の非定常振幅スペクトルを、視覚的にとらえられる態様(具体的には例えば3次元グラフあるいはスペクトログラム)でコンピュータに表示させることが好ましい。
ステップS30において、技術者は、ステップS20において導出された非定常振幅スペクトルにおける振動周波数断面を非定常振幅スペクトル値として抽出する。この際、技術者は、単一の振動周波数に対する振動周波数断面のみを抽出しても、所定の振動周波数帯域に含まれる複数の振動周波数に対する振動周波数断面を抽出してもよい。ここで、技術者は、非定常振幅スペクトル値を、上記非定常振幅スペクトルにおける時間の定義域と同じ時間の定義域で定義された、時間の関数として抽出する。このステップS30は、本発明における「非定常振幅スペクトル値抽出ステップ」に相当する。なお、ステップS20において、振動の非定常振幅スペクトルが視覚的にとらえられる態様で表示された場合、技術者は、表示された非定常振幅スペクトルを見て、この非定常振幅スペクトルにおいて時間変化が大きい振動周波数の振動周波数断面を抽出することができる。
ステップS40において、技術者は、ステップS30において抽出された非定常振幅スペクトル値を、送電鉄塔10に鳥11がとまる際の衝撃振動による影響が比較的明りょうに顕れると予想されるデータである解析用データとして設定する。このステップS40は、本発明における「解析用データ設定ステップ」に相当する。
なお、上記解析用データは、具体的には例えば正規化された非定常振幅スペクトル値20における時間変化のグラフ(図5参照)のデータである。ここで、図5に示す非定常振幅スペクトル値20は、図4に示す加速度波形から導出される非定常振幅スペクトルの振動周波数断面に正規化の処理を行ったものである。なお、非定常振幅スペクトル値20に正規化の処理を行うのは、送電鉄塔10にかかる外力が非定常振幅スペクトル値20におよぼすバイアスを排除するためである。また、ステップS30において、所定の振動周波数帯域に含まれる複数の振動周波数に対する非定常振幅スペクトル値を抽出した場合、これらの非定常振幅スペクトル値における最大値の時間変化を導出して、そのグラフのデータを解析用データとする。
ステップS50において、技術者は、ステップS40において解析用データとして設定された非定常振幅スペクトル値(すなわち時間の関数である振動周波数断面)に対して分析を行い、この非定常振幅スペクトル値が所定の閾値以上となる時間範囲を特定する。ここで、上記所定の閾値は、上記非定常振幅スペクトル値において、送電鉄塔10に鳥11がとまる変化(図2参照)が生じていないとする仮説を棄却するために必要な非定常振幅スペクトル値であり、前もって技術者により設定されるものである。
したがって、技術者は、ステップS50において上記所定の閾値と上記非定常振幅スペクトル値との大小関係に基づく分析を行い、この非定常振幅スペクトル値が上記仮説を棄却する値である外れ値となっている時間の時間範囲を特定することになる。ここで、上記非定常振幅スペクトル値が上記外れ値となることは、送電鉄塔10に鳥11がとまる変化(図2参照)が生じていることと同義である。このため、技術者は、上記分析にて特定した時間範囲を送電鉄塔10に鳥11がとまる変化の検出結果として作業を終了させる。すなわち、ステップS50は、本発明における「分析ステップ」に相当する。
ここで、上記分析ステップの具体例について、図5に示す非定常振幅スペクトル値20を解析用データとした場合の分析作業について説明する。この場合、技術者は、まず、非定常振幅スペクトル値20の少なくとも一部を分析する。これにより、技術者は、送電鉄塔10に衝撃振動および常時微動の両方が作用するときの非定常振幅スペクトル値20の値域21Aと、送電鉄塔10に常時微動のみが作用するときの非定常振幅スペクトル値20の値域21Bとについて目星をつける。ここで、振動の非定常振幅スペクトルの性質上、値域21Aは値域21Bの最大値よりも大きな値を含む範囲となる。
ついで、技術者は、非定常振幅スペクトル値20が値域21Aおよび値域21Bのいずれに属するかをコンピュータに識別させることができる閾値21を設定する。続いて、技術者は、非定常振幅スペクトル値20の全体をコンピュータにて分析し、閾値21以上となる非定常振幅スペクトル値20の値である外れ値20Aをピックアップする。そして、技術者は、ピックアップされた外れ値20Aに対応する時間範囲を特定し、この時間範囲を送電鉄塔10に鳥11がとまる変化の検出結果として作業を終了させる。
なお、図4に示す加速度波形と、この加速度波形から導出される非定常振幅スペクトル値20の時間変化のグラフ(図5参照)とを比べると、加速度波形では識別できない衝撃振動の影響が、非定常振幅スペクトル値20の時間変化においては識別可能な状態で顕れることがわかる。ここから、上述した第1の実施形態にかかる対象物の変化を検出する方法は、加速度波形を直接分析する手法よりも変化の検出精度が高いといえる。
上述した一連の各ステップによれば、送電鉄塔10に作用する振動の観測データから時間に関する情報を有する解析用データを導き、この解析用データを分析して送電鉄塔10に鳥11がとまる変化の検出結果を求める。したがって、検出された変化がいつ生じたものなのかを知ることができる。
ところで、上述した非特許文献1に記載された従来の技術では、振動をモニタリングする期間中に一過性の変化があった場合に、変化のない時期のデータに埋もれた変化のきざしを調べ出すことが難しかった。これに対し、上述した一連の各ステップによれば、時間の関数である非定常振幅スペクトルの振動周波数断面の分析により、一過性の変化(例えば送電鉄塔10に鳥11がとまる変化)を、この変化が生じている時間の時間範囲が特定された状態で検出することができる。
また、上述した一連の各ステップによれば、送電鉄塔10に鳥11がとまる変化を、非定常振幅スペクトル値20の値と、所定の閾値21という2つの量の大小を比較するという比較的簡単な処理によって検出する。したがって、変化を検出する際に必要な計算量を減らすことができる。
〈第2の実施形態〉
続いて、第2の実施形態にかかる対象物の変化を検出する方法について、図6ないし図10を用いて説明する。この対象物の変化を検出する方法は、河川40に架けられる工作物である橋梁30(図6参照)を対象物として、この橋梁30が劣化していく変化を、橋梁30に作用する振動の観測データから検出する方法である。
ここで、橋梁30は、図6に示すように、1枚の床版30Bをこの床版30Bに剛接合された3本の橋脚30Cにて支持する連続ラーメン橋である。また、橋梁30に作用する振動の観測データは、橋梁30の床版30Bに設置された加速度計30A(図6参照)によって収集される。この加速度計30Aは、設置の対象物に作用する振動を、3軸の加速度波形の形で観測し、この加速度波形をコンピュータ読み取りが可能な形態で記憶するようになっている。なお、橋梁30に設置される加速度計30Aは、加速度波形を観測する3軸のうちの1軸が、橋梁30における上下方向の加速度波形のデータ(図8参照)を観測するように調整されている。
ここで、上述した対象物の変化を検出する方法を技術者(図示せず)が実施する際に行われる一連の各ステップについて、図7に示すフローチャートを用いて説明する。この一連の各ステップにおいては、技術者は、まず、ステップS110を実行する。
ステップS110において、技術者は、橋梁30に設置された加速度計30Aを回収し、この加速度計30Aにコンピュータ読み取りが可能な形態で記憶された振動の観測データを、コンピュータ(図示せず)を用いて取得する。ここで、上記振動の観測データは、加速度計30Aに作用した振動の所定の1方向における加速度波形(例えば図8に示す上下方向の振動の加速度波形)を、橋梁30の劣化を考慮しなければならない程度の長期間にわたって観測した、ひとまとまりのデータである。
ステップS120において、技術者は、ステップS110で取得した振動(以下、単に「振動」とも称する。)の観測データにおける、変化の有無の検出を行うべき所定の時間範囲(すなわち変化の検出期間)の設定を行う。この際、技術者は、互いに重複しない複数の時間範囲を変化の検出期間として設定する。そして、技術者は、ステップS130を実行する。
ステップS130において、技術者は、ステップS120において設定された変化の検出期間の全てに対して、後述するステップS140からステップS180に至る一連の処理を1回ずつ行う繰り返し処理を実行する。なお、技術者は、ステップS130において上記変化の検出期間の全てに対して上記一連の処理を行うと、ステップS130の繰り返し処理を終了させてステップS190を実行する。
ステップS140において、技術者は、ステップS120において複数設定された変化の検出期間のうち、上記一連の処理が実行されていない変化の検出期間を1つ選択する。そして、技術者は、ステップS150を実行する。
ステップS150において、技術者は、ステップS110で取得した振動の観測データのうち、直前に実行されたステップS140にて選択された変化の検出期間における観測データを、コンピュータを用いて処理する。これにより、技術者は、選択中の変化の検出期間における振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で導出する。
ここで、ステップS150にて導出される非定常振幅スペクトルは、コンピュータにより導出されるものであるため、その変数である時間および振動周波数にはそれぞれ所定の定義域が設定される。このステップS150は、本発明における「非定常振幅スペクトル導出ステップ」に相当する。なお、ステップS150において、技術者は、振動の非定常振幅スペクトルを、視覚的にとらえられる態様(具体的には例えば3次元グラフあるいはスペクトログラム)でコンピュータに表示させることが好ましい。
ステップS160において、技術者は、直前に実行されたステップS150にて導出された非定常振幅スペクトルにおける複数の時間断面をそれぞれ非定常振幅スペクトル値とすることで、複数の非定常振幅スペクトル値を抽出する。このステップS160は、本発明における「非定常振幅スペクトル値抽出ステップ」に相当する。なお、ステップS160において、技術者は、各非定常振幅スペクトル値を、上記非定常振幅スペクトルにおける振動周波数の定義域と同じ振動周波数の定義域で定義された、振動周波数の関数として抽出する。
ステップS170において、技術者は、まず、直前に実行されたステップS160にて抽出された複数の非定常振幅スペクトル値のそれぞれに対し、この非定常振幅スペクトル値をその振動周波数の定義域全体で定積分した値であるスペクトル強度を求める。ついで、技術者は、複数の非定常振幅スペクトル値におけるスペクトル強度の大小を比較し、スペクトル強度が比較的大きいと判定される非定常振幅スペクトル値を分析候補スペクトルとして抽出する。言いかえると、技術者は、「求められた複数の非定常振幅スペクトル値においてそのスペクトル強度が相対的に大きい」という所定の基準に照らして、スペクトル強度が比較的大きいと判定される非定常振幅スペクトル値を分析候補スペクトルとして抽出する。なお、ステップS170においては、分析候補スペクトルの抽出数は、1つであっても複数であってもよい。
そして、技術者は、抽出した分析候補スペクトルを、橋梁30が劣化していく変化の影響が比較的明りょうに顕れると予想されるデータである解析用データとして作成する。このステップS170は、本発明における「解析用データ作成ステップ」に相当する。なお、上記解析用データは、具体的には例えば正規化された非定常振幅スペクトル値50における振動周波数変化のグラフ(図9参照)のデータである。ここで、非定常振幅スペクトル値50に正規化の処理を行うのは、橋梁30にかかる外力が非定常振幅スペクトル値50におよぼすバイアスを排除するためである。
なお、ステップS170において分析候補スペクトルを複数抽出した場合は、これらの分析候補スペクトルを1つの分析候補スペクトルとなるようにスタッキングすることで平滑化し、平滑化された分析候補スペクトルを解析用データとする。これにより、解析用データにおける信号対雑音比を改善して、この解析用データにおいて橋梁30が劣化していく変化の影響がより明りょうに顕れるようにすることができる。
ステップS180は、上述したステップS130の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、技術者は、上述した変化の検出期間の全てに対して処理を行っている場合はステップS190を実行し、そうでない場合はステップS140を実行する。
ステップS190において、技術者は、まず、上述したステップS130の繰り返し処理によって作成された複数の解析用データをそれぞれ分析し、これらの分析候補スペクトルが対応する時間において橋梁30に劣化が生じているか否かを判定する。すなわち、技術者は、対応する時間が相異なる複数の分析候補スペクトルのそれぞれから別個に作成された、複数の解析用データを分析する。
ついで、技術者は、各分析候補スペクトルが対応する時間と、この時間において橋梁30に劣化が生じているか否かの判定結果から、橋梁30が劣化していく変化が生じた時間範囲を特定する。そして、技術者は、特定した時間範囲を橋梁30が劣化していく変化の検出結果として作業を終了させる。すなわち、ステップS190は、本発明における「分析ステップ」に相当する。
ここで、上記分析ステップの具体例について、図9に示す5つの非定常振幅スペクトル値50を解析用データとした場合の分析作業について説明する。なお、図9に示す各非定常振幅スペクトル値50は、対応する時間が相異なる複数の分析候補スペクトルのそれぞれから別個に作成されたものである。また、図9および図10に示す時期1、時期2、時期3、時期4、時期5は、この順で新しくなるものである。
上記の場合、技術者は、まず、図9に示すように、各解析用データにおいて振動周波数変化の極大値として顕れる固有周波数を求める。ここで、図9においては、5つの非定常振幅スペクトル値50のそれぞれに対してその極大値を振動周波数の低い順に3つずつピックアップし、これらをそれぞれ1次固有周波数50A、2次固有周波数50B、3次固有周波数50Cとしている。
ついで、技術者は、図10に示すように、図9の各非定常振幅スペクトル値50からそれぞれピックアップした固有周波数を、その分析候補スペクトルが対応する時間の順に並べることで、橋梁30における固有周波数の時間変化のグラフを作成する。ここで、図10においては、橋梁30における1次固有周波数50A、2次固有周波数50B、3次固有周波数50Cのそれぞれについて、時間変化のグラフを作成している。
そして、技術者は、作成した固有周波数の時間変化のグラフを分析することで橋梁30が劣化していく変化が生じた時間範囲を特定し、この時間範囲を橋梁30が劣化していく変化の検出結果として作業を終了させる。例えば、技術者は、分析対象のグラフ(図10参照)において固有周波数が減少する事象に対し、橋梁30が等荷重分布の条件下にある単弦振動系とみなせるというモデルを設定することができる。このモデルにおいては、たわみ量の平方根が固有周波数に反比例するため、技術者は、橋梁30の固有周波数が減少しているときに、この橋梁30のたわみ量が大きくなる劣化が生じていると推論することができる。
上述した一連の各ステップによれば、橋梁30に作用する振動の観測データから時間に関する情報を有する解析用データを作成し、この解析用データを分析して橋梁30が劣化していく変化を検出する。したがって、橋梁30が劣化していく変化が検出された場合に、この変化がいつ生じたものなのかを知ることができる。
また、上述した一連の各ステップによれば、橋梁30が劣化していく変化は、スペクトル強度が比較的大きくなる瞬間における振動の非定常振幅スペクトル値に基づいて検出される。ここで、対象物における振動の非定常振幅スペクトル値は、この振動による対象物の変形量に対応して大きくなるパラメータである。したがって、橋梁30が大きく変形する負荷がかかった瞬間のデータから橋梁30が劣化していく変化の検出を行い、この変化を明りょうに検出することが可能となる。さらに、非定常振幅スペクトル値50に正規化の処理を行って橋梁30にかかる外力によるバイアスを排除することで、変化をより明りょうに検出することができる。
また、上述した一連の各ステップによれば、橋梁30が劣化していく変化は、対応する時間がそれぞれ異なる非定常振幅スペクトルの時間断面を複数分析することにより、変化が生じている時間の時間範囲が特定された状態で検出される。したがって、橋梁30が劣化していく変化の推移を知ることができる。
〈第3の実施形態〉
続いて、第3の実施形態にかかる対象物の変化を検出する方法について、図11ないし図16を用いて説明する。この対象物の変化を検出する方法は、工場61内に設置された工作物であるポンプ施設60(図11参照)を対象物として、このポンプ施設60の部品のぶれなどに伴って生じる固有周波数の変化を、ポンプ施設60において生じる振動の観測データから検出する方法である。
ここで、ポンプ施設60は、図11に示すように、駆動力源となるモーター60Bと、このモーターに据え付けられた加速度計60Aとを備えている。この加速度計60Aは、モーター60Bの駆動によってポンプ施設60に生じる振動を、3軸の加速度波形の形で観測し、この加速度波形をコンピュータ読み取りが可能な形態で記憶するようになっている。
ここで、上述した対象物の変化を検出する方法を技術者(図示せず)が実施する際に行われる一連の各ステップについて、図12に示すフローチャートを用いて説明する。この一連の各ステップを実行する際には、技術者は、前もって、ステップS210を実行する。
ステップS210において、技術者は、上記変化が生じていない状態(例えば作成直後あるいはメンテナンス直後の状態)のポンプ施設60を試運転させる。この際、技術者は、加速度計60Aにより観測された振動の加速度波形のうち、所定の1軸成分(図13参照。本明細書では「X軸成分」とも称する。)を、コンピュータ(図示せず)を用いて取得する。
続いて、技術者は、取得したX軸成分における振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で導出する。なお、ステップS210において導出される非定常振幅スペクトルをスペクトログラムにプロットした場合、例えば図14に示すようなスペクトログラムが得られる。
そして、技術者は、導出した振動の非定常振幅スペクトルを分析して、この非定常振幅スペクトルにおいて非定常振幅スペクトル値が卓越される振動周波数のパターン(例えば図14のスペクトログラムでは白く表示されている部分のパターン)を、基準パターンとして取得する。
また、上記一連の各ステップにおいては、技術者は、ステップS220、ステップS230、ステップS240、および、ステップS250をこの順で実行する。
ステップS220において、技術者は、加速度計60Aにコンピュータ読み取りが可能な形態で記憶された振動の観測データを、コンピュータ(図示せず)を用いて取得する。ここで、上記振動の観測データは、加速度計60Aにより観測された加速度波形におけるX軸成分を、ポンプ施設60の劣化を考慮しなければならない程度の長期間にわたって観測した、ひとまとまりのデータである。
ステップS230において、技術者は、ステップS220で取得した振動(以下、単に「振動」とも称する。)の観測データを、コンピュータを用いて処理する。これにより、技術者は、振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で導出する。
ここで、ステップS230にて導出される非定常振幅スペクトルは、コンピュータにより導出されるものであるため、その変数である時間および振動周波数にはそれぞれ所定の定義域が設定される。このステップS230は、本発明における「非定常振幅スペクトル導出ステップ」に相当する。なお、ステップS230において、技術者は、振動の非定常振幅スペクトルをスペクトログラム(図16参照)の形でコンピュータに表示させることが好ましい。
ステップS240において、技術者は、ステップS230にて導出された非定常振幅スペクトルにおける複数の時間断面をそれぞれ非定常振幅スペクトル値とすることで、複数の非定常振幅スペクトル値を抽出する。ここで、技術者は、各非定常振幅スペクトル値を、上記非定常振幅スペクトルにおける振動周波数の定義域と同じ振動周波数の定義域で定義された、振動周波数の関数として抽出する。このステップS240は、本発明における「非定常振幅スペクトル値抽出ステップ」に相当する。なお、ステップS230において、振動の非定常振幅スペクトルがコンピュータに表示され、かつ、表示された非定常振幅スペクトルに時間方向の変動が見られる場合、ステップS240において、技術者は、上記変動の前後それぞれにおける時間断面をそれぞれ非定常振幅スペクトル値として抽出することが好ましい。
ステップS250において、技術者は、ステップS240にて導出された各非定常振幅スペクトル値を分析して、これらの非定常振幅スペクトル値において卓越される振動周波数のパターン(例えば図16のスペクトログラムでは白く表示されている部分のパターン)を求める。続いて、技術者は、求めた振動周波数のパターンを、ポンプ施設60の変化による影響が比較的明りょうに顕れると予想されるデータである解析用データとして、この解析用データをステップS210にて取得した基準パターンと対比する。そして、技術者は、解析用データと基準パターンとが一致しない時間範囲を、ポンプ施設60の変化が生じている時間範囲として特定し、この時間範囲を検出結果として作業を終了させる。すなわち、ステップS250は、本発明における「分析ステップ」に相当する。
上述した一連の各ステップによれば、ポンプ施設60において生じる振動の観測データから時間に関する情報を有する解析用データを作成し、この解析用データを分析してポンプ施設60の変化を検出する。したがって、ポンプ施設60の変化が検出された場合に、この変化がいつ生じたものなのかを知ることができる。
また、上述した一連の各ステップによれば、ポンプ施設60の変化は、このポンプ施設60の振動において卓越される振動周波数のパターンから検出される。これにより、それ自体は外部に検出可能なシグナルを出さない変化である、ポンプ施設60における固有周波数の変化を検出することができる。
なお、本発明者は、上述した対象物の変化を検出する方法の妥当性についての検証を行った。ここで、検証の対象は、図13に示す加速度波形のX軸成分から得られる基準パターンと、図15に示す加速度波形のX軸成分から得られる解析用データとを対比した結果である。この結果においては、基準パターンにおいて60[Hz]付近に存在する振動周波数の卓越が、解析用データにおいては50[Hz]~80[Hz]の範囲にゆらぐことから、ポンプ施設60の変化が検出されている。
上記検証において、本発明者は、図13および図15に示す各加速度波形のX軸成分に対して、45[Hz]~70[Hz]の範囲外にある周波数成分を減衰させるバンドパスフィルターを適用し、このバンドパスフィルターを通過した各波形のコレログラム(図17および図18を参照)を作成した。この検証によれば、図13に示す加速度波形のX軸成分には60[Hz]付近の振動周波数を有する定常的な波が含まれる一方、このような波は図15に示す加速度波形のX軸成分には含まれていなかった。ここから、上述した対象物の変化を検出する方法は、固有周波数の変化を妥当に検出することができるといえる。
〈第4の実施形態〉
続いて、第4の実施形態にかかる対象物の変化を検出する方法について、図19および図20を用いて説明する。この対象物の変化を検出する方法は、図19に示すように、輪荷重走行試験の供試体として輪荷重走行試験機70にセットされる床版71を対象物として、この床版71がダメージを受ける変化を、床版71に作用する振動の観測データから検出する方法である。
ここで、床版71は、桁橋(図示せず)用の床版として複数枚生産された床版のうちの1枚である。また、輪荷重走行試験機70は、セットされた供試体の上面にて車輪70Bを断続的に往復走行させることで供試体に負荷を与え、この負荷に対する供試体の挙動から、供試体の耐久性を評価することを可能とする装置である。また、床版71に作用する振動の観測データは、この床版71の下面に設置された加速度計70A(図19参照)によって収集される。この加速度計70Aは、設置の対象物に作用する振動を、3軸の加速度波形の形で観測し、この加速度波形をコンピュータ読み取りが可能な形態で記憶するようになっている。なお、加速度計70Aは、加速度波形を観測する3軸のうちの1軸が、上下方向の加速度波形のデータを観測するように調整されている。
ここで、上述した対象物の変化を検出する方法を技術者(図示せず)が実施する際に行われる一連の各ステップについて、図20に示すフローチャートを用いて説明する。この一連の各ステップにおいては、技術者は、まず、ステップS310を実行する。
ステップS310において、技術者は、床版71の下面に設置された加速度計70Aを回収し、この加速度計70Aにコンピュータ読み取りが可能な形態で記憶された振動の観測データを、コンピュータ(図示せず)を用いて取得する。ここで、上記振動の観測データは、加速度計70Aに作用した振動の加速度波形の上下方向成分を、輪荷重走行試験機70の負荷による加速度計70Aのダメージを考慮しなければならない程度の長期間にわたって観測した、ひとまとまりのデータである。
ステップS320において、技術者は、ステップS310で取得した振動(以下、単に「振動」とも称する。)の観測データにおける、変化の有無の検出を行うべき所定の時間範囲(すなわち変化の検出期間)の設定を行う。この際、技術者は、互いに重複しない複数の時間範囲を変化の検出期間として設定する。そして、技術者は、ステップS330を実行する。
ステップS330において、技術者は、ステップS320において設定された変化の検出期間の全てに対して、後述するステップS340からステップS410に至る一連の処理を1回ずつ行う繰り返し処理を実行する。なお、技術者は、ステップS330において上記変化の検出期間の全てに対して上記一連の処理を行うと、ステップS330の繰り返し処理を終了させてステップS410を実行する。
ステップS340において、技術者は、ステップS320において複数設定された変化の検出期間のうち、上記一連の処理が実行されていない変化の検出期間を1つ選択する。そして、技術者は、ステップS350を実行する。
ステップS350において、技術者は、ステップS310で取得した振動の観測データのうち、直前に実行されたステップS340にて選択された変化の検出期間における観測データを、コンピュータを用いて処理する。これにより、技術者は、選択中の変化の検出期間における振動の非定常振幅スペクトルを、時間および振動周波数を変数として有する2変数関数の形で導出する。
ここで、ステップS350にて導出される非定常振幅スペクトルは、コンピュータにより導出されるものであるため、その変数である時間および振動周波数にはそれぞれ所定の定義域が設定される。このステップS350は、本発明における「非定常振幅スペクトル導出ステップ」に相当する。なお、ステップS350において、技術者は、振動の非定常振幅スペクトルを、視覚的にとらえられる態様(具体的には例えば3次元グラフあるいはスペクトログラム)でコンピュータに表示させることが好ましい。
ステップS360において、技術者は、直前に実行されたステップS350にて導出された非定常振幅スペクトルにおける複数の時間断面をそれぞれ非定常振幅スペクトル値とすることで、複数の非定常振幅スペクトル値を抽出する。このステップS360は、本発明における「非定常振幅スペクトル値抽出ステップ」に相当する。なお、ステップS360において、技術者は、各非定常振幅スペクトル値を、上記非定常振幅スペクトルにおける振動周波数の定義域と同じ振動周波数の定義域で定義された、振動周波数の関数として抽出する。
ステップS370において、技術者は、直前に実行されたステップS360にて抽出された複数の非定常振幅スペクトル値のそれぞれに対し、この非定常振幅スペクトル値をその振動周波数の定義域全体で定積分した値であるスペクトル強度を算出する。
ステップS380において、技術者は、直前に実行されたステップS370にて求められた複数の非定常振幅スペクトル値におけるスペクトル強度の大小を比較し、スペクトル強度が比較的大きいと判定される非定常振幅スペクトル値を分析候補スペクトルとして抽出する。言いかえると、技術者は、「求められた複数の非定常振幅スペクトル値においてそのスペクトル強度が相対的に大きい」という所定の基準(以下では「第1の基準」とも称する。)に照らして、スペクトル強度が比較的大きいと判定される非定常振幅スペクトル値を分析候補スペクトルとして抽出する。
なお、ステップS380においては、分析候補スペクトルの抽出数は、1つであっても複数であってもよい。ここで、ステップS380において分析候補スペクトルを複数抽出した場合は、これらの分析候補スペクトルを1つの分析候補スペクトルとなるようにスタッキングすることで平滑化する。これにより、分析候補スペクトルにおける信号対雑音比を改善することができる。
ステップS390において、技術者は、直近に実行されたステップS370にて求められた複数の非定常振幅スペクトル値におけるスペクトル強度の大小を比較し、スペクトル強度が比較的小さいと判定される非定常振幅スペクトル値を対照スペクトルとして抽出する。言いかえると、技術者は、「求められた複数の非定常振幅スペクトル値においてそのスペクトル強度が相対的に小さい」という、上記第1の基準とは別個に設定される基準(本明細書では「第2の基準」とも称する。)に照らして、スペクトル強度が比較的小さいと判定される非定常振幅スペクトル値を対照スペクトルとして抽出する。
なお、ステップS390においては、対照スペクトルの抽出数は、1つであっても複数であってもよい。ここで、ステップS390において対照スペクトルを複数抽出した場合は、これらの対照スペクトルを1つの対照スペクトルとなるようにスタッキングすることで平滑化する。これにより、対照スペクトルにおける信号対雑音比を改善することができる。
ステップS400において、技術者は、直近に実行されたステップS380にて抽出された分析候補スペクトルと、直前に実行されたステップS390にて抽出された対照スペクトルとのそれぞれに対して、以下の処理を行う。すなわち、技術者は、まず、図22に示すように、分析候補スペクトル80における卓越振動周波数である第1の振動周波数80Aよりも高周波数で、この第1の振動周波数80Aよりも高周波数の卓越振動周波数である第2の振動周波数80Bよりも低周波数となる所定の振動周波数を、閾値周波数82として設定する。ついで、技術者は、分析候補スペクトル80および対照スペクトル81のそれぞれに対して、閾値周波数82以上の周波数成分のスペクトル強度と、閾値周波数82以下の周波数成分のスペクトル強度と、のスペクトル強度比を算出する。これらのスペクトル強度比は、床版71がダメージを受ける変化の影響が比較的明りょうに顕れると予想されるデータである解析用データとなるものである。すなわち、ステップS370からステップS400に至る各ステップをあわせたステップは、本発明における「解析用データ作成ステップ」に相当する。
ステップS410は、上述したステップS330の繰り返し処理における戻り処理である。すなわち、技術者は、上述した変化の検出期間の全てに対して処理を行っている場合はステップS420を実行し、そうでない場合はステップS340を実行する。
ステップS420において、技術者は、まず、上述したステップS330の繰り返し処理によって作成された複数の解析用データをそれぞれ分析し、それぞれが対応する時間における床版71のダメージについて判定を行う。すなわち、技術者は、対応する時間が相異なる複数の分析候補スペクトルのそれぞれから別個に作成された、複数の解析用データを分析する。この分析においては、上記対照スペクトルのスペクトル強度比と上記分析候補スペクトルのスペクトル強度比とを、その大小関係に基づいて対比し、これらのスペクトル強度比の間に有意な大小関係が認められる場合に、床版71がダメージを受けた状態であるとする判定を用いることができる。
ついで、技術者は、各解析用データが対応する時間と、この時間における床版71のダメージについての判定結果から、床版71がダメージを受ける変化が生じた時間範囲を特定する。そして、技術者は、特定した時間範囲を床版71がダメージを受ける変化の検出結果として作業を終了させる。すなわち、ステップS420は、本発明における「分析ステップ」に相当する。
上述した一連の各ステップによれば、床版71に作用する振動の観測データから時間に関する情報を有する解析用データを作成し、この解析用データを分析して床版71の変化を検出する。したがって、床版71の変化が検出された場合に、この変化がいつ生じたものなのかを知ることができる。
また、上述した一連の各ステップによれば、床版71の変化は、振動による床版71の変形量に対応するスペクトル強度が比較的小さくなる瞬間の非定常振幅スペクトル値を基準に、上記スペクトル強度が比較的大きくなる瞬間の非定常振幅スペクトル値を評価することで検出される。ここで、固体にかかる負荷によってこの固体に生じるダメージは、まず、検出が難しい微視的なスケール(例えば[μm]のスケール)の亀裂(以下においては「微小亀裂」)とも称する。)として生じ、この微小亀裂が開口、進展、または、伝播などの変形をすることで、巨視的なスケールのダメージとして顕れる。このため、例えば床版71に力を及ぼす振動が比較的弱い振動のみとなるときなど、振動による床版71の変形量が比較的小さくなるときにおいては、非定常振幅スペクトル値における床版71のダメージの影響が比較的小さくなる。
したがって、上述した一連の各ステップによれば、振動の観測を始めた時点において床版71に蓄積されたダメージのいかんによらず、床版71のダメージの影響が比較的少ない状態を基準として、床版71がダメージを受ける変化の検出を行うことができる。
ところで、固体にかかる負荷によってこの固体に生じる微小亀裂は、この微小亀裂が生じた固体を軟弱化させる性質を有するものである。ここで、上述した一連の各ステップによれば、床版71の変化の検出に際して、この床版71の軟弱さに応じて変化する、振動の増幅特性(振動に対する振幅の増幅度。振動周波数の関数)の変化が検出される。これにより、それ自体は外部に検出可能なシグナルを出さない変化である、床版71に微小亀裂が生じて軟弱化する変化を検出することができる。
なお、本発明者は、上述した対象物の変化を検出する方法の妥当性についての検証を行った。この検証は、図20に示すフローチャートの各ステップを、床版71(図19参照)に対して行い、ステップS420にて分析の対象となる、対照スペクトルのスペクトル強度比(a)および分析候補スペクトルのスペクトル強度比(b)の大小関係を比較する実験により行われた。
ここで、上記対照スペクトルは、断続的に往復走行される輪荷重走行試験機70の車輪70B(図19参照)が停止しているタイミングの時間断面であり、このタイミングにおいて、床版71は常時微動のみが作用する状態であった。また、上記分析候補スペクトルは、輪荷重走行試験機70の車輪70Bが床版71上を走行しているタイミングの時間断面であり、このタイミングにおいて、床版71は輪荷重走行試験機70から負荷がかけられた状態であった。また、上記各ステップのうちステップS320において、技術者は、時系列順に並ぶ時期A、時期B、時期C、時期D、時期Eの5つの時期(図21参照)を、変化の検出期間として設定した。
上記実験によれば、図21に示すように、対照スペクトルのスペクトル強度比(a)は、時期によらず2前後の値をとった。一方で、分析候補スペクトルのスペクトル強度比(b)は、初期(時期A、時期B)においては上記aと同様に2前後の値をとり、中期以降(時期C、時期D、時期E)においては上記aよりも明らかに大きな値(3~6程度)をとった。ここから、上述した対象物の変化を検出する方法は、対照スペクトルのスペクトル強度比に対する分析候補スペクトルのスペクトル強度比の大小関係に基づいて床版71の変化を妥当に検出することができるといえる。
本発明は、上述した第1および第2の実施形態で説明したものに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
(1)上述した第1の実施形態において、非定常振幅スペクトル値が外れ値となっているか否かの判定は、所定の閾値と非定常振幅スペクトル値との大小関係に基づいてなされるものに限定されない。すなわち、非定常振幅スペクトル値が外れ値となっているか否かの判定を、例えばティーティエン―ムーアの検定(Tietjen-Moore test)などの外れ値検出手法に基づいて行うことができる。
(2)上述した第4の実施形態において、分析候補スペクトルにおける卓越振動周波数のパターンと、対照スペクトルにおける卓越振動周波数のパターンとを対比した結果に基づいて、床版71(図19参照)の変化を検出する手法を採用することができる。
(3)本発明を適用して変化を検出することができる対象物は、上述した送電鉄塔10(図2参照)、連続ラーメン橋である橋梁30(図6参照)、ポンプ施設60(図11参照)、および、床版71(図19参照)に限定されない。すなわち、本発明の方法は、例えば任意の構造の橋梁、電柱、および、道路照明用のポールを含む種々の工作物を対象物として、その変化を検出することができる。また、本発明の方法は、樹木や露頭などの自然物を含む任意の対象物に対して、その変化を検出するために用いることができる。
(4)本発明において、対象物の変化を検出するために用いることができる振動の観測データは、上下方向の振動の加速度波形に限定されない。すなわち、本発明の方法は、対象物に作用する振動の変位波形あるいは速度波形を観測データとして、この観測データから対象物の変化を検出することができる。また、本発明の方法は、水平2軸または1軸で測定された振動の波形を観測データとして、この観測データから対象物の変化を検出することもできる。また、本発明において、対象物に作用する振動におけるいずれの方向成分を非定常振幅スペクトルの導出に用いる振動の観測データとするのかは、適宜変更することができる。