JP7191068B2 - 忌避剤、消臭剤及び植物活性剤 - Google Patents

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本発明は、ナス科ペチュニア属ペチュニアの新品種である日向美人を利用した害虫忌避剤、消臭剤及び植物活性剤に関する。
昨今、トマトやナスなどの農作物の害虫被害が多く報告されている。例えば、オンシツコナジラミやダニなどは農作物の葉裏に寄生して汁を吸い、葉の葉緑素が抜けて白いカスリ状になる。また、このような害虫が発生すると、実に着色異常が生じて商品価値が低下するだけでなく、生育悪化により収量自体が低下し、被害が進行すると農作物が枯死することもある。
そのため、これらの害虫対策として化学合成物質を用いた駆除剤や忌避剤等が使用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1は、4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを、植物に散布、噴霧又は塗布することにより、ダニやナメクジなどに忌避効果があることが開示されている。
また、薬剤でなく、自然植物から抽出した発酵溶液を使用し、これを樹木全体に散布することにより、スリップスの完全防除が可能であることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2は、ナス科ペチュニア属ペチュニアの新品種である「マネーブロウマウンティン」を利用した発酵溶液の忌避剤としての使用方法が開示されている。
特開2019-069934号公報 特許第5709003号公報
しかしながら、特許文献1に挙げられる忌避剤については、市販の4-ヒドロキシ安息香酸ヘキシルを使用するか、酸触媒の存在下で4-ヒドロキシ安息香酸と1-ヘキサノールとを反応させることによって製造され、このような化学薬品は天然由来の成分でないことから環境汚染や生体への影響等が懸念される。また、特許文献2に挙げられる発酵溶液は、天然植物から得られた成分であり安全に使用することができるものの、スリップスについてのみ完全防除効果を発揮し、ダニやオンシツコナジラミなどの害虫については期待するほどの効果が得られないという問題があった。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、人工的に作られた化学合成物質を使用せず、天然の植物から得られた抽出物を使用し、多くの害虫に対して忌避効果を有すると共に消臭効果や植物活性効果も発揮する忌避剤、消臭剤及び植物活性剤を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の忌避剤、消臭剤又は植物活性剤は、
ナス科ペチュニア属ペチュニアの新品種である、日向美人の発酵溶液を含有することを特徴としている。
この特徴によれば、ペチュニアの新品種である日向美人から得られた天然由来の発酵溶液を使用し、多くの害虫に対する高い忌避効果を得ることができると共に消臭効果や植物活性効果も得ることができる。
本発明の忌避剤又は植物活性剤は、
ナス科ペチュニア属ペチュニアの新品種である日向美人が植栽されていた土壌であって、前記土壌は、該日向美人が開花するまで植栽されていたことを特徴としている。
この特徴によれば、ペチュニアの新品種である日向美人から得られた発酵溶液だけでなく、開花後の日向美人によって害虫忌避物質又は植物活性物質が蓄えられた土壌を使用し、高い害虫忌避効果又は植物活性効果を得ることができる。
本発明の忌避剤は、少なくともコナジラミ、アブラムシ、ダニ、ノミ又はセンチュウに効果があることを特徴としている。
この特徴によれば、少なくともコナジラミ、アブラムシ、ダニ、ノミ又はセンチュウに効果があるため、これらの害虫予防又は害虫駆除を目的とした忌避剤として利用することができる。
本発明の害虫忌避方法又は植物活性方法は、
ナス科ペチュニア属ペチュニアの新品種である日向美人を開花させ、その後に該日向美人を土壌から引き抜き、該日向美人の根周辺にあった土壌に前記日向美人以外の植物を植栽することを特徴としている。
この特徴によれば、ペチュニアの新品種である日向美人から得られた発酵溶液だけでなく、開花後の日向美人の根によって蓄えられた害虫忌避物質又は植物活性物質を有する土壌を活用し、その土壌に日向美人以外の農作物を植栽することで、高い害虫忌避効果又は植物活性効果が得られた状態で農作物を栽培することができる。
本発明の忌避剤又は植物活性剤は、発酵溶液を200倍以上希釈させて使用することを特徴としている。
この特徴によれば、害虫忌避効果、消臭効果又は植物活性効果を有効に発揮させることができる。
本発明の忌避剤、消臭剤又は植物活性剤は、日向美人を50重量%以下に乾燥させた後、溶液に浸漬させて発酵させたことを特徴としている。
この特徴によれば、日向美人を50重量%以下に乾燥させて害虫忌避成分又は植物活性成分を日向美人中に濃縮させ、それを溶液中に浸漬させて害虫忌避成分、消臭成分又は植物活性成分を抽出することができるため、効率よく発酵及び抽出ができる。
日向美人の側面写真である。 日向美人の上面写真である。 日向美人の葉の写真である。 日向美人の花の分解写真である。 日向美人の発酵溶液の製造方法を示すフロー図である。
本発明に係る忌避剤、消臭剤及び植物活性剤を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。なお、本発明の「忌避剤」には、同じ用途として用いられる「駆除剤」が含まれることは言うまでもない。
図1から図4は、本発明に使用される日向美人の写真である。日向美人は、ナス科ペチュニア属(学名:Petunia hybrida)に属するペチュニアの新品種として2012年2月21日に岡崎悟等によって品種登録(登録番号21443号)されたものである。
図1の側面写真や図2の上面写真に示されるように、日向美人の草姿は、這性で、草丈は低く、やや短い茎を有している。図3の葉の写真に示されるように、日向美人の葉身は斑を有し、形は楕円形、長さは短く、幅はかなり狭い。図4の花の分解写真に示されるように、日向美人のがく片の長さはかなり短く、幅もかなり狭い。花冠は暗赤紫や暗青紫で一重のラッパ型を有する植物である。「日向美人」は、対照品種「マネーブロウマウンティン」と比較して、がく片の長さがかなり短いこと等により区別性が認められ、新品種として登録されたものであり、乾燥に非常に強いなどの特徴を有する。
次に、日向美人の管理方法と繁殖方法について説明する。日向美人の管理方法については、一般市販のペチュニアと略同じであるが、特に、水の過多投与や長雨により弱ってしまうためハウス内で管理することが好ましく、水を与える際は、花には与えず表土にのみ与えるようにする。日向美人の繁殖は挿し芽で行う。栽培方法によっては不安定であるものの一般市販のペチュニアと同様種を持つこともあり、その場合は採種・種まきにより繁殖することができる。なお、挿し芽の方法は、以下の手順で行うことができる。
(1)新芽を2節ほど斜めに切る。
(2)葉からの水分蒸発を防ぐため、つぼみや花などを取り除き、葉を半分に切る。
(3)約30分水につける。
(4)切り口に発根剤をつける。
(5)挿し芽用の培養土に長棒で穴をあけ、挿し芽を挿す。
挿し芽の適期は3月から5月であるが、この時期でなくても挿し芽が可能であることから年中繁殖は可能であり、例えば適期に挿し芽を行った場合は、挿し芽から約3月で開花させることができる。日向美人を開花させて株を大きく成長させることにより収量を増やし、花、葉、茎又は根成分などに多くの害虫忌避成分や植物活性成分を蓄えることができる。
次に、日向美人の発酵溶液の製造方法について図5を用いて説明する。まず、前述のように繁殖させた開花後の日向美人を、花や葉を全て含む状態で株の根元から刈り取る(STEP1)。開花後の日向美人であれば、株が大きく成長し、広い範囲に根が張った状態であることから、害虫忌避成分、消臭成分又は植物活性成分などの有効成分が充分に蓄えられた発酵溶液とすることができる。
刈り取った日向美人を放置して藁状に乾燥させる(STEP2)。乾燥は天日干しにより10日以上乾燥させるのが好ましく、陰干しや人工的に乾燥させても良い。なお、乾燥後の日向美人の体積は、乾燥前の体積の約30%~40%となっており、乾燥させることによって日向美人の細胞中の葉緑体や液胞等の細胞組織が崩壊し、特に液胞の酵素によって細胞内の色素やその他の多く成分が分解され緑色が消失して薄茶色に変色する。乾燥後の日向美人は乾燥前の40重量%以下であり、効率よく発酵及び抽出させる観点から50重量%以下とすることが好ましい。
前述の乾燥させた日向美人を500リットル容量のタンクに入れ、タンク内が全て日向美人で敷き詰められた状態とする。そこへ、全てが水に浸っている状態となるように日向美人を水で浸漬させる(STEP3)。なお、乾燥させた日向美人を洗浄しても良いが、付着した土壌等をそのままの状態でタンク内に投入しても良い。水は水道水に限らず雨水や温水等を使用しても良く、水の他にアルコールや有機溶媒等を混入させるようにしても良い。
タンクに蓋をし、約5ヶ月間日向美人が液状になるまで発酵させる(STEP4)。なお、タンクの蓋を密閉する必要はなく好気的に発酵させ、2~3日に一回は長棒等で全体を撹拌するのが好ましい。また、季節によっては日向美人の液状化までの期間が変動するが、水溶液中に日向美人の水溶性の有効成分を抽出することができるよう最低でも3カ月以上は発酵させることが好ましい。
日向美人の液状化後、タンク内の溶液を木綿の布でろ過し、ろ液として得られたものが日向美人の発酵溶液となる(STEP5)。
このようにして得られた発酵溶液にはヒ素、鉛、カドミウム、水銀等の重金属は検出されなかった(財団法人日本食品分析センターにて分析)。
次に、上述の方法で得られた発酵溶液を忌避剤、消臭剤又は植物活性剤として使用する方法を説明する。発酵溶液は有効成分が濃縮されているため、200倍~800倍、好ましくは500倍~700倍に希釈して使用する。忌避剤又は植物活性剤としての使用方法は、希釈した発酵溶液を1mあたり100mL~400mL、好ましくは200mL~400mL葉面散布する。散布回数は、1週間から10日の間隔で3回散布する。幼虫や成虫に忌避効果があるため、1回では全滅させることができず、卵からふ化したことを確認して複数回散布する必要がある。植物活性剤として使用する場合は、希釈倍率が200倍より低くなってしまうと植物活性効果が過度に生じて農作物の商品価値は逆効果になり、例えば大根やスイカの場合は重みが増すと共に割れが生じ、商品価値が落ちてしまう。
前述の忌避剤を動物に使用する場合は、前述の方法で希釈した発酵溶液を、動物の皮膚に5cm位離して5~6箇所スプレーする。1回のみでも効果があるが、この行為を数日間連続で行うことにより高い効果を発する。消臭剤としての使用方法は、前述の方法で希釈した発酵溶液を、トイレや玄関などの狭い空間であればスプレーで3~4回空中に噴霧して使用する。悪臭のする履物、生ゴミ、ゴミ箱へは、対象物に4~5回直接スプレーして使用する。
次に、土壌を用いた忌避剤又は植物活性剤の使用方法について説明する。株が大きくなり花が満開となった日向美人を土壌中から根ごと引き抜く。開花後の日向美人の植栽されていた土壌中には、日向美人のひげ根や散って落ちた日向美人の花や葉、若しくはこれらから放出された害虫忌避物質又は植物活性物質が豊富にあり、これが他の農作物の害虫忌避剤又は植物活性剤となる。
使用方法は2つあり、一つ目は、日向美人の根を土壌から引き抜き、その日向美人の根周辺にあった土壌に日向美人以外の農作物を植栽する。2つ目は、日向美人の根周辺にあった土壌を他の農作物の植栽時に使用したり、植栽された農作物周辺に敷いたりして使用する。なお、日向美人の根周辺にあった土壌には分断された根だけでなく、日向美人の花若しくは葉又はこれらが散って落ちたものが含まれていても良い。このように、日向美人の発酵溶液だけでなく、日向美人の根などが多く含まれる土壌を使用して害虫を忌避し植物を活性化することができる。
上記のようにして得られた日向美人の発酵溶液(500倍~700倍希釈)や土壌を用いて、宮崎県の農家、主に有機農業を推進している宮崎県東諸県郡綾町及び国富町の複数の農家及び発明者にて試験したところ、下記効果があったことが明らかとなった。
(実施例1)
8軒の農家にて、トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモ及びキュウリに日向美人の発酵溶液を葉面散布にて使用したところ、何れの農家においても、オンシツコナジラミ、ダニの発生はなかった。また、通常は農薬を使用しても害虫(特にオンシツコナジラミ)の駆除には苦労するが他の農薬を使用する必要がなくコストが削減された、害虫駆除に要する労力が減って非常に助かった、忌避効果だけでなく青果物の色が濃くなり艶がでた、収量が増えた、などの声が得られた。また、8軒の農家中、4軒の全トマト農家において、センチュウの発生指標となる根コブや根腐れの症状が全くなく、通常行っている土壌の消毒が不要になる、との声が得られたことから、特に土壌中のセンチュウに効果が高いことが明らかとなった。
(実施例2)
3軒の農家にてニンニクに日向美人の発酵溶液を使用したところ、茎が堅くなり、実も大きく硬いニンニクができた、黒ニンニクにしたら甘みが強くフルーツのように食することができた、べたつきがなかった、ニンニク臭がしない、などの声が得られた。
(実施例3)
2軒の農家にてシソに日向美人の発酵溶液を使用したところ、通常は大量発生するアブラムシの駆除として市販の農薬を多量使用していたが、日向美人の発酵溶液によりアブラムシの発生は確認できず、農薬を全く使わなくても栽培できるようになった、との声が得られた。
(実施例4)
1軒の農家にてイチゴに日向美人の発酵溶液を使用したところ、通常糖度が11~12度であるものが16度に上がり、非常に甘みの強い商品ができた、との声が得られた。また、同農家がブドウにも使用したところ、ブドウの甘みも増したとのことであった。
(実施例5)
1軒の農家にて稲に日向美人の発酵溶液を使用したところ、通常20俵前後の収穫量であったが、稲の分蘖が確認でき、2俵多く22俵収穫できた、稲穂が倒れにくくなった、との声が得られた。
(実施例6)
以下、発明者による実施例について述べる。カサブランカに日向美人の発酵溶液を使用したところ、茎が固くなった。そのカサブランカを切って観賞用として飾ったところ、通常の2倍長く3週間程鑑賞することができた。また、菊に使用したところ茎が木質化したように固くなり、その菊を切って日持ち日数を確認したところ、カサブランカ同様通常より長く日持ちし、1ヶ月持った。
(実施例7)
約0.5アール栽培された日向美人を引き抜き、その引き抜いた土壌を使用してトマトを栽培したところ、農薬を全く使用せずともオンシツコナジラミ、アブラムシ及びダニの発生は確認できなかった。
(実施例8)
日向美人が栽培されている土壌約2mを根ごと引き抜き、その引き抜いた土壌にオンシツコナジラミが多数発生したトマト3株を株ごと移し替えて試験したところ、1日経過後にはオンシツコナジラミは確認できず、その後の経過観察においてもオンシツコナジラミの存在は確認できなかった。
(実施例9)
アブラムシ及びダニの発生したトマトの葉に日向美人の発酵溶液を使用したところ、アブラムシ及びダニともに少なくなり、2回目散布後に全てのアブラムシ、ダニが駆除された。また、アブラムシ及びダニの発生したトマト周辺に日向美人が植栽されていた土壌を振りまき観察したところ、葉に確認できたアブラムシ及びダニが殆どいなくなった。なお、ヨトウムシでも同様に試験したところ、日向美人の発酵溶液及び日向美人の植栽されていた土壌何れも効果がなかった。
(実施例10)
ノミやノミ糞が確認できる犬3匹及び猫4匹に、首や後肢などノミの感染が確認できる箇所及び全体の5箇所に直接日向美人の発酵溶液をスプレーしたところ、全ての犬猫において翌日にはノミがいなくなり駆除できた。また、駆除後も2週間毎に同様の処置で発酵溶液をスプレーし5ヶ月間観察したところ、ノミやダニの感染は確認できなかった。また、ストレスが軽減されて無駄吠えや飛び付きが少なくなり、獣臭も弱まった。
(実施例11)
悪臭のするトイレ及び下駄箱の閉鎖空間に日向美人の発酵溶液を3~4回噴霧したところ、悪臭が軽減された。即効性が有り、特にトイレのアンモニア臭に効果があった。
以上のことから、日向美人の発酵溶液や日向美人が植栽されていた土壌を使用すれば、コナジラミ、アブラムシ、ダニ、ノミ又はセンチュウなどの多くの害虫に対する高い忌避効果が得られると共に消臭効果や植物活性効果が得られることが明らかとなった。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。なお、日向美人の長年の栽培により、時に日向美人の特徴が観察できないもの(例えば葉身に斑を有しないもの)も希に観察されることがあるが、日向美人から分蘖されたペチュニアであれば、本発明と同様の効果を得ることができ本発明に含まれる。
本発明は、多くの害虫に対して効果のある忌避剤、消臭剤及び植物活性剤として産業上利用できる。

Claims (1)

  1. ナス科ペチュニア属ペチュニアの新品種である、日向美人の発酵溶液を含有することを特徴とするコナジラミ、ダニ、ノミ若しくはセンチュウの忌避剤又は消臭剤
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