JP7190947B2 - 油圧制御システムにおけるパラメータ同定を行う装置と方法、油圧制御システム、および状態検知方法 - Google Patents
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Description
こうした油圧機構および制御装置を含む油圧制御システムは、例えば建造物等に荷重を加えた際の位置や速度等の応答に基づいて建造物等の健全性を評価する用途にも利用されている。
〔第1実施形態〕
(油圧制御システムの構成)
図1に示す油圧制御システム1は、油圧機構4を含み、油圧機構4を制御するフィードバック位置制御系をなしている。この油圧制御システム1は、例えば、油圧機構4により荷重が印加される図示しない建造物等の健全性の測定、評価が可能である。
油圧制御システム1は、制御部2と、サーボ弁3と、油圧機構4と、位置センサ5とを備えている。
なお、油圧制御システム1は、位置および速度のフィードバック制御系であってもよい。
制御部2は、位置センサ5により検出された制御対象42の位置と、目標値との偏差に応じた弁開度指令をサーボ弁3に与える。弁開度指令に応じて動作するサーボ弁3の開度に応じて作動油の流量や流れの向き等が調整されることで油圧機構4が動作する。
パラメータ同定装置20は、油圧制御システム1におけるパラメータ同定を行う。本実施形態では、パラメータ同定装置20を用いたパラメータ同定を経て、油圧制御システム1を構成する要素の物理的状態を検知する方法についても後述する。
本実施形態におけるパラメータ同定は、油圧制御システム1の実機と、油圧制御システム1を示す動的な数式モデルM1(例えば図3)とにおいて、同一の制御により同一の応答が得られるように、評価関数を使用し、実機に対して数式モデルM1の各パラメータを同定する。
解析位相面データ取得部21、実測位相面データ取得部22、評価関数設定部23、およびパラメータ同定部24は、コンピュータ装置により実行可能なプログラムのモジュールとして構成することができる。
実測位相面データ取得部22は、油圧制御システム1を実際に動作させた際の応答データから実測位相面データDbを取得する。
パラメータ同定部24は、評価関数を最小化するように、パラメータの調整を行う。
なお、パラメータP1はサーボ弁3の不感帯特性を示し、パラメータP2はサーボ弁3のオフセットを示し、パラメータP3は油圧機構4の摺動部の摩擦特性を示し、パラメータP4はサーボ弁3の流量特性を示している。
図4を参照し、パラメータ同定に用いる位相面データの取得について説明する。
解析位相面データ取得部21は、数式モデルM1を使用して解析を実施することで、解析位相面データDa(図4)を取得する。このとき、解析位相面データ取得部21は、解析の実施により得られた時系列の位置や速度等の応答データから2つの変数を選んで位相面データDaに変換する。
油圧機構4の速度応答は、制御対象42から制御部2にフィードバックされる位置の微分値である。パラメータ同定装置20には、制御部2から、少なくとも、弁開度指令および速度が入力される。
実測位相面データDbに係る2変数と、解析位相面データDaに係る2変数とは、同一の組み合わせである。
図4に、解析位相面データDaと、実測位相面データDb(Db1~Db4)の一例を示す。図4には、実測位相面データ取得部22により、実機について取得された実測位相面データDb1~Db4を重畳して示している。
解析上の位相面データDaは、弁開度指令が0Vのとき速度応答も0mm/sであり、位相面上に線形の軌道を描く。解析位相面データDaは、弁開度指令および速度応答のそれぞれの正負両側に亘り対称である。なお、厳密には、正常な状態であっても、弁開度指令「0」の近傍に速度応答が0であるサーボ弁3の不感帯が存在する。
各実測位相面データDb1~Db4の軌道は、解析位相面データDaの軌道とは形状が異なり、かつ、実測位相面データDb1~Db4のそれぞれの軌道形状に一見して違いを認めることができる。
図4に示すような位相面表現によれば、解析位相面データDaに対する実測位相面データDb1~Db4の形状の相違に基づいて、実機の応答と解析の応答との誤差が拡大されているため、実機の応答と解析の応答との誤差を形状の変化として把握することができる。
図5~図7を参照し、パラメータ同定方法を説明する。
まず、パラメータが同定された数式モデルM1を得ることを目的として、数式モデルM1の運動方程式、推定したいパラメータ、実機における油圧機構4の位置応答データ、評価関数について、例えば下記の表1に示すように定義するものとする(数式モデル等定義ステップS11)。なお、運動方程式のUは、モデルM1への入力信号(図3における目標値Asin(ωt))である。
なお、P,J,X,Uは上記の通りベクトルまたは行列であるが、本明細書には太字で表記できないため、以下、通常の表記とする。後述するヤコビ行列Aも同様である。
解析位相面データ取得ステップS12では、シミュレータにより解析を実施し、解析結果から解析位相面データ取得部21により解析位相面データDa(図4)を取得する。
さらに、実測位相面データ取得ステップS13では、解析時と同様の例えば正弦波の位置指令を与えて実際に油圧制御システム1を動作させ、実測位相面データ取得部22により実測位相面データDbを取得する。
なお、ステップS12およびステップS13のいずれが先に行われてもよい。
図6に、解析位相面データDaおよび実測位相面データDbの一例と、複数の評価関数(J1~J8)の一例を示している。評価関数J1~J8のいずれも、同一の変数の組み合わせによる位相面において解析位相面データDaと実測位相面データDbとの形状の相違が表れた範囲の値の演算処理等により、位相面データDa,Dbの軌道の幾何学的情報に基づいて設定されている。数式モデルM1のパラメータPの誤差は位相面データDa,Dbの軌道の形状の相違として表れる。そのため、位相面データDa,Dbの形状の相違から、数式モデルM1のパラメータPと密接な関係のある幾何学的情報を抽出し、幾何学的情報に基づいて、未知のパラメータを決定するための任意の数の評価関数J1~J8を適切に設定することができる。
例えば、評価関数J1は、位相面データDa,Dbの軌道のそれぞれの弁開度指令の最大値付近における差分X21-X11(距離)に相当する。
評価関数J2は、弁開度指令値「0」の位置から解析位相面データDaに対して正負両側に存在する速度応答「0」の区間の距離(X22-X12)に相当する。
評価関数J6は、第1象限において位相面データDa,Dbの軌道がX軸に対してなす角度の差分(θ26-θ16)に相当する。同様に、評価関数J5,J7,J8も、位相面データDaの軌道と位相面データDbの軌道との所定位置における角度の差分に相当する。
以上により評価関数Jが設定されたならば、パラメータ同定部24により、数式モデルM1のパラメータP(例えば、図3に示すパラメータP1~P4を成分とするもの)を更新しつつ、評価関数Jを最小化することでパラメータ同定を行う(パラメータ同定ステップS15)。
なお、Pに付された^(ハット)は、収束計算の過程におけるシミュレーション内での一時的なパラメータであることを意味する。
さらに、シミュレーションに基づく時間的応答データを、規定の物理的状態量(例えば、弁開度指令および速度応答)からなる位相面に変換することで解析位相面データDa0~Danを取得する(ステップS152)。
このステップS153により、パラメータPの変動する成分(P1,P2,・・・Pn)毎に、かつ評価関数(J1~Jm)毎に、評価関数の値(J0=(J01~J0m),J1=(J11~J1m),・・・・,Jn=(Jn1~Jnm))が算出される。
但し、ステップS151の全体を終えてから次のステップS152に移行し、ステップS152の全体を終えてから次のステップS153に移行する必要は必ずしもない。パラメータPの同一成分に着目した際に、シミュレーションによる時間応答取得、解析位相面データ取得、および評価関数の値の算出の順序で処理が行われる限り、必ずしも、添え字の順序で処理を実施する必要はなく、添え字の順序とは異なるランダムな順序で処理を実施することも可能である。
但し、パラメータPの変動する成分毎かつ評価関数毎に得られる評価関数の値(J0=(J01~J0m),J1=(J11~J1m),・・・・,Jn=(Jn1~Jnm))を集約的に参照するヤコビ行列によりパラメータ誤差δPを求めるステップS154の開始時までに、ステップS151,152,153の全体に亘り処理を終えている必要がある。
ステップS155でNoの場合は、パラメータ同定処理を続行する。この場合、ステップS150において、パラメータPの成分毎の誤差を示すパラメータ誤差δPを用いて、パラメータPの各成分を更新することができる。例えば、下記に示すように、δPに所定の係数ηを掛けて、パラメータPを更新することができる。
図8を参照し、本発明の第2実施形態を説明する。第2、第3、第4実施形態では、油圧制御システム1におけるパラメータ同定に採用可能な評価関数Jの他の例を説明する。
第2~第4実施形態によれば、第1実施形態(図6)とは異なる観点により評価関数Jを設定することができる。本明細書に開示する評価関数Jのうち、解析位相面データDaと実測位相面データDbとの誤差をより適切に把握可能な評価関数Jを選択することができる。
斜線で示す領域全体の面積を評価関数Jに用いることもできるが、図8に示す例では、第1象限の領域R1において算出した面積を評価関数J1として使用し、また、第3象限の領域R2において算出した面積を評価関数J2として使用する。さらに、J1およびJ2の和に相当する評価関数J3と、J1およびJ2の差に相当する評価関数J4も使用することができる。
あるいは、図9に示す第3実施形態のように、極座標表現による位相面データDa,Dbの誤差を評価関数Jに用いることもできる。
図9に示す例では、解析位相面データDaと実測位相面データDbとの動径rの誤差に相当する評価関数J1~J4が、第1~第4象限毎に誤差が大きい角度θ1~θ4を選んで設定されている。
なお、ある角度における誤差の他、誤差の微分値や積分等を用いてもよい。
また、第2実施形態と同様に、極座標表現による位相面データDa,Dbの誤差面積を評価関数に使用することもできる。
上述した評価関数に対して、図10に示すように、位置や速度等の時間応答から算出した評価関数を組み合わせることもできる。時間応答y1は、シミュレーションによる応答データであり、時間応答y2は、実測による応答データである。
図6に示す評価関数と、図8に示す誤差面積による評価関数と、図9に示す極座標表現における評価関数と、図10に示す評価関数の2種以上から評価関数ベクトルを設定することができる。
図10には、時間応答から算出可能な評価関数の一例として、評価関数J1~J3を示している。
時間応答から算出した評価関数によれば、実機に対する数式モデルM1の誤差を把握することができる。
図11は、上記の各実施形態における位相面とは変数の組み合わせが異なり、弁開度と、油圧機構4のシリンダの位置応答とからなる位相面を示している。図11に、解析位相面データDaと、実測位相面データDb(Db1~Db4)とを重畳して示しているように、各実測位相面データDb1~Db4の軌道は、解析位相面データDaの軌道とは形状が異なり、かつ、各実測位相面データDb1~Db4のそれぞれの軌道形状に一見して違いを認めることができる。
したがって、解析位相面データDaと実測位相面データDbとの誤差による評価関数(例えばJ1,J2)を用いることにより、パラメータ同定を精度よく行うことができる。
本発明は、使用する位相面および評価関数の変更により、荷重制御系にも適用することができる。
また、本発明は、油圧制御システムに限らず、他の制御システムにおけるパラメータ同定にも利用することができる。
2 制御部
3 サーボ弁
4 油圧機構
5 位置センサ
20 パラメータ同定装置
21 解析位相面データ取得部
22 実測位相面データ取得部
23 評価関数設定部
24 パラメータ同定部
41 油圧アクチュエータ
42 制御対象
Da 解析位相面データ
Db,Db1~Db4 実測位相面データ
J,J1~Jm 評価関数
M1 数式モデル
P,P1~Pn パラメータ
R1,R2 領域
Claims (14)
- 油圧機構を制御する油圧制御システムにおけるパラメータ同定を行う装置であって、
前記油圧制御システムの実測された物理的状態量の応答データが、2つの前記物理的状態量からなる位相面データに変換されることで、実測位相面データを取得する実測位相面データ取得部と、
前記油圧制御システムの解析に基づく前記物理的状態量の応答データが、前記2つの前記物理的状態量からなる位相面データに変換されることで、解析位相面データを取得する解析位相面データ取得部と、
前記実測位相面データの軌道と前記解析位相面データの軌道との形状の相違を利用して評価関数を設定する評価関数設定部と、
前記油圧制御システムを示すモデルのパラメータを更新しつつ、前記評価関数を最小化するパラメータ同定部と、を備える、
ことを特徴とするパラメータ同定装置。 - 前記評価関数は、
前記実測位相面データの軌道と前記解析位相面データの軌道との所定位置における差分に相当する、
請求項1に記載のパラメータ同定装置。 - 前記評価関数は、
前記実測位相面データの極座標表現による軌道と前記解析位相面データの極座標表現による軌道との所定位置における差分に相当する、
請求項1に記載のパラメータ同定装置。 - 前記評価関数は、
前記実測位相面データの軌道と前記解析位相面データの軌道との誤差の面積に相当する、
請求項2または3に記載のパラメータ同定装置。 - 前記評価関数設定部は、
請求項2に記載の前記評価関数、
請求項3に記載の前記評価関数、
請求項4に記載の前記評価関数、および、
解析に基づく前記物理的状態量の時間応答、のいずれか2以上を成分として含む評価関数ベクトルを設定する、
請求項1に記載のパラメータ同定装置。 - 前記位相面データに係る2つの前記物理的状態量は、
前記油圧制御システムを構成するサーボ弁の弁開度または前記サーボ弁に与えられる弁開度指令、
および、前記油圧機構の速度応答である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のパラメータ同定装置。 - 請求項1から6のいずれか一項に記載のパラメータ同定装置と、
前記油圧機構と、を含む、
ことを特徴とする油圧制御システム。 - 油圧機構を制御する油圧制御システムにおけるパラメータ同定を行う方法であって、
前記油圧制御システムの実測された物理的状態量の応答データから、2つの前記物理的状態量からなる位相面データに変換することで、実測位相面データを取得するステップと、
前記油圧制御システムの解析に基づく前記物理的状態量の応答データから、前記2つの前記物理的状態量からなる位相面データに変換することで、解析位相面データを取得するステップと、
前記実測位相面データの軌道と前記解析位相面データの軌道との形状の相違を利用して評価関数を設定するステップと、
前記油圧制御システムを示すモデルのパラメータを更新しつつ、前記評価関数を最小化するステップと、を備える、
ことを特徴とするパラメータ同定方法。 - 前記評価関数は、
前記実測位相面データの軌道と前記解析位相面データの軌道との所定位置における差分に相当する、
請求項8に記載のパラメータ同定方法。 - 前記評価関数は、
前記実測位相面データの極座標表現による軌道と前記解析位相面データの極座標表現による軌道との所定位置における差分に相当する、
請求項8に記載のパラメータ同定方法。 - 前記評価関数は、
前記実測位相面データの軌道と前記解析位相面データの軌道との誤差の面積に相当する、
請求項9または10に記載のパラメータ同定方法。 - 前記評価関数を設定する前記ステップは、
請求項9に記載の前記評価関数、
請求項10に記載の前記評価関数、
請求項11に記載の前記評価関数、および、
解析に基づく前記物理的状態量の時間応答、のいずれか2以上を成分として含む評価関数ベクトルを設定する、
請求項8に記載のパラメータ同定方法。 - 前記油圧制御システムは、
位置および速度のうち少なくとも位置を制御する位置制御系を備え、
前記位相面データの位相面をなす2つの物理的状態量は、
前記油圧制御システムを構成するサーボ弁の弁開度または前記サーボ弁に与えられる弁開度指令、
および、前記油圧機構の速度応答である、
請求項8から12のいずれか一項に記載のパラメータ同定方法。 - 油圧機構を制御する油圧制御システムにおける物理的状態を検知する方法であって、
請求項8から13のいずれか一項に記載のパラメータ同定方法の処理により前記油圧制御システムの実機に対して同定させた前記パラメータに基づいて前記物理的状態を検知する、
ことを特徴とする状態検知方法。
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