JP7187582B2 - 喫煙物品用フィルター - Google Patents
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Description
それを達成する手段として、たばこ煙に含まれる成分を調整するための材料を含む多孔質物質を調製し、その多孔質物質をフィルターの構成材料として用いることが知られている(例えば、特許文献1~4)。
たばこ煙に含まれる成分を調整するための材料としては、活性粒子(特許文献1~3)、天然の材料に由来する複数の有機粒子(特許文献4)が例示されている。
また、セルロース粒子、セルローストリアセテート粒子及びそれらの混合物から選ばれる濾過率制御粒子が、セルロースアセテート繊維のトウに分散されている濾材を包含するフィルタプラグを有するシガレットフィルタも知られている(特許文献5)。
一方で、特許文献4に記載された、天然の材料に由来する複数の有機粒子を含む多孔質物質をフィルターの構成材料として用いた場合には、たばこ煙に起因する香喫味とは別の香喫味を使用者に対して与えることになる。
また、特許文献5に記載された濾材は、セルロース粒子等の濾過率制御粒子が、セルロースアセテート繊維のトウの内部に分散されており、フィルターにおけるセルロースアセテート繊維のトウの存在割合が大きいことから、主流煙の成分を必要以上に低減してしまうことがある。
また、特許文献4に記載の技術では、たばこ煙から得られる本来の香喫味とは別の香喫味が付与されることで、喫煙時の香喫味として満足いくものではない可能性がある。
[1] 香気成分を放出せず、香喫味に寄与のある成分をたばこ煙の粗タールに対して選択的に低減させない不活性粒子と、非繊維状の結着樹脂とを含む多孔質材を有するフィルターセグメントを備える、喫煙物品用フィルター。
[2] 前記不活性粒子が、150℃で熱的に安定なものである、[1]に記載の喫煙物品用フィルター。
[3] 前記不活性粒子が、セルロース粒子、未賦活炭化物粒子、炭酸カルシウム粒子、及び窒化アルミニウム粒子から選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載の喫煙物品用フィルター。
[4] 未賦活炭化物粒子のJIS K 1474に基づき測定したベンゼン吸着能が0.5~0.7である、[3]に記載の喫煙物品用フィルター。
[5] セルロース粒子、炭酸カルシウム粒子及び窒化アルミニウム粒子のBET比表面積が、10m2/g以下である、[3]に記載の喫煙物品用フィルター。
[6] 前記不活性粒子が、JIS Z8801-1(2006)に基づいて、10~70メッシュの粒径を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の喫煙物品用フィルター。
[7] 前記不活性粒子の比重が5g/cm3以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の喫煙物品用フィルター。
[8] 結着樹脂が、熱可塑性樹脂である、[1]~[7]のいずれかに記載の喫煙物品用フィルター。
[9] 前記不活性粒子と、前記非繊維状の結着樹脂とを含む多孔質材を有するフィルターセグメントが、可塑剤を含まない、[1]~[8]のいずれかに記載の喫煙物品用フィルター。
[10] 前記多孔質材における、前記不活性粒子と、非繊維状の結着樹脂の重量比が、70:30~80:20である、[1]~[9]のいずれかに記載の喫煙物品用フィルター。
本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターは、香気成分を放出せず、香喫味に寄与のある成分をたばこ煙の粗タールに対して選択的に低減させない不活性粒子(以下、単に不活性粒子ともいう)と、非繊維状の結着樹脂とを含む多孔質材を有するフィルターセグメントを備える。
前記不活性粒子は、上記で挙げた特許文献1~3に記載された活性粒子、特許文献4に記載された天然の材料に由来する有機粒子とはその性質が全く異なるものである。
具体的には、特許文献1~3に記載された活性粒子が、香喫味に寄与のある成分に対して、吸着性を有する性質、又は化学反応を起こさせる性質を有するのに対し、本発明の実施形態で用いる不活性粒子は、香喫味に寄与のある成分を吸着する能力が、特許文献1~3に記載された活性粒子よりも低く、かつ、香喫味に寄与のある成分に対して化学反応を起こさせないものである。
また、特許文献4に記載された天然の材料に由来する有機粒子は、それ自体が香喫味を放出するものであるのに対し、本発明の実施形態で用いる不活性粒子は、それ自体は香喫味を放出するものではない。
なお、前記「香喫味に寄与のある成分」とは、たばこ煙に含まれる半揮発性成分のことであり、より具体的には、リモネン、2,5-ジメチルピラジン、3-ビニルピリジン、3-ブチルピリジン、フェニルエチルアルコール、インドールを挙げることができる。
本発明の実施形態にかかる不活性粒子は、喫煙物品用フィルターに用いたときに、香喫味に寄与のある成分、具体的には上記の半揮発性成分を、たばこ煙の粗タールに対して選択的に低減させないものである。
一般的なフィルター(対照)として、酢酸セルロース繊維束に可塑剤としてトリアセチンを約7重量%含ませたもの(通気抵抗は85mmH2O/27mm)を使用する。
半揮発性成分の透過量(デリバリー量)は、以下のとおり測定する。
自動喫煙器(Borgwaldt KC Inc.製RM20D)を用いて、吸煙容量35.0mL/2秒、吸煙時間2秒/パフ、吸煙頻度1パフ/分の条件で自動喫煙し、粗タールをケンブリッジフィルタ(Borgwaldt KC Inc.製CM-133)で捕集し、このケンブリッジフィルタを通過した煙を、ドライアイスとイソプロパノールからなる冷媒で-70℃に冷却したメタノール10mLに捕集する。なお、メタノール溶液には内部標準物質としてd-32ペンタデカンが5μg/mLの濃度で含む。
上記分析用試料を、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MSD)で分析する。GCにはAgilent 7890A(Agilent Technologies Inc.)を、MSDにはAgilent 5975C(Agilent Technologies Inc.)を用いる。
前記不活性粒子の比重は、5g/cm3以下であってもよい。前記不活性粒子の比重が5g/cm3以下であることで、通常、フィルターが梱包されている最小単位である4000本/箱の重量を20kg未満に抑えることができ、フィルター取扱者の作業負担を抑えることができる。(前提;フィルター長さ:120mm、フィルター内周:24.1mm、フィルター空隙率*:90%、不活性粒子充填重量割合:80%))
比重が5g/cm3以下の場合、特許文献1に記載された金や白金を含まない。なお、前記不活性粒子の比重は、通常1g/cm3以上を挙げることができる。
また、前記不活性粒子が、JIS Z8801-1(2006)に基づいて、10~70メッシュの粒径を有することが好ましい。このような粒径の範囲であることで、多孔質材の内部で偏りなく不活性粒子が存在できるとともに、前記の半揮発性成分を選択的に減少させないことに寄与する。
これにより、150℃で変形する、例えば熱可塑性樹脂から構成されるものはこの要件を満たさない。また、特許文献3に記載されているようなイオン交換樹脂もこの要件を満たさない。
これらの粒子は、いずれも比重が5g/cm3以下であり、かつ、150℃で熱的に安定である。
セルロース粒子は、市販されている微結晶セルロース等のセルロース粉を原料として、圧縮方式の造粒装置で圧縮成形し、得られた成形体を粉砕し、分級して準備することができる。セルロース粒子は、国際公開第2013/084661号を参照して作製することができる。または、市販のセルロース成型体を使用してもよい。
前記セルロース粒子は、体積基準のメジアン径(D50)が、100~1700μmである態様を挙げることができ、150~1500μmであることが好ましく、200~1300μmであることがより好ましい。
メジアン径(D50)は、レーザ回折/ 散乱式粒子径分布(粒度分布)測定装置で測定可能である。
セルロース粒子は、嵩密度の範囲として0.05~1.00g/ccを挙げることができ、0.10~0.90g/ccであることが好ましく、0.15~0.85g/ccであることがより好ましい。
前記セルロース粒子の嵩密度は、例えばホソカワミクロン株式会社製パウダーテスターPT-Xで測定することができる。
セルロース粒子のBET比表面積は10m2/g以下であることが好ましく、検出限界以下であることがより好ましい。このようなBET比表面積は、セルロース粒子の半揮発性成分に対する良好な透過性を確保する観点で好ましい。セルロース粒子のBET比表面積の下限値としては、0m2/g超を挙げることができる。
未賦活炭化物粒子は、炭化物源として例えば椰子ガラなど適当なものを選択し、それを炭化炉内で不活性ガス雰囲気中で500~1000℃の温度で炭化処理を行うことで得ることができる。その際に賦活処理は行わない。炭化処理の時間としては、30~60分間を挙げることができる。その具体例として特開昭62-55068号公報に記載されたものを用いることができる。
未賦活炭化物粒子について、JIS K 1474に基づき測定したベンゼン吸着能は0.5~0.7程度のものであることが好ましい。このようなベンゼン吸着能は、未賦活炭化物粒子の半揮発性成分に対する良好な透過性を確保する観点で好ましい。
炭酸カルシウム粒子及び窒化アルミニウム粒子のいずれも、市販されているそれぞれの粉体を造粒することによって作製することができる。
炭酸カルシウム粒子については、例えば市販されている、平均粒径6.3μm以下の炭酸カルシウム粉体を造粒することで得られる。
窒化アルミニウムについては、例えば市販されている、平均粒径2.5μm以下の粉体を造粒することで得られる。
炭酸カルシウム粒子及び窒化アルミニウム粒子の造粒の仕方としては、まず圧縮成形を行う。具体的には、炭酸カルシウム又は窒化アルミニウムの粉体を圧縮方式の造粒装置で圧縮成形し、得られた成形体を更に粉砕して、分級する。
その後、押出成形を行うことで粒子を得ることができる。
具体的には、上記で準備した粉体に適当な溶剤と必要に応じてバインダーを添加してスラリー状に調製して、孔のあいた容器からスラリーを押し出しつつ必要な大きさにカットして、溶剤を乾燥させることで、炭酸カルシウム粒子又は窒化アルミニウム粒子を得ることができる。その後、必要に応じて分級する。
炭酸カルシウム粒子及び窒化アルミニウム粒子のBET比表面積は、それぞれ10m2/g以下であることが好ましい。このようなBET比表面積は、炭酸カルシウム粒子及び窒化アルミニウム粒子の半揮発性成分に対する良好な透過性を確保する観点で好ましい。一方で、炭酸カルシウム粒子及び窒化アルミニウム粒子のBET比表面積の下限値として1m2/gを挙げることができる。
2種類以上の組み合わせとしては、例えば、セルロース粒子と未賦活炭化物粒子を含む組合せ、セルロース粒子と炭酸カルシウム粒子を含む組合せ、セルロース粒子と窒化アルミニウム粒子を含む組合せ、未賦活炭化物粒子と炭酸カルシウム粒子を含む組合せ、未賦活炭化物粒子と窒化アルミニウム粒子を含む組合せなどを挙げることができる。
本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターが備えるフィルターセグメントが有する多孔質材は、非繊維状の結着樹脂を含む。「非繊維状の」とは、セルロースアセテートトウのような繊維状のものでないということである。
結着樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂を挙げることができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド(またはナイロン)、ポリアクリル、ポリスチレン、ポリビニル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体およびそのいずれかの組み合わせを含むがそれらに限定されない。ポリオレフィンの例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体、そのいずれかの組み合わせなどを含むがそれらに限定されない。適切なポリエチレンの例としてさらに、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体、そのいずれかの組み合わせなどがある。
適切なポリエステルの例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体、そのいずれかの組み合わせなどがある。
適切なポリアクリルの例として、ポリメタクリル酸メチル、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体、そのいずれかの組み合わせなどがあるがそれらに限定されない。
適切なポリスチレンの例として、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンアクリロニトリル、スチレンブタジエン、スチレンマレイン酸無水物、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体、そのいずれかの組み合わせなどがあるがそれらに限定されない。
適切なポリビニルの例として、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、そのいずれかのコポリマー、そのいずれかの誘導体、そのいずれかの組み合わせなどがあるがそれらに限定されない。
ポリエチレンとしては、セラニーズ社により販売されているGUR(登録商標)ポリマーとして、GUR(登録商標)2000シリーズ(2105、2122、2122-5、2126)、GUR(登録商標)4000シリーズ(4120、4130、4150、4170、4012、4122-5、4022-6、4050-3/4150-3)、GUR(登録商標)8000シリーズ(8110、8020)、GUR(登録商標)Xシリーズ(X143、X184、X168、X172、X192)を挙げることができる。
本発明の実施形態で用いる結着樹脂は、粒子状のものを挙げることができる。粒子状とは、粉末、ペレット、または微粒子の形態を挙げることができる。
結着樹脂が粒子状である場合、その直径の範囲としては0.1nm~5000μm程度を挙げることができる、10nm~500μm程度が好ましく、100nm~300μm程度がより好ましい。
本発明の実施形態で用いる結着樹脂は、0.10g/cm3~0.55g/cm3の嵩密度を有してもよく、0.17g/cm3~0.50g/cm3であることが好ましく、0.20g/cm3~0.47g/cm3であることがより好ましい。
本発明の実施形態にかかる多孔質材は、本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターを構成する少なくとも1つのフィルターセグメントの構成要素である。
本発明の実施形態にかかる多孔質材は、上記の特定の不活性粒子と結着樹脂を含むものであり、その作製法は任意の方法を用いることができる。
例えば、上記の特定の不活性粒子と結着樹脂を混合し、適当な形状の金型に入れる。金型を結着樹脂の融点またはそれ以上、例えば、一実施形態において、約150℃~300℃に加熱し、金型およびその内容物を所望の温度に加熱するのに十分な時間、温度を保持する。
その後、物質を金型から取り出し、室温に冷却することで、内部に空隙が形成された多孔質材を作製することができる。
多孔質材の空隙体積率としては、例えば40~90%を挙げることができる。この空隙体積率の範囲であると、通気抵抗やたばこ煙中の半揮発性成分の透過量を好適に調整することができる。空隙体積率については、特許文献2の記載に基づき算出することができる、多孔質材の形状は特に制限されないが、例えば円柱状を挙げることができる。多孔質材の通気方向の長さは特に制限はないが、例えば3~30mm程度を挙げることができる。
本発明の実施形態にかかる多孔質材を有するフィルターセグメントでは、不活性粒子が結着樹脂により、多孔質材において固着されていることから、多孔質材を有するフィルターセグメント、そのフィルターセグメントを備える喫煙物品用フィルター、又はその喫煙物品用フィルターを備える喫煙物品の輸送の際に、不活性粒子がフィルターセグメントから散逸したりすることがない。
また、本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターが多孔質材を有するフィルターセグメントを備えることで、フィルターの通気抵抗当たりのタール及びニコチンの濾過率が低くなる(使用者にデリバリーされやすくなる)。また、喫煙時のタール量を一定にした場合に、低濾過率で高いベンチレーション割合を有する喫煙物品用フィルターを設計でき、一酸化炭素の生成量を低減できる。
本発明の実施形態にかかる多孔質材には、従来の喫煙物品用フィルターに用いられていたトリアセチンのような可塑剤を用いる必要がない。これにより、たばこ煙中の半揮発性成分が、可塑剤に吸着されることで、除去されてしまうことを防ぐことができる。
本発明の実施形態に係る喫煙物品用フィルターは、上記で説明した多孔質材を有するフィルターセグメント(以下、単に多孔質材を有するセグメンントともいう)を少なくとも備える。
多孔質材を有するフィルターセグメントは、従来のフィルター付シガレットを構成するフィルターの周長及び通気方向の長さと同様の周長及び通気方向の長さを採用することができる。
例えば、周長としては、16~26mmを挙げることができ、好ましくは24~26mmを挙げることができる。これはフィルターセグメントの直径としてそれぞれ5.1~8.3mmと7.6~8.3mmに相当する。
多孔質材を有するフィルターセグメントは、上記の周長を有していてもよく、従来のフィルター付シガレットが備えるフィルターの寸法に限らず、後述するその他の喫煙物品に適した周長、通気方向の長さを有していてもよい。
多孔質材を有するフィルターセグメントは、その外周面を、後述するフィルター用の巻取紙で巻装してもよい。
一つの実施形態にかかる構成としては、従来のフィルターセグメントを吸口端側に配置し、たばこ刻を有するたばこロッドと、従来のフィルターセグメントの間に、上記の多孔質材を有するフィルターセグメントを配置する態様を挙げることができる。
多孔質材を有するフィルターセグメントと、従来のフィルターセグメントを、成形紙を用いて連結することで、喫煙物品用フィルターを作製することができる。この構成を図2に示す。この構成をデュアルセグメントともいう。
デュアルセグメントを採用した場合、吸口端に多孔質材が露出しないので外観を良好にできる。また、多孔質材が使用者の口に直接接触することを防げる。
別の実施形態にかかる構成としては、従来のフィルターセグメントを吸口端側に配置するとともに、その従来のフィルターセグメントに隣接するように多孔質材を有するフィルターセグメントを配置し、その多孔質材を有するフィルターセグメントとたばこ刻を有するたばこロッドの間に、更に従来のフィルターセグメントを配置する態様を挙げることもできる。この構成を図3に示す。この構成をトリプルセグメントともいう。トリプルセグメントを採用した場合、たばこロッド側から伝わる高温の熱が、多孔質材に伝わることで多孔質材が変質することを防ぐことができる。
本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターを構成するフィルターセグメントの数は、図2に示されるように2つである態様や図3に示されるように3つである態様の他にも、4つ以上である態様であってもよい。その場合、上記の多孔質材を有するフィルターセグメントを2つ以上備える態様を挙げることができる。
なお、各フィルターセグメントを連結して形成されるフィルターの外面は、チップペーパーで巻装される態様を挙げることができる。
また、上記の多孔質材を有するフィルターセグメント以外のフィルターセグメントについては、セルロースアセテートトウ以外の素材から構成されていてもよい。
セルロースアセテートトウや、その他の素材において、通気抵抗の調整や添加物(公知の吸着剤や香料、香料保持材等)の添加を適宜設計できる。
チップペーパーには、喫煙物品の喫煙時に吸入するたばこ煙と空気の存在割合を調整するためのベンチレーション孔を設けることができる(図2、3に示される、チップペーパーに点線で図示したもの)。ベンチレーション孔の配置については特に制限はなく、喫煙物品の周方向に一列あるいは2列になるように配置された態様を挙げることができる。また、ベンチレーション孔のピッチや孔の大きさ、開孔方法についても特に制限はない。
本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターは、以下に例示する喫煙物品に用いることができる。
たばこ充填材を燃焼させる燃焼型喫煙物品、例えばフィルター付シガレット;たばこ充填材を燃焼させることなく加熱する非燃焼加熱型喫煙物品;またはたばこ充填材を燃焼も加熱もしないでたばこ充填材の香喫味成分を吸引する非加熱型喫煙物品が挙げられる。非燃焼加熱型喫煙物品としては、炭素熱源の燃焼熱でたばこ充填材を加熱する炭素熱源型吸引器(例えばWO2006/073065を参照);吸引器と吸引器を電気加熱するための加熱デバイスとを備えた電気加熱型吸引器(例えばWO2010/110226を参照);または香喫味源を含有する液状のエアロゾル源を加熱により霧化する液体霧化型吸引器(例えばWO2015/046385を参照)などが挙げられる。加えて、たばこ充填材に代えてエアロゾル生成ロッドを使用し、そのエアロゾル生成ロッドの外側から加熱して香味成分を生成させる非燃焼加熱型喫煙物品への適用も好ましい。当該喫煙物品は、電池、電気的加熱部、着脱可能に差し込まれるエアロゾル生成ロッド部材を有する。電気的加熱部は、いわゆるヒータであり、発熱素子を有する。電気的加熱部の発熱素子は、エアロゾル生成ロッドを加熱し、エアロゾル生成ロッドの充填物から香味を周辺の空気中に放出させる。電気的加熱部によるエアロゾル生成ロッドの加熱温度は、例えば400℃以下である。エアロゾル生成ロッド部材を有する上記喫煙物品については、特許第4889218号公報及び特許第4762247号公報に具体的な説明がある。
これらの非燃焼加熱型喫煙物品が有するフィルターとして、本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルタを適用することができる。
非加熱型喫煙物品としては、吸引ホルダと吸引ホルダのメイン流路に充填されたたばこ充填材とを含み、たばこ充填材の香喫味成分を吸引する香味吸引器が挙げられる(例えば、WO2010/095659を参照)。
その場合の多孔質材を有するフィルターセグメント、そのフィルターセグメントを備える喫煙物品フィルターの形状等については適宜変更することができる。
<セルロース粒子とポリエチレン樹脂とを含む多孔質材を有するフィルターセグメントの調製>
不活性粒子として、セルロース粒子を用い、結着樹脂としてポリエチレンを用いた多孔質材を調製した。
セルロース粒子は、市販のセルロース粉(エンデュランスMCC VE-090、FMC Corporation製)を原料として、圧縮造粒装置(ローラーコンパクターTF-208、フロイント産業(株)製)を用いて、圧縮成形し粉砕および分級して作製した。セルロース粒子はメジアン径(D50)1190μmであり、嵩密度は0.832g/ccであり、BET比表面積は検出限界以下であった。嵩密度は、ホソカワミクロン株式会社製パウダーテスターPT-Xにて測定した。
このセルロース粒子(75重量部)と、結着樹脂であるポリエチレン(セラニーズ社製 GUR(商標) 25重量部)とを混合して金型に入れ、40分間、200℃に加熱した。加熱後の材料を金型から取り出して冷却し、周長23.75mm、長さ20mmの多孔質材1を得た。
(作製例2)
不活性粒子として未賦活炭化物粒子を用い、その重量を80重量部とし、ポリエチレンの重量を20重量部にしたこと以外は作製例1と同様の手順で多孔質材2を得た。未賦活炭化物粒子のベンゼン吸着能は0.6であった。
未賦活炭化物粒子は、椰子ガラを炭化炉内で不活性ガス雰囲気中で炭化処理を行うことで得たものである。
(作製例3)
不活性粒子の代わりに水蒸気賦活法にて作製した低賦活炭を用いたこと以外は作製例2と同様の手順で多孔質材3を得た。低賦活炭のBET比表面積は725m2/gであった。
(作製例4)
不活性粒子の代わりに水蒸気賦活法にて作製した活性炭を用いたこと以外は作製例2と同様の手順で多孔質材4を得た。活性炭のBET比表面積は1142m2/gであった。
市販のフィルター付シガレットからたばこ刻を含むたばこロッドを取り外し、そのたばこロッドに、フィルターセグメントとして上記の各多孔質材(20mm)と、セルロースアセテートトウフィルタ(7mm;5.5Y31000)とをこの順に連結し、試験用のフィルター付シガレットを作製した。
また、コントロールとして、上記と同じたばこロッドに対して、セルロースアセテートトウフィルター(27mm;2.8Y35000)を連結してフィルター付シガレットを作製した。
これらのフィルター付シガレットを用いて喫煙試験を行い、粗タール量と、たばこ煙中の成分から半揮発性成分としてリモネン、2,5-ジメチルピラジン、3-ビニルピリジン、3-ブチルピリジン、フェニルエチルアルコール、及びインドールを選択して分析した。
なお、喫煙試験は上記で示した機器と条件を採用して行った。
その結果を図1に示す。図1の横軸は半揮発性成分の種類を示す。図1の縦軸は、各試料における、粗タール量で標準化した半揮発性成分の量のコントロールに対する比を示すものであり、この数値が大きいほど選択的な低減が起きていない(透過量が多い)ことを示す。
これらの結果は、セルロース粒子と未賦活炭化物粒子が不活性粒子として機能するのに対し、低賦活炭や活性炭が活性粒子(特許文献1~3に記載されているものに相当)として機能することを示している。
半揮発性成分の測定を行った試験用の各フィルター付シガレットについて、ベンチレーション割合を37%、タール量を10mgに調整して、喫煙時の官能特性について評価を行った。
その結果、不活性粒子であるセルロース粒子や未賦活炭化物粒子を含む多孔質材を有するフィルターセグメントを備えるサンプルでは、たばこ煙に起因する香喫味が増加したのに対し、活性粒子である低賦活炭や活性炭を用いた多孔質材をフィルターセグメントとして備えるサンプルでは、たばこ煙に起因する香喫味が減少した。
また、本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターが有する不活性粒子は、それ自体が香喫味を生じさせるものではない(無臭である)ので、本発明の実施形態にかかる喫煙物品用フィルターを用いた場合には、使用者はたばこ葉の有する特徴的な香喫味をそのまま味わうことができる。
2 従来のフィルターセグメント
3 多孔質材を有するフィルターセグメント
4 巻取紙
5 成形紙
6 チップペーパー
7 フィルター
Claims (9)
- 香気成分を放出せず、香喫味に寄与のある成分をたばこ煙の粗タールに対して選択的に低減させない不活性粒子と、非繊維状の結着樹脂とを含む多孔質材を有するフィルターセグメントを備え、
前記多孔質材における、前記不活性粒子と、前記非繊維状の結着樹脂の重量比が、70:30~80:20である、喫煙物品用フィルター。 - 前記不活性粒子が、150℃で熱的に安定なものである、請求項1に記載の喫煙物品用フィルター。
- 前記不活性粒子が、セルロース粒子、未賦活炭化物粒子、炭酸カルシウム粒子、及び窒化アルミニウム粒子から選ばれる1種以上である、請求項1又は2喫煙物品用フィルター。
- 未賦活炭化物粒子のJIS K 1474に基づき測定したベンゼン吸着能が0.5~0.7である、請求項3に記載の喫煙物品用フィルター。
- セルロース粒子、炭酸カルシウム粒子及び窒化アルミニウム粒子のBET比表面積が、10m2/g以下である、請求項3に記載の喫煙物品用フィルター。
- 前記不活性粒子が、JIS Z8801-1(2006)に基づいて、10~70メッシュの粒径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
- 前記不活性粒子の比重が5g/cm3以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
- 結着樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項1~7のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
- 前記不活性粒子と、前記非繊維状の結着樹脂とを含む多孔質材を有するフィルターセグメントが、可塑剤を含まない、請求項1~8のいずれか一項に記載の喫煙物品用フィルター。
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