JP7185649B2 - タイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、センサを備えたタイヤに関する。
溝の少ないタイヤが使用されている場合や、タイヤと路面との間の摩擦が少ない場合等に、スリップ現象が発生するが、車体が一度でもスリップ現象を起こしてしまうと大事故や大惨事になり大変危険である。そこで、タイヤの滑りを検出し、検出結果に基づいて車体に何らかの制御を行うことが好ましい。
タイヤの滑りを検出する装置としては、例えば、ひずみセンサをトレッド部に埋め込むことで、タイヤの路面に対する接触状態を取得する装置が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
特許第4349151号
しかしながら、従来のひずみセンサでは、タイヤの部分的なひずみしか検出できず、タイヤの滑りを高精度で検出することは困難であった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、滑りを高精度で検出できるセンサを搭載したタイヤを提供することを目的とする。
本タイヤは、移動体用のタイヤであって、前記タイヤの内側にセンサが設けられ、前記センサは、一方の側が力の入力側となり、他方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された複数の第1抵抗部を備えた第1絶縁層と、一方の側に長手方向を前記第1方向に向けて並置された複数の第2抵抗部を備えた第2絶縁層と、前記第1絶縁層の他方の側と前記第2絶縁層の一方の側との間に配置され、前記力に応じて弾性変形する部材と、を有し、各々の前記第1抵抗部と各々の前記第2抵抗部とは、前記部材を介して対向して配置され、各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部の両端部には1対の電極が設けられ、前記第1抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値と前記第1抵抗部と対向する前記第2抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値との差が、前記部材の弾性変形に応じて連続的に変化する。
開示の技術によれば、滑りを高精度で検出できるセンサを搭載したタイヤを提供できる。
第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その1)である。 第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その2)である。 第1実施形態に係るセンサを例示する平面図である。 第1実施形態に係るセンサを例示する断面図(その1)である。 第1実施形態に係るセンサを例示する断面図(その2)である。 第1実施形態に係るセンサモジュールを例示するブロック図である。 第1実施形態に係るセンサモジュールの制御装置を例示するブロック図である。 センサに力が加わった様子を模式的に示す断面図である。 第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する平面図(その1)である。 第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する断面図(その1)である。 第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する平面図(その2)である。 第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する断面図(その2)である。 第1実施形態の変形例2に係るセンサを例示する平面図である。 第1実施形態の変形例2に係るセンサを例示する断面図である。 第1実施形態の変形例3に係るセンサを例示する平面図(その1)である。 第1実施形態の変形例3に係るセンサを例示する断面図である。 第1実施形態の変形例3に係るセンサを例示する平面図(その2)である。
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その1)であり、タイヤを幅方向に切断した断面を示している。図2は、第1実施形態に係るタイヤを例示する断面図(その2)であり、タイヤを幅方向の中央で幅方向に垂直な方向に切断した断面を示している。なお、図2は、図1とは縮尺が異なり、又、図1に示した構成要素の一部が省略されている。
図1及び図2に示すように、タイヤ100は、トレッド部110と、左右のサイドウォール部120と、左右のビード部130とを有している。トレッド部110は、タイヤ100の路面に接する部分である。サイドウォール部120は、タイヤ100の側面となる部分である。ビード部130は、タイヤ100をホイールのリムに固定する部分である。
タイヤ100の内側には、インナーライナー140が設けられている。インナーライナー140は、例えば、ゴムで形成された層である。インナーライナー140の外側には、トレッド部110と左右のサイドウォール部120とを通って左右のビード部130間に伸びるカーカス150が設けられている。カーカス150は、例えば、繊維やスチールをゴムで被覆した層である。カーカス150の両端部は、ビードコア160及びビードフィラー170を挟み込むようにして折り返されている。トレッド部110のカーカス150の外周側には、複数のベルト180が設けられている。
インナーライナー140の外周側(タイヤ100の中心から遠い側)には、センサ1が貼り付けられている。センサ1は、インナーライナー140の外周側の幅方向の全体及び周方向の全体に貼り付けられ、タイヤ100の最外周(路面に接する面)とインナーライナー140外側の間に埋め込んで使用する。
センサ1は、タイヤ100が自動車等の移動体に装着されて走行しているときに、タイヤ100に横方向に作用する力に起因するタイヤ100のひずみを検出するために設けられている。すなわち、移動体の走行中にセンサ1の出力をモニタすることで、タイヤ100の横滑りを検出できる。なお、移動体とは、例えば、自動車、自動二輪車、ロボット等のタイヤ100を装着して移動可能な物体を指す。
図3は、第1実施形態に係るセンサを例示する平面図である。図4は、第1実施形態に係るセンサを例示する断面図であり、図3のA-A線に沿う断面を示している。
図3及び図4は、センサ1がタイヤ100に配置される前の状態を示している。又、X方向はタイヤ100の幅方向に相当し、Y方向はタイヤ100の周方向に相当し、Z方向はタイヤ100の半径方向に相当する。
図3及び図4を参照すると、センサ1は、基材11及び12と、抵抗部31及び32と、端子部41及び42と、部材51とを有している。センサ1は、並置された複数の抵抗部31及び32の長手方向(Y方向)をタイヤ100の周方向に向けてタイヤ100に配置される。ここでは、センサ1の基材11側がインナーライナー140側を向くように配置されるものとする。
なお、本実施形態では、便宜上、センサ1において、基材11の抵抗部31が設けられていない側を上側又は一方の側、基材12の抵抗部32が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の基材11の抵抗部31が設けられていない側の面を一方の面又は上面、基材12の抵抗部32が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、センサ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を基材11の上面11aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材11の上面11aの法線方向から視た形状を指すものとする。
センサ1は、下面11bに抵抗部31が形成された基材11と、上面12aに抵抗部32が形成された基材12が、下面11bと上面12aとの間に弾性変形可能な部材51を挟んで積層された構造である。各々の抵抗部31と各々の抵抗部32とは、部材51を介して対向して配置されている。各々の抵抗部31の両端部には1対の電極である端子部41が設けられ、各々の抵抗部32の両端部には1対の電極である端子部42が設けられている。
センサ1において、基材11の上面11aが力(せん断力や圧縮力)の入力側となり、タイヤ100に作用する力が基材11に加わると、基材11に加わる力に応じて部材51が弾性変形する。ここで、せん断力とは基材11の上面11aと平行な方向の力であり、圧縮力とは基材11の上面11aと垂直な方向の力である。
抵抗部31の1対の端子部41間の抵抗値と抵抗部31と対向する抵抗部32の1対の端子部42間の抵抗値との差が、せん断力による部材51の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の差の変化に基づいて、タイヤ100の横滑り(X方向の滑り)を検出できる。
又、抵抗部31の1対の端子部41間の抵抗値と抵抗部31と対向する抵抗部32の1対の端子部42間の抵抗値との和が、圧縮力による部材51の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の和の変化に基づいて、基材11がインナーライナー140から受けた押圧力の大きさを検出できる。以下、各構成要素について詳説する。
基材11は、抵抗部31等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材11の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材11の厚さが5μm~200μmであると、抵抗部31のひずみ感度誤差を少なくできる点で好ましい。
複数の抵抗部31は、絶縁層である基材11の下面11bに、長手方向をY方向に向けて所定間隔でX方向に並置された薄膜であり、部材51の弾性変形に応じて連続的に抵抗値が変化する受感部である。抵抗部31は、基材11の下面11bに直接形成されてもよいし、基材11の下面11bに他の層を介して形成されてもよい。なお、図3では、便宜上、抵抗部31を梨地模様で示している。
基材12は、抵抗部32等を形成するためのベース層となる絶縁性の部材であり、可撓性を有する。基材12の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材12の厚さが5μm~200μmであると、抵抗部32のひずみ感度誤差を少なくできる点で好ましい。
複数の抵抗部32は、絶縁層である基材12の上面12aに、長手方向をY方向に向けて所定間隔でX方向に並置された薄膜であり、部材51を介して各々の抵抗部31と対向して配置されている。各々の抵抗部32は、部材51の弾性変形に応じて連続的に抵抗値が変化する受感部であるが、部材51がせん断力により弾性変形しても抵抗部32は殆ど歪まず抵抗部32の抵抗値は殆ど変化しない。抵抗部32は、基材12の上面12aに直接形成されてもよいし、基材12の上面12aに他の層を介して形成されてもよい。
基材11及び12は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材11及び12が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材11及び12は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
基材11及び12の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。又、基材11及び12の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材11及び12上に、例えば、絶縁膜が形成される。
抵抗部31及び32は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗部31及び32は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
抵抗部31及び32の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗部31及び32の厚さが0.1μm以上であると、抵抗部31及び32を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。又、抵抗部31及び32の厚さが1μm以下であると、抵抗部31及び32を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材11や基材12からの反りを低減できる点で更に好ましい。
抵抗部31及び32の幅は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~1000μm(1mm)程度とすることができる。隣接する抵抗部31及び32のピッチは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、1mm~100mm程度とすることができる。なお、抵抗部31及び32は、実際には数100~数1000本程度設けられる。
例えば、抵抗部31及び32がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、抵抗部31及び32の温度係数の安定化や、印加される力に対する抵抗部31及び32の感度の向上を実現できる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗部を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味する。抵抗部31及び32の温度係数の安定化や、滑り力に対する抵抗部31及び32の感度の向上を実現する観点から、抵抗部31及び32はα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
又、抵抗部31及び32がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
又、CrN及びCrN中のCrNの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrN及びCrN中のCrNの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCrNにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減が成される。
一方で、膜中に微量のNもしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
端子部41は、基材11の下面11bにおいて、各々の抵抗部31の両端部から延在しており、平面視において、抵抗部31よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部41は、部材51の弾性変形により生じる抵抗部31の抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部41の上面を、端子部41よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部31と端子部41とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成できる。
端子部42は、基材12の上面12aにおいて、各々の抵抗部32の両端部から延在しており、平面視において、抵抗部32よりも拡幅して略矩形状に形成されている。端子部42は、抵抗部32の抵抗値の変化を外部に出力するための1対の電極であり、例えば、外部接続用のフレキシブル基板やリード線等が接合される。端子部42の上面を、端子部42よりもはんだ付け性が良好な金属で被覆してもよい。なお、抵抗部32と端子部42とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成できる。
なお、基材11や基材12を貫通する貫通配線(スルーホール)を設け、端子部41及び42を基材11の上面11a側や基材12の下面12b側に移動してもよい。
抵抗部31を被覆し端子部41を露出するように基材11の下面11bにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。又、抵抗部32を被覆し端子部42を露出するように基材12の上面12aにカバー層(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層を設けることで、抵抗部31及び32に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層を設けることで、抵抗部31及び32を湿気等から保護できる。なお、カバー層は、端子部41及び42を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
カバー層は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
部材51は、基材11の下面11b側と基材12の上面12a側との間に配置され、基材11に力が加わると、基材11に加わった力に応じて弾性変形する部材である。部材51の材料としては、例えば、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。部材51の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。
センサ1を製造するためには、まず、基材11を準備し、基材11の下面11bに図3に示す平面形状の抵抗部31及び端子部41を形成する。抵抗部31及び端子部41の材料や厚さは、前述の通りである。抵抗部31と端子部41とは、同一材料により一体に形成できる。
抵抗部31及び端子部41は、例えば、抵抗部31及び端子部41を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成できる。抵抗部31及び端子部41は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
抵抗部31の温度係数の安定化や、印加される力に対する抵抗部31の感度の向上を実現する観点から、抵抗部31及び端子部41を成膜する前に、下地層として所定の膜厚の機能層を真空成膜することが好ましい。機能層は、例えば、コンベンショナルスパッタ法により成膜できる。なお、機能層は、機能層の上面全体に抵抗部31及び端子部41を形成後、例えば、フォトリソグラフィによって抵抗部31及び端子部41と共に図3に示す平面形状にパターニングされる。
本願において、機能層とは、少なくとも上層である抵抗部の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗部の酸化を防止する機能や、基材11と抵抗部との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
基材11を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に抵抗部がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が抵抗部の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
機能層の材料は、少なくとも上層である抵抗部の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗部の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗部の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗部の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、抵抗部に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.8μmとすることよりが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層クラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
なお、機能層の平面形状は、例えば、図3に示す抵抗部の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層の平面形状は、抵抗部の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層が絶縁材料から形成される場合には、抵抗部の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層は少なくとも抵抗部が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層は、基材10の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
又、機能層が絶縁材料から形成される場合に、機能層の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層の厚さと表面積が増加するため、抵抗部が発熱した際の熱を基材10側へ放熱できる。その結果、センサ1において、抵抗部の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材11の下面11bをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材11の下面11bを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
機能層の材料と抵抗部31及び端子部41の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、抵抗部31及び端子部41としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、抵抗部31及び端子部41を成膜できる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、抵抗部31及び端子部41を成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNの割合、並びにCrN及びCrN中のCrNの割合を調整できる。
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、抵抗部31の温度係数の安定化や、印加される力に対する抵抗部31の感度の向上を実現できる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
なお、抵抗部31がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、抵抗部31の結晶成長を促進する機能、基材11に含まれる酸素や水分による抵抗部31の酸化を防止する機能、及び基材11と抵抗部31との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
このように、抵抗部31の下層に機能層を設けることにより、抵抗部31の結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる抵抗部31を作製できる。その結果、センサ1において、抵抗部31の温度係数の安定化や、印加される力に対する抵抗部31の感度の向上を実現できる。又、機能層を構成する材料が抵抗部31に拡散することにより、センサ1において、抵抗部31の温度係数の安定化や、印加される力に対する抵抗部31の感度の向上を実現できる。
次に、基材12を準備し、基材12の上面12aに抵抗部32及び端子部42を形成する。抵抗部32及び端子部42は、抵抗部31及び端子部41と同様の方法で形成できる。抵抗部32及び端子部42を成膜する前に、下地層として、基材12の上面12aに機能層を成膜することが好ましい点も同様である。
抵抗部31及び端子部41並びに抵抗部32及び端子部42を形成後、必要に応じ、基材11の下面11bに抵抗部31を被覆し端子部41を露出するカバー層を設けてもよい。又、基材12の上面12aに抵抗部32を被覆し端子部42を露出するカバー層を設けてもよい。
カバー層は、例えば、基材11の下面11bに抵抗部31を被覆し端子部41を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。又、カバー層は、例えば、基材12の上面12aに抵抗部32を被覆し端子部42を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層は、絶縁樹脂フィルムのラミネートに代えて、液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
次に、弾性変形可能な部材51を準備する。そして、抵抗部32を設けた基材12を抵抗部32を上側に向けて部材51の下側に配置し、抵抗部31を設けた基材11を抵抗部31を下側に向けて部材51の上側に配置する。そして、基材11及び12と部材51とを接着する。これにより、センサ1が完成する。
基材11及び12と部材51は、例えば、接着層を介して接着できる。接着層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂等を用いることができる。
なお、抵抗部31及び端子部41の下地層として基材11の下面11bに機能層を設け、抵抗部32及び端子部42の下地層として基材12の上面12aに機能層を設けた場合には、センサ1は図5に示す断面形状となる。符号20a及び20bで示す層が機能層である。機能層20a及び20bを設けた場合のセンサ1の平面形状は、図3と同様である。
図6に示すように、センサ1及び制御装置7によりセンサモジュール8を実現できる。センサモジュール8において、センサ1の各々の端子部41及び42は、例えば、フレキシブル基板やリード線等を用いて、制御装置7に接続されている。
制御装置7は、センサ1の端子部41及び42を介して得られた情報に基づいて、タイヤ100に生じたひずみの位置の座標やタイヤ100に生じた横滑りを検出できる。例えば、センサ1の抵抗部31及び32はX座標の検出に用いることができる。
図7に示すように、制御装置7は、例えば、アナログフロントエンド部71と、信号処理部72とを含む構成にできる。
アナログフロントエンド部71は、例えば、入力信号選択スイッチ、ブリッジ回路、増幅器、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)等を備えている。アナログフロントエンド部71は、温度補償回路を備えていてもよい。
アナログフロントエンド部71では、例えば、センサ1の全ての端子部41及び42が入力信号選択スイッチに接続され、入力信号選択スイッチにより1対の電極が選択される。入力信号選択スイッチで選択された1対の電極は、ブリッジ回路に接続される。
すなわち、ブリッジ回路の1辺が入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部で構成され、他の3辺が固定抵抗で構成される。これにより、ブリッジ回路の出力として、入力信号選択スイッチで選択された1対の電極間の抵抗部の抵抗値に対応した電圧(アナログ信号)を得ることができる。なお、入力信号選択スイッチは、信号処理部72から制御可能である。
ブリッジ回路から出力された電圧は、増幅器で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、信号処理部72に送られる。アナログフロントエンド部71が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が信号処理部72に送られる。入力信号選択スイッチを高速で切り替えることで、センサ1の全ての端子部41及び42の抵抗値に対応するデジタル信号を極短時間で信号処理部72に送ることができる。
信号処理部72は、アナログフロントエンド部71から送られた情報に基づいて、タイヤ100に生じたひずみの位置の座標やタイヤ100に生じた横滑りを検出できる。具体的には、信号処理部72は、互いに対向する抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の差を計算することにより、タイヤ100に生じた横滑りを検出できる。又、信号処理部72は、互いに対向する抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の和を計算することにより、タイヤ100にZ方向の力が加わった場合のZ方向の力の大きさを求めることができる。
信号処理部72は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、メインメモリ等を含む構成にできる。
この場合、信号処理部72の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。但し、信号処理部72の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、信号処理部72は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
制御装置7に、信号処理部72による検出結果を無線により送信する集積回路等を設けてもよい。信号処理部72による検出結果を、無線により、例えば自動車に搭載されたECU(Electronic Control Unit)に送信してもよい。制御装置7から無線によりタイヤ100の横滑りの情報を得たECUは、例えば横滑り防止装置等の各種安全装置を制御し、自動車を安全に走行させて、事故を未然に防ぐことができる。
図8は、センサに力が加わった様子を模式的に示す断面図である。図8に示すように、センサ1に矢印方向に力F(せん断力)が加わると、力Fが加わった箇所の近傍の部材51の基材11側が力Fの方向に変形するが、部材51の基材12側は殆ど変形しない。
すなわち、領域Aに位置する抵抗部31の抵抗値が変化するが、領域Bに位置する抵抗部32の抵抗値は殆ど変化しない。なお、領域Aに位置する抵抗部31と領域Bに位置する抵抗部32は、力Fが加わっていない状態において、部材51を介して互いに対向して配置されていたものである。
互いに対向していた抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の差を算出することで、タイヤ100の滑りを算出できる。例えば、領域Aの左側の抵抗部31と領域Bの左側の抵抗部32の抵抗値の差、領域Aの中央の抵抗部31と領域Bの中央の抵抗部32の抵抗値の差、及び領域Aの右側の抵抗部31と領域Bの右側の抵抗部32の抵抗値の差を算出する。これにより、滑りの大きさ及び分布を知ることができる。
ここで、抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の差を取るのは、センサ1が厚さ方向(Z方向)に押圧されたことで生じる成分を除去するためである。すなわち、センサ1が厚さ方向に押圧されると、抵抗部31と抵抗部32が同じように押圧されて歪み、抵抗部31の抵抗値と抵抗部32の抵抗値が同方向に同程度に変化するため、抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の差を取ることにより押圧成分を除去できる。その結果、滑り成分を精度よく検出できる。
なお、滑り成分に加えて押圧成分も算出する要求がある場合には、互いに対向していた抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の和を算出することで、タイヤ100の押圧成分を算出できる。すなわち、センサ1は、触覚センサとしての機能を併せ持つことができる。
このように、センサ1に力が加わると、センサに加わった力に応じて部材51が弾性変形する。そして、部材51が弾性変形すると、部材51を介して対向して配置されていた抵抗部31の1対の電極である端子部41間の抵抗値と抵抗部32の1対の電極である端子部42間の抵抗値との差が、せん断力による部材51の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の差の変化に基づいて、タイヤ100に生じた横滑りを検出できる。抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の差を取ることにより、圧縮力により部材51が弾性変形したことによる抵抗部31及び32の抵抗値の変化分を除去可能となるため、タイヤ100に生じた横滑りを高精度で検出できる。
特に、抵抗部31及び32がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗部31及び32がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、力に対する抵抗値の感度(同一の力に対する抵抗部31及び32の抵抗値の変化量)が大幅に向上する。抵抗部31及び32がCr混相膜から形成されている場合、力に対する抵抗値の感度は、抵抗部31及び32がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗部31及び32をCr混相膜から形成することで、タイヤ100に生じた横滑りを特に高感度で検出できる。
又、力に対する抵抗値の感度が高いことで、滑りが小であることを検出した場合には所定の動作を行い、滑りが中であることを検出した場合には他の動作を行い、滑りが大であることを検出した場合には更に他の動作を行うような制御の実現が可能となる。或いは、滑りが小又は中であることを検出した場合には動作を行わず、滑りが大であることを検出した場合にのみ所定の動作を行うような制御の実現が可能となる。
又、力に対する抵抗値の感度が高いと、S/Nの高い信号を得ることができる。そのため、アナログフロントエンド部71のA/D変換回路において平均化を行う回数を低減しても精度よく信号検出ができる。A/D変換回路において平均化を行う回数を低減することで、1回のA/D変換に必要な時間を短縮できるため、入力信号選択スイッチを更に高速で切り替えることが可能となる。その結果、センサ1に入力される速い動きも検出できる。
又、特に、抵抗部31及び32がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗部31及び32がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、平面視において1/10以下に小型化できる。その結果、小型のセンサ1を実現可能となる。
なお、タイヤ100の周方向の滑りを検出したい場合には、並置された複数の抵抗部31及び32の長手方向がタイヤ100の幅方向に向くように、センサ1をタイヤ100に配置すればよい。
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、弾性変形可能な部材を特定方向に変形し易くしたセンサの例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図9は、第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する平面図である。図10は、第1実施形態の変形例1に係るセンサを例示する断面図であり、図9のB-B線に沿う断面を示している。
図9及び図10を参照すると、センサ1Aでは、部材51の各々の抵抗部31の両側に位置する領域に、部材51の基材11側の面から基材12側の面に向かって窪む凹部51xが設けられている。平面視において、各々の凹部51xは、抵抗部31の長手方向(Y方向)に沿って設けられている。又、部材51の各々の抵抗部32の両側に位置する領域に、部材51の基材12側の面から基材11側の面に向かって窪む凹部51yが設けられている。平面視において、各々の凹部51yは、抵抗部32の長手方向(Y方向)に沿って設けられている。
このように、センサ1Aにおいて、部材51の各々の抵抗部31及び32の両側に位置する領域に凹部51x及び51yを設けることにより、センサ1Aに力が加わった場合に、部材51のX方向の変形量が大きくなる。その結果、センサ1AのX方向の滑りの検出感度を向上できる。
なお、図11の平面図に示すセンサ1Bのように、抵抗部31及び32の1本の長さ当たりに対して複数の凹部51x及び51yを断続的に配置してもよい。
又、図12の断面図に示すセンサ1Cのように、凹部51yは設けずに凹部51xのみを設けてもよい。この場合、凹部51xの深さを部材51の厚さの半分以上としてもよい。又、平面視においては、図9のように抵抗部31の1本の長さ当たりに対して1つの凹部51xを配置してもよいし、図11のように抵抗部31の1本の長さ当たりに対して複数の凹部51xを断続的に配置してもよい。
又、図9~図12の何れの場合にも、凹部に代えて貫通孔としてもよい。
図11に示すセンサ1B及び図12に示すセンサ1Cの場合も、図9及び図10に示すセンサ1Aの場合と同様に、X方向の滑りの検出感度を向上できる。
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、XY座標の検出が可能なセンサの例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図13は、第1実施形態の変形例2に係るセンサを例示する平面図である。図14は、第1実施形態の変形例2に係るセンサを例示する断面図であり、図13のC-C線に沿う断面を示している。
図13及び図14を参照すると、センサ1Dでは、センサ1の構造に加え、基材12の下面12bに、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置された複数の抵抗部33が形成されている。又、センサ1Dは、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置された抵抗部34が上面13aに形成された基材13と、弾性変形可能な部材52とを有している。部材52は、基材12の下面11bと基材13の上面13aとの間に積層されている。
各々の抵抗部33と各々の抵抗部34とは、部材52を介して対向して配置されている。各々の抵抗部33の両端部には1対の電極である端子部43が設けられ、各々の抵抗部34の両端部には1対の電極である端子部44が設けられている。
抵抗部33の1対の端子部43間の抵抗値と抵抗部33と対向する抵抗部34の1対の端子部44間の抵抗値との差が、せん断力による部材52の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の差の変化に基づいて、タイヤ100に生じた進行方向の滑り(Y方向の滑り)を検出できる。
又、抵抗部33の1対の端子部43間の抵抗値と抵抗部33と対向する抵抗部34の1対の端子部44間の抵抗値との和が、圧縮力による部材52の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の和の変化に基づいて、基材11が受けた押圧力の大きさを検出できる。
抵抗部33及び34の材料や厚さ、製造方法は、抵抗部31及び32と同様にできる。部材52の材料や厚さは、部材51と同様にできる。なお、抵抗部31及び32と抵抗部33及び34とは平面視で直交している必要はなく、交差していればよい。
このように、センサ1Dでは、長手方向をY方向とする抵抗部31及び32に加え、長手方向をX方向とする抵抗部33及び34を設けている。これにより、センサ1Dでは、互いに対向する抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の差からX方向の滑りを算出できると共に、互いに対向する抵抗部33と抵抗部34の抵抗値の差からY方向の滑りを算出できる。又、滑りが生じた位置のXY座標の検出が可能である。
なお、部材51の抵抗部31及び32に沿って図9~図12に示した凹部を設けても構わない。同様に、部材52の抵抗部33及び34に沿って図9~図12に示した凹部を設けても構わない。これにより、センサ1Dにおいて、X方向の滑りの検出感度及びY方向の滑りの検出感度を向上できる。
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、XY座標の検出が可能なセンサの他の例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図15は、第1実施形態の変形例3に係るセンサを例示する平面図である。図16は、第1実施形態の変形例3に係るセンサを例示する断面図であり、図15のD-D線に沿う断面を示している。
図15及び図16を参照すると、センサ1Eでは、センサ1の構造に加え、基材11と部材51との間に複数の抵抗部33を備えた絶縁層である基材15が追加され、基材12の下面12bに複数の抵抗部34が設けられている。基材15の材料や厚さは、例えば、基材11と同様にできる。
複数の抵抗部33は、基材15の下面15bに、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置されている。各々の抵抗部33の両端部には1対の電極である端子部43が設けられている。
基材15の上面15a側は、抵抗部31を介して基材11の下面11b側に配置されている。基材15の下面15b側と基材12の上面12a側との間に部材51が配置されている。
複数の抵抗部34は、基材12の下面12bに、長手方向をX方向に向けて所定間隔でY方向に並置されている。各々の抵抗部34の両端部には1対の電極である端子部44が設けられている。各々の抵抗部34と各々の抵抗部33とは、基材12及び部材51を介して対向して配置されている。
抵抗部31の1対の端子部41間の抵抗値と抵抗部31と対向する抵抗部32の1対の端子部42間の抵抗値との差が、せん断力による部材51の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の差の変化に基づいて、タイヤ100に生じたX方向の滑りを検出できる。
又、抵抗部31の1対の端子部41間の抵抗値と抵抗部31と対向する抵抗部32の1対の端子部42間の抵抗値との和が、圧縮力による部材51の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の和の変化に基づいて、基材11が受けた押圧力の大きさを検出できる。
又、抵抗部33の1対の端子部43間の抵抗値と抵抗部33と対向する抵抗部34の1対の端子部44間の抵抗値との差が、せん断力による部材51の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の差の変化に基づいて、タイヤ100に生じたY方向の滑りを検出できる。
又、抵抗部33の1対の端子部43間の抵抗値と抵抗部33と対向する抵抗部34の1対の端子部44間の抵抗値との和が、圧縮力による部材51の弾性変形に応じて連続的に変化する。この抵抗値の和の変化に基づいて、基材11が受けた押圧力の大きさを検出できる。
抵抗部33及び34の材料や厚さ、製造方法は、抵抗部31及び32と同様にできる。なお、抵抗部31及び32と抵抗部33及び34とは平面視で直交している必要はなく、交差していればよい。
このように、センサ1Eでは、長手方向をY方向とする抵抗部31及び32に加え、長手方向をX方向とする抵抗部33及び34を設けている。これにより、センサ1Eでは、互いに対向する抵抗部31と抵抗部32の抵抗値の差からX方向の滑りを算出できると共に、互いに対向する抵抗部33と抵抗部34の抵抗値の差からY方向の滑りを算出できる。又、滑りが生じた位置のXY座標の検出が可能である。
又、センサ1Eは、センサ1Dに比べ、弾性変形する部材を1つ少なくできるため、小型化や低背化の観点でメリットがある。
なお、例えば、図17に示すように、部材51の各々の抵抗部31の両側に位置しかつ部材51の各々の抵抗部33の両側に位置する領域に、部材51の基材15側の面から基材12側の面に向かって窪む凹部51xを設けてもよい。又、部材51の各々の抵抗部32の両側に位置しかつ部材51の各々の抵抗部34の両側に位置する領域に、部材51の基材12側の面から基材15側の面に向かって窪む凹部51yを設けてもよい。或いは、凹部51yは設けずに凹部51xのみを設けてもよい。何れの場合も、センサ1Eにおいて、X方向の滑りの検出感度及びY方向の滑りの検出感度を向上できる。
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F センサ、7 制御装置、8 センサモジュール、11、12、13、15 基材、11a、12a、13a、15a 基材の上面、11b、12b、13b、15b 基材の下面、20a、20b 機能層、31、32、33、34 抵抗部、41、42、43、44 端子部、51、52 部材、51x、51y 凹部、71 アナログフロントエンド部、72 信号処理部、100 タイヤ、110 トレッド部、120 サイドウォール部、130 ビード部、140 インナーライナー、150 カーカス、160 ビードコア、170 ビードフィラー、180 ベルト

Claims (18)

  1. 移動体用のタイヤであって、
    前記タイヤの内側にセンサが設けられ、
    前記センサは、
    一方の側が力の入力側となり、他方の側に長手方向を第1方向に向けて並置された複数の第1抵抗部を備えた第1絶縁層と、
    一方の側に長手方向を前記第1方向に向けて並置された複数の第2抵抗部を備えた第2絶縁層と、
    前記第1絶縁層の他方の側と前記第2絶縁層の一方の側との間に配置され、前記力に応じて弾性変形する部材と、を有し、
    各々の前記第1抵抗部と各々の前記第2抵抗部とは、前記部材を介して対向して配置され、
    各々の前記第1抵抗部及び各々の前記第2抵抗部の両端部には1対の電極が設けられ、
    前記第1抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値と前記第1抵抗部と対向する前記第2抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値との差が、前記部材の弾性変形に応じて連続的に変化するタイヤ。
  2. 前記第1方向は、前記タイヤの周方向である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記センサは、前記タイヤの内周側の幅方向の全体及び周方向の全体に貼り付けられているか、又は埋め込まれている請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 前記第1抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値と前記第1抵抗部と対向する前記第2抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値との和が、圧縮力による前記部材の弾性変形に応じて連続的に変化する請求項1乃至3の何れか一項に記載のタイヤ。
  5. 前記部材の各々の前記第1抵抗部の両側に位置する領域に、前記部材の前記第1絶縁層側の面から前記第2絶縁層側の面に向かって窪む凹部が設けられた請求項1乃至4の何れか一項に記載のタイヤ。
  6. 前記部材の各々の前記第2抵抗部の両側に位置する領域に、前記部材の前記第2絶縁層側の面から前記第1絶縁層側の面に向かって窪む凹部が設けられた請求項5に記載のタイヤ。
  7. 前記第2絶縁層の他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された複数の第3抵抗部が形成され、
    一方の側に長手方向を前記第2方向に向けて並置された複数の第4抵抗部を備えた第3絶縁層と、
    前記第2絶縁層の他方の側と前記第3絶縁層の一方の側との間に配置され、前記力に応じて弾性変形する第2部材と、を有し、
    各々の前記第3抵抗部と各々の前記第4抵抗部とは、前記第2部材を介して対向して配置され、
    各々の前記第3抵抗部及び各々の前記第4抵抗部の両端部には1対の電極が設けられ、
    前記第3抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値と前記第3抵抗部と対向する前記第4抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値との差が、せん断力による前記第2部材の弾性変形に応じて連続的に変化する請求項1乃至6の何れか一項に記載のタイヤ。
  8. 前記第3抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値と前記第3抵抗部と対向する前記第4抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値との和が、圧縮力による前記第2部材の弾性変形に応じて連続的に変化する請求項7に記載のタイヤ。
  9. 前記第2部材の各々の前記第3抵抗部の両側に位置する領域に、前記第2部材の前記第2絶縁層側の面から前記第3絶縁層側の面に向かって窪む凹部が設けられた請求項7又は8に記載のタイヤ。
  10. 前記第2部材の各々の前記第4抵抗部の両側に位置する領域に、前記第2部材の前記第3絶縁層側の面から前記第2絶縁層側の面に向かって窪む凹部が設けられた請求項9に記載のタイヤ。
  11. 他方の側に長手方向を前記第1方向と交差する第2方向に向けて並置された複数の第3抵抗部を備えた第3絶縁層を有し、
    前記第3絶縁層の一方の側は、前記第1抵抗部を介して前記第1絶縁層の他方の側に配置され、
    前記第3絶縁層の他方の側と前記第2絶縁層の一方の側との間に前記部材が配置され、
    前記第2絶縁層の他方の側に長手方向を前記第2方向に向けて並置された複数の第4抵抗部が形成され、
    各々の前記第3抵抗部と各々の前記第4抵抗部とは、前記部材を介して対向して配置され、
    各々の前記第3抵抗部及び各々の前記第4抵抗部の両端部には1対の電極が設けられ、
    前記第3抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値と前記第3抵抗部と対向する前記第4抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値との差が、せん断力による前記部材の弾性変形に応じて連続的に変化する請求項1乃至4の何れか一項に記載のタイヤ。
  12. 前記第3抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値と前記第3抵抗部と対向する前記第4抵抗部の前記1対の電極間の抵抗値との和が、圧縮力による前記部材の弾性変形に応じて連続的に変化する請求項11に記載のタイヤ。
  13. 前記部材の各々の前記第1抵抗部の両側に位置しかつ前記部材の各々の前記第3抵抗部の両側に位置する領域に、前記部材の前記第3絶縁層側の面から前記第2絶縁層側の面に向かって窪む凹部が設けられた請求項11又は12に記載のタイヤ。
  14. 前記部材の各々の前記第2抵抗部の両側に位置しかつ前記部材の各々の前記第4抵抗部の両側に位置する領域に、前記部材の前記第2絶縁層側の面から前記第3絶縁層側の面に向かって窪む凹部が設けられた請求項13に記載のタイヤ。
  15. 前記第3抵抗部及び前記第4抵抗部は、α-Crを主成分とするCr、CrN、及びCrNを含む膜から形成されている請求項7乃至14何れか一項に記載のタイヤ。
  16. 前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部は、α-Crを主成分とするCr、CrN、及びCrNを含む膜から形成されている請求項1乃至15の何れか一項に記載のタイヤ。
  17. 前記膜の下層に、金属、合金、又は、金属の化合物から形成された機能層を有し、
    前記機能層は、前記α-Crの結晶成長を促進させ、前記α-Crを主成分とする膜を形成する機能を有する請求項15又は16に記載のタイヤ。
  18. 前記膜は、前記α-Crを80重量%以上含む請求項15乃至17の何れか一項に記載のタイヤ。
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