JP7183445B2 - 電力変換装置 - Google Patents

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Description

本願は、電力変換装置に関するものである。
従来より、交流電源の力率改善制御を行い、該交流電源からの交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータと、該AC/DCコンバータの直流側に接続され、直流電力の電圧変換を行うDC/DCコンバータと、上記AC/DCコンバータと上記DC/DCコンバータとの間の正負直流母線間に接続される直流コンデンサとで構成される電力変換装置が開示されている。このような、交流電源の力率改善制御を伴って電力変換するAC/DCコンバータとDC/DCコンバータとが直流コンデンサを介して接続される構成の電力変換装置では、装置の小型化を狙うために直流コンデンサの容量を低減させると、特に交流電源が単相の場合では、電源周波数の2倍の周波数で変動する直流電圧のリプル電圧が増大する。リプル電圧の増大は、素子のスイッチング損失の増加に加え、使用部品の耐圧増加に伴う装置の大型化を招く。そこで、直流コンデンサの容量を増大することなく、リプル電圧を抑制できる以下のような電力変換装置が開示されている。
即ち、従来の電力変換装置では、上記AC/DCコンバータおよび上記DC/DCコンバータを出力制御する制御回路において、上記単相交流電源のゼロクロス位相で最小値、ピーク位相で最大値となる交流電流指令を直流電流指令に重畳して上記DC/DCコンバータの出力電流指令を生成し、該出力電流指令を用いて上記DC/DCコンバータを出力制御することで、許容される電力脈動をDC/DCコンバータから出力させる(例えば、特許文献1参照)。
国際公開番号WO2016/075996 (段落[0010]~[0055]、図1~図12)
上記従来の電力変換装置では、直流コンデンサの出力電流に対して、設定された波形の交流電流成分を重畳することで、直流コンデンサの容量を増大することなく直流コンデンサにおけるリプル電圧を抑制している。しかしながらこのような構成の電力変換装置では、直流コンデンサの容量をより減少させた場合にリプル電圧が増大するため、直流コンデンサの低容量化に限界があった。そのため、装置を十分に小型化できないという課題があった。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、直流コンデンサの低容量化が可能な小型の電力変換装置の提供を目的とする。
本願に開示される電力変換装置は、
交流回路からの交流電力を直流電力に変換し、前記交流電力の力率改善制御を行うAC/DCコンバータと、該AC/DCコンバータの直流側に接続され、直流電力の電圧変換を行うDC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータと前記DC/DCコンバータとの間の正負の直流母線間に接続される直流コンデンサと、前記AC/DCコンバータおよび前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記直流コンデンサの直流電圧を、前記交流回路からの交流電圧のゼロクロス位相で最小値、ピーク位相で最大値となる波形を有する電圧脈動が重畳された直流電圧に制御するリプル電圧指令値を生成し、前記リプル電圧指令値を用いて、前記AC/DCコンバータ、前記DC/DCコンバータの少なくとも一方を制御する、
ものである。
本願に開示される電力変換装置によれば、直流コンデンサの低容量化が可能となるため、小型の電力変換装置を提供できる。
実施の形態1による電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。 実施の形態1による電力変換装置の制御回路の制御ブロック図である。 実施の形態1による電圧リプル指令生成器の制御ブロック図である。 実施の形態1による力率指令演算器の制御ブロック図である。 実施の形態1による中間電圧指令演算器の制御ブロック図である。 比較例の電力変換装置における直流コンデンサが担保するエネルギーを示す図である。 実施の形態1による電力変換装置の直流コンデンサが担保するエネルギーを示す図である。 本実施の形態1による電力変換装置を用いたシミュレーション波形を示す図である。 比較例による電力変換装置を用いたシミュレーション波形を示す図である。 実施の形態1による電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。 実施の形態2による電力変換装置の制御回路の制御ブロック図である。 実施の形態2による中間電圧指令演算器の制御ブロック図である。 実施の形態2による力率指令演算器の制御ブロック図である。 実施の形態2による出力電流指令演算器の制御ブロック図である。 本実施の形態2による電力変換装置を用いたシミュレーション波形を示す図である。 比較例1による電力変換装置を用いたシミュレーション波形を示す図である。 比較例2による電力変換装置を用いたシミュレーション波形を示す図である。 実施の形態3による電力変換装置の概略構成を示すブロック図である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電力変換装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電力変換装置100は、交流回路としての単相交流電源(以下、単に交流電源1と称す)と負荷5との間に設けられ、交流電源1からの交流電力を直流電力に変換して負荷5に出力する主回路と、この主回路を制御する制御部としての制御回路30と、を備える。
主回路は、交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ10と、このAC/DCコンバータ10の直流出力側に接続され、直流電力の電圧変換を行うDC/DCコンバータ20と、このAC/DCコンバータ10とDC/DCコンバータ20との間の正負の直流母線間に接続される直流コンデンサ3と、を備える。
更に、主回路は、入力側に限流用リアクトル2と、出力側に平滑コンデンサ4とを備える。
AC/DCコンバータ10は、この場合、セミブリッジレス回路で構成され、ダイオード素子10a、10bと、半導体スイッチング素子10c、10dとを備える。
DC/DCコンバータ20は、この場合、絶縁型のフルブリッジコンバータ回路で構成され、半導体スイッチング素子21a、21b、21c、21dで構成させるフルブリッジインバータ21と、絶縁トランスとしての高周波絶縁トランス23と、ダイオード素子22a、22b、22c、22dで構成させる全波整流回路22と、電流制御用のリアクトル24と、を備える。
高周波絶縁トランス23は、フルブリッジインバータ21の交流出力側に接続される一次側コイル23aと、全波整流回路22の交流入力側に接続される二次側コイル23bとを有する。
直流コンデンサ3の正側端子は、AC/DCコンバータ10の直流出力側のP側端子とDC/DCコンバータ20の直流入力側のP端子とを繋ぐ正側の直流母線に接続される。
また、直流コンデンサ3のN側端子は、AC/DCコンバータ10の直流出力側のN端子と、DC/DCコンバータ20の直流入力側のN端子とを繋ぐ負側の直流母線に接続される。直流コンデンサ3は、エネルギーのバッファ機能を有し、AC/DCコンバータ10により入力される電力とDC/DCコンバータ20により出力される電力との差分を平滑する。
また、交流電源1の交流電圧vac、直流コンデンサ3の電圧Vdc、平滑コンデンサ4の電圧である負荷電圧Voutが、それぞれ電圧センサにより検出されて制御回路30に入力される。さらに、交流電源1からの交流電流iacと負荷5に流れる負荷電流ioutが、それぞれ電流センサにより検出されて制御回路30に入力される。
なお、AC/DCコンバータ10とフルブリッジインバータ21とに用いられる半導体スイッチング素子は、ダイオードが逆並列に接続されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、ソース・ドレイン間にダイオードが接続されたMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Fiel Effect Transistor)などを用いることが好ましい。また、帰還ダイオードはIGBT、MOSFETに内蔵されたダイオードを用いても良く、外付けに別途ダイオードを設けても良い。
また、直流コンデンサ3は、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、タンタルコンデンサ、EDLC(Electric double-layer capacitor 電気二重層キャパシタ)などで構成できる。またリチウムイオンバッテリなどのバッテリで構成しても良い。
また、負荷5は、直流電圧で駆動する電気機器、もしくはバッテリ、キャパシタなどの電力蓄積要素でも良い。
制御回路30は、各センサにより検出される電圧、電流情報に基づいて、半導体スイッチング素子10c、10dへのゲート信号G10(G10c、G10d)、半導体スイッチング素子21a、21b、21c、21dへのゲート信号G21(G21a、G21b、G21c、G21d)をそれぞれ生成して、AC/DCコンバータ10およびDC/DCコンバータ20を制御する。
なお、以下の説明において、Vacは交流電源1の電圧実効値、Iacは交流電源1の電流実効値、Vdcは直流コンデンサ3の直流電圧成分、Voutは負荷5の電圧実効値、Ioutは負荷5に流れる電流実効値としてそれぞれを示す。
次に、電力変換装置100を構成する各部の動作について説明する。
AC/DCコンバータ10は、ダイオード素子10a、10bが互いに直列接続されたレグと、半導体スイッチング素子10c、10dが互いに直列接続されたレグとを有する。そしてAC/DCコンバータ10は、これらレグを高周波スイッチングすることで、限流用リアクトル2に流れる交流電流iacを高力率に制御しながら電圧を昇圧し、直流電力の出力を行う昇圧型の高力率コンバータである。
この力率制御において、AC/DCコンバータ10は、交流電圧Vacの正の交流周期においてダイオード素子10aと半導体スイッチング素子10cとをオン状態とするモードで限流用リアクトル2に正の電圧を印加する。そして、ダイオード素子10aと半導体スイッチング素子10dとをオン状態とするモードで限流用リアクトル2に負の電圧を印加する。また、負の交流周期においては、ダイオード素子10bと半導体スイッチング素子10dとをオン状態とするモードと、ダイオード素子10bと半導体スイッチング素子10cとをオン状態とするモードとを用いる。こうして限流用リアクトル2に流れる電流の増減を制御し、交流電源1からの入力力率が1になるように交流電流iacを高力率制御する。
DC/DCコンバータ20は、直流コンデンサ3を介したAC/DCコンバータ10からの出力直流電圧を、フルブリッジインバータ21において、ゲート信号G21に基づいて半導体スイッチング素子21a~21dをON/OFF制御することにより、高周波交流電圧に変換する。その後、この高周波交流電圧を、電気的に絶縁しながら二次側コイル23bにより昇圧または降圧して、全波整流回路22により直流電圧へと整流する。整流後、電流制御用のリアクトル24と平滑コンデンサ4とにより高周波成分を除去して負荷5に直流電力を供給する。
以下、制御回路30の構成と、その動作の概要について図2を用いて説明する。
図2は、実施の形態1による電力変換装置100の制御回路30の制御ブロック図である。
制御回路30は、電圧リプル指令生成器40と、力率指令演算器60と、中間電圧指令演算器80と、ゲート信号生成器31、32と、を備える。
電圧リプル指令生成器40は、センサで検出した交流電圧vac、負荷電圧Voutを用いて、直流コンデンサ3の直流電圧Vdcを、所望の電圧脈動が重畳された直流電圧に制御するためのリプル電圧指令値Vdc_rippleを生成する(詳細は後述)。
生成されたリプル電圧指令値Vdc_rippleは、力率指令演算器60と中間電圧指令演算器80とに入力される。
力率指令演算器60は、入力されたリプル電圧指令値Vdc_rippleと、センサにより検出された交流電流iac、交流電圧vac、直流電圧Vdcと、を用いて、交流電流iacの力率を高力率に制御するデューティ比信号Duty_PFCを生成する。
中間電圧指令演算器80は、入力されたリプル電圧指令値Vdc_rippleと、センサにより検出された負荷電流iout、負荷電圧Vout、直流電圧Vdcと、を用いて、直流コンデンサ3の直流電圧Vdcを指令値に追従させるデューティ比信号Duty_Vdcを生成する。
ゲート信号生成器31は、力率指令演算器60により演算されたデューティ比信号Duty_PFCとキャリア周波数とを比較するPWM(Pulse Width Modulation)制御により、半導体スイッチング素子10c、10dへのゲート信号G10c、G10dを出力する。
ゲート信号生成器32は、中間電圧指令演算器80により演算されたデューティ比信号Duty_Vdcとキャリア周波数とを比較するPWM(Pulse Width Modulation)制御により、半導体スイッチング素子21a、21b、21c、21dへのゲート信号G21a、G21b、G21c、G21dを出力する。
なお、キャリア周波数は、ノコギリ波でもよく三角波でも良い。
このように、力率指令演算器60および中間電圧指令演算器80は、電圧リプル指令生成器40が生成したリプル電圧指令値Vdc_rippleを用いて、AC/DCコンバータ10、DC/DCコンバータ20をそれぞれ制御するためのゲート信号を生成する。これにより、リプル電圧指令値Vdc_rippleに追従する回路動作を実現する。
なお、本実施の形態1の制御回路30は、負荷5としてバッテリのような定電圧源が接続された場合を想定しており、図2に示した制御回路30は、出力電圧(負荷電圧Vout)が固定値で、入力交流電流iacを任意の値に制御する場合の構成である。
次に、上記のように構成される制御回路30が行う動作の詳細について説明する。
この動作詳細の説明において、制御回路30を構成する各部の詳細構成についても説明する。
先ず、電圧リプル指令生成器40の構成を、図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態1による電圧リプル指令生成器40の制御ブロック図である。
電圧リプル指令生成器40は、センサで検出した交流電源1の交流電圧Vac、負荷5の負荷電圧Voutを用いて、リプル電圧指令値Vdc_rippleを生成する。
前述のように、このリプル電圧指令値Vdc_rippleは、直流コンデンサ3の直流電圧Vdcを、所望の電圧脈動が重畳された直流電圧に制御するための電圧指令値である。
このリプル電圧指令値Vdc_rippleは、以下(1)式により表されるリプル指令値Rippleに基づき生成される。
Ripple=((√2Vac-(Vout/N))*K1)sinωt+(Vout/N)・・・(1)
但し、Nは高周波絶縁トランス23の巻数比、K1は1以上の補正係数。
以下、電圧リプル指令生成器40が行うリプル電圧指令値Vdc_rippleの生成動作について説明する。
図3に示すように、先ず、電圧リプル指令生成器40は、検出された交流電圧Vacのピーク値と、検出された負荷電圧Voutを巻数比Nで除算することにより求められる直流コンデンサ3の直流電圧Vdcとを比較した偏差41を演算する。
次に、偏差41に対して、電圧補正器49において設定された補正係数K1(K≧1)を乗算した信号42を生成する。
次に、PLL演算器43により、信号42に対して交流電圧vacと同周期の正弦波sin(ωt)を掛け合わせることで、交流電圧vacに同期した正弦波信号44を生成する。
次に、絶対値生成器45により、正弦波信号44を全波整流した全波整流波形信号46を生成する。そして、全波整流波形信号46に対して、検出された負荷電圧Voutから求められる直流コンデンサ3の直流電圧Vdcを加算することで、上記(1)式に表されるRipple指令値を生成する。
このように導出されるRipple指令値は、直流コンデンサ3の直流電圧Vdcを、交流電圧vacに同期した正弦波を全波整流した波形の電圧脈動が重畳された直流電圧に制御する電圧指令値となる。
ここで、Ripple指令値における電圧脈動の振幅は、上記(1)式で示すように、(√2Vac-(Vout/N))*K1)により決定される。
次に、リプル範囲制限器47により、電圧補正器48により設定された補正係数K2(K2≧1)を用いて、電圧脈動の上限値が設定された第1値以下となるように制限し、電圧脈動の下限値が設定された第2値以上となるように制限して、リプル電圧指令値Vdc_rippleを生成する。
この過程を踏むことで、直流電圧Vdcに重畳される電圧脈動は、正弦波の全波整流波形となる場合の他に、正弦波の全波整流波形のピーク部分がカットされた直流波形部分と正弦波形部分とが入り混じった波形となる場合もある。このいずれの場合においても、重畳される電圧脈動は、交流電圧vacのゼロクロス位相で最小となり、ピーク位相で最大となる波形を有する電圧脈動となる。
なお、電圧脈動の上限値を制限する第1値は、半導体素子の耐圧から設定する。これにより直流電圧vdcが半導体素子の耐圧を超えて脈動することを防ぎ、耐圧増加に伴う装置の大型化を抑制できると共にスイッチング損失を低減できる。
また、電圧脈動の下限値を制限する第2値は、負荷電圧Voutを巻数比Nで割った値に補正係数K2(K2≧1)を乗算した値で設定する。これにより直流電圧Vdcを大幅に下回るような電圧脈動を抑制して、交流1周期に渡ってAC/DCコンバータ10による昇圧制御を補償できる。
また、第1値および第2値は、制御回路30の演算能力、応答速度に応じて決定してもよい。これにより、用いられる制御回路30の性能に応じた安定した制御が可能となる。
なお、このように重畳される電圧脈動の最大値を第1値以下となるようにリプル電圧指令値Vdc_rippleを調整する制御を最大値制限制御と称し、重畳される電圧脈動の最小値を第2値以上となるようにリプル電圧指令値Vdc_rippleを調整する制御を最小値制限制御と称す。
また、この最大値調整制御および最小値調整制御を、両方同時に行うものに限定するものではなく、最大値調整制御および最小値調整制御の少なくとも一方を行うものでよい。
例えば、Ripple指令値における電圧脈動の振幅が、第2値から第1値までの電圧範囲内に納まるのであれば、最大値調整制御と最小値調整制御による制限は不要となる。
次に、上記リプル電圧指令値Vdc_rippleを用いた、力率指令演算器60によるデューティ比信号Duty_PFCの生成について図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態1による力率指令演算器60の制御ブロック図である。
先ず、力率指令演算器60は、PLL演算器61により、第1電流指令値としての交流電流iacの実効値指令Iac*に対して、交流電圧vacと同周期の正弦波sin(ωt)を掛け合わさせて交流電圧vac1に同期した正弦波信号62を生成する。その後、センサで検出した交流電流iacと正弦波信号62とのそれぞれの絶対値の偏差を示す信号64を生成する。その信号64を指令値に追従するようにPI制御して電圧指令65を生成する。
生成された電圧指令65を、リプル電圧指令値Vdc_rippleにより除算することで規格化する。その後、FF(Feed Foard)制御演算器66の信号を加えることで、FB(Feed Buck)値の急峻な変動に対応できるデューティ比信号Duty_PFCを生成する。
なお、FF制御演算器66の演算を以下式(2)に示す。
Duty_FF=1-|Vac|/(Vdc_ripple+Vdc*)・・・(2)
次に、リプル電圧指令値Vdc_rippleを用いた、中間電圧指令演算器80によるデューティ比信号Duty_Vdcの演算について図5を用いて説明する。
図5は、実施の形態1による中間電圧指令演算器80の制御ブロック図である。
中間電圧指令演算器80は、中間コンデンサ電圧Vdcが指令値に追従するようなデューティ比信号Duty_Vdcを演算する。
先ず、中間電圧指令演算器80は、センサで検出した直流電圧Vdcと、リプル電圧指令値Vdc_rippleとの偏差81をP制御して制御値82を生成する。その制御値82とセンサで検出した負荷電流ioutとの偏差83をPI制御することで、電流制御用のリアクトル24に流れる電流を制御する制御値84を生成する。
次に、制御値84に対して負荷電圧Voutを加えた電圧指令信号85を、直流コンデンサ電圧指令値Vdc_rippleに巻線比Nを乗算した値で割ることで規格化してデューティ比信号Duty_Vdcを生成する。
ゲート信号生成器31では、デューティ比信号Duty_PFCとキャリア波をPWM制御することで、半導体スイッチング素子10c、10dへのゲート信号G10(G10c、G10d)を生成する。
ゲート信号生成器32では、デューティ比信号Duty_Vdcとキャリア波をPWM制御することにより、半導体スイッチング素子21a、21b、21c、21dへのゲート信号G21(G21a、G21b、G21c、G21d)を生成する。
このように生成されたデューティ比信号Duty_PFCに基づいて駆動されるAC/DCコンバータ10により、交流電流iacは高力率に、任意の値に制御される。
また、このように生成されたデューティ比信号Duty_Vdcに基づいて駆動されるDC/DCコンバータ20により、直流コンデンサ3の直流電圧Vdcが所望の電圧脈動が重畳された直流電圧に制御される。
以下、本実施の形態の電力変換装置100の直流コンデンサが担保するエネルギーについて、比較例の電力変換装置と比較して説明する。
図6は、比較例の電力変換装置における直流コンデンサが担保するエネルギーを示す図である。
図7は、本実施の形態の電力変換装置100における直流コンデンサ3が担保するエネルギーを示す図である。
両図において、直流コンデンサに入力される入力電力Pin、出力電力Pout、交流電流iac、交流電圧vac、のそれぞれの波形を示し、直流コンデンサが担保するエネルギーは斜線部分で示す。
なお、図6に示す比較例の電力変換装置は、交流電源の力率改善制御を伴って電力変換するAC/DCコンバータとDC/DCコンバータとが直流コンデンサを介して接続される回路構成を有し、本実施の形態の制御回路30のような直流コンデンサ3の電圧制御を行っていない場合を想定している。
また、図6では、直流電力(出力電力Pout)は理想波形とし、交流電圧の2倍周波数成分の脈動は考慮しない。
図6に示す比較例の電力変換装置では、交流電圧vacのゼロクロス位相付近では、入力電力Pinが最小であり、斜線部で示すように、出力電力Poutに対して直流コンデンサ3が担保するエネルギーが大きいことが判る。また、交流電圧vacのピーク位相付近では、入力電力Pinが最大となるため、斜線部で示すように、この場合でも出力電力Poutに対して直流コンデンサ3が担保するエネルギーが大きいことが判る。
これに対して、本実施の形態の電力変換装置100は、交流電圧vacに同期した直流電圧Vdcの脈動により負荷電流ioutも脈動して、出力電力Poutが交流電圧vacに同期して脈動する。このようにDC/DCコンバータ20が出力する電力が交流電圧vacに同期して脈動するため、交流電源1からの交流電力の大部分を直接負荷5へと出力できる。そのため、図7に示すように、出力電力Poutに対して直流コンデンサ3が担保するエネルギーが少量で済む。なお、直流電圧Vdcに重畳される電圧脈動は、式(1)に示したようにその振幅が調整されているため、出力電力における電力脈動も許容範囲内のものとなる。
以下、本実施の形態の電力変換装置100の効果について、比較例の電力変換装置と比較して説明する。
図8は、本実施の形態の電力変換装置100を用いた場合のシミュレーション結果において主要な波形を示す図である。
図9は、比較例の電力変換装置を用いた場合のシミュレーション結果において主要な波形を示す図である。
比較例の電力変換装置では、本実施の形態の電力変換装置100と同程度の力率を得ることができる直流コンデンサの容量を用いている。
動作条件として、入力電力が数kWで負荷5に定電圧源を接続する場合を想定している。
両図において、上から順に、交流電圧vacと直流コンデンサ3の直流電圧Vdcと負荷電圧Voutとを示す図、交流電流iacを示す図、負荷電流ioutを示す図、を並べて示す。
図8の比較例の電力変換装置において用いられた直流コンデンサの容量は1mFであり、図9の本実施の形態の電力変換装置100において用いられた直流コンデンサ3の容量は10μFである。
よって、本実施の形態の電力変換装置100を用いることで、直流コンデンサ3の容量を1/100に下げられることが判る。
次に、Ripple指令値における電圧脈動の振幅を、上記(1)式で示したように、(√2Vac-(Vout/N))*K1により決定した理由について、図8を用いて説明する。
(1)式に示されるRipple指令値における電圧脈動の振幅は、検出された交流電圧Vacの最大値と、負荷電圧Voutを巻数比Nで除算した値(Vout/N)との差分(図8においてBと示す)に対して、1以上の補正係数K1を乗算したものである。
これにより直流電圧Vdcの電圧脈動の振幅がB以上の大きさとなる。即ち、直流電圧Vdcの電圧脈動の最大値が、交流電圧vacの最大値以上となる。
このようにRipple指令値における電圧脈動の振幅を調整することで、電圧脈動を直流電圧Vdcに重畳させても、この脈動により直流電圧Vdcが交流電圧vacを下回ることを防止できる。こうして、交流全周期に渡って直流電圧Vdcを交流電圧vac以上に維持できるため、AC/DCコンバータ10における昇圧動作を常に実現できる。
図8に示す電圧波形において、AC/DCコンバータ10の昇圧動作が常に実現できており、交流電流iacが力率1に近い状態で動作できていることが判る。
なお、補正係数Kが1に近いほど、直流電圧Vdcの電圧脈動の振幅を最小にできるが、制御の余裕度が小さくなるため、ノイズ等に対するマージンを含んだ1以上のある値に設定するとよい。
ここで、図9に示す動作状態で、比較例の電力変換装置の直流コンデンサの容量を下げたとする。この場合、直流コンデンサの電圧に生じる交流電源1の2倍周波数成分のリプル電圧の振幅が増加していくこととなり、リプル電圧の下限が交流電圧以下になると降圧動作の状態が発生する。AC/DCコンバータが降圧動作ができない回路方式では、交流電流iacの力率制御が不安定となり、制御破綻が生じる。そのため、比較例の電力変換装置では、直流コンデンサの容量低減に限界があり、大幅な容量低減が困難となる。
なお、負荷5が定電圧源となるため、本実施の形態の電力変換装置100においても、比較例の電力変換装置においても、直流コンデンサの電圧に重畳する脈動成分が重畳した電流が流れる。図8、図9に示すように、本実施の形態の電力変換装置100の方が直流電圧Vdcにおける電圧脈動の振幅が大きい。そのため、負荷5に流れる電流の脈動も大きくなるが、電圧脈動の振幅を調整することで、電流の脈動は許容範囲内とできる。
なお、図8では、交流電圧vacに同期した、全波整流前の正弦波における振幅の中心(Vout/N、基準電圧と称す)が、交流電圧vacの最大値よりも下に位置する場合を示した。そしてこの場合に、電圧脈動の振幅を調整することで、直流電圧Vdcが交流電圧vacより下回ることを防止する制御を示した。しかしながら、この電圧脈動の振幅の調整は、例えば以下に説明する場合では不要とできる。
例えば、交流電圧vacに同期した、全波整流前の正弦波における振幅の中心(基準電圧Vout/N)が、交流電圧vacの最大値よりも上に位置する場合では(図示せず)、重畳される電圧脈動を交流電圧vacに同期するように調整すれば、電圧脈動を直流電圧Vdcに重畳させても、直流電圧Vdcが交流電圧vacを下回ることはない。よって、全波整流前の正弦波における振幅の中心(基準電圧Vout/N)の値に応じて、電圧脈動の振幅の調整の要否を判断してもよい。
また、AC/DCコンバータ10は、力率改善PFC(Power Factor Correction)機能をもつ変換回路であればよく、1石型のPFC回路、トーテムポール方式、インターリーブ方式で構成してもよい。DC/DCコンバータ20は、トランスを持つ変換器であればよく、フライバックコンバータ、ハーフブリッジ方式、センタタップ方式で構成してもよい。
以下、図1に示した電力変換装置100と異なる構成の電力変換装置100aについて説明する。
図10は、実施の形態1による電力変換装置100aの概略構成を示すブロック図である。
図10に示すように、限流用リアクトル2を交流電源1に接続される正側母線と負側母線に分割して配置する構成をとってもよい。正負の母線に分割して配置することで、正と負の電流経路に偏りがなくなるため、回路内のコモンモードノイズの発生を抑制できる。
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
交流回路からの交流電力を直流電力に変換し、前記交流電力の力率改善制御を行うAC/DCコンバータと、該AC/DCコンバータの直流側に接続され、直流電力の電圧変換を行うDC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータと前記DC/DCコンバータとの間の正負の直流母線間に接続される直流コンデンサと、前記AC/DCコンバータおよび前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記直流コンデンサの直流電圧を、前記交流回路からの交流電圧のゼロクロス位相で最小値、ピーク位相で最大値となる波形を有する電圧脈動が重畳された直流電圧に制御するリプル電圧指令値を生成し、前記リプル電圧指令値を用いて、前記AC/DCコンバータ、前記DC/DCコンバータの少なくとも一方を制御する、
ものである。
このように、制御回路は、直流コンデンサの直流電圧を、交流電圧のゼロクロス位相で最小値、ピーク位相で最大値となる波形を有する電圧脈動が重畳された直流電圧に制御する。このように交流電圧の波形に合わせた直流コンデンサの電圧脈動により負荷電流を脈動させて、出力電力を交流電圧に合わせて脈動させる。これにより、直流コンデンサが担保するエネルギーを大幅に低減できるため、直流コンデンサを低容量化させ、小型の電力変換装置を実現できる。
なお、本実施の形態の電力変換装置は、交流電源が単相の場合に高い効果を得るが、複数相の交流電源においても同様の効果を得られる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記制御部は、前記電圧脈動の最大値が設定された第1値以下となるように前記リプル電圧指令値を調整する最大値制限制御と、前記電圧脈動の最小値が設定された第2値以上となるように前記リプル電圧指令値を調整する最小値制限制御と、の少なくとも一方を行う、
ものである。
このように、直流コンデンサの直流電圧に重畳する電圧脈動の最大値と最小値とを制限することで、直流電圧が半導体素子の耐圧を超えて脈動することを防げる。こうして電力変換装置を構成する各素子に印加される電圧値を制限して、耐圧増加に伴う装置の大型化を抑止できると共に、回路の低損失化も同時に可能となる。こうして、更に小型で、且つ高効率の電力変換装置を実現できる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記AC/DCコンバータは、入力された前記交流電圧を整流して昇圧する昇圧型AC/DCコンバータであり、
前記制御部は、前記電圧脈動の最大値が、前記交流電圧の最大値以上となるように、前記リプル電圧指令値を調整する、
ものである。
このように直流コンデンサの電圧脈動の最大値が、交流電圧の最大値以上となるように、重畳される電圧脈動が調整されるため、昇圧型のAC/DCコンバータを用いる場合において、交流周期の全周期に渡って昇圧動作を補償できる。こうして、力率制御を安定化させて、更に高効率で、信頼性の高い電力変換装置を実現できる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記電圧脈動は、前記交流電圧に同期した正弦波を全波整流した波形を有する、
ものである。
このように、重畳する電圧脈動を、交流電圧に同期した制限波を全波整流した波形とすることで、交流電圧の波形に合わせた電圧脈動成分を確実に生成できる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記正弦波の振幅の中心となる基準電圧が、前記交流電圧の最大値以下となる構成において、
前記制御部は、
前記電圧脈動の振幅が、前記交流電圧の最大値と前記基準電圧との差以上となるように、前記リプル電圧指令値を調整する、
ものである。
このように、全波整流前の、交流電圧に同期した正弦波の振幅の中心である基準電圧が、交流電圧の最大値以下となる場合においても、重畳される電圧脈動の振幅を、交流電圧の最大値と基準電圧との差以上なるように制御する。これにより、交流周期の全周期に渡って、確実に直流電圧を交流電圧の最大値以上として、昇圧動作を補償できる。
こうして、力率制御を安定化させて、更に高効率で、信頼性の高い電力変換装置を実現できる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記第1値および前記第2値は、前記制御部の演算能力、前記制御部の応答速度、前記電力変換装置を構成する半導体素子の耐圧、の少なくとも一つに基づいて決定される、
ものである。
これにより、直流電圧が半導体素子の耐圧を超えて脈動することを確実に防げる。また、用いられる制御回路30の性能に応じた安定した制御が可能となる。こうして、更に信頼性の高い電力変換装置が実現できる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記DC/DCコンバータの出力電圧が一定であり、前記交流回路からの交流電流を設定された第1電流指令値に追従させる構成において、
前記制御部は、
前記第1電流指令値に基づいた前記AC/DCコンバータの制御により前記交流電流を制御し、
前記リプル電圧指令値に基づいた前記DC/DCコンバータの制御により、前記直流コンデンサの直流電圧を前記電圧脈動が重畳された直流電圧に制御する、
ものである。
このように、制御回路は、交流回路からの入力電流を指令値に追従させる場合においても適用可能となる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記DC/DCコンバータは、
一次側コイルと二次側コイルとを有する絶縁トランスを備えた絶縁型DC/DCコンバータであり、
前記制御部は、前記電圧脈動の最小値を前記絶縁トランスの巻数比に基づいて演算する、
ものである。
このように、電圧脈動の下限値を制限する第2値は、DC/DCコンバータにおける回路定数に基づいて導出可能であり、例えば、負荷電圧を巻数比Nで割った値に補正係数K2を乗算した値で設定することも可能である。これにより負荷電圧に基づいた電圧脈動の下限値を設定できるため、力率制御を安定化させて、更に高効率で、信頼性の高い電力変換装置を実現できる。
実施の形態2.
以下、本願の実施の形態2を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態2による電力変換装置の主回路構成は実施の形態1と同様であり、制御回路230の構成が異なる。
図11は、実施の形態2による電力変換装置の制御回路230の制御ブロック図である。
制御回路230は、電圧リプル指令生成器40と、力率指令演算器260と、中間電圧指令演算器280と、出力電流指令演算器290と、ゲート信号生成器31、32と、を備える。
電圧リプル指令生成器40およびゲート信号生成器31、32は、実施の形態1と同様構成であり、動作も同じため説明は割愛する。
電圧リプル指令生成器40により生成されたリプル電圧指令値Vdc_rippleは、力率指令演算器260と、中間電圧指令演算器280と、出力電流指令演算器290に入力される。
中間電圧指令演算器280は、入力されるリプル電圧指令値Vdc_rippleと、センサにより検出された直流電圧Vdcとを用いて、直流コンデンサ3の電圧指令値Vdc_refを生成する。生成された電圧指令Vdc_refは、力率指令演算器260に入力される。
力率指令演算器260は、入力されたリプル電圧指令値Vdc_rippleと、電圧指令Vdc_refと、センサにより検出された交流電流iac、交流電圧vac、直流電圧Vdc、負荷電圧Voutと、を用いて、交流電流iacの力率を高力率に制御しながら、直流電圧Vdcを指令値に追従させるデューティ比信号Duty_PFCを生成する。
出力電流指令演算器290は、入力されたリプル電圧指令値Vdc_rippleと、センサにより検出された交流電圧vac、負荷電圧Vout、負荷電流ioutと、を用いて、負荷電流ioutを制御するデューティ比信号Duty_ioutを生成する。
なお、本実施の形態2では、負荷5にバッテリのような定電圧源が接続された場合を想定しており、図11に示した制御回路230は、出力電圧(負荷電圧Vout)が固定で、負荷電流ioutを任意の値に制御する場合の構成である。
以下、上記のように構成される制御回路230が行う制御動作の詳細について説明する。この制御動作の詳細の説明において、制御回路230を構成する力率指令演算器260、中間電圧指令演算器280、出力電流指令演算器290の詳細構成についても説明する。
先ず、中間電圧指令演算器280の構成を、図11を用いて説明する。
図12は、実施の形態2による中間電圧指令演算器280の制御ブロック図である。
中間電圧指令演算器280は、センサで検出した直流電圧Vdcと、リプル電圧指令値Vdc_rippleとの偏差281を演算する。そして、中間電圧指令演算器280は、この偏差281をPI制御して電圧指令値Vdc_refを演算する。
次に、力率指令演算器260によるデューティ比信号Duty_PFCの生成について図13を用いて説明する。
図13は、実施の形態2による力率指令演算器260の制御ブロック図である。
力率指令演算器260は、直流コンデンサ3の直流電圧Vdcを指令値に追従させながら交流電流iacの力率が1になるようにPI制御を行う。
この交流電流iacの力率制御において、力率指令演算器260は、以下(3)式により表される、力率を1とした、出力電力Poutの瞬時電力Pout(t)を導出する。
瞬時電力Pout(t)=瞬時電圧vout(t)*瞬時電流iout(t)
=√2Vsin(ωt)*√2Isin(ωt)
=2VIsin^2(ωt)
=VI(1-cos(2ωt))
=VI(1-sin(2ωt+π/2))・・・(3)
図13に示すように、力率指令演算器260は、第2電流指令値としての負荷電流指令値iout*と、センサで検出した負荷電圧Voutとを掛け合わせて信号261を生成する。その後、中間電圧指令演算器280で生成された電圧指令値Vdc_refを加えることで、所望の電圧脈動が重畳された電力指令262を演算する。
次に、その電力指令262に対して、PLL演算器263にて生成した交流電圧vacの2倍周期に90度遅れを含めた波形信号264を乗算して、瞬時電力指令値265を演算する。そして、センサで検出した交流電圧vacと交流電流iacとに基づく瞬時電力266を演算し、瞬時電力指令値265とセンシングした瞬時電力値266との偏差267をPI制御して電圧指令値268を生成する。
上記では、負荷電流指令値iout*と、センサで検出した負荷電圧Voutとを掛け合わせて信号261を生成したが、負荷電流指令値iout*の代わりにセンサで検出した負荷電流ioutを用いてもよい。なお、負荷電流指令値iout*を用いた制御を行う場合では、ノイズなどの成分の影響を受けない指令値が生成できるため、より高力率な制御が可能となる。
そして、この電圧指令値268を、リプル電圧指令値Vdc_rippleにより除算することで規格化を行い、FF制御演算器269の信号を加えることでセンサ値の急峻な変動に対応できるデューティ比信号Duty_PFCを生成する。
なお、FF制御演算器269の演算は、実施の形態1に示した式(2)と同様となる。
次に、出力電流指令演算器290を、図14を用いて説明する。
図14は、実施の形態2による出力電流指令演算器290の制御ブロック図である。
前述のように、出力電流指令演算器290は、負荷電流ioutが指令値に追従するようなデューティ比信号Duty_ioutを演算する。
図14に示すように、出力電流指令演算器290は、第2電流指令値としての負荷電流指令値iout*に、PLL演算器291にて生成した交流電圧vacの2倍周期に90度遅れを含めた波形信号292を掛け合わせた信号293を生成する。そうすることで、直流コンデンサ3の直流電圧Vdcに発生する交流電圧vacの2倍周期であって、交流電圧vacに同期させた電流脈動を負荷5に出力する。
その後、信号293と、波形センサで検出した負荷電流ioutとの差分294をPI制御し、電流制御用のリアクトル24に流れる電流を制御する信号295を生成する。その後、信号295に負荷電圧Voutを加えた信号296を、リプル電圧指令値Vdc_rippleに巻線比Nを乗算した信号297で除算することで規格化して、デューティ比信号Duty_ioutを生成する。
図11に示したゲート信号生成器31では、このように生成されたデューティ比信号Duty_PFCとキャリア波をPWM制御することで、半導体スイッチング素子10c、10dへのゲート信号G10c、G10dを生成し、AC/DCコンバータ10にて交流電流iacを高力率に制御する。
ゲート信号生成器32では、このように生成されたデューティ比信号Duty_Vdcとキャリア波をPWM制御することにより、半導体スイッチング素子21a、21b、21c、21dへのゲート信号G21a、G21b、G21c、G21dを生成し、DC/DCコンバータ20にて直流電圧Vdcを所望の電圧脈動が重畳された直流電圧に制御する。
以下、本実施の形態の電力変換装置の効果について、比較例の電力変換装置と比較して説明する。
図15は、本実施の形態の電力変換装置100を用いたシミュレーション波形を示す図である。
図16は、比較例1の電力変換装置を用いたシミュレーション波形を示す図である。
図17は、比較例2の電力変換装置を用いたシミュレーション波形を示す図である。
なお、比較例1、2の電力変換装置は、共に、交流電源の力率改善制御を伴って電力変換するAC/DCコンバータとDC/DCコンバータとが直流コンデンサを介して接続される回路構成を有する。
また、比較例1の電力変換装置は、本実施の形態の制御回路30のような直流コンデンサ3の電圧制御を行っていない場合を想定している。
また、比較例2の電力変換装置は、交流電圧のゼロクロス位相で最小値、ピーク位相で最大値となる交流電流指令を直流電流指令に重畳する制御を行う場合を想定している。
また、比較例1の電力変換装置では、本実施の形態の電力変換装置100と同程度の力率を得ることができる直流コンデンサの容量を用いている。
動作条件として、入力電力が数kWで負荷に定電圧源を接続する場合を想定する。
各図において、上から順に、交流電圧vacと直流コンデンサ3の直流電圧Vdcと負荷電圧Voutとを示す図、交流電流iacを示す図、負荷電流ioutを示す図、を並べて示す。
図15の本実施の形態の電力変換装置に用いられる直流コンデンサ3の容量は10μFであり、図16の比較例1の電力変換装置に用いられる直流コンデンサ3の容量は1mFとなる。また、図17の比較例2の電力変換装置に用いられる直流コンデンサ3の容量は、本実施の形態の電力変換装置と同容量の10μFとなる。
図15、図16から、本実施の形態の電力変換装置を用いることで容量を1/100に下げたとしても常に昇圧動作が実現できており、交流電流iacが力率1に近い状態で動作できることが判る。
ここで、図16に示す動作状態で、比較例1の電力変換装置の直流コンデンサの容量を下げたとする。この場合、直流コンデンサの電圧に生じる交流電源1の2倍周波数成分のリプル電圧の振幅が増加していくこととなり、リプル電圧の下限が交流電圧以下になると降圧動作の状態が発生する。AC/DCコンバータが降圧動作ができない回路方式では、交流電流iacの力率制御が不安定となり、制御破綻が生じる。
また、図17に示す波形から、比較例2の電力変換装置のコンデンサ容量を必要以上に下げてしまうと、AC/DCコンバータで昇圧動作を保つために、力率が悪化していることが判る。
また、負荷5が定電圧源となるため、本実施の形態の電力変換装置においても、比較例1、2の電力変換装置においても、直流コンデンサ3の電圧に重畳する交流電源1の2倍周波数成分が重畳した電流が流れる。本実施の形態の電力変換装置と比較例2の電力変換装置とは、負荷5に流れる電流の脈動が正弦波になるように制御しているため、電流制御を行わない比較例1と比較すると電流の脈動は大きくなる。
しかしながら、前述のように、本実施の形態の電力変換装置において重畳される電圧リプルの振幅は、所望の範囲内となるように調整することで、許容範囲内とできる。
なお、力率指令演算器260、出力電流指令演算器290において示された、交流電圧vacの2倍周期に90度の遅れを含めた波形信号は、90度に対して、±第3値度のマージンを含ませてもよい。
この第3値は、電圧脈動が重畳された直流コンデンサ3の直流電圧Vdcが、交流電源1からの交流電圧Vac以上となる値が確保される位相範囲内で設定すると良い。
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記DC/DCコンバータの出力電圧が一定であり、前記DC/DCコンバータの出力電流を設定された第2電流指令値に追従させる制御において、
前記制御部は、
前記第2電流指令値に基づいた前記DC/DCコンバータの制御により前記出力電流を制御し、
前記リプル電圧指令値に基づいた前記AC/DCコンバータの制御により、前記直流コンデンサの直流電圧を前記電圧脈動が重畳された直流電圧に制御する、
ものである。
これにより、実施の形態1と同様の効果を奏し、直流コンデンサが担保するエネルギーを大幅に低減できるため、直流コンデンサを低容量化させ、小型の電力変換装置を実現できると共に、制御回路は、DC/DCコンバータからの出力電流を指令値に追従させる場合においても適用可能となる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記制御部は、
前記第2電流指令値あるいは検出された前記DC/DCコンバータの出力電流と、検出された前記DC/DCコンバータの出力電圧と、を用いて、前記DC/DCコンバータの出力電力の瞬時電力値を導出し、
前記瞬時電力値に基づいて、前記AC/DCコンバータの前記力率改善制御を行う、
ものである。
このように、DC/DCコンバータの出力電力の瞬時電力値に基づいた力率改善制御を行うことにより、直流コンデンサに重畳された電圧脈動の影響を受けることのない更に高力率な力率制御が可能となる。
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置は、
前記制御部は、
前記第2電流指令値に対して、前記交流電圧の2倍の周期で、且つ、前記交流電圧の位相から90±第3値度、位相のずれた波形を重畳し、
前記第3値は、前記電圧脈動が重畳された前記直流コンデンサの直流電圧が、前記交流回路からの前記交流電圧以上となる値に設定される、
ものである。
このように、DC/DCコンバータの出力電流に、交流電圧の2倍周期であって、交流電圧に同期させた脈動を重畳させる。このような脈動を出力電流に重畳させる制御と、リプル電圧指令値を用いた力率指令演算器による直流コンデンサの直流電圧の制御と、を行うことで、更に高力率な力率制御と、直流コンデンサが担保するエネルギーの更なる低減を実現できる。
なお、本実施の形態2でも本実施の形態1と同様に、限流用リアクトル2を交流電源1の正側母線と負側母線に分割して配置する構成をとってもよい。これにより、正と負の電流経路に偏りがなくなるため、回路内のコモンモードノイズの発生を抑制することができる。
実施の形態3.
以下、本願の実施の形3を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図18は、実施の形態1による電力変換装置300の概略構成を示すブロック図である。
本実施の形態3の電力変換装置300は、DC/DCコンバータ320の構成が、実施の形態1に示したDC/DCコンバータ20の構成と異なる。
DC/DCコンバータ320は、この場合、降圧チョッパで構成され、半導体スイッチング素子21a、21bと、電流制御用のリアクトル24とを備える。
本実施の形態3では、本実施の形態1のように負荷5にバッテリのような定電圧源が接続された場合を想定しており、制御回路30の構成は、出力電圧が固定値で、入力交流電流を任意の値に制御する場合のものとする。この場合、本実施の形態の制御回路の構成は、実施の形態1の制御回路と同様となる。
次に、本実施の形態3による電力変換装置300の動作を説明する。
電力変換装置300の動作は、本実施の形態1による電力変換装置100の動作と同様であるため説明は割愛する。また、AC/DCコンバータ10の動作も、本実施の形態1と同様であるため説明は割愛する。
DC/DCコンバータ320の動作は、本実施の形態1、2の絶縁型のDC/DCコンバータ20と異なる。DC/DCコンバータ320は、制御回路30からのゲート信号321に基づき、直流コンデンサ3の直流電圧を、半導体スイッチング素子21aと半導体スイッチング素子21bのスイッチング動作により矩形波にし、電流制御用のリアクトル24と平滑コンデンサ4にて直流電圧へと平滑化することで、降圧した電圧を生成する。
また、制御回路30は、DC/DCコンバータ320が絶縁トランスを有さない構成であるため、実施の形態1に示した、デューティ比信号Duty_PFC、デューティ比信号Duty_Vdcの生成にて用いた巻数比Nを1として演算する。その他の制御回路30の動作は、実施の形態1と同様となるため、説明は割愛する。
このような構成の電力変換装置300においても、実施の形態1と同様の効果を奏し、直流コンデンサが担保するエネルギーを大幅に低減でき、直流コンデンサを低容量化させ、小型の電力変換装置を実現できる。
なお、本実施の形態2のように負荷5にバッテリのような定電圧源が接続された場合を想定し、出力電圧が固定で、出力直流電流を任意の値に制御する場合は、制御回路30の構成を、本実施の形態2の制御回路230に変更して動作させてもよい。この場合、制御回路の動作は、デューティ比信号Duty_ioutの生成において用いる巻線比Nを1とすること以外は、実施の形態2と同様となる。
また、DC/DCコンバータ20は、非絶縁のDC/DCコンバータであればどのような構成でもよく、昇圧チョッパ、昇降圧チョッパで構成してもよい。
また、電圧脈動の下限値は、DC/DCコンバータ320のデューティ比に基づいて導出してもよい。これにより、負荷電圧に基づいた電圧脈動の下限値を設定できるため、力率制御を安定化できる。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 交流電源(交流回路)、3 直流コンデンサ、10 AC/DCコンバータ、20,320 DC/DCコンバータ、23 高周波絶縁トランス(絶縁トランス)、23a 一次側コイル、23b 二次側コイル、30,230 制御回路(制御部)、100,300 電力変換装置。

Claims (12)

  1. 交流回路からの交流電力を直流電力に変換し、前記交流電力の力率改善制御を行うAC/DCコンバータと、該AC/DCコンバータの直流側に接続され、直流電力の電圧変換を行うDC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータと前記DC/DCコンバータとの間の正負の直流母線間に接続される直流コンデンサと、前記AC/DCコンバータおよび前記DC/DCコンバータを制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記直流コンデンサの直流電圧を、前記交流回路からの交流電圧のゼロクロス位相で最小値、ピーク位相で最大値となる波形を有する電圧脈動が重畳された直流電圧に制御するリプル電圧指令値を生成し、前記リプル電圧指令値を用いて、前記AC/DCコンバータ、前記DC/DCコンバータの少なくとも一方を制御する、
    電力変換装置。
  2. 前記制御部は、前記電圧脈動の最大値が設定された第1値以下となるように前記リプル電圧指令値を調整する最大値制限制御と、前記電圧脈動の最小値が設定された第2値以上となるように前記リプル電圧指令値を調整する最小値制限制御と、の少なくとも一方を行う、
    請求項1に記載の電力変換装置。
  3. 前記AC/DCコンバータは、入力された前記交流電圧を整流して昇圧する昇圧型AC/DCコンバータであり、
    前記制御部は、前記電圧脈動の最大値が、前記交流電圧の最大値以上となるように、前記リプル電圧指令値を調整する、
    請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
  4. 前記電圧脈動は、前記交流電圧に同期した正弦波を全波整流した波形を有する、
    請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  5. 前記正弦波の振幅の中心となる基準電圧が、前記交流電圧の最大値以下となる構成において、
    前記制御部は、
    前記電圧脈動の振幅が、前記交流電圧の最大値と前記基準電圧との差以上となるように、前記リプル電圧指令値を調整する、
    請求項4に記載の電力変換装置。
  6. 前記第1値および前記第2値は、前記制御部の演算能力、前記制御部の応答速度、前記電力変換装置を構成する半導体素子の耐圧、の少なくとも一つに基づいて決定される、
    請求項2に記載の電力変換装置。
  7. 前記DC/DCコンバータの出力電圧が一定であり、前記交流回路からの交流電流を設定された第1電流指令値に追従させる構成において、
    前記制御部は、
    前記第1電流指令値に基づいた前記AC/DCコンバータの制御により前記交流電流を制御し、
    前記リプル電圧指令値に基づいた前記DC/DCコンバータの制御により、前記直流コンデンサの直流電圧を前記電圧脈動が重畳された直流電圧に制御する、
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  8. 前記DC/DCコンバータの出力電圧が一定であり、前記DC/DCコンバータの出力電流を設定された第2電流指令値に追従させる制御において、
    前記制御部は、
    前記第2電流指令値に基づいた前記DC/DCコンバータの制御により前記出力電流を制御し、
    前記リプル電圧指令値に基づいた前記AC/DCコンバータの制御により、前記直流コンデンサの直流電圧を前記電圧脈動が重畳された直流電圧に制御する、
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  9. 前記制御部は、
    前記第2電流指令値あるいは検出された前記DC/DCコンバータの出力電流と、検出された前記DC/DCコンバータの出力電圧と、を用いて、前記DC/DCコンバータの出力電力の瞬時電力値を導出し、
    前記瞬時電力値に基づいて、前記AC/DCコンバータの前記力率改善制御を行う、
    請求項8に記載の電力変換装置。
  10. 前記制御部は、
    前記第2電流指令値に対して、前記交流電圧の2倍の周期で、且つ、前記交流電圧の位相から90±第3値度、位相のずれた波形を重畳し、
    前記第3値は、前記電圧脈動が重畳された前記直流コンデンサの直流電圧が、前記交流回路からの前記交流電圧以上となる値に設定される、
    請求項8または請求項9に記載の電力変換装置。
  11. 前記DC/DCコンバータは、
    一次側コイルと二次側コイルとを有する絶縁トランスを備えた絶縁型DC/DCコンバータであり、
    前記制御部は、前記電圧脈動の最小値を前記絶縁トランスの巻数比に基づいて導出する、
    請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
  12. 前記制御部は、
    前記電圧脈動の最小値を、前記DC/DCコンバータのデューティ比に基づいて導出する、
    請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
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