JP7177535B2 - 導電性高分子膜の作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、導電性高分子膜の作製方法に関する。具体的には、匂いセンサを構成する導電性高分子膜の作製方法に関する。
導電性高分子膜の作製において、導電性高分子に導電性を付与するために各種ドーパントが、導電性高分子原料溶液に添加される(例えば、特許文献1)。
特開2011-071087号公報
導電性高分子原料溶液に各種ドーパントを添加した場合、作製される導電性高分子膜は、その全領域において、一様の導電性を有することになる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、導電性高分子膜上の所定領域にドーパント溶液を噴霧することにより、導電性高分子膜上の当該所定領域にドーパントによってドープされたドープ領域が形成された導電性高分子膜の作製方法を提供することを例示的課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
(1)ドープ領域を有する導電性高分子膜の作製方法であって、基板上に導電性高分子材料を塗布して導電性高分子膜を形成する製膜工程と、前記導電性高分子膜の匂い物質への吸着特性を変化させるドーパントを所定の組成で含有するドーパント溶液を、前記ドープ領域の表面上に噴霧するドーピング工程と、を含む、導電性高分子膜の作製方法。
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
本発明によれば、導電性高分子膜上の当該所定領域にドープ領域が形成された導電性高分子膜を作製することができる。
実施形態1に係る導電性高分子膜3の作製方法の各工程の一例を示す説明図である。 実施形態1に係る導電性高分子膜3の作製方法の各工程の他の例を示す説明図である。 ドーピング工程Bの説明図である。 実施形態1における匂いセンサ10の1例を模式的に示す平面図及び断面図である。 匂い測定装置50の内部構成の説明図である。
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る導電性高分子膜の作製方法の各工程について順に説明する。導電性高分子膜の作製方法は、ドープ領域1を有する導電性高分子膜3を作製する方法である。
導電性高分子膜3は、例えば、匂いセンサ10における物質吸着膜13として用いることができる。そして、導電性高分子膜3上に形成されたドープ領域1は、例えば、匂いセンサ10におけるセンサ素子11に相当する導電性高分子膜3の一部(所定領域)とすることができる。匂いセンサ10や物質吸着膜13、センサ素子11等については、後述する。
導電性高分子膜3は、例えば、π電子共役高分子で形成される薄膜とすることができる。π電子共役高分子としては、特に限定されないが、ポリピロール及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアズレン及びその誘導体、ポリイミド及びその誘導体等の、π電子共役高分子を骨格とする高分子を挙げることができる。
π電子共役高分子が酸化状態で骨格高分子自体がカチオンとなる場合、ドーパントとしてアニオンを含有させることによって導電性を発現させることができる。導電性高分子膜3の所定領域をドーピングしたドープ領域1を導電性高分子膜3に形成することで、ドープ領域1において部分的に導電性を有する導電性高分子膜3を作製することができる。なお、本発明では、ドーパントを含有させていない中性のπ電子共役高分子も物質吸着膜13として採用することができる。
ドーパントの具体例としては、塩素イオン、塩素酸化物イオン、臭素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン等の無機イオン、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カルボン酸等の有機酸アニオン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子酸アニオン等を挙げることができる。
また、中性のπ電子共役高分子に、食塩のような塩や、イオン性液体のような陽イオン、陰イオン両方を含むイオン性化合物を共存させることで化学平衡的にドーピングを行う方法も用いることができる。
π電子共役高分子におけるドーパントの含有量は、π電子共役高分子を構成する2つの繰り返し単位あたり1つのドーパント単位(イオン)が入る状態を1とした場合、0.01~5の範囲、好ましくは0.1~2の範囲に調整されればよい。ドーパントの含有量を、この範囲の最低値以上とすることにより、物質吸着膜13としての特性が消失することを抑制することができる。また、ドーパントの含有量を、この範囲の最大値以下とすることにより、π電子共役高分子自体が持つ吸着特性の効果が低下し、望ましい吸着特性を有する物質吸着膜13を作成するのが困難になることを抑制することができる。また、通常は低分子量物質であるドーパントが優勢な膜となるために、物質吸着膜13の耐久性が大幅に低下することを抑制することができる。よって、ドーパントの含有量を上述の範囲とすることにより、匂い物質の検出感度を好適に維持することが可能である。
導電性高分子膜の作製方法は、製膜工程Aと、ドーピング工程Bと、を含む。以下、各工程について、図面を参照しつつ、具体的に説明する。図1は、実施形態1に係る導電性高分子膜3の作製方法の各工程の一例を示す説明図である。図2は、実施形態1に係る導電性高分子膜3の作製方法の各工程の他の例を示す説明図である。図3は、ドーピング工程Bの説明図である。
<製膜工程A>
製膜工程Aでは、図1(a)や図2(a)のような基板7上に、図1(b)や図2(b)のように導電性高分子材料を塗布して導電性高分子膜を形成する。導電性高分子材料を基板7上に塗布する方法としては、特に制限されず、スピンコート、蒸着重合、電解重合等、各種塗布方法を採用することができる。これらの中でも、導電性高分子材料としてもポリアニリン原料溶液を薄くかつ均一に塗布するという観点から、スピンコートによる塗布が好ましい。
導電性高分子材料としては、導電性高分子膜3を構成するπ電子共役高分子の薄膜を形成し得る高分子材料を用いることができる。すなわち、上述したポリピロール及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアズレン及びその誘導体、ポリイミド及びその誘導体等の、π電子共役高分子の薄膜を形成し得る高分子材料を用いることができる。
導電性高分子材料としては、基板7上に塗布された後に、重合し、硬化するモノマー原料であってもよいし、基板7上に塗布された後に硬化するポリマー原料であってもよい。
製膜工程Aには、導電性高分子材料を基板7上に塗布した後、導電性高分子材料を乾燥させる乾燥サブ工程又は導電性高分子材料を硬化させる硬化サブ工程が含まれていてもよい。乾燥サブ工程又は硬化サブ工程としては、具体的には、基板7上に塗布された導電性高分子材料を所定の環境下、所定時間加熱する処理等が挙げられる。加熱処理の環境や温度、時間等は、導電性高分子材料の種類等に応じて適宜決定することができる。
製膜工程Aにより形成される導電性高分子膜3の厚さは、10nm~10μmであることが好ましく、50nm~800nmであることが更に好ましい。導電性高分子膜3の厚さが10nm未満であると、物質吸着膜13としての感度が十分に得られない場合がある。また、導電性高分子膜3の厚さが10nmであると、ドーピング工程Bにおいて噴霧するドーパントがドープ領域1に適切に定着しない場合がある。一方、導電性高分子膜3の厚さが10μm超であると、ドーピング工程Bにおいて噴霧するドーパントによるドーピング効果が十分に得られない場合がある。
<ドーピング工程B>
ドービング工程Bでは、図3(a)及び図3(b)に示すように、ドーパントを含有するドーパント溶液を、ドープ領域1に向けて噴霧する。これにより、図1(c)や図2(d)に示すように、ドープ領域1の表面上にドーパント溶液を塗布することができる。
ドーパントは、導電性高分子膜3の匂い物質への吸着特性を変化させるものである。また、ドーパントは、導電性高分子膜3に導電性を発現させることができる。ドーパントとしては、塩素イオン、塩素酸化物イオン、臭素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ホウ酸イオン等の無機イオン、アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カルボン酸等の有機酸アニオン、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子酸アニオン等を挙げることができる。
ドーパント溶液には、ドーパントと、溶媒と、が少なくとも含有される。溶媒としては、ドーパントのドーピング機能を阻害しないものである限り、特に制限されず、水、純水、等を用いることができる。ドーパント溶液には、ドーパント、溶媒以外に、ドーパントのドーピング機能、ドーパント溶液の飛散性等に影響を及ぼさない限りにおいて、粘度調整剤等の各種添加剤が含有されていてもよい。
粘度調整剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを用いることができる。粘度調整剤として、これらの中でも、ドーパント溶液をインクジェットノズル23から噴霧した際に液滴の飛散を適度に抑制することができるという観点から、ポリエチレングリコールが好ましい。ドーパント溶液中、粘度調整剤の含有割合としては、ドーパント溶液の噴霧に適切な範囲である等の悪影響を及ぼさない限り、特に制限されない。
ドーパント溶液を導電性高分子膜3内の所定領域であるドープ領域1へ向けて噴霧する方法としては、インクジェットノズル23を用いて噴霧する方法(インクジェット法)を上げることができる。例えば、図3(a)に示すように、インクジェットノズル23を導電性高分子膜3に沿って移動させ、ドープ領域1となる所定の領域においてドーパント溶液を噴霧するよう構成することができる。インクジェットノズル23の移動方向は、導電性高分子膜3に沿って平行移動するものとすることができる。
インクジェットヘッド21の移動及びインクジェットノズル23からの噴霧は、インクジェットヘッド21及びインクジェットノズル23を搭載する噴霧装置によって、制御することができる。噴霧装置は、インクジェットヘッド21と、インクジェットヘッド21に搭載されるインクジェットノズル23と、インクジェットヘッド21を移動させることが可能な移動手段と、インクジェットヘッド21の移動及びインクジェットノズル23からの噴霧を制御する制御装置と、を少なくとも有する。
噴霧装置の制御装置は、インクジェットノズル23からのドーパント溶液の噴霧の、量やタイミングを制御することができる。インクジェットノズル23からは、例えば、制御装置からの信号に基づく電圧による圧電素子の変形によって押し出されたドーパント溶液が噴射(噴霧)される。また、噴霧装置の制御装置は、インクジェットヘッド21の移動手段を制御する。制御装置によるインクジェットヘッド21の移動及びインクジェットヘッド21からのドーパント溶液の噴霧により、導電性高分子膜3上の所望の位置にドーパント溶液を噴霧することができる。
導電性高分子膜3上に形成されるドープ領域1の大きさ(範囲)としては、特に制限されないが、例えば、100nm~1mm程度であり、500nm~500μm程度が好ましく、50~150μm程度が更に好ましい。なお、ドープ領域1は、ドーパント溶液の噴霧操作よりも前に、予め特定されていなくともよい。
導電性高分子膜3上に形成されるドープ領域1の形状も、特に制限なく、例えば、円形、だ円形や、四角形等の多角形、その他各種形状とすることができる。
インクジェット法において用いるインクジェットノズル23としては、特に制限はない。インクジェットノズル23の数は、単一であってもよいし、複数であってもよい。また、インクジェットノズル23を複数用いる場合、インクジェットノズル23は、単一のインクジェットヘッド21に搭載されていてもよく、複数のインクジェットヘッド21に分散して搭載されていてもよい。インクジェットノズル23が複数のインクジェットヘッド21に分散して搭載されている場合、各引ジェットヘッドの移動を独立して制御することにより、複数のインクジェットノズル23によるドーパント溶液の塗布の効率性を向上させることができる。
図3(b)に示すように、インクジェットヘッド21に複数のインクジェットノズル23を搭載させる場合、導電性高分子膜3に配置される複数のドープ領域1の位置に対応させて、各インクジェットノズル23をインクジェットヘッド21に搭載させてもよい。すなわち、導電性高分子膜3上の塗布領域に対応するサイズのインクジェットヘッド21に、形成される複数のドープ領域1の位置に対応する位置にインクジェットノズル23を配置することができる。例えば、導電性高分子膜3上の複数のドープ領域1の配置が縦横に平行に配列された格子状である場合、インクジェットヘッド21に搭載されるインクジェットノズル23の配置パターンも、ドープ領域1の配置に対応して、縦横に平行に配列された格子状とすることができる。これにより、当該塗布領域に対し、1回の噴霧により、ドーパント溶液を塗布することができる。このとき、塗布領域は、導電性高分子膜3の全面であってもよいし、一部であってもよい。塗布領域が導電性高分子膜3の一部である場合、一部の領域に位置するドープ領域1にドーパント溶液を塗布した後、インクジェットヘッド21を移動させて、他の領域に位置するドープ領域1にドーパント溶液を塗布することができる。
1つのインクジェットノズル23から噴霧されるドーパント溶液は、1種類であってもよく、複数種類であってもよい。1つのインクジェットノズル23から複数種類のドーパント溶液を噴霧する場合、1種類目のドーパント溶液を噴霧した後、インクジェットノズル23内のドーパント溶液の搬送路や噴霧口等を水や適切な溶媒等で洗浄してもよい。これにより、異なる種類のドーパント溶液が混じることなく、複数種類のドーパント溶液を噴霧することができる。なお、インクジェットノズル23の内部を洗浄する場合には、インクジェットヘッド21を導電性高分子膜3上から退避させることができる。
1つのインクジェットヘッド21に複数のインクジェットノズル23が搭載される場合、すべてのインクジェットノズル23から同時にそれぞれのドーパント溶液を噴霧させなくともよい。すなわち、1つのインクジェットヘッド21に複数のインクジェットノズル23が搭載されている場合であっても、そのうちの一部のインクジェットノズル23からのみドーパント溶液を噴霧させてもよい。例えば、1つのインクジェットヘッド21に搭載された複数のインクジェットのうち、所定のインクジェットノズル23から各ドーパント溶液を噴霧させた後、次いで、噴霧させなかった他のインクジェットノズル23から各ドーパント溶液を噴霧させることができる。これにより、近接するインクジェットノズル23から噴霧され、飛散したドーパント溶液どうしが混じり合うことを抑制することができる。ここでも、インクジェットノズル23を有効利用するために、インクジェットノズル23の内部を洗浄して、複数種類のドーパント溶液を噴霧させることもできる。
インクジェットノズル23から噴霧されるドーパント溶液の噴霧範囲を規制するために、インクジェットヘッド21又はインクジェットノズル23にフードを設けることができる。これにより、ドーパント溶液が所望のドープ領域1以外の領域へ飛散し、他のドーパント溶液と混じり合ったり、他のドープ領域1へ付着したりすることを抑制することができる。
フードの形状は、ドーパント溶液の噴霧範囲を適切に規制することができる限り特に制限されない。例えば、ドーパント溶液の噴霧方向に平行な中心軸であり、インクジェットノズル23の先端を通る中心軸を有する円筒形状や円錐形状、だ円錐形状の側面に対応する形状に形成された板状部材とすることができる。フードは、個々のインクジェットノズル23に対して設けられてもよいし、複数のインクジェットノズル23に対して設けられていてもよい。上述のように複数のインクジェットノズル23のうち一部のインクジェットノズル23からのみドーパント溶液を噴霧する場合に、同時には噴霧しない他のインクジェットノズル23と共通のフードが設けられるよう構成されていてもよい。フードは、インクジェットノズル23からドーパント溶液が噴霧される場合にのみ、ドーパント溶液の飛散を抑制する位置に移動するよう構成されていてもよい。ドーパント溶液が噴霧されない場合には、フードがインクジェットヘッド21側へ移動するよう構成されていてもよい。すなわち、フードは、ドーパント溶液の噴霧方向に沿って平行に移動可能であるように構成されていてもよい。
ドーピング工程Bにおいては、ドープ領域1へドーパント溶液を塗布した後、必要に応じて、40℃以上での加熱処理を行うことができる。このような加熱処理により、ドーパントのマイグレーション及びドーピングを促進させることができる。
<隔壁形成工程C>
導電性高分子膜の作製方法には、隔壁形成工程Cが含まれていてもよい。隔壁形成工程Cは、ドーピング工程Bの前に、図2(c)に示すように、複数のドープ領域1のそれぞれを隔てる隔壁を形成する工程である。隔壁は、導電性高分子膜3上に形成される複数のドープ領域1どうしの間に形成され、複数のドープ領域1どうしを隔てることができる。これにより、インクジェットノズル23から噴霧されたドーパント溶液が所望のドープ領域1のみに塗布され易くなる。すなわち、インクジェットノズル23から噴霧されたドーパント溶液が飛散し、所望のドープ領域1以外のドープ領域1に到達し難くなる。
隔壁の形状としては、ドーパント溶液の飛散を適切に抑制することができる限り特に制限はないが、例えば、高さが、10μm~10mm程度とすることができる。隔壁の幅(伸長方向に直交する方向における長さ)は、100nm~10mm程度とすることができる。隔壁は、隣り合うドープ領域1の間に形成されていることが好ましい。
なお、ドープ領域1どうしは、絶縁されていることが好ましく、隣り合うドープ領域1どうしは、所定の間隔(非ドープ領域)を有して配置されていることが好ましい。隣り合うドープ領域1どうしの間の間隔としては、例えば、100nm~100mmであることが好ましい。
隔壁は、ドープ領域1の間を縫うように形成されていることが好ましい。ドープ領域1が導電性高分子膜の平面上で縦方向及び横方向に平行に配列されている場合(格子状に配列されている場合)、隔壁は、ドープ領域1によって形成される非ドープ領域を縦方向及び横方向に直線的に伸長する格子状に形成されていてもよい。また、隔壁は、非ドープ領域を覆うように形成されていてもよい。
隔壁の材質としては、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂等の微細加工に適したものを用いることができる。特に、アクリルウレタン系樹脂等の感光性樹脂を用いることによって、フォトリソグラフィ法により、隔壁を形成することができる。また、上述のような隔壁を形成し得る隔壁材料をディスペンサー等を用いて、導電性高分子膜3の表面上に滴下し、乾燥、硬化させることで隔壁を形成することもできる。
隔壁は、導電性高分子膜3の表面上に形成され、ドープ領域1が形成された後、除去することができる。隔壁を除去する方法としては、ドープ領域1を有する導電性高分子膜3の匂い物質吸着特性や導電性に影響を与える等の悪影響を及ぼすものでない限り特に制限なく、各種エッチング方法を採用することができる。また、隔壁は、物理的に研磨することでも除去することができる。なお、言うまでもないが、隔壁を除去することなく、隔壁を維持したまま、導電性高分子膜3を匂いセンサ10の物質吸着膜13として用いることができる。
インクジェットノズル23又はインクジェットヘッド21がフードを有する場合、隔壁が形成された導電性高分子膜3へ向けてドーパント溶液を所望のドープ領域1へ向けて噴霧することができる。これにより、所望のドープ領域1以外のドープ領域1へとドーパント溶液が飛散することをより効果的に抑制することができる。なお、フードと隔壁とは、接触するように構成されていてもよいし、接触しないように構成されていてもよいが、フードと隔壁とが接触しないように構成されていることが好ましい。
<匂いセンサ10>
図4(a)は、実施形態1における匂いセンサ10の1例を模式的に示す平面図である。図4(b)は、実施形態1における匂いセンサ10の1例を模式的に示す断面図であり、図4(a)におけるA-A’断面を模式的に示す断面図である。匂いセンサ10は、センサ基板17と、センサ基板17上に配設された導電性高分子膜3と、を有する。導電性高分子膜3内の一部領域である複数のドープ領域1は、ドーパントによってドープされており、匂い物質を吸着する物質吸着膜13として機能する。物質吸着膜13への匂い物質の吸着状態を検出する検出器15は、センサ基板17内に複数組み込ませておくことができる。
図4(b)に示すように、複数の検出器15は、センサ基板17内の大部分において均等に配列されていてもよい。そして、1つのドープ領域1に対応する部分のセンサ基板17に、複数の検出器15が配置されていてもよい。すなわち、複数の検出器15は、導電性高分子膜3の電位変化を検出することができるよう構成されていてもよい。これにより、導電性高分子膜3上の各ドープ領域1に匂い物質が吸着した場合に、各ドープ領域1に対応する検出器15が各ドープ領域1における電位変化を検出することができるよう構成することができる。
ドープ領域1は、導電性高分子膜3内に複数配設されており、図4(a)に示すように整列されている。このとき、隣り合うドープ領域1どうしが接触していないか、又は絶縁されている。なお、ドープ領域1は、導電性高分子膜3上で、必ずしも整列されている必要はなく、ランダムに配設されていたり、一定の規則性を有して配列されていたりしてもよい。導電性高分子膜3上のドープ領域1の数は特に制限されない。図4(a)に示すように7個であってもよいし、例えば、7行5列の35個であってもよい。また、ドープ領域1は、導電性高分子膜3上に10行10列で100個形成されていてもよく、12行8列で96個形成されていてもよく、また、導電性高分子膜3の全面にわたって多数形成されていてもよい。
センサ基板17上に配設される複数のドープ領域1は、それぞれの物質吸着膜13としての性状が互いに異なっている。具体的には、複数のドープ領域1のすべてがそれぞれ異なる組成のドーパントでドーピングされており、同一の性状のドープ領域1が存在しないことが好ましい。ここで、物質吸着膜13としての性状とは、匂い物質の物質吸着膜13への吸着特性ということもできる。すなわち、同じ匂い物質(又はその集合体)であっても、異なる性状を有する物質吸着膜13には、異なる吸着特性を示すことになる。図4及び図5においては、便宜上、ドープ領域1をすべて同様に示しているが、実際にはその性状が互いに異なっている。なお、各ドープ領域1の物質吸着膜13としての吸着特性は、必ずしもすべて異なっている必要はなく、中には、同一の吸着特性を有するドープ領域1が設けられていてもよい。各ドープ領域1においては、ドーパントの種類、含有量等を変化させることにより、物質吸着膜13の疎水・親水性能を変化させることができる。
検出器15は、導電性高分子膜3の表面に吸着した匂い物質による、導電性高分子膜3の物理、化学、又は電気的特性の変化を測定し、その測定結果を例えば電気信号として出力する信号変換部(トランスデューサ)としての機能を有する。すなわち、検出器15は、匂い物質の物質吸着膜13としての導電性高分子膜3の表面への吸着状態を検出する。検出器15が測定結果として出力する信号としては、電気信号、発光、電気抵抗の変化、振動周波数の変化等の物理情報が挙げられる。
検出器15としては、導電性高分子膜3の物理、化学、又は電気的特性の変化を測定するセンサであれば特に制限されず、種々のセンサを適宜用いることができる。検出器15として、具体的には、水晶振動子センサ(QCM)、表面弾性波センサ、電界効果トランジスタ(FET)センサ、電荷結合素子センサ、MOS電界効果トランジスタセンサ、金属酸化物半導体センサ、有機導電性ポリマーセンサ、電気化学的センサ等を挙げることができる。検出器15は、センサ基板17に組み込まれていてもよい。図4(b)においては、検出器15がMOS電界効果トランジスタセンサで構成され、センサ基板17に組み込まれている場合を示している。
なお、検出器15として水晶振動子センサを用いる場合には、図示しないが、励振電極として、水晶振動子の両面に電極を設けてもよいし、高いQ値を検出するべく片面に分離電極を設けてもよい。また、励振電極は、水晶振動子のセンサ基板17側に、センサ基板17を挟んで設けられていてもよい。励振電極は、任意の導電性材料で形成することができる。励振電極の材料として、具体的には、金、銀、白金、クロム、チタン、アルミニウム、ニッケル、ニッケル系合金、シリコン、カーボン、カーボンナノチューブ等の無機材料、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等の有機材料を挙げることができる。
センサ基板17としては、シリコン基板、水晶結晶からなる基板、プリント配線基板、セラミック基板、樹脂基板等を用いることができる。また、基板は、インターポーザ基板等の多層配線基板であり、水晶基板を振動させるための励振電極と実装配線、通電するための電極が任意の位置に配置されている。
上述のような構成とすることにより、匂い物質の吸着特性がそれぞれ異なるドープ領域1を複数有する匂いセンサ10を得ることができる。これにより、ある匂い物質又はその組成を含む空気の匂いを匂いセンサ10で測定した場合、各ドープ領域1は、同様に匂い物質又はその組成が接触することになるが、各ドープ領域1には、匂い物質がそれぞれ異なる態様で吸着される。すなわち、各ドープ領域1において、匂い物質の吸着量が異なる。そのため、各ドープ領域1において検出器15の検出結果が異なることになる。したがって、ある匂い物質又はその組成に対して、匂いセンサ10が備える導電性高分子膜3上のドープ領域1の数だけ、測定結果が生成される。
ある匂い物質又はその組成について測定することにより匂いセンサ10が出力する測定結果は、通常、特定の匂い物質や匂い物質の組成に対して特異的(ユニーク)である。そのため、匂いセンサ10によって匂いを測定することにより、匂いを、匂い物質単独で、又は匂い物質の組成(混合物)として識別することが可能である。
<匂い測定装置50>
次に、匂いセンサ10を備える匂い測定装置50について説明する。図5は、匂い測定装置50の内部構成の説明図である。匂い測定装置50は、匂いセンサ10と、匂いセンサ10に接続された演算処理装置51と、演算処理装置51に接続された記憶装置53と、を有する。匂いセンサ10によって測定された測定結果は、演算処理装置51において処理され、匂いデータとして記憶装置53に記憶させることができる。匂い測定は、記憶装置53に記憶されたプログラムP1を演算処理装置51に実行させることにより、匂い測定装置を匂い測定手段として機能させることができる。なお、匂いデータの取得は、演算処理装置51による実行によらずとも、その他の構成によって実行されてもよい。実施形態1において、演算処理装置51は、例えば、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ(MPU)等であり、記憶装置53は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SDD)、メモリ(RAM)等である。
なお、本発明において、「匂い」とは、ヒト、又はヒトを含む生物が、嗅覚情報として取得することができるものであり、分子単体、若しくは異なる分子からなる分子群がそれぞれの濃度を持って集合したものを含む概念とする。
実施形態1において、上述の匂いは匂い物質によって構成される。匂い物質は分子単体や、若しくは異なる分子からなる分子群等の各種匂い成分がそれぞれの濃度を持って集合したものである。ただし、匂い物質は、広義において、後述する匂いセンサ10の物質吸着膜に吸着可能な物質を広く意味する場合があるものとする。すなわち、「匂い」には原因となる匂い物質が複数含まれることが多く、また、匂い物質として認知されていない物質又は未知の匂い物質も存在し得るため、一般的に匂いの原因物質とされていない物質も含まれ得るものとする。
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、本発明は以下の趣旨を含むものとする。
(趣旨1)ドープ領域を有する導電性高分子膜の作製方法であって、基板上に導電性高分子材料を塗布して導電性高分子膜を形成する製膜工程と、前記導電性高分子膜の匂い物質への吸着特性を変化させるドーパントを所定の組成で含有するドーパント溶液を、前記ドープ領域の表面上に噴霧するドーピング工程と、を含む、導電性高分子膜の作製方法を趣旨とする。
これによれば、導電性高分子膜上の所定領域にドーパント溶液を噴霧することにより、導電性高分子膜上の当該所定領域にドーパントによってドープされたドープ領域が形成された導電性高分子膜の作製方法を提供することができる。
(趣旨2)複数の前記ドープ領域における導電性高分子膜の表面上に、それぞれ前記組成が異なるドーパント溶液を噴霧する、導電性高分子膜の作製方法であってもよい。
(趣旨3)前記ドーパント溶液を、インクジェットノズルを用いて前記ドープ領域へ向けて噴霧する、導電性高分子膜の作製方法であってもよい。
(主旨4)前記ドーピング工程の前に、前記複数のドープ領域のそれぞれを隔てる隔壁を形成する隔壁形成工程を更に含む、導電性高分子膜の作製方法であってもよい。
1:ドープ領域 2:非ドープ領域
3:導電性高分子膜 7:基板
9:隔壁 10:匂いセンサ
13:物質吸着膜 15:検出器
17:センサ基板 21:インクジェットヘッド
23:インクジェットノズル 50:匂い測定装置
51:演算処理装置 53:記憶装置

Claims (1)

  1. ドープ領域を有する導電性高分子膜の作製方法であって、
    基板上に導電性高分子材料を塗布して導電性高分子膜を形成する製膜工程と、
    前記導電性高分子膜の匂い物質への吸着特性を変化させるドーパントを所定の組成で含有するドーパント溶液を、前記ドープ領域の表面上に噴霧するドーピング工程と、
    を含む、導電性高分子膜の作製方法であって、
    前記ドーパントが、無機イオン、有機酸イオン、又は、高分子酸アニオンである、導電性高分子膜の作製方法
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