JP7173901B2 - 有機性排水の処理方法及び有機性排水の処理装置 - Google Patents
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Description
汚泥減容化プロセスのうち生物学的処理としては、消化処理、好熱性細菌処理、微生物/酵素処理、嫌気好気生物処理、自己酸化処理、食物連鎖処理などがあり、処理槽内の滞留時間や酸素有無を主なパラメータとして積極的に余剰汚泥の発生量の抑制や嫌気的分解・好気的分解を図っている。生物学的処理では、消化処理の場合には大きな消化槽を使用するために敷地面積が必要となること、微生物/酵素処理の場合には担体を使用するために初期コストが高いこと、食物連鎖処理の場合には高等生物相の安定的な維持が困難となること、などの問題がある。嫌気好気生物処理は、既設槽の改良による対応が可能で、主に下等生物からなる菌叢の維持を行うため、上述の問題を解決できる。
嫌気好気生物処理の一つであるOSAプロセス(Oxic Anaearobic Process)は、汚泥を好気性雰囲気下で生物処理した後に得られる余剰汚泥を嫌気性雰囲気下で滞留させ、その後当該余剰汚泥を生物処理に再度供する方法である(特許文献1及び2)。OSAプロセスにおいては、細胞外高分子化合物(EPS)の高次構造を構成する補因子の一つであるFe(III)がFe(II)に還元されることでEPSの崩壊が起こることが汚泥発生量低減の要因の一つであることが報告されている(非特許文献1)。
本発明は、従前のOSAプロセスを実施するために必要であった大きな槽容積や装置及び長い滞留時間を不要とすることができる有機性排水の処理方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明の有機性排水の処理方法及び装置の具体的態様は以下のとおりである。
[1]有機性排水を活性汚泥槽で生物処理した後、汚泥と処理水とに分離し、
当該汚泥の一部を、嫌気槽に導入して、鉄の存在下で微曝気処理して、汚泥を分解し、再基質化させた後、処理後の汚泥を当該活性汚泥槽に返送し、当該再基質化された汚泥を当該活性汚泥槽で再び生物処理することを特徴とする有機性排水の処理方法。
[2]前記活性汚泥槽は、無酸素槽と好気槽とを含み、
前記嫌気槽で微曝気処理した後の汚泥を当該無酸素槽に返送することを特徴とする、上記[1]に記載の有機性排水の処理方法。
[3]前記嫌気槽における微曝気処理は、下記条件:
(1)前記嫌気槽の酸化還元電位が-350mV以上-250mVに低下したときに曝気する、
(2)前記嫌気槽の酸化還元電位が-50mV以上+30mV以下に上昇したときに曝気しない
により制御されることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の有機性排水の処理方法。
[4]前記嫌気槽の鉄濃度が40mg/L以上となるように、鉄を添加することを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか1に記載の有機性排水の処理方法。
[5]有機性排水を生物処理する活性汚泥槽と、
当該活性汚泥槽からの生物処理後の有機性排水を、汚泥と処理水とに分離する固液分離槽と、
当該固液分離槽からの汚泥の一部を、鉄の存在下で微曝気処理する嫌気槽と、
当該固液分離槽から当該嫌気槽へと、汚泥を搬送する汚泥搬送ラインと、
当該嫌気槽からの微曝気処理後の汚泥を、当該活性汚泥槽に返送する汚泥返送ラインと、
を具備する有機性排水の処理装置。
本発明において「微曝気処理」とは、嫌気槽内の汚泥中のヒドロキシラジカル量を制御するために、鉄イオンの還元反応及び自動酸化反応(Fe3+→Fe2+→Fe3+)を促進する酸化還元電位に維持するように曝気のタイミングを制御して行う処理を意味し、好気処理の曝気とは異なる。
本発明によれば、嫌気槽内での再基質化反応が促進されるため、嫌気槽のHRTやSRTを短縮して、必要な槽容量を縮小することができる。
また、本発明によれば、嫌気槽内で再基質化反応が促進された汚泥が活性汚泥槽に返送されて、生物処理に供されるため、活性汚泥槽におけるメタノール等の電子供与体、、pH調整剤及び鉄系凝集剤の添加量を削減することができる。例えば、硝化脱窒プロセスにおける活性汚泥槽である脱窒槽に返送された場合は、メタノール等の電子供与体の添加量を削減することができ、返送された汚泥に含まれる鉄相当量の鉄系凝集剤及びその添加において要するpH調整剤の添加量を削減することができる。
図1は、本発明の有機性排水処理の概略説明図である。本発明の有機性排水の処理方法は、有機性排水を活性汚泥槽10で生物処理した後、最終沈殿槽20で汚泥と処理水とに分離し、汚泥を、汚泥搬送ライン22を介して嫌気槽30に導入して、鉄の存在下で微曝気処理して、汚泥を分解し、再基質化させた後、処理後の汚泥を、汚泥返送ライン33を介して活性汚泥槽10に返送し、再基質化された汚泥を活性汚泥槽10で再び生物処理することを特徴とする。図1の下方に、嫌気槽30内部での細胞外高分子と、鉄及び空気の反応を示す。好気性雰囲気下で生物処理された汚泥は、細胞外高分子とFe(III)を含む。Fe(III)は嫌気性雰囲気下でFe(II)へ還元されることによって細胞外高分子の高次構造を崩壊させる。ここに、適当量の空気を供給すると、Fe(II)がFe(III)に酸化され、ヒドロキシラジカルが生成する。ヒドロキシラジカルは、細胞外高分子の低分子化反応を進行させ、再基質化反応を促進する。再基質化された汚泥を活性汚泥槽に返送させ、無益回路(futile cycle)を促進させる。
図2は、有機性排水がし尿・浄化槽汚泥を含む場合の本発明の処理装置の概略説明図である。し尿・浄化槽汚泥を含む有機性排水は、受入槽1から前処理・脱水設備2を経て貯留槽3に貯留される。有機性排水は、貯留槽3から活性汚泥槽10に送られる。活性汚泥槽10は、無酸素槽11、好気槽12及び凝集槽13を含む。有機性排水は、無酸素槽11にて脱窒処理され、好気槽12においてpH調整剤が添加され、好気性雰囲気下で生物処理される。生物処理後の汚泥には、凝集槽13にて鉄系凝集剤が添加されて、凝集フロックが形成され、沈殿槽20にて上澄みの処理水と沈殿する汚泥とに分離される。処理水は、活性炭処理塔4で処理され、放流槽5を経て公共の水域に放流される。沈殿槽20からの汚泥は、沈殿槽20底部からライン21を介して抜き出され、汚泥の一部は汚泥搬送ライン22を介して嫌気槽30に送られ、汚泥の残部は汚泥貯留槽6に送られる。嫌気槽30には、第一鉄供給手段31、空気供給手段32及びORP計が接続されており、嫌気槽30内の汚泥は、鉄の存在下で微曝気処理され、図1に示すFe(III)→Fe(II)→Fe(III)の反応と、Fe(II)→Fe(III)の反応の際に生成するヒドロキシラジカルにより、細胞外高分子の低分子化反応が進行し、再基質化反応が促進される。再基質化された汚泥は、汚泥返送ライン33を介して活性汚泥槽10の無酸素槽11に返送され、再び生物処理に供される。
図3は、嫌気槽30が汚泥貯留槽を兼用し、汚泥貯留槽を含まず、嫌気槽30が無酸素ゾーン34と、嫌気性処理が進行する嫌気ゾーン35と、を含む点を除いて、図2に示す装置と同じ構成である。同じ装置には同じ符号を付して説明を割愛する。
嫌気槽30の無酸素ゾーン34には鉄を供給する鉄供給手段31が設けられており、嫌気ゾーン35には空気を供給する空気供給手段32が設けられており、無酸素ゾーン34から嫌気ゾーン35に汚泥の一部を供給して、当該汚泥の一部を微曝気処理に供するように構成されている。例えば、無酸素ゾーン34と嫌気ゾーン35を上下に配置し、沈殿槽20底部から汚泥搬送ライン22を介して抜き出された汚泥が無酸素ゾーン34に送られ、嫌気ゾーン35底部に汚泥返送ライン33を接続させて、無酸素ゾーン34から嫌気ゾーン35へと汚泥が自然に沈降する構成とすることができる。汚泥返送ライン33は、嫌気ゾーン35と活性汚泥槽10との間に設けられており、嫌気ゾーン35からの汚泥を活性汚泥槽10へ返送する。
図3において、生物処理後に固液分離された汚泥は、汚泥搬送ライン22を介して、嫌気槽30の無酸素ゾーン34に送られる。汚泥の一部は無酸素ゾーン34から嫌気ゾーン35に送られ、図1に示す微曝気嫌気処理に供された後、汚泥返送ライン33を介して活性汚泥槽10の無酸素槽11に返送され、再び生物処理に供される。
図3に示す装置によれば、限られた槽容量でも十分な汚泥滞留時間(SRT)を確保することができる。余剰汚泥(Qm3/day)を汚泥貯留槽(Vm3)に貯留し、固液界面下部より脱水用汚泥(qm3/day)を引き抜き、残った汚泥(Q-qm3/day)を汚泥貯留槽の底部から順次引き抜くことになるため、汚泥分解のために与えられるSRTはV/QからV/(Q-q)に延長され得る。
図1~3に示す処理装置及び処理フローにおいて、嫌気槽30における空気の供給量は、嫌気性雰囲気を維持できる微曝気を可能とする量であり、下記条件(1)及び(2)により制御されることが好ましい。
(1)嫌気槽の酸化還元電位(ORP)が-350mV以上-250mVに低下したときに曝気する
(2)前記嫌気槽の酸化還元電位(ORP)が-50mV以上+30mV以下に上昇したときに曝気しない
空気供給量は、嫌気槽の容量及び嫌気槽内の汚泥量などにより変動するが、たとえば容量1Lの嫌気槽に0.5Lの汚泥が貯留されている場合には、曝気時には3.6L/min(=約7.2vvm)の流量で10~15分間供給することができる。曝気の有無を嫌気槽のORPにより制御して、嫌気槽を生化学的に還元状態として曝気しない状態でORPを-350mV~-250mVまで低下させることにより、嫌気槽中に存在する鉄イオンをFe3+→Fe2+に還元させることができる。嫌気槽中のORPが-350mV~-250mVまで低下したときに曝気することにより、Fe2+→Fe3+の反応が生じる。
また、嫌気槽30における鉄の濃度は、40mg/L as Fe以上が好ましく、80mg/Las Fe以上がより好ましい。添加する鉄としては、水溶性の鉄化合物であれば特に限定されないが、たとえばポリ塩化鉄、ポリ硫酸鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸鉄などを好適に挙げることができる。
図2及び3において、固液分離槽として沈殿槽20を用いているが、固液分離槽はこれに限定されず、たとえばUF膜などの膜分離槽であってもよい。
し尿処理場から入手した活性汚泥(汚泥性状は表1に記載のとおり)500mLを曝気槽(1L)に入れ、ORPが-250mV付近になるまで室温で無通気状態に放置した。次に、終濃度が1mMとなるようにテレフタル酸を添加し、ORPが-50mV付近になるまで3.6L/min(約7vvm)の流量で空気を約10分間供給し、ORPを測定した。12時間毎に10分間の3.6L/min(約7vvm)の流量の空気供給を繰り返し、各回での空気供給量(通気時間)によるORPの変化を図4に示す。図4において、通気時間10分は、空気供給量が総量で36Lであることを意味し、「1回目」は最初の12時間後の空気供給時、「2回目」は24時間後の空気供給時、「8回目」は96時間後の空気供給時を意味する。
対照系は、空気を供給しなかった以外は同様の条件として、励起蛍光スペクトルを計測した。
鉄濃度で44mg/Lの不溶性鉄塩を含む下水処理場活性汚泥(MLSS;1350mg/L)にFeCl3水溶液を添加し、鉄濃度を88mg/L、118mg/L、227mg/Lとした汚泥をそれぞれ1L調製した。これらを室温にて数日間放置することで還元雰囲気とした後、各汚泥を0.5Lずつに分け、通気しない対照系と、12時間毎に5分間の微曝気を施す試験系として、試験を開始した。両系には、ヒドロキシラジカルを検出する化学プローブとして1mMのテレフタル酸を添加した。各系の各汚泥を48時間後、96時間後にサンプリングし、孔径1μmのフィルターでろ過したろ液について励起蛍光スペクトルを計測した。計測では、特に2-ヒドロキシテレフタル酸の励起蛍光スペクトル(Ex;320nm、Em;430nm)の増加を追従した。2-ヒドロキシテレフタル酸の発生量を図12(対照系)及び図13(試験系)に示す。
図14に示す試験装置を用いて、し尿処理場から入手した硝化脱窒汚泥(MLSS;10600mg/L、鉄濃度4000mg/L)を試験系及び対照系の各活性汚泥槽(実効体積2.2L)に1100mLずつ投入した。次に、表2に示す組成の人工排水をHRT約1日で連続的に通液し、Na2CO3でpHを7.5に調整して、通気量約2L/min(約1vvm)、温度26±1℃に維持して運転した。活性汚泥槽内の汚泥を定期的に引き抜き、同時に引き抜かれる鉄に相当する量のポリ鉄を半回分的に添加した。
対照系及び試験系の活性汚泥槽から引き抜いた250mLの汚泥の内、100mLは各系の活性汚泥槽に返送し、50mLを各系の嫌気槽に貯留し、残りの50mLを各系の余剰汚泥として排出した。(SRT約44日)。
試験系の嫌気槽はタイマーを用いて12時間毎に10分間の空気供給3.6L/min(=約7.2vvm)を行った。
図17に示す試験装置を用いて、し尿処理場から入手した硝化脱窒汚泥1100mLを試験系及び対照系の各活性汚泥槽(実効体積2.2L)に投入した。次に、表2に示す組成の人工排水をHRT約1日で連続的に通液し、Na2CO3でpHを7.5に調整して、通気量約2L/min(約1vvm)、温度26±1℃に維持して運転した。活性汚泥槽内の汚泥を定期的に引き抜き、同時に引き抜かれる鉄に相当する量のポリ鉄を半回分的に添加した。
試験系の活性汚泥槽から引き抜いた250mLの汚泥の内、100mLは活性汚泥槽に返送し、75~100mLを嫌気槽に貯留し、残りの50~75mLを余剰汚泥として排出した。嫌気槽の温度は26±1℃に維持し、ORPは100mV以下となるように手動で制御し、SRT(ここではHRTとほぼ等しい)は約10日~20日の可変運転を行った。試験系の総SRTは26日~30日となり、対照系の約1.7~2倍となった。
試験系及び対照系からの総汚泥発生量を図19に示す。試験系の総汚泥発生量は、対照系の4~6割程度に削減されたことがわかる。
Claims (5)
- 有機性排水を活性汚泥槽で生物処理した後、汚泥と処理水とに分離し、
分離した汚泥の一部を、嫌気槽に導入して、鉄の存在下で微曝気処理して、汚泥を分解し、再基質化させた後、処理後の汚泥を当該活性汚泥槽に返送し、当該再基質化された汚泥を当該活性汚泥槽で再び生物処理し、
分離した汚泥の一部を、微曝気処理せずに余剰汚泥として汚泥処理する、
ことを特徴とする有機性排水の処理方法。 - 前記活性汚泥槽は、無酸素槽と好気槽とを含み、
前記嫌気槽で微曝気処理した後の汚泥を当該無酸素槽に返送することを特徴とする、請求項1に記載の有機性排水の処理方法。 - 前記嫌気槽における微曝気処理は、下記条件:
(1)前記嫌気槽の酸化還元電位が-350mV以上-250mVに低下したときに曝気する、
(2)前記嫌気槽の酸化還元電位が-50mV以上+30mV以下に上昇したときに曝気しない
により制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機性排水の処理方法。 - 前記嫌気槽の鉄濃度が40mg/L以上となるように、鉄を添加することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1に記載の有機性排水の処理方法。
- 請求項1~4のいずれか1に記載の有機性排水の処理方法を実施する処理装置であって、
有機性排水を生物処理する活性汚泥槽と、
当該活性汚泥槽からの生物処理後の有機性排水を、汚泥と処理水とに分離する固液分離槽と、
当該固液分離槽からの汚泥の一部を、鉄の存在下で微曝気処理する嫌気槽と、
当該固液分離槽から当該嫌気槽へと、汚泥を搬送する汚泥搬送ラインと、
当該嫌気槽からの微曝気処理後の汚泥を、当該活性汚泥槽に返送する汚泥返送ラインと、
当該固液分離槽からの汚泥の一部を余剰汚泥として貯留する汚泥貯留槽と、
を具備する有機性排水の処理装置。
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