以下、本発明の実施形態について説明する。実施形態に係る間伐木の選定方法は、間伐対象区域に存在する多数の樹木の個々の樹木に関する情報が記録されている森林資源情報に基づいて、当該間伐対象区域に存在する多数の樹木のうち間伐すべき樹木を選定する間伐木の選定方法である。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る間伐木の選定方法における間伐木の選定処理を説明するために示すフローチャートである。
実施形態1に係る間伐木の選定方法について図1を参照して説明する。実施形態1に係る間伐木の選定方法は、図1に示すように、コンピューターなどの情報処理装置にデータベース化した状態で保存されている森林資源情報から間伐対象区域内の森林資源情報を取得する森林資源情報取得処理(ステップS10)と、間伐対象区域内における間伐率(Rとする。)を設定する間伐率(R)設定処理(ステップS20)と、間伐対象区域に存在する多数の樹木についてどのような間伐条件(詳細は後述する。)で間伐を行うかを設定する間伐条件設定処理(ステップS30)と、間伐対象区域に存在する樹木の個々の樹木間の距離を算定する樹木間距離算定処理(ステップS40)と、樹木間距離算定処理で算定された距離のうち、最も近接している2本の樹木を最短距離樹木として選択する最短距離樹木選択処理(ステップ50)と、間伐条件設定処理(ステップS30)によって設定されている間伐条件に基づいて、最短距離樹木選択処理(ステップS50)によって選択されている2本の樹木のうちの1本の樹木を間伐木として選定する間伐木選定処理(ステップS60)と、を有している。
上述の各処理のうち、樹木間距離算定処理(ステップS40)から間伐木選定処理(ステップS60)の処理は、間伐率設定処理(ステップS20)において設定されている間伐率(設定間伐率と表記する場合もある。)Rに達するまで順次行う。すなわち、現時点の間伐率をRnとしたとき、当該現時点の間伐率Rnが設定間伐率Rに達するまで行う。
具体的には、図1に示すように、間伐木選択処理(ステップS60)を行った後に、現時点の間伐率Rnが設定間伐率R未満か否か(Rn<Rか否か)を判定する処理(ステップS70)を行い、Rn<Rであれば、現時点の処理回数nに1を加算する処理(n=n+1)を行って(ステップS80)、樹木間距離算定処理(ステップS40)に戻る。一方、現時点の間伐率Rnが設定間伐率Rに達していれば(Rn≧R)、これまでに選定された間伐木について間伐木集計処理を行う(ステップS90)。なお、実施形態1に係る間伐木の選定方法における間伐率は、間伐対象区域に存在する樹木の本数に基づく間伐率である。
また、間伐条件設定処理(ステップS30)は、当該間伐対象区域においてどのような間伐を実施するかを示すものであり、「上層間伐」、「下層間伐」、「全層間伐」の中からいずれかを選択する。
ここで、「上層間伐」は、森林資源情報データベースに記録されている間伐対象区域内の各樹木の大小に基づいて、相対的に大きい樹木を間伐する間伐方法である。また、「下層間伐」は、森林資源情報データベースに記録されている間伐対象区域内の各樹木の大小に基づいて、相対的に小さい樹木を間伐する間伐方法であり、「全層間伐」は、間伐対象区域における森林資源情報に記載されている間伐対象区域内のすべての樹木から所定の規則(後述する。)に基づいて満遍なく間伐する間伐方法である。なお、ここでは、樹木の大小は、胸高直径(DBH)の大小で表わされるものとする。すなわち、大きい樹木というのは、胸高直径(DBH)の大きい(幹が太い)樹木であり、小さい樹木というのは、胸高直径(DBH)の小さい(幹が細い)樹木を意味している。
なお、間伐率設定処理(ステップS20)及び間伐条件設定処理(ステップS30)を実施する順番は、図1においては、間伐率設定処理(ステップS20)を行った後に、間伐条件設定処理(ステップS30)を行うといった順番となっているが逆でもよい。すなわち、間伐件設定処理を行った後に、間伐率設定処理を行うようにしてもよい。また、間伐率設定処理(ステップS20)における間伐率Rの設定及び間伐条件設定処理(ステップS30)における間伐条件の設定は、それぞれ予め設定しておくことができる。例えば、間伐率Rとしては30%を設定しておき、間伐条件としては「上層間伐」、「下層間伐」、「全層間伐」のいずれかを設定しておけば、図1に示すフローチャートにおいて、間伐率設定処理(ステップS20)及び間伐条件設定処理(ステップS30)は省略できる。
続いて、図1に示すフローチャートの各処理について順を追って説明する。ここでは、初期値として、設定間伐率Rとして30(%)、処理回数n=1が設定されているとする。また、第1回目(n=1)の処理を開始する前の段階においては、現時点の間伐率RnはRn=0である。なお、現時点における間伐率Rnは、Rn=(現時点の選定間伐木数/間伐対象区域に存在する樹木の本数)×100で表わされる。
図1に示すフローチャートにおいて、森林資源情報取得処理(ステップS10)は、既に作成されている森林資源情報を森林資源情報データベースから取得する処理であり、ここで用いる森林資源情報は公知の森林資源情報作成技術によって作成することができる。
図2は、間伐対象区域における森林資源情報の一例を示す図である。なお、図2に示す森林資源情報は、例えば、下記公知文献に示されている森林資源情報算定方法及び森林資源算定装置に基づいて作成することができる。当該公知文献は、本発明の出願人が平成28年11月22日に出願したものである。
公知文献:「森林資源情報算定方法及び森林資源算定装置」、特願2016-227207(特開2018-84472号公報)。
実施形態1に係る間伐木の選定方法を説明するために設定した間伐対象区域(実施形態1に係る間伐対象区域と表記する場合もある。)は、上記公知文献に記載されている「森林資源情報算定方法及び森林資源算定装置」において森林資源算定のために設定されている森林域とは異なるため、図2に示す森林資源情報は、特願2016-227207(特開2018-84472号公報)に記載されている森林資源情報算定方法及び森林資源算定装置において作成された森林資源情報とは個々の樹木に関する情報が異なったものとなっている。
実施形態1に係る間伐対象区域において作成された森林資源情報には、図2に示すように、個々の樹木の番号(ナンバー)、各樹木(各樹木の樹冠の中心位置)の位置情報(x座標及びy座標)、樹種(カラマツ)、樹高(m)、胸高直径(cm)、材積(m3)が個々の樹木に対応して示されている。なお、上記公知文献には、樹種については記載されていないが、樹種の分類については、前述の「先行技術文献」として用いた特許文献1(特許4900356号公報)に記載されている。
また、図2においては、間伐対象区域に存在する樹木の一部のみが示されているが、実際には、百本単位、千本単位の樹木が存在する場合もあり、又はそれ以上の樹木が存在する場合もある。なお、「胸高直径」は、前述したように、樹木の幹の太さを表すものであり、「DBH」と表記する場合もある。
図2に示すような間伐対象区域における森林資源情報を森林域資源情報データベースから取得して(ステップS10)、間伐率設定処理(ステップS20)以降の処理を行う。間伐率R設定処理(ステップS20)においては、間伐率R(設定間伐率R)がR=30%と設定されたとする。
続いて、樹木間距離算定処理(ステップS40)を行う。樹木間距離算定処理は、間伐対象区域に存在するすべての樹木において樹木間距離を算定し、最も近接している2本の樹木を最短距離樹木として選択する処理である。例えば、間伐対処区域に存在する樹木が100本であったとすると、当該100本の樹木間でそれぞれ樹木間距離を算定する。このときの樹木間距離は、例えば、ピタゴラスの定理を用いて行うことができる。すなわち、図1における破線枠S40’内に示すように、樹木間距離Dn(cm)は、
Dn2=((Xn+1)-Xn)2+((Yn+1)-Yn)2 ・・・(1)
から求めることができる。
なお、(1)式において、Xnは、処理回数が第n回目(例えば、n=1とする。)のときの樹木間距離算定対象となる2本のうちの一方の樹木のx座標、Xn+1は当該処理回数(n=1)のときの樹木間距離算定対象となる2本のうちの他方の樹木のx座標、Ynは、当該処理回数(n=1)のときの樹木間距離算定対象となる2本のうちの一方の樹木のy座標、Yn+1は当該処理回数(n=1)のときの樹木間距離算定対象となる2本のうちの他方の樹木のy座標である。
ここで、間伐対象区域における樹木の総数を例えば100本とした場合、第1回目の処理(n=1)においては、100本の樹木それぞれについて(1)式の計算を行って、Dnが最小(最短距離)の2本の樹木を選択する(ステップS50)。そして、当該処理回数(n=1)において選択された最短距離の2本の樹木のうちの1本の樹木を、間伐条件設定処理(ステップS30)において設定されている間伐条件に基づいて間伐木として選定する(ステップS60)。
間伐木選定処理(ステップS60)は、ステップS30において設定されている間伐条件に基づいて行われる。すなわち、図1における破線枠S60’内に示すように、間伐条件設定処理(ステップS30)において「上層間伐」が設定されている場合には、処理A1を行う。処理A1は、最短距離の2本の樹木のうち、胸高直径(DBH)が大きい方の樹木(DBHmax)を間伐木として選定する。また、「下層間伐」が設定されている場合には処理A2を行う。処理A2は、最短距離の2本の樹木のうち、胸高直径(DBH)が小さい方の樹木(DBHmin)を間伐木として選定する。また、「全層間伐」が設定されている場合には処理A3を行う。
処理A3は、最短距離樹木として選択された2本の樹木のうちの1本を所定の規則に基づいて選択する。ここで、「所定の規則」は、現時点の処理回数nを表す数値が奇数か偶数かによって、最短距離樹木選択処理(ステップS50)によって選択されている2本の樹木のうちの胸高直径(DBH)が大きい方の樹木(DBHmax)の樹木又は胸高直径(DBH)が小さい方の樹木(DBHmin)のいずれかを間伐木として選択することである。
具体的には、現時点の処理回数nが偶数である場合には、最短距離樹木として選択された2本の樹木のうち胸高直径が大きい方の樹木(DBHmax)を間伐木として選定し、現時点の処理回数nが奇数であれば、胸高直径が小さい方の樹木(DBHmin)を間伐木として選定する。このような処理は、モジュロ演算によって得られた余りに基づいて行うことができる。すなわち、n÷2を行ったときの余りが「0」であれば偶数、n÷2を行ったときの余りが「1」であれば奇数とする。なお、第1回(n=1)の場合は、奇数として設定しておけばよい。
間伐木選定処理(ステップS40)により、現時点の処理回数(例えば、n=1)において、1本の間伐木が選定されたら、当該処理回数(n=1)における間伐率RnがステップS20において設定されている間伐率R(設定間伐率R)未満であるか否か(Rn<Rであるか否か)を判定し(ステップS70)、Rn<Rであれば(設定間伐率R未満であれば)、n=n+1(ステップS80)を行って、樹木間距離算定処理(ステップS40)に戻って、当該樹木間距離算定処理(ステップS40)以降の処理(第2回目以降の処理)を行う。
第2回目の処理(n=2)においては、残りの99本の樹木それぞれについて(1)式により樹木間距離算定処理(ステップS40)を行い、99本の樹木のうちDnが最小の2本の樹木(最短距離樹木)を選択する処理(ステップS50)を行う。そして、当該処理回数(n=2)において最短距離樹木とされた2本の樹木のうちの1本の樹木を間伐条件設定処理(ステップS30)において設定されている間伐条件に基づいて間伐木として選定する。
このような処理をステップS20において設定した間伐率R(設定間伐率R)に達するまで行う。一方、Rn<Rであるか否かの判定処理(ステップS70)において、Rn<Rでなければ(設定間伐率R(R=30%)に達していれば)、間伐木集計処理を行う(ステップS90)。なお、間伐木集計処理を行う際には、現時点の間伐率Rnが設定間伐率Rに達した直前の樹木までを、間伐木として選定された樹木として間伐木集計を行う。
ところで、ステップS70における「Rn<R」の判定処理は、例えば、間伐対象区域に存在する樹木の総数が300本である場合には、当該処理回数nがn=1(第1回)のときは、選定された間伐木の本数は1本であるため、現時点(第1回)における間伐率Rnは、Rn=(1÷300)×100≒0.33%であり、また、当該処理回数nがn=2のときは、選定された間伐木の本数は2本であるため、現時点(第2回)における間伐率Rnは、Rn=(2÷300)×100≒0.67%である。
また、当該処理回数nがn=90のときは、選定された間伐木の本数は90本であるため、現時点(第90回)における間伐率Rnは、Rn=(90÷300)×100=30.0%である。このため、当該処理回数nがn=90となると、R(n)<Rを満たさなくなる。従って、樹木総数が例えば300本の場合においては、当該処理回数nがn=89までは、Rn<Rを満たすこととなり、ステップS40に処理が戻る。一方、当該処理回数nがn=90となると、現時点の間伐率Rnは30%となり、Rn<Rを満たさなくなるため、間伐木集計処理(ステップS90))に移る。
以上、図1に示すフローチャートを参照して実施形態1に係る間伐木選定方法の全体的な処理を概略的に説明したが、続いて、実施形態1に係る間伐木選定方法について、図1のフローチャート及び図2~図12を参照して具体的に説明する。
図3は、ディスプレイ上に表示された間伐対象区域を含む森林域画像を示す図である。図3(a)は間伐対象区域を含む森林域を上空からドローンなどによって撮影して得られた撮像画像をディスプレイ上に表示した画像(森林域画像)であり、図3(b)は図3(a)に示す森林域の画像から間伐対象区域及びその周辺の画像を拡大してディスプレイ上に表示した画像である。
図3(a)及び図3(b)において、黒枠線L1で囲った区域が間伐対象区域(定性間伐区ともいう。)であるとする。図3(b)においては、1つ1つの樹木に対応する樹冠が樹木ごとの樹冠として判別することができる。なお、図3はモノクロ画像であるが、図3の元となるカラー画像上では、各樹木の樹冠をさらに容易に識別することができる。
ここで、図3(b)において、個々の樹冠に示されている白抜き丸印(なお、正確には丸印ではないが丸印と表記する。)は、当該白抜き丸印の大きさが胸高直径(DBH)の大きさ(cm)を表している。ここでは、DBH=30.0cm以下、DBH=30.1cm~35.0cm、DBH=35.1cm~40.0cm、DBH=40.1cm~45.0cm、DBH=45.1cm以上の5段階に分けている。なお、各樹木の胸高直径(DBH)は、図2に示した森林資源情報を参照することによって取得することができる。
続いて、実施形態1に係る間伐木選定方法における具体的な間伐木選定方法について説明する。ここで、具体的な間伐木選定方法として、「上層間伐」による間伐木選定処理、「下層間伐」による間伐木選定処理、「全層間伐」による間伐木選定処理を例示して説明する。なお、これらの3つの間伐木選定処理においては、いずれも、間伐率設定処理(ステップS20)においては、間伐率Rとして30%が設定されているとする。
[上層間伐による間伐木選定処理]
この場合、間伐条件設定処理(ステップS30)においては、「上層間伐」が設定されている。間伐条件として「上層間伐」が設定された後に、樹木間距離算定処理を行う(ステップS40)。この樹木間距離算定処理においては、処理回数が第1回目(n=1)の処理として、間伐対象区域に存在する樹木すべてにおいて、前述の(1)式によって、それぞれ2本の樹木間の樹木間距離Dnを計算し(ステップS40)、Dnが最小の2本の樹木(最短距離樹木)を選択する(ステップS60)。
そして、当該第1回目(n=1)の処理において最短距離樹木とされた2本の樹木から1本の樹木を所定の間伐条件(この場合、「上層間伐」)に基づいて1本の樹木を間伐木として選定する(ステップS60)。具体的には、間伐方法として、「上層間伐」が設定されている場合には、図1に示すフローチャートのステップS60における破線枠S60’に示すように、処理A1が行われる。すなわち、最短距離として選択された2本の樹木のうち、DBHが大きい方(DBHmax)の樹木を間伐木として選定する。
ところで、樹木間距離算定処理(ステップS40)は、例えば、樹木総数が300本であったとすると、第1回目(n=1)においては、300本の樹木の個々の樹木が(1)式を自分の樹木以外の299本の樹木に対して行うこととなるため、第1回目(n=1)においては、(1)式を300×(300-1)=89700回計算することとなる。なお、300×(300-1)=89700は、2本の樹木の組み合わせにおいて相互に距離計算がなされることとなるため、2本の樹木の組み合わせにおいて同じ距離計算が重複して行われることとなる。ここで、重複する距離計算を省くとしても、初回(n=1)における(1)式の距離計算回数は、(300×(300-1))÷2=44850回となる。
なお、間伐対象区域に存在する樹木は、実際には、数千本以上にも達する場合もあるため、樹木間距離算定処理(ステップS40)は、ディープランニング(深層学習)のニューラルネットワークを用いることが好ましい。また、樹木間距離算定処理(ステップS40)と、当該樹木間距離算定処理によって得られた各樹木間距離Dnに基づいて、Dnが最小の2本の樹木(最短距離樹木)を選択する処理(ステップS50)までをディープランニング(深層学習)のニューラルネットワークを用いるようにしてもよい。これにより、間伐対象区域に存在する樹木が、数千本存在したとしても、最短距離の2本の樹木を短時間で、かつ、高精度に選択することができる。
上述の間伐木選定処理(ステップS60)が終わると、この時点(第1回目(n=1)の間伐率Rnが設定間伐率R(この場合、R=30%)に達しているか否か(Rn<R)を判定する(ステップS70)。この時点では、間伐木の選定は1本であるため、この時点における間伐率R(n)は、Rn<Rである。なお、この時点の間伐率Rnというのは、間伐対象区域に存在する樹木の総数が、仮に300本であるとすれば、第1回(n=1)における間伐率Rn(n=1)は、(1÷300)×100≒0.33%となる。
このようにして、第1回目(n=1)の処理において、間伐すべき1本の樹木が選定されたこととなり、かつ、現時点における間伐率が設定間伐率(30%)に達していないため、処理回数nに1を加算する処理(n=n+1)を行い(ステップS80)、ステップS40(樹木間距離算定処理)に戻って、第2回目(n=2)の処理を行う。当該第2回目(n=2)の処理においては、残りの299本の樹木それぞれについて、上述同様に(1)式を行って、299本の樹木の中からDnが最小の2本の樹木(最短距離樹木)を選択する(ステップS50)。
そして、当該第2回目(n=2)の処理において選択されたDnが最小の2本の樹木(最短距離樹木)について間伐木の選定処理(ステップS60)を行う。この場合も、既に、ステップS30において、間伐方法として「上層間伐」が設定されているため、第1回目(n=1)の処理と同様に2本の樹木のうち、DBHの大きい方の樹木を間伐木として選定する。これによって、ここまでに2本の間伐木が選定されたこととなる。
そして、現時点の間伐率Rn、すなわち、第2回目(n=2)の間伐率Rnが設定間伐率R(この場合、R=30%)未満であるか否か(Rn<Rであるか否か)を判定する(ステップS70)。現時点では、間伐木の選定は2本であるため、間伐対象区域に存在する樹木の総数が、仮に300本であるとすれば、第2回(n=2)における間伐率Rn(n=1)は、(2÷300)×100≒0.67%となる。
このようにして、第2回目(n=1)までの処理において、間伐すべき2本の樹木が選定されたこととなり、かつ、現時点における間伐率が設定間伐率(30%)に達していないため、処理回数nに1を加算する処理(n=n+1)を行い、ステップS40(樹木間距離算定処理)に戻って、第3回目(n=3)の処理を行う。当該第3回目(n=3)の処理においては、残りの298本の樹木それぞれについて、上述同様に(1)式の計算を行って、299本の樹木の中からDnが最小の2本の樹木(最短距離樹木)を選択する(ステップS50)。
このように、ステップS20において設定されている間伐率(設定間伐率)Rと、ステップS30において設定されている間伐方法(この場合「上層間伐」)とに基づいて、ステップS40~S70を繰り返し行う。そして、ステップS70において、現時点の間伐率Rnが設定間伐率(R=30%)未満であるか否かの判定(Rn<R)を行った結果、Rn<Rを満たさなくなると、これまでに選定した間伐木に関する資源情報を集計する間伐木集計処理(ステップS90)を行う。
例えば、間伐対象区域に存在する樹木の総数が300本であって、設定間伐率が30%であるとすれば、Rn<Rを満たさなくなる直前の本数(間伐率が30%未満の最大の本数)は、89本であるため、選定された89本の樹木に関する間伐木資源情報が集計される。
図4は、ディスプレイ上に表示された上層間伐による間伐対象区域画像を示す図である。なお、「上層間伐による間伐対象区域画像」というのは、「上層間伐」の間伐条件に基づいて間伐木の選定がなされた後の間伐対象区域画像である。また、図4に示す間伐対象区域画像は図3(b)において示した間伐対象区域と同じ森林域であり、黒枠線L1で囲まれた範囲が間伐対象区域である。
また、図4に示す各樹木に対応する樹冠に示されている丸印は、図3(b)において示した白抜き丸印に対応するものであり、図4においては、「上層間伐」の間伐条件に基づいて選定された間伐木については、丸印が塗りつぶされている。また、図4においては図3(b)と同様に、丸印の大きさがDBHの大きさを表している。また、図4において、白抜き丸印の樹木は、「上層間伐」による間伐条件により間伐木として選定されなかった残存木を表している。
なお、図4はモノクロ画像であるため、選定された間伐木の判別がしにくいが、図4の元となるカラー画像上では、選定された間伐木の丸印は赤色で示されているため、選定された間伐木を容易に判別することができる。なお、図4においては図3(b)と同様に、丸印の大きさがDBHの大きさを表している。
「上層間伐」により間伐においては、最短距離として選定された2本の樹木のうち、胸高直径(DBH)の大きい方の樹木を間伐木として選定しているため、図4に示すように、全体的に、DBHの大きい樹木が間伐木として選定されていることが分かる。
このように「上層間伐」を設定した場合の間伐においては、全体的に、DBHの大きい樹木が間伐木として選定されることとなるため、間伐計画の立案者は、木材価値の高い樹木から自動選択することができ、高い木材収入を得ることができる。また間伐後の中層木と下層木の残存木が均等配置されることで、広い生育空間があることから旺盛な生育が期待できる森林となる。
[下層間伐による間伐木選定処理]
「下層間伐」による間伐木選定処理における基本的な処理フローは、図1に示すフローチャートと同じである。「下層間伐」による間伐木選定処理が「上層間伐」による間伐木選定処理と異なる主な点は、図1に示す間伐方法設定処理(ステップS30)において「下層間伐」が設定されている点及び間伐木選定処理(ステップS60)において最短距離として選択された2本の樹木のうち、DBHの小さい方(DBHmin)の樹木を間伐木として選定する点である。これら以外の各ステップにおける処理は、実施形態1に係る間伐木の選定方法と同じであるため、説明は省略する。
図5は、ディスプレイ上に表示された下層間伐による間伐対象区域画像を示す図である。なお、「下層間伐による間伐対象区域画像」というのは、「下層間伐」の間伐条件に基づいて間伐木の選定がなされた後の間伐対象区域画像である。また、図5は図3(a)において示した間伐対象区域と同じ森林域であり、黒枠線L1で囲まれた範囲が間伐対象区域である。
また、図5に示す各樹木に対応する樹冠に示されている丸印は、図3(b)において示した丸印(白抜き丸印)に対応するものであり、図5において、当該「下層間伐」の間伐方法に基づいて選定された間伐木については、丸印が塗りつぶされている。図5においては図3(b)と同様に、丸印の大きさがDBHの大きさを表している。また、図5において、白抜き丸印の樹木は、「下層間伐」により間伐木として選定されなかった残存木を表している。
なお、図5はモノクロ画像であるため、選定された間伐木の判別がしにくいが、図5の元となるカラー画像上では、選定された間伐木の丸印は赤色で示されているため、選定された間伐木を容易に判別することができる。
「下層間伐」による間伐においては、最短距離として選定された2本の樹木のうち、胸高直径(DBH)の小さい方の樹木を間伐木として選定しているため、図5に示すように、全体的に、DBHの小さい樹木が間伐木として選定されていることが分かる。
このように、「下層間伐」を設定した場合の間伐においては、全体的に、DBHの小さい樹木が間伐木として選定されることとなるため、間伐計画の立案者は、間伐した後の木材価値が向上する森林になるように、生育の良い樹木(例えば、DBHの大きい樹木)を残存木として均等に残し、生育の障害となる混んだ箇所の木材価値の低い下層木(DBHの小さい樹木)を間伐することができる。
[全層間伐による間伐木選定処理]
「全層間伐」による間伐木選定処理における基本的な処理フローも、図1に示すフローチャートと同じである。「全層間伐」による間伐木選定処理が「上層間伐」及び「下層間伐」による間伐木選定処理実と異なる主な点は、図1に示す間伐条件設定処理(ステップS30)において、「全層間伐」が設定されている点及び間伐木の選定処理(ステップS60)において、最短距離として選択された2本の樹木のうち1本を間伐木として選定する際に、最短距離樹木として選択された2本の樹木のうちの1本を所定の規則に基づいて選択する点である。
すなわち、間伐木選定処理(ステップS60)は、現時点の処理回数nが偶数であれば、最短距離樹木として選択された2本の樹木のうち、胸高直径が大きい方の樹木(DBHmax)を間伐木として選定し、現時点の処理回数nが奇数であれば、胸高直径が小さい方の樹木(DBHmin)を間伐木として選定する。これら以外の各ステップにおける処理は実施形態1に係る間伐木の選定方法と同じであるため、説明は省略する。
このように、「全層間伐」の場合においては、最短距離樹木として選択された2本の樹木のうちの1本を選択する際に、現時点の処理回数(n)が奇数か偶数かによって、DBHの大小を交互に切り替えて間伐木を選定するようにしている。このため、「全層間伐」による間伐木の選定は、全層から満遍なく行うことができる。
図6は、ディスプレイ上に表示された「全層間伐」による間伐対象区域画像を示す図である。なお、「全層間伐による間伐対象区域画像」というのは、「全層間伐」による間伐木の選定がなされた後の間伐対象区域画像である。また、図6は図3(b)において示した間伐対象区域と同じ森林域であり、黒枠線L1で囲まれた範囲が間伐対象区域である。
また、図6に示す各樹木に対応する樹冠に示されている丸印は、図3(b)において示した丸印(白抜き丸印)に対応するものであり、図6においては、「全層間伐」の間伐方法に基づいて選定された間伐木に付されている丸印が塗りつぶされている。図6においては図3(b)と同様に、丸印の大きさがDBHの大きさを表している。また、図6において、白抜き丸印の樹木は、「全層間伐」により間伐木として選定されなかった残存木を表している。
なお、図6はモノクロ画像であるため、選定された間伐木の判別がしにくいが、図6の元となるカラー画像上では、選定された間伐木の丸印は赤色で示されているため、選定された間伐木を容易に判別することができる。
「全層間伐」により間伐においては、最短距離として選定された2本の樹木のうち、胸高直径(DBH)の小さい方の樹木と大きい方の樹木とが交互に間伐木として選定されるため、図6に示すように、全体的に、胸高直径(DBH)の小さい方の樹木と大きい方の樹木とが満遍なく間伐木として選定されていることが分かる。
このように、「全層間伐」を設定した場合の間伐においては、胸高直径(DBH)の小さい方の樹木と大きい方の樹木とが満遍なく間伐木として選定されているため、間伐計画の立案者は、現在の上層木、中層木、下層木が配置されている森林状態の構成を持続的に維持できる森林になるように、胸高直径の大小に関わらず、生育の障害となる混んだ箇所の樹木を間伐することができる。これにより、全層からの木材収入と森林の価値を長期に渡り継続的に得ることができる。
ところで、上述した3種類の間伐木の選定処理、すなわち、「上層間伐」による間伐木選定処理、「下層間伐」による間伐木の選定処理、「全層間伐」による間伐木の選定処理のそれぞれにおいて、現時点の間伐率Rnが設定間伐率(R=30%)未満であるか否かの判定Rn<Rを行った結果、Rn<Rを満たさなくなると、間伐木集計処理(ステップS90)にて、間伐木集計処理を行う。この間伐木集計処理には、選定されたすべての間伐木の個々の間伐木に関する間伐木資源情報を作成する処理と、当該間伐木資源情報に基づいて間伐木概要情報を作成する処理とが含まれている。
続いて、この間伐木集計処理(ステップS90)について説明する。ここでは、「全層間伐」による間伐木集計処理について説明する。
図7は、間伐木集計処理によって作成された間伐木資源情報の一例を示す図である。図7に示す間伐木資源情報は、図2に示す間伐対象区域に存在する樹木に関する森林資源情報の中から「全層間伐」によって選定された間伐木に関する間伐木資源情報の一部である。当該間伐木資源情報は、データベース化されてパーソナルコンピューターなどの情報処理装置の記憶部に保存される。なお、当該間伐木資源情報には、間伐木として選定された樹木のナンバー、各樹木の樹冠位置(樹冠の中心位置)のx座標及びy座標、樹種、樹高(m)、胸高直径(DBH:cm)、材積(m3)が記録される。
図8は、図7に示す間伐木資源情報に基づいて作成された間伐木概要情報を示す図である。図8に示す間伐木概要情報は、0.54ha(正確には5356m2=0.5356haであるとする。)の間伐対象区域についての間伐木概要情報を示している。当該間伐木概要情報には、当該間伐対象区域における間伐木選定前及び間伐木選定後についての樹木に関する情報として、「本数」、「所定面積(1haとする。)当たりの本数」、「平均DBH(cm)」、「平均樹高(m)」、「合計材積(m3)」、「所定面積(1haとする。)当たりの合計材積(m3)」、「間伐率」が記録されている。なお、「本数」は「間伐木選定前」においては間伐対象区域に存在する樹木の本数(総数)であり、「間伐木選定後」においては選定された間伐木数(選定間伐木数)である。
図8に示す間伐木概要情報によれば、「間伐率」は、選定間伐木数(63本とする。)÷総数(211本とする。)×100≒29.86%となっており、設定間伐率R(30%)未満に収まっている。
なお、1ha当たりの本数のうち、間伐木選定前の1ha当たりの本数(394本)は、「211÷0.5356≒394」によって得られた値であり、間伐木選定後の1ha当たりの本数(118本)は、「63÷0.5356≒118」によって得られた値である。
また、1ha当たりの合計材積(m3)のうち、間伐木選定前の1ha当たりの合計材積(470.7m3)は、252.1÷0.5356≒470.7によって得られた値であり、間伐木選定後の1haの合計材積(147.3m3)は、87.5÷0.5356≒147.3によって得られた値である。
なお、図7に示す間伐木資源情報及び図8に示す間伐木概要情報はそれぞれデータベース化されてパーソナルコンピューターなどの情報処理装置に保存され、随時、ディスプレイ上に表示させることができる。
なお、ここでは、「全層間伐」による間伐木選定処理についての間伐木資源情報及び間伐木概要情報について説明したが、「上層間伐」及び「下層間伐」についても、数値は異なるが形式としては図7及び図8と同様の形式の間伐木資源情報及び間伐木概要情報を作成することができるが、これらの説明及び図示は省略する。
なお、前述した3種類の間伐方法(「上層間伐」、「下層間伐」及び「全層間伐」)は、それぞれの間伐方法固有の効果が得られる。例えば、「上層間伐」は、全体的にDBHの大きい樹木が間伐木として選定されることとなるため、木材価値の高い樹木を間伐木として選定でき、高い木材収入を得ることができる。また、間伐後に残された中層木及び下層木の残存木がそれぞれ所定の距離を置いて配置されることとなるため、これら中層木及び下層木は広い生育空間が得られることから旺盛な生育が期待できる森林となる。また、「下層間伐」は、全体的にDBHの小さい樹木が間伐木として選定されることとなる。すなわち、生育の障害となる混んだ箇所に生えている木材価値の低い下層木(DBHの小さい樹木)が間伐木として選定されることとなるため、生育の良い樹木(例えば、DBHの大きい樹木)が残存木としてそれぞれ所定距離を置いて配置されることとなり、間伐した後の木材価値の向上が期待できる森林になる。
また、「全層間伐」は、全体的に胸高直径(DBH)の小さい方の樹木と大きい方の樹木とが満遍なく間伐木として選定されるため、胸高直径の大小に関わらず、生育の障害となる混んだ箇所の樹木を間伐することができ、現在の上層木、中層木、下層木が配置されている森林状態の構成を持続的に維持しながら、生育の障害となる混んだ箇所の樹木を間伐することができる。これにより、全層(上層、中層及び下層)からの木材収入と森林の価値を長期に渡り継続的に得ることができる。
特に、「全層間伐」による間伐方法においては、上述したように、現在の上層木、中層木、下層木が配置されている森林状態の構成を持続的に維持できることが大きな特徴でもある。
図9は、全層間伐による間伐木選定を行った結果の残存木の胸高直径(DBH)の分布を間伐木の選定前と間伐木選定後との比較で示すヒストグラムである。図9(a)は間伐木選定前における残存木の胸高直径(DBH)の分布を示すヒストグラムであり、図9(b)は間伐木選定後における残存木の胸高直径(DBH)の分布を示すヒストグラムである。
図9に示すように、図2に示す間伐対象区域内において、「全層間伐」による間伐木の選定を行ったところ、間伐木選定後のDBHのヒストグラムは、間伐木選定前のDBHのヒストグラムに比べて、ヒストグラムの形を大きく変えることなく、樹木の本数を減らす(間伐する)ことができることがわかる。このように、「全層間伐」による間伐木の選定は、現在の上層木、中層木、下層木が配置されている森林状態の構成を持続的に維持しながら、生育の障害となる混んだ箇所の樹木を間伐することができる間伐木の設定方法であると言える。
[実施形態2]
上述の実施形態1に係る間伐木の選定方法においては、間伐率設定処理(ステップS20)における間伐率Rは、樹木の本数に基づく間伐率を設定したが、実施形態2に係る間伐木の選定方法においては、樹木の材積に基づく間伐率を設定する。
図10は、実施形態2に係る間伐木の選定方法における間伐木の選定処理を説明するためのフローチャートである。図10に示すフローチャートは、全体の処理の流れとしては、図1に示すフローチャートとほぼ同様である。
図10に示すフローチャートが図1に示すフローチャートと異なる点は、間伐率設定処理(ステップS20)において、間伐率Rを樹木の材積に基づく間伐率で設定する点である。ここでは、間伐率Rとして35%を設定するものとする。すなわち、間伐率設定処理(ステップS20)においては、間伐率R(R=35(%))を設定する。なお、ここでも、間伐率Rを「設定間伐率R」と表記する場合もある。
そして、ステップS40~S60においては、上述の実施形態1に係る間伐木の選定方法と同様の処理を行い、最短距離の2本の樹木について、ステップS30で設定した間伐条件に基づいて2本のうちの1本を間伐木として選定する処理を行う。なお、ステップS60の間伐木の選定処理は、実施形態2に係る間伐木選定方法においても、実施形態1に係る間伐木選定方法と同様に、間伐条件として「上層間伐」、「下層間伐」、「全層間伐」のいずれかが設定された状態で、間伐木の選定処理を行う。
その後、現時点における材積による間伐率Rnが、設定間伐率R(R=35%)より小さいか否か(Rn<Rであるか否か)を判定し(ステップS70)、Rn<Rであれば、処理回数nに1を加算(n+1)する処理を行って(ステップS80)、ステップS40に戻り、当該ステップS40以降の処理を行う。なお、この場合、現時点の材積による間伐率Rnは、Rn=(現時点の選定間伐木合計材積/間伐対象区域に存在する樹木合計材積)×100で表わされる。
なお、ステップS70において「Rn<Rであるか否か」を判定する処理を行う際のRnは、現時点の処理回数nが例えば第1回目(n=1)であって、当該第1回目(n=1)の処理において選定された1本の樹木の材積が例えば1.45m3であり、間伐対象区域に存在する樹木合計材積が例えば252.1m3であったとすると、現時点の処理回数nが第1回目(n=1)の処理における間伐率Rn(n=1)は、(1.45÷252.1)×100≒0.57%となる。また、現時点の処理回数nが例えば第40回目(n=40)であって、当該第40回目までにおいて選定された40本の樹木の合計材積が例えば60.7m3であったとすると、現時点の処理回数n(n=40)における間伐率Rn(n=40)は、(60.7÷252.1)×100≒24.1%となる。なお、各樹木の材積は、森林資源情報(間伐対象区域における森林資源情報)から取得できる。
このような処理を順次行い、Rn<R(=35%)を満たさなくなると(Rn≧Rとなると)、間伐木資源情報集計処理を行う。例えば、第63回目までにおいて選定された63本の樹木の合計材積が例えば87.5m3であったとすると、現時点の処理回数n(n=63)における間伐率Rn(n=63)は、(87.5÷252.1)×100≒34.7%となり、設定間伐率R(R=35%)直前の間伐率となる。そして、次の処理(第64回目)の処理においける合計材積が設定間伐率R(35%)に達したとする。この場合も、図7に示すような間伐木資源情報を得ることができ、当該間伐木資源情報に基づいて間伐木概要情報を作成することができる。
図11は、実施形態2に係る間伐木選定方法において作成された間伐木概要情報を示す図である。図11に示す間伐木概要情報は、図8に示した実施形態1に係る間伐木概要情報と基本的には同じ内容であるが、材積における間伐率が記録されている点が図8と異なる。図11に示す間伐木概要情報によれば、間伐率は、間伐木選定後の合計材積(87.5m3)÷間伐対象区域の樹木総材積(252.1m3)×100=34.7%となっており、設定間伐率R(R=35%)未満に収まっている。
以上説明したように、実施形態2に係る間伐木選定方法によれば、材積による間伐率を設定して、設定した材積による間伐率(R=35%)未満に抑えた間伐率となるように間伐木選定を行うことができる。なお、材積に基づく間伐率と本数に基づく間伐率とを組み合わせるようにしてもよい。この場合、材積に基づく間伐率と本数に基づく間伐率との両方を満足するように間伐木を選定するようにして、図12に示すような間伐木概要情報を作成するようにしてもよい。
図12は、材積に基づく間伐率と本数に基づく間伐率との両方を満足する場合の間伐木概要情報の一例を示す図である。図12によれば、実施形態1に係る間伐木の選定方法において得られた本数に基づく間伐率(29.86%)と、実施形態2に係る間伐木の選定方法において得られた材積による間伐率(34.7%)とがそれぞれ記録されている。なお、図12に示す間伐木概要情報においては、本数に基づく間伐率及び材積による間伐率がともに、設定間伐率R未満となっているが、材積に基づく間伐率が、設定間伐率Rに収まっていればよい場合もあり、逆に、材積による間伐率が設定間伐率R未満であればよい場合もある。
ここでは、「全層間伐」についての間伐木資源情報及び間伐木集計表について説明したが、「上層間伐」による間伐処理及び「下層間伐」による間伐処理を行った場合にも、数値は異なるが、同じ形式の間伐木資源情報及び間伐木集計表を得ることができる。このため、「上層間伐」による間伐処理及び「下層間伐」による間伐処理を行った場合に作成される間伐木資源情報及び間伐木集計表について図示は省略する。
[実施形態3]
図13は、実施形態3に係る間伐木の選定方法における間伐木の選定処理を説明するために示すフローチャートである。実施形態3に係る間伐木の選定方法における間伐木の選定処理が実施形態1に係る間伐木の選定方法における間伐木の選定処理と異なるのは、間伐対象区域の傾斜角度を判定して、間伐対象区域内において所定の傾斜角度未満の区域の画像データを作成する処理が含まれている点である。このように、間伐対象区域内において所定の傾斜角度未満の区域の画像データを作成する処理を行うのは、主に、林業用ハーベスタが走行可能であるか否かを判断するために行われるものである。なお、林業用ハーベスタが走行可能である傾斜角度をここでは「間伐可能傾斜角度」と呼ぶことにする。
図13に示すフローチャートが図1に示すフローチャートと異なる点は、間伐率設定処理(ステップS20)の前に、間伐対象区域を複数に区分した各区分ごとの傾斜角度を表す傾斜区分画像データを作成する傾斜区分画像データ作成処理(ステップS11)と、傾斜区分画像データに基づいて所定の傾斜角度未満の傾斜を有する区分を間伐可能区分とした間伐可能区分画像データを作成する間伐可能区分画像データ作成処理(ステップ12)と、間伐可能区分画像データと森林資源情報とに基づいて、間伐可能区分に存在する樹木を間伐可能樹木として選定する間伐可能樹木選定処理(ステップS13)とを有する点である。なお、所定の傾斜角度未満というのは、ここでは35度未満の傾斜角度とする。この角度は、林業用ハーベスタが走行可能な角度(間伐可能傾斜角度)である。
傾斜区分画像データ作成処理(ステップS11)は、間伐対象区域に対応する森林域画像データにおけるメッシュ化(例えば、50cm×50cmでメッシュ化)された50cmの画素ごとのデジタル標高モデルデータ(地表の標高を表すデータ)を作成して、当該メッシュ化されたデジタル標高画像データに基づいて傾斜区分画像データを作成する。具体的には、メッシュ化されたデジタル標高画像データに基づいて、隣接する画素を直角三角形の底辺(50cm)として、当該当該直角三角形の高さを隣接する画素の標高差として求める処理を各隣接する画素において行って、隣接する画素ごとの傾斜角度を求めることにより、傾斜区分画像データを作成することができる。なお、メッシュ化されたデジタル標高画像データは、上空から調査対象となる森林域にレーザー光を照射することよって得られたレーザー計測データから作成された3次元の点群データに基づいて作成することができる。
図14は、ディスプレイ上に表示された傾斜区分画像を示す図である。図14に示す傾斜区分画像は、図13のフローチャートにおける傾斜区分画像データ作成処理(ステップS11)によって作成された傾斜区分画像である。なお、図14は各メッシュにおける傾斜角度が各樹冠に対応付けられて示されている。図14においては、各樹冠が薄い灰色から濃い灰色のグラデーションで示されているが、灰色が濃くなるほど傾斜が大きいことを示している。
なお、図14はモノクロ画像であるため、色の濃さによる傾斜の大きさの区別が判別しにくいが、図14の元となるカラー画像上では、傾斜の大きさは黄色(傾斜角度が小)から赤(傾斜角度が大)のグラデーションで表わされており、赤色に近いほど傾斜が大きい。なお、ここで、最も薄い色の黄色は傾斜角度が0度(平坦)であることを示しており、赤色は傾斜角度が80度以上であることを示している。なお、図14に示す傾斜区分画像における間伐対象区域内の傾斜角度は、全体的に間伐可能傾斜角度に収まっている。
ところで、傾斜区分画像データ作成処理(ステップS11)において傾斜区分画像データが作成されると、当該傾斜区分画像データに基づいて林業用ハーベスタが走行可能な傾斜角度(この場合、35度未満)となっている間伐可能区分画像データを作成する(ステップS12)。そして、間伐可能区分画像データと森林資源情報とに基づいて、間伐可能区分に存在する樹木を間伐可能樹木として選定する(ステップS13)。なお、ステップS13において、間伐可能区分に存在する樹木を間伐可能樹木として選定する処理は、間伐可能区分画像データと森林資源情報とから得られる個々の樹木の樹冠位置とを重ね合わせることにより、間伐可能区分に存在する樹木を間伐可能樹木として選定することができる。このようにして、間伐可能樹木(間伐対象区域内において林業用ハーベスタが走行可能な区域に存在する樹木)を選定した後の処理は、実施形態1又は実施形態2において説明した処理を行う。
すなわち、実施形態1又は実施形態2において説明した間伐率設定処理(ステップS20)及び間伐条件設定処理(ステップS30)の後に行われる樹木間距離算定処理(ステップS40)は、間伐対象区域内において間伐可能傾斜角度となっている区域(間伐可能区域とする。)に存在する樹木(間伐可能樹木)について行われる。なお、間伐率設定処理(ステップS30)及び間伐条件設定処理(ステップS40)は、実施形態1又は実施形態2において説明した処理と同様であり、また、樹木間距離算定処理(ステップS40)及び当該樹木間距離算定処理以降の処理は実施形態1又は実施形態2において説明した処理と同様であるため、ここではその説明は省略する。
このように、実施形態3に係る間伐木選定方法においては、間伐対象区域内において林業用ハーベスタが走行可能な間伐可能区域に存在する樹木(間伐可能樹木)について、実施形態1又は実施形態2において説明した間伐木選定を行うため、35度未満の傾斜に存在する樹木だけが間伐対象となる。このため、実施形態3に係る間伐木選定方法において、図7に示すような間伐木資源情報を作成すると、実施形態3に係る間伐木選定方法において作成される間伐木資源情報は、35度未満の傾斜に存在する樹木の中から間伐木として選定された個々の樹木についての資源情報となる。これにより、実施形態3に係る間伐木選定方法において作成される間伐木資源情報に基づいて、間伐作業を行えば、間伐木として選定された樹木は、林業作業の効率化のために導入されている林業用ハーベスタが走行可能な位置に存在することとなり、当該樹木の伐採、枝払い、玉切りなどの作業の機械化が可能となる。
以上説明したように、各実施形態に係る間伐木の選定方法によれば、現地での人手による間伐木の選定に頼ることなく、間伐木の選定を効率的にかつ森林の現況に適応するように行うことができる。また、間伐条件として、「上層間伐」、「下層間伐」又は「全層間伐」のいずれかの間伐条件を設定して間伐木の選定を行うことにより、どのような間伐を行うかといった間伐目的に応じた間伐木の選定が可能となる。
また、いずれかの間伐条件(例えば、「全層間伐」)によって間伐木の選定を行った場合、図6に示すような間伐対象区域画像、図7に示すような間伐木資源情報、図8に示すような間伐木概要情報及び図9に示すようなヒストグラムなどをディスプレイ上に表示させることによって、間伐対象区域における間伐木の選定結果を机上にて容易に把握することができる。また、実際に現地に行くときには、これら各情報をプリントアウトしたもの、または、これらを現地で表示可能なモバイル端末を持参し、かつ、GPSを併用することで、熟練者でなくても容易に間伐木として選定された樹木をマーキングすることができる。なお、これは層間伐による間伐木の選定に限られることなく、「上層間伐」又は「下層間伐」においても同様である。
以上、実施形態1~3に係る間伐木の選定定方法について説明したが、続いて、実施形態1~3に係る間伐木の選定定方法に対応する間伐木の選定装置について説明する。
図15は、実施形態1に係る間伐木の選定方法に対応する間伐木の選定装置1及び実施形態2に係る間伐木の選定方法に対応する間伐木の選定装置2を説明するために示す図である。間伐木の選定装置1及び間伐木の選定装置2は、図1に示すフローチャート及び図10に示すフローチャートの各ステップの処理を行うための装置であり、図1におけるステップS10において取得すべき森林資源情報を記憶している森林資源情報記憶部10と、図1におけるステップS20における間伐率の設定を行う間伐率設定部20と、図1におけるステップS30の間伐条件の設定を行う間伐条件定部30と、図1におけるステップS40の樹木間距離算定処理を行う樹木間距離算定部40と、図1におけるステップS40の樹木間距離算定処理を行う樹木間距離算定部40と、図1におけるステップS50の最短距離の2本の樹木を選択する最短距離樹木選択部50、図1におけるステップS60の間伐木の選定を行う間伐木選定部60と、図1におけるステップS70の間伐率の判定を行う間伐率判定部70と、図1におけるステップS90の処理(間伐木に関する間伐木資源情報を作成するとともに、当該間伐木資源情報に基づいて間伐木の概要に関する間伐木概要情報を作成する処理)を行う間伐木集計部90とを有している。
なお、間伐率設定部20は、実施形態1に係る間伐木の選定方法における樹木の本数に基づく間伐率の設定が可能であるとともに、実施形態2に係る間伐木の選定方法における樹木の材積に基づく間伐率の設定が可能である。また、間伐率判定部70は、間伐率設定部20において樹木の本数に基づく間伐率Rの設定がなされた場合には、Rn=(現時点の選定間伐木数/間伐対象区域に存在する樹木の本数)×100の演算結果が間伐率R(設定間伐率R)未満であるか否かの判定(Rn<Rか否かの判定)を行う。一方、間伐率設定部20において樹木の材積に基づく間伐率Rの設定がなされた場合には、Rn=(現時点の選定間伐木合計材積/間伐対象区域に存在する樹木合計材積)×100の演算結果が間伐率R(設定間伐率R)未満であるか否かの判定(Rn<Rか否かの判定)を行う。
このように構成されている間伐木の選定装置1及び間伐木の選定装置2を構成する各構成要素が、図1に示すフローチャート又は図10に示すフローチャートに示す手順に沿って処理を行うことにより、実施形態1に示す間伐木の選定方法及び実施形態2に係る間伐木の設定方法において説明した間伐木の選定が可能となる。
図16は、実施形態3に係る間伐木の選定方法に対応する間伐木の選定装置3を説明するために示す図である。間伐木の選定装置3が図15に示した間伐木の選定装置1及び間伐木の選定装置2と異なるのは、間伐対象区域を複数に区分した各区分ごとの傾斜角度を表す傾斜区分画像データを作成する傾斜区分画像データ作成部11と、当該傾斜区分画像データに基づいて所定の傾斜角度未満の傾斜を有する区分を間伐可能区分とした間伐可能区分画像データを作成する間伐可能区分画像データ作成部12と、間伐可能区分画像データと森林資源情報とに基づいて、間伐可能区分に存在する樹木を間伐可能樹木として選定する間伐可能樹木選定部13とを有する点である。
傾斜区分画像データ作成部11は、図13に示すフローチャートにおける傾斜区分画像データ作成処理(ステップS11)を行うものであり、間伐可能区分画像データ作成部12は、図13に示すフローチャートにおける傾斜区分画像データ作成処理(ステップS12)を行うものであり、間伐可能樹木選定部13は、図13に示すフローチャートにおける傾斜区分画像データ作成処理(ステップS12)を行うものである。
そして、間伐可能樹木選定部13により選定された間伐可能樹木に対して、間伐率設定部20により設定されている間伐率及び間伐条件設定部30により設定されている間伐条件に基づいて、樹木間距離算定部40が行う樹木間距離を算定する処理、最短距離樹木選択部50が行う最短距離樹木を選択する処理及び間伐木選定部60が行う間伐木を選定する処理を行う。
このように構成されている間伐木の選定装置3を構成する各構成要素が、図13に示すフローチャートに示す手順に沿って処理を行うことにより、実施形態3に示す間伐木の選定方法において説明した間伐木の選定が可能となる。
また、間伐木の選定装置1、間伐木の選定装置2及び間伐木の選定装置3は、当該各間伐木の選定装置1~3に含まれる上記各構成要素(図15及び図16参照。)が有する機能がコンピューターのプログラムとしてインストールされており、上記各構成要素に所定のデータを与えることによって、それぞれの構成要素が持つ機能がコンピューターのソフトウエア上で実行されるものである。
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
(1)上記各実施形態においては、森林を形成する樹種としては、カラマツを例示したが、カラマツに限られるものではなく、アカマツ、スギ、ヒノキなど種々の樹木を対象とすることができる。なお、本発明は、主に、針葉樹の植栽林の間伐を想定しているが、針葉樹の植栽林の間伐に限られるものではない。
(2)上記各実施形態においては、樹木の本数に基づく間伐率を設定する場合には、間伐率R(設定間伐率R)を30%とし、樹木の材積に基づく間伐率を設定する場合には間伐率R(設定間伐率R)を35%としたが、これは一例であって、間伐率Rは任意に設定可能である。また、実施形態3において、間伐可能傾斜角度は、林業用ハーバスタが走行可能な傾斜角度として、35度を設定したが、これに限られるものではなく、より大きな傾斜角度においても走行可能な林業用ハーベスタが存在する場合には、より大きな傾斜角度を設定可能である。また、林業用ハーバスタが走行可能であるか否かとは関係なく、任意の角度を間伐可能傾斜角度として設定可能である。例えば、間伐可能傾斜角度として、35度よりも小さい20度を設定したり、さらに小さい15度を設定したりすることも可能である。このように、間伐可能傾斜角度として任意の角度を設定可能とすることによって、林業用ハーバスタが入り込めないような区域で人力による伐採作業を行わざるを得ない場合、人力による伐採作業の危険性を考慮した間伐木の選定を行うことが可能となる。
(3)上記各実施形態においては、間伐木選定処理(ステップS60が「上層間伐」、「下層間伐」又は「全層間伐」に基づいて間伐木を選定する際には、胸高直径(DBH)で間伐木を選定する場合を例示したが、胸高直径(DBH)ではなく、樹高によって間伐木を選定するようにしてもよい。例えば、間伐条件として「上層間伐」が設定されているとすれば、最短距離の2の本の樹木のうち、樹高の高い方の樹木を選定し、間伐条件として「下層間伐」が設定されているとすれば、最短距離の2の本の樹木のうち樹高の低い方の樹木を選定するようにしてもよく、また、間伐条件として「全層間伐」が設定されているとすれば、最短距離の2の本の樹木のうち、樹高の高い樹木と樹木とを交互に選定するようにしてもよい。