JP7166499B1 - ディップ成形用アルミニウム架橋剤、ディップ成形用組成物、手袋、及び手袋の製造方法 - Google Patents

ディップ成形用アルミニウム架橋剤、ディップ成形用組成物、手袋、及び手袋の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7166499B1
JP7166499B1 JP2022536953A JP2022536953A JP7166499B1 JP 7166499 B1 JP7166499 B1 JP 7166499B1 JP 2022536953 A JP2022536953 A JP 2022536953A JP 2022536953 A JP2022536953 A JP 2022536953A JP 7166499 B1 JP7166499 B1 JP 7166499B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aluminum
cross
linking agent
dip molding
glove
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2022536953A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2022168831A1 (ja
Inventor
憲秀 榎本
将弥 佐竹
琢 常石
竜 前田
俊 石原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Midori Anzen Co Ltd
Taki Kasei Co Ltd
Original Assignee
Midori Anzen Co Ltd
Taki Kasei Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Midori Anzen Co Ltd, Taki Kasei Co Ltd filed Critical Midori Anzen Co Ltd
Publication of JPWO2022168831A1 publication Critical patent/JPWO2022168831A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7166499B1 publication Critical patent/JP7166499B1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C41/00Shaping by coating a mould, core or other substrate, i.e. by depositing material and stripping-off the shaped article; Apparatus therefor
    • B29C41/02Shaping by coating a mould, core or other substrate, i.e. by depositing material and stripping-off the shaped article; Apparatus therefor for making articles of definite length, i.e. discrete articles
    • B29C41/14Dipping a core
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C41/00Shaping by coating a mould, core or other substrate, i.e. by depositing material and stripping-off the shaped article; Apparatus therefor
    • B29C41/003Shaping by coating a mould, core or other substrate, i.e. by depositing material and stripping-off the shaped article; Apparatus therefor characterised by the choice of material
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29LINDEXING SCHEME ASSOCIATED WITH SUBCLASS B29C, RELATING TO PARTICULAR ARTICLES
    • B29L2031/00Other particular articles
    • B29L2031/48Wearing apparel
    • B29L2031/4842Outerwear
    • B29L2031/4864Gloves

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Gloves (AREA)

Abstract

ディップ成形用組成物中でゲル化することなく、手袋製造などの量産においても使用可能な十分な安定性を持ち、これを用いた成形体が十分な引張強度と疲労耐久性を持ち、柔らかく伸びのよいディップ成形用アルミニウム架橋剤、ディップ成形用組成物、手袋及び手袋の製造方法を提供する。多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤であって、前記多核乳酸アルミニウム化合物は、多核アルミニウム構造と、少なくとも1の乳酸残基を有し、前記多核アルミニウム構造は、アルミニウム原子どうしが酸素原子1個を介して複数個重合した構造を有し、その重合度は2~20であり、前記アルミニウム原子の残余の原子価は、乳酸残基又は水酸基が結合していることを特徴とするディップ成形用アルミニウム架橋剤、それを用いたディップ成形用組成物、手袋及び手袋の製造方法である。

Description

本発明は、共重合エラストマーをディップ成形法によりアルミニウム架橋して成形体を製造する技術に関する。
従来、XNBR(カルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム)を用いて成形したXNBR手袋を代表とする、共重合エラストマー等の合成ゴムをディップ成形法により成形するゴム手袋は、天然ゴム手袋がI型アレルギーを発症することから、これに替わって広く使用されている。
従来、XNBR手袋は硫黄及び加硫促進剤と酸化亜鉛で架橋して成形するのが通例であった。しかし、加硫促進剤はIV型アレルギーを発症するので、近年これに替わる、加硫促進剤を用いないアクセラレーターフリーXNBR手袋が開発されている。
これらのアクセラレーターフリーXNBR手袋には、ラテックスの成分自体に自己架橋性をもたせたものや、ポリカルボジイミド化合物又はエポキシ化合物などの有機架橋剤で架橋したものがある。しかし、これらはいずれも強度をもたせるために亜鉛架橋を併用している。亜鉛等の重金属は、皮膚に長時間接触する手袋等には可能な限り用いないことが好ましい。
さらに、アルミニウム架橋によってXNBR手袋をディップ成形する方法についても開発が進んできた。これには、アクセラレーターフリーであるとともに亜鉛架橋をなくすねらいがあった。
しかし、ディップ成形によるアルミニウム架橋手袋の課題は、アルミニウム原子が、pH9~11のディップ液の中でゲル化してしまうことであった。これを解決するために、大きく二つの開発の流れがある。
第1の流れは、pH13程度のアルミン酸から出発して、これに安定化剤を加えてディップ成形する方法である。
特許文献1は、アルミニウム又はアルミニウム系化合物と、安定化剤としてのポリエチレングリコールを開示している。
特許文献2は、アルミニウム化合物と安定化剤としてアルコール性水酸基含有化合物(C)を開示している。(C)としては、さらに糖類、糖アルコール、ヒドロキシ酸、及びヒドロキシ酸塩を開示している。
特許文献3は、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックス混合物から製造されるニトリル手袋であって、金属イオン架橋剤として、アルミン酸塩化合物、酸化亜鉛又はそれらの混合物、金属イオン安定剤として、キレート剤、ポリオール化合物又はそれらの混合物、及び、pH調整剤として、所定のアルカリ塩化合物、更には、充填剤として、炭酸カルシウム、シリカ又はそれらの混合物、及び、充填剤分散剤として、アリールスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム又はそれらの混合物を、夫々、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンエラストマーに対して所定量で含むニトリル手袋を開示している。
この技術は、該アルミン酸塩化合物を、炭酸カルシウム又はシリカ充填剤との反応に使用して、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンポリマー鎖と結合しているカルシウムアルミニウムセメント複合体を形成することによりニトリル手袋を製造するものである。この特許文献の実施例においては、アルミン酸ナトリウムに、安定化剤としてクエン酸とグリセリンを混合したものと、グリオキサールとソルビトールを加熱混合したものが挙げられている。
第2の流れは、pH2~4程度のアルミニウム塩から出発して、これに安定化剤を加えてディップ成形する方法である。
特許文献4は、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックスと、金属原子に結合した水酸基を二個又はそれ以上含有する有機金属架橋剤とを含む、カルボキシル基含有ジエン系ゴムラテックス組成物を開示している。上記有機金属架橋剤の金属原子としてアルミニウムが挙げられており、更に、1個のアルミニウム原子に1個のカルボン酸残基と2個の水酸基を有する有機アルミニウム架橋剤の構造式、例えば、モノカルボン酸(ジヒドロキシ)アルミニウムの構造式(化学構造1)が開示されており、そして、有機アルミニウム架橋剤は、この2個の水酸基によりポリマーのカルボキシル基を架橋することが記載されている。また、複数のアルミニウム原子を有する有機金属架橋剤が開示されている(化学構造2~4)。
特許文献5は、多塩基ヒドロキシカルボン酸の水溶性アルミニウム有機金属化合物であって、アルミニウム原子に結合した水酸基を2個又はそれ以上有するカルボキシル基架橋剤であり、かつ、アルミニウム原子を2個又はそれ以上有する配位子結合型架橋剤を開示している。
特許文献6は、脂肪族共役ジエンモノマーを含むカルボキシル化ベースポリマー、及び、遅延アニオンを含むアルミニウム化合物からなる製品、例えば各種のエラストマー製品を開示している。アルミニウム化合物として、ヒドロキシ置換アルミニウム、具体的には乳酸アルミニウム、及びグリコール酸アルミニウムを開示している。
特許第6538093号公報 国際公開第2017/146238号 特開2018-9272号公報 国際公開第2008/001764号 特開2010-209163号公報 特開2009-138194号公報
ここで、従来の技術においては、アルミニウムを架橋剤として用いると、ゲル化の問題を充分に解決できないことがあった。例えば、特許文献1の技術を用いると、ポリエチレングリコールの安定化機能は弱く、容易にゲル化してしまうと考えられた。
また、アルミニウム原子を主に1個含む化合物を主成分とするアルミニウム架橋剤を用いた場合、引張強度に優れている反面、アルミニウム架橋剤の量を増やすと、成形体が硬く伸びなくなる欠点があった。
特許文献2では、アルミニウム架橋剤としてはアルミニウム化合物と、安定化剤としてアルコール性水酸基含有化合物(C)を開示し、(C)はさらに糖類、糖アルコール、ヒドロキシ酸、及びヒドロキシ酸塩と広く開示されている。その一方、この特許文献の実施例においては、アルミニウム架橋剤はアルミン酸ナトリウムのみが使用されており、これに安定化剤としてソルビトール及び/又はグリコール酸ナトリウムを混合して使用している。すなわち、この場合、アルミニウム架橋剤は1分子中にアルミニウム原子を1個だけ含む化合物を用いていた。
特許文献3は、高用量の充填剤を担持することができないニトリル手袋の難点を克服するための配合物に関し、架橋剤としてアルミン酸塩化合物を使用することを目的とした技術であり、同様に架橋剤としてはアルミニウム原子を1個含むアルミン酸塩化合物を使用していた。
特許文献6は、架橋剤に相当するアルミニウム化合物として、ヒドロキシ置換アルミニウム、具体的には乳酸アルミニウム、グリコール酸アルミニウムを開示している。これらはいずれも通常はアルミニウム原子を1個だけ含む化合物である。
これらの技術では、アルミニウム架橋剤により硬く伸びなくなる欠点を解消することができなかった。
また、アルミニウム原子に結合した水酸基により架橋する構造を用いているものは、成形体とした際に強固な架橋構造を形成することができず、より強い成形体の物性が求められることがある。
特許文献4には、複数のアルミニウム原子を有する有機金属架橋剤が開示されているが、有機アルミニウム架橋剤は、2個の水酸基によりポリマーのカルボキシル基を架橋することが記載されており、これらは、いずれもアルミニウム原子に結合した複数の水酸基のみにより架橋が達成されるものであった。
特許文献5には、アルミニウム化合物として、水溶性クエン酸アルミニウム錯体[Al(H-1Cit)(OH)(HO)]4-)が開示されている。加えて、Alに結合する水酸基が1個であり、かつ、クエン酸残基が3個であるものは、水酸基が1個のみであることから、架橋剤として用いようとしても、ポリマー、例えば、XNBRに配合してもカルボキシル基を架橋することができないことを記載している。この技術も、アルミニウム原子に2個以上の水酸基が結合した有機アルミニウム架橋剤を使用することを必須とするものであり、アルミニウム原子に結合した複数の水酸基のみにより架橋が達成されるものであったため、より強固な架橋構造、成形体が求められる。
本発明者らは、このような課題を鑑みて、ディップ成形により成形体を製造するためのより優れたアルミニウム架橋剤を提供することを目的とし、鋭意研究を進めてきた。そして、アルミニウム架橋剤のディップ成形用組成物中における不安定性の解消、及びアルミニウム架橋によるさらに強固な架橋を目指した。そして、アルミニウム架橋の結合の強さのために、硬く、伸びなくなるという欠点を解消することを目的とした。
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、ディップ成形用組成物中でゲル化することなく、手袋製造などの量産においても使用可能な十分な安定性を持ち、これを用いた成形体が十分な引張強度と疲労耐久性を持ち、かつ従来のアルミニウム架橋による成形体に比べて柔らかく伸びのよい手袋及びその製造方法を提供することを最終目的とする。そして、当該最終目的の達成に不可欠なディップ成形用アルミニウム架橋剤、及びディップ成形用組成物の開発も目的とする。
[1] 多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤であって、前記多核乳酸アルミニウム化合物は、多核アルミニウム構造と、少なくとも1の乳酸残基を有し、前記多核アルミニウム構造は、アルミニウム原子どうしが酸素原子1個を介して複数個重合した構造を有し、その重合度は2~20であり、前記アルミニウム原子の残余の原子価は、乳酸残基又は水酸基が結合していることを特徴とするディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[2] 前記重合度が2~10である、前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[3] 前記アルミニウム原子が2個の残余の原子価を持つ場合は、そのうちの1個以上に乳酸残基が結合している、前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[4] 前記アルミニウム原子と乳酸残基のモル比が1:0.5~1:2.0である、前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[5] 前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤、共重合エラストマー、pH調整剤、及び水を少なくとも含み、かつ、pHが8.5~10.5であるディップ成形用組成物であって、前記共重合エラストマーが、(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位20~35質量%、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位1.5~6質量%、及びブタジエン由来の構造単位59~78.5質量%を含む、ディップ成形用組成物。
[6] 有機架橋剤又は酸化亜鉛を更に含む、前記のディップ成形用組成物。
[7] 前記ディップ成形用アルミニウム架橋剤が、前記共重合エラストマー100質量部に対して、酸化アルミニウム換算で0.2~1.3質量部含まれる、前記のディップ成形用組成物。
[8] 前記のディップ成形用組成物を含む構成素材を成形してなる手袋。
[9] 前記の手袋の製造方法であって、
(1)手袋成形型に凝固剤を付着させる凝固剤付着工程、
(2)ディップ成形用組成物を調製し、撹拌するマチュレーション工程、
(3)手袋成形型を前記ディップ成形用組成物に浸漬するディッピング工程、
(4)前記手袋成形型上に形成された膜をゲル化し、硬化フィルム前駆体を作るゲリング工程、
(5)前記手袋成形型上に形成された硬化フィルム前駆体から不純物を除去するリーチング工程、
(6)前記工程により形成された手袋の袖口部分に巻きを作るビーディング工程、
(7)前記手袋を加熱し架橋反応及び乾燥を行うキュアリング工程、
を含み、
前記(3)~(7)の工程は前記の順序で行う、手袋の製造方法。
また、本発明の実施態様は、以下の側面も有する。
[A1] 下記式(1A)
Figure 0007166499000001
(式(1A)中、R及びRは、ヒドロキシ酸残基又はヒドロキシ基のいずれかを示し、Rは、ヒドロキシ酸残基、ヒドロキシ基又は-O-Al-(Rのいずれかを示し、nは1~6の整数を示し、かつ、Al原子数が合計2~7個である。)
で示され、かつ、少なくとも2個のヒドロキシ酸残基及び少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物を含む、ディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[A2] 式(1A)において、Rがヒドロキシ酸残基であり、かつ、Rを末端とする主鎖の他の末端に存在するR又はRのうち、いずれか1個がヒドロキシ酸残基である、前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[A3] 式(1A)において、nが1~3の整数であり、かつ、Al原子数が合計2~4個である、前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[A4] 上記ヒドロキシ酸残基が乳酸残基である、前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
[A5] (メタ)アクリロニトリル由来の構造単位20~35質量%、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位1.5~6質量%、及びブタジエン由来の構造単位59~78.5質量%を含む共重合エラストマー、ディップ成形用アルミニウム架橋剤、pH調整剤、及び水を少なくとも含み、かつ、pHが9.5~10.5であるディップ成形用組成物であって、上記ディップ成形用アルミニウム架橋剤が、式(1A)
Figure 0007166499000002
(式(1A)中、R及びRは、ヒドロキシ酸残基又はヒドロキシ基のいずれかを示し、Rは、ヒドロキシ酸残基、ヒドロキシ基又は-O-Al-(Rのいずれかを示し、nは1~6の整数を示し、かつ、Al原子数が合計2~7個である。)
で示され、かつ、少なくとも2個のヒドロキシ酸残基及び少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物を含む、ディップ成形用組成物。
[A6] 式(1A)において、Rがヒドロキシ酸残基であり、かつ、Rを末端とする主鎖の他の末端に存在するR又はRのうち、いずれか1個がヒドロキシ酸残基である、前記のディップ成形用組成物。
[A7] 式(1A)において、nが1~3の整数であり、かつ、Al原子数が合計2~4個である、前記のディップ成形用組成物。
[A8] 上記ヒドロキシ酸残基が乳酸残基である、前記のディップ成形用組成物。
[A9] 有機架橋剤を更に含む、前記のディップ成形用組成物。
[A10] 上記ディップ成形用アルミニウム架橋剤が、上記共重合エラストマー100質量部に対して、酸化アルミニウム換算で0.2~1.3質量部含まれる、前記のディップ成形用組成物。
[A11] (a)手袋成形型に凝固剤を付着させる凝固剤付着工程、
(b)(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位20~35質量%、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位1.5~6質量%、及びブタジエン由来の構造単位59~78.5質量%を含むカルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム、式(1)
Figure 0007166499000003
(式(1A)中、R及びRは、乳酸残基又はヒドロキシ基のいずれかを示し、Rは、乳酸残基、ヒドロキシ基又は-O-Al-(Rのいずれかを示し、nは1~6の整数を示し、かつ、Al原子数が合計2~7個である。)
で示され、かつ、少なくとも2個の乳酸残基及び少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤、pH調整剤、及び水を少なくとも含み、かつ、pHが9.5~10.5であるディップ成形用組成物を調製し、撹拌するマチュレーション工程、
(c)手袋成形型を上記ディップ成形用組成物に浸漬するディッピング工程、
(d)手袋成形型上に形成された膜をゲル化し、硬化フィルム前駆体を作るゲリング工程、
(e)手袋成形型上に形成された硬化フィルム前駆体から不純物を除去するリーチング工程、
(f)手袋の袖口部分に巻きを作るビーディング工程、
(g)架橋反応に必要な温度で加熱及び乾燥するキュアリング工程、
を含み、上記(c)~(g)の工程を上記の順序で行う手袋の製造方法。
[A12] (メタ)アクリロニトリル由来の構造単位20~35質量%、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位1.5~6質量%、及びブタジエン由来の構造単位59~78.5質量%を含むカルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴムを、式(1A)
Figure 0007166499000004
(式(1A)中、R及びRは、ヒドロキシ酸残基又はヒドロキシ基のいずれかを示し、Rは、ヒドロキシ酸残基、ヒドロキシ基又は-O-Al-(Rのいずれかを示し、nは1~6の整数を示し、かつ、Al原子数が合計2~7個である。)
で示され、かつ、少なくとも2個のヒドロキシ酸残基及び少なくとも1個のヒドロキシ基を有する化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤で架橋してなる手袋。
本発明によれば、本発明の多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤を使用することにより、ディップ成形用組成物中でゲル化することなく、手袋製造などの量産においても使用可能な十分な安定性を持ち、これを用いた成形体が十分な引張強度と疲労耐久性を持ち、かつ従来のアルミニウム架橋による成形体に比べて柔らかく伸びのよい手袋及び手袋の製造方法を提供することができる。
図1は、多核乳酸アルミニウム化合物のpH約9.66におけるNMRチャートである。 図2は、多核乳酸アルミニウム化合物のpH約4.63におけるNMRチャートである。 図3は、多核乳酸アルミニウム化合物のpH約12.39におけるNMRチャートである。 図4は、乳酸アルミニウム正塩のpH約3.44におけるNMRチャートである。 図5は、乳酸アルミニウム正塩のpH約9.82におけるNMRチャートである。 図6は、乳酸アルミニウム正塩のpH約13.54におけるNMRチャートである。 図7は、アルミン酸ナトリウムの重水(DO)中pH約13におけるNMRチャートである。 図8は、アルミン酸ナトリウムと乳酸ナトリウム(安定剤)との混合物のpH約13.08におけるNMRチャートである。 図9は、アルミン酸ナトリウムとグリコール酸カリウム(安定剤)との混合物のpH約12.82におけるNMRチャートである。 図10は、アルミン酸ナトリウムとソルビトール(安定剤)との混合物のpH約12.46におけるNMRチャートである。 図11は、アルミン酸ナトリウムとソルビトール(安定剤)との混合物のpH約9.98におけるNMRチャートである。 図12は、本実施例の多核乳酸アルミニウム化合物の質量分析の結果と、乳酸アルミニウム正塩の質量分析の結果を比較して示した図である。 本実施例の多核乳酸アルミニウム化合物の質量分析の別の結果である。
1.ディップ成形用アルミニウム架橋剤
本実施形態のディップ成形用アルミニウム架橋剤は、多核乳酸アルミニウム化合物を含む。前述の多核乳酸アルミニウム化合物は、多核アルミニウム構造と、少なくとも1の乳酸残基を有している。
多核アルミニウム構造とは、アルミニウム原子どうしが酸素原子を介して複数個重合していることをいう。この多核アルミニウム構造が、多核乳酸アルミニウム化合物における分子鎖を形成している。
少なくとも1の乳酸残基を有するとは、この多核アルミニウム構造のいずれか少なくとも1の部位が乳酸残基で置換されていることをいう。アルミニウム原子の残余の原子価は、架橋を行う部分として乳酸残基又は水酸基が結合している。残余の原子価とは、多核アルミニウム構造において、前記したようにアルミニウム原子どうしが酸素原子を介して複数個以上重合する際、アルミニウム原子において該酸素に結合している結合部位以外の結合部位にあたる原子価である。乳酸残基とは、乳酸が有する一つのカルボキシル基から一つの水素イオンを取り去った残りの部分を言う。ひとつのアルミニウム原子が、2個の残余の原子価を持つ場合は、そのうちの1個以上に乳酸残基が結合していることが好ましい。
この多核乳酸アルミニウム化合物として想定される化学構造の一例を下記式(1)に示す。
Figure 0007166499000005
(式中のLacは乳酸残基を示し、AlとLacの存在比は合成時に添加したアルミニウム源、乳酸の量に依存する。)
また、本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物は、アルミニウム原子どうしが酸素原子1個を介して複数個重合した多核アルミニウム構造において、その重合度は2~20である。重合度は、好ましくは2~10である。
多核乳酸アルミニウム化合物中の分子鎖は、アルミニウム原子と酸素原子とが交互に結合する構造を有する。当該化合物は直鎖上であっても、分岐状であってもよい。
多核乳酸アルミニウム化合物は、1分子中に少なくとも1個の乳酸残基を有する。多核乳酸アルミニウム化合物中のアルミニウム原子が2個の残余の原子価を持つ場合は、そのうちの1個以上に乳酸残基が結合していることが好ましい。より好ましくは、多核乳酸アルミニウム化合物の分子鎖の両末端部に1個ずつ、少なくとも2個の乳酸残基を有する。
末端部にヒドロキシ残基を有する該多核乳酸アルミニウム化合物の例を式(2)に示す。
Figure 0007166499000006
前述のアルミニウム原子と乳酸残基のモル比は、1:0.5~1:2.0であることが好ましい。アルミニウム原子と乳酸残基がこのモル比であることで、後述するようにアルミニウム原子を乳酸残基が保護してゲル化を防ぐ効果が好適に得られると考えられる。また、本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物は、この乳酸の含有率の作用により、成形体に用いた際に後述する乳酸による強固な架橋構造を得ることができる。
本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤の技術的特徴を以下に説明する。
第1に、多核乳酸アルミニウム化合物は、ディップ成形法によるプロセス、すなわち、pH 8.5~10.5のディップ液のマチュレーション、ディッピングの工程を通じて安定している。これは、ディップ成形用組成物中のアルカリ下において、下記式(3)の多核乳酸アルミニウム化合物のように、ヒドロキシ基とアルミニウム原子との分子間力により、乳酸残基がアルミニウム原子を立体的に保護することによって、ディップ成形用組成物中に存在する水酸化物イオンがアルミニウム原子に付加してゲル化することを防ぐためであると考えられる。
Figure 0007166499000007
(R:乳酸残基、ヒドロキシ基又はアルミニウム骨格(O-Al)。アルミニウム骨格は、アルミニウム骨格に乳酸残基が結合したものも含む)
これに対し、アルミン酸ナトリウムや塩化アルミニウムのようなアルミニウム化合物は弱酸性~アルカリ性(pH6.0~11.0)では、ゲル化(ポリマー化)して沈殿する傾向にあり、成形体の製造工程におけるディップ液中では弱アルカリ性(pH8.0~11.0)であることから成形不良を起こすなどの問題が生じていた。またこれらのアルミニウム化合物は空気中の二酸化炭素を吸収するなどしてpHが変われば沈殿を起こすため、架橋剤の長期貯蔵の際にも問題も生じていた。この対策として、例えば特許文献1、2及び3のように、アルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸塩の安定化剤としてポリエチレングリコール、グリコール酸ナトリウム、ソルビトール、グリオキサール等のキレート性のあるものが多数提案されていたが、ゲル化の問題を完全には解決できておらず、また、引張強度と伸びを完全には両立させることができない等の課題を有していた。しかし、本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物を用いることによりこの課題を解決したものである。なお、多核乳酸アルミニウム化合物が乳酸残基を有することの他の利点として、ヒドロキシ基及び-COO-を有することから、これらが水との親和性を向上させ、水によく溶解、分散するようにすることができることが挙げられる。
第2に、多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤は、他のアルミニウム架橋剤と比較しても、ディップ成形により強固な架橋構造を形成した成形体を製造できるとともに、成形体の物性を弱める凝固剤由来のCa2+イオン、pH調整剤由来のKイオン、Naイオンを成形体から減らすことができる。
以下、推測ではあるが、前述の架橋剤が共重合エラストマーを架橋する反応、具体的には多核乳酸アルミニウム化合物とXNBRとの架橋反応を製造プロセスに沿って説明する。
なお、以下では、多核乳酸アルミニウム化合物の典型例である、3個のアルミニウム原子からなる分枝鎖の各アルミニウム原子に乳酸残基が1個結合しており、その残余にはヒドロキシ基が結合した多核乳酸アルミニウム化合物で説明する。しかし、以下の説明は、この典型例に限定されることはなく、この典型例以外の多核乳酸アルミニウム化合物についても当て嵌まるものである。
多核乳酸アルミニウム化合物は、ディップ成形用組成物を調製し、攪拌するマチュレーション工程において、XNBRのカルボキシル基と直ちに下記式(4)に示す反応を起こす。
すなわち、多核乳酸アルミニウム化合物は末端部に存在する乳酸残基が脱離基となり、XNBRのカルボキシレート(COO)との交換反応を行い結合する。脱離した乳酸残基はXNBRのカルボキシレートのカウンターイオンであるK、Na、NH と結合する。
前述のXNBRのカルボキシレートはXNBR粒子(後で詳述する、XNBRの分子を含む粒子)の界面及びその近傍に存在しており、ディップ成形用組成物がpH8.5~10.5に調整されているので、カルボキシレート(-COO)となって粒子の外側に向かって配向しているものである。
この下記式(4)の反応により、多核乳酸アルミニウム化合物はXNBR粒子と強固に結合することにより、後工程であるディッピング工程やリーチング工程での水洗によっても、ほとんど流出することはない。そのため、後のキュアリング工程におけるアルミニウムによる架橋を効率的に行うことができる。
また、多核乳酸アルミニウム化合物と結合したXNBRのカルボキシレートは、ディップ成形用組成物中でpH調整剤由来のKやNH 、分散剤由来のNa、ディッピング工程での凝固剤由来のCa2+と反応することがない。そのため、後に成形体の物性を落とすK、Na及びCa2+の含有を減らすことができる。
Figure 0007166499000008
次いで、ディッピング工程とゲリング工程を経た後、リーチング工程において、Ca、K、界面活性剤等の後のキュアリングに支障となる余剰な薬剤や不純物等をリーチング水により硬化フィルム前駆体から除去する。このリーチング工程では、水洗により、硬化フィルム前駆体はアルカリ性から中性に近づき、XNBRのカルボキシレート(-COO)の一定量は、カルボキシル基(-COOH)に戻る。ただし、この水洗によってCa及びKは洗い流されるが、なお硬化フィルム前駆体には、Ca及びKは相当量残存する。
一方、XNBR粒子内のXNBRと強固に結合した多核乳酸アルミニウム化合物は、水洗によっても除去されることはない。
次いで、キュアリング工程は、前述の工程により手袋状に形成されたフィルムを加熱し、該フィルムに付着している水を蒸発させ、架橋反応を進行させる工程である。この加熱の温度は架橋反応及び水を蒸発させる(乾燥)のに必要な温度であり、例えば100~150℃程度の温度である。このキュアリング工程では、マチュレーション工程でXNBRに結合した多核乳酸アルミニウム化合物は、下記式(5)に示す反応により、他のXNBRに結合し、粒子間結合(架橋)を形成する。
式(5)の上段の式のように、XNBRに結合した多核乳酸アルミニウム化合物に結合しているヒドロキシ基は、リーチング工程において戻ったカルボキシル基と脱水縮合反応を起こして、XNBRに結合し粒子間結合(架橋)を形成する。
一方、なおカルボキシレートのままCaやKと結合して残存しているXNBRのカルボン酸残基は、多核乳酸アルミニウム化合物に結合している残存した乳酸残基と式(4)で示したように交換反応して、XNBRに結合し、粒子間結合(架橋)を形成する(式(5)の下段の式)。このように、多核乳酸アルミニウム化合物は、脱水縮合反応と交換反応を同時に行うことにより、より強固な架橋結合を形成することができる。さらにアルミニウムが、K及びCaを排除して、XNBRのカルボキシレートと架橋することにより、出来上がったフィルムの物性等を落とすCa及びKによる架橋を抑制することができる。
本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物は、乳酸残基がXNBRのカルボキシレートと結合するCaやKと交換反応をし得る点で、ヒドロキシカルボン酸を1個しか持たないアルミニウム化合物、例えばモノカルボン酸ジヒドロキシアルミニウム(特許文献4)やアルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩にグリオキサールや、グリコール酸、ソルビトール等を加えたアルミニウム架橋剤(特許文献2及び3)とは異なる。ヒドロキシカルボン酸を1個しか持たないアルミニウム化合物では、ディップ成形用組成物中のXNBRのカルボキシレートにアルミニウムイオンが結合するが、結合後のアルミニウムは2個のヒドロキシ基を有していることから、キュアリング工程においてXNBRのカルボキシレートのカウンターイオンであるアルカリ金属イオン(Na、K等)及びアンモニウムイオン(NH )並びにアルカリ土類金属イオン(Ca2+)と反応することができない。そのため、架橋構造が弱くなるとともに成形体の物性を弱くするCaによる金属イオン架橋を抑制できない。
Figure 0007166499000009
(式(5)中、Lacは式(4)と同様に乳酸残基を示す。)
第3に、多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤は、ディップ成形に用いた際、他のアルミニウム架橋剤を用いた際と比較すると、成形体が柔らかく伸びのよい点に特徴がある。これは、多核乳酸アルミニウム化合物は1分子中にアルミニウム原子を2個以上含んでいるからである。
一般的に、アルミニウム架橋剤は、引張強度に優れている反面、量を増やしていくと、すぐ硬く伸びなくなる欠点を持っていた。
また、例えば、特許文献5のように、アルミニウム原子を2個以上含む架橋剤を用いた場合でも、該文献の技術では、アルミニウム原子間が-OOC-R-COOで結合されている点で本実施形態の架橋剤と異なる。このような結合は、アルカリ性のディップ液中で容易に解離するので、本実施形態のようにアルミニウム原子を2個以上含む架橋構造は形成されない。この技術においては、多塩基ヒドロキシカルボン酸(複数のカルボン酸を持つヒドロキシ酸)の使用が必須であり、ヒドロキシ酸として乳酸を使用していないので、本実施形態のような構成及び効果を得ることはできなかった。
また、例えば、特許文献6のように、乳酸アルミニウムを含む製品の技術であっても、通常、乳酸アルミニウムとは、1分子中にアルミニウム原子1個と乳酸残基3個を含有する化合物(乳酸アルミニウム正塩)のことであり、1分子中にアルミニウム原子を複数含有し、乳酸残基と水酸化物イオンとをどちらも含有する化合物(多核乳酸アルミニウム化合物)とは異なり、本実施形態のような構成及び効果を得ることはできなかった。
本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物は、アルミニウム原子を1個しか含まない単核のアルミニウム架橋剤に比べて架橋点間距離が長いため、分子構造の自由度が高く、架橋点が1個のアルミニウムに集中しないので、得られたフィルムの残存歪が小さく、モジュラスが上がり難くなり、伸びやすくなり、前記した欠点を克服している。
多核乳酸アルミニウム化合物は、液体と固体のいずれであってもよい。以下、液体であることを明示するときは、「多核乳酸アルミニウム化合物溶液」と表記する。
多核乳酸アルミニウム化合物溶液の製造方法の一例は、下記の工程1~4を含むものである。
まず、工程1において、塩化アルミニウム水溶液とアルミン酸ナトリウム水溶液とを混合してアルミナゲル含有液を製造する。塩化アルミニウム水溶液とアルミン酸ナトリウム水溶液の添加態様の一例は、環境温度において、両液を反応槽に同時に添加開始し、かつ、同時に添加終了するように添加する方法である。両液の添加に用いる装置として、例えば、ポンプ、シャワー、ノズル噴霧等が挙げられる。反応槽に添加された両液は、撹拌装置等を用いて混合することが好ましい。また、両液の混合には、スタティックミキサー等のラインミキサーを用いて構わない。なお、反応槽には、必要に応じて予め水を入れておいても構わない。
両液の混合によって得られる混合液は、添加開始から添加終了までの間において、pHが5~8の範囲内となるようにすることが好ましい。前述のpH範囲内とするために、塩化アルミニウム水溶液とアルミン酸ナトリウム水溶液は、一定の混合比が保持されるように添加されることが好ましく、例えば、定量ポンプを用いることが好都合である。また、前述のpH範囲内とすることにより、脱塩洗浄し易いアルミナゲルを製造することができる。前述のpH範囲から外れた場合には、混合液が流動性を失うことがある。
添加開始から添加終了までの添加時間は、限定されるものではないが、好ましくは30分以上である。添加時間が短いと、塩化アルミニウム水溶液とアルミン酸ナトリウム水溶液とを効率よく反応させるために強力な撹拌等が必要となり、また、添加時間が短すぎると、両液の混合によって反応が急激に進むことによって均一な反応が阻害されるために、良好なアルミナゲル含有液を製造できないことがある。添加時間の上限には特に制限は無いが、効率的な製造の観点から、例えば8時間が好ましい。添加時間の上限は、より好ましくは5時間であり、さらに好ましくは3時間である。
塩化アルミニウム水溶液とアルミン酸ナトリウム水溶液の添加量は、両液の混合によって得られるアルミナゲル含有液の塩基度が、87~93%の範囲内となるように設計することが好ましい。このときのpHは、好ましくは5~8である。なお、塩基度は、下記数式1によって算出する。
Figure 0007166499000010
ここで、Xiはi番目のアニオンの濃度、Yiはi番目のアニオンの価数、Ziはi番目のアニオンの分子量であり、アニオンの種類iは1~m個である。また、xjはj番目のカチオン(ただしアルミニウムを除く。以下同じ)の濃度、yjはj番目のカチオンの価数、zjはj番目のカチオンの分子量であり、カチオンの種類jは1~n個である。
工程2においては、工程1で得られたアルミナゲル含有液を脱塩洗浄し、アルミナゲルを含有した洗浄物を得る。脱塩洗浄は、例えば、ろ過と水洗浄を組み合わせて、ろ液の電気伝導度(EC)が好ましくは3.0mS/cm以下になるまで実施される。ECの下限値には特に制限は無いが、あまりに低いとアルミニウム成分までも漏出させる場合があるので、例えば、1.0mS/cm未満にならないようにすることが好ましい。よって、ECの範囲としては、1.0~3.0mS/cmが好ましく、より好ましくは2.0~3.0mS/cmである。
工程3においては、工程2で得られた洗浄物に乳酸を添加する。乳酸の添加量は、最終的に得られる多核乳酸アルミニウム化合物溶液中における乳酸のモル数を(A)としAlのモル数を(B)としたときに、A/B=0.5~2.0の範囲内となる量であることが好ましい。また、洗浄物への乳酸の添加の前又は後に、洗浄物に適当量の水を添加することが好ましい。このようにして、乳酸含有洗浄物を得る。なお、乳酸含有洗浄物中のアルミナゲルを効率的に溶解させる観点から、工程2で得られた洗浄物に乳酸を添加する前に、次に示す任意の工程を行ってもよい。すなわち、任意の工程は、工程2で得られた洗浄物に塩酸及び/又は硝酸を用いてpH5以下に調整する工程である。なお、この任意の工程においてアルミナゲルが完全に溶解しても構わない。
次いで、工程4において、工程3で得られた乳酸含有洗浄物を、大気圧下、加熱してアルミナゲルを溶解させることにより、多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得ることができる。加熱条件は、アルミナゲルの溶解性向上の観点から適宜設定すればよく、例えば、加熱温度は、70~100℃である。加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5~8時間である。加熱中は必要に応じて撹拌してもよい。
前述の工程1~4によって得られる多核乳酸アルミニウム化合物溶液は、通常、酸性の液体であるため、任意の工程として、pH調整工程を設けてもよい。pH調整工程は、工程3の後及び/又は工程4の後に設けることが好ましい。pHは4~9の範囲内となるように調整することが好ましく、これによって多核乳酸アルミニウム化合物溶液の重合度の調整も可能となることがある。また、前述のpH範囲に調整することによって多核乳酸アルミニウム化合物溶液の安定化がもたらされることがある。
工程4の後にpH調整工程を実施し、その次に必要に応じて、再度加熱する工程(再加熱工程)を設けてもよい。加熱条件は適宜設定すればよいが、例えば加熱温度は工程4と同様に、大気圧下、70~100℃とすることが好ましい。加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.5~8時間である。また、加熱中は必要に応じて撹拌してもよい。
工程4及び再加熱工程において、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりすると、重合度が高くなる傾向を示す。重合度が20を上回るような加熱条件は、加熱対象物の組成にもよるが、例えば、加熱温度100℃超かつ加熱時間10時間以上である。
ディップ成形用組成物を調製するにあたり、多核乳酸アルミニウム化合物溶液とXNBRラテックスとを混合するときの多核乳酸アルミニウム化合物溶液のpHは、酸によってラテックス中のXNBR粒子が凝集する、いわゆる「酸ショック」を防ぐために、7~9程度となっていることが必要である。そこで、工程3の後又は工程4の後に任意で実施するpH調整工程において、7~9の範囲内に調整しても構わない。pH調整にアルカリを用いる場合の好例は、NaOH、KOH、NHOH等である。
多核乳酸アルミニウム化合物溶液は、必要に応じて、乾燥することによって固体の多核乳酸アルミニウム化合物としてもよい。形状は粉体が好ましい。乾燥による物性変化を避けるため、噴霧乾燥等の方法を用いることが好ましい。固体の多核乳酸アルミニウム化合物は、水に溶解させることによって乾燥前の多核乳酸アルミニウム化合物溶液と同じように使用することができる。
本実施形態のディップ成形用アルミニウム架橋剤は、共重合エラストマー、好ましくはディップ成形用組成物中のカルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム100質量部に対して、酸化アルミニウム(Al)換算で、0.2~1.3質量部で使用され、より好ましくは0.3~1.0質量部、更に好ましくは0.3~0.7質量部使用される。
本実施形態のディップ成形用アルミニウム架橋剤を前述の配合量の範囲で用いることで、成形体が著しく良好な疲労耐久性を得ることができると共に、十分な引張強度及び引張伸び率を備え、かつ、適切なモジュラス(柔らかさ)を得ることができる。ディップ成形用アルミニウム架橋剤の含有量が前述の下限未満の場合は、成形体が疲労耐久性を高めることができないことがあると共に、適切なモジュラスを得ることができないことがある。一方、ディップ成形用アルミニウム架橋剤の含有量が前述の上限を超えたの場合は、成形体が十分な引張強度及び伸び率を有しないことがあり、また、適切なモジュラスが得られないことがある。
ここで、酸化アルミニウム換算添加量は、下記数式(1)により算出したものである。下記数式(I)中、アルミニウムの含有率はICP発光分析装置(ICP-AES)を用いて測定したものである。
酸化アルミニウム換算添加量(g)=実際の添加量(g)×アルミニウム含有率(質量%)×酸化アルミニウム分子量/アルミニウム原子量×1/2 …(I)
2.ディップ成形用組成物
ディップ成形用組成物は、ディッピング液によりフィルム形状の成形体を製造する際の原料となる。
ディップ成形用組成物は、前記のディップ成形用アルミニウム架橋剤、共重合エラストマー、pH調整剤及び水を少なくとも含み、pH8.5~10.5の範囲に調整されている。
前記共重合エラストマーは、例えばカルボン酸変性エラストマーを含む。また、共重合エラストマーとしては、各種のNBR(ニトリルブタジエンゴム)を含むエラストマー等を用いることもできる。特に、カルボン酸変性エラストマーとして、XNBR(カルボキシ変性ニトリルブタジエンゴム)を用いることが好ましい。
ディップ成形用組成物は、前記共重合エラストマーの化合物の粒子が水に分散した水分散体であるラテックスを含んでいる。本実施形態では、特にXNBRの分子を含むXNBR粒子が水に分散した、XNBRラテックスを含む。
ディップ成形用組成物は、例えば手袋の製造を例にすると、通常は、この他に分散剤、酸化防止剤、顔料等の任意成分を含んでいてもよい。
本実施形態のディップ成形用組成物の各成分につき、以下説明する。
本実施形態で用いる共重合エラストマーは、(メタ)アクリロニトリル(アクリロニトリル又はメタアクリロニトリル)由来の構造単位20~35質量%、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位1.5~6質量%、及びブタジエン由来の構造単位59~78.5質量%を含む共重合体の粒子と水からなる。前述のように、本実施形態では共重合エラストマーはXNBRラテックスを用いる。
XNBRラテックスは、乳化重合により製造されることが好ましい。このときXNBRラテックスに含まれるXNBR粒子は、XNBRがドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤により共重合体の周囲を覆われ、粒子を形成したものである。
XNBRを共重合エラストマーに用いた場合は、構造単位の組成比や乳化重合時の重合温度、過硫酸アンモニウム等のラジカル開始剤である重合開始剤、t-ドデシルメルカプタン等の調整剤の量、重合転化率などによりXNBRラテックス及びそれを用いた成形体の基本的な物性を変化させることができる。XNBRの分子中の各構造単位の作用としては、アクリロニトリルは成形体に強度と耐薬性を与え、ブタジエンは、ゴムとしての柔らかさを与える。エチレン性不飽和カルボン酸は、多核乳酸アルミニウム化合物による粒子間架橋に使われる。ただし、エチレン性不飽和カルボン酸が前述した組成比の範囲に対して多すぎると、成形体が硬く伸びにくくなる傾向がある。これらの各成分は、前述の構造単位の組成比の範囲内であれば、好適に使用することができる。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、好ましくはメタクリル酸を使用することができる。
XNBRラテックスには、更に、(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチルアクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド等を構造単位1~3質量%含有させることにより、成形体に対して柔軟性及び強さ等の物性を持たせることができる。
このXNBRラテックスは、通常pHが8.0~8.3程度であるが、ディップ成形用組成物においては、全体のpHを8.5~10.5に調整する。XNBRのカルボキシル基(-COOH)は、pH8.0~8.3においてはXNBR粒子の界面及びその近傍にある。これに対して、よりpHを上げることによって、前記XNBRのカルボキシル基はカルボキシレート(-COO)として粒子の外側に配向させることができる。この作用により、本願の多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤などの金属架橋剤と粒子間架橋を行わせることができる。また、pHを10.5よりも高くすると、多核乳酸アルミニウム化合物の多核が壊れ、単核化するとともに、好ましくないゲル化が起こる可能性がある。加えて、pHを10.5よりも高くすると成形体が硬くなったり、成形体の構造が変性し粘度が高くなる可能性がある。
たとえば、手袋製造などの量産においては、ディップ成形用組成物は3日~5日程度、pH8.5~10.5のアルカリ性下において安定していることが必要である。本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物は、一般にアルミニウムを用いた架橋剤がアルカリ性下でゲル化しやすいのに対し、安定して使用できることも特徴である。
さらに多核乳酸アルミニウム化合物の特徴は、従来の亜鉛などの金属架橋剤が他の共有結合による架橋と併用されるのに対して、多核乳酸アルミニウム化合物はこの化合物による架橋のみで成形体、たとえば手袋を作ることができることである。ただし、本実施形態のディップ成形用アルミニウム架橋剤を用いたディップ成形により製造してなる手袋は、XNBR粒子間の架橋が主となるので、粒子内共有結合可能な他の有機架橋剤を併用してもよい。
本実施形態で用いるpH調整剤としては、KOHなどのアルカリ金属の水酸化物及びNHOHなどのアンモニウム化合物を挙げることができ、好ましくはKOHが使用される。
pH調整剤は、ディップ成形用組成物のpHが8.5~10.5の範囲に調整されるように添加することが好ましい。
ディップ成形用組成物に任意で添加するその他の成分としては、スルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤を主に用いる分散剤、ヒンダードフェノールなどの酸化防止剤、二酸化チタンなどの顔料等を挙げることができる。
3.ディップ成形用アルミニウム架橋剤を用いて架橋した成形体の製造方法
以下、本実施形態のディップ成形用アルミニウム架橋剤を用いたディップ成形(ディッピング法)による成形体の製造方法を典型的な例である手袋の製造方法に則して説明する。本実施形態の手袋は、前記ディップ成形用組成物を含む構成素材を成形してなる。
ディッピング法による手袋の製造工程は、以下の工程を経て製造される。
手袋の製造工程は、
(1)凝固剤付着工程(手袋成形型に凝固剤を付着させる工程)、
(2)マチュレーション工程(ディップ成形用組成物を調製し、攪拌する工程)、
(3)ディッピング工程(手袋成形型をディップ成形用組成物に浸漬する工程)、
(4)ゲリング工程(手袋成形型上に形成された膜をゲル化し、硬化フィルム前駆体を作る工程)、
(5)リーチング工程(手袋成形型上に形成された硬化フィルム前駆体から不純物を除去する工程)、
(6)ビーディング工程(手袋の袖口部分に巻きを作る工程)、
(7)キュアリング工程(架橋反応に必要な温度で加熱・乾燥する工程)
を含み、前述の(3)~(7)の工程を前述の順序で行う。
なお、前述の(6)の工程と(7)の工程の間に、以下の(6’)の工程を任意に有していてもよい。
(6’)プリキュアリング工程(硬化フィルム前駆体をキュアリング工程よりも低温で加熱・乾燥する工程)。
また、前述の製造方法において、前述の(3)(4)の工程を2回繰り返す、いわゆるダブルディッピングによる手袋の製造方法も含む。
なお、本明細書において、硬化フィルム前駆体とは、ディッピング工程で凝固剤により手袋成形型上に凝集されたエラストマーから構成される膜であり、続くゲリング工程において該膜中にカルシウムが分散してある程度ゲル化された膜であって、最終的なキュアリングを行う以前のものを指す。
以下、工程ごとに詳細を説明する。
(1)凝固剤付着工程
(a)凝固剤付着工程は、モールド又はフォーマ(手袋成形型)を、凝固剤及びゲル化剤としてCa2+イオンを5~40質量%、好ましくは8~35質量%含む凝固剤溶液中に浸す工程である。ここで、モールド又はフォーマの表面に凝固剤等を付着させる時間は適宜定められ、通常、10~20秒間程度である。凝固剤としては、カルシウムの硝酸塩又は塩化物が用いられる。エラストマーを析出させる効果を有する他の無機塩を用いてもよい。中でも、硝酸カルシウムを用いることが好ましい。この凝固剤は、通常、5~40質量%含む水溶液として使用される。
また、凝固剤を含む溶液は、離型剤としてステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、鉱油、又はエステル系油等を0.5~2質量%程度、例えば1質量%程度含むことが好ましい。
(b)凝固剤溶液が付着したモールド又はフォーマを炉内温度110℃~140℃程度のオーブンに1~3分入れ、乾燥させ手袋成形型の表面全体又は一部に凝固剤を付着させる。この時注意すべきは、乾燥後の手型の表面温度は60℃程度になっており、これが以降の反応に影響する。
(c)カルシウムは、手袋成形型の表面に膜を形成するための凝固剤機能としてばかりでなく、最終的に完成した手袋の相当部分の架橋機能に寄与している。しかし、カルシウムのみにでは結合力が弱く、人工汗液への浸漬や応力の負荷により開裂しやすい。
(2)マチュレーション工程
(a)マチュレーション工程は、ディップ成形用組成物を調製し、攪拌しながら分散均一化させる工程である。
(b)実際の手袋の製造工程においては、通常大規模なタンクで本工程を行うため、マチュレーションに1日から2日かかる。これをディップ槽に流し、ディッピングしていくがディップ槽の水位が下がるのに応じて注ぎ足していく。そのため、ディップ成形用アルミニウム架橋剤は、3~5日程度は、安定している必要がある。
(c)ディップ成形用アルミニウム架橋剤は、通常pHが4程度であるが、ラテックスが酸ショックを起こさないよう、あらかじめpH調整剤であるKOH又はNHでpHを7~9程度にしておく必要がある。この時、ディップ成形用アルミニウム架橋剤は、ゲル化することなく安定している。
(3)ディッピング工程
ディッピング工程は、前記マチュレーション工程で調製したディップ成形用組成物(ディップ液)をディップ槽に流し入れ、このディップ槽中に前述の凝固剤付着工程で凝固剤を付着、乾燥した後のモールド又はフォーマを通常、1~60秒間、25~35℃の温度条件下で浸漬する工程である。
この工程では、凝固剤に含まれるカルシウムイオンにより、ディップ成形用組成物に含まれるエラストマーがモールド又はフォーマの表面に凝集して膜を形成する。このときディップ成形用アルミニウム架橋剤に含まれる多核乳酸アルミニウム化合物は、ラテックスのカルボキシル基と強く結合している。
(4)ゲリング工程
ゲリング工程は、後のリーチングの時に硬化フィルム前駆体が変形しないように膜を一定程度ゲル化する工程である。通常は、ゲリングオーブンで100℃近くまで加熱する。加熱の時間については、通常1~3分間程度を挙げることができる。ゲル化させる別の方法として、すでにモールドまたはフォーマがある程度の温度を有していることや、工場内の周囲温度が30~50℃程度であることから、この温度で一定時間放置してもよい。
ゲリング工程には、ゲル化と同時に、硬化フィルム前駆体中にカルシウムを分散させる目的がある。これは、最終的な手袋においてカルシウム架橋が相当数を占め手袋物性のベースを作っているからである。
(5)リーチング工程
(a)リーチング工程は、硬化フィルム前駆体の表面に析出したカルシウム等の後のキュアリングに支障となる余剰な薬剤や不純物を水洗除去する工程である。通常は、モールド又はフォーマを30~70℃の温水に1~4分程度くぐらせている。
(b)リーチング工程では、それまでアルカリ性に調整していた硬化フィルム前駆体を水洗して中性に近づける。これによって、XNBR粒子中の一部のXNBRの分子に残存していたカルボキシレートはカルボキシル基に戻る。このカルボキシル基が後のキュアリング工程で別のXNBR粒子に結合している多核乳酸アルミニウム化合物のヒドロキシ基と脱水縮合反応により架橋形成をすることになる。
(c)この工程においても、ディップ成形用アルミニウム架橋剤に含まれる多核乳酸アルミニウム化合物はXNBR粒子と固く結合しているので水洗により除去されることがない。
(6)ビーディング工程
リーチング工程が終了した硬化フィルム前駆体により形成された手袋の袖口端部を巻き上げて適当な太さのリングを作り、補強する工程である。リーチング工程後の湿潤状態で行うと、ロール部分の接着性が良い。
(6’)プリキュアリング工程
(a)前記ビーディング工程の後、前述の手袋状に形成された硬化フィルム前駆体を後のキュアリング工程よりも低温で加熱・乾燥する工程である。通常、この工程では60~90℃で30秒間~5分間程度、加熱・乾燥を行う。プリキュアリング工程を経ずに高温のキュアリング工程を行うと、水分が急激に蒸発し、手袋に水膨れのような凸部ができて品質を損なうことがあるが、本工程を経ずにキュアリング工程に移行してもよい。
(b)本工程を経ずに、キュアリング工程の最終温度まで温度を上げることもあるが、キュアリングを複数の乾燥炉で行いその一段目の乾燥炉の温度を若干低くした場合、この一段目の乾燥はプリキュアリング工程に該当する。
(8)キュアリング工程
(a)キュアリング工程は、前述の手袋状に形成された硬化フィルム前駆体を高温で加熱し、最終的に架橋を完成させ、乾燥させて、手袋としての硬化フィルムにする工程である。加熱する温度及び時間は架橋反応及び乾燥を起こすのに必要な温度から適宜選択することが好ましい。本実施形態の成形体については、例えば、100~150℃で15~30分間程度加熱を行い、架橋及び乾燥させることができる。
(b)このキュアリング工程において、手袋の架橋は完成する。多核乳酸アルミニウム化合物のヒドロキシ基は、XNBR粒子のカルボキシル基と脱水縮合反応し、さらに多核乳酸アルミニウム化合物の乳酸残基は、XNBR粒子のカルボキシレートと交換反応し、強固な架橋を形成する。同時に、手袋物性を弱くするXNBR粒子のカルボキシレートにK及びCaが結合することも抑制する。
さらに、多核乳酸アルミニウム化合物はアルミニウムが多核であるために架橋点が一点に集中せず、架橋点間距離が長いという柔軟な架橋構造を形成する。
(9)ダブルディッピング
手袋の製造方法について、前述の説明ではいわゆるシングルディッピングの説明を行った。これに対し、ディッピング工程とゲリング工程を2回以上行うことがあり、これを通常ダブルディッピングという。
ダブルディッピングは、厚手手袋(膜厚200~300μm程度)を製造するときや、薄手手袋の製造方法においても、ピンホールの生成防止等の目的で行われる。
ダブルディッピングの注意点としては、2回目のディッピング工程において、XNBR粒子を凝集させるために、1回目のゲリング工程において、カルシウムを十分膜表面にまで析出させておくためのゲリング工程に十分な時間をかけることが好ましい。
4.ディップ成形用アルミニウム架橋剤を用いて架橋した成形体
前述の製造方法によって製造した成形体は、種々の態様に用いることができるが、例えば手袋に好適に用いることができる。以下、手袋、特にXNBRを架橋させたXNBR手袋で説明するが、手袋以外の成形体にも適用することができる。
XNBR粒子の粒子径は天然ゴムの粒子径の10分の1程度であることから、ディップ成形によりXNBR粒子を積層してフィルムを形成すると、天然ゴムの粒子を積層してフィルムを成形したものに比べて、理論上は、一領域内において100倍程度多く粒子間結合(架橋)できる可能性を有している。したがって、XNBR手袋のフィルム性状は、XNBR粒子間結合の良否が非常に重要となる。かかる粒子間結合(架橋)には、XNBRが有するカルボン酸が寄与しており、二価金属の金属イオンとカルボキシレート(-COO)から形成される金属イオン結合が主体となる。
そのため、従来のXNBR手袋は硫黄と加硫促進剤、自己架橋性化合物、有機架橋剤により粒子内を共有結合し、酸化亜鉛で粒子間イオン結合するのが通例であった。アルミニウム架橋については、その不安定性を克服し、酸化亜鉛にかわって、この粒子間架橋したXNBR手袋が種々提案されている。
本実施形態の多核乳酸アルミニウム化合物を含む架橋剤を用いて製造を行った手袋は、他の従来のアルミニウム化合物を含む架橋剤を用いて製造を行った手袋の弱点を解消し、さらに手袋の物性全体を改善したものである。
以下、多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤を用いた本実施形態の手袋の物性の特徴を説明する。
引張強度について、従来のXNBR手袋は亜鉛架橋により保持していたが、本実施形態の手袋は、その強固な結合により、亜鉛よりも少ない量で、亜鉛と同等又はそれ以上の強度を出すことができる。
また、XNBR手袋の粒子間架橋を構成しているカルシウム、亜鉛、及びアルミニウムを比較すると、アルミニウムは人工汗液中でもほとんど溶出しないことから、本実施形態の手袋は、人が使用しても、引張強度が最も低下しないという特徴がある。
また、手袋の伸び率と柔らかさについては、従来技術におけるアルミニウム架橋は、その強固な結合ゆえに他の架橋剤に比べて、硬く伸びなくなる特徴を持っている。
これに対し、多核乳酸アルミニウム化合物は、アルミニウムが多核であるために架橋点間距離が長く、架橋点が一点に集中しない。そのため本実施形態の手袋は、よく伸び、柔らかいという特徴を持っている。
また、疲労耐久性については、本実施形態の手袋は、他のアルミニウム架橋剤及び従来のXNBRを用いて製造した手袋と比較しても良好である。
疲労耐久性については、一般に共有結合する有機架橋剤によるXNBR手袋が切れにくい点で良好であるが、多核乳酸アルミニウム化合物によるXNBR手袋は、粒子間結合(架橋)による強固な結合によって切れにくいという点で、良好な疲労耐久性を持っていると考える。
また、応力保持率については、本実施形態の手袋は、従来の硫黄加硫と亜鉛で架橋した手袋に比べ、非常に高い。これは、XNBR粒子の粒子間をアルミニウム原子が固く結合させることによって、XNBR粒子を天然ゴム粒子のように大きくまとめることによって、従来のXNBR手袋になかったゴム弾性を復活させたためだと考える。
これに比べ、従来のXNBR手袋は、粒子間架橋として亜鉛が使われているが、亜鉛架橋の結合力が比較的弱く、引張応力をかけたときに切れて、伸びた状態で再結合するため、応力保持率を下げる原因となっている。
この他、有機溶媒非透過性についても、本実施形態の手袋のようなアルミニウム架橋は一般に、亜鉛架橋に比べ優れている。
手袋の物性については、XNBRラテックスの性状によっても左右されるが、以上は、多核乳酸アルミニウム化合物による架橋によりもたらされる物性の特徴を説明した。
本実施形態の手袋は、粒子内架橋を持たなくても手袋を作ることができるが、さらにこれに粒子内架橋剤を併用したり、XNBRラテックスの性状をかえることによって、物性をかえた手袋を作ることができる。
本実施形態の手袋は、従来のように硫黄加硫しないので、アクセラレーターフリー手袋であり、IV型アレルギーの心配がない。
また、本実施形態の手袋は、アルミニウムが低毒性であることから、リーチング工程で排出されても、重金属である酸化亜鉛のように排水処理問題は発生しない。また、本実施形態の手袋は、食品衛生法上、亜鉛の溶出量の上限が決められている食品用手袋や、亜鉛等の金属や金属塩や陰イオンが溶出し、半導体に転写されることを嫌うクリーンルーム用手袋には、アルミニウムは溶出しにくいので、最適である。
(他の実施態様)
また、本実施態様の別の側面においては、ディップ成形用アルミニウム架橋剤は、下記式(1A)
Figure 0007166499000011
(式(1A)中、R及びRはヒドロキシ酸残基、あるいはヒドロキシ基のいずれかを示し、Rはヒドロキシ酸残基、ヒドロキシ基、あるいは-O-Al-(Rのいずれかを示す。また、nは1~6の整数を示し、また当該架橋剤1分子に含まれるAl原子の個数は2~7個である。)で示される化合物を含む。
ここで、Rが「-O-Al-(Rを示す」とは、Rが-O-Al-の繰り返し構造により伸長し、さらに分岐構造を含んでよいことを示している。また、nは1~3であることが好ましく、また当該架橋剤1分子に含まれるアルミニウム原子の個数は、2~4個であることが好ましい。当該化合物中の分子鎖は、アルミニウム原子と酸素原子とが交互に結合する構造を有する。当該化合物は直鎖上であっても、分岐状であってもよい。
ここでのヒドロキシ酸とは、ヒドロキシ基を有するカルボン酸のことであり、ヒドロキシ酸残基とは、該ヒドロキシ酸が有する一つのカルボキシル基から一つの水素イオンを取り去った残りの部分を言う。該ヒドロキシ酸としては、好ましくは、乳酸、グリコール酸(ヒドロキシ酢酸)、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシプロピオン酸が挙げられ、より好ましくは、乳酸、グリコール酸、クエン酸が挙げられ、最も好ましくは乳酸が挙げられる。該化合物は、1分子中に少なくとも2個のヒドロキシ酸残基及び、1個のヒドロキシ基を有する。このヒドロキシ酸残基は、分子鎖の末端部に結合していることが好ましい。これはディップ成形用組成物中のアルカリ下において、水酸化物イオンが分子鎖の末端部のアルミニウムに付加し、ゲル化してしまうのを末端部に結合したヒドロキシ酸が、立体的に保護し、ゲル化を防ぐ効果があるからである。
この本実施態様の別の側面におけるディップ成形用アルミニウム架橋剤を用いたディップ成形用組成物は、前述した製造方法と同様にして製造できる。例えば、前述の製造方法における乳酸を他のヒドロキシ酸に適宜変更して用いることができる。
以下、実施例において本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
<多核乳酸アルミニウム化合物の製造>
実施例において各種分析及び実験に用いた多核乳酸アルミニウム化合物として、下記の方法により多核乳酸アルミニウム化合物溶液を製造した。
(実施架橋剤1)
反応槽に予め入れた水22kgを環境温度において撹拌しつつ、アルミニウム濃度(Al換算)1.0質量%の塩化アルミニウム水溶液41kgと、アルミニウム濃度(Al換算)1.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液(Na/Al(モル比)=1.7)37kgとを、夫々、定量ポンプを用いて、反応槽に同時に添加開始しかつ同時に添加終了するようにして添加し、アルミナゲル含有液を製造した。ここで、塩化アルミニウム水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液は、いずれも一定速度で添加され、添加開始から添加終了までの時間は45分であった。なお、両液の添加開始から添加終了までの間において、混合液のpHは5~8の範囲内に維持された。また、得られたアルミナゲル含有液の塩基度は90.5%であり、pHは5.5であった(工程1)。
このようにして得られたアルミナゲル含有液をろ過して、ろ液の電気伝導度(EC)が2.8mS/cmになるまで水で脱塩洗浄を行い、洗浄物を得た(工程2)。
該洗浄物600gに、水260gと88%乳酸140gとを添加することによって乳酸含有洗浄物を得た(工程3)。
次に、これを大気圧下、90℃で3時間加熱した(工程4)。
以上により、アルミニウム濃度(Al換算)が9.0質量%であり、かつ、乳酸濃度が12.3質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを実施架橋剤1とした。
(実施架橋剤2)
実施架橋剤1の工程1~工程4を同様に実施し、工程4で得られた液に25%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを5.8に調整した後、大気圧下、100℃・3時間加熱した。これにより、アルミニウム濃度(Al換算)が8.6質量%であり、かつ、乳酸濃度が11.8質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを実施架橋剤2とした。
(実施架橋剤3)
実施架橋剤1の工程1~工程4を同様に実施し、工程4で得られた液に25%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6.7に調整した後、大気圧下、100℃・3時間加熱した。これにより、アルミニウム濃度(Al換算)が8.5質量%であり、かつ、乳酸濃度が11.9質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを実施架橋剤3とした。
(実施架橋剤4)
実施架橋剤1の工程1~工程4を同様に実施し、工程4で得られた液に25%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.0に調整した後、大気圧下、100℃・3時間加熱した。これにより、アルミニウム濃度(Al換算)が8.8質量%であり、かつ、乳酸濃度が12.2質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを実施架橋剤4とした。
(実施架橋剤5)
実施架橋剤1の工程1と工程2を同様に実施して洗浄物を得た。次に、該洗浄物600gと水168gとを混合した後、35%塩酸92gを添加し混合した(pH4.2)。これに88%乳酸140gを添加し、次に48%水酸化カリウム水溶液を添加してpHを4.6に調整した後、大気圧下、90℃・2時間加熱した。これにより、アルミニウム濃度(Al換算)が8.9質量%であり、かつ、乳酸濃度が12.2質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを実施架橋剤5とした。
(実施架橋剤6)
実施架橋剤1の工程1と工程2を同様に実施して洗浄物を得た。次に、該洗浄物600gと水128gとを混合した後、35%塩酸92gを添加し混合した(pH4.1)。これに88%乳酸180gを添加し、次に48%水酸化カリウム水溶液を添加してpHを5.4に調整した後、大気圧下、90℃・2時間加熱した。これにより、アルミニウム濃度(Al換算)が8.9質量%であり、かつ、乳酸濃度が15.4質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを実施架橋剤6とした。
(実施架橋剤7)
実施架橋剤1の工程1と工程2を同様に実施して洗浄物を得た。次に、該洗浄物600gと水18gとを混合した後、35%塩酸92gを添加して混合した(pH4.0)。これに88%乳酸290gを添加し、次に48%水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8.7に調整した後、大気圧下、70℃・3時間加熱した。これにより、アルミニウム濃度(Al換算)が6.5質量%であり、かつ、乳酸濃度が18.3質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを実施架橋剤7とした。
(比較架橋剤1)
秤量した富士フイルム和光純薬株式会社製アルミン酸ナトリウム10.0gを、純水50.0gに溶解した。そこに関東化学株式会社製60%乳酸ナトリウム水溶液18.2gを加え、酸化アルミニウム換算で3.6質量%になるように純水で希釈し比較架橋剤1を得た。
(比較架橋剤2)
60%乳酸ナトリウム水溶液の代わりに関東化学株式会社製70%グリコール酸水溶液10.6gと50%水酸化カリウム水溶液11.0gを混合したものを使用した以外は比較架橋剤1と同一に実施し、比較架橋剤2を得た。
(比較架橋剤3)
60%乳酸ナトリウム水溶液の代わりに関東化学株式会社製50%ソルビトール水溶液35.6gを使用した以外は比較架橋剤1と同一に実施し、比較架橋剤3を得た。
(比較架橋剤4)
乳酸アルミニウム正塩(三乳酸アルミニウム)をイオン交換水に溶解後、pHを8に調製しAl換算3.6%になるように溶解した。
比較架橋剤1~4のアルミニウムの構造は、いずれも単核である。
(比較架橋剤5)
実施架橋剤1の工程1~工程4を同様に実施し、工程4で得られた液に25%アンモニア水を添加してpHを7.7に調整した後、これをテフロン(登録商標)樹脂製密閉容器に入れ、密閉状態を保ったまま大気圧下、120℃・12時間加熱した。これにより、アルミニウム濃度(Al換算)が7.2質量%であり、かつ、乳酸濃度が9.8質量%である多核乳酸アルミニウム化合物溶液を得た。これを比較架橋剤5とした。
実施架橋剤1~7及び比較架橋剤5の各多核乳酸アルミニウム化合物溶液の組成と重合度を表1、表2に示す。
Figure 0007166499000012
Figure 0007166499000013
表1、表2に示したように、重合度の異なるものが得られた理由については、製造条件、とりわけ乳酸/Alのモル比、工程4で得られる溶液に対するpH調整、当該pH調整後の加熱等の条件が主な要因となった可能性が考えられる。また、重合度は、後掲の実験に示すように、硬化フィルムの物性に影響を及ぼすと考えられる。
(ディップ成形用アルミニウム架橋剤の調製)
前述の工程によって製造した各多核乳酸アルミニウム化合物溶液に、50質量%の水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8に調整した後イオン交換水を添加して撹拌し、Al換算で3.5質量%に調製した。これをディップ成形用アルミニウム架橋剤として使用した。
<多核乳酸アルミニウム化合物の安定性の調査>
(NMR測定)
多核乳酸アルミニウム化合物を使用して種々の効果を安定して得るためには、多核乳酸アルミニウム化合物が、ディップ成形用組成物中のアルカリ性環境(pH:8.5~10.5)の下で安定に存在することが必須である。そこで、本発明者らは、27Al NMRを使用して、種々のアルミニウム化合物、例えば、乳酸アルミニウム正塩、アルミン酸塩化合物等の安定性を調査すると共に、ディップ成形用アルミニウム架橋剤中で最も好ましいと考えられる多核乳酸アルミニウム化合物の安定性について調査した。
ここで、試料は、多核乳酸アルミニウム化合物として、前述した実施架橋剤1を用いた。アルミン酸塩化合物に関しては、アルミン酸ナトリウム、及び前述の比較架橋剤1~3を用いた。乳酸アルミニウム正塩(三乳酸アルミニウム)としては、前述の比較架橋剤4を用いた。
また、27Al NMRによる測定は下記の装置及び条件で実施した。
日本電子株式会社製核磁気共鳴装置JNM-ECS400
磁場強度:9.40T(400MHz)
共鳴周波数:104.17MHz
外部標準:1M 硝酸アルミニウム水溶液
株式会社シゲミ製の同軸チューブを用い、重水をロック用溶媒として用いた。
測定はシングルパルス法により行った。
実施架橋剤1の多核乳酸アルミニウム化合物含有液を、ディップ成形用組成物において用いる際のアルカリ性環境下の例として、pHを約9.66に調整した。これを、27Al NMRにより分析すると、10ppm付近のシグナルと共に、60ppm付近にシグナルが新たに観察された(図1参照)。
なお、実施架橋剤1の多核乳酸アルミニウム化合物含有液は、前述のpH調整前はpHが約4.63であり、これを、27Al NMRにより分析すると、10ppm付近にブロードなシグナルが観察された(図2参照)。
この10ppm付近のシグナルは、全体の約65%程度であり、これによって乳酸残基によるアルミニウムの安定化効果と多核乳酸アルミニウム化合物の多核構造の存在が示唆される。次いで、該水溶液のpHを更に高くし、強アルカリ性下の例としてpHを約12.39に調整した。これを、27Al NMRにより分析すると、約80ppm付近にシグナルが認められた(図3参照)。この約80ppm付近の主シグナルは、アルミン酸ナトリウムのケミカルシフトとほぼ一致することから(後述の図7参照)、多核乳酸アルミニウム化合物は、このような強塩基性下では、乳酸残基が外れアルミン酸塩に由来するシグナルと同等なアルミニウム種に変化していることが分かった。
次に、アルミニウム化合物の代表的な例として挙げられる、アルミニウム原子に3個の乳酸残基が結合した乳酸アルミニウム正塩(比較架橋剤4)に関して27Al NMR測定を行った。乳酸アルミニウム正塩を単にイオン交換水に溶解したものはpHが約3.44であり、これを、27Al NMRにより分析すると、10ppm付近にややブロードなシグナルが観察された(図4参照)。該水溶液のpHをアルカリ性環境下、例えば、pHを約9.82にして、これを、27Al NMRにより分析すると、多核乳酸アルミニウム化合物の場合(図1)と同様に、10ppm付近のシグナルと共に、60ppm付近に別の大きなシグナルが新たに観察された(図5参照)。このときの10ppm付近のシグナルは、全体の約10%程度であった。多核乳酸アルミニウム化合物と比較すると明らかに、10ppm前後のシグナルの存在比が小さいことから、乳酸アルミニウム正塩における多核構造の不存在が示唆される。
該水溶液のpHを更に高くして強アルカリ性下、例えば、pHを約13.54にして、これを、27Al NMRにより分析すると、多核乳酸アルミニウムの場合と同様に、約80ppm付近にシグナルが認められた(図6参照)。このような強アルカリ性下では、乳酸残基はアルミニウムから外れアルミン酸塩由来のシグナルと同等のアルミニウム種に変化していることが分かった。
加えて、従来、カルボキシ基含有共役ジエン系エラストマーに使用するアルミニウム架橋剤として知られているアルミン酸ナトリウム系架橋剤について調査した。
アルミン酸ナトリウム化合物のみについて、重水(DO)中、pH約13におけるNMRチャートを図7に示した。
また、アルミン酸ナトリウムと乳酸ナトリウム(安定剤)との混合物(比較架橋剤1)、及びアルミン酸ナトリウムとグリコール酸カリウム(安定剤)との混合物(比較架橋剤2)の夫々の27Al NMRによる結果を示した(図8及び9参照)。これらは、いずれも強アルカリ性下(夫々、pH:13.08及び12.82)で測定したものであり、いずれも約80ppm付近にアルミン酸塩のシグナルが認められた。該水溶液に塩酸又は塩化アンモニウム水溶液を使用してディップ成形用組成物中のアルカリ性環境下にpHを調整するとpH11付近からゲル化が生じ、27Al NMRによる測定が不能となった。
乳酸アルミニウム正塩、多核乳酸アルミニウムの例に見られたように、強アルカリ性においては乳酸残基とアルミニウムの相互作用が得られなくなるために安定化効果が十分に得られなかったことが考えられる。
このように、アルミン酸ナトリウムと、安定剤として乳酸ナトリウム又はグリコール酸カリウムとを使用したものは、ディップ成形用組成物中のアルカリ性環境下では安定剤の効果が低く、十分な安定性を得ることができないことが分かった。
また、アルミン酸ナトリウムとソルビトール(安定剤)との混合物(比較架橋剤3)をpH:12.46に調整したものの27Al NMRによる結果を示した(図10参照)。約80ppm付近にアルミン酸塩のシグナルが認められ、同時に、約50ppm付近に小さなブロードなシグナルが認められた。
また、該水溶液のpHを、塩化アンモニウム水溶液を使用して調整して9.98にして、27Al NMRにより測定した結果を示した(図11参照)。約80ppm付近のアルミン酸塩シグナルは小さくなり、一方、pHが12.46のときに見られた約50ppm付近のブロードなシグナルに加えて、約10ppm付近に大きなブロードなシグナルが認められた。該シグナルは、アルミン酸ナトリウムとソルビトールとが何らかの形で相互作用したアルミニウムの形態を示すものであると推定される。比較架橋剤3においては、ディップ成形用組成物中のアルカリ性環境下で安定剤であるソルビトールは一定の効果を発揮しており、所定の安定性を発揮しているものと考えられる。
前述のように、本実施例の多核乳酸アルミニウム化合物は、ディップ成形用組成物中のアルカリ性環境(pH:8.5~10.5)の下で確かに多核構造を有し、乳酸残基による安定化を受けていることが認められた。また、カルボキシ基含有共役ジエン系エラストマーに使用するアルミニウム架橋剤として知られているアルミン酸ナトリウム系架橋剤は、安定剤の使用によってもpH8.5~10.5においては十分な安定性は得られていないことが推測される。但し、安定剤を選ぶことにより、より良い安定性を得ることができる可能性があることが認められた。
(質量分析)
前述の実施例架橋剤1の製造工程に従って調製した多核乳酸アルミニウム化合物および市販の乳酸アルミニウム正塩を質量分析により定性分析した。ここで、該質量分析は下記の条件で測定したものである。
Al換算9質量%の多核乳酸アルミニウム化合物(前述の実施架橋剤1)を純水により20倍希釈した溶液、乳酸アルミニウム正塩10mgを純水2mLで溶解した水溶液をそれぞれ下記諸元のMSにて測定した。
MS:Thermo Fisher Scientific社製Q Exactive Plus
イオン化:nano-ESI(エレクトロスプレーイオン化)法
イオン源:TriVersa NanoMate使用
MS検出:フルスキャン(正イオン m/z 80~1200)
ガス圧力:N 0.3psi
スプレー時の電圧:1.8kV
多核乳酸アルミニウム化合物および乳酸アルミニウム正塩のESI―MSと検出ピーク比較を示す(図12)。
27Al NMRで確認できたように、多核乳酸アルミニウム化合物においては多核構造を有することが想像される。多核乳酸アルミニウム化合物のMSを見るとm/z 505.0505、559.0612が検出された。これらは三核のアルミニウム錯体に帰属されることから多核構造を持つことが示唆された。さらにこの部分骨格として-(Al-O)-を持つことが示唆された。また乳酸アルミニウム正塩においてはこれらのシグナルが見られないことから、ここでも確かに多核乳酸アルミニウム化合物と乳酸アルミニウム正塩が明らかに異なる構造を持つことが示された。
また、実施架橋剤1について、同様に質量分析を行った別の結果を図13に示す。
ついで、多核乳酸アルミニウム化合物を用いたディップ成形用アルミニウム架橋剤やその他のアルミニウム架橋剤に関して重合度の算出を行った。計算方法を以下に示す。
浸透圧はすべての溶質の濃度に比例することが知られており、測定したいAlを含む物質以外の濃度 (Cother)を浸透圧により求めた濃度(Ctotal)より差し引くことにより、求めたいアルミニウム架橋剤の濃度(CCL)を算出した。
CL=Ctotal-Cother
またこの架橋剤濃度(CCL)と溶液に含まれるAl原子の全濃度(CAl)を比較することでアルミニウムの架橋剤の重合度nが算出できる。
n=CAl/(CCL
上記式のCtotal、CAl、Cotherはそれぞれ浸透圧、ICP/AES、イオンクロマトグラフィおよびNMRにより算出した。以下に測定条件を示す。
多核乳酸アルミニウム化合物、乳酸アルミニウム正塩をそれぞれAl2換算でおよそ100mM程度の水溶液になるように調整し、GOMOTEC社製浸透圧計OSMOMAT3000(D)にて測定を行った。
得られた測定結果は全粒子濃度Osmol/kg単位で得られるが、これはmol/kgと等価の単位であり、さらに今回の測定では希薄溶液であるのでmol/Lと等価なものとして扱った。
浸透圧測定に用いたサンプルを適切な濃度に希釈して、各種イオン濃度を測定した。イオン濃度は通常、mg/L単位で得られるが、各イオンの式量で除することでmmol/L単位で算出した。
測定したイオン種は以下の通りである。
陽イオン(Na, K, Ca2+,NH
陰イオン(Cl, NO , SO 2-
測定装置:Metrohm社製 881 Compact IC pro
陰イオンカラム:Metrosep A Supp 5―150
ガードカラム:Metrosep A Supp 4/5 S―Gusrd
陽イオンカラム:Metrosep C 4―150
ガードカラム Metrosep C 4 S―Gusrd
浸透圧測定に用いたサンプルについてICP/AESによりAl原子濃度を測定した。元素濃度はmmol/L単位で算出した。
測定装置:島津製作所製 ICPS-8000
調整した架橋剤サンプルに対して、下記条件によりH,13C NMRを測定し、解離の乳酸濃度を算出した。
機器:Bruker AVANCE NEO
磁場強度: 700MHz
株式会社シゲミ製の同軸チューブを用い、重水をロック用溶媒として用いた。
実施架橋剤1、比較架橋剤1~4の重合度の測定結果を以下に示す。
Figure 0007166499000014
実施架橋剤1において重合度が4.8を示すのに対し、アルミン酸に安定化剤を加えた、比較架橋剤1~3、市販の乳酸アルミニウムである比較架橋剤4は重合度が0.6~1.5と1に近い値を示した。このことから実施架橋剤1は、これまでに使用されてきたアルミニウム系架橋剤とは異なり、多核(オリゴマー)であると考えられる。
<カルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム>
以下のカルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴムを調製し、実施例及び比較例において使用した。
(a)カルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)ラテックス:錦湖石油化学社製Kumho 830(商標、固形分量:45質量%、メタクリル酸配合割合:約1.8質量%、アクリロニトリル配合割合:約26.9質量%)
(b)カルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)ラテックス:LG化学社製NL125(商標、固形分量:45質量%、メタクリル酸配合割合:約1.8質量%、アクリロニトリル配合割合:約29.2質量%)
<凝固液の調製及び凝固剤の陶板への付着>
フィルムの成形に使用した凝固液は下記のようにして製造した。離型剤(BIO COSMIC SPECIALITY CHEMICALS社製CTF 3B-G2、固形分濃度40質量%)12.5gを、予め計量しておいた水80.1gで希釈し、3~4時間撹拌して、離型剤分散液を製造した。別途、ビーカーに硝酸カルシウム四水和物143.9gを水153.0gに溶解したものを用意し、撹拌しながら、先に調製した離型剤分散液を該硝酸カルシウム水溶液に加えた。次いで、これを、5%アンモニア水でpHを約9.0に調整し、最終的に硝酸カルシウムが無水物として固形分濃度で20質量%になるように、かつ、離型剤が固形分濃度で1.2質量%となるように水を加えて、500gの凝固液を得た。
得られた凝固液を撹拌しながら、約50℃に加温し、200メッシュのナイロンフィルターで濾過したのち、浸漬用容器に入れた。洗浄後60℃に加温した陶板(縦200mm×横80mm×厚さ3mm)を、その縦方向から挿入して、先端が凝固液の液面に接触してから、陶板の先端から180mmの位置まで4秒かけて挿入し、その状態で4秒間保持し、3秒かけて抜き取った。陶板表面に付着した凝固液を速やかに振り落とし、陶板表面を乾燥させた。乾燥後の陶板を60℃に加温して保管した。
<製造例1:実験番号1~11の成形体の製造>
(実験番号1~7)
XNBRラテックスとして、錦湖石油化学社製Kumho 830ラテックスを使用した。該XNBRラテックス220gにイオン交換水100gを加えて希釈し、撹拌を開始し、5質量%水酸化カリウム水溶液を使用して、該ラテックスのpHを約9.2に調整した。次いで、該ラテックスに、実施架橋剤1の多核乳酸アルミニウム化合物溶液を、XNBRラテックス100質量部に対して、0~1.5質量部添加し、それぞれに対して、酸化防止剤(Farben Technique(M)社製CVOX-50(商標)、固形分53%)を、XNBRラテックス100質量部に対して0.2質量部添加した。次いで、約16時間混合した後、5質量%水酸化カリウム水溶液を使用してpHを10.0に調整して、ディップ成形用組成物を得た。
次いで、環境温度において該ディップ成形用組成物を200メッシュのナイロンフィルターで濾過した後、浸漬用容器に入れた。次いで、前述の60℃に加温した陶板全体を該ディップ成形用組成物に6秒かけて挿入し、そのまま4秒間保持し、次いで、3秒かけて抜き取った。次いで、ディップ成形用組成物が垂れなくなるまで空中に保持し、先端に付着した液滴を軽く振り落とした。陶板上に形成された硬化フィルム前駆体を50℃で2分間乾燥し、次いで、50℃の温水で2分間洗浄した。その後、このようにゲル化された硬化フィルム前駆体を70℃で5分間乾燥し、次いで、130℃で30分間硬化した。陶板からきれいに剥がして得られた硬化フィルムを温度23±2℃、湿度50±10%の環境下に保管して、各物性試験に供した。
(実験番号8~10)
XNBRとして、LG化学社製NL125(商標)を使用し、かつ、実施架橋剤1の多核乳酸アルミニウム化合物溶液の添加量を、XNBR100質量部に対して、0~0.5質量部とした以外は、実験番号1~7と同一に実施して硬化フィルムを得た。
(実験番号11)
実施架橋剤1の多核乳酸アルミニウム化合物溶液を酸化亜鉛0.5質量部にかえた以外は、実験番号10と同一に実施して硬化フィルムを得た。
<硬化フィルムの物性の評価方法>
硬化フィルムの評価に使用した物性試験は下記の通りである。
(引張強度、引張伸び率及びモジュラス)
引張強度、引張伸び率及びモジュラスは、ASTM D412に準拠して測定した。試験片としては、各ディップ成形用組成物から得た硬化フィルムを、ダンベル社製DieCを用いて打ち抜いたものを使用した。該試験片を、A&D社製STA-1225万能試験機(商標)を使用して、試験速度500mm/分、チャック間距離75mm、標線間距離25mmで測定した。
(疲労耐久性)
試験片としては、各ディップ成形用組成物から得た硬化フィルムから切り出したJIS K6251の1号ダンベル片(長さ120mm)を使用した。また、人工汗液としては、1リットルの脱イオン水中に、塩化ナトリウム20g、塩化アンモニウム17.5g、乳酸17.05g、酢酸5.01gを含み、水酸化ナトリウム水溶液によりpH4.7に調整したものを使用した。
前述のダンベル試験片(長さ120mm)の両端部から夫々15mmの箇所を固定チャック及び可動チャックで挟み、固定チャック側の試験片の下から60mmまでを人工汗液中に浸漬した。次いで、可動チャックを、試験片の長さが147mm(123%)となるミニマムポジション(緩和状態)まで移動した。この状態において試験片を11秒間保持した後、可動チャックを、試験片の長さが195mm(163%)となるマックスポジション(伸長状態)へと移動し、次いで、再び、ミニマムポジション(緩和状態)に移動する動作を1.8秒間で行って、ミニマムポジションでの試験片の保持からマックスポジションを経てミニマムポジションに戻るまでの合計12.8秒間の動作を1サイクルとして、サイクル試験を実施した。この1サイクルの時間12.8秒に、試験片が破断するまでのサイクル数を乗じた時間(分)により、疲労耐久性を評価した。
(応力保持率)
応力保持率は、以下のようにして測定した。
硬化フィルムから、ASTM D412に準じてダンベル社製DieCを用いて試験片を作製し、標線間距離を25mmとして標線をつけた。試験片をチャック間距離90mmとして引張試験機に取り付け、引張速度500mm/分で引張り、標線間距離が2倍に伸張した時点で試験片の引張りを停止すると共に100%伸張時応力M0を測定した。試験片の引張りを停止した時点から試験片を保持したまま応力の変化を測定し、6分間経過した時点での応力M6を測定した。そして応力保持率を(M6/M0)×100(%)として計算した。応力保持率が高いほど、伸張後により応力が維持される状態を示しており、外力が取り除かれた際に元の形に戻ろうとする弾性変形力が高いことを示し、手袋のフィット感、裾部の締め付けが良好になり、しわ寄りが少なくなる。
前述の方法で測定された応力保持率は、従来の硫黄架橋XNBR手袋の応力保持率が30%台であるので、本実施形態の成形体は40%以上あればXNBR手袋としては良好である。
<製造例1の硬化フィルムの物性の評価>
製造例1の硬化フィルムの各物性試験の結果を下記の表4に示した。
Figure 0007166499000015
まず、実験番号1及び8は、架橋剤を入れない場合の硬化フィルムの物性をみたものである。これは、凝固剤由来のカルシウム架橋した場合の物性であり、この結果からは、個々のXNBRラテックスの本質的な物性が表れている。この中でカルシウム架橋では、疲労耐久性は全く出ないことが分かった。
実験番号11は、酸化亜鉛を添加した例であるが、多核乳酸アルミニウム化合物を架橋剤に用いた場合の製造例全体と比較して、疲労耐久性及び応力保持率が劣っていることがわかる。特に応力保持率については、架橋剤を入れない実験番号8よりも劣っている。
実際、従来の手袋においては、酸化亜鉛は0.8~1.2質量部添加するのが通例であるので、酸化亜鉛はさらに応力保持率を低下させることが示された。
次に、実験番号2~7をみると、多核乳酸アルミニウム化合物の量の変化による硬化フィルムの物性の変化をみることができる。引張強度については、おおむね良好であり、多核乳酸アルミニウム化合物を0.1質量%を超え1.5質量%未満とした場合において、特に良好な強度が得られた。引張伸び率とモジュラス(柔らかさ)をみると、多核乳酸アルミニウム化合物の量をさらに増やしていくと次第に伸びなくかつ硬くなっていることが示された。
疲労耐久性についても、多核乳酸アルミニウム化合物の添加量が0.1質量部と1.5質量部は悪く、0.3、0.5、0.7及び1.0質量部は良好な疲労耐久性を示している。以上を勘案すると、ディップ成形用アルミニウム架橋剤が、前記共重合エラストマー100質量部に対して、含まれる酸化アルミニウム換算で0.2質量部~1.3質量部の範囲内であれば、硬化フィルムは良好な物性を持ち、手袋に適した成形体ができることを確認した。
<製造例2:実験番号12~36の成形体の製造>
(実験番号12~16)
pH調整して得られたディップ成形用組成物を、夫々、1日目、2日目、3日間、4日間及び5日間、環境条件下で撹拌しつつ保管した以外は、前述の実験番号4と同一に実施して硬化フィルムを得た。
(実験番号17~21)
比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムを使用し、安定剤として乳酸ナトリウムを使用した(比較架橋剤1)。その他の条件に関しては、pH調整して得られたディップ成形用組成物を、夫々1日目、2日目、3日間、4日間及び5日間、環境条件下で撹拌しつつ保管した以外は、実験番号4と同一に実施して硬化フィルムを得た。
(実験番号22~26)
比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムを使用し、安定剤としてグリコール酸カリウムを使用した(比較架橋剤2)以外は、実験番号17~21と同一に実施して硬化フィルムを得た。
(実験番号27~31)
比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムを使用し、安定剤としてソルビトールを使用した(比較架橋剤3)以外は、実験番号17~21と同一に実施して硬化フィルムを得た。
(実験番号32~36)
比較架橋剤として乳酸アルミニウム正塩を使用した(比較架橋剤4)以外は、実験番号17~21と同一に実施して硬化フィルムを得た。
<製造例2の評価>
実験番号12~36の硬化フィルムの各物性試験の結果を、下記の表5、表6に示した。
Figure 0007166499000016
Figure 0007166499000017
製造例2では、多核乳酸アルミニウム化合物をディップ成形用アルミニウム架橋剤として用いて作製した硬化フィルムの物性と、アルミン酸ナトリウムを出発物質としてこれに各種安定化剤を加えて作製した硬化フィルムとの物性を比較した。比較にあたっては、架橋剤は、最低3日~5日程度の使用可使時間(いわゆるポットライフ)が要求されるので、マチュレーション時間として1~5日設定したときの影響についても併せて物性を確認した。
これらの結果からは、多核乳酸アルミニウム化合物をディップ成形用アルミニウム架橋剤として用いて作製した硬化フィルム(実験番号12~16)は、引張強度、伸び率、柔らかさ(モジュラス)、及び疲労耐久性において、他のアルミン酸ナトリウム出発の架橋剤を用いて作製した硬化フィルム(実験番号17~35)に比べて良好であることがわかる。
ただし、実験番号12~16における応力保持率については、実験番号17~35に比べると同等又は若干劣るが、従来のXNBR手袋と比較すると非常に高いレベルである。また、実験番号12~16は、引張伸び率とモジュラス(柔らかさ)が良いことがわかる。
さらに、疲労耐久性については、実験番号12~16のみが実用可能性を示していた。
また比較架橋剤の中で乳酸アルミニウム正塩を用いた場合のみ(実験番号32~35)は、1日から4日の間で硬化フィルムの物性変化が小さく、多核乳酸アルミニウムを用いた場合(実験番号12~16)と同等の安定性を示した。これは乳酸アルミニウムの溶液中での安定性を示した結果であると考えられ、アルミン酸ナトリウムに乳酸ナトリウムを添加した実験番号17~21において不安定なディップ組成物が得られることと対照的である。このことから乳酸アルミニウム正塩と、アルミン酸ナトリウムに乳酸ナトリウムを添加したものとは、性質が明確に異なることを示している。しかし、架橋剤に乳酸アルミニウム正塩を用いた場合(実験番号32~35)は疲労耐久性が低く、またディップ組成物を調整する際に凝集物が発生するなど問題点が多く、マチュレーション時間が5日ではディッピングが困難であった。通常の乳酸アルミニウム正塩は架橋剤として向いておらず、多核乳酸アルミニウム化合物が適当であるといえる。
<製造例3:実験番号37~41の成形体の製造>
使用する架橋剤を実施架橋剤1~4、比較架橋剤5にすること以外、製造例1の実験番号10と同様の手順で実施して硬化フィルムを得た。
<製造例3の評価>
実験番号37~41の硬化フィルムの各物性試験の結果を、下記の表7に示した。
Figure 0007166499000018
多核乳酸アルミニウム化合物の重合度が大きくなるにしたがって、引張強度は大きく変わらない一方で、引張伸び率は大きくなり、モジュラスは下がることで、伸びが良く柔らかい硬化フィルムを作ることができた。一方で、実験番号41のように多核乳酸アルミニウム化合物の重合度が高すぎると疲労耐久性は下がる傾向にあった。これらの結果から、ディップ成形用アルミニウム架橋剤に含まれる多核乳酸アルミニウム化合物は、重合度が2~20までが好ましい範囲であると考えられる。
<製造例4:実験番号42~44の成形体の製造>
使用する架橋剤を実施架橋剤5~6にすること以外、製造例1の実験番号10と同様の手順で実施して硬化フィルムを得た。
<製造例4の評価>
実験番号42~44の硬化フィルムの各物性試験の結果を、下記の表8に示した。
Figure 0007166499000019
多核乳酸アルミニウム化合物の乳酸/Alを増加させた場合には、引張強度とモジュラスが上がる傾向が見られた。実験番号42~44のいずれの硬化フィルムにおいても、疲労耐久性は十分に高く手袋として十分な性能が得られた。これは、多核乳酸アルミニウム化合物の乳酸/Alを増加させることによりアルミ化合物一分子に含まれるアルミニウムの重合度が下がり、架橋点間距離が小さくなったことが理由であると考えられる。
<参考製造例>
架橋剤として多核乳酸アルミニウム化合物を用いた例と、比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムに各種の安定化剤を添加した例を比較した。
(実験番号12A~14A)
pH調整して得られたディップ成形用組成物を、夫々、3日間、4日間及び5日間、環境条件下で撹拌しつつ保管した以外は、実験番号4と同一に実施して、各物性の評価試験を実施した。なお、多核乳酸アルミニウム化合物は、Alと乳酸残基のモル比は1:0.8として、実施例架橋剤1Aを調整した。
(実験番号15A~17A)
比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムを使用し、安定剤として乳酸ナトリウムを使用した(比較架橋剤1A)。その他の条件に関しては、pH調整して得られたディップ成形用組成物を、夫々、3日間、4日間及び5日間、環境条件下で撹拌しつつ保管した以外は、製造例1と同一に実施して、各物性の評価試験を実施した。比較架橋剤1Aは下記のようにして調製した。秤量した和光純薬製アルミン酸ナトリウム10.0グラムを、純水50.0グラムに溶解した。そこに関東化学社製60%乳酸ナトリウム水溶液18.2グラムを加え、酸化アルミニウム換算で3.6%になるように純水で希釈し比較架橋剤1Aを得た。
(実験番号18A~20A)
比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムを使用し、安定剤としてグリコール酸ナトリウムを使用した(比較架橋剤2A)以外は、実験番号15A~17Aと同一に実施して、各物性の評価試験を実施した。比較架橋剤2Aは下記のようにして調製した。60%乳酸ナトリウム水溶液の代わりに関東化学社製70%グリコール酸水溶液10.6グラム と50%水酸化カリウム水溶液11.0グラムを混合したものを使用した以外は比較架橋剤1Aと同一に実施し、比較架橋剤2Aを得た。
(実験番号21A~23A)
比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムを使用し、安定剤としてソルビトールを使用した(比較架橋剤3A)以外は、実験番号15A~17Aと同一に実施して、各物性の評価試験を実施した。比較架橋剤3Aは下記のようにして調製した。60%乳酸ナトリウム水溶液の代わりに関東化学社製50%ソルビトール水溶液35.6グラムを使用した以外は比較架橋剤1Aと同一に実施し、比較架橋剤3Aを得た。
(実験番号24A~26A)
比較架橋剤としてアルミン酸ナトリウムを使用し、安定剤としてポリエチレングリコール400を使用した(比較架橋剤4A)以外は、実験番号15A~17Aと同一に実施して、各物性の評価試験を実施した。比較架橋剤4Aは下記のようにして調製した。60%乳酸ナトリウム水溶液の代わりに関東化学社製ポリエチレングリコール400、29.4グラムを使用した以外は比較架橋剤1Aと同一に実施し、比較架橋剤4Aを得た。
<参考製造例の評価>
実験番号12A~26Aの硬化フィルムの各物性試験の結果を、下記の表9に示した。
Figure 0007166499000020
これらの結果からは、多核乳酸アルミニウム化合物をディップ成形用アルミニウム架橋剤として用いて作製した硬化フィルム(実験番号12A~14A)は、引張強度、伸び率、モジュラス(柔らかさ)、及び疲労耐久性において、他のアルミン酸ナトリウム出発の架橋剤及び安定剤を用いて作製した硬化フィルム(実験番号15A~26A)に比べて良好であることがわかる。
本発明の多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用組成物から得られる成形体、例えば、手袋は、疲労耐久性に著しく優れ、かつ、引張強度及び引張伸び率が高いにもかかわらず柔らかいことから、本発明のディップ成形用組成物は、今後、ゴム成形体、例えば、ゴム手袋等の分野において大いに利用されることが期待される。

Claims (9)

  1. 多核乳酸アルミニウム化合物を含むディップ成形用アルミニウム架橋剤であって、
    前記多核乳酸アルミニウム化合物は、多核アルミニウム構造と、少なくとも1の乳酸残基を有し、
    前記多核アルミニウム構造は、アルミニウム原子どうしが酸素原子1個を介して複数個重合した構造を有し、その重合度は2~20であり、
    前記アルミニウム原子の残余の原子価は、乳酸残基又は水酸基が結合していることを特徴とするディップ成形用アルミニウム架橋剤。
  2. 前記重合度が2~10である、請求項1に記載のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
  3. 前記アルミニウム原子が2個の残余の原子価を持つ場合は、そのうちの1個以上に乳酸残基が結合している、請求項1又は2に記載のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
  4. 前記アルミニウム原子と乳酸残基のモル比が1:0.5~1:2.0である、請求項1から3のいずれか1項に記載のディップ成形用アルミニウム架橋剤。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のディップ成形用アルミニウム架橋剤、共重合エラストマー、pH調整剤、及び水を少なくとも含み、かつ、pHが8.5~10.5であるディップ成形用組成物であって、
    前記共重合エラストマーが、(メタ)アクリロニトリル由来の構造単位20~35質量%、エチレン性不飽和カルボン酸由来の構造単位1.5~6質量%、及びブタジエン由来の構造単位59~78.5質量%を含む、ディップ成形用組成物。
  6. 有機架橋剤又は酸化亜鉛を更に含む、請求項5に記載のディップ成形用組成物。
  7. 前記ディップ成形用アルミニウム架橋剤が、前記共重合エラストマー100質量部に対して、酸化アルミニウム換算で0.2~1.3質量部含まれる、請求項5又は6に記載のディップ成形用組成物。
  8. 請求項5から7のいずれか1項に記載のディップ成形用組成物を含む構成素材を成形してなる手袋。
  9. 請求項8に記載の手袋の製造方法であって、
    (1)手袋成形型に凝固剤を付着させる凝固剤付着工程、
    (2)ディップ成形用組成物を調製し、撹拌するマチュレーション工程、
    (3)手袋成形型を前記ディップ成形用組成物に浸漬するディッピング工程、
    (4)前記手袋成形型上に形成された膜をゲル化し、硬化フィルム前駆体を作るゲリング工程、
    (5)前記手袋成形型上に形成された硬化フィルム前駆体から不純物を除去するリーチング工程、
    (6)前記工程により形成された手袋の袖口部分に巻きを作るビーディング工程、
    (7)前記手袋を加熱し架橋反応及び乾燥を行うキュアリング工程、
    を含み、
    前記(3)~(7)の工程は前記の順序で行う、手袋の製造方法。
JP2022536953A 2021-02-04 2022-02-01 ディップ成形用アルミニウム架橋剤、ディップ成形用組成物、手袋、及び手袋の製造方法 Active JP7166499B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021016702 2021-02-04
JP2021016702 2021-02-04
PCT/JP2022/003838 WO2022168831A1 (ja) 2021-02-04 2022-02-01 ディップ成形用アルミニウム架橋剤、ディップ成形用組成物、手袋、及び手袋の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2022168831A1 JPWO2022168831A1 (ja) 2022-08-11
JP7166499B1 true JP7166499B1 (ja) 2022-11-07

Family

ID=82741463

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022536953A Active JP7166499B1 (ja) 2021-02-04 2022-02-01 ディップ成形用アルミニウム架橋剤、ディップ成形用組成物、手袋、及び手袋の製造方法

Country Status (6)

Country Link
EP (1) EP4289590A1 (ja)
JP (1) JP7166499B1 (ja)
CN (1) CN116848186A (ja)
CA (1) CA3206403A1 (ja)
TW (1) TW202244033A (ja)
WO (1) WO2022168831A1 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08301668A (ja) * 1995-05-02 1996-11-19 Taki Chem Co Ltd スレーキング抑制剤
WO2000073367A1 (fr) 1999-05-28 2000-12-07 Suzuki Latex Industry Co., Ltd. Produits de latex non collants
WO2008001764A1 (fr) * 2006-06-30 2008-01-03 Four Road Research Ltd. Agent de réticulation contenant une composition de latex et corps moulé réticulé correspondant
JP2009138194A (ja) * 2007-12-07 2009-06-25 Bangkok Synthetics Co Ltd 代替架橋技術
JP2010209163A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Four Road Research Ltd 架橋剤および架橋剤を含むポリマー組成物ならびにその架橋成形体
WO2018110384A1 (ja) * 2016-12-12 2018-06-21 多木化学株式会社 アルミナ粉体

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5958035A (ja) 1982-09-29 1984-04-03 Mitsui Petrochem Ind Ltd 被覆用硬化型樹脂組成物
JP2013123848A (ja) * 2011-12-14 2013-06-24 Mitsubishi Paper Mills Ltd インクジェット記録材料の製造方法
WO2017146238A1 (ja) 2016-02-25 2017-08-31 日本ゼオン株式会社 ラテックス組成物および膜成形体
MY174190A (en) 2016-07-12 2020-03-13 Twolink Sdn Bhd Accelerator free and high filler load nitrile glove

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08301668A (ja) * 1995-05-02 1996-11-19 Taki Chem Co Ltd スレーキング抑制剤
WO2000073367A1 (fr) 1999-05-28 2000-12-07 Suzuki Latex Industry Co., Ltd. Produits de latex non collants
WO2008001764A1 (fr) * 2006-06-30 2008-01-03 Four Road Research Ltd. Agent de réticulation contenant une composition de latex et corps moulé réticulé correspondant
JP2009138194A (ja) * 2007-12-07 2009-06-25 Bangkok Synthetics Co Ltd 代替架橋技術
JP2010209163A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Four Road Research Ltd 架橋剤および架橋剤を含むポリマー組成物ならびにその架橋成形体
WO2018110384A1 (ja) * 2016-12-12 2018-06-21 多木化学株式会社 アルミナ粉体

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2022168831A1 (ja) 2022-08-11
TW202244033A (zh) 2022-11-16
CN116848186A (zh) 2023-10-03
CA3206403A1 (en) 2022-08-11
WO2022168831A1 (ja) 2022-08-11
EP4289590A1 (en) 2023-12-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP4095193B1 (en) Dip molding composition, method of producing glove, and glove
US11214664B2 (en) Polyisoprene latex graphene composites and methods of making them
EP2507313B1 (en) Elastomeric rubber and rubber products without the use of vulcanizing accelerators and sulfur
CA3030384C (en) Glove dipping composition, method for manufacturing gloves, and gloves
EP1412395A1 (en) Accelerator free latex formulations, methods of making same and articles made from same
EP3816222B1 (en) Dip molding composition, method for manufacturing glove, and glove
GB2455409A (en) Crosslinking of diene-type polymers
JP7359496B2 (ja) 架橋剤および架橋剤を含むポリマー組成物ならびにその架橋成形物
JPWO2015147010A1 (ja) ディップ成形用組成物及びディップ成形品
JP7166499B1 (ja) ディップ成形用アルミニウム架橋剤、ディップ成形用組成物、手袋、及び手袋の製造方法
EP1563000A1 (en) A synthetic latex composition
JP2010209163A (ja) 架橋剤および架橋剤を含むポリマー組成物ならびにその架橋成形体
EP3421534B1 (en) Method for manufacturing gloves
CN111542242B (zh) 合成弹性体制品及其制造方法
CN114981340B (zh) 包括来自用于浸渍成型的胶乳组合物的层的浸渍成型制品
CN116323134A (zh) 浸渍成型用组合物及其成型体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220616

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20220616

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20220616

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220802

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221011

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20220928

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221025

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7166499

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150