JP7165330B2 - 多層構造体とその製造方法及び利用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多層構造体とその製造方法及び利用方法に関する。
近年、試験管内(in vitro)において生体内(in vivo)環境を再現した細胞培養を行うためのインビトロ培養デバイスが注目を集めている(非特許文献1、2を参照)。しかしながら、非特許文献1、2等の技術では、血管構造の再現は可能であるものの、細胞を播種、封入する足場材料の多層化は難しく単層の足場材料しか作製できないため、複雑な組織の再現が難しかった。また、作製に特殊な加工装置や専門技術を必要とするものが多いため、コストや手間を要していた。
J. S. Miller et al., "Rapid casting of patterned vascular networks for perfusable engineered three-dimensional tissues," Nat. Mater., vol. 11, no. 7, pp. 768-774, 2012. K. Sakaguchi et al., "In vitro engineering of vascularized tissue surrogates.," Sci. Rep., vol. 3, p. 1316, 2013.
本発明は、低コストで簡易に作製可能であり、足場材料が多層化されたインビトロ培養デバイスである多層構造体とその製造方法及び利用方法を提供することを課題とする。
本発明の一態様に係る多層構造体は、細胞外マトリックスで構成された管状構造の層が複数積層されてなる多層構造の管状体を有することを要旨とする。
本発明の他の態様は、細胞外マトリックスで構成された管状構造の層が複数積層されてなる多層構造の管状体を有する多層構造体を製造する方法に関する。本発明の他の態様に係る多層構造体の製造方法は、管状の成形用外型の内周面と、成形用外型に挿通した棒状又は管状の成形用内型の外周面との間に形成される管状空間に、細胞外マトリックスの溶液を充填した後に固化させ、成形用外型及び成形用内型を取り外して、細胞外マトリックスで構成された第一の管状構造の層を形成する成形工程と、外側の管状構造の層の中空部内に細胞外マトリックスの溶液を導入した後に固化させ、外側の管状構造の層の内周面に細胞外マトリックスで構成された内側の管状構造の層を積層する積層工程と、を含むことを要旨とする。そして、この本発明の他の態様に係る多層構造体の製造方法においては、第一の管状構造の層を外側の管状構造の層として積層工程を1回以上繰り返し行って、管状体を形成する。
本発明のさらに他の態様に係る多層構造体の利用方法は、細胞を備える上記一態様に係る多層構造体を利用する方法であって、管状体の中空部に培養液を導入して細胞を培養することを要旨とする。
本発明の多層構造体は、低コストで簡易に作製可能であり、足場材料が多層化されたインビトロ培養デバイスである。
本発明の多層構造体の製造方法によれば、足場材料が多層化されたインビトロ培養デバイスである多層構造体を、低コストで簡易に作製可能である。
本発明の多層構造体の利用方法によれば、複雑な生体内環境を再現したインビトロ細胞培養を行うことができる。
本発明の一実施形態に係る多層構造体の構造を説明する、一部を切断して示した斜視図である。 本発明の多層構造体の製造方法の一例を説明する図である。 本発明の多層構造体の製造方法の一例を説明する図である。 本発明の多層構造体の製造方法の一例を説明する図である。 本発明の多層構造体の製造方法の一例を説明する図である。 本発明の多層構造体の製造方法の一例を説明する図である。 本発明の多層構造体の製造方法の一例を説明する図である。 本発明の多層構造体の利用方法の一例を説明する図である。 本発明の多層構造体の製造方法の他の例を説明する図である。 作製した第一の管状構造の層の寸法を示すグラフである。 コラーゲンの溶液の流入時間と第二の管状構造の層の厚さとの関係を示すグラフである。
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。さらに、これ以降の説明で参照する各図面においては、同一又は相当する部分には同一の符号を付してある。ただし、各図面は模式的に示したものであり、各部位の寸法の比率等は実物とは異なる場合がある。
本実施形態の多層構造体は、図1に例示するように、細胞外マトリックスで構成された管状構造の層10の複数が同心円状に積層されてなる多層構造の管状体1を有する。管状構造の層10の数は複数であれば特に限定されるものではなく、図1のように2層でもよいし、3層以上でもよい。管状体1の断面形状(管状体1の軸方向に直交する平面で切断した場合の断面の形状)は特に限定されるものではなく、図1のように円形でもよいし、楕円形でもよいし、三角形、四角形等の多角形でもよい。
管状体1の長さは特に限定されるものではないが、例えば1mmから数cmまでの長さとすることができる。また、管状体1の直径及び外径は特に限定されるものではないが、毛細状の管状体の場合の外径は、例えば0.5mm以上3.0mm以下の範囲内とすることができ、内径は、例えば50μm以上500μm以下の範囲内とすることができる。
また、管状体1の形状は、図1のように直線状でもよいし、曲線状でもよい。曲線状である場合は、例えば円弧状、楕円状、2次曲線状、双曲線状、螺旋状に湾曲してなる湾曲状でもよいし、複数の直線部分が屈曲して連結してなる屈曲状でもよい。曲線状の管状体1を製造する場合には、曲線状の管状体を直接製造してもよいし、直線状の管状体を製造した後に湾曲又は屈曲させて製造してもよい。ただし、直線状の管状体を湾曲又は屈曲させると、管状体に損傷が生じるおそれがあるので、曲線状の管状体を直接製造することが好ましい。
細胞外マトリックスの種類は特に限定されるものではなく、例えば、コラーゲン、ラミニン、ゼラチン、カドヘリン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、フィブリリン、エラスチン、キチン、キトサン、ビトロネクチン、プロテオグリカンを使用することができる。これらの細胞外マトリックスの中では、コラーゲンがより好ましい。これらの細胞外マトリックスは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。すなわち、1種の細胞外マトリックスで1つの管状構造の層10を構成してもよいし、複数種の細胞外マトリックスの混合物で1つの管状構造の層10を構成してもよい。また、複数の管状構造の層10を同種の細胞外マトリックスで構成してもよいし、複数の管状構造の層10のうち少なくとも一つの層を他の層とは別種の細胞外マトリックスで構成してもよい。
管状体1の少なくとも一方の端部には、図1に例示するように、管状の支持体20を、管状体1と支持体20のそれぞれの中空部が連続するように接続してもよい。支持体20の形状や寸法は、管状体1と接続しやすいように、管状体1の形状及び寸法に合わせることが好ましい。支持体20の材質は、細胞外マトリックスとの密着性、生体親和性、疎水性などが良好であるならば特に限定されるものではなく、例えばシリコーンゴム等のゴム、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂、金属、ガラス、セラミックを使用することができる。
本実施形態の多層構造体は、図3に例示するように、複数の管状構造の層10の内部、管状体1の外周面、及び管状体1の内周面のうち少なくとも一箇所に、細胞30を備えていてもよい。ここで、管状体1の「外周面」は、最も外側の管状構造の層10の外周面として定義され、管状体1の「内周面」は、最も内側の管状構造の層10の内周面として定義される。図3の例では、2つの管状構造の層10の各内部及び管状体1の内周面にそれぞれ細胞30を備えている。細胞30を備えることにより、本実施形態の多層構造体を、血管構造を再現したものとすることができる。上記の各箇所のうち複数箇所が細胞を備える場合は、それらの箇所が全て同種の細胞を備えていてもよいし、箇所毎に別種の細胞を備えていてもよい。図3の例では、箇所毎に別種の細胞30を備えている。
例えば、血管を再現する場合は、管状体1を2層構造とし、第一の管状構造の層10Aの内部に外膜細胞を播種し、第二の管状構造の層10Bの内部に平滑筋細胞を播種し、管状体1の内周面に内皮細胞を播種するとよい。管状体1の外周面には細胞を播種しない。
また、皮膚を再現する場合は、管状体1を2層構造とし、第一の管状構造の層10Aをマトリゲルで構成して基底膜を模し、第二の管状構造の層10Bをコラーゲンで構成して真皮を模すとともにその内部に繊維芽細胞を播種し、管状体1の内周面に内皮細胞を播種し、管状体1の外周面にケラチノサイト等の表皮細胞を播種するとよい。第一の管状構造の層10Aの内部には細胞を播種しない。
細胞の種類は特に限定されるものではなく、動物の細胞でもよいし、植物の細胞でもよい。動物の細胞の種類としては、幹細胞、前駆細胞、成熟細胞があり、例えば、筋肉細胞、血管内皮細胞、皮膚細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞が挙げられる。細胞の動物種も特に限定されるものではなく、例えば、ヒト、ラット、ウシ、マウス、モルモット、マーモセット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、サル、チンパンジーが挙げられる。また、細胞は、正常細胞でもよいし、癌細胞でもよい。
次に、本実施形態の多層構造体の製造方法を、図2A~2Eを参照しながら説明する。まず、図2Aに示すように、大径な管状の成形用外型51と、小径な棒状又は管状の成形用内型52と、管状の支持体20と、を用意する。成形用外型51、成形用内型52の材質は特に限定されるものではないが、例えば、樹脂、金属、ガラス、セラミックを使用することができる。成形用外型51は、内部の様子が見えるように、ガラス等の透明な材質を用いてもよい。また、成形用内型52の外周面には、後の工程で成形用内型52を容易に取り外せるように、水溶性ポリマーを含有する犠牲層53を被覆してもよい。犠牲層53については、後に詳述する。
次に、図2Aに示すように、2つの支持体20a、20bを間隔を空けつつ成形用外型51内に同軸に配し、両支持体20a、20bの内側に成形用内型52を挿通する。成形用外型51の内周面と成形用内型52の外周面と支持体20a、20bの端面との間に管状空間Sが形成されるので、図2Bに示すように、この管状空間Sに細胞外マトリックスの溶液L(例えば、コラーゲンのゾル溶液)を充填する。細胞外マトリックスの溶液Lの充填には、例えばシリンジを使用することができる。そして、管状空間Sに充填された細胞外マトリックスの溶液Lを固化させた後に、成形用外型51及び成形用内型52を取り外して、細胞外マトリックスで構成された第一の管状構造の層10Aを形成する(成形工程)。
得られた第一の管状構造の層10Aの両端部には、図2Dに示すように、支持体20a、20bが、第一の管状構造の層10Aと支持体20a、20bのそれぞれの中空部が連続するように接続されている。第一の管状構造の層10Aの端部は、第一の管状構造の層10Aの端面のみが支持体20と接触するように形成してもよいが、第一の管状構造の層10Aの端部と支持体20との接続強度を高めるために、第一の管状構造の層10Aの端面と支持体20の端面とが接触し、且つ、第一の管状構造の層10Aの端部の内周面が支持体20の外周面の少なくとも一部を覆うように、第一の管状構造の層10Aの端部を形成してもよい。また、支持体20の端面に凹凸、溝等を設けて、第一の管状構造の層10Aの端部と支持体20との接続強度を高めてもよい。
なお、作製後の多層構造体に備えられる管状の支持体20の個数は、2個に限らず1個でもよい。支持体20の個数が1個である場合には、管状体1の一端部に管状の支持体20を備える多層構造体が得られる。また、管状の支持体20を用いなくても、多層構造体とすることができる。すなわち、管状の支持体20を用いない場合には、管状体1のみからなる多層構造体が得られる。
細胞外マトリックスの溶液Lを固化させる方法は特に限定されるものではないが、例えば、加温することにより細胞外マトリックスの溶液Lを固化させる方法が挙げられる。細胞外マトリックスの溶液Lがコラーゲンのゾル溶液である場合には、例えば37℃に加温することにより、ゲル化させることができる。
前述したように成形用内型52の外周面に犠牲層53が被覆してある場合には、第一の管状構造の層10Aから成形用内型52を容易に取り外すことができる。すなわち、図2Bに示すように上記の加温を水や水溶液の中で行えば、図2Cに示すように、水溶性ポリマーを含有する犠牲層53が溶解して、第一の管状構造の層10Aや支持体20と成形用内型52との間に隙間が形成されるので、第一の管状構造の層10Aから成形用内型52を容易に取り外すことができる。
第一の管状構造の層10Aや支持体20と成形用内型52との間に隙間が形成されれば、成形用内型52の取り外し時に第一の管状構造の層10Aに作用する負荷が小さくなるので、第一の管状構造の層10Aに損傷が生じにくく第一の管状構造の層10Aの作製成功率が高まる。よって、多層構造体の製造コストも低くすることができる。水溶性ポリマーの種類は特に限定されるものではないが、例えばグルコースが挙げられる。
ただし、管状空間Sに細胞外マトリックスの溶液Lを充填した際に、細胞外マトリックスの溶液Lに犠牲層53の一部が溶解して、第一の管状構造の層10Aの内周面に凹凸が生じる場合がある。第一の管状構造の層10Aの内周面に凹凸が生じないようにするためには、犠牲層53の表面が均一に溶解するまで細胞外マトリックスの溶液Lを管状空間Sに流し続ける必要があるので、細胞外マトリックスの溶液Lの必要量が多くなる。そのため、成形用内型52の外周面に犠牲層53を被覆しなくてもよい。成形用内型52の外周面に犠牲層53を被覆しない構成であれば、細胞外マトリックスの溶液Lを管状空間Sに流し続ける必要がないので、細胞外マトリックスの溶液Lの使用量を、必要最低限の量とすることができる。
あるいは、成形用内型52の外周面のうち支持体20に対向する部分に犠牲層53を被覆し、細胞外マトリックスの溶液Lに接する部分(第一の管状構造の層10Aの内周面に対向する部分)には犠牲層53を被覆しない構成としてもよい。成形用内型52と支持体20との摩擦が大きく、成形用内型52と第一の管状構造の層10Aとの摩擦は小さいので、成形用内型52の外周面のうち第一の管状構造の層10Aの内周面に対向する部分に犠牲層53が被覆されていなくても、支持体20に対向する部分に犠牲層53が被覆されていれば、成形用内型52を容易に取り外すことができる。
次に、第一の管状構造の層10Aの内側に、さらに管状構造の層10Bを積層して、多層構造を形成する(積層工程)。まず、図2Eに示すように、送液装置60と第一の管状構造の層10Aの端部とをチューブ61を介して接続し、送液装置60から第一の管状構造の層10Aに細胞外マトリックスの溶液Lを送液して、第一の管状構造の層10Aの中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを充填する。管状体1の端部に支持体20が接続してあれば、この支持体20を介して管状体1の端部とチューブ61とを容易に接続することができる。なお、送液装置60を使用せず、シリンジ等を使用して第一の管状構造の層10Aの中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを充填してもよい。
そして、その中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lを固化させるが、例えば、その中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lのうち外周側部分を固化させ、外周側部分の内側の中心部分は固化させずに除去する。すると、第一の管状構造の層10Aの内側に第二の管状構造の層10Bが積層される。送液装置60から第一の管状構造の層10Aの中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを流し入れ続けながら、細胞外マトリックスの溶液Lを固化させてもよいし、第一の管状構造の層10Aの中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを貯留した状態で、細胞外マトリックスの溶液Lを固化させてもよい。
外側の管状構造の層10の内周面に内側の管状構造の層10を積層する積層工程を1回行えば、図1に示すような2層構造の多層構造体を製造することができる。また、外側の管状構造の層10の内周面に内側の管状構造の層10を積層する積層工程を2回以上行えば、すなわち、積層した内側の管状構造の層10の内側にさらに内側の管状構造の層10を積層するという操作を繰り返せば、3層構造以上の多層構造体を製造することができる。
なお、積層工程において、第一の管状構造の層10Aの内側ではなく第一の管状構造の層10Aの外側に、さらに管状構造の層10Bを積層して、多層構造を形成してもよい。また、第一の管状構造の層10Aの内側と外側の両方に、さらに管状構造の層10Bを積層して、多層構造を形成してもよい。
中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lのうち外周側部分のみを固化させる方法は特に限定されるものではないが、中和法、加熱法、層流法等が挙げられる。まず、図2E、図2Fを参照しながら中和法を説明する。
第一の管状構造の層10Aの中空部内に充填する細胞外マトリックスの溶液Lとして、酸性コラーゲン溶液等の酸性の細胞外マトリックスの溶液を用いる。そして、第一の管状構造の層10Aの中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを充填する際には、図2Eに示すように、第一の管状構造の層10Aをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の陰イオン含有液Pに浸漬する。図2Fに示すように、陰イオン含有液P中の陰イオンI(例えばPO 3-)が第一の管状構造の層10A内を拡散して第一の管状構造の層10Aの内周面に至り、酸性の細胞外マトリックスの溶液Lが中和されるので、第一の管状構造の層10Aの中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lのうち外周側部分がゲル化して、第一の管状構造の層10Aの内側に第二の管状構造の層10Bが積層される。
第一の管状構造の層10Aの中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lのうち中心部分がゲル化しないうちに、第二の管状構造の層10Bが積層された第一の管状構造の層10Aを陰イオン含有液Pから引き上げ、第二の管状構造の層10Bが積層された第一の管状構造の層10Aの中空部内の未固化の細胞外マトリックスの溶液Lを除去することにより、多層構造体が得られる。
なお、陰イオン含有液Pや陰イオンIの種類は、酸性の細胞外マトリックスの溶液Lを中和することができるならば特に限定されるものではない。
次に、加熱法を説明する。送液装置60から第一の管状構造の層10Aの中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを送液して、第一の管状構造の層10Aの中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを充填する。そして、第一の管状構造の層10Aを外方から加熱する。熱は第一の管状構造の層10Aの中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lに外側から伝わり、徐々に内側に伝わっていくので、第一の管状構造の層10Aの中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lのうち外周側部分が固化し、中心部分は固化していない状態で加熱を止め、第一の管状構造の層10Aの中空部内の未固化の細胞外マトリックスの溶液Lを除去することにより、多層構造体が得られる。
なお、加熱の方法は特に限定されるものではなく、気体状、液体状、又は固体状の熱媒体中で加熱する方法や、赤外線等の光の照射で加熱する方法を用いることができる。
次に、層流法を説明する。層流法においては、第一の管状構造の層10Aの中空部内に、二層構造を有する液体を流し込む。すなわち、外周側部分は細胞外マトリックスの溶液Lで構成され、中心部分は細胞外マトリックスの溶液Lではない液で構成された液体を流し込む。そして、中和法又は加熱法と同様の方法で細胞外マトリックスの溶液Lを固化させる。すると、第一の管状構造の層10Aの中空部内に流し込まれた液体のうち、細胞外マトリックスの溶液Lで構成された外周側部分のみが固化し、細胞外マトリックスの溶液Lではない液で構成された中心部分は固化しないので、第一の管状構造の層10Aの内側に第二の管状構造の層10Bが積層され、多層構造体が得られる。
なお、細胞外マトリックスの溶液Lではない液の種類は特に限定されるものではないが、例えば、アルギン酸ナトリウム及びその誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、多糖(デキストランなど)、グリセロール等の生体親和性の高い高分子の水溶液を用いることができる。
本実施形態の多層構造体は、複数の管状構造の層10の内部、管状体1の外周面、及び管状体1の内周面のうち少なくとも一箇所に、細胞30を備えていてもよい。細胞30を播種する播種工程は、積層工程と同時に又は積層工程の後に行ってもよい。細胞30を播種することにより、血管構造を再現した多層構造体を製造することができる。
細胞30を播種する方法は特に限定されるものではなく、管状構造の層10を形成した後に、複数の管状構造の層10の内部、管状体1の外周面、又は管状体1の内周面に、一般的な方法で細胞30を播種してもよい。あるいは、管状構造の層10を形成すると同時に細胞30の播種を行うこともできる。すなわち、第一の管状構造の層10Aを形成する成形工程において使用される細胞外マトリックスの溶液Lや、管状構造の層10Bを積層する積層工程において使用される細胞外マトリックスの溶液Lに、細胞30を含有させ、細胞30を含有する細胞外マトリックスの溶液Lを用いて管状構造の層10A、10Bを形成してもよい。そうすれば、内部に細胞30が播種された管状構造の層10A、10Bが形成される。
このように、細胞30を懸濁させた細胞外マトリックスの溶液Lで管状構造の層10を形成する方法は、細胞30の播種が容易であることに加えて、細胞30を所望の濃度で播種することや複数種の細胞30を播種することが容易である。よって、共培養を行う場合には、細胞30を懸濁させた細胞外マトリックスの溶液Lで管状構造の層10を形成する方法によって多層構造体を製造することが好適である。
このような本実施形態の多層構造体は、図3に示すように、管状構造の層10に細胞30を播種した上で管状体1の中空部に培養液Cを導入して、細胞30の培養を行うことができる。また、本実施形態の多層構造体は多層構造を有しているので、二次元培養のみならず、三次元培養を行うことができる。よって、試験管内において複雑な生体内環境を再現した細胞培養を行うことができる。本実施形態の多層構造体で人体を模擬できれば、動物実験等を代替できるので、本実施形態の多層構造体は、薬効試験、病理解明、再生医療のためのインビトロ培養デバイスとして好適に使用することができる。
また、本実施形態の多層構造体は多層構造を有しているので、前述したように、複数の管状構造の層10に相互に別種の細胞30を播種した上で、管状体1の中空部に培養液Cを導入して共培養を行うことができる。
さらに、本実施形態の多層構造体は、管状体1の中空部に培養液Cを導入し貯留して細胞30の培養を行うことが可能であるが、管状構造を有しているため、管状体1の中空部に培養液Cを灌流させて細胞30を灌流培養することが容易である。灌流培養を行う場合には、管状体1の端部をチューブ62を介して外部の送液装置(図3では図示せず)に接続して、送液装置から培養液Cを連続的に送液することが好ましいが、管状体1の端部に支持体20が接続してあれば、この支持体20を介して送液装置に容易に接続することができる。よって、灌流培養を行う場合には、支持体20を備える多層構造体を用いることが好ましい。
さらに、本実施形態の多層構造体は、血管構造を再現したものとすることができるが、血管構造を再現した細胞培養を行う場合には、送液装置で培養液Cを脈動させつつ灌流させて、生体内環境により近い状況で細胞培養を行うことができる。
さらに、癌細胞を含有する培養液Cを用いて細胞培養を行ってもよい。そうすれば、癌細胞の多層構造体に対する挙動を観察することができるので、例えば癌細胞の血管への浸潤又は転移を試験することができる。
培養液の種類は特に限定されるものではないが、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地、ハム培地等の一般的な動物細胞の培地や、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、生理食塩水、血液が挙げられる。培養液には、所望により薬剤、添加剤等を添加してもよい。
さらに、上記のような本実施形態の多層構造体の製造方法は、特殊な加工装置や専門技術を必要としないので、多層構造体を低コストで簡易に作製することができる。
さらに、上記のような本実施形態の多層構造体の製造方法は、外側の管状構造の層10の中空部内に細胞外マトリックスの溶液Lを充填し、その中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lのうち外周側部分を固化させ、外周側部分の内側の中心部分は固化させずに除去することにより、外側の管状構造の層10の内周面に内側の管状構造の層10を積層するので、積層工程において、中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lのうち外周側部分を固化させる条件によって、内側の管状構造の層10の厚さなどを調整することができる。
例えば、前述した中和法の場合であれば、中和を行う時間、外側の管状構造の層10の中空部内に流し込む細胞外マトリックスの溶液Lの量(流入量)等により、管状構造の層10の厚さを調整することができる。また、前述した加熱法の場合であれば、加熱を行う時間、加熱温度、外側の管状構造の層10の中空部内に流し込む細胞外マトリックスの溶液Lの量(流入量)等により、管状構造の層10の厚さを調整することができる。
さらに、上記のような本実施形態の多層構造体の製造方法とは別の製造方法により、外側の管状構造の層10の内周面に内側の管状構造の層10を積層することができる。例えば、積層工程において、外側の管状構造の層10の内径よりも小径な外径を有する棒状又は管状の積層用内型55を用いる方法があげられる。この別の実施形態の多層構造体の製造方法は、積層用内型55を用いる点以外は、上記本実施形態の多層構造体の製造方法とほぼ同様であるので、異なる部分を中心に詳細な説明を行い、同様の部分については説明を省略する。
すなわち、図4の(a)に示すように、第一の管状構造の層10Aに積層用内型55を挿通し、第一の管状構造の層10Aの内周面と積層用内型55の外周面との間に形成される管状空間に、細胞外マトリックスの溶液Lを充填する。そして、管状空間に充填された細胞外マトリックスの溶液Lの全体を固化させた後に積層用内型55を取り外すことにより、第一の管状構造の層10Aの内周面に第二の管状構造の層10Bを積層する。
細胞外マトリックスの溶液Lの充填と固化を行う際には、治具を用いるなどして、積層用内型55の外周面が第一の管状構造の層10Aの内周面に接触しないように積層用内型55を保持するとよい。例えば、図4の(b)に示すように、管状の治具57a、57bを用いることにより、積層用内型55を第一の管状構造の層10Aに対して適正な位置及び姿勢に保持することができる。
図4の(b)に示す管状の治具57a、57bは、一端部の外径が第一の管状構造の層10Aの内径よりも小さく、且つ、一端部の内径が積層用内型55の外径と同径に形成されている。そして、管状の治具57a、57bは、他端部の外径が一端部の外径よりも大きく、且つ、他端部の内径が一端部の内径よりも大きく形成されている。すなわち、管状の治具57a、57bは、図4の(b)に示すように、その側面視形状が円錐台状をなしている。
管状の治具57a、57bの小径な一端部を、多層構造体が支持体20を備える場合には支持体20の開口部に、多層構造体が支持体20を備えない場合には第一の管状構造の層10Aの開口部に同軸に差し込み、その状態の第一の管状構造の層10A及び管状の治具57a、57bに積層用内型55を挿通すれば、管状の治具57a、57bの小径な一端部の内周面に積層用内型55が支持される。その結果、積層用内型55が第一の管状構造の層10Aと平行をなすように、且つ、積層用内型55が第一の管状構造の層10Aの中空部の径方向中心位置に保持されるため、積層用内型55の外周面が第一の管状構造の層10Aの内周面に接触しない。
なお、積層用内型55を第一の管状構造の層10Aに対して適正な位置及び姿勢に保持することができるならば、治具57a、57bの形状は、図4の(b)に示すものとは異なっていてもよい。また、積層用内型55を第一の管状構造の層10Aに対して適正な位置及び姿勢に保持することができるならば、治具57a、57bを用いる方法以外の方法で積層用内型55を保持してもよい。
このような別の実施形態の多層構造体の製造方法で積層を行えば、内側の管状構造の層10の厚さの制御が容易である。また、上記本実施形態の多層構造体の製造方法と比べて、別の実施形態の多層構造体の製造方法は、多層構造体の製造のための装置が簡易である。すなわち、送液装置60、チューブ61等を用いることなく、積層を行うことが可能である。
第二の管状構造の層10Bの内径よりも外径が小径な積層用内型55を用いれば、上記と同様の方法により、第二の管状構造の層10Bの内周面に第三の管状構造の層をさらに積層することができる。そして、外径がより小径な積層用内型55を用いて、積層した内側の管状構造の層10の内側にさらに内側の管状構造の層10を積層するという操作を繰り返せば、3層構造以上の多層構造体を製造することができる。
積層用内型55の材質は特に限定されるものではなく、成形用内型52と同様である。積層用内型55の外周面には犠牲層を被覆してもよいし、被覆しなくてもよい。また、管状の治具57a、57bの材質も特に限定されるものではなく、樹脂、ゴム、金属、ガラス、セラミック等が挙げられる。
中空部内の細胞外マトリックスの溶液Lを固化させる方法は特に限定されるものではなく、上記本実施形態の多層構造体の製造方法と同様に、中和法、加熱法等を採用することができる。
ここで、別の実施形態の多層構造体の製造方法によれば内側の管状構造の層10の厚さの制御が容易である点について、実例を挙げて説明する。第一の管状構造の層10Aの内周面に、積層用内型55及び管状の治具57a、57bを用いる上記の方法により、第二の管状構造の層10Bを積層した。第一の管状構造の層10Aの外径は2400μm、内径は1000μmである。積層用内型55の外径は、300μm、400μm、又は500μmである。また、第一の管状構造の層10Aを構成する細胞外マトリックスは、ウシ皮膚由来I型コラーゲンである。第二の管状構造の層10Bを構成する細胞外マトリックスは、ウシ皮膚由来I型コラーゲンとマトリゲル由来マウス肉腫との混合物である。
第一の管状構造の層10Aの内周面に積層された第二の管状構造の層10Bの内径を測定した結果、積層用内型55の外径が300μmである場合は、平均内径312μm、標準偏差6μm、変動係数1.9%であった。積層用内型55の外径が400μmである場合は、平均内径407μm、標準偏差12μm、変動係数3.0%であった。積層用内型55の外径が500μmである場合は、平均内径499μm、標準偏差7μm、変動係数1.3%であった。なお、いずれの外径の場合も、n=4である。
これらの実例から、別の実施形態の多層構造体の製造方法によれば、内側の管状構造の層10の厚さが高精度で制御可能であることが分かる。
〔実施例〕
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。前述した本実施形態の多層構造体の製造方法と同様にして、多層構造体を製造した。以下に詳細に説明する。
成形用外型51として内径2.1mmのガラスキャピラリ、成形用内型52として長さ60mm、直径0.5mmのタングステンワイヤ、支持体20a、20bとして長さ7mm、内径0.7mm、外径1.7mmのシリコーンチューブを用意した。タングステンワイヤの外周面には、生体適合性を付与するために、厚さ5nmのポリパラキシリレン樹脂(日本パリレン合同会社のパリレンC(登録商標))の被膜が蒸着してある。そして、ポリパラキシリレン樹脂の被膜の外側に、グルコースからなる犠牲層53がさらに被覆してある。
犠牲層53の被覆方法は以下の通りである。グルコース5gと純水10mLとを混合し、160℃に加熱した。水が蒸発しグルコースが融解した融液が得られたら、融液中にタングステンワイヤを1分間浸漬した。20mm/sの速度でタングステンワイヤを融液から引き上げ、グルコースを冷却し凝固させると、タングステンワイヤの表面にグルコースからなる犠牲層53が被覆された。
次に、犠牲層53を被覆したタングステンワイヤを、2つのシリコーンチューブに挿通した。2つのシリコーンチューブの間は、10mmの間隔を空けた。そして、図2Aに示したのと同様に、タングステンワイヤが挿通された2つのシリコーンチューブを、ガラスキャピラリの内部に配置して、モールドとした。
ガラスキャピラリの内周面とタングステンワイヤの外周面とシリコーンチューブの端面との間に形成された管状空間、及び、ガラスキャピラリの内周面とシリコーンチューブ外周面との間の環状の隙間に、マイクロシリンジと注射針を用いて、ウシ真皮由来の再構成コラーゲン溶液(濃度4mg/mL)を注入した。
再構成コラーゲン溶液を注入したモールドを、図2Bに示したのと同様にダルベッコ改変イーグル培地に浸漬し、37℃で10時間インキュベートした。これにより、図2B、2Cに示したのと同様に再構成コラーゲン溶液はゲル化し、犠牲層53はダルベッコ改変イーグル培地に溶解した。ダルベッコ改変イーグル培地からモールドを取り出して、成形用内型52としてのタングステンワイヤと成形用外型51としてのガラスキャピラリを取り外すと、図2Dに示したのと同様に、シリコーンチューブからなる支持体20a、20bが両端部に接続されたコラーゲンのチューブが第一の管状構造の層10Aとして得られた。
作製した第一の管状構造の層10Aを位相差顕微鏡で観察した結果から、コラーゲンのチューブが形成されていることが確認された。第一の管状構造の層10Aの寸法(内径及び外径)を測定した結果を、図5のグラフに示す。サンプル数8点について寸法の測定を行ったが、図5のグラフに示すように、寸法の変動係数は小さかった。
次に、図2Eに示したのと同様に、両端部のシリコーンチューブを介して送液装置の送液チューブを接続した第一の管状構造の層10Aを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸漬した。そして、送液装置のシリンジポンプを駆動して、例えばpH3.0の酸性コラーゲン溶液を第一の管状構造の層10Aの中空部内に導入した。図2Fに示したのと同様に、リン酸緩衝生理食塩水中の陰イオン(PO 3-)が第一の管状構造の層10A中を拡散して第一の管状構造の層10Aの内周面に至り、中空部内の酸性コラーゲン溶液がpH7程度に中和されるので、第一の管状構造の層10Aの中空部内の酸性コラーゲン溶液のうち外周側部分がゲル化して、第一の管状構造の層10Aの内側に第二の管状構造の層10Bが積層された。
第一の管状構造の層10Aの中空部内の酸性コラーゲン溶液のうち中心部分がゲル化しないうちに、第二の管状構造の層10Bが積層された第一の管状構造の層10Aをリン酸緩衝生理食塩水から引き上げ、第二の管状構造の層10Bが積層された第一の管状構造の層10Aの中空部内の未固化の酸性コラーゲン溶液を除去することにより、多層構造体が得られた。
作製した多層構造体を位相差顕微鏡で観察した結果から、2層の管状構造の層が積層されていることが確認された。また、酸性コラーゲン溶液を第一の管状構造の層10Aの中空部内に流して中和を行う流入時間と第二の管状構造の層10Bの厚さとの関係を示す図6のグラフから、流入時間を変更することによって第二の管状構造の層10Bの厚さを調整することが可能であり、流入時間を長くするほど第二の管状構造の層10Bの厚さが大きくなることが確認された。
さらに、作製した多層構造体の第二の管状構造の層10Bの内周面に細胞を播種し、生死判定を行ったところ、90%以上の細胞の生存が確認されたことから、培養デバイスとして細胞を封入できることが確認された。
さらに、作製した多層構造体を用いてヒト臍帯静脈内皮細胞を培養した結果から、培養デバイスとして使用可能であることが確認された。
なお、上記の実施例においては、第一の管状構造の層10Aの内側に第二の管状構造の層10Bを積層する際に、前述の中和法を用いたが、前述の加熱法や層流法を用いることもできる。以下に、加熱法、層流法を用いた実施例について説明する。
加熱法の場合は、中和法の場合と同様にして作製した第一の管状構造の層10Aの中空部内に、マイクロシリンジと注射針を用いて、ウシ真皮由来の再構成コラーゲン溶液(濃度4mg/mL)を注入した。そして、再構成コラーゲン溶液を注入した第一の管状構造の層10Aを、図2Bに示したのと同様に、17℃に保ったダルベッコ改変イーグル培地に浸漬した。
第一の管状構造の層10Aの中空部内の再構成コラーゲン溶液のうち外周側部分が熱によりゲル化し、中心部分はゲル化していない状態で、第一の管状構造の層10Aをダルベッコ改変イーグル培地から引き上げ、第一の管状構造の層10Aの中空部内の未固化の再構成コラーゲン溶液を除去した。疎水性相互作用によって、第一の管状構造の層10Aの内周面に積層するように再構成コラーゲン溶液のゲル化が進行し、第二の管状構造の層10Bが形成された。
次に、層流法の場合は、中和法の場合と同様にして作製した第一の管状構造の層10Aを、生理食塩水に浸漬した。そして、図2Eに示したのと同様に、第一の管状構造の層10Aの中空部内に、層流を形成する送液装置を用いてウシ真皮由来の再構成コラーゲン溶液(濃度4mg/mL)とアルギン酸ナトリウム水溶液を導入した。層流を形成する送液装置により、外周側部分は再構成コラーゲン溶液で構成され、中心部分はアルギン酸ナトリウム水溶液で構成された、同心円状の二層構造を有する液体(層流)が形成されるので、この液体を第一の管状構造の層10Aの中空部内に導入した。
この液体で第一の管状構造の層10Aの中空部内を満たしたら送液を停止し、生理食塩水の温度を37℃に加温した。これにより再構成コラーゲン溶液がゲル化し、第一の管状構造の層10Aの内周面に第二の管状構造の層10Bが積層された。最後に、生理食塩水を用いて洗い流す等の方法により、第一の管状構造の層10Aの中空部内からアルギン酸ナトリウム水溶液を除去した。
加熱法、層流法により作製された多層構造体について、中和法により作製された多層構造体と同様に、各種評価を行ったところ、中和法により作製された多層構造体と同様の結果が得られた。すなわち、作製した多層構造体を位相差顕微鏡で観察した結果から、2層の管状構造の層が積層されていることが確認された。また、作製した多層構造体の第二の管状構造の層10Bの内周面に細胞を播種し、生死判定を行ったところ、90%以上の細胞の生存が確認されたことから、培養デバイスとして細胞を封入できることが確認された。さらに、作製した多層構造体を用いてヒト臍帯静脈内皮細胞を培養した結果から、培養デバイスとして使用可能であることが確認された。
1 管状体
10 管状構造の層
10A 第一の管状構造の層
10B 第二の管状構造の層
20、20a、20b 支持体
30 細胞
51 成形用外型
52 成形用内型
53 犠牲層
55 積層用内型
57a、57b 治具
C 培養液
L 細胞外マトリックスの溶液
S 管状空間

Claims (19)

  1. 細胞外マトリックスで構成された管状構造の層が複数積層されてなる多層構造の管状体を有する多層構造体であって、
    前記管状体の少なくとも一方の端部に、管状の支持体を、前記管状体と前記支持体のそれぞれの中空部が連続するように接続した多層構造体。
  2. 前記管状体の端面と前記支持体の端面とが接触し、且つ、前記管状体の端部の内周面が前記支持体の外周面の少なくとも一部を覆うように前記管状体の端部を形成するか、又は、前記支持体の端面に凹凸若しくは溝を設けた請求項1に記載の多層構造体。
  3. 前記細胞外マトリックスがコラーゲンである請求項1又は請求項2に記載の多層構造体。
  4. 前記複数の管状構造の層のうち少なくとも一つの層を他の層とは別種の細胞外マトリックスで構成した請求項1又は請求項2に記載の多層構造体。
  5. 前記複数の管状構造の層の内部、前記管状体の外周面、及び前記管状体の内周面のうち少なくとも一箇所に細胞を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の多層構造体。
  6. 血管構造を再現したものである請求項5に記載の多層構造体。
  7. 細胞外マトリックスで構成された管状構造の層が複数積層されてなる多層構造の管状体を有する多層構造体を製造する方法であって、
    管状の成形用外型の内周面と、前記成形用外型に挿通した棒状又は管状の成形用内型の外周面との間に形成される管状空間に、細胞外マトリックスの溶液を充填した後に固化させ、前記成形用外型及び前記成形用内型を取り外して、細胞外マトリックスで構成された第一の管状構造の層を形成する成形工程と、
    外側の管状構造の層の中空部内に細胞外マトリックスの溶液を導入した後に固化させ、前記外側の管状構造の層の内周面に細胞外マトリックスで構成された内側の管状構造の層を積層する積層工程と、
    を含み、
    前記第一の管状構造の層を前記外側の管状構造の層として前記積層工程を1回以上繰り返し行って、前記管状体を形成する多層構造体の製造方法。
  8. 前記積層工程は、前記外側の管状構造の層の中空部内に細胞外マトリックスの溶液を充填し、その中空部内の細胞外マトリックスの溶液のうち外周側部分を固化させ、中心部分は固化させずに除去して、前記外側の管状構造の層の内周面に前記内側の管状構造の層を積層する工程である請求項7に記載の多層構造体の製造方法。
  9. 前記積層工程は、前記外側の管状構造の層に棒状又は管状の積層用内型を挿通し、前記外側の管状構造の層の内周面と前記積層用内型の外周面との間に形成される管状空間に、細胞外マトリックスの溶液を充填した後に固化させ、前記積層用内型を取り外して、前記外側の管状構造の層の内周面に前記内側の管状構造の層を積層する工程である請求項7に記載の多層構造体の製造方法。
  10. 前記外側の管状構造の層に挿通された前記積層用内型を、前記外側の管状構造の層と平行をなすように、且つ、前記外側の管状構造の層の中空部の径方向中心位置に保持する治具を用いる請求項9に記載の多層構造体の製造方法。
  11. 前記成形工程において、前記成形用外型内に管状の支持体を配し、前記支持体の内側に前記成形用内型を挿通させ、前記成形用外型の内周面と前記成形用内型の外周面と前記支持体の端面との間に形成される管状空間に、細胞外マトリックスの溶液を充填した後に固化させ、前記第一の管状構造の層の少なくとも一方の端部に、前記支持体を、前記第一の管状構造の層と前記支持体のそれぞれの中空部が連続するように接続する請求項7~10のいずれか一項に記載の多層構造体の製造方法。
  12. 水溶性ポリマーを含有する犠牲層が前記成形用内型の外周面に被覆されており、前記成形用内型を取り外すときに前記犠牲層を溶解させる請求項7~11のいずれか一項に記載の多層構造体の製造方法。
  13. 前記各管状構造の層の内部、前記管状体の外周面、及び前記管状体の内周面のうち少なくとも一箇所に細胞を播種する播種工程をさらに含む請求項7~12のいずれか一項に記載の多層構造体の製造方法。
  14. 前記細胞外マトリックスの溶液が細胞を含有する請求項7~12のいずれか一項に記載の多層構造体の製造方法。
  15. 請求項5又は請求項6に記載の多層構造体を利用する方法であって、前記管状体の中空部に培養液を導入して前記細胞を培養する多層構造体の利用方法。
  16. 前記管状体の中空部に培養液を灌流させて前記細胞を灌流培養する請求項15に記載の多層構造体の利用方法。
  17. 前記培養液を脈動させて灌流させる請求項16に記載の多層構造体の利用方法。
  18. 前記培養液が癌細胞を含有する請求項15~17のいずれか一項に記載の多層構造体の利用方法。
  19. 前記複数の管状構造の層に相互に別種の細胞を播種した上、前記管状体の中空部に培養液を導入して共培養を行う請求項15~18のいずれか一項に記載の多層構造体の利用方法。
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