JP7165325B2 - 水中生体計測装置、生体電極および生体計測方法 - Google Patents

水中生体計測装置、生体電極および生体計測方法 Download PDF

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Description

この発明は、水中で生体表面の計測部位の信号を検出する水中生体計測装置、生体電極、それが装着されまたは装着用のダイビングスーツ、水中生体計測システム、救助信号発信システムおよび生体計測方法に関する。
ダイビングは海中で行うレジャーで、普段地上で生活する人間にとっては特殊な環境に曝されることになる。それ故に不慮の事故に遭う危険性も高くなる。ダイビング中における事故原因をみると、海水の誤飲やマスクに水が入ったときなどにパニックになり事故に繋がっている。常にダイバーのストレス状態や行動を監視できる手法があればそれらの事故を未然に防ぐことが可能である。
水中でダイバーを監視する手段として、例えばビデオカメラによる撮影等が考えられる。しかし、ストレスや疲労等、ダイバーの内面的、身体的状態を知るのに必ずしも有効な手段といえない。
一方、生体電極を装着して心電図や筋電図を得ることは、地上の医療の現場等において一般に行われている。しかし、運動中の計測、まして水中での計測は研究などの目的に限られていた(例えば、非特許文献1参照)。
何故なら、計測中は計測対象者の身体表面にある計測部位に生体電極を密着させておく必要がある。しかも、計測部位と生体電極との間に周りの水が浸入しないよう防水手段を講じる必要があった。
非特許文献1における実験では、被験者の身体に貼り付けた筋電電極や生体アンプ等をテープで覆って完全に防水し、水泳時の筋電図を計測している。このように身体に筋電電極等を直接貼る方法は、実験を目的としない一般のダイビングにおける生体計測に適用が困難である。
一般の人が容易に水中で生体計測を行える機材や環境が整っているとはいえない。
生田泰志,松田有司,山田陽介,来田宣幸,小田伸午:クロール泳における泳速度,ストローク頻度およびストローク長の変化と筋活動の関係,体力科学,59,427-438,2010.
水中で手軽にかつ安定的に計測できる心電計や筋電計が実現できれば、水中という特殊な環境であってもより安全に運動や作業を行える環境が整う。
また、医療の現場等で心電図や筋電図を得るための計測においては、アーティファクト対策、即ち計測を行う場所において電磁誘導等に起因するノイズを如何に軽減するかが課題となっている。生体電極により検出されるのは微弱な信号だからである。例えばシールド室内で生体信号の計測を行えばノイズの影響を抑制できる。しかし、一般の医療現場でそのような特殊な設備を整えることは容易でない。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、水中で動作する計測対象であっても生体電極を用いた計測を容易に安定して行える生体計測装置を提供するものである。あるいは、生体電極を用いた計測において、電磁ノイズの影響が抑制された計測を容易に実現できる生体計測装置を提供するものである。
この発明は、生体表面に位置する計測部位を囲むように接触して前記計測部位上に室を形成する遮蔽体と、前記室を形成する遮蔽体の内面に配置される検出用電極と、前記室が液密になるように前記遮蔽体を前記生体表面に向けて押圧する押圧部材と、電解質含有水中で前記検出用電極を用いた生体計測を行う生体計測回路と、を備え、前記検出用電極は、前記液密の室が形成された状態において前記検出用電極が前記計測部位に接触しなくても前記計測部位の信号を検出する水中生体計測装置を提供する。
さらに、この発明は、電解質含有水中での生体計測に用いられる生体電極であって、生体表面に位置する計測部位を囲むように接触した場合、前記計測部位上に室を形成する遮蔽体と、前記室を形成する遮蔽体の内面に配置される検出用電極と、を備え、前記検出用電極は、前記遮蔽体が前記生体表面に向けて押圧され、前記計測部位上に液密の室が形成された状態において前記検出用電極が前記計測部位に接触しなくても前記計測部位の信号を検出する生体電極を提供する。
また、この発明は、前記生体電極が装着された、または装着用のダイビングスーツを提供する。
さらにまた、この発明は、上述の水中生体計測装置と、前記水中生体計測装置から取得されたデータを解析する解析装置と、を備える水中生体計測システムを提供する。
また、この発明は、ダイバー用の救助信号発信システムであって、上述の水中生体計測装置と、水中でダイバーが受けるストレスが予め定められた限度内か、あるいはダイバーの筋肉の動きが予め定められた正常動作内か否かを前記水中生体計測装置の計測に基づいて判定し、限度を超えるストレスであるかまたは異常なダイバーの動きであるとの判定に基づいて、救助信号を発信するダイバー装着可能な発信装置と、を備えるダイバー用の救助信号発信システムを提供する。
さらに異なる観点からこの発明は、前記生体電極を、遮蔽体が計測部位を囲むように生体表面に接触させて押圧部材で生体表面に押圧するステップと、生体が浸かる電解質含有水中に基準電位センサを配置するステップと、前記基準電位センサに対する前記検出用電極の電位差を生体計測回路により計測するステップとを備える水中での生体計測方法を提供する。
この発明による水中生体計測装置において、検出用電極は、前記液密の室が形成された状態において前記検出用電極が前記計測部位に接触しなくても前記計測部位の信号を検出するので、検出用電極が計測部位に接触していても、接触していなくても生体電極を用いた計測が可能であり、水中で動作する計測対象であっても手軽に生体電極を用いた計測が行える。
また、この発明による水中生体計測装置は、水中で計測を行うことによって、計測対象の周囲の電解質含有水が電磁波をシールドする効果を発揮し、電磁ノイズの影響が抑制された精度のよい計測を手軽に実現できる。
この発明による生体電極、それが装着されまたは装着用のダイビングスーツ、水中生体計測システム、救助信号発信システムおよび生体計測方法も同様の作用効果を奏する。
実施形態における生体電極の構成を示す側面図である。(実施の形態1) 実施形態における生体電極の構成を示す平面図である。(実施の形態1) 実施形態における心電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。(実施の形態1、計測部位が左右の腕) 実施形態における心電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。(実施の形態1、計測部位が胸部) 実施形態おける計測実験で、地上における左右の腕の計測波形を示す波形図である。(実施の形態1) 実施形態おける計測実験で、淡水中における左右の腕の計測波形を示す波形図である。(実施の形態1) 実施形態おける計測実験で、淡水中における胸部左右の計測波形を示す波形図である。(実施の形態1) 実施形態おける計測実験で、海水中における胸部左右の計測波形を示す波形図である。(実施の形態1) 実施形態における心電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。(実施の形態2、計測部位が胸部) 実施形態おける計測実験で、海水中における胸部左右の波形図である。(実施の形態2) 実施形態における心電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。(実施の形態3) 図8に示す心電計で計測された波形の例を示す波形図である。(実施の形態3) 図8に示す心電計で計測された波形の異なる例を示す波形図である。(実施の形態3) 実施形態における筋電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。(実施の形態4、計測部位が橈側手根屈筋の中央部) 実施形態に係る生体電極の構成例を示す側面図である。(実施の形態4) 図11に示す筋電計を用いた計測実験で得られた結果を示す波形図である。(実施の形態4) 実施形態に係る生体電極の構成例を示す側面図である。(実施の形態5) 図14Aに示す生体電極が装着された状態を示す説明図である(実施の形態5) 実施形態に係る生体電極の構成を示す側面図である。(実施の形態6) 実施形態に係る生体電極を電極側から見た平面図である。(実施の形態6) 実施形態における筋電計の構成を示す説明図である。(実施の形態6) 実施形態おける計測実験で、淡水中における筋電計の計測波形を示す説明図である。(実施の形態6) 実施形態おける計測実験で、海水中における筋電計の計測波形を示す説明図である。(実施の形態6)
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(実施の形態1)
この発明による水中生体計測装置の一態様として、心電計を用いた計測の例について以下に述べる。
一般に心電計は、心臓を挟む2ヶ所に生体電極を取り付けて心臓が全身に血液を送り出す時に発生する生体信号を、差動増幅器を用いて検出し心電図を得る装置である。
ストレス評価を行うための手法として、心拍変動性指標が用いられることが多い。そのために心電図のR波と呼ばれる特徴的な波形の間隔(R-R間隔という)を計測する。心電図は心臓の心房筋と心室筋の興奮と弛緩、即ち心筋の動きを体表面に配置された電極で電気信号として検出したものである。心臓の脈動に同期して現れる一周期の基本的な波形は、急峻な凸状または凹状の波形であるP,QRS,Tの各波とT波に続くU波を含む。P波は心房の興奮過程を示す山の波形である。Q,R,Sの一連の各波は左右の心室筋の興奮を示す山の波形である。Q波,S波の谷に対してR波は逆方向の山の波形を示す。T波は心室筋の興奮が消えていく過程を示す山の波形である。U波はT波の後に続く低い山の波の波形である(後述する図3参照)。なお、各波の山谷は相対的なものであって、逆極性の波形の場合は山谷が入れ替わる。
心拍の計測は、R波に限られるものでなく、例えばS波の間隔を計測してもよい。
≪生体電極の構成例≫
図1Aおよび図1Bは、この実施形態における生体電極の構成を示す説明図である。図1Aは生体電極が計測対象の皮膚(生体表面)に接触した状態を側方からみた状態を示す説明図である。図1Bは、図1Aに示す生体電極を上方(生体表面への接触面と反対の側)からみた場合の形状を示す説明図である。なお、図1Aに検出用電極が表れるようにするため、側方遮蔽材については中央断面を示している。
図1Aおよび図1Bに示す生体電極11は、検出用電極13、環状のクロロプレーンスポンジゴム(以下、CRスポンジゴムともいう)からなる側方遮蔽材19S、アクリル材からなる蓋遮蔽材19Cを備える。側方遮蔽材19Sと蓋遮蔽材19Cとは、接着剤で液密に接着されて一体となり遮蔽体19を構成する。
蓋遮蔽材19Cにアクリル材を用いているのは、絶縁材料であって、入手および加工が容易だからである。しかし、材質はアクリル材に限らず、絶縁性と防水性を有する材料であればよい。例えば、側方遮蔽材19Sと同じCRスポンジゴムを用いてもよい。さらに、側方遮蔽材19Sと蓋遮蔽材19Cとを一体に形成してもよい。
側方遮蔽材19SにCRスポンジゴムを用いているのは、絶縁体であって適度な弾性があり、加工が容易であるといった好適な特性のためである。さらに、ダイビングスーツの素材として一般的なためである。即ち、ダイバーの水中における生体計測を行う場合に、遮蔽体がダイビングスーツと同じ材質の、さらにはダイビングスーツと一体のものであれば取り扱い、耐久性、経済性などの面で利点が多いと考えられる。
側方遮蔽材19Sと蓋遮蔽材19Cの両方に、CRスポンジゴム等の弾性体を用いることは好ましい態様といえる。一方、側方遮蔽材19Sと蓋遮蔽材19Cとにアクリル材を用いることも不可能ではないが好ましい態様といえない。アクリル材は弾性体といえず、皮膚15と遮蔽体19との間の液密性を保ち易いとはいえないからである。少なくとも側方遮蔽材19Sには弾性体を用いることが好ましい。
検出用電極13は、後述する生体アンプへ信号を送る信号線13Wを有している。図1Aに示すように、信号線13Wは側方遮蔽材19Sと蓋遮蔽材19Cとの接着面に挟まれて液密性を保ちつつ生体電極11の外部へ伸びている。
検出用電極13の電極表面は、蓋遮蔽材19Cと反対側に露出している。露出する電極表面が計測部位17の皮膚15に対向した状態で遮蔽体19が皮膚15へ向けて押圧されると、弾性を有する皮膚15と遮蔽体19とが密着して液密の室が計測部位上に形成される。
図1Aおよび図1Bに示す生体電極11の大きさは、以下の通りである。
側方遮蔽材19Sの皮膚15に接触する面からの厚さが 5mm、側方遮蔽材19Sの内径が 7mm、外径が 20mmである。蓋遮蔽材19Cの形状は、1辺が 25mmの正方形であり、厚さは 2mmである。
検出用電極13としては、株式会社ユニークメディカル製 Ag/AgCl 皿電極 品名EPA-12 が適用可能である。ただし、これに限るものでない。検出用電極13は外径が 6mm、最大厚さが 3mm、露出する電極表面の直径が 4mmである。露出する電極表面は、皮膚15と接触する側の側方遮蔽材19Sの端面から 2.5mm程奥側にある。押圧力によって、露出する電極表面から皮膚15までの距離は 2.5mmよりも近くなるが、皮膚15と常に接触するまでに至らない。
以上のように構成された生体電極11が水中で皮膚15に向けて押圧されると、皮膚15と遮蔽体19とに囲まれた室内の水と外側の水とが遮断され、電気的に絶縁された状態になる。
≪水中生理計測装置としての心電計の構成例≫
図2Aおよび図2Bは、この実施形態における心電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。図2Aは、計測部位が左右の腕の場合を示している。図2Bは計測部位が胸部の左右の場合を示している。
図2Aおよび図2Bに示す生体電極11aおよび11bを被験者の皮膚に向けて押圧するための押圧部材25として、ゴム製のバンドを用いた。
図2Aおよび図2Bに示すように、心電計は、1以上の対の生体電極、生体電極からの微小な生体信号を差動増幅する生体アンプ21(生体電気用アンプとも呼ばれる)および生体アンプ21からの出力信号を記録するデータロガー23を備える。
被験者の左右の腕(図2A参照)または胸部の左右(図2B参照)に装着した生体電極11aおよび11bから得られる信号を、生体アンプ21(日本光電工業株式会社製 型名AB-621G)で差動増幅する。そして、生体アンプ21からの出力をデータロガー(株式会社キーエンス製 形式NR-2000)で時系列データとして記録する。その後、記録された時系列データをパーソナルコンピュータに取り込み、波形解析用のソフトウェア(株式会社キーエンス製 WAVE SHOT! 2000)で解析処理する。実験で使用した生体アンプ21の設定を表1に示す。
電極11Gは、生体アンプ21のグラウンド電位を電解質含有水29の電位に合わせるために電解質含有水29中に配置されている。生体アンプ21は、生体電極11aおよび11bによって検出される信号を差動増幅して出力する。生体アンプ21のグラウンド電位を電解質含有水29の電位に合わせることで、出力信号の飽和が防げる。
Figure 0007165325000001
≪水中における心電図の計測実験≫
心電図の計測は、「地上」と「淡水中」、「海水中」の3通りの環境で行った。なお、地上での計測は、水中(淡水中および海水中)との比較のために行ったものである。地上で計測する際には、図1Aおよび図1Bに示す生体電極ではなく、皮膚に密着させるタイプの従来の生体電極を被験者の左右の前腕に取り付けた。医療用の計測に用いられる一般的な生体電極である。図1Aおよび図1Bに示す生体電極では、検出用電極13と皮膚15との間に空隙があるために、地上では計測部位の信号が検出できない。
淡水中と海水中での計測については、図1Aおよび図1Bに示す生体電極を被験者の腕と胸部のそれぞれ2ヶ所に取り付けた。生体電極の取り付け位置は、詳細には左右の前腕(腕)の2箇所と第四肋間の高さの胸骨(胸部の前壁中央にあって肋骨を連結する骨)を挟む左右2ヶ所(胸部)である。
被験者の計測部位に生体電極を押圧するために、ゴム製のバンドを用いた。
淡水は水道水を使用した。海水は、一般的な海水の電気伝導率(25℃で約5.3S/m)に合わせて水道水に食塩を混ぜて作成した模擬海水を用いた。実験に用いた淡水および海水の電気伝導率の値を表2に示す。表2に示すように、淡水の電気伝導率は約0.02 S/m(ジーメンス/メートル)である。純水の電気伝導率が0.00005~0.001 S/mであるのに対して、高い電気伝導率を有する。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの塩類(電解質)が溶解している電解質含有水だからである。
Figure 0007165325000002
水中で心電図の計測を行うにあたり、被験者にアクリル水槽27(長さ×幅×深さ:内寸1770mm×570mm×570mm)の中で仰向けの状態で安静にしてもらった。
地上(腕)および淡水中(腕、胸部)と海水中(腕、胸部)で計測した心電図の計測結果を図3から図7に示す。横軸は時間、縦軸は波形の強さ(単位ミリボルト)である。
図3は、この実施形態おける計測実験で、地上における左右の腕の計測波形を示す波形図である。
図3に示す心電図波形を見ると、P,QRS,T,Uの各波が周期的に表れており、1秒間に1度程度の間隔で電圧の値が数mV大きくなり急峻なピークを示す特徴的なR波やS波が確認できる。従って、心拍の計測が可能である。
図4Aは、この実施形態おける計測実験で、淡水中における左右の腕の計測波形を示す波形図であり(図2A参照)、図4Bは、胸部左右の計測波形を示す波形図である(図2B参照)。
淡水中では、図4Aの腕、図4Bの胸部ともに、地上で通常の電極を用いた計測と同様に、あるいはより明確にR波とS波が確認できる。即ち、地上において従来の生体電極を用いた心電図と同等以上にR波やS波を計測でき、心拍の計測が可能である。
図5は、この実施形態おける計測実験で、海水中における左右の腕の計測波形を示す波形図である(図2A参照)。
図5に示す計測波形にはR波とS波が現れており、心拍の計測が可能である。
(実施の形態2)
水中では、計測対象者が浸かる周囲の水が電磁シールドの効果を奏し、外界の電磁波が遮断される。そのため、ノイズ(アーティファクト)の影響が地上よりも低減された計測が可能になる。
実施の形態1では、従来の生体電極を用いた心電図の計測と同様、心臓を挟む2箇所を計測部位としている。即ち、左右の腕、または胸骨を挟む左右2箇所の胸部を計測部位としている。
しかし、周囲の水によって十分な電磁シールド効果が得られるなら、計測対象者の計測部位を1箇所のみとしてもよい。差動増幅器に入力するもう一方の入力信号は計測対象者の周囲にある水の電位にすればよい。つまり、もう一方の電極は周囲の水の中に配置すればよい。
図6は、この実施形態における心電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。実施の形態1に係る図2Bに対応する図である。図6が図2Bと異なるのは、2つのうち一方の生体電極に代えて電極11Rが被験者の胸部でなく水中に配置され、電解質含有水29の電位を検出している点である。即ち、図6における電極11Rは、被験者が浸かる電解質含有水29の電位を検出する基準電位センサの役割を果たしている。
電極11Gは、生体アンプ21のグラウンド電位を電解質含有水29の電位に合わせるために電解質含有水29中に配置されている。
図7は、この実施形態おける計測実験で得られた波形図である。図7の波形図は、実施の形態1に係る図5の波形図に対応するものである。生体アンプ21の設定も同一である。図7の計測波形には、図5と同様にR波とS波が顕著に現れており、心拍の計測が可能である。
この実施形態における計測結果から、水中における心拍の計測は、従来のように心臓を挟む2箇所を計測部位としなくても、1つの計測部位だけでも可能である。電解質含有水中の電位が安定しているので1電極でもR波やS波が確認できる。
例えば、この発明に係る生体電極をダイビングスーツに配置してダイバーの心拍を計測する場合について考える。ダイビングスーツの胸部の少なくとも1箇所に生体電極11aを配置し、もう一つの電極11Rをダイビングスーツの外面に配置して周囲の水の電位を検出する基準電位センサとすれば、安定し心電波形が得られR波やS波が確認できると期待される。
さらに、この知見から、ダイバーに限らず医療の現場においても、実施形態に係る生体計測装置が適用可能であることが導かれる。
例えば、計測対象者が計測用のジャケットを着用し、電解質含有水を満たした水槽に浸かって計測を行えば、従来の生体計測に比べてアーティファクトの影響が低減された心電図が得られると期待される。
(実施の形態3)
この実施形態では、被験者の心臓を挟む2箇所を計測部位とした心電波形と、1箇所を計測部位とし、もう一つの生体電極で被験者の周囲の電解質含有水の電位を計測した場合とで、計測される波形の違いを確認する。
図8は、この実施形態における心電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。図8に示すように、生体アンプ21は、2対の入力信号をそれぞれ差動増幅して同時に出力する。生体アンプ21からの2対の出力信号は、オシロスコープ31の2つの入力チャネル(CH1およびCH2)にそれぞれ入力される。オシロスコープ31で、被験者の計測により得られる2対の心電波形を表示し、記録する。
2つの心電波形のうち、第1の波形(オシロスコープ31のCH1波形)は、被験者の胸部に装着された生体電極11aの電位と電解質含有水29の中に配置された電極11R(基準電位センサ)の電位とを差動増幅して得られる。即ち、1電極の計測波形である。
第2の波形(オシロスコープ31のCH2波形)は、被験者の胸部左右に装着された生体電極11aおよび生体電極11bの電位を差動増幅して得られる。即ち、2電極の計測波形である。
電極11Gは、生体アンプ21のグラウンド電位を電解質含有水29の電位に合わせるために電解質含有水29中に配置されている。
生体電極11aおよび生体電極11bは、図1Aおよび図1Bと同様の構成である。一方、電極11Gおよび11Rは、図1Aに示す検出用電極と同様のもの(株式会社ユニークメディカル製 Ag/AgCl 電極 品名 EPA-12)を用いている。ただし、これに限るものでない。
計測に用いた生体アンプは、ティアック株式会社製、製品名 BA1008 である。実験で使用した生体アンプの設定を表3に示す。
Figure 0007165325000003
オシロスコープは、テクトロニクス社製、製品名MSO2024であり、計測時のサンプリング間隔は 160マイクロ秒である。
図9は、図8に示す心電計で計測された2つの波形を重ねて示す波形図である。
図9で、黒色の線で示す波形(凡例「1極」)は、オシロスコープ31のCH1の波形であって、1電極の計測で得られた波形である。一方、図9でグレーの線で示す波形(凡例「2極」)は、オシロスコープ31のCH2の波形であって、2電極の計測で得られた波形である。
図9に示すように、2つの波形はよく一致しており、明確なS波が確認できる。
被験者の計測部位の少なくとも1つを検出する生体電極と、被験者の周囲の電解質含有水の電位を検出する基準電位センサとがあれば、水中における被験者の心拍を計測できる。
図10は、図8に示す心電計で計測された波形の異なる例を示す波形図である。図8および図9における被験者の胸部に代えて腋の部分に生体電極を装着した場合の計測波形である。
図9と同様に、黒色の線で示す波形(凡例「1極」)は、オシロスコープ31のCH1の波形であって、1電極の計測で得られた波形である。一方、グレーの線で示す波形(凡例「2極」)は、オシロスコープ31のCH2の波形であって、2電極の計測で得られた波形である。
図10の場合、両方の波形にS波が確認されるものの、図9に比べると2つの波形の相違は大きい。「1極」の波形のS波は、「2極」の波形に比べると目立たない。このように、計測部位によっては1電極と2電極の場合で波形に相違が生じ得る。
(実施の形態4)
実施の形態1および2は、心電計を用いて水中における心拍数の計測について述べたが、この実施形態では異なる生体計測の態様である筋電計について述べる。
例えば、筋電計を用いて潜水中のダイバーを計測することによって、水中でのダイバーの動作が検出できる。
図11は、この実施形態における筋電計の構成と被験者の計測部位を示す説明図である。図11に示す生体電極11aおよび11bは、図1Aおよび図1Bに示す実施の形態1のものと類似の構成を有するが、異なる点もある。図12は、この実施形態に係る生体電極の構成例を示す側面図である。
図12に示すように、図1Aの生体電極に対して側方遮蔽材19Sと蓋遮蔽材19Cとの間に、CRスポンジゴム製の内蓋遮蔽材19iを追加し、遮蔽体19の柔軟性(弾性)を確保した構成になっている。即ち、後述する掌屈動作をした場合に室の液密性がより保たれ易い構成になっている。
≪水中生理計測装置としての筋電計の計測例≫
発明者らは、図12に示す生体電極を用いて水中での筋電図の計測実験を行った。実験の概要を以下に述べる。
図11に示すように、実験では被験者に左腕を水槽(W450×D200×H220mm3)の模擬海水(水道水に NaCl を溶かして 12L作成したもの。電気導電率 5.3 S/m)に浸けて貰い、生体電極11aおよび11bを押圧部材(幅15mmのゴム製のバンド)で橈側手根屈筋の中央部に取り付けた。
被験者に、握り拳を作り、手関節を掌屈側へ全力で曲げる動作(掌屈動作)を行って貰った。橈側手根屈筋は、掌屈動作をするときの主動作筋の一つである。この際に得られる筋電位を、生体アンプ21を通してオシロスコープ31で記録した。なお、使用した生体アンプ21およびオシロスコープ31は、実施の形態3と同一である。生体アンプ21の設定を表4に示す。
Figure 0007165325000004
図13は、この実施形態における計測実験で得られた結果を示す波形図である。即ち、海中で被験者に掌屈動作して貰った場合の筋電図である。
図13で、黒色の線で示す波形(凡例「1極」)は、オシロスコープ31のCH1の波形であって、1電極の計測で得られた波形である。一方、図13でグレーの線で示す波形(凡例「2極」)は、オシロスコープ31のCH2の波形であって、2電極の計測で得られた波形である。
2電極の計測波形の方が1電極の計測波形よりもやや顕著であるが、時間が 0.5から1.0秒の範囲で、1電極、2電極の何れについても掌屈動作に伴って波形の振幅が大きくなる変化が確認できる。
(実施の形態5)
この態様では、ダイバーが着用するダイビングスーツ、特にウェットスーツに生体電極を組み込む構成について述べる。
ダイバーは海中への体温の放出を避けるために保温効果のあるウェットスーツを着用する。
このウェットスーツに筋電電極を組み込む構造として、例えば図14Aに示す生体電極の構造が考えられる。
ウェットスーツ33の生地の内側に突起部35を設け、突起部35の内側に凹部37を設け、凹部37に検出用電極13を埋め込む構造である。なお、図14Aは近接した位置に2つの生体電極を配置する場合の構造を示している。実施の形態2のように、1つの生体電極11aで計測を行う場合、凹部37は1つで足りる。突起部35と凹部37とが設けられたウェットスーツの生地が遮蔽体19として機能する。
一般に、ウェットスーツは、生地の素材として弾性および断熱性を有するCRスポンジゴムが用いられ、身体より若干小さく作られるところ、図14Aのような構造とすることで、ウェットスーツの素材であるCRスポンジゴムがスーツ装着時にダイバーの皮膚に密着する(図14B参照)。即ち、ウェットスーツ33の遮蔽体19として機能する突起部35の生地、特に蓋遮蔽材に相当する部分とそれに連なる周囲の部分の生地が押圧部材25として機能する。
(実施の形態6)
この実施形態では、海水と淡水における筋電計の計測波形について述べる。
この実施形態で用いた生体電極は、実施の形態5で述べたような、ウェットスーツへの埋込を考慮して、図15Aおよび図15Bに示す構成を有するものを用いている。
図15Aおよび図15Bにおいて、検出用電極13a、13bおよび13Rは、それぞれ図1Aおよび図1B中に示す検出用電極13と同型のものである。3つの検出用電極13a、13Rおよび13bは、側方遮蔽材19Sで隔てられ、近接して配置されている。側方遮蔽材19Sの材質は、CRスポンジゴムである。CSC2型ゴム硬度計で計測したCRスポンジゴムの硬度は、39 である。
蓋遮蔽材19Cはアクリル材であって、横35mm、縦 33mm、厚さ 2mm の板材 2枚と横 35mm、縦 18mm、厚さ 2mm の板材 1枚の合計 3枚を重ねたものである。
側方遮蔽材19Sは、横 33mm、縦 13mm、厚さ5mm の大きさであり、直径 7mm の孔が3つ形成されている。隣り合う孔の中心と中心の間隔は 10mm である。
3つの検出用電極13a、13bおよび13Rのうち、中央の検出用電極13Rは基準用電極であって、アーティファクト(雑音)対策用の参照電極である。左右の検出用電極13aおよび13bはいずれも計測用の電極である。筋電の波形は、検出用電極13aおよび検出用電極13bの電位を作動増幅して得られたものである。
図16は、この実施形態における筋電計の構成を示す説明図である。生体アンプ21およびオシロスコープ31は、実施の形態4における図11に示す計測と同一のものであり、設定も同一である。
≪淡水および模擬海水での計測波形≫
実施の形態1と同様に、淡水は水道水を使用し、海水は、一般的な海水の電気伝導率(25℃で約5.3S/m)に合わせて水道水に食塩を混ぜた模擬海水を用いた。
図17は、この実施形態おいて淡水中で筋電計により計測された筋電図である。図18は、この実施形態おいて海水中で筋電計により計測された筋電図である。
淡水中および海水中の何れにおいても、掌屈動作を示す筋電図が得られた。
(実施の形態7)
実施の形態1~4および6における生体計測では、この発明に係る生体電極の有効性を示す実験的な計測について述べた。
しかし、ダイバーが水中で実用に供する水中生体計測装置は、さらに構成上の工夫が必要である。
図6に示す実施の形態2に係る水中生体計測装置を参照して、より実用的な装置構成について述べる。
生体電極11aについては、実施の形態5で述べたようにダイビングスーツの生地に埋め込む構成が好ましい。しかし、ダイビングスーツに限らず、別体のベルトやウェアとして構成してもよい。その場合も、例えばCRスポンジゴムのような弾性を有する素材を用いることが極めて好ましい。
生体電極11は、図15Aおよび図15Bに示すような複数個の検出用電極を備えた構成でもよいが、1つだけでもよい。
1つの生体電極を用いて計測を行う場合、計測の基準電位を得るために、計測対象が浸かっている水の電位を検出する基準電位センサが必要である。
基準電位センサは、生体電極が埋め込まれたダイビングスーツあるいは別体のベルトやウェアの外面に配置されてもよい。
生体アンプ21およびデータロガー23は、電池駆動のものを防水ケースに入れてダイバーが装着すればよい。データロガー23に記録された波形のデータは、後日地上で解析装置を用いた解析を行えばよい。解析装置としては、例えばデータロガー23の波形解析ソフトウェアがインストールされたコンピュータが適用可能である。
潜水中のダイバーの計測波形を単に記録するだけでなく、リアルタイムに受信して解析したい場合がある。その場合は、データロガー23に代えて、あるいはそれに加えて、水中で使用可能な送信器を装着し、計測されたデータを送信すればよい。
電解質含有水のシールド効果によって、電磁波による通信は水中で減衰する。そのため、送信方式は電波を用いるものでなく超音波や光を用いることが好ましい。送信器から発せられる信号は、付近にいるバディ、あるいは水上の関係者に届けばよい。
異なる態様として、送信器を水中で離脱可能な装着機構を介して装着してもよい。それに加えて、生体アンプからの計測波形を解析して前記装着機構を制御する波形解析装置をさらに装着する。波形解析装置は、計測波形に基づいてダイバーの状態を判定する。異常と判断した場合、前述の装着機構を制御して送信器を離脱させる。離脱後、送信器は浮上し、水面に達したら救助信号を発する。以上のような救助信号発信システムを構成してもよい。
ダイバーの状態が正常か異常かの判定は以下のように判定してもよい。
心電計を用いる場合、水中でダイバーが受けるストレスを心拍の状態として検出すればよい。心拍数あるいはその変化が予め定められた限度内か否かに基づいて正常か異常かを判定できる。
心電計に代えて筋電計を用いることもできる。筋電計でダイバーの筋肉の動きを計測し、予め定められた正常動作の範囲内か否かに基づいて判定すればよい。
(実施の形態8)
実施の形態7では、潜水中のダイバーの生体計測を行う生体計測装置およびそれを用いた救助信号発信システムについて述べた。
しかし、計測対象者の周囲の水が電磁シールドの効果を奏し、ノイズの影響が抑制されることから、ダイバーに限らす医療やリハビリテーション等における生体計測についても有効である。また、計測対象者が発汗しても計測に支障がない点も、従来の生体計測に比べて有利である。
医療やリハビリテーション等の計測に適用する場合、ダイビングスーツに代えて水中計測用のベストあるいはジャケットを計測対象者に着用して貰えばよい。そして、水槽あるいは浴槽に入って貰い、計測を行う。
医療やリハビリテーション等の計測では、水中で計測対象者が静止した状態で心電図等の計測を行うことが一般的であるので、生体アンプを計測対象に装着してもらい、地上の波形解析装置との間を有線接続してもよい。
生体電極だけでなく生体アンプなどの測定装置も水中に浸けることによって、電解質含有水のシールド効果を利用したアーティファクト対策、即ち外界ノイズの軽減が期待できる。
以上に述べたように、
(i)この発明による水中生体計測装置は、生体表面に位置する計測部位を囲むように接触して前記計測部位上に室を形成する遮蔽体と、前記室を形成する遮蔽体の内面に配置される検出用電極と、前記室が液密になるように前記遮蔽体を前記生体表面に向けて押圧する押圧部材と、電解質含有水中で前記検出用電極を用いた生体計測を行う生体計測回路と、を備え、前記検出用電極は、前記液密の室が形成された状態において前記検出用電極が前記計測部位に接触しなくても前記計測部位の信号を検出することを特徴とする。
この発明において、計測部位は、計測対象の生体の表面にある。その具体的な態様として、例えば水中でダイバーの心電図や筋電図を得る生体計測を想定すると、腕部や胸部の表面が考えられる。しかし、それに限定されるものでない。上述の実施の形態1および実施の形態2における計測部位は、左右の前腕の皮膚、第四肋間の高さの胸骨を挟んだ左右2箇所の胸部の皮膚の合計4箇所である。また、実施の形態4および6における計測部位は、橈側手根屈筋中央部付近の皮膚である。
生体計測装置の具体的な態様として、実施の形態で上述したような心電計や筋電計が挙げられる。しかし、これに限るものでなく、例えば、眼球の動きを検出する眼電位計測やその他の計測を行う装置が考えられる。
計測対象は、この発明に係る生体電極を用いた生体計測が可能であれば人に限定されない。
室は、生体表面と遮蔽体の内面とに囲まれた閉空間である。閉空間が形成されるとは、遮蔽体が計測部位の周りの生体表面に密着し、室内と室外とが遮断された状態になることをいう。水中で生体計測を行う際に室が形成された状態は、室の内部の水(電解質含有水)と、外部の水(電解質含有水)とが連通しない状態をいう。
電解質とは、水に溶解して陽イオンと陰イオンとに解離し、電気を導くようになる塩などの物質であるところ、水中での生体計測時に室が形成されるとは、電気的に室内と室外とが絶縁された状態になることを意味する。
遮蔽体の内面とは、遮蔽体の一部であって、室が形成された状態において室の内表面を構成する部分をいう。室は、生体表面と遮蔽体の内表面とから構成されるところ、室を構成する遮蔽体の内表面の部分をいう。
検出用電極は、計測部位の電気的信号を検出するものである。その具体的な態様は、例えば、銀(Ag)、洋銀(Cu-Zn-Ni合金)、Ag/AgCl 等の金属を素材とするものである。一般に、生体電極は生体表面に密着させた状態で生体の信号を検出する。それに対して、この発明に係る検出用電極は、検出用電極が計測部位である生体表面に接触していてもよいが、接触していなくてもよい。計測部位上に室が形成された状態で、室内の電解質含有水を介して計測部位の信号が検出できればよい。
また、押圧部材は、計測部位上に形成される室が液密になる程度に遮蔽体を生体表面に向けて押圧するものである。その具体的な態様は、例えば、ゴムに代表される弾性体である。クロロプレーンスポンジゴム等の弾性素材が一般に用いられるダイビングスーツと同一の素材でもよく、ダイビングスーツと一体に構成されてもよい。
計測対象が水中で動くと、生体表面の形状が変化して室の液密性が失われる瞬間が生じ得る。しかし、押圧部材による押圧が継続すれば、生体表面の形状がさらに変化して一旦失われた液密性が回復することが期待される。液密性が失われる瞬間には計測ができないものの、液密性が保たれている期間に生体計測が可能である。そして、計測された信号の波形から、液密性が保たれている期間と液密性が失われた期間が判別可能であると期待される。
計測対象者が地上で上述の水中生体計測装置を装着した場合、計測部位上に室が形成されても室内は空気で満たされ電解質含有水が存在しない。しかし、計測対象者が水中に入って動くことによって、室の液密性が失われる瞬間が生じると、室外の電解質含有水が室内に入る。よって、液密性が失われる瞬間があることが必ずしも悪いとはいえない。なお、室外の水が浸入しなくとも、計測対象者が動くことで汗が室内に入ることも起こる。汗は電解質含有水に含まれる。
従来の生体電極では、生体計測を続けるうちに被計測者の発汗によって生体表面と電極面との密着が弱まり、計測が継続できなくなることが課題であった。それに対し、この発明において計測対象者が発汗しても、生体計測に悪影響をおよぼすことがない。よって、水中で動作するダイバー等の計測に好適である。あるいは、水中で発汗を伴う入浴等の計測や、長時間に及ぶ計測中に被計測者の体温が奪われないように温湯中で計測を行う場合に好適である。
この明細書において、電解質含有水は、電解質が溶解して導電性を示す水である。その具体的な態様は、例えば、海水、水道水、汗などである。溶解した電解質としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンまたはカルシウムイオンなどが考えられる。ただし、それらに限定されない。
電解質含有水の好適な電気伝導率の一例として、0,005, 0.01, 0.02, 0,05, 0.1, 0.2, 0.5, 1.0, 2.0, 5.0 および 10.0 S/mが挙げられる。これらの数値の何れかを下限値および上限値とする範囲で表すこともできる。電気伝導率が小さ過ぎると、電解質含有水を介して計測部位の信号を検出用電極で検出することが難しくなる。
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記検出用電極は、前記検出用電極が前記計測部位に接触せず、前記室内の電解質含有水を介して前記信号を検出してもよい。
このようにすれば、室内の電解質含有水が計測部位と検出用電極とを結ぶ導電体として機能するので、従来の生体電極のように計測部位への密着性を気にする必要がない。
(iii)前記遮蔽体の少なくとも生体に接触する部分が弾性体からなってもよい。
このようにすれば、押圧部材により遮蔽体が生体表面に向けて押圧される状態下で液密の室が形成され易く、水中での生体計測が容易に実現できる。
(iv)前記遮蔽体および前記押圧部材の少なくとも何れかは、ダイビングスーツ内に配置され、またはダイビングスーツの一部であってもよい。
ダイビングスーツの素材は、クロロプレーンスポンジゴムに代表される弾性体が用いられる。保温効果が大きく、ダイバーの体温が海中へ放出することを避け得るからである。ダイビングスーツの中でもウェットスーツは、スーツと身体の間に大量の水が浸入するのを防ぐことで保温効果を確保するために、ダイバーの身体より若干小さ目のサイズに作られる。ドライスーツの場合も、スーツと身体の間に不要な空気が多いと水中で浮き上がってしまうため、ダイバーの体形に合わせたスーツが作られる。このように、ダイビングスーツは、遮蔽体、押圧部材と機能的な親和性が高いといえる。
この態様によれば、単純な構造の遮蔽体または押圧部材を実現できる。
(v)前記生体計測の際に、計測対象の生体が浸かる電解質含有水の電位を検出する基準電位センサをさらに備え、前記生体計測回路は、前記基準電位センサに対する前記検出用電極の電位を前記信号としてもよい。
計測対象の生体が浸かる電解質含有水は、計測部位の周囲を電磁的にシールドする効果を有するところ、このようにすれば、シールド電位に対する計測部位の電位を信号として検出できる。即ち、生体表面の少なくとも1つの生体電極を配置し、周囲の水との電位差を計測するだけで生体計測を行える。
(vi)前記生体計測回路が、心電計または筋電計に係る計測回路であってもよい。
このようにすれば、水中で生体の心電図や筋電図を手軽に得ることができる。
(vii)前記電解質含有水は、電気伝導率が0.02ジーメンス/メートル以上の水であってもよい。
この態様によれば、室内の水が水道水のような純度の水中であれば生体計測を行うことができる。室内に海水や汗が入った場合でも生体計測が可能である。
(viii)この発明の異なる一態様は、電解質含有水中での生体計測に用いられる生体電極であって、生体表面に位置する計測部位を囲むように接触した場合、前記計測部位上に室を形成する遮蔽体と、前記室を形成する遮蔽体の内面に配置される検出用電極と、を備え、前記検出用電極は、前記遮蔽体が前記生体表面に向けて押圧され、前記計測部位上に液密の室が形成された状態において前記検出用電極が前記計測部位に接触しなくても前記計測部位の信号を検出する生体電極である。
(xi)この発明の、さらに異なる一態様は、上述の生体電極が装着された、または装着用のダイビングスーツである。
前記生体電極装着用のダイビングスーツとは、前記生体電極を装着することを前提とした装着部あるいは前記生体電極と装置本体との接続機能等が予め用意されているものをいう。
また、ダイビングスーツに限らず、ダイバーが身に付けるもの、例えばダイビングマスク等に生体電極を装着してもよい。
(x)この発明の、またさらに異なる一態様は、上述の水中生体計測装置と、前記水中生体計測装置から取得されたデータを解析する解析装置と、備える水中生体計測システムである。
(xi)この発明の異なる一態様は、ダイバー用の救助信号発信システムであって、上述の水中生体計測装置と、水中でダイバーが受けるストレスが予め定められた限度内か、あるいはダイバーの筋肉の動きが予め定められた正常動作内か否かを前記水中生体計測装置の計測に基づいて判定し、限度を超えるストレスであるかまたは異常なダイバーの動きであるとの判定に基づいて、救助信号を発信するダイバー装着可能な発信装置と、を備えるダイバー用の救助信号発信システムである。
(xi)この発明のさらに異なる一態様は、前記生体電極を、遮蔽体が計測部位を囲むように生体表面に接触させて押圧部材で生体表面に押圧するステップと、生体が浸かる電解質含有水中に基準電位センサを配置するステップと、前記基準電位センサに対する前記検出用電極の電位差を生体計測回路により計測するステップとを備える水中での生体計測方法である。
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
11、11a、11b:生体電極、 11G、11R:電極、 13,13a,13b,13R:検出用電極、 13W:信号線、 15:皮膚、 17:計測部位、 19:遮蔽体、 19C:蓋遮蔽材、 19i:内蓋遮蔽材、 19S:側方遮蔽材 21:生体アンプ、 23:データロガー、 25:押圧部材、 27:アクリル水槽、 29:電解質含有水、 31:オシロスコープ、 33:ウェットスーツ、 35:突起部、 37:凹部

Claims (11)

  1. 生体表面に位置する計測部位を囲むように接触して前記計測部位上に室を形成する遮蔽体と、
    前記室を形成する遮蔽体の内面に配置される検出用電極と、
    前記室が液密になるように前記遮蔽体を前記生体表面に向けて押圧する押圧部材と、
    電解質含有水中で前記検出用電極を用いた生体計測を行う生体計測回路と、を備え、
    前記検出用電極は、前記押圧部材により前記遮蔽体が前記生体表面に向けて押圧され、内部と外部とを遮断する室が前記計測部位上に形成された状態において前記検出用電極が前記計測部位に接触しなくても前記室内の電解質含有水を介して前記計測部位の信号を検出する水中生体計測装置。
  2. 前記遮蔽体の少なくとも生体に接触する部分が弾性体からなる請求項に記載の水中生体計測装置。
  3. 前記遮蔽体および前記押圧部材の少なくとも何れかは、ダイビングスーツまたは生体計測の対象者に装着させる医療計測用ウェア内に配置され、もしくはダイビングスーツまたは前記医療計測用ウェアの一部である請求項に記載の水中生体計測装置。
  4. 前記生体計測の際に、計測対象の生体の前記計測部位および前記計測部位を囲むように接触する遮蔽体の部分が少なくとも浸かる電解質含有水の電位を検出する基準電位センサをさらに備え、
    前記生体計測回路は、前記基準電位センサに対する前記検出用電極の電位を前記信号とする請求項1~の何れか一つに記載の水中生体計測装置。
  5. 前記生体計測回路が、心電計または筋電計に係る計測回路である請求項1~の何れか一つに記載の水中生体計測装置。
  6. 前記電解質含有水は、電気伝導率が 0.02 ジーメンス/メートル以上の水である請求項1~の何れか一つに記載の水中生体計測装置。
  7. 電解質含有水中での生体計測に用いられる生体電極であって、
    生体表面に位置する計測部位を囲むように接触した場合、前記計測部位上に室を形成する遮蔽体と、
    前記室を形成する遮蔽体の内面に配置される検出用電極と、を備え、
    前記検出用電極は、前記遮蔽体が前記生体表面に向けて押圧され、内部と外部とを遮断する室が前記計測部位上形成された状態において前記検出用電極が前記計測部位に接触しなくても前記室内の電解質含有水を介して前記計測部位の信号を検出する生体電極。
  8. 請求項に記載の生体電極が装着された、または装着用のダイビングスーツ。
  9. 請求項1に記載の水中生体計測装置と、
    前記水中生体計測装置から取得されたデータを解析する解析装置と、
    を備える水中生体計測システム。
  10. ダイバー用の救助信号発信システムであって、
    請求項1に記載の水中生体計測装置と、
    水中でダイバーが受けるストレスが予め定められた限度内か、あるいはダイバーの筋肉の動きが予め定められた正常動作内か否かを前記水中生体計測装置の計測に基づいて判定し、限度を超えるストレスであるかまたは異常なダイバーの動きであるとの判定に基づいて、救助信号を発信するダイバー装着可能な発信装置と、を備えるダイバー用の救助信号発信システム。
  11. 請求項に記載の生体電極を、遮蔽体が計測部位を囲むように生体表面に接触させて押圧部材で生体表面に押圧するステップと、
    生体の前記計測部位および前記計測部位を囲むように接触する遮蔽体の部分が少なくとも浸かる電解質含有水中に基準電位センサを配置するステップと、
    前記基準電位センサに対する前記検出用電極の電位差を生体計測回路により計測するステップとを備える水中での生体計測方法。
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