JP7162407B2 - ストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスの生産方法 - Google Patents

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Description

本発明は、いわゆる女性生殖機能、月経周期の乱れの改善作用を有するストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスの生産方法に関するものである。
近年はストレス社会と言われ、ストレスに由来する月経異常や不妊症等の増加が問題になっている。ストレス負荷による生理周期の乱れのメカニズム一つとして、ストレスによる視床下部-下垂体-副腎軸(HPA系)の亢進による視床下部-下垂体-性腺軸(HPG系)の抑制が報告されている。
ストレスを受けると視床下部において副腎皮質刺激ホルモン放出遊離因子(CRFまたは、CRHと表現される)は、CRF受容体を通してゴナドトロピン放出ホルモン(Gn-RH)の分泌を抑制する。
また、視床下部から分泌されたCRFは、下垂体前葉より分泌される二つのゴナドトロピン、つまり、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制し、HPG軸の抑制に関与する。
なお、FSHは、女性において卵巣に作用し卵胞の成熟に関与する。そのため、FSH分泌の低下は、卵胞発育不全を招く。また、LH分泌低下は、黄体機能不全の要因となり、生理周期の乱れを生じさせる一つの要因となっている。
また、ストレスにより誘導された酸化ストレス、炎症および高エストロゲン症により卵巣などの機能低下、子宮内膜症などが生じ、生理不順、月経前症候群などを生じることが指摘されている。
近年、ストレスホルモンであるコルチゾールが、エストロゲン合成を行うアロマターゼ酵素の発現を増加させ、その結果、エストロゲン過剰状態を引き起こす可能性が言及されている。
本件発明者は、マガキ軟体部抽出沈殿物分画の雌SD系ラットに対する産仔数の有意な増加作用を観察し、その結果、同分画の繁殖能向上作用が示唆された。
また、隔離飼育による酸化ストレスによりHPA系の亢進された雄性ラットに対するマガキ軟体部抽出上澄み物分画の経口投与による脳内における抗酸化作用と海馬グルココルチコイド受容体量の増加と血漿コルチコステロン濃度の低下によりHPA系の負のフィードバックの向上によるストレス緩和作用を認めた。
マガキ軟体部抽出上澄み物分画の経口投与によるHPA系の抑制が生じたことより、同時にCRF分泌低下が生じたと示唆された。
本件発明では、ストレス負荷時の雌ラットにマガキ軟体部から抽出したカキ肉エキスを経口投与し、血漿中ストレスホルモンであるコルチコステロン、性腺刺激ホルモンなどの測定と卵巣などの病理組織学的検査を行い、ストレス負荷時におけるマガキ軟体部から抽出したカキ肉エキスの雌ラットの生殖機能、月経周期の乱れに対する効果を見出したものである。
特開2010-193756号公報
かくして本発明は、マガキ軟体部から抽出したカキ肉抽出液より生成した沈殿物分画、上澄み物分画を有効成分とする女性生殖機能の改善作用を有するカキ肉エキスを提供することを目的とするものである。
本発明は、
生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を冷却し、攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
性周期が4日性周期を示し、性周期が発情後期であるメスのラットを試験に使用し、
前記ラット複数匹を群として、ストレスを与えず、前記沈殿物分画や前記上澄み分画の投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、メチルセルロースの投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、前記沈殿物分画と前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、前記沈殿物分画の投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群のラット全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いてストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、前記ストレスを与えた群のラットの血漿コルチコステロン濃度を、ストレスを与えない正常の群ラットの濃度と比較して前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群についてストレス緩和作用を確認し、前記メスのラットにつきストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスを生産する、
ことを特徴とし、
または、
ラット10匹を群として生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を自然冷却し、その後、エタノール液を添加し、攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
性周期が8週齢から安定し、4日性周期を示し、性周期が発情後期の個体であるメスのラットを試験に使用し、
ストレスを与えず、前記沈殿物分画や上澄み分画の経口投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、0.5%MC(メチルセルロース)の経口投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、沈殿物分画3000mgと上澄み物分画2000mgの経口投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、沈殿物分画4500mgの経口投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、上澄み物分画4000mgの経口投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
前記ラットの飼育開始時より、前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群の個体全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いて前記ストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、前記ストレスを与えた群のラットの血漿コルチコステロン濃度を、ストレスを与えない正常の群ラットの濃度と比較し、前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群についてストレス緩和作用を確認し、前記メスのラットにつきストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスを生産する、
ことを特徴とし、
または、
前記ストレスとは 過密ストレス及び隔離ストレスをいい、過密ストレスとは大量のマウスの中で、過密状態にしたときのストレスであり、隔離ストレスとはマウス単体として隔離したときのストレスをいう、
ことを特徴とし、
または、
生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を冷却し、その後攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
性周期が4日性周期を示し、性周期が発情後期の個体であるメスのラットを試験に使用し、
前記ラット複数匹を群として、ストレスを与えず、前記沈殿物分画や前記上澄み分画の投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、メチルセルロースの投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、前記沈殿物分画と前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、前記沈殿物分画の経口投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群のラット全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いてストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、
前記ストレスを与えた各群のラットにおける血漿エストロゲン濃度の変化をストレスを与えない正常の群のラットの血漿エストロゲン濃度の変化と比較し、
該比較により、前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群にエストロゲン過剰抑制が確認されたカキ肉エキスを生産する、
ことを特徴とし、
または、
生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を自然冷却し、その後、エタノール液を添加し、攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
性周期が8週齢から安定し、4日性周期を示し、性周期が発情後期の個体であるメスのラットを試験に使用し、
前記ラット10匹を群として、ストレスを与えず、前記沈殿物分画や上澄み分画の経口投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、0.5%MC(メチルセルロース)の経口投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、沈殿物分画3000mgと上澄み物分画2000mgの経口投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、沈殿物分画4500mgの強制経口投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、上澄み物分画4000mgの経口投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
前記ラットの飼育開始時より、前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群の個体全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いてストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、
前記ストレスを与えた各群のラットにおける血漿エストロゲン濃度の変化をストレスを与えない正常の群のラットの血漿エストロゲン濃度の変化と比較し、
該比較により、前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群にエストロゲン過剰抑制が確認されたカキ肉エキスを生産する、
ことを特徴とし、
または、
前記ストレスとは 過密ストレス及び隔離ストレスをいい、過密ストレスとは大量のマウスの中で、過密状態にしたときのストレスであり、隔離ストレスとはマウス単体として隔離したときのストレスをいう、
ことを特徴とするものである。
本発明によれば、マガキ軟体部から抽出したカキ肉抽出液より生成した沈殿物分画、上澄み物分画を有効成分とする女性生殖機能、月経周期の乱れの改善作用を有するカキ肉エキスを提供できるとの優れた効果を奏する。
雌ラットにおける血漿中コルチコステロンの経日変化を説明する説明図(1)である。 雌ラットにおける血漿中コルチコステロンの経日変化を説明する説明図(2)である。 雌ラットにおける血漿中コルチコステロンとホルモン濃度を説明する説明図である。 各試験群における黄体形成ホルモンの血漿中濃度を説明する説明図である。 各試験群における卵胞刺激ホルモンの血漿中濃度を説明する説明図である。 雌ラットにおける血漿中プロゲステロン濃度の経日変化を説明する説明図である。 雌ラットにおける血漿中エストラジオールの経日変化を説明する説明図である。
1.方法
(1)供試動物
種-ラット、系統-Iar:Wistar Imamichi*、性別-メス
* : 性周期が8週齢から安定し、4日性周期を示す。
試験に供試する動物は、予備飼育開始時点において、性周期が発情後期の個体とした。
(2)試験対象物(冷蔵保存)
生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去した。
尚、前記湯煎抽出の温度は約100℃である。しかし、この温度に限定されるものではない。
そして、前記ボイルされたカキ肉を除去した後に残る抽出物、すなわち液体状のカキ肉エキスを濃縮した。濃縮した後、その濃縮物を自然冷却する。
尚、濃縮の程度については限定されない。そして、濃縮の後、エタノール液を添加する。
エタノール液の添加後、攪拌などを行った後、例えば自然沈殿させ、沈殿物分画と上澄み物分画に分けた。そして、沈殿物分画については、前記沈殿物を乾燥しパウダー状にした。また、上澄み物分画については前記上澄み液を濃縮し、ペースト状にした。
ここで、前記パウダー状をなす沈殿物分画は、主に錠剤原料となり、ペースト状の上澄み物分画は、主にドリンク原料となるが、これに限定されるものではない。
(3)試験群の設定
(ア)正常群(Stress無し、P.O.無し)10匹
ストレスを与えず、また、前記沈殿物分画や上澄み分画の強制経口投与を行わなかった群である。
(イ)ストレス群(Stress、P.O.:0.5%MC(メチルセルロース))10匹
ストレスを与え、また、0.5%MC(メチルセルロース)の強制経口投与を行った群である。
(ウ)ストレス+混合物群(Stress、P.O.:沈殿物分画3000mg+上澄み物分画2000mg)10匹
ストレスを与え、また、沈殿物分画3000mgと上澄み物分画2000mgの強制経口投与を行った群である。
(エ)ストレス+沈殿物群(Stress、P.O.:沈殿物分画4500mg)10匹
ストレスを与え、また、沈殿物分画4500mgの強制経口投与を行った群である。
(オ)ストレス+上澄み物群(Stress、P.O.:上澄み物分画 4000mg)10匹
ストレスを与え、また、上澄み物分画4000mgの強制経口投与を行った群である。
ここで、ストレス(Stress)とは 過密ストレス・隔離ストレスをいう。過密ストレスとは大量のマウスの中で、過密状態にしたときのストレスをいい、隔離ストレスとは単体として隔離したときのストレスを言う。また、P.O.とは、強制経口投与の意味である。
(4)試験方法
(ア)複合ストレス負荷
本飼育開始時より、前述したストレス群、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の4群については、各群の個体全て(n=10)を一つのケージ(床敷材切換)に収容し、PM1:00~ 5:00 の4時間、過密ストレス状態下に置いた。4時間経過後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えた。
なお、過密ストレス負荷は、投与開始2~6日目の連続5日間、9~13日目の連続5日間、15~19日目の連続5日間、21~25日目の連続5日間とした。
(イ)生化学分析I(本試験中間採血)
1)血漿コルチコステロン
下記日程のAM8:00より尾静脈採血(ヘパリン加)を行い、遠心分離(4℃ 13000G、10min)後、血漿を採取した。得られた血漿は、分析まで凍結(-60℃ )保存し、後日、添付書に準じて測定を行った。
採血日:試験対象物投与前(0)、8、14、20、26日目
2)血漿プロゲステロン、エストラジオール
下記日程に採取する膣スメア判定の結果、発情前期と判定した個体について、PM8:00 から尾静脈採血(ヘパリン加) を行った。血液は、遠心分離(4℃ 13000G、10min) した後、血漿を採取し、分析まで凍結(-60℃) 保存した。後日、各添付書に準じて測定を行った。
なお、前述の複合ストレス負荷を与えるストレス群、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の4群については、性周期が変動する可能性があることから、下記日程を基準にそれ以降で発情前期が見られたポイントで採血を行った。
採血日 : 試験対象物投与3、7、11、15、19、23日目
(ウ)脳海馬のGRαならびに8-OHdG
凍結保存している脳海馬を、氷上にて解凍したのち、ハサミを用いて細切し、各分析に必要な量を素早く秤量した。
秤量した海馬は、各分析項目の添付書に準じて測定を行った。
2.結果と考察
(1)血漿コルチコステロン値の変化
図1、図2にある様に、ストレスを負荷飼育8、14、20、26日目のストレス群の血漿コルチコステロン濃度は、正常群の値と比較しP<0.01で有意に高値であった。これより、ストレス群のHPA系の異常亢進が観察された。
一方、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の血漿コルチコステロン濃度は、ストレス群より有意に低く、各分画群のHPA系の異常亢進を抑制する作用が観察され、各分画群のストレス緩和作用が認められた。
しかも8日目、14日目、26日目においては各分画群のコルチコステロン濃度は正常群と有意差はなく同程度まで低下した。さらに、ストレス+上澄み物群は20日目でも正常群の値と有意差はなく同程度であり、各分画群においてHPA系の異常亢進は観察されなかった。
この事実より、ストレス負荷雌ラットに対する混合物分画、沈殿物分画、上澄み物分画の有意なストレス緩和作用が観察され、確認されたのである。
ストレス状態におけるマガキ軟体部抽出上澄み物分画のストレス緩和作用は、既に特許出願を行っている。
同じストレスを受けても雌ラットのほうが雄ラットよりストレスホルモンが上昇し、影響が大きいことが確認されている。しかして、本件発明では雌ラットに対するカキ肉抽出物からの混合物分画、沈殿物分画、上澄み物分画の成分に有意なストレス緩和作用が認められることが確認されたものである。
(2)ストレス負荷によるHPG軸ホルモンの変化
ストレス群においてゴナドトロピンであるFSH値5.89±0.82 ng/mlとLH値5.24±0.23 ng/mlは、正常群のFSH値8.82±0.90 ng/mlとLH値6.67±0.37ng/mlより有意に低値であった(図3乃至図5)。
これより、ストレス群ではHPA軸の亢進に誘導され、HPG軸が抑制されていることが示唆された。
一方、マガキ軟体部抽出各分画であるストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群のFSH値、LH値は、正常群と同程度であり、ストレス負荷にもかかわらずHPA軸が亢進することはなく、HPG軸の抑制も生じていないことが観察された。
つまり、ストレス負荷にもかかわらずマガキ軟体部抽出物から生成されたいわゆるカキ肉エキスの投与によって、性腺ホルモン(FSH及びLH)の分泌は、抑制されなかったのである。
本件発明者は、マガキ軟体部からの抽出物であるカキ肉エキス分画のストレス緩和作用の作用機序を説明している。
つまり、ストレス負荷による脳内酸化ストレスにより海馬グルココルチコイド受容体が減少するが、マガキ軟体部からの抽出物である前記上澄み物分画の経口投与によっては、脳での酸化ストレスが軽減し、海馬グルココルチコイド受容体量が回復し、HPA軸の負のフィードバックが正常化するとの内容である。
本試験において、ストレス負荷状態にもかかわらず、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の経口投与によって血漿コルチコステロンが低下したことより、HPA軸が正常化したことが示され、さらに、血漿FSH値、LH値が正常群と同様であることよりHPG軸も正常化されたと思料する。
(3)血漿プロゲステロン濃度の変化
図6のように各採血日においてストレス群の血漿プロゲステロン濃度は、各群より低値の傾向があるが、15日目、19日目のストレス群の血漿プロゲステロン濃度は、正常群より有意に低値を示した。
血漿プロゲステロン値は黄体機能不全のマーカーであることより、ストレス群では黄体機能の低下が推察された。尚、黄体機能についての考察は、今後明確になると思われる。
各採血日においてストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の血漿プロゲステロン濃度は、正常群の血漿プロゲステロン濃度と有意差はなく同程度であった。
また、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の黄体機能は、正常群と同程度と推察された。
正常群の血漿プロゲステロン濃度は、週齢の増加ともに増加する傾向があったが、ストレス群の血漿プロゲステロン濃度は、週齢の増加ともに増加する傾向は観察されなかった。一方、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の血漿プロゲステロン濃度は、正常群と同様に週齢の増加ともに増加した。
これらより、ストレス状態に対して混合物分画、沈殿物分画、上澄み物分画の黄体機能維持作用が推察される。
(4)血漿エストロゲン濃度の変化
11日目、15日目、19日目、23日目のストレス群の血漿エストロゲン濃度は、正常群より常に有意に高く、ストレス群では、エストロゲン過剰が生じていた(図7)。
一方、11日目、15日目のストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群の血漿エストロゲン濃度は、正常群との間に有意差はなく同程度であった。
エストロゲン過剰状態が、生理痛、生理不順、月経前症候群(PMS)、子宮内膜増殖症などを引き起こす。エストロゲン過剰分泌の原因として、近年、ストレスホルモンであるコルチゾールが、エストロゲン合成を行うアロマターゼ酵素の発現を増加させ、その結果、エストロゲン過剰状態を引き起こす可能性が言及されている。
なお、ストレス群では、脳内酸化ストレスのため海馬グルココルチコイド受容体が減少し、HPA軸の負のフィードバックが抑制され、血漿コルチコステロン値は増加したと思われる。ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群では、脳内酸化ストレスが軽減し、海馬グルココルチコイド受容体が増加し、HPA軸の負のフィードバックが正常に機能し、その結果、コルチコステロン値は正常に戻り、血漿エストロゲン値も正常に回復したと示唆された。
本試験では、ストレス負荷状態にもかかわらず、マガキから抽出した各分画投与の各群のエストロゲン濃度は、正常群と同程度まで低下していたのである。
これより、エストロゲン過剰によって生じる生理痛、生理不順、月経前症候群(PMS)、子宮内膜増殖症などに対するマガキから抽出した各分画を投与したときの改善が明確に確認されたのである。
その中でも沈殿物分画の投与では、すべての週でエストロゲン過剰分泌の抑制作用が観察されている。
(5)抗ミュラー管ホルモン
ストレス群、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群の抗ミュラー管ホルモン値は、正常群より有意に低値であり、ストレス群、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群の卵巣内の卵胞の数は、正常群より少ないことが観察された。一方、ストレス+上澄み物群の抗ミュラー管ホルモン値は、正常群と同程度であった。ここでもマガキから抽出した上澄み物分画の有効性が確認された。
これより、ストレス+上澄み物群においては、ストレス負荷にもかかわらず正常群と同じ程度の卵胞が存在していることが示唆された。抗ミュラー管ホルモンは、成長している卵胞から分泌されているので、ストレス+上澄み物群の卵胞は、正常群の卵胞と同様に成長していることが推察された。
(6)海馬中の8-OHdG濃度とグルココルチコイド受容体(GRα)量の変化
ストレス群の海馬中の8-OHdG濃度(5.93±0.35ng/g of hippocampus)は、正常群の8-OHdG濃度(4.90±0.31ng/g of hippocampus)より5%危険率で有意に高値であった。
ストレス群の海馬中のGRα量(2.22±0.10ng/mg of hippocampus)は、正常群の海馬中のGRα量(2.59±0.09ng/mg of hippocampus)より5%危険率で有意に低値であった。
これらの結果より、ストレス群では、ストレスによって海馬中の活性酸素が増加し、その酸化ストレスによってGRα量が減少していることが確認された。
一方、ストレス+上澄み物群の8-OHdG濃度(4.52±0.34 ng/g of hippocampus)は、ストレス群の8-OHdG濃度(5.93±0.35ng/g of hippocampus)より5%危険率で有意に低値であり、上澄み物分画の摂取による海馬中の活性酸素量の低下が確認された。
ストレス+上澄み物群の海馬中のGRα量(3.06±0.19 ng/mg of hippocampus)は、ストレス群(2.22±0.10ng/mg of hippocampus)より有意に高値であった。
これらの事実より、上澄み物分画の摂取により海馬の酸化ストレスが軽減され、次いで、海馬GRα量は、有意に回復したことが確認された。
さらに、ストレス+上澄み物群の海馬中のGRα量(3.06±0.19 ng/mg of hippocampus)は、正常群(2.59±0.09 ng/mg of hippocampus)より有意に高値であった。
上澄み物分画の摂取による海馬中のGRα量が、正常群より高値であった現象をHPA軸の制御機能の観点より考察した。図1にある様に、ストレス群のコルチコステロン濃度152.0±11.8ng/mlは、正常群の血漿コルチコステロン濃度34.5±2.7ng/mlより有意に高値でありHPA軸は異常亢進していた。
一方、上澄み物群の33.0±4.7ng/mlは正常群と同程度であった。つまり、ストレスにより誘発されたHPA軸の異常亢進は、上澄み物分画の摂取によって正常に回復し、また、正常群と上澄み物群の血漿コルチコステロン濃度は同程度であることよりHPA軸の過剰抑制は生じていないことが確認された。
この事実より、上澄み物分画の摂取による海馬中での抗酸化機能およびGRα量の回復機能とGRα量の増加機能が確認された。
すでに出願した本件発明者の特許出願では、脳全体に対するDHMBA分画の抗酸化機能について出願した。しかして本件発明では、雌ラットの海馬に対する抗酸化作用が認められたものである。
一方、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群の海馬中の8-OHdG濃度は、正常群と有意差はなく同程度であった。
ストレス群では、ストレス負荷により8-OHdGは、有意に上昇し酸化ストレス状態を生じたが、混合物分画と沈殿物分画では活性酸素の上昇を抑制する抗酸化作用が確認された。しかし、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群の海馬中の8-OHdG濃度は、ストレス群の8-OHdG濃度との間では、有意差はなかった。そこで、混合物分画と沈殿物分画には上澄み物分画ほどの海馬に対する抗酸化作用は認められなかった。
ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群の海馬中のGRα量は、正常群と有意差はなく同程度であった。混合物分画と沈殿物分画の摂取によるHPA軸の異常亢進に対する抑制作用が確認された。つまり、混合物分画と沈殿物分画には上澄み物分画ほどの海馬GRα量の回復作用は認められなかった。
ストレス群の血漿プロゲステロン濃度は、正常群と比較して有意に低く、これより黄体機能の低下が観察された。一方、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群においては、血漿プロゲステロン濃度の低下は観察されず、黄体機能の低下は観察されなかった。
なぜ、このような現象が生じたのであろうか。ストレス時には、HPA系が活性化し、HPG系が抑制されることが報告されている。つまり、本試験においてもストレス群の血漿LH値は、正常群より有意に低下しており、LHからの黄体形成の情報が、不十分のため黄体形成の機能低下が生じたと思われた。
一方、ストレス+混合物群、ストレス+沈殿物群、ストレス+上澄み物群においては、コルチコステロン濃度は、正常群と有意差はなく、HPA系の亢進は観察されず、LHの低下も生ぜず、HPG系の抑止は観察されなかったのである。
(7)発情周期
本飼育期間中に採取した膣スメア像の観察について、供試動物の発情周期が4日周期であることを基準に判定を行った。
正常群は、全ての個体で正常な発情周期を示した。
ストレス群は、持続発情および持続休止型の傾向が観察された。発情周期は不安定で、正常周期を示した個体は10匹中2匹であった。
ストレス+混合物群は、持続休止型の傾向が観察された。異常周期の継続性は認められず、発情周期はストレス群よりも比較的安定した状態で、正常周期を示した個体は10匹中6匹であった。
ストレス+沈殿物群は、持続発情および持続休止型の傾向が観察された。異常周期の継続性を示す個体も認められたが、発情周期はストレス群よりもやや安定した状態で、正常周期を示した個体は10匹中4匹であった。
ストレス+上澄み物群は、持続発情および持続休止型の傾向が観察された。異常周期の継続性は認められず、発情周期はストレス群よりも比較的安定した状態で、正常周期を示した個体は10匹中5匹であった。

Claims (6)

  1. 生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を冷却し、攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
    性周期が4日性周期を示し、性周期が発情後期であるメスのラットを試験に使用し、
    前記ラット複数匹を群として、ストレスを与えず、前記沈殿物分画や前記上澄み分画の投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、メチルセルロースの投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、前記沈殿物分画と前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、前記沈殿物分画の投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
    前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群のラット全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いてストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、前記ストレスを与えた群のラットの血漿コルチコステロン濃度を、ストレスを与えない正常の群ラットの濃度と比較して前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群についてストレス緩和作用を確認し、前記メスのラットにつきストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスを生産する、
    ことを特徴とするストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスの生産方法。
  2. ラット10匹を群として生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を自然冷却し、その後、エタノール液を添加し、攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
    性周期が8週齢から安定し、4日性周期を示し、性周期が発情後期の個体であるメスのラットを試験に使用し、
    ストレスを与えず、前記沈殿物分画や上澄み分画の経口投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、0.5%MC(メチルセルロース)の経口投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、沈殿物分画3000mgと上澄み物分画2000mgの経口投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、沈殿物分画4500mgの経口投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、上澄み物分画4000mgの経口投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
    前記ラットの飼育開始時より、前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群の個体全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いて前記ストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、前記ストレスを与えた群のラットの血漿コルチコステロン濃度を、ストレスを与えない正常の群ラットの濃度と比較し、前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群についてストレス緩和作用を確認し、前記メスのラットにつきストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスを生産する、
    ことを特徴とするストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスの生産方法。
  3. 前記ストレスとは 過密ストレス及び隔離ストレスをいい、過密ストレスとは大量のマウスの中で、過密状態にしたときのストレスであり、隔離ストレスとはマウス単体として隔離したときのストレスをいう、
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のストレス緩和作用が確認されたカキ肉エキスの生産方法。
  4. 生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を冷却し、その後攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
    性周期が4日性周期を示し、性周期が発情後期の個体であるメスのラットを試験に使用し、
    前記ラット複数匹を群として、ストレスを与えず、前記沈殿物分画や前記上澄み分画の投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、メチルセルロースの投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、前記沈殿物分画と前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、前記沈殿物分画の経口投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、前記上澄み物分画の投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
    前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群のラット全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いてストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、
    前記ストレスを与えた各群のラットにおける血漿エストロゲン濃度の変化をストレスを与えない正常の群のラットの血漿エストロゲン濃度の変化と比較し、
    該比較により、前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群にエストロゲン過剰抑制が確認されたカキ肉エキスを生産する、
    ことを特徴とするエストロゲン過剰抑制が確認されたカキ肉エキスの生産方法。
  5. 生カキを湯煎抽出した後、前記湯煎抽出でボイルされたカキ肉を除去し、除去した後に残る抽出物である液体状のカキ肉エキスを濃縮し、濃縮した後、濃縮物を自然冷却し、その後、エタノール液を添加し、攪拌を行った後、沈殿させて、沈殿物分画と上澄み物分画に分け、
    性周期が8週齢から安定し、4日性周期を示し、性周期が発情後期の個体であるメスのラットを試験に使用し、
    前記ラット10匹を群として、ストレスを与えず、前記沈殿物分画や上澄み分画の経口投与を行わなかった正常の群、ストレスを与え、0.5%MC(メチルセルロース)の経口投与を行ったストレスの群、ストレスを与え、沈殿物分画3000mgと上澄み物分画2000mgの経口投与を行ったストレス+混合物の群、ストレスを与え、沈殿物分画4500mgの強制経口投与を行ったストレス+沈殿物の群、ストレスを与え、上澄み物分画4000mgの経口投与を行ったストレス+上澄み物の群に分け、
    前記ラットの飼育開始時より、前記ストレスの群、ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群の4群について、各群の個体全てを一つのケージに収容して、過密ストレス状態下に置いてストレスを与え、その後、通常の個別飼育による隔離飼育ストレス負荷を加えるストレスを与えた後、
    前記ストレスを与えた各群のラットにおける血漿エストロゲン濃度の変化をストレスを与えない正常の群のラットの血漿エストロゲン濃度の変化と比較し、
    該比較により、前記ストレス+混合物の群、ストレス+沈殿物の群、ストレス+上澄み物の群にエストロゲン過剰抑制が確認されたカキ肉エキスを生産する、
    ことを特徴とするエストロゲン過剰抑制が確認されたカキ肉エキスの生産方法。
  6. 前記ストレスとは 過密ストレス及び隔離ストレスをいい、過密ストレスとは大量のマウスの中で、過密状態にしたときのストレスであり、隔離ストレスとはマウス単体として隔離したときのストレスをいう、
    ことを特徴とする請求項4又は請求項5記載のエストロゲン過剰抑制が確認されたカキ肉エキスの生産方法。
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若年女性の月経前症状とストレス緩和要因や月経へのイメージおよびコーピングとの関連,心身医学,53 巻、8 号 ,2013年,p. 748-756,https://doi.org/10.15064/jjpm.53.8_748

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