以下、本開示に係る医療用コネクタの実施形態について、図1~図13を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
図1は、本実施形態としての医療用コネクタ1(以下、単に「コネクタ1」と記載する。)を示す斜視図である。図2は、図1に示すコネクタ1の分解斜視図である。図3は、コネクタ1の図1とは別の状態を示す斜視図である。詳細は後述するが、図1は係合部5が退避位置にある状態を示し、図3は係合部5が係合位置にある状態を示している。図1、図3に示すように、本実施形態のコネクタ1は、医療器具としての輸液セットにおける医療用チューブ60(図1、図3で二点鎖線により表示)の遠位端部に取り付け可能であるが、別の医療器具に取り付けられる構成であってもよく、コネクタ1単体の状態であってもよい。上述の医療用チューブ60の遠位端部とは、医療用チューブ60の流路60aの下流側の端部を意味する。
コネクタ1は、メスコネクタ部101を備える他の医療器具100と接続可能である。コネクタ1が接続可能な他の医療器具100についての詳細は後述する(図10~図12参照)。
図1、図3に示すように、コネクタ1は、オスコネクタ部2と、係止機構3と、接続部4と、を備えている。オスコネクタ部2は、他の医療器具100(図10等参照)のメスコネクタ部101(図10等参照)に挿入可能である。係止機構3は、オスコネクタ部2が他の医療器具100(図10等参照)のメスコネクタ部101(図10等参照)に挿入されている状態で、メスコネクタ部101を係止することができる。詳細は後述するが、係止機構3は、複数の係合部5と、ギャップ保持部6と、を備える。接続部4は、医療器具としての医療用チューブ60と接続可能である。
図1、図3に示すように、オスコネクタ部2は、内部に薬液等の液体が流れる流路2aを区画している。流路2aは、医療用チューブ60の内部の流路60aと連通可能である。本実施形態の流路2aは、筒状のオスコネクタ部2の中心軸線Oに平行な方向(以下、中心軸線方向Aと記載する。)に延在している。以下、説明の便宜上、中心軸線方向Aにおいてオスコネクタ部2の基端側から先端側に向かう方向を、単に「挿入方向A1」と記載する。また、中心軸線方向Aにおいてオスコネクタ部2の先端側から基端側に向かう方向を、単に「抜去方向A2」と記載する。
係止機構3は、複数の係合部5と、ギャップ保持部6と、備えている。
図1、図3に示すように、複数の係合部5は、オスコネクタ部2の径方向Bの外側に位置し、オスコネクタ部2が挿入されている状態のメスコネクタ部101(図10等参照)に係合可能な係合位置(図3参照)と、この係合位置よりも径方向Bの外側に退避した退避位置(図1参照)と、の間を移動可能である。図1では、複数の係合部5が、退避位置の1つとしての、径方向Bの外側に最も退避した最大退避位置にある状態を示している。
図1に示すように、ギャップ保持部6は、複数の係合部5の間に介在し、複数の係合部5の間のギャップGを保持する。具体的に、本実施形態のギャップ保持部6は、複数の係合部5の間に挟み込まれることにより、複数の係合部5の間のギャップGを保持することができる。ギャップ保持部6は、オスコネクタ部2がメスコネクタ部101(図10等参照)に挿入される際に、メスコネクタ部101と係合する。ギャップ保持部6は、メスコネクタ部101と係合して押圧されることにより、オスコネクタ部2の中心軸線方向Aに沿って移動する。複数の係合部5の間のギャップGは、ギャップ保持部6が中心軸線方向Aに沿って移動することにより変動する。係合部5の退避位置(図1参照)と係合位置(図3参照)との間の移動は、複数の係合部5の間のギャップGを上述のようにギャップ保持部6の移動によって変動させることにより実現される。具体的に、係合部5は、オスコネクタ部2がメスコネクタ部101(図10等参照)に挿入される際に、退避位置(図1参照)から係合位置(図3参照)に移動する。
このような構成とすることにより、オスコネクタ部2をメスコネクタ部101(図10等参照)に挿入する接続動作に伴い、係止機構3によるメスコネクタ部101の係止を実現することができる。つまり、メスコネクタ部101を備える他の医療器具100に対する接続操作の容易性を確保することができる。
更に、オスコネクタ部2をメスコネクタ部101(図10等参照)に挿入している、コネクタ1と他の医療器具100(図10等参照)との接続動作の途中で、係合部5を退避位置(図1参照)から係合位置(図3参照)に移動させることができる。そのため、オスコネクタ部2の先端をメスコネクタ部101内の所定の深さに至るまで挿入している間、係合部5を係合位置(図3参照)まで移動させず、退避位置(図1参照)にある状態とする構成を実現できる。つまり、オスコネクタ部2の先端がメスコネクタ部101内の所定の深さに至る、コネクタ1と他の医療器具100との接続完了の状態まで、係合部5が、オスコネクタ部2のメスコネクタ部101に対する挿入動作を、阻害しないように構成することができる。このようにすれば、接続時に、接続される他の医療器具100の意図しない変位を抑制することができる。
また更に、ギャップ保持部6は、複数の係合部5の間に介在するため、複数の係合部5を径方向Bに移動させる機構を、ギャップ保持部が複数の係合部5の間に介在しない構成と比較して、小型化することができる。
図4は、図1に示すコネクタ1をオスコネクタ部2の先端側から見た図である。図5は、図1に示すコネクタ1の側面図である。図6は、図1に示すコネクタ1の上面図である。図7は、図4及び図6のI-I線に沿う断面図である。図8は、図4及び図5のII-II線に沿う断面図である。図9は、図5及び図6のIII-III線に沿う断面図である。以下、図1~図9を参照して、本実施形態のコネクタ1の更なる詳細について説明する。
図1、図3に示すように、本実施形態の係止機構3は、上述した複数の係合部5及びギャップ保持部6に加えて、支持部7を備えている。支持部7は、複数の係合部5を回動可能に支持している。具体的に、支持部7は、各係合部5を、中心軸線方向Aの先端側が基端側に対して径方向Bに回動するように支持している。これにより、各係合部5は、上述の退避位置(図1参照)と係合位置(図3参照)との間を移動可能である。係合部5の中心軸線方向Aの先端側とは、挿入方向A1側であり、係合部5の中心軸線方向Aの基端側とは、抜去方向A2側である。
より具体的に、本実施形態のコネクタ1は、図1~図3に示すように、オスコネクタ部2及び接続部4を構成する筒状部材61と、係合部5を構成する係合部材62と、ギャップ保持部6を構成するスペーサ部材63と、支持部7を構成する支持部材64と、により構成されている。以下、本実施形態のコネクタ1の各部材、各部位の構成について詳細に説明する。
<筒状部材61>
図2等に示すように、本実施形態の筒状部材61は、上述のオスコネクタ部2及び接続部4に加えて、規制壁部11と、筒状支持部12と、を備えている。
[オスコネクタ部2]
本実施形態のオスコネクタ部2は、筒状部材61の挿入方向A1側の一端を含む領域に形成されている。図2等に示すように、本実施形態のオスコネクタ部2は、挿入方向A1に向かって外径が漸減するテーパ部を備えている。より具体的に、本実施形態のオスコネクタ部2は、挿入方向A1に向かって外径が漸減するテーパ部により構成されている。本実施形態のテーパ部の外周面は、ISO80369-7に準拠する6%のルアーテーパ面である。本実施形態のテーパ部の内周面は、挿入方向A1に向かって内径が漸減する構成であるが、中心軸線方向Aの位置によらず内径が一様の構成としてもよい。
[接続部4]
本実施形態の接続部4は、筒状部材61の抜去方向A2の一端を含む領域に形成されている。図2等に示すように、本実施形態の接続部4は、コネクタ1の抜去方向A2の端部に位置し、中心軸線方向Aに延在する筒状部により構成されている。本実施形態の接続部4としての筒状部は、中心軸線方向Aの位置によらず外径及び内径が略一様な構成であるが、この構成に限らず、例えば、抜去方向A2に向かって外径及び内径の少なくとも一方が漸減又は漸増する構成であってもよい。図1等に示すように、本実施形態の接続部4としての筒状部は、医療器具としての医療用チューブ60の遠位端から内部に挿入され、接続部4としての筒状部の外周面が医療用チューブ60の内周面と周方向全域に亘って密着した状態とされることで、医療用チューブ60と接続される。この接続状態において、接続部4としての筒状部の内側の流路2aは、医療用チューブ60の流路60aと液密に連通する。
[規制壁部11]
更に、図2に示すように、本実施形態のコネクタ1は、オスコネクタ部2に対して抜去方向A2の位置に、後述するギャップ保持部6と当接することで、ギャップ保持部6の抜去方向A2への移動を規制する規制壁部11を備えている。また、本実施形態の筒状部材61は、オスコネクタ部2及び規制壁部11に対して抜去方向A2に位置する、オスコネクタ部2よりも大径の大径部13を備えている。オスコネクタ部2の外周面と大径部13の外周面とは、径方向Bに延在する環状の段差面を介して連続している。本実施形態の規制壁部11は、この段差面により構成されている。規制壁部11は、ギャップ保持部6と中心軸線方向Aにおいて突き当たり、ギャップ保持部6の抜去方向A2へのそれ以上の移動を規制する構成であればよく、本実施形態の段差面に限られない。規制壁部11を、例えば、オスコネクタ部2の外周面の基端で径方向Bの外側に突出するフランジ部における、挿入方向A1側の面により構成してもよい。
[筒状支持部12]
また、図2に示すように、本実施形態のコネクタ1は、大径部13に対して抜去方向A2の位置に、後述する支持部7を外周面上で支持する筒状支持部12を備えている。具体的に、本実施形態の筒状部材61は、上述したオスコネクタ部2及び大径部13に加えて、大径部13に対して抜去方向A2に位置する筒状支持部12を備えている。
より具体的に、図7に示すように、本実施形態の筒状支持部12は、接続部4としての筒状部に対して、径方向Bの外側の位置に設けられている。本実施形態において、筒状支持部12の中心軸線方向Aの一部と、接続部4としての筒状部の中心軸線方向Aの一部と、は径方向Bにおいて重なる位置に形成されている。また、接続部4としての筒状部は、筒状支持部12よりも、抜去方向A2に向かって突出している。本実施形態の筒状支持部12と、接続部4としての筒状部と、は上述の位置関係にあるため、筒状支持部12の内周面と、接続部4としての筒状部の外周面と、間には環状の中空部14が区画されている。接続部4としての筒状部が挿入される医療用チューブ60(図7では二点鎖線で表示)の遠位端部は、この環状の中空部14に挿入される。これにより、医療用チューブ60の遠位端部は、筒状支持部12の内周面と、接続部4としての筒状部の外周面と、の間に挟み込まれる。これにより、医療器具としての医療用チューブ60を、コネクタ1に対して、より強固に固定することができる。
環状の中空部14の径方向Bの幅は、中心軸線方向Aの位置によらず略一様な構成としてもよいが、中心軸線方向Aの位置によって異なる構成としてもよい。図7に示すように、本実施形態の環状の中空部14の径方向Bの幅は、挿入方向A1に向かって漸減する領域を有している。環状の中空部14の径方向Bにおける幅は、上述の漸減する領域において、抜去方向A2側から挿入方向A1側に向かって、自然状態の医療用チューブ60の肉厚以上の幅から、自然状態の医療用チューブ60の肉厚未満の幅に、変化している。このような領域を設けることで、医療用チューブ60の接続部4への接続の容易性を維持しつつ、医療用チューブ60を接続部4に対して、より一層、強固に固定することができる。
本実施形態の筒状部材61は、上述のオスコネクタ部2、接続部4、規制壁部11、大径部13、及び、筒状支持部12を備えているが、この構成に限らず、他の機能を有する他の部位を備える構成としてもよい。また、本実施形態では、上述のオスコネクタ部2、接続部4、規制壁部11、大径部13、及び、筒状支持部12が、筒状部材61により構成されているが、この構成に限られず、上述の部位が別々の部材により構成されていてもよい。
<係合部材62>
図2等に示すように、本実施形態の係合部材62は、上述の係合部5を備えている。より具体的に、本実施形態の係合部材62は、上述の係合部5を構成している。
[係合部5]
図1~図3に示すように、本実施形態のコネクタ1は、2つの係合部5を備えている。2つの係合部5は、オスコネクタ部2を挟んで対向して配置されている2つの係合部材62により構成されている。本実施形態の2つの係合部5は、同一の構成を有しており、中心軸線Oに対して点対称に配置されている。以下、説明の便宜上、本実施形態の一方の係合部5を「第1係合部5a」と記載し、他方の係合部5を「第2係合部5b」と記載する。また、第1係合部5a及び第2係合部5bを特に区別しない場合には、単に「係合部5」と記載する。
図4等に示すように、本実施形態の第1係合部5aは、オスコネクタ部2の径方向Bの外側の位置で、オスコネクタ部2の周方向Cの一部の領域を覆うカバー部15aと、このカバー部15aからオスコネクタ部2の外面に向かって突出する突出部16aと、を備えている。
図4等に示すように、本実施形態のカバー部15aは、オスコネクタ部2と対向する板状の本体部15a1と、この本体部15a1の周方向Cの一端側から対向する第2係合部5bに向かって突出する板状の第1側壁部15a2と、本体部15a1の周方向Cの他端側から対向する第2係合部5bに向かって突出する板状の第2側壁部15a3と、を備えている。
図2に示すように、本実施形態のカバー部15aは、後述するギャップ保持部6と当接する当接部17aを備える。本実施形態のカバー部15aは、当接部17aがギャップ保持部6と摺動することにより、径方向Bに移動する。より具体的に、本実施形態では、第1側壁部15a2の第2係合部5b側の端面の一部、及び、第2側壁部15a3の第2係合部5b側の端面の一部、が当接部17aを構成している。当接部17aの更なる詳細は後述する。
図2、図4等に示すように、本実施形態の第2係合部5bは、オスコネクタ部2の径方向Bの外側の位置で、オスコネクタ部2の周方向Cの一部の領域を覆うカバー部15bと、このカバー部15bからオスコネクタ部2の外面に向かって突出する突出部16bと、を備えている。
図2、図4等に示すように、本実施形態のカバー部15bは、オスコネクタ部2と対向する板状の本体部15b1と、この本体部15b1の周方向Cの一端側から対向する第1係合部5aに向かって突出する板状の第1側壁部15b2と、本体部15b1の周方向Cの他端側から対向する第1係合部5aに向かって突出する板状の第2側壁部15b3と、を備えている。
図2に示すように、本実施形態のカバー部15bは、後述するギャップ保持部6と当接する当接部17bを備える。本実施形態のカバー部15bは、当接部17bがギャップ保持部6と摺動することにより、径方向Bに移動する。より具体的に、本実施形態では、第1側壁部15b2の第1係合部5a側の端面の一部、及び、第2側壁部15b3の第1係合部5a側の端面の一部、が当接部17bを構成している。当接部17bの更なる詳細は後述する。
本実施形態の第1係合部5a及び第2係合部5bは、第1係合部5aの第1側壁部15a2の端面の当接部17aと、第2係合部5bの第2側壁部15b3の端面の当接部17bと、の間にギャップ保持部6を挟み込むことにより、退避位置(図1参照)を実現している。また、本実施形態の第1係合部5a及び第2係合部5bは、第1係合部5aの第2側壁部15a3の端面の当接部17aと、第2係合部5bの第1側壁部15b2の端面の当接部17bと、の間にギャップ保持部6を挟み込むことにより、退避位置(図1参照)を実現している。すなわち、第1係合部5a及び第2係合部5bは、上述の当接部17a及び当接部17bの間でギャップ保持部6を挟み込むことにより、それ以上、互いに近接しないようにギャップGが保持されている(図1参照)。
また、図5に示すように、本実施形態の第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bそれぞれは、抜去方向A2の端部が後述する支持部7に対して回動可能に支持されている。そのため、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bは、抜去方向A2側の端部の回動中心軸部15a4(図2参照)及び15b4(図2参照)を中心軸として、オスコネクタ部2を挟んで互いが接近する方向及び離間する方向に、径方向Bに回動可能である。
第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bに挟み込まれたギャップ保持部6を挿入方向A1に移動させることで、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bを、径方向Bで離間させる方向に回動させることができる。このように第1係合部5a及び第2係合部5bを径方向Bで離間させるように回動することで、第1係合部5a及び第2係合部5bを、図1に示す最大退避位置まで退避させることができる。
また、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bに挟み込まれたギャップ保持部6を抜去方向A2に移動させることで、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bを、径方向Bで接近させる方向に回動させることができる。
本実施形態では、ギャップ保持部6を抜去方向A2に移動させることで、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bを、径方向Bで接近させる方向に回動させ、ギャップ保持部6よりも挿入方向A1側の位置で、カバー部15a及びカバー部15bが当接した状態にすることができる(図3参照)。換言すれば、本実施形態では、ギャップ保持部6を抜去方向A2に移動させることで、第1係合部5a及び第2係合部5bを、ギャップ保持部6がギャップGを保持しない状態(図3参照)にすることができる。
本実施形態では、ギャップ保持部6に対して挿入方向A1側で、第1係合部5aのカバー部15aの第1側壁部15a2の端面のうち当接部17aよりも挿入方向A1側の部分、及び、第2係合部5bのカバー部15bの第2側壁部15b3の端面のうち当接部17bよりも挿入方向A1側の部分、が当接することで、カバー部15a及びカバー部15bが、径方向Bでそれ以上接近できない状態、すなわち、ギャップ保持部6がギャップGを保持しない状態、となる。本実施形態において、ギャップ保持部6がギャップGを保持しない状態は、第1係合部5a及び第2係合部5bが係合位置(図3参照)にある状態である。
このように、本実施形態では、ギャップ保持部6を中心軸線方向Aに沿って移動させることで、ギャップ保持部6によりギャップGが保持されている状態である、係合部5の退避位置(図1参照)と、ギャップ保持部6によりギャップGが保持されていない状態である、係合部5の係合位置(図3参照)と、の間で、第1係合部5a及び第2係合部5bを径方向Bに移動させることができる。
上述したように、第1係合部5aは、カバー部15aからオスコネクタ部2側に向かって径方向Bに突出する突出部16aを備える。また、第2係合部5bは、カバー部15bからオスコネクタ部2側に向かって径方向Bに突出する突出部16bを備える。上述したように第1係合部5a及び第2係合部5bを径方向Bに移動させることで、対向して配置されている突出部16a及び16bも径方向Bに移動する。
すなわち、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bは、ギャップ保持部6を挟み込む位置を中心軸線方向Aにおいて変動させることで、ギャップGの幅を変動させ、突出部16a及び突出部16bと、オスコネクタ部2と、の径方向Bの距離を変化させることができる。
具体的に、本実施形態では、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bが最も接近した状態、すなわち、ギャップ保持部6によりギャップGが保持されない、係合部5が係合位置にある状態(図3参照)で、突出部16a及び突出部16bは、径方向Bで最も接近した状態となる。換言すれば、突出部16a及び突出部16bは、オスコネクタ部2の外壁に最も接近した状態となる。
第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bを、最も接近した状態(図3参照)から離間させることで、突出部16a及び突出部16bを、径方向Bで離間させることができる。すなわち、第1係合部5aのカバー部15a及び第2係合部5bのカバー部15bを、ギャップ保持部6によりギャップGが保持されない、係合部5が係合位置にある状態(図3参照)から、ギャップ保持部6によりギャップGが保持される、係合部5が退避位置にある状態(図1参照)に状態変化することで、突出部16a及び突出部16bを径方向Bで離間させることができる。上述したように、本実施形態では、突出部16a及び突出部16bが径方向Bで最も離間した状態が、図1に示す、第1係合部5a及び第2係合部5bが最大退避位置にある状態である。
本実施形態のコネクタ1は、オスコネクタ部2を挟み、径方向Bで対向する2つの係合部5を備えるが、この構成に限らず、オスコネクタ部2の周囲で、周方向Cに沿って配置された3つ以上の係合部5を備えるコネクタとしてもよい。3つ以上の係合部5を備えるコネクタであっても、例えば、周方向Cに隣接する2つの係合部5間のギャップをギャップ保持部により保持する構成とすればよい。
次に、本実施形態の当接部17a及び17bの詳細について説明する。
図1~図3に示すように、本実施形態の第1係合部5aの当接部17a及び第2係合部5bの当接部17bは、ギャップ保持部6と摺動する摺動面を構成している。この当接部17a及び当接部17bを構成する摺動面は、第1係合部5a及び第2係合部5bが係合位置にある状態(図3参照)で、中心軸線方向Aに対して傾斜している傾斜面部18a及び傾斜面部18bを備えている。第1係合部5aの傾斜面部18a、及び、第2係合部5bの傾斜面部18b、は中心軸線方向Aにおいて同じ位置にある。また、第1係合部5aの傾斜面部18a及び第2係合部5bの傾斜面部18bそれぞれは、第1係合部5a及び第2係合部5bが係合位置にある状態(図3参照)で、挿入方向A1に向かうにつれて中心軸線Oに近接するように傾斜している。ギャップ保持部6は、第1係合部5aの傾斜面部18aと第2係合部5bの傾斜面部18bとに挟み込まれた状態で、第1係合部5aの傾斜面部18a及び第2係合部5bの傾斜面部18bと摺動することで、中心軸線方向Aに沿って移動する。
第1係合部5a及び第2係合部5bが係合位置にある状態(図3参照)で、第1係合部5aの傾斜面部18a及び第2係合部5bの傾斜面部18bの間の径方向Bでの対向距離D1(図3参照)は、挿入方向A1に向かうにつれて漸減している。ギャップ保持部6のうち、第1係合部5aの傾斜面部18a及び第2係合部5bの傾斜面部18bの間に挟み込まれる後述のフランジ部25(図9等参照)の、対向距離D1と同方向での最大長さD2(図9参照)は、対向距離D1の最小値(本実施形態では挿入方向A1の端部での対向距離)よりも大きい。そのため、本実施形態では、ギャップ保持部6を傾斜面部18a及び傾斜面部18bの間で挿入方向A1に移動させることで、ギャップ保持部6のフランジ部25(図9等参照)が、傾斜面部18a及び傾斜面部18bと摺動し、第1係合部5a及び第2係合部5bを径方向Bに押し広げる。その結果、第1係合部5a及び第2係合部5bは、径方向Bに離間するように移動する。
また、図2、図3、図6に示すように、本実施形態の係合部5は、退避位置(図1参照)にある状態で、ギャップ保持部6を係止可能な係止部19を備えている。具体的に、本実施形態の係止部19は、係合部5の退避位置の1つとしての、係合部5がオスコネクタ部2から最も離間した最大退避位置(図1参照)で、ギャップ保持部6を係止し、ギャップ保持部6の中心軸線方向Aにおける移動を規制する。
図1、図2、図5、図6、図8に示すように、本実施形態の係合部5は、ギャップ保持部6の中心軸線方向Aの挿入方向A1への移動を規制する第1突き当て壁部20と、ギャップ保持部6の中心軸線方向Aの抜去方向A2への移動を規制する第2突き当て壁部21と、を備えている。ギャップ保持部6は、中心軸線方向Aにおいて、第1突き当て壁部20と第2突き当て壁部21との間の範囲を移動可能である。本実施形態の係止部19は、ギャップ保持部6が第1突き当て壁部20に当接する状態(図8参照)にある場合に、ギャップ保持部6が抜去方向A2に移動しないように、又は、抜去方向A2に所定範囲内で移動するように、移動を規制する。係止部19は、例えば、ギャップ保持部6を抜去方向A2に所定の押圧力以上で押圧することにより、ギャップ保持部6により押圧されて変形し、ギャップ保持部6が乗り上げ可能となる係止突起(図2、図3等参照)により構成することができる。このような係止部19を設けることで、係合部5が意図せずに退避位置(図1参照)から係合位置(図3参照)に変位することを抑制することができる。図3等に示すように、本実施形態の係止部19としての係止突起は、後述する離間規制部23としての凸状のリブに形成されている。離間規制部23としての凸状のリブの詳細は後述する。
また、図1、図2、図5、図6に示すように、本実施形態の係合部5は、係合位置(図3参照)にある状態で、ギャップ保持部6を係止可能な係止部22を備えている。以下、説明の便宜上、上述の係止部19と区別するため、上述の係止部19を「第1係止部19」と記載し、係合部5が係合位置(図3参照)にある状態でギャップ保持部6を係止可能な係止部22を「第2係止部22」と記載する。
本実施形態の第2係止部22は、係合部5が係合位置(図3参照)にある状態で、ギャップ保持部6を係止し、ギャップ保持部6の中心軸線方向Aにおける移動を規制する。より具体的に、本実施形態の第2係止部22は、ギャップ保持部6が第2突き当て壁部21に当接する状態にある場合に、ギャップ保持部6が挿入方向A1に移動しないように、又は、挿入方向A1に所定範囲内で移動するように、移動を規制する。第2係止部22は、例えば、ギャップ保持部6を挿入方向A1に所定の押圧力以上で押圧することで変形し、ギャップ保持部6が乗り上げ可能となる係止爪(図1等参照)により構成することができる。このような第2係止部22を設けることで、係合部5が意図せずに係合位置(図3参照)から退避位置(図1参照)に変位することを抑制することができる。
また、図1、図2等に示すように、本実施形態の係合部5は、後述するギャップ保持部6と係合する離間規制部23を備える。具体的には、図2に示すように、第1係合部5aの第1側壁部15a2の外面には、凸状のリブが設けられており、このリブにより離間規制部23が構成されている。また、第1係合部5aの第2側壁部15a3の外面、第2係合部5bの第1側壁部15b2の外面、及び、第2係合部5bの第2側壁部15b3の外面、においても同様の凸状のリブが設けられている。本実施形態では、これら凸状のリブにより、離間規制部23が構成されている。詳細は後述するが、ギャップ保持部6と離間規制部23とが係合することで、第1係合部5aと第2係合部5bとが、ギャップ保持部6を挟み込まない状態で径方向Bに離間することを規制することができる。
本実施形態の係合部材62は、上述の係合部5を備える構成であるが、係合部5に加えて、他の機能を有する他の部位を備える構成としてもよい。また、本実施形態では、上述の係合部5が、係合部材62により構成されているが、この構成に限られず、例えば、上述の筒状部材61と一体的に係合部を形成してもよい。筒状部材61と一体的に形成される係合部としては、例えば、筒状部材61から突設され、オスコネクタ部2の径方向Bの外側の位置で中心軸線方向Aに沿って延在し、弾性変形することで径方向Bに揺動可能な本体部と、この本体部のオスコネクタ部2側に突設される突出部と、を備える構成とすることができる。このような係合部とすれば、本実施形態のギャップ保持部6を利用することで、本体部を径方向Bに変形させ、突出部を径方向Bに移動させることができることができる。つまり、係合位置(図3参照)と退避位置(図1参照)と、の間を変形可能な係合部を実現することができる。
<スペーサ部材63>
本実施形態のスペーサ部材63は、上述のギャップ保持部6を備えている。より具体的に、本実施形態のスペーサ部材63は、上述のギャップ保持部6を構成している。
[ギャップ保持部6]
図2に示すように、本実施形態のギャップ保持部6は、筒状部24と、フランジ部25と、爪部26と、を備えている。
本実施形態のギャップ保持部6は貫通孔24aを区画している。また、ギャップ保持部6は、オスコネクタ部2が貫通孔24a内に位置する状態で、中心軸線方向Aに沿って移動可能である。より具体的に、ギャップ保持部6の筒状部24が、上述の貫通孔24aを区画している。
本実施形態のギャップ保持部6は、後述するフランジ部25が係合部5に設けられた上述の第2突き当て壁部21(図1等参照)に当接することに加えて、筒状部24の抜去方向A2の端部が上述した規制壁部11(図2等参照)に当接することで、抜去方向A2のそれ以上の移動が規制される。
詳細は後述するが、筒状部24の挿入方向A1の端面24bは、メスコネクタ部101を備える他の医療器具100(図10等参照)と接続する際に、メスコネクタ部101の先端面101bに当接すると共に、この先端面101bにより抜去方向A2に向かって押圧される。
図2に示すように、フランジ部25は、筒状部24の外周面から径方向(本実施形態において筒状部24の径方向はオスコネクタ部2の径方向Bと同じであるため、以下、単に「径方向B」と記載する。)の外側に向かって突出している。より具体的に、本実施形態のフランジ部25は、筒状部24の外周面から径方向B外側の一方向に向かって突出する板状の第1フランジ27と、この第1フランジ27と筒状部24の径方向Bの対向する位置に形成され、第1フランジ27とは径方向B外側の逆方向に向かって突出する板状の第2フランジ28と、を備えている。
図4に示すように、板状の第1フランジ27は、筒状部24から径方向B外側に向かって延在している。より具体的に、板状の第1フランジ27は、複数の係合部5の間の位置から、複数の係合部5の間ではない、径方向Bにおいて係合部5の外側となる位置まで、延在している。また、図4に示すように、板状の第2フランジ28についても、筒状部24から径方向B外側に向かって延在している。より具体的に、板状の第2フランジ28は、複数の係合部5の間の位置から、複数の係合部5の間ではない、径方向Bにおいて係合部5の外側となる位置まで、延在している。
上述の複数の係合部5は、ギャップ保持部6のフランジ部25を挟み込むことで、ギャップG(図1等参照)が保持されている。本実施形態のフランジ部25は、中心軸線方向Aが厚み方向であり、周方向Cの両側に位置する端面が、第1係合部5aと第2係合部5bとにより挟み込まれる。
より具体的には、図4に示すように、本実施形態の第1フランジ27は、第1係合部5aの第1側壁部15a2と、第2係合部5bの第2側壁部15b3と、の間で挟み込まれる。また、図4に示すように、本実施形態の第2フランジ28は、第1係合部5aの第2側壁部15a3と、第2係合部5bの第1側壁部15b2と、の間で挟み込まれる。これにより、第1係合部5aと第2係合部5bとの間のギャップG(図1参照)を保持可能である。
図2に示すように、本実施形態の爪部26は、フランジ部25の径方向Bの外側の端部から、周方向Cに向かって突出している。
具体的に、本実施形態の爪部26は、図2、図4に示すように、第1フランジ27の径方向Bの外側の端部から、周方向Cの一方に向かって突出し、第1係合部5aの第1側壁部15a2の離間規制部23としての凸状のリブと係合する第1爪29aと、第1フランジ27の径方向Bの外側の端部から、周方向Cの他方に向かって突出し、第2係合部5bの第2側壁部15b3の離間規制部23としての凸状のリブと係合する第2爪29bと、を備えている。
図9に示すように、第1係合部5aの第1側壁部15a2の離間規制部23としての凸状のリブ、及び、第2係合部5bの第2側壁部15b3の離間規制部23としての凸状のリブ、は第1爪29aと第2爪29bとの間に位置する。そのため、第1係合部5a及び第2係合部5bが径方向Bにおいて離間しようとしても、第1爪29a及び第2爪29bが当接し、第1係合部5aの第1側壁部15a2及び第2係合部5bの第2側壁部15b3、が径方向Bにそれ以上離間しない。
また、本実施形態の爪部26は、図2、図4に示すように、第2フランジ28の径方向Bの外側の端部から、周方向Cの一方に向かって突出し、第2係合部5bの第1側壁部15b2の離間規制部23としての凸状のリブと係合する第1爪30aと、第2フランジ28の径方向Bの外側の端部から、周方向Cの他方に向かって突出し、第1係合部5aの第2側壁部15a3の離間規制部23としての凸状のリブと係合する第2爪30bと、を更に備えている。
図9に示すように、第1係合部5aの第2側壁部15a3の離間規制部23としての凸状のリブ、及び、第2係合部5bの第1側壁部15b2の離間規制部23としての凸状のリブ、は第1爪30aと第2爪30bとの間に位置する。そのため、第1係合部5a及び第2係合部5bが径方向Bにおいて離間しようとしても、第1爪30a及び第2爪30bが当接し、第1係合部5aの第2側壁部15a3及び第2係合部5bの第1側壁部15b2、が径方向Bにそれ以上離間しない。
このように、ギャップ保持部6に爪部26を設けることにより、第1係合部5a及び第2係合部5bが離間可能な距離を規制することができる。これにより、係合部5がギャップ保持部6を挟み込まない状態で径方向B外側に移動することを規制することができる。そのため、係合部5の意図しない過度な回動を抑制することができ、回動中心軸部の近傍に作用する負担を低減し、コネクタ1の耐久性を向上させることができる。また、コネクタ1を他の医療器具100(図10等参照)と接続する接続動作の際に、第1係合部5a及び第2係合部5bが過度に離間していることで接続し難い状態となることを抑制できる。これにより、コネクタ1の操作性を向上させることができる。
更に、本実施形態のギャップ保持部6では、フランジ部25が介在することにより、第1係合部5aと第2係合部5bとの間のギャップGを保持できると共に、爪部26が引っ掛かることにより、第1係合部5aと第2係合部5bとの間のギャップGが過度に大きくなることを抑制することができる。つまり、本実施形態のギャップ保持部6によれば、ギャップ保持部6の移動に対する第1係合部5a及び第2係合部5bの追従性を高めることができ、ギャップ保持部6の移動によって、係合部5の退避位置(図1参照)と係合位置(図3参照)との間での移動を、より確実に実現できる。
但し、複数の係合部5が、互いに接近するように常時付勢されている場合は、本実施形態の爪部26はなくてもよい。逆に、複数の係合部5が、互いに離間するように常時付勢されている場合は、本実施形態のフランジ部25は、複数の係合部5の間に介在するが、複数の係合部5に挟み込まれる構成でなくてもよい。この場合、例えば、本実施形態のギャップ保持部6の爪部26(図9等参照)のような、係合部5の一部(本実施形態では離間規制部23(図9等参照))と係合することで、複数の係合部5の間が所定距離以上に離間することを規制する移動規制部を設ければよい。
本実施形態のスペーサ部材63は、上述のギャップ保持部6を備える構成であるが、ギャップ保持部6に加えて、他の機能を有する他の部位を備える構成としてもよい。
<支持部材64>
図2等に示すように、本実施形態の支持部材64は、上述の支持部7を備えている。より具体的に、本実施形態の支持部材64は、上述の支持部7を構成している。
[支持部7]
本実施形態の支持部7を構成する支持部材64は、中心軸線方向Aに貫通する貫通孔31を区画しており、この貫通孔31内に筒状部材61の筒状支持部12を嵌合することで、筒状支持部12の外面上に支持されている。筒状部材61の筒状支持部12の自然状態での外径は、支持部材64の貫通孔31の内径よりも小さい。そのため、貫通孔31の内周面は、筒状支持部12の外周面と、周方向C全域において密着しており、筒状支持部12を径方向Bの内側に向かって圧縮している。その結果、筒状支持部12の内周面と、上述する接続部4としての筒状部の外周面と、の間に介在する医療用チューブ60(図1等参照)を、より強固に挟み込むことができる。
また、支持部7は、係合部5を回動可能に支持している。具体的に、本実施形態の支持部7は、第1係合部5aの回動中心軸部15a4、及び、第2係合部5bの回動中心軸部15b4、がそれぞれ回動可能に取り付けられる軸支持部32を備える。これにより、第1係合部5a及び第2係合部5bは支持部7に対して回動可能であり、その結果、退避位置(図1参照)と係合位置(図3参照)との間を移動することができる。
更に、本実施形態の支持部7は、中心軸線方向Aと直交する断面の外形が四角形状であり、径方向Bの外側の外壁面に、4つの平面部を備えている。支持部7をこのような外形とすることで、医師等の医療従事者は、支持部7の外壁面を把持することで、容易にコネクタ1を把持することができる。そのため、コネクタ1を他の医療器具100(図10等参照)と接続する接続動作の際に、医師等の医療従事者の操作性を向上させることができる。
本実施形態の支持部材64は、上述の支持部7を備える構成であるが、支持部7に加えて、他の機能を有する他の部位を備える構成としてもよい。また、本実施形態では、上述の支持部7が、支持部材64により構成されているが、この構成に限られず、例えば、上述の筒状部材61と一体的に支持部を形成してもよい。すなわち、係合部5を構成する係合部材62が、筒状部材61に対して回動可能に取り付けられていてもよい。
次に、図10~図12を参照して、本実施形態のコネクタ1と、他の医療器具100としての他のコネクタとの接続動作の詳細について説明する。図10は、コネクタ1と他の医療器具100とが接続される前の離間した状態を示す図である。図11は、コネクタ1と他の医療器具100との接続途中の状態を示す図である。図12は、コネクタ1と他の医療器具100との接続が完了した状態を示す図である。以下、説明の便宜上、本実施形態のコネクタ1を「オスコネクタ1」と記載し、他の医療器具100としてのコネクタを「メスコネクタ100」と記載する。
まず、図10~図12に示すメスコネクタ100の構成の概要について説明する。メスコネクタ100は、本実施形態のオスコネクタ1のオスコネクタ部2を挿入可能なメスコネクタ部101を備えている。より具体的に、メスコネクタ部101は、オスコネクタ部2を挿入可能な挿入口101aを区画するハウジング102と、スリット103を有し、挿入口101aに配置されている弾性弁体104と、を備えている。オスコネクタ1のオスコネクタ部2を挿入口101aに挿入すると、メスコネクタ100の弾性弁体104のスリット103が開放され、オスコネクタ1の流路2aと、挿入口101aに連なるメスコネクタ100の流路105と、が液密に連通する。
次に、本実施形態のオスコネクタ1と、メスコネクタ100と、の接続動作の詳細について説明する。
図10に示すように、オスコネクタ1のオスコネクタ部2の中心軸線Oが、メスコネクタ100のメスコネクタ部101の中心軸線と略一致するように配置する。この状態で、オスコネクタ1とメスコネクタ100とを接近させる方向に移動する。より具体的に、医師等の医療従事者は、一方の手でオスコネクタ1を把持すると共に、他方の手でメスコネクタ100を把持し、両方の手を中心軸線方向Aに向かって互いに接近させる、又は、両方の手の片方を他方に向かって接近させる。この際に、支持部7の位置でオスコネクタ1を把持することにより、オスコネクタ1を持ち易い。また、メスコネクタ100については、ハウジング102の外壁を把持することができる。
図10に示す接続前の状態では、オスコネクタ1の係合部5は、退避位置(図1等参照)にある。
図10の状態からオスコネクタ1及びメスコネクタ100を中心軸線方向Aにおいて接近させ、オスコネクタ1のオスコネクタ部2を、メスコネクタ100のメスコネクタ部101の挿入口101aに挿入する。そして、オスコネクタ1のオスコネクタ部2の先端が、メスコネクタ100の内部の所定位置まで挿入されると、オスコネクタ1のギャップ保持部6の筒状部24の挿入方向A1側の端面24bが、メスコネクタ100のメスコネクタ部101の先端面101bに当接する。端面24bは、図10~図12に示す断面とは周方向Cにおいて約90度ずれた位置にある(図2参照)。したがって、図10~図12では、説明の便宜上、周方向Cにおいて90度ずれた位置での、端面24bを含む筒状部24の断面の外形を、二点鎖線により示している。
オスコネクタ1の係合部5は、図11に示す状態においても、図1に示す最大退避位置にある。そのため、図10に示す状態から図11に示す状態まで、第1係合部5aの突出部16a及び第2係合部5bの突出部16bが、メスコネクタ100に干渉することなく、オスコネクタ部2をメスコネクタ部101内に挿入することができる。
図11の状態から、オスコネクタ1のオスコネクタ部2を、メスコネクタ100に対して相対的に、挿入方向A1に更に挿入していくと、ギャップ保持部6の筒状部24の端面24bが、メスコネクタ100のメスコネクタ部101の先端面101bにより押圧される。これにより、ギャップ保持部6は、オスコネクタ部2及び係合部5に対して、抜去方向A2に移動する。
ギャップ保持部6が、図11に示す状態から抜去方向A2に移動すると、第1係合部5a及び第2係合部5bは、支持部7に取り付けられている回動中心軸部15a4及び15b4に対して回動する。具体的に、ギャップ保持部6が、図11に示す状態から抜去方向A2に移動すると、本実施形態の係合部5は、径方向Bにおいてオスコネクタ部2に近づくように回動して移動する。
そして、第1係合部5aの突出部16a及び第2係合部5bの突出部16bは、オスコネクタ部2がメスコネクタ部101内の所定深さまで挿入された時に、メスコネクタ100のメスコネクタ部101の外壁に当接し、メスコネクタ部101を係止する。より具体的に、第1係合部5aの突出部16a及び第2係合部5bの突出部16bは、メスコネクタ部101の外壁に形成されている、径方向Bの外側に突出する係合突起106よりも、挿入方向A1側で、メスコネクタ部101の外壁と当接し、接続完了の状態となる(図12参照)。図12に示すように、オスコネクタ1及びメスコネクタ100の接続完了の状態において、第1係合部5aの突出部16a及び第2係合部5bの突出部16bは、係合突起106に対して挿入方向A1側に位置し、係合突起106が挿入方向A1側に移動することを阻害する。つまり、第1係合部5aの突出部16a及び第2係合部5bの突出部16bと、係合突起106と、により、オスコネクタ部2のメスコネクタ部101からの抜去方向A2への移動が阻害され、オスコネクタ1及びメスコネクタ100が強固に接続された状態となる。
本実施形態のオスコネクタ1によれば、メスコネクタ100との接続時において、オスコネクタ部2の先端がメスコネクタ部101内の所定の深さまで挿入される所定の状態になるまで、突出部16a及び突出部16bが、メスコネクタ部101と中心軸線方向Aにおいて干渉することを抑制することができる。その一方で、上述の所定の状態では、突出部16a及び突出部16bを、メスコネクタ部101と中心軸線方向Aにおいて干渉する位置に移動させることができる。本実施形態における上記「所定の状態」とは、メスコネクタ100の係合突起106の位置が、オスコネクタ1の突出部16a及び突出部16bの位置に対して、相対的に抜去方向A2側になる状態である。
次に、本実施形態のオスコネクタ1を備える輸液セット200について図13を参照して説明する。図13は、輸液セット200を示す図である。オスコネクタ1の詳細は上述したため、ここでは説明を省略する。
輸液セット200は、図13において図示しない輸液バッグ等の輸液保持具から、図13において同じく図示しない留置針までを接続する輸液ラインを構成可能である。具体的に、輸液セット200は、医療用チューブ201と、輸液保持具に穿刺可能な瓶針202と、輸液保持具から供給される薬液等の液体の流量を視認可能な点滴筒203と、医療用チューブ201内の液体の流量を複数の状態へと変更可能な調整用クランプ204と、医療用チューブ201を閉塞する閉塞用クランプ205と、医療用チューブ201の遠位端(輸液ラインの下流端)に接続されたオスコネクタ1と、を備えている。
医療用チューブ201の遠位端は、オスコネクタ1の接続部4に接続されることで、オスコネクタ1に対して固定されている。そして、医療用チューブ201とオスコネクタ1とは液密に接続されている。つまり、オスコネクタ1は、輸液セット200により構成される輸液ラインの遠位端部を構成している。
輸液セット200は、上述した構成部材により構成されているが、少なくとも医療用チューブと、この医療用チューブの一端に接続されたオスコネクタ1と、を備える構成であればよく、上述した構成に限られない。したがって、例えば、複数の医療用チューブ及びこれら複数の医療用チューブ間を接続する、オスコネクタ1とは別の医療用コネクタを備える構成や、上述した輸液セット200が備える構成部材以外の別の構成部材を含む輸液セットとしてもよい。
以上のように、本発明に係る医療用コネクタは、様々な具体的構成により実現することが可能であり、上述した実施形態で示した構成に限られず、請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態のギャップ保持部6を、挿入方向A1側に付勢する、コイルバネ等の付勢部材を更に設けてもよい。このようにすれば、メスコネクタ100(図10等参照)に接続されていない状態のオスコネクタ1において、係合部5を退避状態(図1参照)に維持し易く、メスコネクタ100との接続時に接続し易い構成とすることができる。